(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985874
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】車両用ハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20160823BHJP
【FI】
E05B85/16 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-103550(P2012-103550)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-231301(P2013-231301A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】遠山 孝生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 修一
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−140181(JP,A)
【文献】
特開2010−229797(JP,A)
【文献】
特開2008−202231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されるハンドル本体と、
ハンドル本体の長手方向に沿って長寸の主体部の両端に形成される係止部がハンドル本体に係止されて該ハンドル本体の表面に装着される装飾カバーとを有し、
前記装飾カバーは、一方の係止部を回転支点として他方の係止部をハンドル本体に対して主体部の回転方向に弾発的に係止させた状態で装着され、
かつ、前記ハンドル本体に固定される部品を有し、
前記部品には、装飾カバーの少なくとも一方の係止部の移動を規制する移動規制部が設けられる車両用ハンドル。
【請求項2】
前記部品が電子部品である請求項1記載の車両用ハンドル。
【請求項3】
前記移動規制部は、装飾カバーの回転支点端を拘束して装飾カバーの回転移動を規制する請求項2記載の車両用ハンドル。
【請求項4】
前記回転先端側の係止部は主体部の撓みを伴ってハンドル本体に弾発係止される請求項1、2または3記載の車両用ハンドル。
【請求項5】
前記回転先端側の係止部と、ハンドル本体に形成されて前記係止部が係止する被係止部の少なくとも一方には、係止部の押し込み操作により主体部の撓み方向の分力を発生させる傾斜面が形成される請求項4記載の車両用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
装飾カバーをハンドル本体の表面部に装着したハンドルとしては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、弾性飾り板(装飾カバー)は、全体を大きく撓ませた状態で両端を引手本体(ハンドル本体)の係合横穴に差し込んで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58-14759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例は、装飾カバー全体を大きく撓ませる必要があるために、装飾カバーの破断、装飾カバーの表面に施されるメッキ等の表面処理層の破壊等が発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、装飾カバーの装着性が良好で、かつ、装着時の不良発生のおそれもなくした車両用ハンドルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
車両に装着されるハンドル本体1と、
ハンドル本体1の長手方向に沿って長寸の主体部2の両端に形成される係止部3、4がハンドル本体1に係止されて該ハンドル本体1の表面に装着される装飾カバー5とを有し、
前記装飾カバー5は、一方の係止部4を回転支点と
して他方の係止部3をハンドル本体1に
対して主体部2の回転方向に弾発的に係止させた状態で装着さ
れ、
かつ、前記ハンドル本体1に固定される部品を有し、
前記部品には、装飾カバー5の少なくとも一方の係止部3(4)の移動を規制する移動規制部7が設けられる車両用ハンドルを提供することにより達成される。
【0007】
本発明において装飾カバー5は、主体部2の一端に形成された係止部4をハンドル本体1に係止させた状態で該係止部4周りに主体部2を回転操作して行われ、主体部2を回転させることにより主体部2の他端に形成される係止部3がハンドル本体1の被係止部8に係止して装着が完了する。
【0008】
一旦装飾カバー5全体を撓ませてハンドル本体1に装着する工程を取る場合、係止に必要な撓み量は予め分からないために、過度に装飾カバー5を撓ませてしまって装飾カバー5の破損等を発生させることがあるが、一端を回転支点として回転操作した状態で他端部を係止させる取付方法を採用することにより、組立作業者によって装飾カバー5への過度の変形操作が加えられることがなく、組立効率を向上させることができる上に、不良発生が少なくなる。
【0009】
また、車両用ハンドルは、
前記ハンドル本体1に固定される
部品6を有し、
前記
部品6には、装飾カバー5の少なくとも一方の係止部
3(4)の移動を規制する移動規制部7が設けられるように構成することができる。
【0010】
ハンドル本体1に係止される装飾カバー5の移動が
部品6に形成される移動規制部7により最終的に規制される本発明において、係止寸法を小さく設定しても取付強度を高くすることができ
る。この結果、装飾カバー5への弾発係止時の撓み量を少なくすることができるために、弾発係止時における装飾カバー5への過大負荷による有害な変形、破損の発生を防止することが可能になる上に、不用意な脱落、あるいは悪戯等による脱落を確実に防止することができる。
【0011】
上記部品6は電子部品で、この電子部品6には照明装置、制御ボタン等が含まれる。
【0012】
また、
前記移動規制部7は、装飾カバー5の回転支点端を拘束して装飾カバー5の回転移動を規制するように構成すると、回転先端側の係止部3に回転支点側への変位を与えて該係止部3の係止を解除しようとした場合、装飾カバー5は、回転移動が移動規制部7により規制されているために、装飾カバー5を回転させながらの係止解除が困難になる。この結果、係止解除をするためには、装飾カバー5が座屈変形を起こすに十分な操作力を要することとなり、悪戯等による不正な解除操作がしにくくなる。
【0013】
係止部3、4と被係止部8との係止は、係止部3、4、あるいは被係止部8のいずれかを弾性変形させて係止状態に移行させることも可能であるが、主体部2の撓みを利用して係止状態への移行をすると、装飾カバー5が長寸であるために、各部の撓み量が小さくても被係止での変位量を大きくすることができるために、各部への過大な応力発生をもたらすことなく係止操作を行うことができる。
【0014】
この場合、
前記回転先端側の係止部3と、ハンドル本体1に形成されて前記係止部3が係止する被係止部8の少なくとも一方には、係止部3の押し込み操作により主体部2の撓み方向の分力を発生させる傾斜面9が形成される車両用ハンドルを構成すると、主体部2を回転させた後、他方の係止部3をハンドル本体1側に押し込むだけで装着操作が完了し、装着作業性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装飾カバーの装着性が良好で、かつ、装着時の不良発生のおそれもなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の1B-1B線断面図である。
【
図2】
図1の断面図で、(a)は
図1(a)の2A-2A線断面図、(b)は装飾カバーの弾発係止状態を示す断面図である。
【
図3】車両用ハンドルの分解斜視図で、(a)は斜め前方から見た図、(b)は斜め後方から見た図である。
【
図4】装飾カバーを示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)の4B方向矢視図である。
【
図5】表カバーを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の5B-5B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1以下に本発明の実施の形態を示す。本例の車両用ハンドルは、車両のドアに固定される図外のハンドルベースにヒンジ突部1aを回転自在に連結して使用されるもので、ハンドルベースとの連結部周りに回転操作した際の他端に形成された作動脚1bの変位をドア内のドアロック装置(図示せず)に伝達することにより該ドアロック装置が操作される。
【0018】
ハンドルは、ハンドル本体1と、ハンドル本体1表面を装飾するための装飾カバー5と、ハンドル本体1に固定される電子部品6とを有する。
【0019】
ハンドル本体1は、裏カバー10に表カバー11を連結して中空形状に形成される。表裏カバー10、11の連結は、裏カバー10の後端部(以下、
図1において左側を「前」、
図1(b)の上側を「表」として位置を説明する。)に形成される差込片10aを表カバー11に係止させるとともに、前端部の固定片10bを表カバー11の埋め込みナット11aにネジ止めして行われる。なお、
図1(b)において12は埋め込みナットにねじ込まれる固定用ネジを示す。
【0020】
本例において、電子部品6としてアンテナユニット6Aとプッシュスイッチ6Bとが組み込まれ、図外のリード線を経由してハンドル本体1外に引き出された後、車両に搭載された車載コンピュータ等の制御装置に接続される。
【0021】
図1(b)に示すように、プッシュスイッチ6Bは、スイッチケース13内に図外の接点部を収容して形成され、頭部に装着される押しボタン14への押下操作により接点部を断接させる所謂押しボタンスイッチとして構成される。上記スイッチケース13には、位置決め突起13aが設けられ、該位置決め突起13aを表カバー11に嵌合させることにより所定位置に位置決めされる。
【0022】
このプッシュスイッチ6Bは、施錠ボタンとして使用され、該プッシュスイッチ6Bを押下操作すると、制御装置から利用者の所持する携帯型電子キーと後述するアンテナを経由して交信して該携帯型電子キーから出力される認証用コードを取得し、取得した認証用コードに対する認証が成立すると、ドアを施錠状態に移行させる。
【0023】
また、アンテナユニット6Aは、静電センサの電極とアンテナとを有し、表裏カバー10に挟まれるようにして所定位置に固定される。静電センサは、利用者によるハンドル本体1の把持を検出することができ、利用者による把持動作を静電センサが検知すると、上述したプッシュスイッチ6Bと同様に認証用コードの取得手順が実行され、取得された認証コードに対する認証が成立すると、ドアが解錠状態に移行する。
【0024】
図3、4に示すように、装飾カバー5は、合成樹脂等の弾性に優れた材料によりハンドル本体1の長手方向に長寸に形成され、表カバー11の表面には、上記装飾カバー5を嵌合するための嵌合凹部11bが設けられる。また、装飾カバー5と表カバー11には、上述したプッシュスイッチ6Bの押しボタン14を露出させるためのスイッチ開口15が開設される。
【0025】
装飾カバー5は、
図3に示すように、前端部から中間部までが平板状形状に、中間部から後端部にかけて徐々に「く」字状に移行する断面形状を有し、上記ハンドル本体1の嵌合凹部11bの表面も同様に中間部から後端部にかけて平面から中央部が盛り上がった形状に形成される。
【0026】
以上のように形成される装飾カバー5の主体部2の両端部には各々係止部3、4が設けられる。後端部に配置される係止部4は、
図4に示すように、後方に向けて係止片4aを突設してフック形状に形成され、両側縁部に一対配置される。
図2に示すように、表カバー11には、これら係止片4aが係止可能な被係止部8が形成されており、
図2(b)に示すように、係止片4aを被係止部8に係止させることにより主体部2を係止部4位周りに回転操作することができる。
【0027】
さらに、上記装飾カバー5の前端部に配置される係止部3は、
図4に示すように、支柱部3aから前方に向けて係止片3bを突設してフック形状に形成される。この係止部3の先端には、後述する被係止部8の張り出し片8aへの圧接操作力に対する該張り出し片8aからの反力により主体部2の座屈方向への分力が発生する傾斜面9が形成される。
【0028】
また、係止部3は、支柱部3aが中央部において前方において張り出すことにより幅方向に3領域に区画され、中央部の係止部3の係止片3bによる係止寸法が小さくされている。
【0029】
一方、上記装飾カバー5の前端部の係止部3に対応して、表カバー11には被係止部8が設けられる。
図5に示すように、被係止部8は、後方に向けて板状の張り出し片8aを突設させることにより形成される。張り出し片8aは上記装飾カバー5の係止部3に対応して中央部において張り出し寸法が短く、両端において長く設定される。
【0030】
したがってこの実施の形態において、装飾カバー5の装着は、
図2(b)に示すように、後端側の係止部4の係止片4aを係止させた状態で係止箇所周りに主体部2を反時計回りに回転させて行われ、主体部2を回転させることによって前端部の係止部3に形成される傾斜面9が表カバー11の被係止部8に当接する。
【0031】
この状態から主体部2の先端部に押し込み操作力(F)を与えると、
図2(b)に示すように、傾斜面9の作用によって主体部2には座屈方向の分力(P)が発生する。この分力(P)により、湾曲状に形成されている主体部2は、湾曲曲率が小さくなる方向に弾性的にやや撓んで係止部3が張り出し片8aを乗り越えた後、主体部2の弾性復帰により係止部3が被係止部8に係止する。
【0032】
さらに、装飾カバー5の連結強度を高めるために、
図2(a)に示すように、係止部4の移動が移動規制部7により規制される。本例において移動規制部7は、装飾カバー5を表カバー11に連結した後に組み付けられることを利用して、プッシュスイッチ6Bのスイッチケース13に形成されて後端側の係止部4の前方への移動を規制する。
【0033】
移動規制部7を配置することによって、悪戯で後端部の係止部4に前方への力が負荷されても係止部4が前方に移動して係止が解除されることがなく、連結強度が向上する。また、移動規制部7は、係止部4に対して回転方向への移動も規制しているために、前端側の係止部3を後方に移動させる力を負荷しても、装飾カバー5全体が上記後端側の係止部4と被係止部8との係止部位周りの回転が規制されるために、装飾カバー5の取り外しが困難になる。
【符号の説明】
【0034】
1 ハンドル本体
2 主体部
3、4 係止部
5 装飾カバー
6 電子部品
7 移動規制部
8 被係止部
9 傾斜面