(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結ブラケットの後部にはビードが設けられており、このビードの延長線と前記脆弱部とは、前記リクライニングユニットの軸を中心とした共通の円周上に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の乗物用シート。
前記連結ブラケットは前記マウント部材の側壁部に重ねて固定されており、前記マウント部材の側壁部に重なる形態で前記脆弱部の下方にビードが設けられていることを特徴とする請求項1,2,4,5の何れか1の請求項に記載の乗物用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1に記載の車両用シートは、リクライニング装置に較べて連結ブラケットが小さいため、連結ブラケットに形成された段部、すなわち、衝撃を吸収可能な脆弱部として機能できる段部がリクライニング装置の径方向内側に位置している。連結ブラケットの脆弱部で衝撃を吸収することができるが、より一層衝撃を吸収することが望まれる。
【0006】
本発明は、以上のような技術的背景に鑑みてなされたものであり、乗物の衝突時に発生する衝撃力を吸収し易くすることができる乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する本発明の乗物用シートは、少なくともシートクッションおよびシートバックを備えた乗物用シートであって、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、シートクッションをフロア上に設置するためのマウント部材と、リクライニングユニットと、シートバックフレームの下部とマウント部材の後部とをリクライニングユニットを介して連結する連結ブラケットとを有し、連結ブラケットは、脆弱部が設けられており、この脆弱部は、リクライニングユニットの径方向外側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る乗物用シートでは、乗物の衝突時に乗員の上体からシートバックに向けて後方移動荷重が加わると、その荷重がシートバックフレームからリクライニングユニットを介して連結ブラケットに伝達される。そして、連結ブラケットがリクライニングユニットの径方向外側にある脆弱部を起点として変形することで、乗物の衝突時に発生する衝撃力が吸収される。その際、剛性が高いリクライニングユニットの径方向外側に脆弱部が配置されているため、連結ブラケットは剛性の低い脆弱部からシートの左右方向に変形する。
【0009】
本発明の乗物用シートにおいて、連結ブラケットの後部にはビードが設けられており、このビードの延長線と脆弱部とは、リクライニングユニットの軸を中心とした共通の円周上に配置されているのが好ましい。この場合、脆弱部の剛性が簡単な構造で容易に低下し、連結ブラケットの後部が脆弱部から容易に変形可能となる。
【0010】
また、脆弱部を挟むように配置して複数のビードが連結ブラケットに設けられている場合、乗物の衝突時に発生する衝撃力が脆弱部に導かれることで、連結ブラケットが脆弱部から変形する。
【0011】
さらに、連結ブラケットがマウント部材の側壁部に重ねて固定されており、連結ブラケットのビードがマウント部材の側壁部に重なる形態で脆弱部の下方に設けられている場合、剛性の高いリクライニングユニットとビードとの間の剛性の低い部分にある脆弱部を起点として、連結ブラケットが変形する。
【0012】
本発明の乗物用シートにおいて、マウント部材と連結ブラケットとを固定する固定部がビードより下方の連結ブラケットの下部に設けられている場合、脆弱部に荷重が集中し易くなり、連結ブラケットを変形させ易くなる。
【0013】
また、連結ブラケットのビードがマウント部材から離れるように乗物用シートの幅方向の外側に膨らむ形態で設けられている場合、連結ブラケットの下部をマウント部材の側壁部に重ねて一体化することで、連結ブラケットが上部の脆弱部から変形する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明では、乗物の衝突時に乗員の上体からシートバックに向けて移動荷重が加わると、その荷重がシートバックフレームからリクライニングユニットを介して連結ブラケットに伝達され、連結ブラケットが脆弱部から変形することで、乗物の衝突時に発生する衝撃力が吸収される。その際、剛性が高いリクライニングユニットの径方向外側に脆弱部が配置されているため、連結ブラケットは剛性の低い脆弱部からシートの左右方向に変形する。従って、請求項1に記載の発明によれば、乗物の衝突時に発生する衝撃力を吸収することができる。また、乗員の頭部からヘッドレストが離れないようにして乗員の頸部への負荷を軽減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、連結ブラケットの後部にビードが設けられ、このビードの延長線と脆弱部とがリクライニングユニットの軸を中心とした共通の円周上に配置されているため、脆弱部の剛性を簡単な構造で容易に低下させることができ、連結ブラケットの後部を脆弱部から一層変形し易くさせることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、脆弱部を挟むように配置して複数ビードが連結ブラケットに設けられるため、乗物の衝突時に発生する衝撃力を脆弱部に導いて連結ブラケットを脆弱部から変形させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、連結ブラケットがマウント部材の側壁部に重ねて固定されており、連結ブラケットのビードがマウント部材の側壁部に重なる形態で脆弱部の下方に設けられているため、剛性の高いリクライニングユニットとビードとの間の剛性の低い部分にある脆弱部を起点として、連結ブラケットを変形させることができる。の
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、マウント部材と連結ブラケットとを固定する固定部がビードより下方の連結ブラケットの下部に設けられているため、脆弱部に荷重が集中し易くなり、連結ブラケットを変形させ易くなる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、連結ブラケットのビードがマウント部材から離れるように乗物用シートの幅方向の外側に膨らむ形態で設けられているため、連結ブラケットの下部をマウント部材の側壁部に重ねて一体化することができ、連結ブラケットを上部の脆弱部から変形させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る乗物用シートの一実施形態について説明する。一実施形態の乗物用シートは、例えば
図1に示すように、自動車の運転席に配置される車両用シートSとして構成されている。この車両用シートSは、ウレタンフォームなどのクッション材からなるパッド材が合成皮革や布地などの表皮で覆われたシートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。なお、以下の説明において、前後、左右の方向は、シートクッションS1に乗員が着座した状態を想定し、その乗員から見た方向とする。
【0022】
シートクッションS1およびシートバックS2は、
図2および
図3に示すようなシートクッションフレーム10およびシートバックフレーム20を骨格として内蔵している。また、図示省略したが、ヘッドレストS3もその骨格を構成するヘッドレストフレームを内蔵している。
【0023】
シートクッションフレーム10は、概略長方形の皿形にプレス成形されたパンフレーム11を主体に構成されている。このパンフレーム11は、運転席のフロア上にスライドレール30を介して前後方向に位置調節自在となっている。
【0024】
一方、シートバックフレーム20は、縦長の長方形に枠組みされたパイプフレーム21と、このパイプフレーム21の右側部分に溶接(固定)された右サイドフレーム22と、パイプフレーム21の左側部分の下部に溶接された左サイドフレーム23と、左サイドフレーム23の直上方に配置されてパイプフレーム21の左側部分に溶接された支持ブラケット24とを備えている。
【0025】
右サイドフレーム22は、パイプフレーム21の右側部分から前方に張り出す形状にプレス成形されている。この右サイドフレーム22は、後縁部がパイプフレーム21の右側部分の外側面に沿って溶接され、後縁部の下部がパイプフレーム21の後面に廻り込んで強固に溶接されることで、パイプフレーム21の右側部分の剛性を高めている。
【0026】
このような右サイドフレーム22の下端部は、シートクッションフレーム10の右側後部に配置された右側連結ブラケット40にリクライニングユニットRUを介して前後に傾動自在に連結されている。ここで、右側連結ブラケット40は、剛性が高い側のサイドフレームである右サイドフレーム22の下部に配置された他の連結ブラケットを構成する。
【0027】
左サイドフレーム23は、パイプフレーム21の左側の下端部の外側面を包持して溶接されている。この左サイドフレーム23の下端部は、シートクッションフレーム10の左側後部に配置された左側連結ブラケット50に対し前後に傾動自在に連結されている。ここで、左側連結ブラケット50は、剛性が低い側のサイドフレームである左サイドフレーム23の下部に配置された一方の連結ブラケットを構成する。
【0028】
支持ブラケット24は、図示しないアームレストの支持部材を兼用するものであり、アームレストを起倒自在に支持するための支持ピン24Aを有している。
【0029】
右サイドフレーム22と支持ブラケット24との間には、弾性支持部材の一例として、連続する波形に屈曲形成された線状バネからなる上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26が張設されている。なお、シートクッションS1に着座した乗員の上体を受け止める受圧板(図示省略)を設ける場合、受圧板は、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26に装着することで、シートの前後方向に弾性的に支持される。このような受圧板を支持する弾性支持部材はワイヤスプリングで構成することができる。
【0030】
ここで、剛性が高い右サイドフレーム22には、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の右端部をそれぞれ後方に誘導可能に連結するための誘導連結部22A,22Aが、右サイドフレーム22を構成する板材の切り起こしにより形成されている。
【0031】
上下の誘導連結部22A,22Aは、同様に構成されているため、上部弾性支持部材25の右端部を後方に誘導可能に連結する上方の誘導連結部22Aについてのみ説明し、下部弾性支持部材26の右端部を後方に誘導可能に連結する下方の誘導連結部22Aについては説明を省略する。
【0032】
誘導連結部22Aは、
図4に拡大して示すように、右サイドフレーム22の左側面(内側面)から前端部が内側に突出するように舌片状に斜めに切り起こされている。この誘導連結部22Aの前端部には、上部弾性支持部材25の右端部を係止するフック部22Bが外側方向にL字状に折り曲げ形成されている。また、誘導連結部22Aの後端部には、補強部22Cが内側方向に膨出して形成されている。この補強部22Cは、後述する摺動案内部22Dの後部の背面側を補強する。なお、摺動案内部22Dの後端部には、上部弾性支持部材25の右端部を前方へ離れ易くするための逃げ部(内側凸部)22Hがあるので、上部弾性支持部材25の右端部は、摺動案内部22Dの後端部での抵抗が抑えられて前方に戻り易くなる。
【0033】
このような誘導連結部22Aの外側の面は、上部弾性支持部材25の右端部を後方に摺動させるための摺動案内部22Dに設定されている。この摺動案内部22Dは、後部から前部に向かって上部弾性支持部材25の収縮方向に斜めに傾斜している。すなわち、摺動案内部22Dは、右サイドフレーム22の左側面から離間する内側方向に斜めに傾斜しており、前側が後側より内側に位置している。
【0034】
そして、摺動案内部22Dの前部の外側に屈曲する部分に、前方への摺動を規制する摺動規制部(前方摺動規制部)22Eが設定されている。この摺動規制部22Eは、上部弾性支持部材25に作用する後方移動荷重が所定値に達するまで、上部弾性支持部材25の右端部が後方へ摺動するのを規制する。
【0035】
また、摺動案内部22Dの後端部には、後方に摺動する上部弾性支持部材25の右端部を所定の終端位置に停止させるストッパーとして機能する位置規制部22Fが設けられている。この位置規制部22Fは、消音効果のある樹脂材料やゴム材料により、例えば断面が三角形の棒状に形成されていて、摺動案内部22Dの後端部に接着などで固定されている。
【0036】
ここで、誘導連結部22Aが切り起こされた右サイドフレーム22の切起こし窓の上部には、上方に突出した逃げ部(山形形状)22Gが形成されている。この逃げ部22Gは、線状バネからなる上部弾性支持部材25の右端部を誘導連結部22Aのフック部22Bに掛け止める作業に際し、上部弾性支持部材25の右端部との干渉を避けて作業性を向上させるためのものである。なお、このような山形形状の逃げ部22Gは必須のものではないため、
図4に二点鎖線で示すように、逃げ部22Gは省略することができる。
【0037】
一方、
図5に拡大して示すように、支持ブラケット24には、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の左端部をそれぞれ包持して固定する固定部(保持部)24B,24Bが折曲げ形成されている。この固定部(保持部)24B,24Bは、上下に振り分けられていて、その間に支持ピン24Aや取付部があるため、コンパクトな配置となっている。
【0038】
図3に示した左右のスライドレール30,30は、基本的に左右対称に構成されているため、右側のスライドレール30について説明し、左側のスライドレール30についての詳細な説明は省略する。ここで、右側のスライドレール30は、
図6および
図7に示すように、運転席のフロア上に固定されたロアレール31と、このロアレール31に対し前後方向に摺動自在に組み付けられたアッパーレール32と、このアッパーレール32上に固定されたスライド部材33とを有する。このスライド部材33は、アッパーレール32と一体に構成されていてもよい。
【0039】
右側のスライド部材33は、
図2および
図3に示したシートクッションフレーム10の一部を構成するシート取付け部材であり、シートクッションS1を運転席のフロア上に設置するためのマウント部材の一部として機能する。なお、マウント部材は、シートクッションフレームF1をフロア上に支持するために、シートクッションフレームF1に一体または別体に設けられた支持ブラケットで構成されていてもよい。
【0040】
スライド部材33は、右側連結ブラケット40に接続される。このスライド部材33は、
図8に示すように、パンフレーム11に接続される前部接続片33Aおよび後部接続片33Bと、右側連結ブラケット40に接続される側壁33Cと、右側連結ブラケット40などを覆う図示しないカバー部材を固定するための後壁33Dとを有する。
【0041】
後壁33Dは、スライド部材33の後部から上方に立ち上がる第1の壁であり、また、側壁33Cは、右側連結ブラケット40の内側の面に重なって上方に立ち上がる第2の壁である。この側壁33C(第2の壁)は、右側連結ブラケット40との接合面を大きくするため、後壁33D(第1の壁)よりも高く形成されており、両者は相互に直角に交差している。
【0042】
ここで、右側のスライドレール30を構成する右側のスライド部材33の後部には、左右方向の衝撃荷重による変形を誘発するための脆弱部33Eが設けられている。この脆弱部33Eは、後壁33D(第1の壁)と側壁33C(第2の壁)との間に、上方が開いた切欠き部として形成されている。
【0043】
右側のスライド部材33の後部に形成された脆弱部33Eは、
図7に示したように、スライド部材33の側壁33C(第2の壁)と右側連結ブラケット40の下部とを固定する固定部としての前後のボルト・ナットBNのうち、右側連結ブラケット40の後部に配置されたボルト・ナットBNの位置よりも下方の位置まで切り欠かれて形成されている。
【0044】
リクライニングユニットRUは、右サイドフレーム22の下端部と右側連結ブラケット40の上部との間に配置されており、このリクライニングユニットRUを介して右側連結ブラケット40の上部が右サイドフレーム22の下部に連結されている。これにより、右側のスライド部材33は、右側連結ブラケット40およびリクライニングユニットRUを介して右サイドフレーム22の下端部に連結されている。なお、左側のスライド部材33は、左側連結ブラケット50を介して左サイドフレーム23の下端部に連結されている(
図5参照)。
【0045】
ここで、剛性が高い側の右サイドフレーム22の下部には脆弱部が設けられている。すなわち、剛性が高い側の右サイドフレーム22の下部に位置する右側連結ブラケット40の上下方向中間部の後部には、シートバックフレーム20の縦軸回りの捩れ力により変形を誘発するための脆弱部41が設けられている。この脆弱部41は、
図9に示すように、リクライニングユニットRUの後側で、リクライニングユニットRUの径方向外側に位置する段部として形成されており、剛性が低い側の左サイドフレーム23から剛性が高い側の右サイドフレーム22に向かう方向に変形を誘発するように構成されている。
【0046】
右側連結ブラケット40は、左側連結ブラケット50とは反対側の外側に膨らむ補剛用の前後のビード、すなわち、前部縦ビード42および後部縦ビード43を有する。前部縦ビード42は、
図9に示したように、リクライニングユニットRUの前側の外周の周囲に上端部が臨む位置に形成されており、その下半部はスライド部材33の側壁33Cに重なる位置に配置されている。
【0047】
一方、後部縦ビード43は、リクライニングユニットRUの後側の外周の周囲である脆弱部41の直下に上端部が臨む位置に形成されており、その下半部はスライド部材33の側壁33Cに重なる位置に配置されている。すなわち、後部縦ビード43の上端部と脆弱部41とは、リクライニングユニットRUの中心軸を中心とした共通の円周上に配置されている。換言すれば、リクライニングユニットRUの中心軸を中心とした共通の円周上で後部縦ビード43の上方への延長線と脆弱部41の段部とが交差している。
【0048】
ここで、
図5に示したように、左側連結ブラケット50は、右側連結ブラケット40とは反対側の外側に膨らむ補剛用の縦ビード51を第1の外向きビードとして有する。この第1の外向きビードとしての縦ビード51は、左サイドフレーム23の下端部に回動自在に連結される左側連結ブラケット50の上部の枢着部52の近傍位置から下方に延びる形態で形成されている。このため、左側連結ブラケット50の枢着部52が縦ビード51により補剛される。
【0049】
なお、第1の外向きビードである縦ビード51は、
図10に示すように、上下に分割して形成することができる。この場合、左側連結ブラケット50は、縦ビード51が上下に分割された部分から内側に容易に変形できるようになる。
【0050】
また、
図11に示すように、上下に分割して形成された縦ビード51の分割部分には、縦ビード51と同方向に膨らむ形態で縦ビード51と交差して延びる横ビード53を第2の外向きビードとして形成することができる。この場合、左側連結ブラケット50は、第2の外向きビードである横ビード53に沿って内側に折れ曲がって容易に変形できるようになる。なお、第2の外向きビードである横ビード53に貫通孔を設けると、左側連結ブラケット50が横ビード53に沿って一層折れ曲がり易くなるので好ましい。
【0051】
続いて、本発明に係る乗物用シートの一実施形態として構成された車両用シートSにつき、その作用効果を説明する。
図1に示した車両用シートSが運転席に配置された自車両の運転時において、シートクッションS1に着座した乗員の上体からシートバックS2に作用する押圧力が所定範囲内にある通常運転時には、
図2および
図3に示した上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の右端部が、
図4に示した摺動案内部22Dの前部の摺動規制部22Eに係止された状態にある。このため、乗員の上体は、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26を押圧しつつ適度にシートバックS2に沈み込むようになり、こうして乗員の上体が安定した運転姿勢に保持される。
【0052】
ここで、自車両の側面衝突時や後面衝突時などの自車両の衝突時に、乗員の上体からシートバックS2に向けて荷重が衝撃的に加わると、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26が後方に大きく撓む。その際、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の右端部は、摺動案内部22Dの前部の摺動規制部22Eから後方に向かって摺動案内部22Dを摺動し、位置規制部に受け止められて異音を発生することなく静かに所定の終端位置で停止する。その結果、乗員の上体がシートバックS2に深く沈み込み、乗員の頭部が速やかにヘッドレストS3に受け止められ、乗員の頸部への負荷が大幅に軽減される。
【0053】
加えて、このような自車両の衝突時には、シートバックS2(
図1参照)に加わる衝撃的な後方移動荷重により、
図12に示すように、剛性が低いサイドフレーム23が付設されているパイプフレーム21の左側が、剛性が高いサイドフレーム22が付設されているパイプフレーム21の右側より大きく後傾してシートバックフレーム20が縦軸廻りに反時計方向に捩じれる。そして、この捩れ力により、
図13に示すように、剛性が高い側のサイドフレーム22の下部に配置された右側連結ブラケット40が脆弱部41を起点として右方向の外側に変形する。
【0054】
その際、剛性が低い側のサイドフレーム23の下部に配置された左側連結ブラケット50は、
図14の(a)に示すように、スライド部材33の側壁33Cと共に、右側連結ブラケット40に向けて倒れ込み、右側連結ブラケット40が脆弱部41を起点として右方向の外側に変形するのを助長する。その結果、自車両の衝突時に発生する衝撃力が十分に吸収される。
【0055】
ここで、右側連結ブラケット40の脆弱部41は、剛性が高いリクライニングユニットRUの後部の外周の周囲に位置する段部として形成されているため、自車両の衝突時には、剛性が低い脆弱部41を起点として右側連結ブラケット40が変形する。その結果、自車両の衝突時に発生する衝撃力が吸収される。また、右側連結ブラケット40が右方向の外側に変形するため、ヘッドレストS3は乗員の頭部を受け止めた状態を維持することができ、乗員の頸部への負荷が軽減される。
【0056】
また、右側連結ブラケット40の後部には後部縦ビード43が設けられており、この後部縦ビード43の上方への延長線と脆弱部41の段部とがリクライニングユニットRUの中心軸を中心とした共通の円周上で交差しているため、脆弱部41の剛性を簡単な構造で容易に低下させることができ、右側連結ブラケット40の後部を脆弱部41から容易に変形させることが可能となる。
【0057】
さらに、右側連結ブラケット40はスライド部材33の側壁33Cに重ねて固定されており、後部縦ビード43は、スライド部材33の側壁33Cに重なる形態で脆弱部41の下方に設けられているため、右側連結ブラケット40は、
図13に示すように、脆弱部41を起点として、リクライニングユニットRUと後部縦ビード43との間の剛性の低い部分(
図9の線L参照)で変形するようになる。
【0058】
また、右側連結ブラケット40の前部縦ビード42および後部縦ビード43は、車両用シートSの右方向の外側に膨らむ形態で設けられているため、右側連結ブラケット40の下部をスライド部材33の側壁33Cに重ねて一体化することができ、右側連結ブラケット40を上部の脆弱部41から変形させることができる。
【0059】
一方、左側連結ブラケット50に設けられた縦ビード51は、右側連結ブラケット40とは反対側の外側に膨らんでいるため、左側連結ブラケット50は、縦ビード51が膨らむ外側とは反対の内側に変形し易い(
図14(a)参照)。すなわち、左側連結ブラケット50は、右側連結ブラケット40に向けて変形し易い。このため、右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形する際、左側連結ブラケット50は、右側連結ブラケット40に向けて容易に変形することで、右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形するのを助長する。従って、右側連結ブラケット40が脆弱部41から容易に変形するようになり、自車両の衝突時に発生する衝撃力が容易に吸収される。
【0060】
また、左側連結ブラケット50に設けられる縦ビード51は、左側連結ブラケット50の上部の枢着部52の近傍位置から下方に延びる形態で形成されているため、左側連結ブラケット50の枢着部52が縦ビード51により補剛される。
【0061】
ここで、
図10に示したように、左側連結ブラケット50に設けられる縦ビード51が上下に分割して形成されている場合、左側連結ブラケット50は、
図14の(b)に示すように、縦ビード51が上下に分割された部分から内側に容易に変形できるようになる。従って、この場合には、右側連結ブラケット40が脆弱部41から一層容易に変形するようになり、自車両の衝突時に発生する衝撃力が一層容易に吸収される。
【0062】
さらに、左側連結ブラケット50に設けられる縦ビード51が上下に分割して形成され、その分割部分に縦ビード51と同方向に膨らむ形態で縦ビード51と交差して延びる横ビード53が形成されている場合、左側連結ブラケット50は、横ビード53から内側に容易に変形できるようになる。従って、この場合には、右側連結ブラケット40が脆弱部41からより一層容易に変形するようになり、自車両の衝突時に発生する衝撃力がより一層容易に吸収される。
【0063】
ここで、剛性が高い右サイドフレーム22には、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の右端部をそれぞれ後方に誘導可能に連結するための誘導連結部22A,22Aが設けられているため、自車両の衝突時にシートバックS2に沈み込む乗員の上体は、剛性が高い右サイドフレーム22に向けて深く沈み込むようになり、この後方移動荷重が付加されることで、剛性が高い側のサイドフレーム22の下部に配置された右側連結ブラケット40は、より一層容易に脆弱部41から変形するようになる。従って、自車両の衝突時に発生する衝撃力がさらに一層容易に吸収される。
【0064】
さらに、剛性が高い側の右サイドフレーム22は、後縁部がシートバックフレーム20の左右方向の外側面に沿って延びており、後縁部の下部がシートバックフレーム20の後面に廻り込んで固定されているため、剛性が高い側のサイドフレーム22は捩れ変形し易くなっている。このため、乗物の衝突時には、シートバックフレーム20が一層捩れ易くなり、その結果、剛性が高い側のサイドフレーム22の下部に配置された右側連結ブラケット40は、さらに一層容易に脆弱部41から変形するようになる。従って、自車両の衝突時に発生する衝撃力がさらに一層容易に吸収される。
【0065】
ここで、一実施形態の乗物用シートでは、スライドレール30を構成するスライド部材33の後部に、左右方向の荷重に対する脆弱部33Eが設けられている。すなわち、脆弱部33Eは、スライド部材33が剛性を確保しつつ、脆弱部33Eから容易に変形できるように、スライド部材33の後端部で相互に交差して立ち上がる後壁33Dと側壁33Cとの間に、上方が開いた切欠き部として形成されている。
【0066】
従って、自車両の衝突時に右側連結ブラケット40が脆弱部41を起点として右方向の外側に変形する際、スライド部材33の側壁33Cが右側連結ブラケット40と共に右方向の外側に倒れ込んで右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形をするのを助長する。その結果、自車両の衝突時に発生する衝撃力が一層十分に吸収される。加えて、スライド部材33の側壁33Cが右側連結ブラケット40と共に右方向の外側に倒れ込むため、ヘッドレストS3は乗員の頭部を受け止めた状態を維持することができ、乗員の頸部への負荷が軽減される。
【0067】
ここで、スライド部材33の側壁33Cと右側連結ブラケット40とを連結する固定部は、前後のボルト・ナットBNで構成されているため、右側連結ブラケット40は脆弱部41から変形し易くなる。そして、固定部としての前後のボルト・ナットBNのうち、後側のボルト・ナットBNは、スライド部材33の側壁33Cの後部に配置されていて、右側連結ブラケット40の脆弱部41に近い位置にあるため、後側のボルト・ナットBNから脆弱部41に衝撃荷重が伝わり易くなり、右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形し易くなる。
【0068】
また、スライド部材33の後部に形成された脆弱部33Eは、
図7に示したように、スライド部材33の側壁33Cと右側連結ブラケット40の下部とを固定する固定部としての前後のボルト・ナットBNのうち、右側連結ブラケット40の後部に配置されたボルト・ナットBNの位置よりも下方の位置まで切り欠かれて形成されている。このため、右側連結ブラケット40は、スライド部材33の側壁33Cと共に脆弱部33Eから変形し易くなる。
【0069】
一実施形態の車両用シートSによれば、上部弾性支持部材25および下部弾性支持部材26の右端部をシートバックフレーム20に対し後方に誘導可能に連結する誘導連結部22Aを有するため、自車両の衝突時に乗員の上体からシートバックS2に向けて後方移動荷重が衝撃的加わる際、乗員の上体をシートバックS2に深く沈み込ませて乗員の頭部をヘッドレストS3に接近させることができ、乗員の頭部および頸部を効果的に保護することができる。
【0070】
また、自車両のの衝突時に乗員の上体からシートバックS2に衝撃的な後方移動荷重が作用した際には、剛性が低いサイドフレーム23が付設されているパイプフレーム21の左側を、剛性が高いサイドフレーム22が付設されているパイプフレーム21の右側より大きく後傾させてシートバックフレーム20を縦軸廻りに反時計方向に捩じらせることができ、この捩れ力により、剛性が高い側のサイドフレーム22の下部に配置された右側連結ブラケット40を脆弱部41から右方向の外側に変形させることができるため、自車両の衝突時に発生する衝撃力を十分に吸収することができる。
【0071】
さらに、右側連結ブラケット40の脆弱部41は、剛性が高いリクライニングユニットRUに隣接し、リクライニングユニットRUの径方向外側に位置する段部として形成されているため、自車両の衝突時には、剛性が低い脆弱部41を起点として右側連結ブラケット40を変形させることができる。その結果、自車両の衝突時に発生する衝撃力を吸収することができる。また、右側連結ブラケット40が右側の外側方向に変形するため、ヘッドレストS3は乗員の頭部を受け止めた状態を維持することができ、乗員の頸部への負荷を軽減することができる。
【0072】
また、スライドレール30を構成するスライド部材33の後部に、左右方向の荷重に対する脆弱部33Eが設けられているため、自車両の衝突時に右側連結ブラケット40が脆弱部41を起点として右方向の外側に変形する際、スライド部材33の側壁33Cが右側連結ブラケット40と共に右方向の外側に倒れ込んで右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形をするのを助長する。従って、自車両の衝突時に発生する衝撃力を一層十分に吸収することができる。加えて、スライド部材33の側壁33Cが右側連結ブラケット40と共に右方向の外側に倒れ込むため、ヘッドレストS3は乗員の頭部を受け止めた状態を維持することができ、乗員の頸部への負荷を軽減することができる。
【0073】
以上、本発明に係る乗物用シートの一実施形態としての車両用シートSについて説明したが、本発明の乗物用シートは、一実施形態の車両用シートSに限定されるものではなく、その構造は適宜変更することができる。
【0074】
例えば、右側連結ブラケット40に形成される補剛用のビードは、脆弱部41を挟むように配置して複数設けることができる。この場合、補剛用のビードに挟まれた脆弱部41に応力が集中するため、右側連結ブラケット40が脆弱部41から変形するようになり、自車両の衝突時に発生する衝撃力を吸収することができる。
【0075】
また、
図7に示したスライドレール30の脆弱部33Eは、スライド部材33の後壁33Dと側壁33Cとの間を下端まで切り欠いた形態としたが、
図15に示すように、後壁33Dと側壁33Cとの間を上部から切り欠くことで、後壁33Dと側壁33Cの下部同士つながった形態の脆弱部33Fとしてもよい。
【0076】
さらに、側壁33Cの後端部の下部に、前後方向に延びる長孔(スリット)を形成し、この長孔(スリット)を脆弱部33Gとしてもよい。ここで、脆弱部33Fまたは脆弱部33Gが容易に変形できるように、側壁33C(第2の壁)の後部と右側連結ブラケット40の後部とを固定する後ろ側のボルト・ナットBNは、後壁33D(第1の壁)の上端よりも高い位置に配置するのが好ましい。
【0077】
一実施形態の車両用シートSは、運転席が右側に配置された車両を対象として構成されているが、左右方向の構造を逆に構成することで、運転席が左側に配置された車両に適用できる。
【0078】
また、一実施形態の車両用シートSは、シートクッションS1とシートバックS2とヘッドレストS3とが一体に構成されたバケットタイプの車両用シートとして構成することもできる。
【0079】
さらに、本発明の乗物用シートは、船舶用や航空機用のシートとして構成することもできる。