(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制動トルクを受けるガイドプレートに複数のライニング組立体が揺動自在に支持されて、前記ライニング組立体がディスクロータへ押圧されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記ライニング組立体は、摩擦材の裏面に固着された裏板部に、外周面が前記ガイドプレートに設けられたガイド孔部に揺動自在に嵌合するプレート嵌合部と、前記ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部とを備え、前記ガイドプレートの背面側から前記ガイド孔部に挿入装着されて、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する制動トルクを前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達すると共に、前記裏板部の背面側に設けられたバネ部材によって前記ガイドプレート側に付勢された状態に支持されており、
前記裏板部との間に間隙を開けて前記ガイドプレートに外周部が固着されるトルク受けプレートと前記ガイドプレートの中央部近傍には、前記ガイドプレートと前記トルク受けプレートとの間隔を保持する間隔保持機構が設けられ、
複数の前記ライニング組立体に跨って配置されて面接触した前記トルク受けプレートからの押圧力をこれらのライニング組立体に作用させる平板状の回り止めプレートが、前記トルク受けプレートと前記ガイドプレートとの間に設けられ、前記各裏板部の背面中心から離れた位置に形成された係合部に係合して前記各ライニング組立体が回動するのを阻止する回転防止機構と、前記間隔保持機構が貫通する開口部とを備えることを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
前記間隔保持機構が、前記ガイドプレートと前記トルク受けプレートとの間に介装されたスペーサ部材と、これら前記ガイドプレートと前記スペーサ部材と前記トルク受けプレートとを貫通して挟持固定する締結部材と、を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
前記間隔保持機構が、前記ガイドプレートの一部及び前記トルク受けプレートの一部の少なくとも何れか一方を対向する方向に膨出して当接させ、当接した部分を固着することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置は、車軸に固定されるディスクロータと、このディスクロータに対峙して配置されるトルク受けプレートのディスクロータ側の面にライニング部材を組み付けたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体と、トルク受けプレートをディスクロータに向かって進退駆動するアクチュエータを内蔵して車体フレームに固定されるブレーキキャリパとを具備し、トルク受けプレートをディスクロータ側に進出させてライニング部材がディスクロータへ押圧された時の摺動摩擦によって制動力を発生する。
【0003】
鉄道車両用のディスクブレーキ装置では、ディスクロータやディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体が大型であるため、ディスクロータに押圧させるライニング部材を一体部品で形成すると、摩擦熱等でディスクロータに発生するうねり等のために非接触の領域が多くなり、安定した摩擦面積を維持できず、安定した制動特性が得られない。
また、ディスクロータとの接触によってライニング部材が不用意に回転すると、それにより制動トルクの伝達にロスが発生したり、ブレーキノイズが発生したりしてしまう。そのため、ライニング部材の回転を規制する手段が必要になり、部品の増加がコストアップを招くと同時に、部品の増加に伴う組み立て工程数の増加が生産性の低下を招く。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、ガイドプレートに旋回自在(揺動自在)に支持されてディスクロータへ押圧されるライニング組立体が、摩擦材の裏面に固着された裏板部に、外周面がガイドプレートのガイド孔部に旋回自在に嵌合するプレート嵌合部と、ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部とを備え、ディスクロータと摩擦材との接触時に作用する制動トルクをプレート嵌合部からガイドプレートに伝達し、裏板部との間に間隙を開けてガイドプレートに固着されたトルク受けプレートと裏板部との間には、複数のライニング組立体に跨って配備されてトルク受けプレートからの押圧力をこれらのライニング組立体に作用させる複数のリンクプレートが設けられた構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体では、リンクプレートが、トルク受けプレートのリンク支持部に当接して旋回可能に支持される単一のプレート当接曲面部と、各ライニング組立体の裏板部の中心のリンク当接部に当接してライニング組立体を旋回可能に支持する複数個の裏板当接曲面部と、各ライニング組立体の裏板部の中心から離れた位置に形成された係合孔に遊嵌して各ライニング組立体の旋回挙動を規制する回転規制部と、を備えている。
即ち、ライニング組立体から制動トルクを受ける部材と、ライニング組立体へ押圧力を作用させる部材とが別個に設定されており、ライニング組立体へ押圧力を作用させるプレート当接曲面部及び裏板当接曲面部とトルク受けプレートとの各接触部には、大きい負荷となる制動トルクが作用しない。そのため、押圧力を伝達する各接触部は、制動トルクを受け止める玉継手等の堅牢な係合にする必要がなく、加工精度の緩和によるコストの節減、生産性の向上を実現することができる。
【0006】
また、各ライニング組立体の旋回挙動を規制する回転規制部が、裏板部に形成された係合孔と、リンクプレートに突設された回転規制部との嵌合によって行われるため、部品の増加に起因したコストアップや組立工程数の増加による生産性の低下といった不都合の発生を回避できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1等に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体では、ガイドプレートの周縁部に当接する枠体であるスペーサが、平板状のガイドプレートとトルク受けプレートとに挟まれることにより、トルク受けプレートと裏板部との間に、リンクプレートを配置するリンク収容空間を画成している。
そこで、複数のライニング組立体へ押圧力を作用させる平板状のトルク受けプレートは、十分な剛性を有する板厚が必要であり、十分な剛性を有していないと、複数のライニング組立体に対して均等に押圧力を作用させることが困難となる可能性があった。そのため、板厚を厚くして剛性を高めたトルク受けプレートは重量が嵩み、材料コストの上昇を招くという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、使用部品の加工精度の緩和や部品の軽量化により、コストの節減、生産性の向上を実現することができるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は下記構成により達成される。
(1)本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、制動トルクを受けるガイドプレートに複数のライニング組立体が揺動自在に支持されて、前記ライニング組立体がディスクロータへ押圧されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記ライニング組立体は、摩擦材の裏面に固着された裏板部に、外周面が前記ガイドプレートに設けられたガイド孔部に揺動自在に嵌合するプレート嵌合部と、前記ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部とを備え、前記ガイドプレートの背面側から前記ガイド孔部に挿入装着されて、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する制動トルクを前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達すると共に、前記裏板部の背面側に設けられたバネ部材によって前記ガイドプレート側に付勢された状態に支持されており、
前記裏板部との間に間隙を開けて前記ガイドプレートに外周部が固着されるトルク受けプレートと前記ガイドプレートの中央部近傍には、前記ガイドプレートと前記トルク受けプレートとの間隔を保持する間隔保持機構が設けられ
、
複数の前記ライニング組立体に跨って配置されて面接触した前記トルク受けプレートからの押圧力をこれらのライニング組立体に作用させる平板状の回り止めプレートが、前記トルク受けプレートと前記ガイドプレートとの間に設けられ、前記各裏板部の背面中心から離れた位置に形成された係合部に係合して前記各ライニング組立体が回動するのを阻止する回転防止機構と、前記間隔保持機構が貫通する開口部とを備える構成とする。
【0011】
(2)上記(1)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記回り止めプレートが、前記各裏板部の背面中心に向かって隆起形成された複数の曲面凸部を備える構成とする。
(
3)上記(
2)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記バネ部材が、前記曲面凸部の高さより薄い板厚を有すると共に0.3〜0.8N/mm/mm
2のばね定数を有する皿ばねであり、許容撓み量の0〜60%の範囲で前記裏板部と前記回り止めプレートとの間に装着される構成とする。
(
4)上記(1)〜(
3)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記間隔保持機構が、前記ガイドプレートと前記トルク受けプレートとの間に介装されたスペーサ部材と、これら前記ガイドプレートと前記スペーサ部材と前記トルク受けプレートとを貫通して挟持固定する締結部材と、を備える構成とする。
(
5)上記(1)〜(
3)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
前記間隔保持機構が、前記ガイドプレートの一部及び前記トルク受けプレートの一部の少なくとも何れか一方を対向する方向に膨出して当接させ、当接した部分を固着する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、制動時にライニング組立体に作用する制動トルクは、ガイドプレートに伝達され、さらにガイドプレートが固定されているトルク受けプレートにダイレクトに伝達される。
また、ディスクロータへライニング組立体を押圧する押圧力は、トルク受けプレートから、バネ部材を介して、ライニング組立体の裏板部に作用する。
即ち、ライニング組立体から制動トルクを受ける部材と、ライニング組立体へ押圧力を作用させる部材とが別個に設定されており、ライニング組立体へ押圧力を作用させるバネ部材とライニング組立体との接触部や、バネ部材とトルク受けプレートとの間の接触部には、大きい負荷となる制動トルクが作用しない。
また、ライニング組立体の裏板部との間に間隙を開けてガイドプレートに外周部が固着されるトルク受けプレートとガイドプレートの中央部近傍には、間隔保持機構が設けられており、この間隔保持機構がトルク受けプレートの中央部近傍において該トルク受けプレートに作用する押圧力の一部を支持することができる。そこで、ガイドプレートに外周部が固着されたトルク受けプレートの剛性は、間隔保持機構が設けられていない場合よりも高まり、トルク受けプレート自体の板厚を薄くすることが可能となる。
そのため、使用部品の加工精度の緩和や部品の軽量化によるコストの節減、生産性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至
図7は本発明の一実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を示したものであり、
図8はディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を構成する単位摩擦パッド組立て体の組立手順を説明するための矢視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、鉄道車両用ディスクブレーキ装置に使用されるもので、車軸上のディスクロータ(図示せず)の周方向に隣接配置される2つの単位摩擦パッド組立て体110,120から構成されている。
各単位摩擦パッド組立て体110,120は、同様の構成を有している。また、それぞれの単位摩擦パッド組立て体110,120は、ディスクロータに対峙して配置され、車体フレームに固定された不図示のブレーキキャリパに内蔵のアクチュエータによってディスクロータに向かって進退駆動される。
【0016】
各摩擦パッド組立て体110,120は、
図2乃至
図6に示すように、不図示のアクチュエータによってディスクロータに向かって進退駆動されるトルク受けプレート3と、このトルク受けプレート3のディスクロータ側の面(正面)に対向して敷設される回り止めプレート5と、トルク受けプレート3のディスクロータ側に連結固定されるガイドプレート11と、ガイドプレート11に揺動可能に嵌合支持された複数個(本実施形態では5個)のライニング組立体13と、を備えている。
【0017】
トルク受けプレート3は、ガイドプレート11にライニング組立体13を挿入装着し、後述のバネ部材24及び回り止めプレート5をライニング組立体13の背面側に装着した状態で、ガイドプレート11に取り付けられる。トルク受けプレート3は、
図3に示すように、裏板部22との間に間隙S1を開けるため、平板材の周縁部に周壁8を突出形成して裏板部22の背面側を密封する薄皿状に成形されている。そして、トルク受けプレート3は、ライニング組立体13の裏板部22との間に間隙S1を開けて、リベット28によりガイドプレート11の外周部に固着される。
【0018】
また、ライニング組立体13の裏板部22との間に間隙S1を開けてガイドプレート11に外周部が固着されたトルク受けプレート3とガイドプレート11の中央部近傍には、ガイドプレート11の背面とトルク受けプレート3の正面との間隔を保持する間隔保持機構36が設けられている。
本実施形態の間隔保持機構36は、ガイドプレート11とトルク受けプレート3との間に介装された中空円筒状のスペーサ部材35と、これらガイドプレート11とスペーサ部材35とトルク受けプレート3とを貫通して挟持固定する締結部材であるリベット34と、を備えている。なお、締結部材はリベット34に限らず、ボルト・ナット等の他の締結部材を用いることもできる。
【0019】
トルク受けプレート3の背面には、
図2乃至
図5に示すように、アンカープレート31がリベット32により固定装備されている。このアンカープレート31が不図示のブレーキキャリパに内蔵されたアクチュエータに連結されており、これにより、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、ディスクロータへの進退駆動が可能になる。更に、アンカープレート31には、上述した間隔保持機構36のリベット34を締結する際の作業穴となる貫通孔31aが開口している。
【0020】
回り止めプレート5は、複数のライニング組立体13に跨って配備され、トルク受けプレート3からの押圧力をこれらのライニング組立体13に作用させる。回り止めプレート5には、各ライニング組立体13の裏板部22の背面中心に向けて隆起形成された裏板当接曲面部(曲面凸部)5aと、各ライニング組立体13の裏板部22の背面中心から離れた位置に形成された回り止め用の係合孔(係合部)22cに係合して各ライニング組立体13が回動するのを阻止する回転防止機構5bと、間隔保持機構36が貫通する開口部5cとを備える。
【0021】
ガイドプレート11は、
図1に示すように、ガイド孔部11aが所定の離間間隔で複数(5孔)形成されていて、各ガイド孔部11aにライニング組立体13が装着される。ガイドプレート11は、制動時に各ガイド孔部11aに装着されたライニング組立体13に作用する制動トルクを受け止めることができる所定の板厚を有した平板材で形成されている。
【0022】
各ライニング組立体13は、略円板状に成型された摩擦材21と、この摩擦材21の裏面に固着された裏板部22とから構成されている。裏板部22には、外周面がガイドプレート11に貫通形成された円形のガイド孔部11aに揺動自在に嵌合するプレート嵌合部22aと、ガイド孔部11aよりも大きな外径の抜け止めフランジ部22bとが一体形成されている。更に、裏板部22の背面中心には、後述するバネ部材24の一端側(外径側)を収容する円筒状のバネ収容凹部22dが形成される。また、裏板部22の背面中心から離れた位置には、回り止めプレート5の回転防止機構5bが係合する回り止め用の係合孔22cが一対形成されている。
【0023】
摩擦材21は、ガイド孔部11aを挿通可能なように、外径がガイド孔部11aの内径よりも小さく設定されている。
また、プレート嵌合部22aは、本実施形態の場合、ガイド孔部11aとの摺接によるライニング組立体13の揺動動作が円滑になるように、ガイド孔部11a側に凸の曲面状に形成されている。
【0024】
ライニング組立体13は、摩擦材21がガイドプレート11の正面側に突出するように、ガイドプレート11の背面側からガイド孔部11aに挿入装着される。ガイド孔部11aに挿入装着されたライニング組立体13は、回り止めプレート5に対向する裏板部22の背面と回り止めプレート5の正面との間に圧縮状態で装着されるバネ部材24によって、ガイドプレート11側に付勢された状態に支持される。
【0025】
本実施形態の場合、バネ部材24は、外径がバネ収容凹部22dの内径よりも小さく設定されている環状の皿バネである。一端側(外径側)がバネ収容凹部22dに収容されたバネ部材24は、他端側(内径側)がバネ収容凹部22dから突出して、回り止めプレート5に当接して、圧縮状態にされる。
このバネ部材24は、回り止めプレート5に突設された裏板当接曲面部5aの高さより薄い板厚を有すると共に0.3〜0.8N/mm/mm
2のばね定数を有することが望ましい。
【0026】
そして、バネ部材24は、ガイドプレート11に固着されたトルク受けプレート3の正面側に配設された回り止めプレート5と裏板部22との間に挟まれた圧縮状態では、抜け止めフランジ部22bがガイド孔部11aの周縁部に当接した状態に維持されるように、ライニング組立体13をガイドプレート11側に付勢する。この際、バネ部材24は、許容撓み量の0〜60%の範囲で裏板部22の背面とトルク受けプレート3の正面との間に装着される。
バネ部材24がこの様に設定されることで、ロータ面の熱変形による差異や、ライニング厚の差異による夫々のライニング組立体13に作用する荷重差が、ライニングの過負荷現象となることを緩和できる。
【0027】
次に、
図8を参照して単位摩擦パッド組立て体110の組立手順を説明する。
先ず、
図8(a)に示すように、背面を上方に向けてセットされたガイドプレート11のガイド孔部11aに、摩擦材21がガイドプレート11の正面側(図中、下側)に突出するようにライニング組立体13が挿入装着される。ガイド孔部11aに挿入装着されたライニング組立体13は、抜け止めフランジ部22bがガイド孔部11aの周縁部に当接した状態とされる。
【0028】
次に、
図8(b)に示すように、バネ部材24が各ライニング組立体13における裏板部22のバネ収容凹部22dに載置され、間隔保持機構36のスペーサ部材35がガイドプレート11の中央部近傍における所定位置に載置される。
更に、
図8(c)に示すように、裏板当接曲面部5aが裏板部22の背面中心に対向し、回転防止機構5bが回り止め用の係合孔22cに係合し、開口部5cがスペーサ部材35に貫通されるようにして、回り止めプレート5がバネ部材24上に載置される。
【0029】
そして、これらバネ部材24及び回り止めプレート5をライニング組立体13の背面側に装着した状態で、トルク受けプレート3がリベット28によりガイドプレート11の外周部に固着される。更に、トルク受けプレート3とガイドプレート11の中央部近傍は、ガイドプレート11とスペーサ部材35とトルク受けプレート3とを貫通する間隔保持機構36のリベット34によって、挟持固定される。
【0030】
以上に説明した本実施形態のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、ブレーキキャリパに内蔵のアクチュエータによってトルク受けプレート3がディスクロータ側に移動して摩擦材21がディスクロータに押圧された際、摩擦材21に作用する押圧荷重が設定荷重を超えると、バネ部材24が撓んで裏板部22の背面が回り止めプレート5の裏板当接曲面部5aに当接するとともに、裏板当接曲面部5aによってライニング組立体13の傾きが許容される。
裏板当接曲面部5aが当接する裏板部22の部位(バネ収容凹部22dの底面)は、ライニング組立体13の揺動動作時に、揺動動作に伴って接点が自由に移動できるように、平滑面に仕上げられている。
【0031】
また、本実施形態のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、トルク受けプレート3に対するライニング組立体13の位置規制は、ライニング組立体13のディスクロータ面と平行な方向に対しては、ライニング組立体13のプレート嵌合部22aとガイドプレート11のガイド孔部11aとの嵌合によって行い、また、ディスクロータ面と直交する方向に対しては、裏板部22の背面とトルク受けプレート3の正面側に敷設された回り止めプレート5との間に装着されたバネ部材24の付勢力によって行う。
従って、制動時にライニング組立体13に作用する制動トルクは、ガイドプレート11に伝達され、当該ガイドプレート11が固定されているトルク受けプレート3にダイレクトに伝達される。
また、制動時にディスクロータへライニング組立体13を押圧する押圧力は、トルク受けプレート3から、回り止めプレート5及びバネ部材24を介してライニング組立体13に作用する。
【0032】
即ち、ライニング組立体13から制動トルクを受ける部材(ガイドプレート11)と、ライニング組立体13へ押圧力を作用させる部材(回り止めプレート5及びトルク受けプレート3)とが別個に設定されており、ライニング組立体13へ押圧力を作用させるバネ部材24と裏板部22との接触部や、バネ部材24と回り止めプレート5との接触部や、回り止めプレート5とトルク受けプレート3との接触部には、大きい負荷となる制動トルクが作用しない。
そのため、押圧力を伝達するバネ部材24と、ライニング組立体13又は回り止めプレート5との各接触部は、制動トルクを受け止める玉継手等の堅牢な係合にする必要がなく、加工精度の緩和によるコストの節減、生産性の向上を実現することができる。
【0033】
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、複数個のライニング組立体13を平面状に敷き並べた形態であるが、ライニング組立体13の背面と回り止めプレート5との間に挟まれるように配置されたバネ部材24が、ライニング組立体13の厚さ方向の寸法公差を吸収するため、ディスクロータに対する各ライニング組立体13の接触性にばらつきが生じることを防止できる。
従って、ライニング組立体13の厚さ方向の寸法公差の影響を受けずに、安定した制動特性を維持することができる。
【0034】
更に、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、ガイドプレート11とトルク受けプレート3とを外周部においてリベット28で締結して一体の筐体構造とすると共に、トルク受けプレート3とガイドプレート11の中央部近傍には、間隔保持機構36が設けられており、この間隔保持機構36がトルク受けプレート3の中央部近傍において該トルク受けプレート3に作用する押圧力の一部を支持することができる。そこで、ガイドプレート11に外周部が固着されたトルク受けプレート3の剛性は、間隔保持機構36が設けられていない場合よりも高まり、トルク受けプレート3自体の板厚を薄くすることが可能となる。そのため、使用部品の加工精度の緩和や部品の軽量化によるコストの節減、生産性の向上を実現することができる。
【0035】
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、摩擦材21に作用する押圧荷重が設定荷重を超えた際、ライニング組立体13を傾き可能に支持する裏板当接曲面部5aが回り止めプレート5に一体形成されていて、ユニバーサルジョイント等の独立した専用部品を追加していないため、部品の増加に起因したコストアップや組み立て工程数の増加による生産性の低下といった不都合の発生を回避できる。
【0036】
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、各ガイド孔部11aに装着されたライニング組立体13に作用する制動トルクを受け止めるガイドプレート11が所定の板厚を有する平板材で形成されている。そのため、ガイドプレート11は、制動時にライニング組立体13から加わる制動トルクを各ガイド孔部11aの板厚方向に延びる内周面で受けることができる。そこで、所定の板厚を有して十分な剛性を備えたガイドプレート11は、薄板材から曲げ形成したガイドプレートのガイド孔部のようにライニング組立体から加わる制動トルクによりガイド孔部に曲げ変形を生じるおそれがなく、ライニング組立体13のガイド孔部11aでのスムーズな揺動動作を確保することができる。
【0037】
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、制動トルクの伝達のためにガイドプレート11のガイド孔部11aに内接するプレート嵌合部22aがガイド孔部11a側に凸の曲面状に形成されている。そのため、ライニング組立体13の揺動動作時に、プレート嵌合部22aがガイド孔部11aの内周面を低摩擦力で摺動することができ、プレート嵌合部22aとガイド孔部11aとの摺接によるライニング組立体13の揺動動作を円滑にすることができる。
【0038】
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、裏板部22に、バネ部材24の一端側(外径側)を収容するバネ収容凹部22dが形成されている。そのため、バネ部材24を裏板部22とトルク受けプレート3との間に位置決めできると共に、裏板部22と回り止めプレート5との配置間隔が増大することを抑止することができ、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100において、ディスクロータの摺動面と直交する方向の寸法を抑えてコンパクト化することができる。
また、上記したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、ディスクロータにライニング組立体13が接触した時の制動トルクの伝達効率を高めるために、ディスクロータ面に平行な面内でのライニング組立体13の回転規制を、ライニング組立体13の裏板部22に形成した係合孔22cと、回り止めプレート5に突設した回転防止機構5bとの係合によって行っている。即ち、ディスクロータ面に平行な面内でのライニング組立体13の回転規制には、独立した専用部品を追加していないため、ライニング組立体13の回転規制のために部品が増加することがなく、部品の増加に起因したコストアップや組立工程数の増加による生産性の低下といった不都合の発生を回避できる。
【0039】
図9は、
図3に示した間隔保持機構36の変形例を示す要部拡大断面図である。
図9に示した間隔保持機構40は、トルク受けプレート3Aの中央部近傍における所定部位(一部)を絞り加工等によりガイドプレート11に対向する方向に膨出させた当接部38と、ガイドプレート11と当接部38とを貫通して挟持固定する締結部材であるリベット34と、を備えている。なお、リベット34による締結固定に代えて、スポット溶接によりガイドプレート11と当接部38とを固着することもできる。
【0040】
間隔保持機構40は、上記間隔保持機構36と同様に、制動時にトルク受けプレート3Aの中央部近傍において該トルク受けプレート3Aに作用する押圧力の一部を支持することができる。そこで、ガイドプレート11に外周部が固着されたトルク受けプレート3Aの剛性は、間隔保持機構40が設けられていない場合よりも高まり、トルク受けプレート3A自体の板厚を薄くすることが可能となる。
【0041】
なお、本発明のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、1つのディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を複数の単位摩擦パッド組立て体から構成する場合に、構成する単位摩擦パッド組立て体の数量は、1つ又は3つ以上としても良い。
【0042】
また、上記実施形態のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、トルク受けプレート3とガイドプレート11との間に、複数のライニング組立体13に跨って配置されてトルク受けプレート3からの押圧力をこれらのライニング組立体13に作用させる回り止めプレートが設けられた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、例えばトルク受けプレート側に向かって隆起形成した曲面凸部を裏板部の背面に設けると共に、裏板部の外周面が前記ガイド孔部に対して相対回転するのを阻止する回転防止機構を裏板部とガイドプレートの間に設けることにより、回り止めプレートを省略することも可能である。