特許第5985879号(P5985879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985879
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ひも通し部つき編物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/22 20060101AFI20160823BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20160823BHJP
   A47K 5/14 20060101ALI20160823BHJP
   B65D 30/10 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   D04B1/22
   A41B11/00 A
   A47K5/14
   B65D30/10 W
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-105198(P2012-105198)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-231261(P2013-231261A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505136457
【氏名又は名称】中野産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120019
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 敏安
(72)【発明者】
【氏名】中野 義典
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−106985(JP,U)
【文献】 特開2001−301904(JP,A)
【文献】 特開平11−081102(JP,A)
【文献】 特開2004−338914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00−11/14
A47K5/00−7/08
B65D30/00−33/38
65/00−65/46
B65F1/00−1/16
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひも通し部を有する編物であって、
当該ひも通し部は、編み時に地編み部とひも押さえ部とで編み方向に対して編み目数が相違するものとし、ひも通し部を形成する部位において、地編み部とひも押さえ部とが編み目によって連結されていないものであることを特徴とするひも通し部つき筒編物
【請求項2】
前記ひも通し部にひもを通したものである請求項記載の筒編物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の筒編物からなることを特徴とする衣料。
【請求項4】
請求項1又は2記載の筒編物からなることを特徴とする泡立て具。
【請求項5】
請求項1又は2記載の筒編物からなることを特徴とする包装容器。
【請求項6】
請求項1又は2記載の筒編物からなることを特徴とする果実被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひも通し部つき編物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
編物の形状としては、筒編み、平編み等の形状がある。筒編みは、編物の一形態であり、主にストッキングや靴下の製造において使用されている編物である。このような筒編み物は、ストッキングや靴下への使用が非常に多いが、その他の用途としては、特許文献1に記載されたような台所用清掃具、特許文献2に記載されたような水切り用ごみ袋、特許文献3に記載されたような果実被覆材等の用途に使用することが開示されている。また、平編みは、衣料品等の分野において使用されている編物である。
【0003】
これら種々の編み物において、紐やゴムを通すことが行われる場合がある。すなわち、靴下やストッキングにおいては上端で縛ってずり落ちを防ぐ目的、ファッション性を高める目的等で上端部に紐やゴムを通す場合がある。更に、水切りごみ袋や果実被覆材等の用途でも、筒状物の一端を閉じるための紐やゴムを周方向に通すことが必要となる場合がある。
【0004】
この場合、通常は、縫い付け等によってひも通し部を形成し、形成されたひも通し部に紐やゴムを通すことが行われる。しかし、このような方法によってひも通し部を形成すると、縫い付けのための作業が必要であることから、コストアップの原因となってしまう。このため、ごみ袋等の低価格品においては適用することができない。さらに、長期間の使用によって縫い付けた部分がほつれることによってひも通し部が外れてしまい、耐久性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案公報第3152473号
【特許文献2】実開平3−122002号公報
【特許文献3】特公平3−42057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑み、編物を編む工程において編み組織によってひも通し部を形成することができ、これによって安価にかつ安定的に耐久性に優れたひも通し部を有する編物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ひも通し部を有する編物であって、当該ひも通し部は、編み時に地編み部とひも押さえ部とで編みの編み方向に対して編み目数が相違するものとし、ひも通し部を形成する部位において、地編み部とひも押さえ部とが編み目によって連結されていないものであることを特徴とするひも通し部つき筒編物である
【0009】
本発明のひも通し部つき筒編物は、前記ひも通し部にひもを通したものであってもよい。
本発明は、上述した筒編物からなることを特徴とする衣料でもある。
本発明は、上述した筒編物からなることを特徴とする泡立て具でもある。
本発明は、上述した筒編物からなることを特徴とする包装容器でもある。
本発明は、上述した筒編物からなることを特徴とする果実被覆材でもある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のひも通し部つき筒編物の一例を示した模式図である。
図2図1の実施態様におけるA部での編物断面を示す図である。
図3図1の実施態様におけるB部での編物断面を示す図である。
図4図1の筒編物に紐を通した場合の実施状態を示す図である。
図5】本発明のひも通し部つき筒編物の一例を示した模式図である。
図6図5の実施態様におけるC部での編物断面を示す図である。
図7図5の実施態様におけるD部での編物断面を示す図である。
図8図5の筒編物に紐を通した場合の実施状態を示す図である。
図9】本発明の筒編物の一例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0011】
1 ひも通し部
2 地編み部
3 ひも押さえ部
4 均一な編み地
5 袋部
6 ひも通しスペース
7 ひも
8 結合部
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
以下に詳述する本発明の編物は、筒編物であっても平編物であってもよいが、以下の説明においては筒編物について詳細に説明する。
本発明のひも通し部つき筒編物としては、例えば、図1に示したような筒の中間部においてひも通し部を形成したもの、図5のような筒の端部においてひも通し部を形成したものが挙げられる。これらのひも通し部の構造は実質的に同一のものであるが、以下、これらそれぞれについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の筒編み物の表面を示す模式図である。図1に示した状態では、筒状物を畳んだ時の表面状態を示している。当該筒編み物におけるひも通し部1は、均一な編み地4の中間部に形成されている。当該ひも通し部は地編み部2とひも押さえ部3とを有するものである。すなわち、筒の長手方向へ、全体として均一な編み地4が形成されているが、ひも通し部においては、地編み部2とひも押さえ部3とで編みパターンが変化しており、ひも通し部を形成した後は、また全体として均一な編み地4が形成されているものである。
【0014】
ひも通し部1における地編み部2の断面とひも押さえ部3の断面とをそれぞれ、図2図3として示す。図2に示した地編み部2は、図3に示したひも押さえ部3よりも編物の長さが長くなっている。このような構造は、地編み部2において、ひも押さえ部3よりも編物の編み目数を多くすることによって形成されたものである。更に、編みパターンが地編み部2とひも押さえ部3とで相違している間は、地編み部2とひも押さえ部3との間で編みによる連結が行われておらず、物理的に分離した状態になっている。
【0015】
このようにしてひも通し部1を形成すると、地編み部2の余分な長さの分だけ、たるみが生じて、袋部5が形成されることとなる。この袋部5によって形成された空間がひも通しスペース6となる。この部分にひもを通した状態を図4に示す。地編み部2はひも押さえ部3よりも編み地の幅が長く、垂れていることから、その部分にひもが通っている。更に、地編み部とひも押さえ部とが物理的に分離していることから、図4に示したような形態でひもを通すことができる。
【0016】
このようなひも通しスペース6は、筒編物の編みパターンの一部として形成されたものであることから、縫い付けの手間が不要であり、低コストで製造できるとともに、縫い付け糸のほつれなどによる劣化を生じることもない。
【0017】
図5は、本発明の筒編み物の別の例を示す模式図である。図5の筒編み物は、ひも通し部が筒編み物の末端部に形成されているという点で図1に示した筒編み物と相違しているが、発明の本質としては同一である。
【0018】
図5の地編み部2とひも押さえ部3との断面をそれぞれ図6図7として示した。図2,3と同様に、地編み部2においてはひも押さえ部3よりも編み地の長さが長いため、それがたるみとなって編み地の先端部に袋部を形成する。その先で編み地は結合部8において編み地同士が一体化されて、筒編みが終了している。その手前で上述したひも通し部が形成されていることから、筒編物の端部にひも通し部が形成されているのである。
【0019】
このようにして形成された図5の筒編物においても、図8に示したようにひもを通すことができる。
【0020】
なお、図4図8に示したようなひも通し部にひもを通した状態の筒編物も本発明の一つである。使用するひもは特に限定されず、通常のひものほか、リボンやゴムなどであってもよい。
【0021】
このような筒編物は、永田精機株式会社製のP−440,P−480,P−482等のコンピュータ制御された編み機を使用した筒編みにおいて、編みパターンを設定することによって製造することができる。本発明のひも通し部を有する筒編物は、複数の糸を使用して筒状に編むたて編みの編み組織によって好適に形成することができる。
【0022】
すなわち、ひも通し部1を形成する部位においては、ひも押さえ部3を形成する部位と地編み部2を形成する部分との間でのループによる結合の形成を行わなくする。そしてそれぞれの部位を別個に編み、その編みにおいてひも押さえ部3を形成する部位と地編み部2とで編み数に差を設ける。このような編みを一定間隔の間行った後で、再び、元の均一な編み地4と同一の編み方法に戻すことによって、本発明のひも通し部つき筒編物とすることができる。
上記ひも押さえ部3の個数、大きさ等は使用する目的に応じて任意に設定することができる。
【0023】
また、図5に示した態様の場合は、均一な編み地とすると同時に編みを折り返した手前の編み地の編み目と結合することによって、結合部8を形成することによって得ることができる。
【0024】
上記ひも押さえ部3を形成している部位において、隣接する地編み部2の間にループを形成し、隣接する地編み部同士を編み目によって結合して、地編み部2に空間を設けないようにすることもできる。
【0025】
また、ひも通し部1は、複数個形成することもできる。更に、筒編み物の両端に上記ひも通し部を形成することもできる。
【0026】
本発明の筒編物を構成する繊維は特に限定されず、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸、カバリング糸等の任意の繊維であってよく、素材もポリエステル、ポリアミド、アクリル、ウレタン等の合成繊維、綿、羊毛、絹等の天然素材のものを使用することができるし、これらの2種以上の素材を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0027】
本発明の筒編物において、端部の処理方法は特に限定されないが、例えば、靴下やストッキングとして使用する場合は、一方の端を縫い合わせたものとすることができる。一方、その他各種用途において使用する場合は、用途に応じて必要な端部処理を行うものであってもよい。
【0028】
例えば、泡立て具として使用する場合は、一方の端部を折り返して筒編物の胴部と結合させ、この折り返しに際して、まっすぐに胴部と結合させるのではなく、筒の円周方向に90°以上にひねりを加えた後に胴部と結合させたものであってもよい(図9参照)。
【0029】
このようなひねりを加えて結合させることで、端部の開口部は筒部全体のねじれによって狭窄した状態となる。よって、端部は通常の状態では閉じた状態でその内部に各種物品を収納することができるが、手で端部を押し広げるようにすると開口部となり、内部に物品を出し入れすることができる。本発明の筒編物は、編構造を有するものであることから伸縮性が良好であり、このように押し広げて開口部を形成させることにも強い力は必要とされず、また、放置すれば簡単にもとの狭窄した状態に戻る。
【0030】
上記ひねりは、180°以上であることがより好ましく、360°であることが最も好ましい。360°のひねりであると、胴部への結合に際して元の編み位置に戻ることになるため、機械の設定上好ましいものである。
【0031】
このような端部構造も、永田精機株式会社製のP−440,P−480,P−482等のコンピュータ制御の編み機において、編みパターンを設定することによって自動的に製造することができる。
【0032】
このように、一端を上述した端部構造とし、反対側の端部に上述したひも通し部を形成し、当該ひも通し部にひもを通して使用すると、これによって石鹸の泡立ちネットとして使用することができる。上端に設けたひもによって水道の蛇口等につりさげることができ、更に、下部の端部構造から容易に石鹸を内部に収納することができるものである。このような構造の筒編み物は、ひもを通す以外の工程はすべて筒編み機において生産することができることから、低コストで大量生産に適しているという利点もある。
【0033】
また、折り返した端部をひねる方法は特に限定されず、編み機の端部を支持する部分を胴部を支持する部分に対して回転させることによって、ひねる方法等を挙げることができる。
更に、上記結合は、縫い付け、編みつけ、ヒートシール、接着剤による接着等の任意の方法によって行うことができる。
【0034】
上記筒編物は、衣料、泡立て具、包装容器、果実被覆材等に使用することができる。例えば衣料として使用する場合は、靴下、ストッキング等におけるゴムの挿入部として使用したり、リボンなどを通してファッション性を高めたりする目的で使用することができる。
【0035】
例えば、泡立て具として使用する場合は、中空部に固形石鹸を入れて使用することができる。石鹸を入れるときには、狭窄部を手で広げて伸ばすことで中に石鹸を入れることができ、使用時には中から石鹸が出ることがないので、好適に使用することができる。また、このような方法で繰り返し使用することができる。
【0036】
包装容器としては、果実、野菜、石鹸等の包装に使用することができる。
【0037】
果実被覆材としては、生育中の果実に対して傷つきや変色を防ぐための防護用被覆材として使用することができる。この場合、ひも通し部を末端に設け、反対側の末端は任意の方法で袋状に成形したものを使用することができる。これによって、生育中の果実に対してひもでくくりつけることができ、取り付けや取り外しが容易なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の編物は、衣料、泡立て具、包装材料、果実被覆材等の用途に使用することができる。
図2
図3
図6
図1
図4
図5
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