特許第5985904号(P5985904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985904
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/02 20060101AFI20160823BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G02B13/02
   G02B13/18
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-147403(P2012-147403)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-10331(P2014-10331A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP−FOCUS
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】米澤 友浩
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−085733(JP,A)
【文献】 特開2010−048996(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0329307(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057973(US,A1)
【文献】 特開2007−264180(JP,A)
【文献】 特開2013−054099(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099255(WO,A1)
【文献】 特開2013−257527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子用の5枚のレンズから構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、開口絞り、物体側および像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズ、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズ、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズ、両面が非球面で形成され、光軸近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第4レンズ、両面が非球面で形成され、光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第5レンズからなり、前記第5レンズは、光軸から離れるに従って負の屈折力が弱まる形状を有し、以下の条件式(1)、(7’)および(11)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)0.55<f1/f<1.0
(7’)−1.6<f2/f≦−1.0
(11)2ω≧70°
ただし、
f :撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
ω :半画角
【請求項2】
以下の条件式(2)から(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(2)50<ν1<70
(3)ν2<35
(4)50<ν3<70
(5)50<ν4<70
(6)50<ν5<70
ただし、
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
ν3:第3レンズのアッベ数
ν4:第4レンズのアッベ数
ν5:第5レンズのアッベ数
【請求項3】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(8)1.05<f12/f<1.60
ただし、
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
【請求項4】
前記第4レンズの物体側の面は、周辺に向かうに従って負のパワーが弱まる非球面形状であり、像側の面は周辺に向かうに従って正のパワーが弱まる非球面形状であることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
以下の条件式(9)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(9)1.7<ν1/ν2<2.7
ただし、
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
【請求項6】
以下の条件式(10)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(10)−0.80<f1/f2<−0.45
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、PDA(Personal Digital Assistance)等に搭載される比較的小型で薄型のCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置に搭載される撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、PDA等の機器には、今や当然のようにカメラ機能が付加されるようになっている。また、携帯性、利便性向上のため、これらの機器において、ますます小型化や薄型化の検討が進められており、同時に高画素化に対応したカメラ機能の向上も検討されている。そのため、これらの機器に搭載される撮像装置に使用される撮像素子は、ますます小型化と高画素化が進む状況にある。また、撮像装置に搭載される撮像レンズに対しても、高画素化に対応した高い解像力を備えるばかりでなく、小型化、薄型化への適応が求められている。さらに、高密度化された撮像素子に適応するための、明るいレンズ系や、広範囲において被写体の像を撮影可能な、広い画角に対応することへの要求も強くなってきている。
【0003】
従来、上述した機器に搭載される撮像レンズとして、ある程度収差を補正することができ、サイズ、コストの面で有利な3枚構成の撮像レンズが多く採用されてきたが、撮像素子の高画素化に伴い、3枚構成よりも高性能化が望める4枚構成の撮像レンズも多く提案されるようになっている。しかし、近年、撮像装置の高画素化はますます進化しており、5メガピクセルを遥かに超えたカメラ機能を備えた機器も登場するようになった。このような高画素化の流れに対応するために、4枚構成よりもさらに高解像度化、高性能化が可能な5枚構成の撮像レンズが提案されるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、物体側から順に、物体側の面が凸形状の正の第1レンズと像面側に凹面を向けた負のメニスカス形状の第2レンズと像面側に凸面を向けた正のメニスカス形状の第3レンズと両面が非球面形状で光軸近傍において像面側の面が凹形状の負の第4レンズと両面が非球面形状の正または負の第5レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から、物体側に凸状の第1レンズを含む第1レンズ群、結像側に凹状の第2レンズを含む第2レンズ群、物体側に凹状のメニスカス形状の第3レンズを含む第3レンズ群、物体側に凹状のメニスカス形状の第4レンズを含む第4レンズ群、及び物体側に変曲点を有する非球面が配されたメニスカス形状の第5レンズを含む第5レンズ群を備えた撮像レンズ系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−264180号公報
【特許文献2】特開2011−085733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の撮像レンズは、5枚構成において、レンズ材料およびレンズの面形状を最適化することで、軸上色収差および倍率色収差の補正効果を得、高画素化に対応した高性能の撮像レンズ系を実現している。しかし、光学全長は8mm前後であり、薄型化が進む装置への適用に課題が残る。また、F値は2.8程度、画角は32°程度であり、近年要求されている明るいレンズ系や広い画角に十分に対応することはできない。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の撮像レンズは、高解像力を具備しながら、光学全長は6mm前後で、比較的小型化および薄型化が実現されている。しかし、F値は2.8程度、画角は32°程度で、この文献に記載の撮像レンズにおいても、近年要求されている仕様(高解像度、小型、薄型、明るいレンズ系、広画角)を十分に満足することはできない。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、5枚レンズ構成でありながら小型化および薄型化が可能で、高解像度を実現しながら、F値が小さく、広い画角に対応できる撮像レンズを提供することにある。
なお、ここで言う小型化、薄型化とは、撮像レンズによって結像する像の最大像高をIH、撮像レンズを構成する最も物体側の面から撮像面までの光軸上の距離を光学全長TTLとしたときに、TTL/(2IH)<1.0を満足する程度に小型化されたレベルを指している。例えて言うなら、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも、撮像レンズの光学全長の方が短いというレベルを指している。
また、F値については、F2.6以下程度の明るさであり、画角については全画角で70°以上の広い画角のレベルを指している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、固体撮像素子用の5枚のレンズから構成される撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、開口絞り、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズ、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズ、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズ、両面が非球面で形成され、光軸近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第4レンズ、両面が非球面で形成され、光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第5レンズからなり、前記第5レンズは、光軸から離れるに従って負の屈折力が弱まる形状を有することを特徴とする。さらに当該構成において、次の条件式(1)を満足する。
(1)0.55<f1/f<1.0
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、f1は第1レンズの焦点距離とする。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、5枚で構成されるレンズのうち、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズを前群とし、第4レンズと第5レンズを後群としたとき、前群は全体として正の屈折力を有し、後群は全体として負の屈折力を有する、所謂テレフォトタイプに近い構成を採っている。このような構成を採り、且つ第5レンズの像側の面を凹面にすることで、光学全長の短縮化を容易にしている。また、第4レンズ、及び第5レンズの両面に適切な非球面形状を形成することによって、諸収差の補正効果と、撮像素子へ入射する光線の角度を抑制する効果を得ている。
【0012】
条件式(1)は第1レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定するものであり、光学全長の短縮化と軸外の諸収差の発生を抑制し、良好な収差補正を可能とするための条件である。条件式(1)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系のパワーに占める第1レンズの正のパワーが弱くなり過ぎるため、レンズの製造誤差感度の低減には有利となるが、光学全長の短縮化に不利となり、小型化や薄型化の実現が困難となる。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系のパワーに占める第1レンズの正のパワーが強くなり過ぎ、特に非点収差と像面湾曲の補正が困難となる。また、レンズの製造誤差感度が高くなり、組立精度が悪化してしまうため好ましくない。
【0013】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(2)から条件式(6)を満足することが望ましい。
(2)50<ν1<70
(3)ν2<35
(4)50<ν3<70
(5)50<ν4<70
(6)50<ν5<70
ただし、ν1は第1レンズのアッベ数、ν2は第2レンズのアッベ数、ν3は第3レンズのアッベ数、ν4は第4レンズのアッベ数、ν5は第5レンズのアッベ数である。
【0014】
条件式(2)から条件式(6)は、各レンズ材料のアッベ数の範囲を規定するものであり、軸上の色収差および倍率色収差を良好に補正するための条件である。条件式(2)から条件式(6)によれば、第2レンズは高分散の材料で形成され、第1レンズ、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズは低分散の材料で形成される。5枚のレンズのうち4枚のレンズのアッベ数を、50よりも大きな値とすることで、軸上の色収差及び倍率色収差をより良好に補正することができる。なお、アッベ数が70を超える材料を使用するとレンズ材料が高額なものになり、低コスト化に不利になるため好ましくない。
【0015】
ところで、色収差を補正するための方法としては、高分散の材料と低分散の材料とを組み合わせる方法が一般に知られている。5枚構成の撮像レンズの場合であれば、低分散の材料で形成される正のパワーを有するレンズと高分散の材料で形成される負のパワーを有するレンズとを交互に組み合わせることにより、色収差の補正が可能である。しかし、このような補正方法を採用すると、さらなる薄型化を図ろうとした場合に、色収差の補正に限界が生じてしまう。すなわち、高分散の材料と低分散の材料とを交互に組み合わせて色収差補正をするレンズ構成では、光学全長を短縮していったときに、主に軸外の光線において、低像高部から高像高部に向かうにつれて倍率色収差が補正不足(基準波長に対し短波長がマイナス方向に増大)の状態から補正過剰(基準波長に対し短波長がプラス方向に増大)の状態に変化することが多く、倍率色収差を撮像面全体にわたって良好に補正することが困難になるからである。本発明のように、条件式(2)から条件式(6)を満足することによって、倍率色収差の補正不足、補正過剰の問題を回避し、薄型化と倍率色収差の良好な補正を両立することができる。
【0016】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)−1.6<f2/f<−0.7
ただし、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0017】
条件式(7)は撮像レンズ全系の焦点距離に占める第2レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものであり、軸上および軸外における諸収差の発生を抑制しながら、光学全長の短縮化を図るための条件である。条件式(7)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系のパワーに占める第2レンズの負のパワーが強くなり過ぎ、軸上および軸外の色収差が補正過剰(基準波長の色収差に対して短波長の色収差がプラス方向に増大)となる。また、結像面が像側に湾曲することとなり、良好な結像性能を得ることが困難となる。さらに、第2レンズの像側の面の曲率半径が小さくなり過ぎることにより、軸外の光線が全反射して迷光が発生する可能性も高くなり、ゴーストやフレアーの発生要因につながり易くなる。一方、条件式(7)の下限値を下回る場合には、撮像レンズ全系のパワーに占める第2レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、光学全長の短縮化には有利となるが、軸上および軸外の色収差が補正不足(基準波長の色収差に対して短波長の色収差がマイナス方向に増大)となる。また、結像面が物体側に湾曲することとなり、この場合も、良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0018】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.05<f12/f<1.60
ただし、f12は第1レンズと第2レンズの合成焦点距離である。
【0019】
条件式(8)は第1レンズと第2レンズの合成焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定するものであり、光学全長の短縮化および広画角化を図りながら、バックフォーカスの確保と良好な収差補正を可能とするための条件である。条件式(8)の上限値を上回ると、撮像レンズ全系のパワーに占める第1レンズと第2レンズの正の合成パワーが弱くなり過ぎるため、焦点距離が長くなり、光学全長の短縮化および広画角化が困難となる。一方、条件式(8)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系のパワーに占める第1レンズと第2レンズの正の合成パワーが強くなりすぎるため、焦点距離が短くなり、広画角化には有利となるが、バックフォーカスの確保が困難となる。なお、バックフォーカスを確保するために、第4レンズ及び第5レンズの負のパワーを大きくしてしまうと、軸外において主に非点収差が発生し、良好な結像性能を得ることが困難となる。また、大きなパワーを得ようとしてレンズの曲率半径を小さくすると、製造誤差感度が高くなってしまうため好ましくない。第1レンズと第2レンズの正の合成パワーを条件式(8)の範囲に規定することで、これらの問題を回避することが出来る。
【0020】
また、本発明の撮像レンズにおいては、第4レンズの物体側の面は、周辺に向かうに従って負のパワーが弱まる非球面形状であり、像側の面は周辺に向かうに従って正のパワーが弱まる非球面形状であることが望ましい。開口絞りから離れている第4レンズの形状をこのような非球面形状にすることによって、第4レンズを通過する際の光線の光路長を調整することができる。その結果、各像高の諸収差、主に非点収差を良好に補正することができる。
【0021】
また、本発明の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)1.7<ν1/ν2<2.7
ただし、ν1は第1レンズのアッベ数、ν2は第2レンズのアッベ数である。
【0022】
条件式(9)は、さらに倍率色収差と軸上色収差とを小さく抑制するための条件である。
【0023】
また、本発明の撮像レンズにおいては、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)−0.80<f1/f2<−0.45
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
【0024】
条件式(10)は第1レンズの焦点距離と第2レンズの焦点距離との比を適切な範囲に規定するものであり、撮像レンズの小型化および広画角化を図りつつ、色収差、球面収差、およびコマ収差を良好な範囲内に抑制するための条件である。条件式(10)の上限値を上回ると、第1レンズの正のパワーに対して第2レンズの負のパワーが相対的に弱くなるため、撮像レンズの小型化には有利となるものの、軸上の色収差および軸外の倍率色収差が補正不足(基準波長に対し短波長がマイナス方向に増大)となり、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、条件式(10)の下限値を下回ると、第1レンズの正のパワーに対して第2レンズの負のパワーが相対的に強くなり、軸外の倍率色収差が補正過剰(基準波長に対し短波長がプラス方向に増大)となる。また、軸外の光束に対してコマ収差が増大する。このため、良好な結像性能を得ることが困難となる。なお、これらの収差を第2レンズ以降に配置されたレンズで補正しようとすると、光学全長が長くなってしまい、小型化が困難となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、小型化および薄型化が可能で、高解像度を実現しながら、且つF値が小さく、広い画角に対応できる撮像レンズを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5参考例の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6参考例の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】実施例5の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図10】実施例5の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図11】実施例6の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図12】実施例6の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図3図5図7図9図11はそれぞれ、本実施形態の実施例1、実施例2、参考例、実施例4〜6に係る撮像レンズの概略構成図を示している。いずれも基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズ構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、負の屈折力を有する第4レンズL4と、負の屈折力を有する第5レンズL5とで構成されている。また、開口絞りSTは第1レンズL1の物体側に配置されている。第5レンズL5と像面IMとの間にはフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。また、撮像レンズの光学全長を算出する際は、フィルタを取り外した際の値を採用するものとする。
【0029】
上記5枚構成の撮像レンズにおいて、第1レンズL1は物体側の面r1と像側の面r2が共に凸面で形成された両凸形状のレンズであり、第2レンズL2は物体側の面r3が凸面で、像側の面r4が凹面のメニスカス形状のレンズであり、第3レンズL3は物体側の面r5が凹面であり、像側の面r6が凸面のメニスカス形状のレンズであり、第4レンズL4は光軸Xの近傍で物体側の面r7が凹面で像側の面r8が凸面のメニスカス形状のレンズであり、第5レンズL5は光軸Xの近傍で物体側の面r9が凸面で像側の面r10が凹面のメニスカス形状のレンズである。
なお、第2レンズL2の物体側の面r3は、第2レンズL2の焦点距離に対して弱い屈折力を有するレンズ面であり、比較的大きな曲率半径の値になっている。第2レンズL2の物体側の面r3の形状は凸面に限定されるものではなく、凹面であってもかまわない。本実施形態の参考例における第2レンズL2は物体側の面r3と像側の面r4が共に凹面の両凹レンズの例である。
【0030】
上記の構成は、5枚で構成されるレンズL1〜L5のうち、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3を前群とし、第4レンズL4と第5レンズL5を後群としたとき、前群は全体として正の屈折力を有し、後群は全体として負の屈折力を有する所謂テレフォトタイプに近い構成であり、このパワー構成にさらに第5レンズの像側の面を凹面とすることによって、光学全長の短縮化が図られている。また、第4レンズL4、及び第5レンズL5の両面に適切な非球面形状を形成することによって、諸収差の補正効果と、撮像素子へ入射する光線の角度を抑制する効果を得ている。
【0031】
また、本実施形態の撮像レンズはすべてプラスチック材料を採用している。全ての実施形態において、第1レンズL1、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5にオレフィン系のプラスチック材料を、第2レンズL2にポリカーボネート系のプラスチック材料を用いている。
すべてのレンズにプラスチック材料を採用することで、安定した大量生産が可能となり、低コスト化が容易である。また、第1レンズL1、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5は同一の材料で構成されているため製造が容易である。
【0032】
本発明の撮像レンズは以下の条件式を満足する。
(1)0.55<f1/f<1.0
(2)50<ν1<70
(3)ν2<35
(4)50<ν3<70
(5)50<ν4<70
(6)50<ν5<70
(7)−1.6<f2/f<−0.7
(8)1.05<f12/f<1.60
(9)1.7<ν1/ν2<2.7
(10)−0.80<f1/f2<−0.45
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
ν3:第3レンズのアッベ数
ν4:第4レンズのアッベ数
ν5:第5レンズのアッベ数
【0033】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき次式により表わされる。
【0034】
【数1】
【0035】
次に本実施の形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、IHは最大像高をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【実施例1】
【0036】
基本的レンズデータを以下の表1に示す。
【表1】
【0037】
実施例1の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0038】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。これら収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している(図4図6図8図10図12においても同じ)。図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0039】
また、光学全長TTLは4.56mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.82であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.52と明るく、半画角は約35.8°で広い画角が実現されている。
【実施例2】
【0040】
基本的レンズデータを以下の表2に示す。
【表2】
【0041】
実施例2の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0042】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0043】
また、光学全長TTLは4.48mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.80であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.38と明るく、半画角は約36.0°で広い画角が実現されている
【実施例3】
【0044】
(参考例)
基本的レンズデータを以下の表3に示す。
【表3】
参考例の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0045】
図6参考例の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0046】
また、光学全長TTLは4.65mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.83であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.58と明るく、半画角は約35.3°で比較的広い画角が実現されている。
【実施例4】
【0047】
基本的レンズデータを以下の表4に示す。
【表4】
【0048】
実施例4の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0049】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0050】
また、光学全長TTLは4.59mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.82であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.34と明るく、半画角は約35.6°で広い画角が実現されている。
【実施例5】
【0051】
基本的レンズデータを以下の表5に示す。
【表5】
【0052】
実施例5の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0053】
図10は実施例5の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図10に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0054】
また、光学全長TTLは4.69mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.84であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.52と明るく、半画角は約35.8°で広い画角が実現されている。
【実施例6】
【0055】
基本的レンズデータを以下の表6に示す。
【表6】
【0056】
実施例6の撮像レンズは、表7に示すように条件式(1)〜(10)の全てを満たしている。
【0057】
図12は実施例6の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図12に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0058】
また、光学全長TTLは4.49mmと短く、最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.80であり、5枚構成でありながら小型化が実現されている。さらに、F値は2.53と明るく、半画角は約35.7°で広い画角が実現されている。
【0059】
本発明の実施形態に係る撮像レンズは、5枚構成でありながら、光学全長TTLが5mm以下であり、光学全長と最大像高IHとの比(TTL/2IH)は0.85以下を達成するほどの小型化が図られている。また、収差が良好に補正されており、F値は2.5程度で明るく、全画角は72°前後で広い画角の撮影を可能にする。
【0060】
表7に実施例1、2、4〜6および参考例の条件式(1)〜(10)の値を示す。
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の各実施の形態に係る5枚構成の撮像レンズは、近年、薄型化、高画素化が進む携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、PDA(Personal Digital Assistance)等に搭載される撮像光学系に好適に適用することができる。本発明の撮像レンズによれば、当該撮像光学系等の高性能化と小型化、広画角化を図ることができる。
【符号の説明】
【0062】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
IR フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12