(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノードガスおよびカソードガスが供給されて発電する燃料電池と、改質水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部と、前記蒸発部で生成された前記水蒸気を用いて原料ガスを改質させてアノードガスを形成する改質部と、前記蒸発部に供給される前の改質水を溜める水タンクと、前記水タンクと前記蒸発部とを連通させ前記水タンク内の改質水を前記蒸発部に供給させる給水通路と、前記給水通路または前記水タンクに設けられ前記水タンク内の改質水を前記蒸発部に供給させる正回転可能および前記給水通路の前記改質水を前記水タンクに戻す逆回転可能に切り替え可能な水搬送源と、前記給水通路において前記蒸発部の上流且つ前記水搬送源の下流に設けられ水の存在を検知する水センサと、前記水センサの検知信号が入力され且つ前記水搬送源を制御する制御部とを具備しており、
前記制御部は、前記燃料電池の発電運転開始前、前記燃料電池の発電運転終了後、前記燃料電池の発電運転停止中のうちのいずれか一方において、前記水センサ側への給水に対する給水異常判定処理を実行し、
前記給水異常判定処理は、
前記水搬送源を逆回転させることにより前記給水通路の改質水を前記水タンクに戻して前記給水通路の改質水を空にする戻し操作と、
前記給水通路の改質水を空にした状態において、前記水搬送源を正回転させることにより前記水タンクの改質水を前記給水通路に供給し、前記水センサが水を検知するまでに必要とされる前記水搬送源の出力に関する物理量を求める給水操作と、
前記給水操作における物理量が規定範囲であるか否かを判定し、物理量が前記規定範囲内であれば前記蒸発部への給水が正常であると判定し、前記給水操作における物理量が前記規定範囲外であれば前記蒸発部への給水が異常であると判定する判定操作とを含み、
前記水搬送源は、ポンプと前記ポンプを駆動させるモータとを備え、
前記制御部は、物理量が前記規定範囲外のとき、あるいは、前記給水異常判定処理の終了時において、前記水搬送源の出力に関する物理量に基づき、前記モータのDUTY値と前記ポンプにより前記給水通路に供給される単位時間あたりの改質水流量との相関関係を示す特性を校正する燃料電池システム。
請求項1において、前記給水異常判定処理の前記給水操作において、前記水センサが水を検知するまでに必要とされる前記水搬送源の出力に関する物理量は、前記給水操作の開始時刻から前記水センサが水を検知する時刻までの経過時間である燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1〜3に係る技術によれば、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るには、必ずしも充分ではない。
【0008】
上記した特許文献1,2に係る技術によれば、改質水タンクの水位変化量を検知して改質水流量を調整するものであるが、燃焼排気中の水蒸気等を回収し改質水タンクに戻すような水自立タイプのシステムにおいては、水自立しているときは改質水タンクの水位変化がないし、水を過剰に回収しているときには、改質水タンクの水位が上昇するため、蒸発部に供給される改質水の流量を制御することが困難である。
【0009】
上記した特許文献3に係る技術は、水ポンプ起動時に発生するエアを改質器に流入するのを防止することを目的としており、改質水の供給異常や、水ポンプの劣化時の校正を目的とするものではない。逆に上記不具合は検出/制御不可能であるし、水タンクを余計に付けることでコスト、体格サイズの増加を伴う不具合が発生する。
【0010】
上記したように特許文献1〜3に係る技術によれば、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るには、必ずしも充分ではない。
【0011】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、改質水を高い精度で蒸発部に供給させ、蒸発部において水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池システムは、アノードガスおよびカソードガスが供給されて発電する燃料電池と、改質水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部と、蒸発部で生成された水蒸気を用いて原料ガスを改質させてアノードガスを形成する改質部と、蒸発部に供給される前の改質水を溜める水タンクと、前記水タンクと蒸発部とを連通させ水タンク内の改質水を蒸発部に供給させる給水通路と、給水通路または水タンクに設けられ水タンク内の改質水を蒸発部に供給させる正回転可能および給水通路の改質水を水タンクに戻す逆回転可能に切り替え可能な水搬送源と、給水通路において蒸発部の上流且つ水搬送源の下流に設けられ水の存在を検知する水センサと、水センサの検知信号が入力され且つ水搬送源を制御する制御部とを具備しており、
制御部は、燃料電池の発電運転開始前、燃料電池の発電運転終了後、発電運転停止中のうちのいずれか一方において、水センサ側への給水に対する給水異常判定処理を実行し、
給水異常判定処理は、(i)水搬送源を逆回転させることにより給水通路の改質水を水タンクに戻して給水通路の改質水を空にする戻し操作と、(ii)給水通路の改質水を空にした状態において、水搬送源を正回転させることにより水タンクの改質水を給水通路に供給し、水センサが水を検知するまでに必要とされる水搬送源の出力に関する物理量を求める給水操作と、(iii)給水操作における物理量が規定範囲であるか否かを判定し、物理量が規定範囲内であれば蒸発部への給水が正常であると判定し、給水操作における物理量が規定範囲外であれば蒸発部への給水が異常であると判定する判定操作とを含む。
【0013】
このように制御部は、燃料電池の発電運転開始前、燃料電池の発電運転終了後、燃料電池の発電運転停止中のうちのいずれか一方において、給水異常判定処理を実行し、水センサ側(蒸発部)への給水の異常の有無を判定する。給水の異常としては、水タンクの改質水を水搬送源により目標どおり水センサ側(蒸発部側)に供給できないことを意味し、改質水の供給過剰、改質水の供給不足が挙げられる。給水の異常としては、例えば、水センサの故障、水搬送源の故障、給水通路の流路閉鎖、給水通路からの水漏れ、給水通路の凍結などが要因として考えられる。給水の異常は、原料ガスを改質するときにおけるS/C値の不適切化を発生させる。
【0014】
給水異常判定処理が燃料電池の発電運転開始前または発電運転停止中に実施されると、異常なS/C値で燃料電池システムが発電運転されることが未然に防止され、ひいては改質部および燃料電池等を故障させる不具合が解消される。また、給水異常判定処理が燃料電池の発電運転終了後に実施されると、次回の発電運転まで時間が確保されるため、水センサ、水搬送源や給水通路の故障を修理または交換できる時間をかせげる。
【0015】
上記した物理量としては、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知する時刻までの経過時間に関する物理量、あるいは、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知する時刻までの水搬送源への給電量に関する物理量が例示される。具体的には、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知するまでの経過時間が例示される。あるいは、水搬送源を駆動させるモータがステッピングモータの場合には、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知する時刻までにおいて水搬送源に入力されるパルス総数が例示される。
【0016】
本様相によれば、燃料電池の発電運転開始前(発電運転開始直前を含む)、燃料電池の発電運転終了後(発電運転終了直後を含む)、燃料電池の発電運転停止中のうちのいずれか一方において、制御部は、給水異常判定処理を実行する。このように給水異常判定処理は燃料電池の発電運転が実行されている以外のときに実行される。その理由としては、燃料電池が発電運転しているときには、改質水は蒸発部に供給される必要があり、給水通路に存在する改質水を空にすることは好ましくないためである。発電運転開始直前とは、ユーザまたは制御部により起動指示がシステムに入力されてから、発電運転開始するまでをいう。発電運転終了直後とは、ユーザまたは制御部により終了指示がシステムに入力されて発電が停止してから規定時間内(例えば、発電終了後の改質部または燃料電池の温度が50℃以下に低下するまでの時間内)をいう。
【0017】
給水異常判定処理では、制御部は、まず、水搬送源を逆回転させることにより、給水通路の改質水を水タンクに戻して給水通路の改質水を空にする戻し操作を実行する。このように給水通路の改質水を空にする。その後、水搬送源を正回転させ、これにより水タンクの改質水を給水通路に供給させる給水操作を実行する。かかる給水操作において、水センサが水を検知する時刻までの水搬送源の出力に関する物理量を検知する。物理量に関する規定範囲は予め設定されている。
【0018】
制御部は、判定操作において、給水操作における物理量が規定範囲内であるか否かを判定する。制御部は、物理量が規定範囲内である場合には、蒸発部への給水が正常であると判定し、給水操作における物理量が規定範囲外である場合には、蒸発部への給水が異常であると判定する。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となる。制御部が蒸発部への給水が異常であると判定すると、制御部は警報信号を出力することが好ましい。警報としては、システム停止または警報器の作動が例示される。
【0019】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、給水操作において、水センサが水を検知するまでに必要とされる水搬送源の出力に関する物理量は、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知する時刻までの経過時間である。判定操作において、給水操作における経過時間が規定範囲内であるか否かを判定する。時間が規定範囲内である場合には、制御部は、蒸発部への給水が正常である判定し、給水操作における時間が規定範囲外である場合には、蒸発部への給水が異常であると判定する。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となる。
【0020】
(3)本発明の様相3に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、水搬送源はポンプとポンプを回転させるステッピングモータとを備えており、給水操作において、水センサが水を検知するまでに必要とされる水搬送源の出力に関する物理量は、給水操作の開始時刻から水センサが水を検知するまでにおいて、ステッピングモータに入力されるパルス総数である。制御部は、判定操作において、給水操作における時間が規定範囲であるか否かを判定する。制御部は、給水操作におけるパルス総数が規定範囲内である場合には、蒸発部への給水が正常である判定し、給水操作におけるパルス総数が規定範囲外である場合には、蒸発部への給水が異常であると判定する。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となる。
【0021】
(4)本発明の様相4に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、制御部は、物理量が規定範囲外のとき、あるいは、給水異常判定処理の終了時において、水搬送源の出力に関する物理量と給水通路に供給する改質水流量との相関関係を示す特性を校正する。
【0022】
本様相によれば、水搬送源の出力に関する物理量と給水通路に供給する改質水流量との相関関係を示す特性(マップ等)が校正される。校正は補正に相当する。このため、校正以降の発電運転においては、制御部は、校正後の特性(マップ等)に基づいて、水搬送源を制御させる。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となる。校正は、物理量が規定範囲外のときに実施することが好ましい。あるいは、物理量が規定範囲内のときであっても、校正は、給水異常判定処理の終了時において実施することもできる。この場合、ポンプ等の水搬送源の特性における経年変化に速やかに対応できる。
【0023】
(5)本発明の様相5に係る燃料電池システムによれば、上記様相において、規定範囲の上限よりも大きな閾値物理量が設定されており、給水操作が実行されている条件において水センサが水を検知していない場合において、給水操作の開始時刻から計測される物理量が閾値物理量よりも大きくなると、制御部は、給水操作を実施している水搬送源の正回転を停止させて給水異常であると判定し、改質水が蒸発部に過剰に供給されることを抑える。水搬送源を駆動させて給水操作が長時間にわたり継続して実行されているにも拘わらず、水センサが水を検知しない条件では、水センサ、水搬送源および給水通路のうちの少なくとも一つの故障が予想される。
【0024】
そこで、上記した条件が満足される場合、すなわち、給水操作の開始時刻から計測される物理量が閾値物理量よりも大きくなる場合には、制御部は、水搬送源の正回転を停止させ、つまり給水操作を強制的に停止させ、蒸発部への給水が異常であると判定する。これにより制御部は、水センサが故障していた場合も改質水が蒸発部に過剰に供給されることを抑える。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となるとともに、改質水が過剰に供給されることで改質触媒が浸水し劣化することを抑止できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、制御部は、給水異常判定処理を実行する。給水異常判定処理において水センサ側(蒸発部側)への給水の異常が判定される。このため、改質水を高い精度で蒸発部に供給させて水蒸気の目標量を高精度で得るのに有利となる。このため原料ガスを水蒸気で改質させてアノードガスを生成させる改質反応において、S/C値の適切化を図り得る。ひいては蒸発部、改質部および燃料電池における耐久性を高めることができ、長寿命化を図り得る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次の(1)(2)の様相が必要に応じて採用できる。これを、以下の実施形態に必要に応じて適用しても良い。
(1)給水異常判定処理の給水操作において水センサへ向けて給水するときにおける水搬送源の単位時間あたりの駆動量をNraとし、燃料電池の発電運転において蒸発部へ向けて給水するときにおける水搬送源の単位時間当たりの駆動量をNsaとすると、Nra=Nsaの関係、Nra>Nsaの関係、Nra<Nsaの関係とのうちのいずかに設定されている。水搬送源としては水ポンプが挙げられる。駆動量としては単時間当たりの回転数が例示される。
【0028】
Nra>Nsaであれば、給水異常判定処理の給水操作の短縮が図られ、給水異常判定処理に要する時間をできるだけ短縮できる。また、Nra<Nsaであれば、水搬送源の単位時間あたりの駆動量を、給水異常判定処理の給水操作において低速化でき、給水通路の水位をゆっくりと上昇でき、給水通路への空気の巻き込みを抑えるのに有利であり、判定操作における判定精度を向上できる。
【0029】
(2)戻し操作において給水通路から水タンクへ排水するときにおける水搬送源の単位時間あたりの駆動量をNrcとし、給水操作において水センサに向けて給水するときにおける水搬送源の単位時間当たりの駆動量をNscとすると、Nrc=Nscの関係、Nrc>Nscの関係、Nrc<Nscの関係とのうちのいずかに設定されている。水搬送源としては水ポンプが挙げられる。駆動量としては単時間当たりの回転数が例示される。
【0030】
Nrc<Nscであれば、給水操作を短縮できる。Nrc>Nscであれば、水搬送源の単位時間あたりの駆動量を、戻し操作よりも給水操作において低速化できる。このため、水タンクへの給水操作において、給水通路の水位をゆっくりと下降でき、給水通路への空気の巻き込みを抑えるのに有利であり、判定操作における判定精度を向上できる。
【0031】
以下、本発明の各実施形態について説明する。
【0032】
[実施形態1]
図1および
図2は実施形態1の概念を示す。
図1に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて原料ガスを改質させてアノードガスを形成する改質部3と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜める水タンク4と、これらを収容するケース5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池1(運転温度:例えば400℃以上)に適用できる。
【0033】
改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃焼部105は改質部3および蒸発部2を加熱させる。燃料通路6は、燃料源63からの燃料を改質器2Aに供給させるものであり、遮断弁69、脱硫器62、燃料ポンプ60および流量計64をもつ。配置順は特に限定されない。燃料電池1のカソード11には、カソードガス(空気)をカソード11に供給させるためのカソードガス通路70が繋がれている。カソードガス通路70には、カソードガス搬送用のガス搬送源として機能するカソードポンプ71、流量計72が設けられている。
【0034】
図1に示すように、ケース5は、外気に連通する吸気口50と排気口51と吸気口50付近(外気)の温度を検知する温度センサ57とをもつ。温度センサ57は必要に応じて設ければ良い。ケース5には、改質部3で改質される液相状の水を溜める水タンク4が収容されている。水タンク4には、排水バルブ40mが設けられており、更に、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が必要に応じて設けられている。加熱部40は、水タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100からの指令に基づいて、水タンク4の水は加熱部40により加熱され、凍結が抑制される。
【0035】
図1に示すように、水タンク4の出口ポート4pと蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管としてケース5内に設けられている。
図1に示すように、ケース5内において、水タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は上下方向に沿って延びる。給水通路8は、水タンク4内に溜められている水を水タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、水タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源8Aが設けられている。水搬送源8Aは、ポンプ80と、ポンプ80を駆動させる電気式のモータ82とをもつ。ポンプ80はギヤポンプ等のシール性が良い公知のポンプを採用できる。なお、燃料電池システムの運転停止時には、給水通路8においてポンプ80の出口ポート80pよりも下流の通路部分8xに水が存在することが多い。なお、給水通路8は蒸発部2,改質部3、燃料電池1等を介して大気に連通するようにされている。水ポンプ80を水タンク4の出口ポート4p側に設けても良い。
【0036】
給水通路8において、ポンプ80の下流で且つ蒸発部2の上流において水センサ87が設けられている。水センサ87は給水通路8において蒸発部2の入口ポート2iの直前に配置されていることが好ましい。給水通路8において水タンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iまでの距離が100として相対表示されるとき、水タンク4の出口ポート4pから70〜99の範囲、特に80〜90内に、水センサ87は設置されていることが好ましい。
【0037】
水センサ87の検知原理は、何でも良く、水の有無に基づく静電容量の変化を検知する方式、水の有無に基づく通電量の変化を検知する方式、水の有無に基づく電気抵抗の変化を検知する方式、水の有無に基づく水圧の変化を検知する方式、水の有無に基づく磁気の変化を検知する方式等のいずれでも良く、更に他の方式でも良い。
図1に示すように、給水通路8においては、水タンク4、水ポンプ80、水センサ87、蒸発部2がこの順に直列に配置されている。
【0038】
なお、給水通路8には、改質水の流量を測定する流量計は設けられていない。その理由としては、給水通路8に供給される単位時間あたりの改質水の流量は少ないため、流量計の検知精度が充分ではないためである。更に、給水異常判定処理により水ポンプ80および水センサ87の正常性の有無が担保され、給水通路8を流れる改質水流量を演算に基づいて求め得るためである。但し、場合によっては、演算結果のチェック等のため、給水通路8に流量計を設けることにしても良い。
【0039】
本実施形態によれば、水ポンプ80を駆動させるモータ82は、正回転および逆回転可能とされている。すなわち、モータ82は、正方向に回転駆動して水タンク4内の水を出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて搬送させる正モードと、逆方向に回転駆動して給水通路8の水を出口4pから水タンク4内に戻す逆モードとに切り替え可能とされている。従って、モータ82を有する水ポンプ80は、水タンク4内の水を蒸発部2に搬送させる正モードと、給水通路8の水を水タンク4内に戻す逆モードとに切り替え可能とされている。
図2に示すように、モータ82を駆動回路を介して制御するための制御部100が設けられている。制御部100は、入力処理回路100a、出力処理回路100b、タイマー計測機能をもつCPU100c、およびメモリ100mを有する。モータ82としては、正回転および逆回転可能なモータであれば何でも良いが、DCモータ、ステッピングモータが例示される。制御部100はモータ82を介して水ポンプ80を制御する。更に、制御部100はカソードポンプ71,燃料ポンプ60、遮断弁69、警報器102を制御することができる(
図2参照)。
【0040】
(発電運転)
システムを起動させるときには、制御部100は発電モードに先だって暖機モードを実行する。暖機モードでは、制御部100は、遮断弁69を開放させた状態で、燃料ポンプ60を駆動させて原料ガスを燃料通路6に介して発電モジュール18の燃料電池1を介して燃焼部105に供給させる。制御部100はカソードポンプ71も駆動させてカソードガス通路70を介して空気を発電モジュール18のカソード11を介して燃焼部105に供給させる。燃焼部105において原料ガスが空気により燃焼する。燃焼部105における燃焼熱により、改質部3、蒸発部2および燃料電池1が加熱される。改質部3および蒸発部2が所定温度以上となると水ポンプ80を駆動し、改質部3で改質処理を行い改質されたガスを燃焼部105で燃焼し、その燃焼熱で改質部3、蒸発部2および燃料電池1を継続して加熱する。改質部3、蒸発部2および燃料電池1が所定の温度域に加熱されると、制御部100は暖機モードを終了させ、発電モードに移行させる。
【0041】
制御部100は、モータ82を正回転させて水ポンプ80を正モードで駆動させると、水タンク4内の液相状の改質水は、水タンク4の出口ポート4pから給水通路8を搬送され入口ポート2iから蒸発部2に供給される。改質水は、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路6から供給される燃料(ガス状が好ましいが、場合によっては液相状としても良い)と共に改質部3に移動する。改質部3において原料ガスは、水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる(吸熱反応)。アノードガスはアノードガス通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソードポンプ71が駆動してカソードガス(酸素含有ガス、ケース5内の空気)がカソードガス通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。
【0042】
暖機モードおよび発電モードにおいて、発電モジュール18で発生した高温の排ガスは、排ガス通路75を介してケース5の外方に排気される。排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の出口ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76で排ガスにより加熱される。熱交換器76で加熱された水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により浄水部43に流下される。従って、浄水部43および水タンク4は発電モジュール18の下側に位置する。
【0043】
浄水部43はイオン交換樹脂等の水浄化剤43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に改質水として溜められる。ポンプ80が正モードで駆動すると、水タンク4内の改質水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。
【0044】
(給水異常判定制御の実行時期)
上記した給水異常判定制御では、制御部100は、水ポンプ80のモータ82の駆動回路にDUTY値もしくは回転数を指令し、DUTY値もしくは回転数に基づいて、モータ82を制御し、水ポンプ80の回転を制御する。
【0045】
発電運転は、発電前に蒸発部2、改質部3、燃料電池1を加熱させる暖機モードと、暖機された燃料電池1で発電させる発電モードとで形成される。制御部100は、改質水流量指示がないとき、給水異常判定制御を必要に応じて実行することが好ましい。
【0046】
換言すれば、ユーザもしくは制御部100からシステム起動指示に基づいて、制御部100は、暖機モードを実行する前に、つまりシステムを起動させる前に、給水異常判定制御を実行する。あるいは、燃料電池1が発電していない待機モードにおいてまたは停止モードにおいて、制御部100は、給水異常判定制御を実行しても良い。また、改質水に関する異常が発生したためシステムを緊急的に停止させた後に、制御部100は、給水異常判定制御を実行しても良い。このように制御部100は、暖機モードを開始する前、待機モード、停止モードにおいてその都度、給水異常判定処理を実施しても良い。
【0047】
このように本実施形態によれば、燃料電池1の発電運転開始前、燃料電池1の発電運転終了後、燃料電池1の発電運転停止中のうちのいずれかにおいて、制御部100は、給水異常判定制御を実行することができる。特に、支障がない限り、燃料電池1の発電運転を開始する毎に、燃料電池1の発電運転終了毎に、燃料電池1の発電運転停止毎において、制御部100は、給水異常判定制御を実行することが好ましい。この場合、水センサ87の故障、水ポンプ80の故障、給水通路8の水漏れ、給水通路8の流路閉鎖等といった不具合をできるだけ早期に発見できる。
【0048】
待機モードは、暖機モード、発電モード、および停止モード以外の運転していないモードをいう。停止モードは、ユーザもしくは制御基板から停止指示が入り、カソードエアのみを流通し、燃料電池および改質部等を冷却して、待機モードへ移行するまでのモードをいう。
【0049】
(給水異常判定制御の内容)
制御部100は給水異常判定処理において(i)〜(iii)を実行する。
(i)戻し操作
まず、制御部100は水ポンプ80を逆回転させ、給水通路8において水ポンプ80の出口ポート80pから発電モジュール18の蒸発部2の入口ポート2iまで存在する改質水を水タンク4に戻す戻し操作を実行する。これにより給水通路8内の改質水は空にされる。なお、水ポンプ80の逆回転のみでなく、自重で給水通路8内の改質水を空にしても良い。
(ii)給水操作
水ポンプ80のモータ82を既定のDUTY値または回転数で正回転させることにより、水タンク4内の改質水を給水通路8に供給させる給水操作を実行させる。このとき、給水操作の開始時刻から、水センサ87が水を検知する(ONとなる)時刻までの経過時間Tを、タイマー機能をもつ制御部100は検出する。この場合、重力に対向しつつ水タンク4の水を給水通路8に供給できる。
(iii)判定操作
もし、検知するまでの経過時間T(物理量)が、時間に関する既定範囲以外である場合は、制御部100は、蒸発部2への給水の異常(水センサ78、水ポンプ80および給水通路5のうちの少なくとも一つの故障)と判定し、異常フラグを立てる。もし、経過時間Tが規定範囲以内である場合には、制御部100は、蒸発部2への給水が正常であると判定し、即ち、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8は正常であると判定し、正常フラグを立て、給水異常判定制御を終了する。
【0050】
正常である場合には、制御部100は、暖機モードひいては発電モードへと移行する。ここで、経過時間Tに関する既定範囲の上限値および下限値は、発電モジュール18の故障、発電モジュール18の劣化等から定められるS/C値に基づいて決定されていることが好ましい。S/C値は、水蒸気改質において水蒸気(steam)と、炭素成分を含む原料ガスである原料ガス(carbon)中のカーボン(C)とのモル比の比率を意味する。水蒸気改質の一般的は式(1)とされている。
(1)…C
nH
m+nH
2O→nCO+[(m/2)+n]H
2
n=1,m=4の場合には、メタンを水蒸気改質させる。S/C=2とはC
nH
m1モルに対してH
2Oを2nモル投入する状態である。発電モジュール18の保護性を考慮すると、一般的には、S/C値=2.5、あるいは、S/C値の範囲としては2.0〜3.0が好ましい範囲とされている。
【0051】
水センサ87が故障している場合、あるいは、水ポンプ80が故障している場合であっても、発電モジュール18の蒸発部2に改質水を過剰に入れすぎることを防止するため、規定範囲の下限値が設定されている。万一、改質水が蒸発部2に過剰に供給されると、水蒸気量の過剰増加、改質部3および蒸発部2の温度の過剰低下、改質部3に設けられている改質触媒の水没、改質触媒の水蒸気による劣化促進等の不具合が誘発されるおそれがある。この不具合を抑制させるように、経過時間Tに関する既定範囲の上限値が、適切なS/C値に基づいて設定されている。また、発電モジュール18の蒸発部2に供給される水蒸気が過少であるときには、改質反応における水蒸気不足となる。この場合、改質部3におけるコーキング(炭素成分の生成)が発生し、発電モジュール18の改質部3の故障または劣化の不具合が誘発されるおそれがある。この不具合を抑制させるように、経過時間Tに関する既定範囲の上限値が、適切なS/C値に基づいて設定されている。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、システムの発電運転の起動毎に、および/または、システムの発電運転の終了停止毎に、制御部100は、給水異常判定制御を実行し、水センサ87、水ポンプ80、給水通路8における故障の有無を判定する。給水異常判定処理をシステムの発電運転の停止中に実行しても良い。
【0053】
このように制御部100が給水異常判定制御を実行することで、定期的にまたは不定期的に、発電モジュール18の蒸発部2への給水の正常または異常の判定を簡便に行うことができる。このため、発電モジュール18の蒸発部2へ改質水の供給流量を既定範囲内に設定させることが可能となる。この結果、改質水の過剰および不足に起因する発電モジュール18に搭載されている蒸発部2,改質部3および燃料電池1における故障や劣化を抑制することが可能となる。
【0054】
[実施形態2]
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1および
図2を準用する。給水異常判定制御の内容は実施形態1と基本的には同様である。本実施形態は次の(a)〜(d)の形態のうちの少なくとも一つを採用できる。必要に応じて、他の実施形態に適用しても良い。
【0055】
(a)上記した給水異常判定処理を所定時間ΔT間隔で複数回実施し、経過時間Tのデータを複数回(n回)採取することにしても良い。この場合、経過時間のn回の平均値を経過時間としても良い。この場合、異常データを取り除くことができる給水異常判定処理の1回あたりに必要とされる時間は、短いものである。
【0056】
(b)本実施形態によれば、(i)の戻し操作の終了後に、ΔTwait(例えば、100ミリ秒〜180秒間の任意値,これに限定されない)待機した後に、(ii)の給水操作を開始しても良い。ΔTwait待機している間に、給水通路8の配管の内壁面に付着している水滴等を重力により水タンク4に効果的に流下させることを期待できる。この場合、給水通路8における空の度合を高めることができ、判定操作における判定精度を高めるのに有利である。
【0057】
(c)本実施形態によれば、上記した(i)の戻し操作においてモータ82に指令するDUTY値をDrとし、上記した(ii)の給水操作においてモータ82に指令するDUTY値をDsとする。この場合、Dr=Dsとしても良い。Dr>Dsとしても良い。Dr<Dsとしても良い。Dr<Dsであれば、給水異常判定処理に要する時間を短縮できる。Dr>Dsであれば、水ポンプ80の単位時間あたりの回転数を、戻し操作よりも給水操作において低速化できる。このため、給水操作において給水通路8の水位をゆっくりと上昇でき、給水通路8への空気の巻き込み(ノイズの要因)を抑えるのに有利であり、判定操作における判定精度を向上できる。
【0058】
(d)また本実施形態によれば、上記した(i)の戻し操作においてモータ82に指令する単位時間あたりの回転数をNrcとし、上記した(ii)の給水操作においてモータ82に指令する単位時間当たりの回転数をNscとする。この場合、Nrc=Nscとしても良い。Nr>Nscとしても良い。Nrc<Nscとしても良い。Nrc<Nscであれば、給水操作に要する時間を短縮できる。Nrc>Nscであれば、水ポンプ80の単位時間あたりの回転数を、戻し操作よりも給水操作において低速化できる。このため、給水操作において給水通路8の水位をゆっくりと上昇でき、給水通路8への空気の巻き込みを抑えるのに有利であり、判定操作における判定精度を向上できる。
【0059】
[実施形態3]
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1および
図2を準用する。給水異常判定制御の内容は実施形態1と基本的には同様である。水ポンプ80のモータ82はステッピングモータとされている。制御部100は、ステッピングモータの駆動回路にパルス総数を入力させ、ステッピングモータを回転駆動させる。
(i)ステッピングモータを逆回転させて、水ポンプ80を逆回転させ、給水通路8において水ポンプ80の出口ポート80pから発電モジュール18の蒸発部2の入口ポート2iまで存在する改質水を水タンク4に戻す。これにより給水通路8内の改質水を空にする。(i)と(ii)との間に、必要に応じてΔTwait待機しても良い。
(ii)水ポンプ80のモータ82(ステッピングモータ)の駆動回路に複数のパルスを連続させて入力させ、ステッピングモータを連続的に正回転させる。これにより水タンク4内の改質水を給水通路8に供給させる給水操作を実行させる。このとき、給水操作の開始時刻から、水センサ87がON(水を検知)する時刻までにおいて、ステッピングモータに入力されたパルス総数を、制御部100は検出する。
(iii)もし、水有りを検知するまでのパルス総数が、パルス総数に関する既定範囲以外である場合は、制御部100は、蒸発部2への給水の異常と判定し、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8のうちの少なくとも一つが故障していると判定し、警報を出力する。もし、検知するまでのパルス総数が規定範囲以内である場合には、制御部100は、蒸発部2への給水が正常であると判定し、即ち、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8は正常であると判定し、給水異常判定制御を終了する。正常であれば、制御部100は、暖機モードひいては発電モードへと移行する。ここで、パルス総数に関する既定範囲の上限値および下限値は、発電モジュール18の故障、発電モジュール18の劣化等から定められるS/C値に基づいて決定されていることが好ましい。
【0060】
水センサ87が故障している場合、あるいは、水ポンプ80が故障している場合であっても、発電モジュール18の蒸発部2に改質水を過剰に入れすぎることを防止するため、パルス総数の規定範囲の下限値が設定されている。改質水が蒸発部2に過剰に供給されると、水蒸気量の過剰増加、改質部3および蒸発部2の温度の過剰低下、改質部3に設けられている改質触媒の水没、改質触媒の水蒸気による劣化促進等の不具合が誘発されるおそれがある。この不具合を抑制させるように、パルス総数に関する既定範囲の上限値が、適切なS/C値に基づいて設定されている。また、発電モジュール18の蒸発部2に供給される水蒸気が過少であるときには、改質部3におけるコーキング(炭素成分の生成)が発生し、発電モジュール18の改質部3の故障または劣化の不具合が誘発されるおそれがある。この不具合を抑制させるように、パルス総数に関する既定範囲の上限値が、適切なS/C値に基づいて設定されている。
【0061】
[実施形態4]
本実施形態は実施形態1,2,3と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1および
図2を準用する。寒冷より給水通路8に残留する水が凍結している場合、凍結し始めている場合には、給水通路8の流路断面積が狭くなっているおそれがある。この場合、経過時間Tが変動するおそれがある。そこで、温度センサ57で検知された温度が規定温度以上のときには、制御部100は、給水異常判定処理を実施する。温度センサ57で検知された温度が規定温度(例えば0℃、−5℃、これに限定されない)未満のときには、制御部100は、給水異常判定処理を実施しない。他の実施形態についても、温度センサ57で検知された温度が規定温度以上のときには、制御部100は、給水異常判定処理を実施することにしても良い。
【0062】
[実施形態5]
本実施形態は実施形態1〜4と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1および
図2を準用する。給水通路8において水ポンプ80から水センサ87までの通路容積は、設計において、既定量に設定される。そのため、水ポンプ80、水センサ87および給水通路8が正常である条件において、給水通路8が空の状態から改質水を既定流量を送った場合には、給水通路8が改質水で満たされ、水センサ87が水を検知する(水センサがONとなる)。ここで、改質水の供給開始時刻から水センサ87がONとなるまでの経過時間Tと、給水通路8に供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係は、
図3の特性線Wとして示される。すなわち、
図3の特性線Wは、給水操作の開始時刻から水センサ87がONとなる時刻までの経過時間T[sec]と、給水通路8を流れる改質水流量[CCM]との関係を模式的に示す。
図3の特性線Wとして示すように、水ポンプ80により給水通路8へ供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]が大きい場合には、給水操作の開始時刻から水センサ87がONとなるまでの経過時間Tが短くなる。水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]が小さい場合には、給水操作の開始時刻から水センサ87がONとなるまでの経過時間Tが長くなる。
【0063】
ここで実際の発電運転における単位時間あたりの改質水流量[CCM]は、原料ガスとなる炭化水素の流量と、炭化水素の原料中におけるCに対する水(水蒸気)のモル比を示すS/C値に基づいて決定される。S/C値は、改質部3における改質触媒、燃料電池1の劣化、蒸発部2の蒸発特性、効率等に基づいて決定される値である。S/C値が低すぎると、改質部3の改質触媒や燃料電池1のコーキング(炭素析出)による劣化や故障が発生するおそれがある。逆に、S/C値が高すぎると、投入した分の改質水を気化するための熱量が増大することによる効率低下が発生する。更に、蒸発部2での突沸による燃焼部の失火不具合や、水蒸気酸化による燃料電池1の劣化に至るおそれがある。そこで、発電運転においてはS/C値を適切な範囲内に設定することが好ましい。
【0064】
上記事情を考慮し、一例としてS/C値を2.5とすることが好ましい。劣化等を考慮し、許容できるS/C値の範囲を2.0〜3.0とすることが好ましい。
図3の特性線Wによれば、S/C値=2.5に相当する改質水流量をQ−Aとした場合、S/C値=2.0に当る流量はQ4である。S/C値=3.0に当る流量がQ3に相当する。即ち、発電運転においては、S/C値の許容範囲としては2.0〜3.0が好ましく、これを、給水操作の開始時刻から水センサ87がONとなるまでの経過時間Tとして換算すると、経過時間Tとしては時間TM3〜時間TM4の範囲内に相当することが好ましい(
図3参照)。給水異常判定処理における経過時間Tがこの範囲内で有れば、制御部100は水センサ87、水ポンプ80および給水通路8が正常である旨を判定し、正常フラグを立てる。経過時間Tがこの範囲を外れた場合には、劣化等の不具合が発生する可能性があると判断し、制御部100は、蒸発部2への改質水の給水が異常である旨を判定し、異常フラグを立てる。
【0065】
また、時間TM2(
図3参照)に関しては、既述の通り、水センサ87が故障していた場合であっても、改質水が過剰に蒸発部2側に供給されず、発電モジュール18が故障しないだけの値が時間TM2として設定されている。
【0066】
[実施形態6]
図4は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1〜
図3を準用する。給水異常判定制御において、制御部100は、水ポンプ80に指令したDUTY値もしくは回転数にて水ポンプ80を駆動させる。
図4は制御例を示す。ユーザまたは制御部100によりシステムの起動指示が制御部100に入力されると、制御部100は、
図4のフローチャートを開始させる。まず、制御部100は、各種、センサ、スイッチ、機器の情報を読み込み(ステップS2)、情報に基づいて現在が暖機モード移行前であるか否かを判定し(ステップS4)、現在が暖機モード移行前であれば、水ポンプ80を逆回転させ、給水通路8において水ポンプ80よりも下流に存在する改質水を水タンク4に戻す戻し操作を実行し、給水通路8の水を空にする(ステップS6)。このような戻し操作では、供給される改質水の指示流量をQ1[CCM]とし、モータ82への指示DUTY値をD1とし、稼動時間をTM1[sec]とさせる。これらの値は、給水通路8において水ポンプ80の出口ポート80pから水センサ87までの通路内の改質水が確実に水タンク4に戻り、給水通路8内の改質水がなくなるような数値として予め設定され、制御部100のメモリ100mに格納されている。
【0067】
続いて、所定時間後、水センサ87が水を検知しているか否か(ONであるか否か)を判定する(ステップS7)。水センサ87が水を検知している場合(ステップS7のNo)は、水ポンプ80の故障で逆回転できておらず水が抜けないか、あるいは水センサ87の異常で水が抜けているのに「水検知(ON)」と判定していると判定でき、制御部100が異常として検出する(ステップS9)。
【0068】
一方、ステップS7で水センサ87が水を検知していない場合(ステップS7のYes)、給水操作として、水ポンプ80について指示流量をQ−A[CCM]とし、DUTY値をD2として設定し、水ポンプ80を正回転させて、水タンク4の改質水を水センサ87に向けて供給させる(ステップS8)。
【0069】
なお、D2=D1の関係、D2<D1の関係、D2>D1の関係としても良い。D2<D1であれば、給水操作において水ポンプ80が低速となり、給水通路8の水位の上昇速度の過剰化は抑えられため、空気の巻き込み抑制に有利である。また、水センサ87のONまでの時間が長くなることで
図3における改質水流量の検出精度が上げられる。なお、ステップS6を実施した後に、必要に応じて、ΔTwait時間待機しても良い。この場合、給水通路8の水を重力により流下させ、給水通路8における空の度合を高めることを期待できる。
【0070】
その後、水センサ87が水を検知してONしたか否か、もしくは、モータ82の正回転の開始時刻(給水操作の開始時刻)からの経過時間Tが時間TM2[sec]以上か否かを判定する(ステップS10)。この条件が満たされない場合には、給水操作を継続する(ステップS10のNO)。この条件が満たされた場合には、制御部100は給水操作を終了させる(ステップS10のYES)。次に、水ポンプ80の駆動を停止させる(ステップS12)。ステップS10において、水センサ87付近に水が存在していたとしても水センサ87がONとならない場合には、水センサ87が故障していると考えられる。このように水センサ87が故障している場合であっても、発電モジュール18の蒸発部2への改質水の供給が許容される改質水量に基づいて、前記した時間TM2[sec]は、閾値物理量として予め決定されている。具体的には、水ポンプ80の正回転を継続させて給水通路8に改質水を過剰に供給し続けたとしても、発電モジュール18の改質部3に設けられている改質触媒等が液相状の改質水に水没したり、改質触媒が劣化したりしないだけの時間が時間TM2[sec]として予め設定されて、制御部100のメモリ100mに格納されている。
【0071】
給水操作の開始時刻から水センサ87がONする時刻までの経過時間Tは、経過時間t−bとされる。経過時間t−bについては、制御部100は、TM3≦t−b≦TM4の式が成立するか否かを判定する(ステップS14,
図3参照)。この条件が満たされた場合には、制御部100は、給水異常判定制御が問題なく実行され、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8が正常であると判断し(ステップS20)、正常フラグを立て、発電モジュール18を暖機させる暖機モードへの移行を許可する(ステップS22)。暖機モードでは、改質部3および蒸発部2を水蒸気改質に適する温度領域に加熱させる。暖機モードが正常に終了すると、制御部100は発電モードに移行する。上記した式が成立しない場合には(ステップS14のNO)、制御部100は、蒸発部2への改質水の供給が異常であると判定する(ステップS16)。即ち、給水系が故障であると判定し、異常フラグを立て、更に、異常信号を警報器102に発報し(ステップS18)、暖気モードおよび発電モードへの移行を禁止する(ステップS18)。
【0072】
以上説明したように本実施形態によれば、水センサ87が故障している場合に対応できる。即ち、万一、水センサ87が故障している場合には、正常な水ポンプ80が継続して正回転して改質水を給水通路8に供給させているにも拘わらず、水センサ87はONしない。この場合、水ポンプ80が継続して正回転するため、発電モジュール18の蒸発部2および改質部3に改質水が過剰に供給されないように、規定範囲の上限よりも大きな閾値物理量として時間TM2[sec]が予め設定されている(ステップS10)。そして、制御部100により給水操作が実行されている条件において、水センサ87が継続していつまでもONしないときには、給水操作の開始時刻から計測される経過時間T(物理量)が時間TM2[sec](閾値物理量)よりも大きくなると、制御部100は、給水系の故障であると判定する。そして、制御部100は、水ポンプ80の正回転を停止させて給水異常であると判定し、警報を出力し、改質水が蒸発部2に過剰に供給されることを抑える。警報は、警報器102への警報信号の出力、システムの運転停止のうちの少なくとも一方を含むことができる。
【0073】
また本実施形態によれば、水ポンプ80が故障している場合にも対応することができる。即ち、万一、水ポンプ80が故障している場合には、水ポンプ80に対して改質水を給水通路8に供給させる指令を制御部100が出力させているにも拘わらず、且つ、水センサ87が正常であるにも拘わらず、水センサ87はONしない。このため、発電モジュール18の蒸発部2および改質部3に供給させる改質水が不足とならないように、規定範囲の上限よりも大きな閾値物理量として時間TM2[sec]が予め設定されている(
図3参照)。
図3によれば、TM3<TM−A<TM4<TM2の関係とされている。そして、制御部100により給水操作が継続して実行されているとき、水センサ87が継続していつまでもONしない条件において、給水操作の開始時刻から計測される経過時間T(物理量)が時間TM2[sec](閾値物理量)よりも大きくなると、制御部100は、給水系の故障、即ち、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8のうちの少なくとも一つの故障であると判定することができる。そして、制御部100は、水ポンプ80の正回転を停止させる指令を出力し、蒸発部2への給水の異常であると判定し、警報を出力し、蒸発部2に供給される改質水が不足することを抑える。なお、警報は、警報器への警報信号の出力、システムの運転停止のうちの少なくとも一方を含むことができる。
【0074】
[実施形態7]
図5および
図6は実施形態7を示す。本実施形態は実施形態1〜4と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1〜
図4を準用できる。給水異常判定制御において、蒸発部2への給水が異常であると判定されるとき(物理量が規定範囲外のとき)、制御部100は、水ポンプ80の出力に関する物理量と給水通路8に供給する改質水流量との相関関係を示すマップを校正して是正させる。
【0075】
図5は、経年変化していない水ポンプ80の初期のポンプ特性を示す。
図5に示すように、水ポンプ80のモータ82に入力されるDUTY値が大きくなると、水ポンプ80の正回転により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]が大きくなる。DUTY値はモータ82に給電される電流値に相当する。
図5に示すように、DUTY値がD2(%)であるとき、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、Q−A[CCM]である。このように改質水流量がQ−A[CCM]である場合には、給水操作の開始時刻から水センサ87がONするまでの経過時間Tは、
図3によれば、TM−A[sec]であり、許容範囲である時間TM3〜TM4の範囲内である。
【0076】
図6は、水ポンプ80を駆動させるモータのDUTY値がD2(%)と設定されているにも拘わらず、水ポンプ80の経年変化等により、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、初期値であるQ−A[CCM]から、Q−B[CCM]に変化した場合を示す。給水処理をした時の給水開始から水センサ87ONまでの経過時間から
図3を用い、改質水流量がQ−Bに変化したことを検出する。この場合には、
図6に示すように、DUTY値と改質水流量との関係について、特性線Aから特性線Bに校正させる。DUTY値と改質水流量との関係における校正結果は、制御部100のメモリ100mのエリアに更新して格納される。制御部100は、校正以後の制御において、特性線Aではなく、特性線Bに基づいて、水ポンプ80のDUTY値と、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係を更新する。このように更新すれば、燃料電池システムを逐一停止させずとも、継続して運転できる利点が得られる。本校正は、水ポンプ80のポンプ特性として、零点はほぼ変動せず、特性線の傾きのみ変化するような場合に有効である。
【0077】
上記したよう
な校正にすれば、水ポンプ80の劣化や圧損変化に起因して、給水通路8に供給される単
位時間あたりの改質水流量が変動した場合であっても、水ポンプ80のDUTY値と、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係を更新する。このため、システムの運転を逐一停止させることなく、運転を継続させつつ、発電モジュール18の故障および劣化を抑制する。このようにすれば、ユーザのメンテコストおよびランニングコスト
の増加を抑制すること
ができる。
【0078】
なお、校正は、給水操作の開始時刻(給水操作において水ポンプ80がオンした時刻)から、水センサ87がONとなる時刻までの物理量(経過時間、または、モータ82がステッピングモータの場合には、ステッピングモータに入力されたパルス総数)が規定範囲外のときに実施することが好ましい。あるいは、物理量が規定範囲内のときであっても、校正は、給水異常判定処理の終了時において実施することもできる。この場合、ポンプ特性の経年変化に速やかに対応できる。
【0079】
[実施形態8]
図7は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1〜7と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1〜5を準用できる。本実施形態によれば、給水異常判定制御において、蒸発部2への給水が異常であると判定されるとき(物理量が規定範囲外のとき)、制御部100は、水ポンプ80の出力に関する物理量と給水通路8に供給する改質水流量との相関関係を示す特性(マップ)を校正して是正させる。校正では、水ポンプ80のDUTY値を2水準とさせる。すなわち、水抜き処理後に水ポンプ80のDUTY値をD2(%)での水供給による水センサONまでの経過時間測定と、水抜き処理跡にD2−2(%)での水供給による水センサONまでの経過時間測定の2水準の処理を行う。これにより給水異常判定処理において改質水流量は2水準に変化される。
【0080】
図7の特性線αは、経年変化していない水ポンプ80の初期のポンプ特性を示す。
図7の特性線αとして示すように、水ポンプ80のDUTY値が大きくなると、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]が大きくなる。校正前では、
図7の特性線αによれば、DUTY値がD2(%)であるとき、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、Q−A[CCM]である。また、校正前では、
図7の特性線αによれば、DUTY値がD2−2(%)であるとき、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、Q−A2[CCM]である。経年変化によりポンプのポンプ特性が次第に変化する。
【0081】
図7の特性線βは、水ポンプ80を駆動させるモータのDUTY値をD2(%)と設定しているにも拘わらず、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、Q−B[CCM]に変化した場合を示す。実施形態7と同様に
図3に基づき、水供給開始からの経過時間から改質水流量を演算している。更に、
図7の特性線βは、水ポンプ80を駆動させるモータのDUTY値がD2−2(%)としているにも拘わらず、水ポンプ80の経年変化等により、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量は、Q−A2[CCM]から、Q−B2[CCM]に変化した場合を示す。この場合には、
図7に示すように、水ポンプ80のDUTY値と、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係について、制御部100は、特性線αから特性線βに校正させる。校正結果は制御部100のメモリ100mのエリアに格納され、校正以後の制御において、特性線αではなく、特性線βに基づいて、水ポンプ80のDUTY値と、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係が規定される。
【0082】
上記したように水ポンプ80の変質および劣化等に起因して、水ポンプ80のDUTY値−改質水流量との関係を示すポンプ特性が変化した場合において、上記した校正が実行される。これにより、燃料電池システムの運転を停止させてメンテナンスせずとも、発電モジュール18に必要な改質水流量を送ることが可能となり、発電モジュール18の劣化および故障を抑制することができる。本実施形態によれば、給水異常でシステムを直ちに停止させるのではなく、水ポンプ80のDUTY値と、水ポンプ80により供給される単位時間あたりの改質水流量[CCM]との関係を校正させる。このためシステムの運転を継続させることができるため、ユーザの経済コストの増加等を抑制することができる。
【0083】
[実施形態9]
本実施形態は上記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用および効果を有するため、
図1〜
図3、
図5〜
図7を準用できる。本実施形態によれば、給水異常判定制御において、制御部100は、水ポンプ80をDUTY値もしくは回転数にて駆動させる。
図8は制御例を示す。ユーザまたは制御部100によりシステムの起動指示が制御部100に入力されると、制御部100は、
図8のフローチャートを開始させる。まず、制御部100は、各種、センサ、スイッチ、機器の情報を読み込み(ステップS32)、情報に基づいて現在が暖機モード移行前であるか否かを判定する(ステップS34)。現在が暖機モード移行前であれば、制御部100は給水異常判定処理を実行する。この場合、制御部100は、水ポンプ80を逆回転させ、給水通路8において水ポンプ80よりも下流に存在する改質水を水タンク4に戻す戻し操作を実行し、給水通路8の水を空にする(ステップS36)。戻し操作では、供給される改質水の指示流量をQ1[CCM]とし、モータ80への指示DUTY値をD1とし、モータ80の稼動時間をTM1[sec]とさせる。これらの値は、給水通路8において水ポンプ80の出口ポート80pから水センサ87までの通路内の改質水が確実に水タンク4に戻り、通路内の改質水がなくなるような数値として予め設定され、制御部100のメモリ100mに格納されている。
【0084】
続いて、所定時間後、水センサ87が水を検知しているか否か(ONであるか否か)を判定する(ステップS37)。水センサ87が水を検知している場合(ステップS37のNo)は、水ポンプ80の故障で逆回転できておらず水が抜けないか、あるいは水センサ87の異常で水が抜けているのに「水検知(ON)」と判定していると判定でき、制御部100が異常として検出する(ステップS39)。
【0085】
一方、ステップS37で水センサ87が水を検知していない場合(ステップS37のYes)、制御部100は、給水操作として、水ポンプ80について指示流量をQ−A[CCM]とし、DUTY値をD2として設定し、水ポンプ80を正回転させて、水タンク4の改質水を水センサ87に向けて供給させる(ステップS38)。なお、D2=D1の関係、D2<D1の関係、D2>D1の関係としても良い。D2<D1であれば、給水操作において、給水通路8の水位の上昇速度は抑えられため、給水通路8における空気の巻き込み抑制に有利である。また、水センサ87のONまでの時間が長くなることで
図3における改質水流量の検出精度が上げられる。なお、ステップS6を実施した後に、必要に応じて、ΔTwait時間待機しても良い。この場合、給水通路8の水を重力により流下させ、給水通路8における空の度合を高めることを期待できる。
【0086】
その後、制御部100は、水センサ87が水を検知してONしたか否か、もしくは、モータの正回転の開始時刻(給水操作の開始時刻)からの経過時間Tが時間TM2[sec]以上か否かを判定する(ステップS40)。この条件が満たされない場合には、給水操作を継続する(ステップS40のNO)。この条件が満たされた場合には、制御部100は給水操作を終了させる(ステップS40のYES)。次に、水ポンプ80の駆動を停止させる(ステップS42)。ステップS40において、水センサ87付近に水が存在していたとしても水センサ87がONとならない場合には、水センサ87が故障していると考えられる。このように水センサ87が故障している場合であっても、発電モジュール18の蒸発部2への改質水の供給が許容される改質水量に基づいて、前記した時間TM2[sec]は、閾値物理量として予め決定されている。具体的には、水ポンプ80の正回転を継続させて給水通路8に改質水を過剰に供給し続けたとしても、発電モジュール18の改質部3に設けられている改質触媒等が液相状の改質水に水没したり、改質触媒が劣化したりしないだけの時間が時間TM2[sec]として予め設定されて、制御部100のメモリ100mに格納されている。
【0087】
水センサ87がONであるか否か判定する(ステップS44)。水センサ87がONであれば(ステップS44のYES)、ステップS46に進む。給水操作の開始時刻から水センサ87がONする時刻までの経過時間Tは、経過時間t−bとされる。経過時間t−bについては、制御部100は、TM3≦t−b≦TM4の式が成立するか否かを判定する(ステップS46)。この条件が満たされた場合には、制御部100は、給水異常判定制御が問題なく実行され、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8が正常であると判断し(ステップS48)、正常フラグを立てると共に、発電モジュール18を暖機させる暖機モードおよび発電モードへの移行を許可する(ステップS50)。暖機モードでは、改質部3および蒸発部2を水蒸気改質に適する温度領域に加熱させる。暖機モードが正常に終了すると、制御部100は発電モードに移行する。
【0088】
ステップS44において水センサ87がONしないときには(ステップS44のNO)、制御部100は、蒸発部2への改質水の供給が異常であると判定する(ステップS52)。即ち、水センサ87、水ポンプ80および給水通路8のうちの少なくとも一つが故障であると判定し、更に、異常信号を警報器102に発報し、暖気モードおよび発電モードへの移行を禁止する(ステップS54)。
【0089】
ステップS46において、制御部100は、TM3≦t−b≦TM4の式が成立するか否かを判定する。この式が成立する場合には、制御部100は、給水異常判定制御が問題なく実行され、前述したように給水系が正常であると判断し(ステップS48)、発電モジュール18を暖機させる暖機モードおよび発電モードへの移行を許可する(ステップS50)。暖機モードでは、改質部3および蒸発部2を水蒸気改質に適する温度領域に加熱させる。暖機モードが正常に終了すると、制御部100は発電モードに移行する。上記した式が成立しない場合には(ステップS46のNO)、制御部100は、水ポンプ80が経年変化していると判定し、更に、校正処理を実行し(ステップS58)、その後、ステップS50に進む。
【0090】
以上説明したように本実施形態によれば、前述したように、水センサ87または水ポンプ80が故障している場合に対応できる。即ち、万一、水ポンプ80が正常で且つ水センサ87が故障している場合には、正常な水ポンプ80が継続して正回転して改質水を給水通路8に供給させているにも拘わらず、水センサ87はONしない。この場合には、ステップS52に進み、制御部100は、水センサ87または水ポンプ80の故障であると判定する。
【0091】
また本実施形態によれば、水ポンプ80がONしたにも拘わらず、TM3≦t−b≦TM4の式が成立しない場合には(ステップS46のNO)、給水操作の開始時刻から水センサ87がONする時刻までの経過時間t−bが、過剰に長いか、あるいは、過剰に短いことになる。この場合、制御部100は、水ポンプ80が経年変化していると判定し、
図6に示す校正処理、または、
図7に示す校正処理を実行する。校正処理が終了すれば、暖機モードおよび発電モードへの移行が許可される(ステップS50)。
【0092】
[その他]
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実行できる。燃料電池1は固体酸化物形燃料電池(SOFC)に限定されず、場合によっては、PEFCとも呼ばれる固体高分子形燃料電池(運転温度:例えば70〜100℃)でも良いし、PAFCとも呼ばれるリン酸形燃料電池でも良く、他のタイプの燃料電池でも良い。要するに、気相または液相の燃料を水蒸気改質させる水蒸気を改質水から形成する蒸発部2を有する燃料電池システムであれば良い。加熱部40は水タンク4に設けられているが、廃止されていても良い。
【0093】
上記した記載から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノードガスおよびカソードガスが供給されて発電する燃料電池と、改質水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部と、前記蒸発部で生成された前記水蒸気を用いて原料ガスを改質させてアノードガスを形成する改質部と、前記蒸発部に供給される前の改質水を溜める水タンクと、前記水タンクと前記蒸発部とを連通させ前記水タンク内の改質水を前記蒸発部に供給させる給水通路と、前記給水通路または前記水タンクに設けられ前記水タンク内の改質水を前記蒸発部に供給させる正回転可能および前記給水通路の前記改質水を前記水タンクに戻す逆回転可能に切り替え可能な水搬送源と、前記給水通路において前記蒸発部の上流且つ前記水搬送源の下流に設けられ水の存在を検知する水センサと、前記水搬送源を制御する制御部とを具備しており、前記制御部は給水異常判定処理を実行する燃料電池システム。
【0094】
給水異常判定処理は、水搬送源を逆回転させることにより給水通路の改質水を水タンクに戻して給水通路の改質水を空にする戻し操作と、給水通路の改質水を空にした状態において、水搬送源を正回転させることにより水タンクの改質水を前記給水通路に供給し、前記水センサが水を検知するまでの水搬送源の出力に関する物理量を検知する給水操作と、給水操作における物理量が規定範囲であるか否かを判定し、物理量が規定範囲内であれば蒸発部への給水が正常であると判定し、前記給水操作における物理量が規定範囲外であれば蒸発部への給水が異常であると判定する判定操作とを含む。給水の異常は、水センサおよび/または水ポンプの故障に相当する。