(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーの少なくとも1つが、150℃未満の再結晶温度を有し、TmとTcとの温度差が25℃超である、請求項1に記載の方法。
半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーの少なくとも1つが、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はジメチルイソフタレートのうち1つ以上から誘導されるユニットを含み、半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーの少なくとも1つが、10000〜80000の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
前記粉末組成物が、前記粉末中のポリマー材料の重量に基づいて、50〜100重量パーセントの半結晶質又は結晶質ポリエステルを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、(a)少なくとも約5:1のアスペクト比、及び約300マイクロメートル未満の最大寸法を有することが好ましいある量の補強粒子と、(b)レーザー焼結可能であることが好ましい少なくとも1つのポリエステルポリマー粉末とを含む粉末組成物を提供する。補強粒子を使用するとき、粉末組成物は、それから形成される物品の1つ以上の機械的特性を向上させるのに適しているある量の補強粒子を含むことが好ましい。好ましくは、補強粒子の少なくとも一部は、鉱物粒子である。別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの中〜高融点、高弾性率、好ましくは芳香族、及び少なくとも半結晶質のポリエステルポリマー粉末を含むレーザー焼結可能な粉末組成物を提供する。この実施形態の粉末組成物は、他の任意の好適なポリマー(例えば、非晶質又は脂肪族ポリエステル)又は任意の充填剤を更に含んでもよい。かかる粉末を作製及び使用する方法も提供される。
【0035】
本発明の粉末組成物は、例えば、周囲温度及び/又は高温で1つ以上の向上した機械的特性を示すことが好ましいLS物品を含む、種々の物品の作製において有用であり得る。
【0036】
レーザー焼結可能なポリマー粉末は、LS装置内で焼結させて、3次元物品を形成することができるポリマー粉末である。レーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、(1)LS装置のビルド表面に均一に適用することができ、(2)LS装置のレーザービームにより少なくとも実質的に融解して、第1の層を形成することができ(1つ以上の更なる物質の存在又は非存在下で)、(3)この第1の層に接着される第2の被覆層を形成することができる。したがって、例えば、現在のLS装置において有用であるように、粉末組成物は、好ましくは、選択的に焼結され得る薄くて均一な粉末層を形成するのに十分流動性である粉末形態(例えば、供給床から部分形成床上へ)であり、かつLS装置パラメータ内の融点を示す。
【0037】
更に、レーザー焼結可能であると考えられる粉末組成物では、典型的には、少なくとも最低限の量の機械的及び審美的特性を有する焼結物品を形成することもできる。例えば、焼結物品は、損傷を受けることなく標準的な環境下で取り扱うことが可能であるべきである。更に、レーザー焼結可能な粉末組成物は、好ましくは、実質的に平滑であり、かつ好ましくは、ほんの僅かなみかん肌しか示さない十分な解像度を有する表面を有するLS物品を形成することができることが好ましい。用語「みかん肌」は、一般的に、好ましくない粗度、又は物品の外観若しくは機能に負の影響を与える点食若しくは撓みの問題等の表面欠陥がLS物品上に存在することを指して用いられる。
【0038】
更に、レーザー焼結可能な粉末組成物は、好ましくは、例えば、ねじれ又は発煙等の好ましくない加工特性を示さない。本明細書で使用するとき、用語「ねじれ」は、焼結プロセス中の相変化から生じるLS物品の撓みを指し、これは、部品の作製中に焼結層の1つ以上の部分のねじれを引き起こす恐れがある(典型的には、水平面から)。用語「発煙」は、部品形成中の揮発物質の放出を指し、これは、例えば、焼結装置又はその中の粉末床の表面上で凝結する恐れがある。
【0039】
本発明の好ましい粉末組成物は、部品にレーザー焼結されるとき、好ましくないねじれ、みかん肌、又は発煙を示さない。
【0040】
図2A及び2Bは、幾つかの実施形態において、補強粒子の物理的特性がいかにして補強粒子を含有する物品の1つ以上の機械的特性を向上させ得るかを示す。
図2A及び2Bは、物品20(「物品部分20」)の一部の概略断面図であり、正確な縮尺で描かれている訳ではない。物品部分20は、ポリマーマトリクス22及びポリマーマトリクス22全体に分散している補強粒子24を含む。例示目的のために、1つの補強粒子24を示す。
図2Aにおいて互いに等間隔で離間している基準線26aは、非変形状態にあるときのポリマーマトリクス22を示す目的のために含まれる。
【0041】
図2Bに示すように、引っ張り荷重Fを物品部分20に印加すると、ポリマーマトリクス22は長手方向に変形する。ポリマーマトリクス22の変形は、変形基準線26bにより示され、その一部は
図2Aの基準線26aに対して長手方向に変位している。理論に縛られるものではないが、補強粒子24は、ポリマーマトリクス22よりも堅いことが好ましい補強粒子24により、ポリマーマトリクス22内の歪みの量を全体的に低減すると考えられる。この歪み低減は、変形基準線26bの湾曲により証明されるように、補強粒子24近傍に位置するポリマーマトリクス22の一部で特に優勢である。
【0042】
特定の好ましい実施形態では、本発明の粉末組成物から形成されるLS試験試料は、好適な量の好適な補強粒子を欠く同一粉末組成物から同様の方法で形成されたLS試験試料よりも高いHDTを示す。かかる実施形態では、本発明の粉末組成物から形成されるLS試験試料は、好ましくは、補強粒子を含有しないことを除いて同一である粉末組成物から形成されるLS試験試料よりも少なくとも約10℃高いHDTを示す。特定の好ましい実施形態では、本発明の粉末組成物から形成されるLS試験試料は、少なくとも約70℃、より好ましくは少なくとも約90℃、更により好ましくは少なくとも約110℃のHDTを示す。
【0043】
本発明の粉末組成物を用いて、例えば、ラピッドプロトタイピング及びラピッドマニュファクチャリングを含む種々の用途で用いるための種々の物品を形成することができる。ラピッドマニュファクチャリング用途の幾つかの例としては、例えば、ほんの僅かな数しか生産されない高仕様車の部品、モータースポーツ又は航空宇宙産業用の交換部品、及び眼鏡のフレーム等の高仕様ファッションアイテム等の少量生産製品(例えば、経済的又は技術的に実行不可能な射出成型を用いて生産する場合);並びに、例えば、補聴器部品等の比較的大量に製造される、類似しているがそれぞれ異なる部品の生産が挙げられる。本発明の物品から恩恵を受ける可能性のある産業部門の例としては、航空宇宙産業、医療技術、機械工学、自動車製造、スポーツ産業、家庭用品産業、電気産業、包装産業、及びライフスタイル製品が挙げられる。
【0044】
幾つかの実施形態では、本発明の粉末組成物は、高温環境に耐え得るとともに、更に1つ以上の好適な機械的特性を示すことができるLS物品を形成することができる。かかる特性を必要とする場合があるLS物品の例としては、自動車部品(例えば、エンジン部品及びエンジンに近接する他の部品)、燃料系統部品、耐熱性を必要とする家電製品の部品(例えば、食器洗い機の部品及びオーブンの部品)、加熱された材料から成型物品を形成するための成形型、加熱された液体と接触する水圧式部品、吸気マニホールド(例えば、暖気導入装置及び吸引ダクト)、照明装置の部品、及び高温環境で機能することを必要とする場合がある他の用途における部品又は物品(例えば、航空宇宙、モータースポーツ、デザイン、エレクトロニクス、工業、及び包装用途)が挙げられる。
【0045】
本発明の粉末組成物は、所望の機械的特性を得るのに好適な任意の種々のアスペクト比を有する補強粒子を任意で含んでもよい。理論に縛られるものではないが、好適に高いアスペクト比を有する粒子は、特定のLS物品のHDTを上昇させると考えられる。特定の好ましい実施形態では、本発明の粉末組成物は、少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1、更により好ましくは少なくとも約15:1、最適には少なくとも約20:1のアスペクト比を有する好適な量の補強粒子を含む。好ましくは、補強粒子は、約200:1未満、より好ましくは約100:1未満、更により好ましくは約75:1未満のアスペクト比を有する。必要に応じて、粉末組成物は、また、上記以外のアスペクト比を有する粒子(例えば、充填剤として)をある量含んでもよい。
【0046】
本発明の粉末組成物は、好ましくは、粒子が好適なアスペクト比を示す限り、任意の好適な規則的又は不規則な3次元形状を有する補強粒子を含んでもよい。好適な粒子形状の例は、針状、刃状、円柱状、立方体状(equant)、繊維状、微細繊維状、線維状、及び角柱状等を挙げることができる。好ましい実施形態では、少なくとも幾つかの補強粒子が針状である。補強粒子は、本質的に固体、又は実質的に固体であってもよく、又は1つ以上の空隙を含んでもよい。
【0047】
LS用途で有用であるように、補強粒子は、LSプロセス中、又は補強粒子を含有するLS物品が機能することが予想される最高温度のいずれかで、不適切な程度融解又は軟化しないことが好ましい。したがって、LSプロセス中の補強粒子の融解を避けるために、補強粒子は、好ましくは、レーザー焼結可能なポリマー粉末よりも高い融点(又は分解温度)を有するべきである。好ましい実施形態では、補強粒子は、好ましくは約200℃超、より好ましくは約500℃超、更により好ましくは約1,000℃超の融点(又は分解温度)を有する。幾つかの実施形態では、かかる融点を有する補強粒子を組み込むことにより、得られるLS物品の難燃性を向上させることができる。
【0048】
本発明の粉末組成物は、所望の機械的特性を得るのに十分な任意の量の補強粒子を含んでもよい。幾つかの実施形態では、粉末組成物は、補強粒子を含有しなくてもよく、無充填ポリマーの特性は、所望の最終用途に十分である。しかし、一般的に、本明細書に記載するような補強粒子の添加は、特に有益である場合がある。好ましくは、粉末組成物は、粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも約5wt%、より好ましくは少なくとも約10wt%、更により好ましくは少なくとも約15wt%の補強粒子を含む。好ましい実施形態では、粉末組成物は、粉末組成物の総重量に基づいて、約80wt%未満、より好ましくは約50wt%未満、更により好ましくは約30wt%未満の補強粒子を含む。
【0049】
本発明の粉末組成物は、所望の機械的特性を得るのに十分な任意の好適な大きさの補強粒子を含んでもよい。LS装置内で粉末組成物を効率よく加工するために、補強粒子は、好ましくは、約300マイクロメートル未満、より好ましくは約250マイクロメートル未満、更により好ましくは約200マイクロメートル未満の最大寸法を有する。所望の機械的特性を提供するために、補強粒子は、好ましくは、約10マイクロメートル超、より好ましくは約50マイクロメートル超、更により好ましくは約80マイクロメートル超の最大寸法を有する。
【0050】
幾つかの実施形態では、補強粒子の総量の中央又は平均最大寸法は、好ましくは、約300マイクロメートル未満、より好ましくは約250マイクロメートル未満、更により好ましくは約200マイクロメートル未満である。幾つかの実施形態では、補強粒子の総量の中央又は平均最大寸法は、約10マイクロメートル超、より好ましくは約50マイクロメートル超、更により好ましくは約80マイクロメートル超である。
【0051】
必要に応じて、本発明の粉末組成物は、また、上記以外の最大寸法を有するある量の粒子を含んでもよい。
【0052】
補強粒子は、所望の機械的特性を得るために任意の好適な最大横方向寸法を示してもよい。好ましい実施形態では、補強粒子は、約100マイクロメートル未満、より好ましくは約80マイクロメートル未満、更により好ましくは約50マイクロメートル未満の最大横方向寸法を示す。補強粒子は、好ましくは、約3マイクロメートル超、より好ましくは約10マイクロメートル超、更により好ましくは約15マイクロメートル超の最大横方向寸法を示す。
【0053】
幾つかの実施形態では、補強粒子の総量の中央又は平均最大横方向寸法は、約100マイクロメートル未満、より好ましくは約80マイクロメートル未満、更により好ましくは約50マイクロメートル未満である。幾つかの実施形態では、補強粒子の総量の中央又は平均最大横方向寸法は、約3マイクロメートル超、より好ましくは約10マイクロメートル超、更により好ましくは約15マイクロメートル超である。
【0054】
必要に応じて、本発明の粉末組成物は、また、上記以外の最大横方向寸法を有するある量の粒子を含んでもよい。
【0055】
所望の機械的特性を有するLS物品を作製するために好適な補強粒子は、任意の好適な材料から形成することができる。好適な補強粒子の例としては、(好ましくは、好適なアスペクト比、最大寸法、及び/又は最大横方向寸法を有する粒子形態であるとき)以下の種類の粒子を含んでもよい:ホウ素粒子、セラミック粒子、ガラス粒子(例えば、グラスファイバー)、及び鉱物粒子等の無機粒子;炭素粒子(例えば、カーボンファイバー粒子又はカーボンナノチューブ)等の有機粒子、及びポリマー粒子(例えば、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子−KEVLAR繊維等のアラミド粒子を含む、及びポリビニルアルコール粒子)、有機及び無機成分を両方含有する粒子;並びにこれらの混合物。以下に更に論じる理由のために、好ましくは少なくとも幾つかの(及び幾つかの実施形態では、全て又は実質的に全ての)補強粒子が鉱物粒子である。
【0056】
所望の機械的特性を得ることができる特定の補強粒子(例えば、アスベスト)は、ヒトの健康上のリスクを引き起こす場合がある。かかる補強粒子は特定の状況下で用いることができるが、本発明の粉末組成物は、好ましくは、粉末組成物又はそれから形成される物品の取扱者に健康上のリスクを引き起こさない補強粒子を含む。好ましくは、補強粒子は、(1)粉末組成物又は後にこの粉末組成物から形成される物品の製造中、不適切な量の粒子が空気中に舞い上がる(dusting)こと、及び/又は(2)粒子が、一旦空気中に浮遊し、空気中に浮いたままでいる時間をなくす又は最低限に抑える物理的特性(例えば、粒子サイズ及び/又はバルク密度)を示す。
【0057】
上述のように、幾つかの実施形態では、本発明の粉末組成物は、好ましくは、少なくとも幾つかの鉱物粒子を有するある量の補強粒子を含む。例えば、ウォラストナイト等の鉱物粒子は、安価であり、一定かつ好適な品質のバルク量が商業的市場で容易に入手可能である(例えば、特定のグラスファイバーとは異なり)。したがって、鉱物粒子は、よりコストの高い粒子(例えば、カーボン及びグラスファイバー)の使用を低減するか、又は使用しなくするために本発明の粉末組成物に含まれてもよい。更に、例えば、ウォラストナイト等の鉱物粒子は、白色及び他の淡色形態で入手可能であり、これにより、例えばカーボンファイバー等の他の粒子を同量用いた場合は不可能である審美的特性を有する物品を作製することが可能になる。かかる審美的特性により、白色、淡色、及び/又は輝度の高い外観を有する物品を作製することができる。更に、特定の鉱物粒子の色合いは、効率的LS加工に有益である場合がある(例えば、「背景技術」の項で論じたように、暗色のカーボンファイバーは、LSプロセスに干渉する恐れがある不適切な量の赤外線エネルギーを吸収する恐れがあるのとは異なり)。
【0058】
本発明の特定の実施形態の粉末組成物は、好ましくは、少なくとも幾つかの鉱物補強粒子を含む。好ましい実施形態では、鉱物補強粒子は、粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1wt%、より好ましくは少なくとも約2wt%、更により好ましくは少なくとも約3wt%、最適には少なくとも約5wt%の量で本発明の粉末組成物中に存在する。好ましくは、鉱物補強粒子は、粉末組成物の総重量に基づいて、約80wt%未満、より好ましくは約50wt%未満、更により好ましくは約40wt%未満の量で粉末組成物中に存在する。幾つかの実施形態では、鉱物補強粒子は、粉末組成物に含まれる補強粒子の総量の、少なくとも約10wt%、より好ましくは少なくとも約25wt%、更により好ましくは少なくとも約50wt%、最適には少なくとも約75wt%を構成する。
【0059】
好適な大きさの鉱物粒子を作製するために用いられる特定の粉砕手順から、所望の機械的特性を有するLS物品を作製するために不適切なアスペクト比を有する粒子が生じる恐れがある。好適なアスペクト比を有する鉱物粒子を提供するために、鉱物粒子は、好ましくは、過度に粗くない粉砕技術又は他の好適な技術を用いて作製される。好適なアスペクト比を有する鉱物粒子を作製することができる鉱物の例としては、ケイ酸塩鉱物(例えば、ケイ酸カルシウム)、カルシウム鉱物(例えば、炭酸カルシウム)、バリウム鉱物(例えば、硫酸バリウム)、マグネシウム鉱物(例えば、水酸化マグネシウム)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
好ましい実施形態では、鉱物粒子は、好適に加工されているケイ酸塩鉱物である。好適な補強粒子を作製することができるケイ酸塩鉱物の例としては、鉄バスタム石、Ca(Fe
2+,Ca,Mn
2+)[Si
2O
6];バスタム石、(Mn
2+,Ca)[SiO
3];ビステパイト、Mn
5SnB
2Si
5O
20;カスカンダイト、Ca(Sc,Fe
3+)[HSi
3O
9];曹灰針石、NaCa
2[HSi
3O
9];デニソブ石、Ca
2(K,Na)Si
3O
8(F,OH)
2;セラン石、Na(Mn
2+,Ca)
2[HSi
3O
9];フォシャグ石、Ca
4[(OH)
2|Si
3O
9];ヒレブランド石、Ca
2[(OH)
2|SiO
3];ウォラストナイト、CaSiO
3(例えば、ウォラストナイト−7T、ウォラストナイト−2M等);ランキン石、Ca
3Si
2O
7;キルコアン石、Ca
3Si
2O
7;ラーナイト、Ca
2SiO
4;ブレディガイト、Ca
7Mg(SiO
4)
4;ハトルライト、Ca
3[O|SiO
4];ローゼンハーン石、HCa
3[Si
3O
9(OH)];デルライト、Ca
6Si
3O
11(OH)
2;アフウィル石、Ca
3[HSiO
4]
2・2H
2O;ゾノトラ石、Ca
6Si
6O
17(OH)
2;ジャフェ石、Ca
6[(OH)
6|Si
2O
7];スオルン石、Ca
2[H
2Si
2O
7]・H
2O;キララ石、Ca
3[Si
2O
7]・O.5H
2O;オーケン石、CaSi
2O
5・2H
2O;リバーサイド石、Ca
5Si
6O
16(OH)
2・2H
2O;トラブゾナイト、Ca
4Si
3O
10・2H
2O;ギロル石、Ca
4(Si
6O
15)(OH)
2・3H
2O;フォシャルラス石、Ca
3[Si
2O
7]・3H
2O;トベルモリー石、Ca
5Si
6(O,OH)
18・5H
2O;クリノトベルモリー石、Ca
5[Si
3O
8(OH)
2]2.4H
2O−Ca
5[Si
6O
17]・5H
2O;ネコ石、Ca
3Si
6O
12(OH)
6・5H
2O;ブロンビエル石、Ca
5Si
6O
16(OH)
2・7H
2O;ジェンニ石、Ca
9H
2Si
6O
18(OH)
8・6H
2O;珪線石、[Al
2SiO
5];透角閃石、[Ca
2Mg
5Si
8O
22(OH)
2]等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
ウォラストナイトが、補強粒子の好ましい源である。上述の効果に加えて、ウォラストナイトは、低水分及び油吸収、低揮発性物質含量、並びに/又は高輝度若しくは白色度を示し、これらはそれぞれ特定の実施形態で望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、ウォラストナイトは、カルシウムと置換してもよい少量の鉄、マグネシウム、及びマンガンを含有してもよい。
【0062】
本明細書で好ましい実施形態では、ウォラストナイト補強粒子は、針状である。好適な市販の針状ウォラストナイト補強粒子の例としては、KG,GermanyのH.Osthoff−Petrasch GmbH & Co.から市販されているFILLEX 製品系列(例えば、FILLEX 1AE1、7AE1、6−AF3、及び2AH3製品)、及びWolkem(India)、NYCO Minerals Inc.(USA)及びR.T.Vanderbilt Co.Inc.(USA)から市販されているA−60製品が挙げられる。
【0063】
本発明の補強粒子は、表面処理又は修飾されてもよい。かかる表面修飾は、以下の効果のうち1つをもたらし得る:審美的の改善(例えば、外観、解像度等)、製作性の改善、寸法安定性の改善、表面特性の向上(例えば、撥水性又は疎水性の改善)、樹脂と充填剤成分との間の湿潤性の改善、レオロジー特性の制御(例えば、高い荷重をかけても粘度上昇が生じない、又は粘度上昇が少ない)、充填剤分散性の改善(例えば、充填剤の凝集が発生しない、又は低減される)、及びこれらの組み合わせ。シラン表面処理が、好ましい表面処理の例である。
【0064】
本発明の補強粒子は、好ましくは、少なくとも約0.3グラム/立方センチメートル(「g/cc」)、より好ましくは少なくとも約0.5g/cc、更により好ましくは少なくとも約0.7g/ccのバルク密度を有する。好ましい実施形態では、補強粒子は、好ましくは、約5g/cc未満、より好ましくは約4g/cc未満、更により好ましくは約2g/cc未満のバルク密度を有する。
【0065】
上述のように、本発明の粉末組成物は、好ましくは、1つ以上のレーザー焼結可能なポリエステルポリマー粉末を含む。LS装置内で好適に加工するとき、レーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、ポリマーマトリクスを有するLS物品を形成することができる。
【0066】
現在市販されているLS装置は、典型的には、約220℃以下の融点(「T
m」)を有する材料を焼結することができる。かかる装置を利用するプロセスで有益であるように、本発明の粉末組成物は、好ましくは、「中〜高」融点を有する少なくとも1つのレーザー焼結可能なポリマー粉末を含む。本発明で用いるための好適な半結晶質又は結晶質ポリエステルポリマーは、一般的に、約220℃未満、より好ましくは約210℃未満、更により好ましくは約190℃未満、更により好ましくは約175℃未満の融点を有する。本発明の粉末組成物は、好ましくは、それから形成されるLS物品が機能することが望ましい最大温度以下の温度で融解しない。好ましい実施形態では、1つ以上のレーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、約120℃超、より好ましくは約130℃超、特定の好ましい実施形態では約150℃超の融点を有する。
【0067】
好適な半結晶質又は結晶質ポリエステルポリマーは、任意の好適な結晶化度パーセントを示してもよい。好ましい実施形態では、本発明の粉末組成物は、(体積を基準にして)少なくとも5%、より好ましくは少なくとも約10%、更により好ましくは少なくとも20%の結晶化度パーセントを有する少なくとも1つの半結晶質又は結晶質ポリエステルポリマーを含む。一例として、所与のポリエステルポリマーの結晶化度パーセントは、以下の等式を用いて示差走査熱量測定(DSC)を介して評価することができる。
【0068】
結晶化度パーセント(%)=[A/B]×100、
式中、「A」は、ジュール/グラム(J/g)で表される所与のポリエステルポリマーの融解熱(即ち、DSC曲線の融解部分「下」の全領域)であり、「B」は、ポリマーの100%が結晶質状態である融解熱(J/g)である。本明細書に記載されるDSC方法(例えば、サンプルの大きさ、スキャン速度等)を、DSC分析に用いてもよい。多くのポリマーでは、理論的B値は、科学文献から入手可能であり、このような値を用いてもよい。かかるB値が文献から入手できない場合、145J/gのB値を近似値として用いてもよく、これは、Cheng,Stephen、Pan,Robert、及びWunderlich,Bernard、「Thermal analysis of poly(butylene terephthalate)for heat capacity,rigid−amorphous content,and transition behavior,」Macromolecular Chemistry and Physics、第189巻、10号(1988):2219〜2512に報告されている100%結晶質のポリブチレンテレフタレート(PBT)の融解熱である。
【0069】
本発明で用いるための好適なポリエステルポリマーは、一般的に、約80℃未満、より好ましくは約60℃未満、更により好ましくは約40℃未満のガラス転移温度(「T
g」)を有する。本発明で用いるための好適なポリエステルポリマーは、一般的に、約−30℃超、より好ましくは約0℃超、更により好ましくは約10℃超のガラス転移温度を有する。
【0070】
本発明で用いるための好適な半結晶質又は結晶質ポリエステルポリマーは、一般的に、約150℃未満、より好ましくは約120℃未満、更により好ましくは約100℃未満の再結晶化温度(「T
c」)を有する。好ましい実施形態では、T
mとT
cとの温度差は、25℃超、更により好ましくは50℃超、最適には75℃超である。
【0071】
上記T
m、T
g、T
c値は、例えば、1分間当たり10℃等の一定のスキャニング速度でDSCを用いて測定することができ(例えば、T
m及びT
g測定では、80℃で始めて250℃で終わり、T
c測定では逆である)、各T
m、T
g、及びT
c値はそれぞれの「ピーク」値に一致する。一例として、前述のDSCデータは、アルミニウムのサンプルパン内に密封された重量約10ミリグラムのサンプルを用いてMettler Toledo製の822e型DSC機器を用いて得ることができる。
【0072】
本発明の粉末組成物中に含まれるポリエステルポリマーは、任意の好適な構造構成の骨格鎖を含んでもよい。骨格鎖は、骨格鎖を形成するために用いられる材料、コスト、及びポリマーの所望の最終用途等の種々の要因によって異なる構造構成を有してもよい。本発明のポリエステルポリマーは、好ましくは、ポリエステルセグメント又は連結以外の1つ以上のセグメント及び/又は連結の存在により、例えば、LS物品等の3次元焼結物品の作製に用いるのに適していない材料にならない限り、かかるセグメント又は連結を含んでもよい。例えば、1つ以上のポリエステルポリマーの骨格鎖は、所望により、例えば、アミド、カーボネートエステル、エーテル、イミド、イミン、尿素、又はこれらの組み合わせ等の1つ以上の結合を含んでもよい。同様に、骨格鎖は、所望により、例えば、アクリル、ポリアミド、ポリ(カーボネートエステル)、エポキシ、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイミン、ポリ尿素、これらのコポリマーセグメント、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上のオリゴマー又はポリマーセグメントを含んでもよい。
【0073】
しかし、典型的には、1つ以上のポリエステルの少なくとも50wt%がポリエステルユニットを含む。幾つかの実施形態では、1つ以上のポリエステルの実質的に全て(例えば、>80wt%、>90wt%、>95wt%等)、又は全てがポリエステルユニットを含む。前述のポリエステユニットのwt%は、ポリエステルを形成するために用いられる反応物質の総重量に対する、エステル連結を形成するために用いられるポリ酸モノマー(典型的には、二酸)及びポリオールモノマー(典型的には、ジオール)の総重量に対応する。したがって、例えば、1つ以上のエステル基を有するオリゴマーがポリエステル樹脂に組み込まれる場合、ポリエステルユニットのwt%は、オリゴマーの1つ以上のエステル連結を形成するために用いられるポリ酸及びポリオールモノマーの総重量を用いて算出される(オリゴマーの重量とは対照的に)。ポリオールと反応してエステル基を形成するポリ酸モノマーの無水物及び/又はエステルは、前述のwt%のポリエステルユニットの目的のためのポリ酸モノマーであるとみなされる。
【0074】
本発明の粉末組成物は、任意の好適な量の1つ以上のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含んでもよい。好ましくは、粉末組成物は、粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも約20wt%、より好ましくは少なくとも約50wt%、更により好ましくは少なくとも約60wt%のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含む。好ましい実施形態では、粉末組成物は、粉末組成物の総重量に基づいて、約97wt%未満、より好ましくは約85wt%未満、更により好ましくは約80wt%未満のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含む。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明の粉末組成物は、1つ以上の焼結可能なポリエステル粉末、より好ましくは1つ以上のレーザー焼結可能なポリエステル粉末を含む。好適なポリエステル樹脂の例としては、脂肪族及び芳香族ポリエステル樹脂を挙げることができる。芳香族ポリエステル樹脂が、本明細書では好ましい。
【0076】
任意の好適な数の芳香族基を有する芳香族ポリエステル樹脂を用いてもよい。好ましくは、ポリエステル樹脂は、少なくとも約5wt%、より好ましくは少なくとも約20wt%、更により好ましくは少なくとも約40wt%、更により好ましくは少なくとも約65wt%の芳香族基を含む。幾つかの実施形態では、芳香族ポリエステル樹脂は、最高75wt%以上の芳香族基を含んでもよい。前述のwt%は、ポリエステル樹脂を形成するために用いられる反応物質の総重量に対する、ポリエステル樹脂を形成するために用いられる芳香族モノマーの総重量に一致する。したがって、例えば、芳香族基を有するオリゴマーがポリエステル樹脂に組み込まれる場合、ポリマー中の芳香族基のwt%は、オリゴマーを形成するために用いられる芳香族モノマーの重量を用いて算出される(オリゴマーの重量とは対照的に)。好適な芳香族モノマーとしては、例えば、酸、エステル、又は無水物官能性芳香族モノマー(例えば、芳香族一酸及び/又はポリ酸、より好ましくは芳香族ポリ酸);ヒドロキシル官能性芳香族モノマー(例えば、芳香族一及び/又は多官能性モノマー);又は共有結合を形成するための相補的反応基(より好ましくは、ヒドロキシル、カルボン酸、エステル、又は無水物基)との縮合反応に関与し得る1つ以上の(典型的には、少なくとも2つ)反応基を有する芳香族モノマーが挙げられる。本明細書で好ましい芳香族モノマーの例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
好ましくは、ポリエステル樹脂(又は樹脂のブレンド)は、大部分の半結晶質又は結晶質ポリエステル又はポリエステルセグメントを含む。少量の非晶質ポリエステル(又は非晶質セグメント)を用いて、例えば、材料の再結晶化速度を減速させてもよい。好ましい実施形態では、材料は、ポリエステル樹脂の重量に基づいて0〜49.9wt%の非晶質ポリエステルと、50.1〜100wt%の半結晶質又は結晶質ポリエステルとを有する。より好ましい実施形態では、材料は、ポリエステル樹脂の重量に基づいて0〜30wt%の非晶質ポリエステルと、70〜100wt%の半結晶質又は結晶質ポリエステルとを有する。最も好ましい実施形態では、材料は、ポリエステル樹脂の重量に基づいて10〜25wt%の非晶質ポリエステルと、75〜90wt%の半結晶質又は結晶質ポリエステルとを有する。
【0078】
従来の非晶質ポリエステルポリマーは、例えば、任意の認識可能な融点も示さず(例えば、DSC融解ピークを示さず)、任意の結晶質領域も含まない。したがって、かかる従来の非晶質ポリエステルポリマーは、0%の結晶化度パーセントを示すと予測される。したがって、本発明の粉末ブレンドは、0%又は実質的に0%の結晶化度%を有する1つ以上の非晶質ポリエステルポリマーを含んでもよい。しかし、必要に応じて、本発明の粉末ブレンドは、0以外の結晶化度%(例えば、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満等)を有する1つ以上の「非晶質」ポリエステルポリマーを含んでもよい。
【0079】
好適なポリエステルとしては、1つ以上の好適なポリカルボン酸成分(例えば、ジカルボン酸成分)と1つ以上の好適なポリオール成分(例えば、ジオール成分)から形成されるポリエステルが挙げられる。
【0080】
好適なジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。他の好適なポリカルボン酸の例としては、ベンゼン−ペンタカルボン酸;メリト酸;1,3,5,7ナフタレン−テトラカルボン酸;2,4,6ピリジン−トリカルボン酸;ピロメリット酸;トリメリット酸;トリメシン酸;3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸;1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸;1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸が挙げられる。前述の酸の無水物又はエステル、及びかかる酸、無水物又はエステルの混合物を用いてもよい。
【0081】
好適なジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、及びデカメチレングルコール等の式HO−(CH
2)
n−OH(式中、nは約2〜10である)により表されるポリメチレングリコール;ネオペンチルグリコール等の式HO−CH
2−C(R
2)−CH
2−OH(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)により表される分岐グリコール;ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;シクロヘキサンジメタノール(CHDM)等のシクロヘキサン環を有するジオールが挙げられる。2−メチル−1,3プロパンジールを用いてもよい。グリセロール、トリメチロールプロパン、及び他の好適なポリオールを用いてもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、1つ以上のポリエステル樹脂は、(i)テレフタル酸若しくはイソフタル酸の1つ以上;(ii)1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、アジピン酸、若しくは1,3プロパンジオールの1つ以上;(iii)セバシン酸、オルトフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、若しくは1,2プロパンジオールの1つ以上;又は(iv)(i)と(ii)、(i)と(iii)、(ii)と(iii)、若しくは(i)と(ii)と(iii)の任意の組み合わせを含む反応物質に由来する芳香族半結晶質又は結晶質ポリエステルである。
【0083】
好適な例示的結晶質及び半結晶質ポリマーとしては、PET、PET/I(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのモル比は、好ましくは少なくとも約65/35)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、及びポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレートが挙げられる。
【0084】
特に好適な半結晶質ポリマーの例は、(i)テレフタル酸(全酸モノマーの重量の約3分の2)、イソフタル酸(全酸モノマーの重量の約3分の1)を含む酸モノマー、及び(ii)1,4ブタンジオールを主に又は排他的に含むジオールに由来するポリエステル樹脂である。1つの実施形態では、前述のポリエステルは、例えば、全酸モノマーの約5wt%未満の量のアジピン酸を更に含む酸モノマーに由来し、テレフタル酸及びイソフタル酸の重量パーセントは適宜調整される。別の実施形態では、1,4ブタンジオールの代わりに、又は1,4ブタンジオールの少なくとも一部の代替物として1,3プロパンジオールを用いる。
【0085】
好ましいポリエステルは、少なくとも約0.3、より好ましくは少なくとも約0.5、最も好ましくは少なくとも約0.6の固有粘度を有する。好ましいポリエステルは、約1.2未満、より好ましくは0.9未満、最も好ましくは0.8未満の固有粘度を有する。
【0086】
好ましいポリエステルは、少なくとも約10,000、より好ましくは少なくとも20,000、最も好ましくは少なくとも25,000の重量平均分子量を有する。好ましいポリエステルは、約80,000未満、より好ましくは50,000未満、最も好ましくは45,000未満の重量平均分子量を有する。重量平均は、80,000より重くてもよいが、かかるポリマーは、恐らく適切に流動するのが難しく、かつプロセスがより緩徐になるに違いないことが予想される。また、重量平均は、10,000より軽くてもよいが、かかるポリマーは、最適強度よりも弱くなることが予想される。
【0087】
好ましいポリエステルは、部品に焼結させたとき(例えば、ISO 3167タイプ1A試料)、少なくとも100Mpa、より好ましくは少なくとも400Mpa、最も好ましくは少なくとも800Mpaの弾性率(又は引っ張り弾性率)を有する。幾つかの実施形態では、かかる焼結ポリエステル部品の弾性率は、3,000Mpa未満、又は2,000Mpa未満であってもよい。好ましい粉末組成物は、部品に焼結させたとき(例えば、ISO 3167タイプ1A試料)、少なくとも200Mpa、より好ましくは少なくとも500Mpa、最も好ましくは少なくとも1,000Mpaの弾性率を有する。幾つかの実施形態では、かかる焼結粉末組成物の弾性率は、5,000Mpa未満、又は3,000Mpa未満であってもよい。幾つかの実施形態では、粉末組成物は、部品に焼結させたとき(例えば、ISO 3167タイプ1A試料)は、少なくとも800Mpaの「高」弾性率を有する。焼結部品の弾性率を測定するための好適な方法は、試験方法の項に提供される。例えば、ISO 3167タイプ1A試料等の焼結試験部品を作製するための好適なパラメータ(例えば、層厚さ、LS装置パラメータ等)は、試験方法及び実験の項に提供される。
【0088】
ポリエステルポリマーと組み合わせて用いることができる(例えば、ブレンドとして)他の好適なレーザー焼結可能なポリマーの例としては、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、PVOH、ポリエーテル、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、フェノール、アイオノマー、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、並びにこれらのコポリマー及び混合物から好適に形成される粉末を挙げることができる。熱硬化性及び/又は放射線硬化性樹脂を本発明の粉末組成物に含んでもよい。熱又は放射線硬化性樹脂は、典型的には、LSプロセスにおいて非可撓性物品を提供する。好適な熱又は放射線硬化性樹脂の例としては、エポキシ、アクリレート、ビニルエーテル、不飽和ポリエステル、ビスマレイミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物を挙げることができる。幾つかの実施形態では、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、又はかかる樹脂の混合物を、本発明の粉末組成物に含んでもよい。
【0089】
レーザー焼結可能なポリマー粉末を構成するポリマー粒子は、好ましくは、少なくとも約10マイクロメートル、より好ましくは少なくとも約20マイクロメートル、更により好ましくは少なくとも約40マイクロメートルの最大寸法を示す。好ましい実施形態では、レーザー焼結可能なポリマー粒子は、好ましくは、約200マイクロメートル未満、より好ましくは約150マイクロメートル未満、更により好ましくは約80マイクロメートル未満の最大寸法を示す。幾つかの実施形態では、補強粒子及びレーザー焼結可能なポリマー粉末は、補強粒子の最大寸法が、レーザー焼結可能なポリマー粉末のポリマー粒子の最大寸法とほぼ同じであるか、又は小さいように選択される。
【0090】
レーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、少なくとも約0.3g/cc、より好ましくは少なくとも約0.35g/cc、更により好ましくは少なくとも約0.4g/ccのバルク密度を有する。好ましい実施形態では、レーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、約3g/cc未満、より好ましくは約2g/cc未満、更により好ましくは約1g/cc未満のバルク密度を有する。
【0091】
本発明の粉末組成物はまた、1つ以上の他の任意成分を含んでもよい。好ましくは、この任意成分は、それから形成される粉末組成物又は物品に悪影響を与えない。かかる任意成分を含んで、例えば、審美性を向上させる、粉末組成物若しくはそれから形成される物品の製造、加工、及び/若しくは取扱を容易にする、並びに/又は粉末組成物若しくはそれから形成される物品の特定の特性を更に改善することができる。各任意成分は、好ましくは、その意図する目的が機能するのに十分な量含まれるが、粉末組成物又はそれから形成される物品に悪影響を与えるような量ではない。特定のこれら任意成分は、好ましくは、微粒子物質であり、ポリマーと共に同時配合され得る有機及び/又は無機物質(単数または複数)を含んでもよい。任意成分は、好ましくは、ポリマー粉末及び/又は補強粒子の粒径の範囲の粒径を有する。各任意成分は、好ましくは、必要に応じて、所望の中央粒径及び粒径分布に粉砕される。
【0092】
各個別の任意成分は、全て存在する場合、典型的には、約0.1wt%〜約50wt%の量で粉末組成物中に存在する。粉末組成物中の任意成分の総量は、好ましくは、約0wt%〜最高約50wt%の範囲である。任意成分がLSプロセス中に融解することは必須ではない。好ましくは、各任意成分は、強くかつ耐久性のある物品を提供するために、1つ以上の粉末ポリマー及び/又は補強粒子と好適に適合する。
【0093】
幾つかの実施形態では、本発明の粉末組成物は、任意の流動剤を含有する。流動剤は、好ましくは、LS装置のビルド表面上で粉末組成物が流動し、水平になるのに十分な量存在する。存在するとき、粉末組成物は、粉末組成物の総重量に基づいて、好ましくは、約0.01wt%〜約5wt%、より好ましくは約0.05wt%〜約2wt%、更により好ましくは約0.1wt%〜約1wt%の流動剤を含有する。任意の流動剤は、好ましくは、約10マイクロメートル未満の最大寸法を有する微粒子状無機物質である。好適な流動剤の例としては、水酸化ケイ素、非晶質アルミナ、ガラス状シリカ、ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、チタニア、タルク、雲母、ヒュームドシリカ、カオリン、アタパルジャイト、ケイ酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ヒュームドシリカが好ましい流動剤である。
【0094】
幾つかの実施形態では、本発明の粉末組成物は、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、スズ粉末、青銅粉末、及びこれらの混合物等の金属(又は表面処理金属)充填剤を含んでもよい。
【0095】
更なる任意成分としては、例えば、トナー、展延剤、充填剤、着色剤(例えば、顔料及び染料)、潤滑剤、防食剤、チクソトロピック剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶媒、界面活性剤、難燃剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0096】
好ましくは、本発明の粉末組成物の各成分は、好適には乾燥している(例えば、最低限の量の水分、好ましくは2wt%以下の水分を含有する)。全ての組成物の成分は、必要に応じて、所望の粒径又は粒径の範囲を提供するために、粉砕、研磨、又は他の方法で加工されてもよい。
【0097】
本発明の粉末組成物は、任意の好適な技術を用いて形成され得る。成分は、全て一度に又は任意の順序でブレンドされてもよい。好ましくは、成分は、均一な粉末組成物が形成されるまでブレンドされる。成分は、機械的混合、空気混合(例えば、種々の成分を収容するサイロに空気を吹き込むことにより)、又は任意の他の好適な混合技術を用いてブレンドしてもよい。ブレンド後、得られる粉末組成物をふるいにかけて、所望の粒径又は粒径分布を有する粉末を提供してもよい。
【0098】
幾つかの実施形態では、補強粒子(又は他の任意成分)は、ポリマーペレット又はポリマー粉末と溶融ブレンドし、次いで内部に補強粒子が埋め込まれた小ペレットにペレット化してもよい。次いで、任意の好適な技術(例えば、低温粉砕)を用いてペレットを加工して、好適な粉末組成物を形成してもよい。
【0099】
本発明のLS物品は、任意の好適なLSプロセスを用いて粉末組成物から作製してもよい。本発明のLS物品は、好ましくは、幾つかの実施形態では、ポリマーマトリクス全体に分散している補強粒子を有するポリマーマトリクスを含む複数の被覆及び接着性焼結層を含む。
【0100】
本発明のLS物品の焼結層は、LS加工に好適な任意の厚さであってもよい。複数の焼結層は、それぞれ、平均して、好ましくは少なくとも約50マイクロメートルの厚さ、より好ましくは少なくとも約80マイクロメートルの厚さ、更により好ましくは少なくとも約100マイクロメートルの厚さである。好ましい実施形態では、複数の焼結層は、それぞれ、平均して、好ましくは約200マイクロメートル未満の厚さ、より好ましくは約150マイクロメートル未満の厚さ、更により好ましくは約120マイクロメートル未満の厚さである。レーザー焼結以外の層ごとの焼結を用いる本発明の粉末組成物から作製される3次元物品は、上記と同じ又は異なる層厚さを有してもよい。
【0101】
したがって、本発明の粉末組成物は、LS以外の焼結プロセスで用いてもよいと考えられる。例えば、粉末組成物の焼結は、レーザーにより作製されるもの以外に電磁放射線の適用を介して達成されてもよく、焼結の選択性は、例えば、阻害剤、吸収剤、サセプタ、又は電磁放射線の選択的適用を通して(例えば、マスク又は指向性レーザービームの使用を通して)得られる。例えば、赤外線源、マイクロ波発振器、レーザー、放射ヒーター、ランプ、又はこれらの組み合わせを含む、任意の他の好適な電磁放射線源を用いてもよい。
【0102】
幾つかの実施形態では、選択的マスク焼結(「SMS」)技術を用いて、本発明の3次元物品を作製してもよい。SMSプロセスについての更なる議論については、例えば、遮蔽マスクを用いて選択的に赤外線をブロックして、粉末層の一部に選択的に照射するSMS装置について記載している米国特許第6,531,086号を参照。SMSプロセスを用いて本発明の粉末組成物から物品を作製する場合、粉末組成物の赤外線吸収特性を高める1つ以上の物質を粉末組成物中に含むことが望ましい場合もある。例えば、粉末組成物は、1つ以上の熱吸収剤及び/又は暗色物質(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバー)を含んでもよい。
【0103】
本発明の粉末組成物は、3次元物品を形成するための印刷プロセスでも有用である場合がある。かかる技術の更なる議論については、例えば、米国特許第7,261,542号を参照。
【0104】
図3A及び3Bは、LS物品30の1つの実施形態の代表的なサンプルを示し、
図3Aは、LS物品30の概略垂直断面図を示し、
図3Bは、
図3Aの線3B−3Bに沿ったLS物品30の概略水平断面図を示す。
図3A及び3Bは、正確な縮尺で描かれている訳ではない。LS物品30は、好ましくは、ポリマーマトリクス34と、マトリクス34全体に分散している任意の補強粒子36とを含む複数の接着性焼結層32を含む。
【0105】
本発明の粉末組成物の特定の実施形態(例えば、好適な量の鉱物補強粒子を含むもの)は、好適なLSプロセスを介して、溶融材料(例えば、プラスチック及びゴム)を成型品に成型することができる成形型に形成することができる。好ましい実施形態では、粉末組成物は、それから形成される成形型が、130℃超、より好ましくは約140℃超、更により好ましくは約150℃超の温度を有する溶融材料を成型品に好適に成型することができるように、構成される。
【0106】
本発明を更に例証するために、本発明の幾つかの非限定的な実施形態を以下に提供する。
【0107】
実施形態A.120〜220℃の融点を有する、少なくとも1つの半結晶質又は結晶質芳香族の焼結可能な(より好ましくは、レーザー焼結可能な)ポリエステルポリマーを含む粉末組成物。
【0108】
実施形態B.150〜220℃の融点を有する、少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能な(より好ましくは、レーザー焼結可能な)ポリエステルポリマーを含む粉末組成物。
【0109】
実施形態C.(i)少なくとも1つのポリエステルポリマーが半結晶質又は結晶質であり、かつ(ii)少なくとも1つのポリエステルポリマーが非晶質である、2つ以上の焼結可能な(より好ましくはレーザー焼結可能な)ポリエステルポリマーのブレンドを含む粉末組成物。
【0110】
実施形態D.120〜220℃の融点、及び150℃未満の再結晶化温度を有する少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能な(より好ましくは、レーザー焼結可能な)ポリエステルポリマーを含む粉末組成物であって、T
mとT
cとの温度差が25℃超、好ましくは50℃超、更により好ましくは75℃超である、粉末組成物。
【0111】
実施形態E.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、150℃超〜220℃の融点を有する、実施形態A、C、又はDに記載の粉末組成物。
【0112】
実施形態F.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、130℃〜190℃の融点を有する、実施形態A、C、又はDに記載の粉末組成物。
【0113】
実施形態G.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、−30〜80℃のガラス転移温度を有する、実施形態A〜Fのいずれかに記載の粉末組成物。
【0114】
実施形態H.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、150超〜190℃の融点、及び−30〜80℃のガラス転移温度を有する、実施形態A〜Fのいずれかに記載の粉末組成物。
【0115】
実施形態I.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、150℃未満の再結晶化温度を有し、T
mとT
cとの温度差が25℃超である、実施形態A〜C又はE〜Hのいずれかに記載の粉末組成物。
【0116】
実施形態J.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、1つ以上の半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーを形成するために用いられる芳香族モノマーの総重量に基づいて、少なくとも10wt%の半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーを構成する芳香族基を含む、実施形態A〜Iのいずれかに記載の粉末組成物。
【0117】
実施形態K.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はジメチルイソフタレートのうち1つ以上から誘導される芳香族基を含む、実施形態A〜Jのいずれかに記載の粉末組成物。
【0118】
実施形態L.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、又はアジピン酸のうち1つ以上から誘導されるユニットを含む、実施形態A〜Kのいずれかに記載の粉末組成物。
【0119】
実施形態M.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、10,000〜80,000の重量平均分子量を有する、実施形態A〜Lのいずれかに記載の粉末組成物。
【0120】
実施形態N.粉末組成物が、粉末中のポリマー材料の重量に基づいて、50〜100重量パーセントの半結晶質又は結晶質ポリエステルを含む、実施形態A〜Mのいずれかに記載の粉末組成物。
【0121】
実施形態O.粉末組成物が、少なくとも1つの非晶質ポリエステルポリマーを更に含む、実施形態A、B、及びD〜Nのいずれかに記載の粉末組成物。
【0122】
実施形態P.粉末組成物が、粉末中のポリマー材料の重量に基づいて、少なくとも5、少なくとも10、又は少なくとも15wt%の1つ以上の非晶質ポリエステルポリマーを含む、実施形態A〜Oのいずれかに記載の粉末組成物。
【0123】
実施形態Q.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、レーザー焼結部品に形成されるとき、400〜3,000Mpa、又は500〜2,000Mpaの弾性率を有する、実施形態A〜Pのいずれかに記載の粉末組成物。
【0124】
実施形態R.粉末組成物が、粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも5重量パーセントの補強粒子を更に含む、実施形態A〜Qのいずれかに記載の粉末組成物。
【0125】
実施形態S.粉末組成物が、粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも約3重量パーセントの、少なくとも約5:1、少なくとも約10:1、又は少なくとも約20:1のアスペクト比、及び約300マイクロメートル未満の最大寸法を有する補強粒子を含む、実施形態A〜Rのいずれかに記載の粉末組成物。
【0126】
実施形態T.補強粒子の少なくとも一部が、粉末組成物の総重量に基づいて、粉末組成物の少なくとも約1wt%含まれる鉱物粒子である、実施形態R又はSに記載の粉末組成物。
【0127】
実施形態U.鉱物粒子がウォラストナイトを含む、実施形態Tに記載の粉末組成物。
【0128】
実施形態V.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、1つ以上の芳香族基を含む、実施形態A〜Tのいずれかに記載の粉末組成物。
【0129】
実施形態W.少なくとも1つの半結晶質又は結晶質の焼結可能なポリエステルポリマーが、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、更により好ましくは少なくとも20%の結晶化度パーセントを示す、実施形態A〜Vのいずれかに記載の粉末組成物。
【0130】
実施形態X.実施形態A〜Wのいずれかに記載の粉末組成物を焼結させる(例えば、層ごとのプロセスにおいて)ことにより調製される3次元物品。
【0131】
実施形態Y.実施形態A〜Wのいずれかに記載の粉末組成物を選択的にレーザー焼結させて(例えば、層ごとのプロセスにおいて)、3次元物品を形成することにより調製される3次元物品。
【0132】
実施形態Z.実施形態A〜Wのいずれかに記載の粉末組成物の層を提供する工程と、
粉末層の少なくとも一部を選択的に焼結させる工程と、
1つ以上の更なる層を前の層に適用することにより3次元物品を形成する工程と、を含む、方法。
【0133】
試験方法
特に指示しない限り、以下の実施例では以下の試験方法を用いた。破断点伸び、破断点引っ張り強さ、及び引っ張り弾性率試験は、長さ80mm×厚さ4mm×幅10mmの中心部分を有し、かつ試験試料の貫層平面に対して貫層平面方向に配向された焼結層を有する(即ち、HDT試験では、LS試験試料と同様の方向)、国際標準化機構(ISO)3167タイプ1Aの長さ150mmの多目的犬用骨型試験試料を用いて実施した。
【0134】
A.加熱撓み温度
HDT試験は、高温におけるLS物品の機械的特性を評価するためにISO 75−2:2004の方法Aを用いて実施した。ISO 75−2:2004の方法Aに従って、80×10×4ミリメートル(mm)(長さ×幅×厚さ)のLS試験試料の貫層方向に1.8メガパスカル(「MPa」)を適用した。
【0135】
B.破断点伸び
破断点伸び試験は、ISO 527に従って実施した。本発明の粉末組成物から形成されるLS試験試料は、好ましくは少なくとも約3%、より好ましくは少なくとも約5%、更により好ましくは少なくとも約10%の破断点伸びを示す。
【0136】
C.破断点引っ張り強さ
破断点引っ張り強さ試験は、ISO 527に従って実施した。本発明の粉末組成物から形成されるLS試験試料は、好ましくは少なくとも約30MPa、より好ましくは少なくとも約40MPa、更により好ましくは少なくとも約50MPaの破断点引っ張り強さを示す。
【0137】
D.引っ張り弾性率
引っ張り弾性率試験は、ISO 527に従って実施した。
【実施例】
【0138】
本発明を以下の実施例によって例示する。特定の実施例、物質、量及び手順が本明細書で記載された本発明の範囲及び趣旨により広く解釈されるべきであることが理解されるべきである。特に指示のない限り、全ての部及び百分率は重量により、全ての分子量は重量平均分子量である。特に規定のない限り、用いられる全ての化学製品は、例えば、Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouriから市販されている。
【0139】
【表1】
【0140】
実施例1〜9:ポリマー粉末の調製
実施例1〜9の粉末組成物それぞれについて、表1に列挙する材料を、指定の量、Mixaco Mischer CM 150混合器の混合容器に添加し、45秒の長さの混合工程で100毎分回転数(「rpm」)にて乾燥ブレンドすることにより、均質な粉末ブレンドを形成した。成分が全て粉末形態である訳ではない組成物は、O.C.M.製の押出成形機を用いて溶融ブレンドした。SRL製の押出成形機を用いて溶融ブレンドし、粉末に低温粉砕し、次いで残りの粉末成分と乾燥ブレンドした。実施例1、3、4、及び6〜9では、粉末形態で入手可能なAEROSIL R972、FILLEX 2AH3、及びALUMET H30材料を除いて、表1に列挙する成分を一緒に溶融ブレンドした。
【0141】
【表2】
【0142】
1約11,000の数平均分子量を有する半結晶質芳香族ポリエステル。ポリエステルサンプルは、重量により大部分のテレフタル酸及び重量により少量のイソフタル酸を含む酸モノマーと、重量により大部分の1,4ブタンジオール及び重量により少量の1,3プロパンジオールを含むジオールとから誘導される。ポリエステルサンプルは、23J/gの融解熱(DSCにより)を有すると測定され、これは100%結晶質PBTの融解熱を用いたとき、約16%の結晶化度に相当する(即ち、145J/g)。
【0143】
2テレフタル酸、イソフタル酸、及びエチレングリコールのコポリマーであり、約20,000〜25,000の推定数平均分子量、及び実質的に5%未満(例えば、0又は1%未満)であると考えられる結晶化度パーセントを有する非晶質芳香族ポリエステル。
【0144】
3ULTRADUR B2550製品は、28J/gの測定融解熱(DSCにより)を有し、これは100%結晶質PBTの融解熱を用いたとき、19%の結晶化度に相当する(即ち、145J/g)。
【0145】
*材料は、重量部により列挙される。
【0146】
LS物品を作製するための粉末の好適性を評価するために、実施例1〜7及び10のそれぞれの粉末をVANGUARD HS LSシステム(3D Systems of Rock Hill,SC製)のビルド表面に適用し、LS物品を構築するために用いた。約0.1〜0.15mmの層厚さ、約20〜50ワットのレーザー出力設定、及び約0.15mm〜0.40mmのレーザースキャン空間を用いてLS物品を作製した。得られたLS物品は、良好な着色及び解像度を示し、顕著なねじれを示さず、それによって実施例1〜7の粉末は、LS物品の形成に用いるのに好適であることが示された。
【0147】
本発明のLS物品の特性を評価するために、VANGUARD HS LSシステムを用いて実施例1〜7のそれぞれの粉末から試験試料を作製した。実施例1〜7の試験試料は、好適な機械的特性を示した。一般的に、充填試験試料は、無充填試料よりも著しく高いHDTを示した。実施例8及び9は、許容可能な方式で同様に実施されると考えられる。実施例10の粉末から好適な試験試料を作製しようとする試みは、粉末から焼結させた層に関するねじれの問題により成功しなかった。
【0148】
試料及び実施例1〜7の材料に対してDSC試験を実施し、以下のようにT
m、T
c、及びT
g(全て℃)を有することが見出された。
【0149】
【表3】
【0150】
*測定されなかったが、用いたポリマーに基づいて推定した。
【0151】
表2に報告したT
m及びT
g値は、Mettler Toledo Instrument製のモデル822e DSC装置を用いたDSC試験により測定された「ピーク」値に一致する。約7〜15mgに計量したサンプルをアルミニウムのサンプルパンに入れて密封し(レファレンスパンは空であった)、80℃の温度で始まり210℃で終わる、1分間当たり10℃のスキャン速度を用いた。表2に報告したTc値は、210℃の温度で始まり80℃で終わる、1分間当たり10℃のスキャン速度を用いたDSC試験により測定された「ピーク」値である。
【0152】
実施例1〜7についてメルトフロー及びバルク密度を測定し、以下に報告する。
【0153】
【表4】
【0154】
*DIN ISO 1133(5kg/190℃/240秒の予熱)を用いて測定された。
【0155】
実施例1〜7の粉末を、試験物品(即ち、ISO 3167タイプ1A多目的犬用骨型試験試料)にレーザー焼結して、それぞれの材料から形成される物品の機械的特性を評価した。VANGUARD HS LSシステムの機械パラメータは、実施例の粉末それぞれについて既に記載した範囲内で最適化した。試験物品について機械的特性を測定し、以下に報告する。
【0156】
【表5】
【0157】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願及び刊行物並びに電子的に入手可能な資料の完全な開示は、参考として組み込まれる。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確化するためにのみ提示されている。それらから無用の限定を解するべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではない。当業者に対して明らかな変形が「特許請求の範囲」において規定された本発明の範囲に包含されるからである。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
120〜220℃の融点を有する、少なくとも1つの半結晶質又は結晶質芳香族のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーを含む粉末組成物を提供する工程と、
前記粉末組成物を選択的にレーザー焼結させて、3次元物品を形成する工程と、を含む、方法。
[請求項2]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、150℃超〜220℃の融点を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、130℃〜190℃の融点を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、−30〜80℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、150超〜190℃の融点、及び−30〜80℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、150℃未満の再結晶温度を有し、T
mとT
cとの温度差が25℃超である、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はジメチルイソフタレートのうち1つ以上から誘導されるユニットを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、10,000〜80,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
前記粉末組成物が、前記粉末中のポリマー材料の重量に基づいて、50〜100重量パーセントの半結晶質又は結晶質ポリエステルを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記粉末組成物が、少なくとも1つの非晶質ポリエステルポリマーを更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記粉末組成物が、前記粉末中のポリマー材料の重量に基づいて、少なくとも5重量パーセントの1つ以上の非晶質ポリエステルポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、レーザー焼結されたISO 3167タイプ1A多目的犬様骨型試験試料に形成され、ISO 527に従って試験されたとき、少なくとも400MPaの弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
前記粉末組成物が、前記粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも5重量パーセントの補強粒子を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
請求項1に記載の方法により調製される3次元物品。
[請求項15]
150〜220℃の融点を有する、少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーを含む粉末組成物を提供する工程と、
前記粉末組成物を選択的にレーザー焼結させて、3次元物品を形成する工程と、を含む、方法。
[請求項16]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーが、1つ以上の芳香族基を含む、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
2つ以上のレーザー焼結可能なポリエステルポリマーのブレンドを含む粉末組成物を提供する工程であって、
少なくとも1つの前記ポリエステルポリマーが、半結晶質又は結晶質であり、
少なくとも1つの前記ポリエステルポリマーが、非晶質である、工程と、
前記粉末組成物を選択的にレーザー焼結させて、3次元物品を形成する工程と、を含む、方法。
[請求項18]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のポリエステルポリマーが、120〜220℃の融点を有する、請求項17に記載の方法。
[請求項19]
前記少なくとも1つの半結晶質又は結晶質のポリエステルポリマーが、1つ以上の芳香族基を含む、請求項17に記載の方法。
[請求項20]
粉末組成物であって、
少なくとも1つのレーザー焼結可能なポリエステルポリマー粉末と、
前記粉末組成物の総重量に基づいて、少なくとも約3重量パーセントの、少なくとも約5:1のアスペクト比、及び約300マイクロメートル未満の最大寸法を有する補強粒子と、を含み、
前記補強粒子の少なくとも一部が、前記粉末組成物の総重量に基づいて、前記粉末組成物の少なくとも約1重量パーセント含まれる鉱物粒子である、粉末組成物。