特許第5985837号(P5985837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985837
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】X線照射源及びX線照射装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/26 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   H05G1/26 T
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-46845(P2012-46845)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-182816(P2013-182816A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】小杉 典正
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】仲村 竜弥
(72)【発明者】
【氏名】藤田 澄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】鵜嶋 秋臣
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−089995(JP,A)
【文献】 特開2006−236934(JP,A)
【文献】 特開2004−276654(JP,A)
【文献】 特開2002−127962(JP,A)
【文献】 特開2002−100498(JP,A)
【文献】 特開2003−51397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生させるX線管と、前記X線管の寿命を検知する寿命検知回路と、前記寿命検知回路によって寿命が検知されたことを外部に表示する表示回路と、外部接続用の出力端子と、を備えるX線照射源であって、
前記寿命検知回路は、寿命を検知したときに前記表示回路に電力を供給する寿命報知出力部を有し、
前記表示回路は、前記寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子と、前記発光素子に対して並列に接続され、前記寿命報知出力部から供給された電力を受けて蓄電されるコンデンサと、を有し、
前記寿命報知出力部は、前記表示回路に電力を供給すると共に、前記出力端子に前記X線管の寿命に関する寿命報知信号を出力することを特徴とするX線照射源。
【請求項2】
前記寿命報知出力部から前記表示回路に向かう一方向に電流を通す整流素子を更に備えることを特徴とする請求項1記載のX線照射源。
【請求項3】
前記寿命報知出力部から前記出力端子に向かう一方向に電流を通す整流素子を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載のX線照射源。
【請求項4】
前記寿命検知回路は、前記X線管の駆動電流の値と予め設定された閾値とを比較し、前記駆動電流の値と前記閾値との大小関係に基づいて前記X線管の寿命を検知することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のX線照射源。
【請求項5】
前記寿命検知回路は、前記X線管の駆動電圧の値と予め設定された閾値とを比較し、前記駆動電圧の値と前記閾値との大小関係に基づいて前記X線管の寿命を検知することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のX線照射源。
【請求項6】
前記寿命検知回路は、前記X線管の寿命が検知されていないときに、前記表示回路に電力を供給する非寿命報知出力部を更に有し、
前記表示回路は、前記非寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子を更に有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のX線照射源。
【請求項7】
前記コンデンサは、電気二重層コンデンサであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のX線照射源。
【請求項8】
X線を発生させるX線管と、前記X線管の寿命を検知する寿命検知回路と、前記寿命検知回路によって寿命が検知されたことを外部に表示する表示回路と、を有する複数のX線照射源と、
前記X線照射源を制御する制御回路を有するコントローラと、を備えたX線照射装置であって、
前記寿命検知回路は、寿命を検知したときに前記表示回路に電力を供給する寿命報知出力部を有し、
前記表示回路は、前記寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子と、前記発光素子に対して並列に接続され、前記寿命報知出力部から供給された電力を受けて蓄電されるコンデンサと、を有することを特徴とするX線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射源及びX線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を発生させるX線管を有する複数のX線照射ユニット(X線照射源)を備えたX線照射装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このようなX線照射装置は、例えば、空気等の気体にX線を照射してイオンガスを生成し、対象物の除電を行う除電装置として用いられる。除電装置としてのX線照射装置は、IC(集積回路)、LCD(液晶表示装置)、又はPDP(プラズマディスプレイパネル)等の製造を始めとした幅広い分野で採用されている。
【0003】
このようなX線照射装置に用いられるX線管には寿命が存在する。このため、寿命となったX線管を随時交換していく必要がある。寿命となったX線管の存在を見落とさずに交換するには、X線管の寿命を外部に報知する手段を付加することが有効である。
【0004】
寿命を報知する技術としては、X線管の動作時間が基準時間を越えたときにX線管が寿命となったと判断し、モニタ表示、光、又は音によって警告を発するX線画像診断装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−338965号公報
【特許文献2】特開2003−51397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたX線照射装置において、寿命となったX線管を交換するときには、交換作業時の安全を確保するために、X線照射装置の電源を切り、X線管の動作を完全に停止させる必要がある。これに対し、特許文献2に記載された技術では、電源が切られると、寿命を報知する手段にも電力が供給されなくなるため、電源が切られた後に寿命の報知を継続させることが困難である。つまり、電源と接続している場合には寿命の報知が可能だが、電源が切られた場合には寿命の報知ができないというように、電源からの給電状況によって、寿命の報知の可否が発生する。
【0007】
X線照射装置の電源が切られた後に、X線管の寿命の報知を継続させることができないと、いずれのX線照射ユニットのX線管が交換対象であるのかを作業現場で識別することができない。仮に、X線照射装置の電源を切る前に、いずれのX線管(又はX線照射ユニット)が交換対象であるのかを記録しておいたとしても、作業現場での識別は容易ではない場合もあり、X線管の交換作業が煩雑となる。
【0008】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、電源からの給電状況に係わらず、X線管の寿命の報知を確実に行うことができるX線照射源及びX線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るX線照射装置は、X線を発生させるX線管と、X線管の寿命を検知する寿命検知回路と、寿命検知回路によって寿命が検知されたことを外部に表示する表示回路と、を備えるX線照射源であって、寿命検知回路は、寿命を検知したときに表示回路に電力を供給する寿命報知出力部を有し、表示回路は、寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子と、発光素子に対して並列に接続され、寿命報知出力部から供給された電力を受けて蓄電されるコンデンサと、を有することを特徴とする。
【0010】
このようなX線照射源によれば、寿命検知回路によってX線管の寿命が検知された場合に、寿命報知出力部によって寿命表示回路に電力が供給され、発光素子が発光することによって外部にX線発生源の寿命が報知される。更に、このX線照射源では、寿命報知出力部から供給された電力を受けてコンデンサが蓄電される。従って、X線照射源の電源が切られた場合でも、コンデンサに蓄積されていた電力によって発光素子の発光が継続するため、X線管の寿命の報知を確実に行うことができる。
【0011】
ここで、寿命報知出力部から表示回路に向かう一方向に電流を通す整流素子を更に備えることが好ましい。この場合、コンデンサに蓄積されていた電力が、X線照射源の電源が切られた後に寿命検知回路を通して放電されることを防止し、発光素子を確実に発光させることができる。
【0012】
また、外部接続用の出力端子を更に備え、寿命報知出力部は、表示回路に電力を供給すると共に、出力端子にX線管の寿命に関する寿命報知信号を出力することが好ましい。この場合、寿命を報知する手段を有する外部機器を出力端子に接続し、外部機器を通してX線管の寿命を報知することができる。
【0013】
また、寿命報知出力部から出力端子に向かう一方向に電流を通す整流素子を更に備えることが好ましい。この場合、出力端子に接続された外部機器で発生した電力が、寿命報知出力部を経て表示回路に流入することが防止される。これにより、寿命が検知されていないときに発光素子が発光してしまうことを確実に防止することができる。
【0014】
また、寿命検知回路は、X線管の駆動電流の値と予め設定された閾値とを比較し、駆動電流の値と閾値との大小関係に基づいてX線管の寿命を検知することが好ましい。また、寿命検知回路は、X線管の駆動電圧の値と予め設定された閾値とを比較し、駆動電圧の値と閾値との大小関係に基づいてX線管の寿命を検知することも好ましい。この場合、一律な基準に基づいて、X線管の寿命を明確に検知することができる。
【0015】
また、寿命検知回路は、X線管の寿命が検知されていないときに、表示回路に電力を供給する非寿命報知出力部を更に有し、表示回路は、非寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子を更に有することが好ましい。この場合、X線管の寿命が検知されていないときには、非寿命報知出力部から供給された電力で発光する発光素子によってX線管の駆動を報知することができる。
【0016】
また、コンデンサは、電気二重層コンデンサであることが好ましい。この場合、コンデンサの蓄電効率が高くなる。このため、短い時間で多くの電力がコンデンサに蓄積され、X線照射源の電源が切られた後に発光素子をより長時間発光させることができる。
【0017】
本発明に係るX線照射装置は、X線を発生させるX線管と、X線管の寿命を検知する寿命検知回路と、寿命検知回路によって寿命が検知されたことを外部に表示する表示回路と、を有する複数のX線照射源と、X線照射源を制御する制御回路を有するコントローラと、を備えたX線照射装置であって、寿命検知回路は、寿命を検知したときに表示回路に電力を供給する寿命報知出力部を有し、表示回路は、寿命報知出力部から供給された電力によって発光する発光素子と、発光素子に対して並列に接続され、寿命報知出力部から供給された電力を受けて蓄電されるコンデンサと、を有することを特徴とする。
【0018】
このようなX線照射装置によれば、寿命検知回路によってX線管の寿命が検知された場合に、寿命報知出力部によって寿命表示回路に電力が供給され、発光素子が発光することによって外部にX線管の寿命が報知される。更に、このX線照射装置では、寿命報知出力部から供給された電力を受けてコンデンサが蓄電される。従って、X線照射装置の電源が切られた場合でも、コンデンサに蓄積されていた電力によって発光素子の発光が継続するため、X線管の寿命の報知を確実に行うことができる。これにより、X線照射装置の電源が切られた後にも、いずれのX線照射源のX線管が交換対象であるのかを識別することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るX線照射源及びX線照射装置によれば、電源からの給電状況に係わらず、X線管の寿命の報知を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るX線照射ユニット(X線照射源)を含んで構成されるX線照射装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示したX線照射装置の機能的な構成要素を示すブロック図である。
図3図1に示したX線照射ユニットの斜視図である。
図4図3に示したX線照射ユニットの平面図である。
図5図4中のV線矢視図である。
図6図4中のVI線矢視図である。
図7図4中のVII−VII線に沿う断面図である。
図8図1に示したX線照射装置の概略回路図である。
図9図1に示したX線照射ユニットの回路図である。
図10図1に示したX線照射装置の動作手順を示すフローチャートである。
図11】X線照射ユニットの変形例を示す回路図である。
図12】X線照射ユニットの他の変形例を示す回路図である。
図13図12に示したX線照射ユニットを含んで構成されるX線照射装置の動作手順を示すフローチャートである。
図14】X線照射ユニットの他の変形例を示す回路図である。
図15】寿命表示窓の他の配置例を示す図である。
図16】寿命表示窓の他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るX線照射源及びX線照射装置の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るX線照射ユニット(X線照射源)を含んで構成されるX線照射装置の一実施形態を示す斜視図である。同図に示すX線照射装置1は、例えば大型ガラス等を取り扱う製造ラインにおいてクリーンルーム等に設置され、X線の照射によって大型ガラス等の除電を行うフォトイオナイザ(光照射式除電装置)として構成されている。
【0022】
このX線照射装置1は、X線を照射する複数のX線照射ユニット(X線照射源)3と、X線照射ユニット3を制御するコントローラ4と、X線照射ユニット3を並べて保持するレール部材2とを備えて構成されている。レール部材2は、断面略コの字状のチャネル部2aと、チャネル部2aの幅方向の両端部から側方に突出するフランジ部2b,2bとを有している。レール部材2は、例えば金属によって形成されており、複数のX線照射ユニット3を保持するために十分な強度が確保されている。複数のX線照射ユニット3は、レール部材2の長手方向に沿って、所望の間隔、例えば等間隔となるように配置されている。除電の対象物は、X線照射ユニット3のX線出射面M1(後述)側に配置される。レール部材2の長さやX線照射ユニット3の個数、配置間隔等は、対象物の大きさや数、形状に合わせて適宜変更される。
【0023】
図2は、X線照射装置1の機能的な構成要素を示すブロック図である。同図に示すように、コントローラ4は、X線照射ユニット3を制御する制御回路23を有している。この制御回路23は、入出力端子24によってX線照射ユニット3等との外部接続が可能となっている。なお、本実施形態においては、各X線照射ユニット3へ供給する電力は一定とし、各X線照射ユニット3の照射条件を揃えたりするためのフィードバック制御等の供給電力の制御は行わない。
【0024】
一方、X線照射ユニット3は、X線を発生させるX線管6と、電源回路23a(後述)から供給される電圧を昇圧させる高圧発生モジュール21と、X線管6及び高圧発生モジュール21を駆動する駆動回路15とを有している。駆動回路15には、幹配線22が接続されており、幹配線22は、その両端に設けられた入出力端子7及び入出力端子8によって他のX線照射ユニット3やコントローラ4等と外部接続が可能となっている。
【0025】
そして、X線照射装置1では、図1及び2に示すように、一のX線照射ユニット3の入出力端子8が、可撓性を有する中継ケーブル25を介して隣接する他のX線照射ユニット3の入出力端子7に着脱自在に接続される。先端のX線照射ユニット3に至るまで、各X線照射ユニット3同士が同様に接続されていく一方で、コントローラ4の入出力端子24が、中継ケーブル25を介して基端のX線照射ユニット3の入出力端子7に着脱自在に接続されている。これにより、各X線照射ユニット3の幹配線22が制御回路23に対して直列に接続され、各X線照射ユニット3の駆動回路15が制御回路23に対して並列に接続されている。
【0026】
よって、一のX線照射ユニット3の入出力端子7から入力される電圧の値と入出力端子8から出力される電圧の値とは等しい。また、一のX線照射ユニット3の入出力端子8から出力される電圧の値、一のX線照射ユニット3に電気的に接続される他のX線照射ユニット3の入出力端子7から入力される電圧、及びそのX線照射ユニット3の入出力端子8から出力される電圧の値はいずれも等しい。このように、複数のX線照射ユニット3を一列に連ねる場合においても、全てのX線照射ユニット3に等しい値の電圧を供給することができる。そのため、各X線照射ユニット3同士を電気的に接続することができ、各X線照射ユニット3毎に、後述する電源回路23aを含むコントローラ4の制御回路23と接続させる必要がない。このため、配線を煩雑化させることなくX線照射ユニット3の数の増減が可能となる。
【0027】
このように、X線照射ユニット3同士、及びX線照射ユニット3とコントローラ4とは、中継ケーブル25を介して着脱自在に接続されているため、ユニット数の増減が容易となっている。また、中継ケーブル25の長さを調整することや、中継ケーブル25を屈曲させることにより、ユニット同士の間隔の調整や配置の変更が容易となっている。
【0028】
続いて、上述したX線照射ユニット3の構成について詳細に説明する。
【0029】
図3は、図1に示したX線照射ユニットの斜視図である。また、図4は、図3に示したX線照射ユニットの平面図である。図5は、図4中のV線矢視図、図6は、図4中のVI線矢視図であり、図7は、図4中のVII−VII線に沿う断面図である。図3図7に示すように、各X線照射ユニット3は、ステンレスやアルミニウム等を用いた金属製の略直方体形状の筐体5内に、上述のX線管6、駆動回路15、高圧発生モジュール21、入出力端子7、及び入出力端子8等を収容したものである。筐体5によってX線照射ユニット3への物理的な衝撃や電磁波ノイズ等に対するシールドが構成されている。
【0030】
筐体5は、互いに対向する略長方形の壁部5a及び壁部5bと、壁部5a及び壁部5bの短辺側に位置して互いに対向する一対の側壁部5c,5dと、壁部5a,5bの長辺側に位置して互いに対向する一対の側壁部5e,5fとを有している。
【0031】
壁部5aには、壁部5aの長辺方向に延びた長尺状の開口5gが形成されている。壁部5aの内側では、開口5gに対応する位置にX線管6が配置されている(図3参照)。X線管6で発生したX線は、X線出射部W1となる開口5gを通して筐体5の外部に出射される。すなわち、壁部5aの外面は、X線管6で発生したX線が出射するX線出射部W1を備えたX線出射面M1となっている。また、壁部5bの外面は、X線出射面M1に対向する背面M2となっている。側壁部5c,5dの外面は、X線出射面M1に交差し互いに対向する一対の側面M3,M4となっている。側壁部5e,5fの外面は、X線出射面M1に交差し互いに対向する一対の側面M5,M6となっている。
【0032】
側壁部5cには、開口5hが形成されている。側壁部5cの内側では、開口5hに対応する位置に入出力端子7が配置されている(図5参照)。入出力端子7は、開口5hを通して筐体5の外部に開口している。側壁部5dには、開口5jが形成されている。側壁部5dの内側では、開口5jに対応する位置に入出力端子8が配置されている(図6参照)。入出力端子8は、開口5jを通して筐体5の外部に開口している。このようにして、入出力端子7及び入出力端子8は、筐体5のX線出射面M1に交差する筐体5の側面M3,M4でそれぞれ開口していることから、入出力端子7及び入出力端子8に接続された中継ケーブル25がX線の出射方向に延出し難い。このため、中継ケーブル25がX線出射の妨げになることを防止することができる。また、X線出射部W1の延在する方向に沿って中継ケーブル25で接続できるので、長尺状の照射領域を形成しやすく、加えて、レール部材2に保持された状態での中継ケーブル25の着脱も容易となる。入出力端子7及び入出力端子8は、例えばミニUSB等のコネクタである。
【0033】
側壁部5cには、更に寿命表示窓5kが形成され、筐体5の内部には発光素子である寿命表示LED9が配置されている。寿命表示LED9は、後述するように、X線管6の寿命が検知されたときに可視光を発生する素子である。寿命表示LED9は、寿命表示窓5kから筐体5の外部に可視光を出射する。
【0034】
筐体5は、背面M2がレール部材2に対向すると共に、一対の側面M3,M4の対向方向がレール部材2に沿うように配置され、2個の継手部材10を介してレール部材2に取り付けられている。これにより、筐体5のX線出射面M1の長辺とレール部材2とが平行となるため、レール部材2の幅方向へのX線照射装置1の広がりを抑制し、省スペース化を図ることができる。また、側面M3,M4の対向方向が、レール部材2の延在方向に沿うことから、隣り合うX線照射ユニット3の入出力端子7と入出力端子8とが対向している。これにより、X線照射ユニット3と中継ケーブル25とがレール部材2の延在方向に沿って交互に並ぶため、X線照射ユニット3の数の増減が容易であるとともに、レール部材2の幅方向へのX線照射装置1の広がりを抑制し、省スペース化を図ることができる。
【0035】
各継手部材10は、樹脂等の弾性を持った絶縁性の材料からなる。各継手部材10は、レール部材2の幅と略等長で断面矩形の棒状をなす本体部10bと、本体部10bの両端にそれぞれ形成された爪部10a,10aとを有している。本体部10bを背面M2に対してネジ止め等で固定し、爪部10a,10aを弾性を生かしてレール部材2のフランジ部2b,2bの端部にそれぞれ係合させることで、X線照射ユニット3がレール部材2に対して着脱自在かつレール部材2に対して摺動自在に取り付けられる。金属からなるレール部材2には外部要因による電気ノイズが伝わり、それを筐体5へ伝えてしまう可能性が生じ得るが、絶縁性の材料からなる継手部材10によってレール部材2と筐体5との間の電気的な接続を遮断し、レール部材2から筐体5への電気ノイズの伝わりが防止される。従って、X線照射ユニット3の動作を安定させることができる。
【0036】
なお、図1に示すように、X線照射ユニット3,3間に継手部材10を更に取り付け、X線照射ユニット3,3間を結ぶ中継ケーブル25の中間部分を継手部材10によってレール部材2に結束させてもよい。このように継手部材10を利用することで、中継ケーブル25をレール部材2近傍に保持し、中継ケーブル25が除電の対象物へのX線照射の妨げになることをより確実に防止することができる。
【0037】
図7に示すように、筐体5内には、X線管6及び駆動回路15を搭載した基板11と、高圧発生モジュール21を搭載した基板12とが、壁部5a及び壁部5bに平行に配置されている。基板11,12は、壁部5a側から壁部5b側に向かって順に並んでいる。基板11及び12は、スペーサ13を介して互いに固定され、基板12はスペーサ14を介して壁部5bに固定されている。
【0038】
X線管6は、電子ビームを発生するフィラメント17と、電子ビームを加速するグリッド18とを、真空容器16内に収容したものである。真空容器16は、壁部5a側に位置する壁部16aと、基板11側に位置して壁部16aに対向する壁部16bと、壁部16a及び壁部16bの外縁に沿う側壁部16cとを有している。
【0039】
フィラメント17は、壁部16b側に配置され、グリッド18は壁部16aとフィラメント17との間に配置されている。壁部16aには、開口16dが形成されている。壁部16aの外面には、開口16dを封止するように、例えばベリリウムやシリコン、チタン等のX線透過性が良く、導電性を備えた材料からなる窓材19が密着固定され、X線出射窓W2となっている。窓材19の内面のうち、少なくとも開口16dに対応する部分にはターゲット20が形成されている。ターゲット20は、例えばタングステン等からなり、電子ビームの入射に応じてX線を発生する。X線管6は、X線出射窓W2が、筐体5の開口5g(X線出射部W1)の範囲内に位置するように基板11に配置されており、その周囲に駆動回路15が配置されている。
【0040】
駆動回路15によりX線管6が駆動されると、グリッド18によって引き出された、フィラメント17からの電子ビームがターゲット20に向かって加速され、ターゲット20に入射する。ターゲット20に電子ビームが入射するとX線が発生する。発生したX線は、X線出射窓W2を透過して真空容器16の外部に出射され、更に開口5g(X線出射部W1)を通って筐体5の外部に出射される。このようにして、X線照射ユニット3からX線が照射される。
【0041】
続いて、X線照射装置1の回路構成について説明する。
【0042】
図8は、図1に示したX線照射装置の概略回路図である。同図に示すように、制御回路23は、電源回路23aと、制御信号送信回路23bと、寿命報知信号受信回路23cと、報知回路23dとを有している。電源回路23aは、駆動回路15に向かって電力を供給する。制御信号送信回路23bは、X線管6の駆動及び停止を指示する制御信号を送信する。寿命報知信号受信回路23cは、X線管6の寿命に関する寿命報知信号を受信する。報知回路23dは、寿命報知信号受信回路23cが寿命報知信号を受信したことをLED等の発光素子等や画面表示によって視覚的に表示したり、警告音等を発することで聴覚的に表示したりする。電源回路23a、制御信号送信回路23b、及び寿命報知信号受信回路23cは、それぞれ入出力端子24に接続されている。
【0043】
X線照射ユニット3の幹配線22は、一対の送電線22a,22aと、制御信号線22bと、寿命報知信号線22cとを有している。送電線22a,22aは、駆動回路15に向けて電力を伝え、例えば一方は24Vを供給する高圧線として機能し、他方は0Vを供給する接地線として機能する。制御信号線22bは、制御信号送信回路23bから送信された制御信号を駆動回路15に向けて伝える。寿命報知信号線22cは、X線管6の寿命に関する寿命報知信号を寿命報知信号受信回路23cに向けて伝える。送電線22a、制御信号線22b、及び寿命報知信号線22cの両端部は、それぞれ入出力端子7及び入出力端子8に接続されている。
【0044】
中継ケーブル25は、一対の送電中継線25a,25aと、制御信号中継線25bと、寿命報知信号中継線25cとを有している。送電中継線25aは、送電線22a同士、又は送電線22aと電源回路23aとを接続している。制御信号中継線25bは、制御信号線22b同士、又は制御信号線22bと制御信号送信回路23bとを接続している。寿命報知信号中継線25cは、寿命報知信号線22c同士、又は寿命報知信号線22cと寿命報知信号受信回路23cとを接続している。
【0045】
図9は、図1に示したX線照射ユニットの回路図である。同図に示すように、X線照射ユニット3の駆動回路15は、駆動制御回路15aと、寿命検知回路15bと、表示回路15cとを有している。駆動制御回路15aは、送電線22a及び制御信号線22bに接続されている。送電線22aから駆動制御回路15aには、X線管6を駆動するための電力が供給される。駆動制御回路15aは、制御信号線22bから制御信号を受信してX線管6の駆動及び停止を制御する。
【0046】
寿命検知回路15bは、オペアンプ回路31及び比較回路32を有している。
オペアンプ回路31は、入力部31a及び出力部31bを有し、入力部31aに入力された電圧を増幅して出力部31bから出力する。なお、本実施形態においては、X線管6において、ターゲット20に入射した電子の量を示すターゲット電流(駆動電流)を寿命判定に用いる。フィラメント17の劣化やスパッタ物等の異物によるフィラメント17とグリッド18との間の耐電圧低下等によって、ターゲット20への入射電子量が減少すると(つまりターゲット電流が低下すると)、X線量が低下するために、ターゲット電流を寿命の判定に用いることができる。X線管6からのターゲット電流は、X線管6と寿命検知回路15bとをつなぐ経路に流れ、その経路には、抵抗33が配置されており、抵抗33の両端部にターゲット電流に比例した電圧が生じるようになっている。入力部31aには、抵抗33の両端部に生じた電圧が入力される。これにより、X線管6のターゲット電流に比例した電圧が出力部31bから出力される。
【0047】
比較回路32は、一対の入力部32a,32b及び一対の出力部32c,32dを有し、入力部32aに入力された電圧と入力部32bに入力された電圧とを比較し、比較結果に応じた電圧を出力部32c,32dから出力する。具体的には、入力部32aに入力された電圧が入力部32bに入力された電圧以下であるときには、出力部32dの電圧を0Vとすると共に、出力部32cから0Vよりも高い電圧を出力する。入力部32aに入力された電圧が入力部32bに入力された電圧よりも高いときには、出力部32cの電圧を0Vとすると共に、出力部32dから0Vよりも高い電圧を出力する。
【0048】
比較回路32の入力部32aには、オペアンプ回路31の出力部31bの電圧が入力される。一方、入力部32bには、予め設定された電圧が入力される。そして、X線管6のターゲット電流に比例した電圧と、予め設定された電圧とが比較される。すなわち、X線管6のターゲット電流の値と予め設定された閾値とが比較され、X線管6のターゲット電流の値と閾値との大小関係に基づいてX線管6の寿命が検知される。このように、一律な基準に基づくことで、X線管6の寿命を明確に検知することができる。
【0049】
ここでは、X線管6のターゲット電流の値が閾値以下となるときに、X線管6の寿命が検知される。閾値は、例えば、ターゲット電流の定格値の70〜90%の値とされている。X線管6のターゲット電流の値が閾値以下であるときには、出力部32dの電圧が0Vとなると共に、出力部32cから0Vよりも高い電圧が出力される。X線管6のターゲット電流の値が閾値よりも高いときには、出力部32cの電圧が0Vとなると共に、出力部32dから0Vよりも高い電圧が出力される。
【0050】
表示回路15cは、発光素子である寿命表示LED9と、寿命表示LED9に対して並列に接続されたコンデンサ28とを有している。寿命表示LED9のカソード側とコンデンサ28の負極側は、ともに接地されている。コンデンサ28は、電気二重層コンデンサである。寿命表示LED9及びコンデンサ28は、整流素子であるダイオード29を介して、比較回路32の出力部32cに接続されている。ダイオード29は、出力部32cから表示回路15cに一方向に電流を通す。比較回路32が出力部32cから電圧を出力すると、寿命表示LED9及びコンデンサ28に電力が供給される。すなわち、出力部32cは、X線管6の寿命を検知したときに、表示回路15cに電力を供給する寿命報知出力部となっている。寿命表示LED9は、出力部32cから供給された電力によって可視光を発生する。コンデンサ28は、出力部32cから供給された電力の一部を受けて蓄電される。
【0051】
寿命表示LED9及びコンデンサ28に接続された出力部32cは、整流素子であるダイオード30を介して、幹配線22の寿命報知信号線22cに更に接続されている。ダイオード30は、出力部32cから寿命報知信号線22cに一方向に電流を通す。比較回路32が出力部32cから出力する電圧は、X線管6の寿命に関する寿命報知信号として寿命報知信号線22cに出力される。
【0052】
続いて、X線照射装置1の動作を説明する。
【0053】
図10は、図1に示したX線照射装置の動作手順を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、コントローラ4の制御信号送信回路23bが、X線管6の駆動を指示する制御信号を送信し(ステップS1)、全てのX線照射ユニット3の駆動制御回路15aがその制御信号を受信する(ステップS2)。駆動制御回路15aは、制御信号の受信に応じ、高圧発生モジュール21を介してX線管6を駆動する。これにより、全てのX線照射ユニット3がX線の出射を開始する(ステップS3)。除電の対象物は、X線照射ユニット3のX線出射面M1側に配置される。X線照射ユニット3は、X線照射ユニット3と対象物との間に介在する空気等の気体にX線を照射し、イオンガスを生成する。このイオンガスによって、対象物が除電される。
【0054】
次に、寿命検知回路15bが、X線管6のターゲット電流の値と閾値とを比較する(ステップS4)。X線管6のターゲット電流が閾値よりも高い場合には、X線の照射を継続する。X線管6のターゲット電流が閾値以下である場合には、比較回路32の出力部32cから0Vよりも高い電圧が出力される。これにより、表示回路15cに電力が供給されると共に、寿命報知信号が出力される(ステップS5)。
【0055】
表示回路15cに電力が供給されると、寿命表示LED9が発光し(ステップS6)、コンデンサ28が蓄電される(ステップS7)。X線管6の寿命が検知されていないX線照射ユニット3では、他のX線照射ユニット3で発生した電力が出力部32cを経て表示回路15cに流入することが、ダイオード30によって防止されるため、寿命表示LED9の発光が防止される。これにより、寿命報知信号がいずれのX線照射ユニット3から送信されたのかを管理者等に報知することができる。
【0056】
また、寿命報知信号が出力されると、制御回路23の寿命報知信号受信回路23cが、寿命報知信号線22c及び寿命報知信号中継線25cを介して寿命報知信号を受信する(ステップS8)。寿命報知信号が寿命報知信号受信回路23cで受信されると、報知回路23dによって寿命報知信号を受信したことが表示される(ステップS9)。これにより、コントローラ4を通して寿命報知信号の受信を管理者等に報知することができる。
【0057】
X線管6を交換するためにX線照射装置1の電源が切られると(ステップS10)、コンデンサ28に蓄積されていた電力が寿命表示LED9に向かって放電され(ステップS11)、その電力によって寿命表示LED9の発光が継続する(ステップS12)。これにより、X線照射装置1の電源が切られた後も、寿命報知信号がいずれのX線照射ユニット3から送信されたのかを管理者等に報知することができる。このとき、コンデンサ28に蓄積されていた電力が寿命検知回路15bを通して放電されることが、ダイオード29によって防止されるため、コンデンサ28に蓄積されていた電力を確実に寿命表示LED9に供給し、発光させることができる。また、コンデンサ28は電気二重層コンデンサであり、蓄電効率が高いため、短い時間で多くの電力がコンデンサ28に蓄積され、寿命表示LED9の発光をより長時間継続させることができる。なお、X線管6の寿命が検知されていないX線照射ユニット3では、コンデンサ28に電力が蓄積されていないため、寿命表示LED9は発光しない。
【0058】
以上説明したように、X線照射装置1によれば、寿命検知回路15bによってX線管6の寿命が検知された場合に、比較回路32の出力部32cによって表示回路15cに電力が供給され、寿命表示LED9が発光することによって外部にX線管6の寿命が報知される。また、出力部32cから供給された電力の一部を受けてコンデンサ28が蓄電される。従って、X線照射装置1の電源が切られた場合に、コンデンサ28に蓄積されていた電力によって寿命表示LED9の発光が継続するため、X線管6の寿命の報知を継続させることができる。これにより、X線照射装置1の電源からの給電状況に係わらず、特に電源が切られた後にも、いずれのX線照射ユニット3のX線管6が交換対象であるのかを識別することができる。
【0059】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
【0060】
図11は、X線照射ユニット3の変形例を示す回路図である。同図に示す変形例は、ターゲット電流の代わりに管電圧(駆動電圧)を寿命判定に用いるものである。管電圧は、高圧発生モジュール21によって、フィラメント17とターゲット20との間に印加される電圧である。フィラメント17とターゲット20との間の耐電圧低下等によって、管電圧が低下すると、X線量が低下するために、管電圧を寿命の判定に用いることができる。
【0061】
管電圧を寿命の判定に用いることができる程度に降圧するために、高圧発生モジュール21には降圧回路35が接続されており、降圧回路35には管電圧が印加される。降圧回路35は、直列に接続された2つの抵抗35a,35bを有している。降圧回路35の抵抗35a側の端部は高圧発生モジュール21に接続され、降圧回路35の抵抗35b側の端部は接地されている。管電圧は、抵抗35aの抵抗値と抵抗35bの抵抗値との比に応じて分圧される。これにより、降圧回路35は、管電圧を一定比率で降圧し、その電圧を抵抗35aと抵抗35bとの間から出力する。管電圧を降圧する比率は、抵抗35aの抵抗値と抵抗35bの抵抗値との合計値に対する抵抗35bの抵抗値の比率である。なお、管電圧を十分に降圧するために、抵抗35aの抵抗値は抵抗35bの抵抗値よりも高いことが好ましい。
【0062】
降圧回路35から出力された電圧は、ターゲット電流に比例した電圧の代わりにオペアンプ回路31の入力部31aに入力される。オペアンプ回路31の出力部31bの電圧は、比較回路32の入力部32aに入力される。一方、比較回路32の入力部32bには、予め設定された電圧が入力される。そして、X線管6の管電圧に比例した電圧と、予め設定された電圧とが比較される。すなわち、X線管6の管電圧の値と予め設定された閾値とが比較され、X線管6の管電圧の値と閾値との大小関係に基づいてX線管6の寿命が検知される。ここでは、X線管6の管電圧の値が閾値以下となるときに、X線管6の寿命が検知される。閾値は、例えば、X線管6の管電圧の定格値の85〜95%の値とされている。この変形例によっても、一律な基準に基づいて、X線管6の寿命を明確に検知することができる。
【0063】
図12は、X線照射ユニット3の他の変形例を示す回路図である。同図に示す変形例は、発光素子である非寿命表示LED34を表示回路15cに追加したものである。非寿命表示LED34は、比較回路32の出力部32dに接続されている。出力部32dからは、X線管6のターゲット電流が閾値よりも高いときに、0Vよりも高い電圧が出力され、非寿命表示LED34に電力が供給される。すなわち、出力部32dは、X線管6の寿命が検知されていないときに、表示回路15cに電力を供給する非寿命報知出力部となっている。
【0064】
図13は、図12に示したX線照射ユニットを含んで構成されるX線照射装置の動作手順を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、上述したステップS1〜S3と同じ手順で、全てのX線照射ユニット3がX線の出射を開始する(ステップS21〜S23)。次に、寿命検知回路15bが、X線管6のターゲット電流の値と閾値とを比較する(ステップS24)。X線管6のターゲット電流が閾値よりも高い場合には、出力部32dから非寿命表示LED34に電力が供給され(ステップS25)、非寿命表示LED34が発光する(ステップS26)。X線管6のターゲット電流が閾値以下である場合には、出力部32cから0Vよりも高い電圧が出力される。これにより、表示回路15cに電力が供給されると共に、寿命報知信号が出力される(ステップS27)。このとき、出力部32dの電圧は0Vとなり、非寿命表示LED34の発光が停止する。以降のステップS28〜S34は、上述したステップS6〜S12と同じである。
【0065】
この変形例では、X線管6の寿命が検知されていないときに、X線管6の駆動を管理者等に報知することができる。
【0066】
図14は、X線照射ユニット3の他の変形例を示す回路図である。同図に示す変形例は、二つの比較回路32を互いに並列に接続し、一方の比較回路32においてX線管6のターゲット電流の値と第1の閾値とを比較し、他方の比較回路32においてX線管6のターゲット電流の値と第1の閾値よりも高い第2の閾値とを比較するものである。
【0067】
一方の比較回路32では、X線管6のターゲット電流の値が第1の閾値以下であるときに、出力部32dの電圧が0Vとなると共に、出力部32cから0Vよりも高い電圧が出力される。X線管6のターゲット電流の値が第1の閾値よりも高いときには、出力部32cの電圧が0Vとなると共に、出力部32dから0Vよりも高い電圧が出力される。
【0068】
他方の比較回路32では、X線管6のターゲット電流の値が第2の閾値以上であるときに、出力部32dの電圧が0Vとなると共に、出力部32cから0Vよりも高い電圧が出力される。X線管6のターゲット電流の値が第2の閾値よりも小さいときには、出力部32cの電圧が0Vとなると共に、出力部32dから0Vよりも高い電圧が出力される。
【0069】
すなわち、X線管6のターゲット電流の値が第1の閾値より高く且つ第2の閾値よりも低いときには、両方の比較回路32の出力部32cの電圧が0Vとなる。X線管6のターゲット電流の値が第1の閾値以下であるか、第2の閾値以上であるときには、出力部32dから0Vよりも高い電圧が出力される。従って、この変形例では、一点の閾値に対する大小関係による判定ではなく、大小二点の閾値、つまり定格値に対して設定した所定範囲(例えば70〜130%)を外れた場合を寿命とするような判定を行うことができる。
【0070】
これにより、例えばX線管6の使用に伴って、フィラメント17の劣化やスパッタ物等の異物によるフィラメント17とグリッド18との間の耐電圧低下等が生じた場合には、ターゲット電流の値が第1の閾値を下回ったことを基準にして寿命を判定することができる。一方、例えばX線管6の使用に伴う何らかの原因によってターゲット電流の異常上昇が生じた場合には、ターゲット電流の値が第2の閾値を上回ったことを基準にして寿命を判定することができる。このように、ターゲット電流の異常上昇によっても寿命を判定することで、X線管6の消費電力が電源回路23aの容量を超えてしまい、定格動作ができなくなるといった問題を防止することができる。
【0071】
なお、上述した実施形態及び各変形例において、寿命検知回路15bは、長期間の使用によるX線管6の構成部材の消耗等に起因して、所定の駆動条件を満たさなくなることのみを寿命として検出するのではなく、使用期間の長短に係わらず、例えばX線管6(真空容器16)の真空リークやフィラメント17の断線といった使用中の予期せぬ破損等による不具合によって、所定の駆動条件を満たさなくなることも寿命として検出する。また、寿命検知回路15bは、X線管6が最初から不具合を有している場合や、X線照射ユニット3の駆動制御回路15aや高圧発生モジュール21に故障や劣化等の不具合が生じた場合においても、所定の駆動条件を満たさないことを基準にそれらの不具合を検出する。つまり、寿命検知回路15bは、X線管6の寿命の検出に加え、X線管6や駆動制御回路15a、高圧発生モジュール21の不具合をも検出することができるので、X線照射ユニット3としての使用可否を判定することができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、寿命表示LED9の視認し易さを考慮し、寿命表示窓5k及び寿命表示LED9の位置を適宜変更することができる。図15は、寿命表示窓5kが側壁部5eに形成された例を示している。図16は、寿命表示窓5kが壁部5aに形成された例を示している。
【0073】
また、本実施形態においては、供給電力のフィードバック制御は行わなかったが、例えばターゲット電流をモニタリングし、ターゲット電流を一定に保つように、駆動電圧であるグリッド18への印加電圧であるグリッド電圧(駆動電圧)のフィードバック制御を行っても良い。この場合、寿命判定は、グリッド電圧によって行い、グリッド電圧が閾値以上になった際に寿命報知信号を出力する。
【0074】
また、駆動電流及び駆動電圧の両方を判定に用いて、いずれかの寿命が検知された際に、寿命報知信号を出力しても良い。
【0075】
また、出力端子8又は入出力端子24と入力端子7とは中継ケーブル25を介さずに、各端子同士が直接接続されていてもよく、隣接するX線照射ユニット3間やコントローラ3との間で、電力や制御信号、寿命報知信号等を無線手段によって伝送してもよい。また幹配線22には、送電線22aを残し、制御信号線22b、寿命報知信号線22cは排除して、制御信号及び寿命報知信号を無線手段によって伝送してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…X線照射装置、3…X線照射ユニット(X線照射源)、4…コントローラ、6…X線管、7…入出力端子、8…入出力端子、15b…寿命検知回路、15c…表示回路、28…コンデンサ、29…ダイオード(整流素子)、30…ダイオード(整流素子)、32c…出力部(寿命報知出力部)、32d…出力部(非寿命報知出力部)、34…非寿命表示LED(発光素子)、9…寿命表示LED(発光素子)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16