(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両として、エンジンと回転電機とを搭載するハイブリッド車両を述べるが、これは説明のための例示であって、回転電機を搭載する車両であればよい。例えば、エンジンを搭載しない電気自動車であっても構わない。また、ハイブリッド車両の動力装置として、エンジンと1台の回転電機とその間に設けられる動力伝達機構を有する構成を説明するが、これも説明のための例示である。ここでは、ハイブリッド車両としてエンジンと回転電機を有するものであればよく、エンジンの出力と回転電機の出力との間の関係は、車両の仕様に応じ、適宜変更が可能である。また、車両に搭載される回転電機を1台として説明するが、これも例示であって、複数の回転電機が車両に搭載される場合であってもよい。例えば、1台の回転電機を駆動用に、もう1台の回転電機を発電用に用いる構成としてもよく、前輪駆動用と後輪駆動用で別々の回転電機としてもよい。
【0018】
また、以下では、回転電機を冷却する冷媒として潤滑油としても用いられるATFを説明するが、これは例示であって、これ以外の冷却用流体でもよい。これに伴い、冷媒を循環する冷媒ポンプにオイルポンプの表記を用いるが、これもATFを用いる場合に合わせたものである。
【0019】
また、電動オイルポンプの駆動回路の電源としては、回転電機の電源装置とは独立の低電圧電源として説明するが、これは説明のための例示である。例えば、回転電機の電源装置から低電圧に電圧変換された電力を電動オイルポンプの駆動回路に供給するものとしてもよい。
【0020】
また、以下では、回転電機と動力伝達機構とが1つのケース体に収納され、そのケース内とオイルポンプユニットとの間で冷媒が循環するものとして説明するが、これは説明のための例示である。例えば、1つのケースにまとめずに、回転電機と動力伝達機構とオイルポンプユニットの間を冷媒が循環する構成としてもよい。
【0021】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0022】
図1は、ハイブリッド車両についての車両制御システム10の構成を示す図である。この車両制御システム10は、ハイブリッド車両に搭載される回転電機20の冷却構造12と、制御装置80を含むシステムである。
【0023】
冷却構造12は、ハイブリッド車両の駆動源である動力装置14として、エンジン16と
図1ではM/Gとして示される回転電機20を含み、回転電機20に接続されるM/G駆動回路30とその電源である高電圧電源32を含む。冷却構造12は、さらに、回転電機20を内部に含むケース体24の内部に冷媒26を循環供給するオイルポンプユニット40を含む。オイルポンプユニット40は、
図1ではMOPとして示される機械式オイルポンプ42と、EOPとして示される電動オイルポンプ44を含んで構成される。
【0024】
動力装置14は、エンジン16と、回転電機20と、この間に設けられる動力伝達機構18を含んで構成される。エンジン16は、内燃機関である。また、回転電機20は、ハイブリッド車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(M/G)であって、M/G駆動回路30から電力が供給されるときはモータとして機能し、エンジン16による駆動時、あるいはハイブリッド車両の制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。
【0025】
回転電機20に設けられる温度検出器27は、回転電機20の温度θ
Mを検出する回転電機温度検出手段である。温度検出器27の検出データは、図示されていない適当な信号線を用いて、制御装置80に伝送される。
【0026】
動力伝達機構18は、ハイブリッド車両に供給する動力をエンジン16の出力と回転電機20の出力との間で分配する機能を有する機構である。かかる動力伝達機構18としては、エンジン16の出力軸、回転電機20の出力軸、図示されていない車軸への出力軸の3つの軸に接続される遊星歯車機構を用いることができる。
図1で動力伝達機構18とエンジン16とを接続する軸がエンジン16の出力軸22である。この出力軸22は、接続軸70を介して機械式オイルポンプ42の駆動軸に接続され、機械式オイルポンプ42の駆動に用いられる。
【0027】
M/G駆動回路30は、高電圧電源32の直流電力と回転電機20を駆動するための交流電力との間の電力変換を行うインバータを含む回路である。インバータは、複数のスイッチング素子のオンオフタイミングを適切に調整するPWM(Pulse Width Modulation)制御によって三相駆動信号を生成して、回転電機20に供給する回路である。PWM制御は、回転電機20の回転周期に応じた周期を有する基本波信号と、鋸歯状波形を有するキャリア信号との比較で、パルス幅を変調する制御である。インバータは、このPWM制御によって、回転電機20の出力を所望の動作状態とする。
【0028】
高電圧電源32は、充放電可能な高電圧用二次電池である。具体的には、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池で構成することができる。組電池は、単電池または電池セルと呼ばれる端子電圧が1Vから数Vの電池を複数個組み合わせて、上記の所定の端子電圧を得るようにしたものである。高電圧電源32としては、その他に、ニッケル水素組電池、大容量キャパシタ等を用いることができる。
【0029】
ケース体24は、動力伝達機構18と回転電機20とを内部に含む筐体である。ケース体24の内部空間には、動力伝達機構18と回転電機20の可動部分の潤滑と、動力伝達機構18および回転電機20の冷却を行うための冷媒26が貯留される。冷媒としては、ATFと呼ばれる潤滑油を用いることができる。
【0030】
ケース体24に設けられる温度検出器28は、冷媒26の温度θ
Cを検出する冷媒温度検出手段である。温度検出器28の検出データは、図示されていない適当な信号線を用いて、制御装置80に伝送される。
【0031】
オイルポンプユニット40は、機械式オイルポンプ42と、電動オイルポンプ44を含むユニットで、ケース体24の内部空間に冷媒26を循環供給する冷媒ポンプユニットである。冷媒排出路60は、ケース体24において重力方向に沿った下方側、つまりケース体24の底部に近い箇所に設けられる冷媒排出口と、オイルポンプユニット40を結ぶ冷媒流通パイプである。冷媒供給路62は、オイルポンプユニット40と、ケース体24において重力方向に沿った上方側、つまりケース体24の天井部に近い箇所に設けられる冷媒供給口とを結ぶ冷媒流通パイプである。オイルクーラ50は、冷媒26の温度を空冷あるいは水冷によって低下させる熱交換器である。
【0032】
機械式オイルポンプ42は、駆動軸が接続軸70を介してエンジン16の出力軸22に接続される機械式冷媒ポンプで、エンジン16が動作するときに駆動される。すなわち、エンジン16の始動に伴って機械式オイルポンプ42は駆動が開始され、エンジン16が停止すると機械式オイルポンプ42の駆動が終了する。
【0033】
電動オイルポンプ44は、制御装置80からの制御信号の下でEOP駆動回路72によって駆動される電動冷媒ポンプである。EOP駆動回路72には、低電圧電源74から直流電力が供給される。低電圧とは、高電圧電源32の電圧に比較して低電圧という意味で、例えば約12Vから16Vの電圧を用いることができる。電動オイルポンプ44の駆動軸を回転させるモータとしては、三相同期型モータを用いることができる。この場合には、EOP駆動回路72は、直流交流変換機能を有するインバータを含んで構成される。また、インバータのPWM制御におけるオン・オフデューティを変更することによって、電動オイルポンプ44の出力を可変することができる。
【0034】
なお、三相同期型モータの代わりに単相交流モータを用いることもでき、あるいは直流モータを用いることもできる。電動オイルポンプ44の駆動軸を回転させるモータとして用いられるモータ形式に応じて、EOP駆動回路72の内容が変更される。
【0035】
機械式オイルポンプ42と電動オイルポンプ44とは、冷媒排出路60と冷媒供給路62の間に、互いに並列の関係で接続される。逆止弁46は、機械式オイルポンプ42とケース体24の冷媒供給口との間で冷媒26が逆流しないように設けられる弁である。同様に逆止弁48は、電動オイルポンプ44と、ケース体24の冷媒供給口との間で冷媒26が逆流しないように設けられる弁である。
【0036】
制御装置80は、上記の各要素を全体として制御する機能を有するが、特にここでは、アクセルホールド状態において回転電機20を効果的に冷却させる制御を行う機能を有する。かかる制御装置80は、ハイブリッド車両搭載に適したコンピュータで構成することができる。
【0037】
制御装置80に接続されるアクセル踏度検出部90は、ハイブリッド車両のアクセルに取り付けられ、運転者等のユーザによって踏まれるアクセルの状態を検出する手段である。
【0038】
制御装置80は、車両のアクセル踏度が所定の大きさであるにもかかわらず回転電機の回転数が予め定めた閾値低回転数を下回るときにアクセルホールド状態であると判断するアクセルホールド状態判断部82と、回転電機20の温度が予め定めた閾値温度
以上か否か、または回転電機20の出力トルクが予め定めた閾値トルク
以上か否かを判断する回転電機状態判断部84と、電動オイルポンプ44の作動制御を行うEOP作動制御部86を含んで構成される。これらの機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、EOP制御プログラムを実行することで実現できる。
【0039】
上記構成の作用について、
図2以下を用いて詳細に説明する。
図2は、アクセルホールド状態の判断と、それに伴う電動オイルポンプ44の冷媒供給状態の制御を説明する図である。
図2(a)から(d)の横軸はいずれも時間である。
【0040】
図2(a)の縦軸はアクセル踏度で、ここでは、規格化して、アクセルを全く踏んでいない状態を0とし、アクセルを限度一杯に踏み込んだ状態を100としてある。制御装置80は、アクセル踏度検出部90によって検出されるデータによって、アクセル踏度の大きさを取得する。
図2では、時間t
1までユーザによってアクセルは踏まれていなく、時間t
1からユーザによってアクセルが時間と共に踏み込まれて、限度一杯に達したことを示している。すなわち、ユーザは、時間t
1から、ハイブリッド車両を加速しようとして、アクセルを一杯に踏み込んでいることになる。
【0041】
図2(b)の縦軸は回転電機20の回転数である。
図2(b)では、時間t
1の前から、回転電機20の回転数が次第に低下している様子が示されている。いま、ハイブリッド車両が回転電機のみで走行しているとすると、車速が次第に低下していることになる。このとき、
図2(a)を見るとアクセルは踏まれていないので、路面抵抗で車速が減速していることが考えられる。例えば、ハイブリッド車両が上り坂にかかっているときなどである。そこで、ユーザは、減速を止めようとして時間t
1でアクセルを踏み込んでいる。
【0042】
ところが、アクセルを踏み込んでいるにもかかわらず、回転電機20の回転数はさらに低下し、ハイブリッド車両としてほとんど停車に近い状態になることを
図2(b)は示している。ほとんど車軸が回転していないときの回転電機20の回転数を閾値低回転数N
0とすると、時間t
2で、アクセルが踏まれているにもかかわらず、回転電機20は、閾値低回転数N
0を下回る。このように、車両のアクセル踏度が所定の大きさであるにもかかわらず回転電機の回転数が予め定めた閾値低回転数を下回ることが、アクセルホールドと呼ばれる現象である。
【0043】
アクセルホールドは、車両が路面等から受ける負荷と、車両の動力装置が出力するトルクとがバランスすることで生じる。このような状態の一例は、車両が上り坂にあるときである。その他の理由で回転電機20の回転がロック状態となるときもアクセルホールド状態となる。
【0044】
アクセルホールド状態となると、回転電機20の回転がほとんど停止状態となるので、三相駆動信号の相の切替が緩慢となり、ほとんど特定の相に固定状態となる。このように特定の相に固定状態となると、インバータの特定のスイッチング素子のみがオンとなり、特定の相のコイルに電流が集中する。これによって、回転電機20の温度が局部的に上昇することが生じる。したがって、アクセルホールド状態を的確に検出し、回転電機20を迅速に冷却することが必要になる。
【0045】
アクセルホールド状態は、
図2(a),(b)に示すように、アクセル踏度が所定の大きさ以上であることと、回転電機20の回転数が閾値低回転数N
0以下であることで判断できる。制御装置80は、アクセル踏度検出部90から伝送されるアクセル踏度データを予め定めた所定閾値と比較し、また、回転電機20の回転数を閾値低回転数N
0と比較して、アクセルホールド状態であるか否かを判断できる。すなわち、アクセル踏度データが所定閾値以上であって、かつ回転電機20の回転数が閾値低回転数N
0以下であるときに、アクセルホールド状態であると判断される。制御装置80のアクセルホールド状態判断部82は、このような判断処理を実行し、アクセルホールド状態であると判断するときは、アクセルホールド信号をOFF状態からON状態として出力することができる。
【0046】
図2(c)は、縦軸に制御装置80が出力するアクセルホールド信号の状態を取ったものである。アクセルホールド信号は、アクセルホールド状態であるときを、ON状態=Highとし、アクセルホールド状態でないときを、OFF状態=Lowとすることができる。
図2(a)に示されるように、アクセル踏度は、時間t
1から上昇して限度まで到達してその状態を維持しているので、時間t
2以後は所定閾値以上を維持しているものとする。そのときは、アクセルホールド状態は、回転電機20の回転数が閾値低回転数以下であるときとなる。
図2(b)から、回転電機20の回転数が閾値低回転数以下であるときは、時間t
2から時間t
3の間である。したがって、
図2(c)に示されるように、アクセルホールド信号は、時間t
2でOFFからONとなり、時間t
3でONからOFFとなる。
【0047】
図2(d)は、縦軸に電動オイルポンプ44による冷媒供給状態を取ったものである。アクセルホールド状態になると、回転電機20が局部的な温度上昇をきたすので、電動オイルポンプ44によって冷媒26を回転電機20に供給することが必要である。そこで、制御装置80は、電動オイルポンプ44が停止中である場合に、アクセルホールド信号に基づき、EOP駆動回路72に電動オイルポンプ44の起動を指示する。これによって、電動オイルポンプ44は作動を開始し、所定流量の冷媒26を回転電機20に供給する。
【0048】
このように、アクセルホールド信号がOFFからONとなる時間t
2において、電動オイルポンプ44を停止状態から作動状態とし、アクセルホールド状態がONからOFFに戻る時間t
3で電動オイルポンプ44を作動状態から停止状態に戻す。冷媒供給状態でいえば、時間t
2において、A=流量0から、B=所定流量に変更される。時間t
3では、再びA=流量0とされる。このようにすることで、アクセルホールド状態になったときに、電動オイルポンプ44から回転電機20に対し冷媒26を供給するものとできる。かかる処理は、制御装置80のEOP作動制御部86の機能によって実行される。
【0049】
上記では、時間t
2以前において電動オイルポンプ44が停止状態であるとした。ここで、EOP駆動回路72はPWM制御によって電動オイルポンプ44が作動状態のときにオン・オフデューティを変更することで流量等を可変できる。そこで、時間t
2以前において、既に電動オイルポンプ44が作動中であって、オン・オフデューティが小さい値とすると、時間t
2においてオン・オフデューティを大きくして、流量を増加させることができる。
【0050】
図2(d)でいえば、アクセルホールド状態でない時間t
2以前と時間t
3以後では、A=流量Q
1とし、アクセルホールド状態である時間t
2から時間t
3の間では、B=所定流量Q
2とできる。ここで、所定流量Q
2は流量Q
1よりも多い流量である。このようにすることで、アクセルホールド状態になったときに、アクセルホールド状態でないときに比べて、多くの冷媒を電動オイルポンプ44から回転電機20に対し供給するものとできる。かかる処理も、制御装置80のEOP作動制御部86の機能によって実行される。
【0051】
上記では、アクセルホールド信号のON/OFFに従って、電動オイルポンプ44の冷媒供給状態を制御するものとした。これを、さらに回転電機20の温度θ
Mまたは回転電機20のトルクT
Mと関係させることができる。
【0052】
図3は、アクセルホールド信号と回転電機の温度θ
Mとに基づいて、電動オイルポンプ44の冷媒供給状態を制御する様子を説明する図である。
図3(a),(b)の横軸は時間である。
図3(b)は、
図2で説明したアクセルホールド信号が縦軸に取られている。ここで、
図2と同様に、時間t
2でアクセルホールド信号がOFFからONに変わり、時間t
3でONから再びOFFに戻る。
【0053】
図3(a)の縦軸は、回転電機20の温度θ
Mである。回転電機20の温度θ
Mは、温度センサの取付位置によっては必ずしもアクセルホールド状態に基づいて局部的に上昇する温度を検出するわけではないが、回転電機20の代表温度を示すものとして評価できる。例えば、回転電機20の温度θ
Mが予め定めた閾値温度θ
M0以上のときは、回転電機20に冷媒26の供給が必要と判断することができる。回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M以上か否かの判断は、温度検出器27の検出値データに基づいて、制御装置80の回転電機状態判断部84の機能によって実行される。
【0054】
図3(a)では、時間t
4で回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上となり、時間t
5で再び閾値温度θ
M0未満に戻っていることが示されている。従来のように、回転電機20の温度θ
Mのみで電動オイルポンプ44の作動期間を決めることとすると、時間t
4から時間t
5の間で電動オイルポンプ44を作動させることになる。この場合、
図3(b)に示されるように、アクセルホールド状態となっているのは時間t
2から時間t
3の間であるので、時間t
4から時間t
2の間、および時間t
3から時間t
5の間は、アクセルホールド状態に対応した電動オイルポンプ44の作動の必要はないことになる。
【0055】
そこで、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)AND(回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上)であることとすれば、回転電機20の温度θ
Mの監視とアクセルホールドの監視を兼ねることができる。
図3(a)の例では、このAND条件を満たす期間は時間t
2から時間t
3の間である。そこで、
図3(a)において、EOPの冷媒供給状態として、時間t
2までと時間t
3以後は冷媒供給状態をA=流量0とし、時間t
2から時間t
3の間は冷媒供給状態をB=所定流量とすることが示されている。このようにすることで、アクセルホールド状態となった回転電機20に対し、過冷却とすることなく、電動オイルポンプ44を過度に作動させることもなく、適切に冷媒を供給できる。
【0056】
また、電動オイルポンプ44をPWM制御によって流量を可変できるものとするときは、回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上となったときに、冷媒供給状態をA=流量Q
1とし、(アクセルホールド状態であること)AND(回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上)を満たすときに、冷媒供給状態をB=所定流量Q
2とすることもできる。ここで、流量Q
1を、回転電機20が通常の使用状態で閾値温度θ
M0以上となったときに必要な流量とし、所定流量Q
2を、流量Q
1よりも多く、アクセルホールド状態における局部的で急激な温度上昇に対応できる流量とすることで、既に回転電機20がある程度温度上昇した段階でアクセルホールド状態になっても適切に対応できる。
【0057】
なお、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)OR(回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上)とすることもできる。この場合は、電動オイルポンプ44の作動範囲が広くなるので、電力消費は増加するが、回転電機20にとって、十分な冷却となり、過熱を効果的に抑制できる。
【0058】
図4は、アクセルホールド信号と回転電機のトルクT
Mとに基づいて、電動オイルポンプ44の冷媒供給状態を制御する様子を説明する図である。
図4(b)は
図3(b)と同じで、アクセルホールド信号の状態を示す図である。
図4(a)は、縦軸が回転電機20のトルクT
Mであることを除けば、
図3(a)と同じである。
【0059】
回転電機20のトルクT
Mが大きいときは、回転電機20の駆動電流が大きいので、発熱が多く、温度上昇が生じる。そこで、回転電機20に温度検出器27を設ける代わりに、トルクT
Mの大きさを用いて回転電機20の温度上昇を監視できる。回転電機20のトルクT
Mは、回転電機20の温度の代用特性であるので、必ずしもアクセルホールド状態に基づいて局部的に上昇する温度を検出するわけではないが、回転電機20の代表温度を示すものとして評価できる。例えば、回転電機20のトルクT
Mが予め定めた閾値トルクT
M0以上のときは、回転電機20に冷媒26の供給が必要と判断することができる。回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上か否かの判断は、制御装置80の回転電機状態判断部84の機能によって実行される。
【0060】
図4(a)では、時間t
6で回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上となり、時間t
7で再び閾値トルクT
M0未満に戻っていることが示されている。ここで、回転電機20のトルクT
Mのみで電動オイルポンプ44の作動期間を決めることとすると、時間t
6から時間t
7の間で電動オイルポンプ44を作動させることになる。この場合、
図4(b)に示されるように、アクセルホールド状態となっているのは時間t
2から時間t
3の間であるので、時間t
6から時間t
2の間、および時間t
3から時間t
7の間は、アクセルホールド状態に対応した電動オイルポンプ44の作動の必要はないことになる。
【0061】
そこで、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)AND(回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上)であることとすれば、回転電機20のトルクT
Mの監視とアクセルホールドの監視を兼ねることができる。
図4(a)の例では、このAND条件を満たす期間は時間t
2から時間t
3の間である。そこで、
図4(a)において、EOPの冷媒供給状態として、時間t
2までと時間t
3以後は冷媒供給状態をA=流量0とし、時間t
2から時間t
3の間は冷媒供給状態をB=所定流量とすることが示されている。このようにすることで、アクセルホールド状態となった回転電機20に対し、過冷却とすることなく、電動オイルポンプ44を過度に作動させることもなく、適切に冷媒を供給できる。
【0062】
このように、回転電機20のトルクT
Mを
図3の回転電機20の温度θ
Mと同様に、電動オイルポンプ44の適切な作動制御に用いることができる。
図3に関連して説明したように、電動オイルポンプ44のPWM制御を用いて、流量A=Q
1を、回転電機20が通常の使用状態で閾値トルクT
M0以上となったときに必要な流量とし、流量B=所定流量Q
2を、流量Q
1よりも多く、アクセルホールド状態における局部的で急激な温度上昇に対応できる流量とすることもできる。また、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)OR(回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上)とすることもできる。
【0063】
さらに、
図3で説明した内容と
図4で説明した内容を組み合わせることもできる。例えば、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)AND[(回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上)AND(回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上)]としてもよい。この場合には、アクセルホールド状態となった回転電機20に対し、過冷却とすることをさらに防止し、電動オイルポンプ44を過度に作動させることをさらに抑制して、適切に冷媒を供給できる。また、電動オイルポンプ44の作動条件を、(アクセルホールド状態であること)AND[(回転電機20の温度θ
Mが閾値温度θ
M0以上)OR(回転電機20のトルクT
Mが閾値トルクT
M0以上)]としてもよい。