特許第5985907号(P5985907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985907
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/028 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   F15B11/028 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-150717(P2012-150717)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13062(P2014-13062A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幸
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−168301(JP,U)
【文献】 特開2012−122495(JP,A)
【文献】 実開昭60−062602(JP,U)
【文献】 実開昭56−173201(JP,U)
【文献】 特開平08−312601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/028
F15B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体圧を供給する第1流体圧供給部と、
前記第1流体圧より高い第2流体圧を供給する第2流体圧供給部と、
シリンダと、該シリンダ内を往復動するピストンとを有し、前記第2流体圧が負荷されて前記ピストンが前記シリンダ内を移動することで、前記第2流体圧よりも高い流体圧を発生する増圧部と、
第2流体圧負荷時の前記ピストンのストローク方向とは逆方向に、第1流体圧の負荷によって前記ピストンに作用する力よりも大きく、第2流体圧の負荷によって前記ピストンに作用する力よりも小さい力で、前記ピストンを付勢する付勢部と、
負荷される流体圧の変化によって弁位置が切り換わる第1切換弁部であって、前記第1流体圧が負荷されたときに前記第2流体圧供給部を前記増圧部に接続し、前記第2流体圧が負荷されたときに前記第1流体圧供給部を前記増圧部に接続するように切り換わる第1切換弁部と、
前記ピストンの移動によって弁位置が切り換わる第2切換弁部であって、前記ピストンが第2流体圧負荷時のストローク終端位置にあるときに前記第1切換弁部に前記第1流体圧供給部から流体圧が負荷され、前記ピストンが第1流体圧負荷時のストローク終端位置にあるときに前記第1切換弁部に前記第2流体圧供給部から流体圧が負荷されるように切り換わる第2切換弁部と、
前記第1流体圧供給部が前記第1切換弁部に流体圧を負荷するための流路を流れる流体の流量を規制する絞り部と、
を備えることを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
前記増圧部で発生した前記第2流体圧よりも高い流体圧を蓄圧し、かつ蓄圧した流体圧を下流側に供給可能な蓄圧部を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【請求項3】
前記蓄圧部は、
前記増圧部により前記第2流体圧よりも高い流体圧に増圧された流体を蓄積可能な第1の蓄圧手段と、
前記増圧部により前記第2流体圧よりも高い流体圧に増圧された流体を蓄積可能な第2の蓄圧手段と、
前記第1の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する第1の圧力検知手段と、
前記第2の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する第2の圧力検知手段と、
前記第1の蓄圧手段の下流側に設けられる第1の切換弁と、
前記第2の蓄圧手段の下流側に設けられる第2の切換弁と、
前記第1の切換弁を切り換えることで、前記第1の蓄圧手段への前記増圧された流体の蓄積、及び、前記第1の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給・非供給を制御し、前記第2の切換弁を切り換えることで、前記第2の蓄圧手段への前記増圧された流体の蓄積、及び、前記第2の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給・非供給を制御するコントローラと、
を備え
前記コントローラは、前記第1の蓄圧手段及び前記第2の蓄圧手段のうちのいずれか一方の蓄圧手段に蓄積された流体を下流側へ供給するとともに、他方の蓄圧手段に前記増圧された流体を蓄積し、前記第1の圧力検知手段及び前記第2の圧力検知手段のうち前記一方の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する圧力検知手段が検知する圧力が所定の値以下に低下すると、前記一方の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給を停止して前記一方の蓄圧手段に前記増圧された流体を蓄積するとともに、前記他方の蓄圧手段に蓄積された流体を下流側へ供給することで、前記第1の蓄圧手段及び前記第2の蓄圧手段から下流側へ前記増圧された流体を連続的に供給することを特徴とする請求項に記載の流体圧制御装置。
【請求項4】
前記蓄圧部と、前記蓄圧部で蓄圧された流体圧の供給先と、の間に逆止弁を備えることを特徴とする請求項に記載の流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増圧装置を備えた流体圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体圧制御装置として、シリンダとピストンを用いた増圧装置を備えた油圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。増圧装置は、ピストンの往復動によって、シリンダ内の大径空間に低圧側から低圧油を流入させ、シリンダ内の小径空間から油を高圧側に流出させることによって高圧油を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−185417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記増圧装置は、高圧油の生成・供給に流体の流入出が必要であり、流体の流入出を電気信号により切り換える構成が一般的である。しかしながら、弁の開閉の切換に電気信号を用いる場合、制御信号を出すための装置や弁位置を感知するための装置などが必要となり、装置全体が大型化してしまうことが課題となっている。また、制御用のプログラムが必要となりコスト面でも課題がある。
【0005】
本発明の目的は、構成の簡素化を図ることができる流体圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明における流体圧制御装置は、
第1流体圧を供給する第1流体圧供給部と、
前記第1流体圧より高い第2流体圧を供給する第2流体圧供給部と、
シリンダと、該シリンダ内を往復動するピストンとを有し、前記第2流体圧が負荷されて前記ピストンが前記シリンダ内を移動することで、前記第2流体圧よりも高い流体圧を発生する増圧部と、
第2流体圧負荷時の前記ピストンのストローク方向とは逆方向に、第1流体圧の負荷によって前記ピストンに作用する力よりも大きく、第2流体圧の負荷によって前記ピストンに作用する力よりも小さい力で、前記ピストンを付勢する付勢部と、
負荷される流体圧の変化によって弁位置が切り換わる第1切換弁部であって、前記第1流体圧が負荷されたときに前記第2流体圧供給部を前記増圧部に接続し、前記第2流体圧が負荷されたときに前記第1流体圧供給部を前記増圧部に接続するように切り換わる第1切換弁部と、
前記ピストンの移動によって弁位置が切り換わる第2切換弁部であって、前記ピストンが第2流体圧負荷時のストローク終端位置にあるときに前記第1切換弁部に前記第1流体圧供給部から流体圧が負荷され、前記ピストンが第1流体圧負荷時のストローク終端位置にあるときに前記第1切換弁部に前記第2流体圧供給部から流体圧が負荷されるように切り換わる第2切換弁部と、
前記第1流体圧供給部が前記第1切換弁部に流体圧を負荷するための流路を流れる流体の流量を規制する絞り部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、機械的に動作する第1切換弁部、第2切換弁部、付勢部の協働によって、ピストンを連続的に往復動させることができる。したがって、電気的な制御を行うこ
となく、第2流体圧よりも高圧の流体圧を連続的に生成することができる。本発明の構成における具体的な動作は以下のようになる。
【0008】
第1切換弁部は、負荷される流体圧が第1流体圧のとき、第2流体圧供給部を増圧部に接続する。増圧部は、第2流体圧が負荷されることでピストンが付勢部の付勢力に抗してシリンダ内をストロークし、第2流体圧よりも高圧の流体圧を発生する。ピストンがストロークの終端位置に達すると、第2切換弁部の弁位置が切り換わり、第1切換弁部に負荷される流体圧が第1流体圧から第2流体圧に切り換わる。第1切換弁部に第2流体圧が負荷されると、第1流体圧供給部が増圧部に接続され、ピストンの負荷圧力が第2流体圧から第1流体圧に切り換わる。第1流体圧を負荷されたピストンは、付勢部の付勢力に負けてシリンダ内を逆方向にストロークする。ピストンがストロークの終端位置に達すると、第2切換弁部の弁位置が切り換わり、第1切換弁部に負荷される流体圧が再び第1流体圧に戻る。以上の動作が繰り返されることで、ピストンの往復動が繰り返され、高圧の流体圧が繰り返し発生することになる。
【0009】
以上のように、本発明によれば、増圧部におけるピストンの往復運動を機械的に制御することができる。したがって、従来のような電気制御が不要となり、流体圧制御回路の構成の簡素化を図ることができる。
【0011】
かかる絞り部を備えることにより、第1切換弁部に負荷される流体圧の変化の速度を制御することができる。これにより、ピストンのストローク時間を制御することができる。
【0012】
前記増圧部で発生した前記第2流体圧よりも高い流体圧を蓄圧し、かつ蓄圧した流体圧を下流側に供給可能な蓄圧部を備えるとよい。
【0013】
これにより、増圧部で繰り返し発生する高流体圧を蓄圧部で溜めることにより、定常的な高流体圧の供給が可能となる。
【0014】
前記蓄圧部は、
前記増圧部により前記第2流体圧よりも高い流体圧に増圧された流体を蓄積可能な第1の蓄圧手段と、
前記増圧部により前記第2流体圧よりも高い流体圧に増圧された流体を蓄積可能な第2の蓄圧手段と、
前記第1の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する第1の圧力検知手段と、
前記第2の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する第2の圧力検知手段と、
前記第1の蓄圧手段の下流側に設けられる第1の切換弁と、
前記第2の蓄圧手段の下流側に設けられる第2の切換弁と、
前記第1の切換弁を切り換えることで、前記第1の蓄圧手段への前記増圧された流体の蓄積、及び、前記第1の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給・非供給を制御し、前記第2の切換弁を切り換えることで、前記第2の蓄圧手段への前記増圧された流体の蓄積、及び、前記第2の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給・非供給を制御するコントローラと、
を備え
前記コントローラは、前記第1の蓄圧手段及び前記第2の蓄圧手段のうちのいずれか一方の蓄圧手段に蓄積された流体を下流側へ供給するとともに、他方の蓄圧手段に前記増圧された流体を蓄積し、前記第1の圧力検知手段及び前記第2の圧力検知手段のうち前記一方の蓄圧手段に蓄積された流体の圧力を検知する圧力検知手段が検知する圧力が所定の値以下に低下すると、前記一方の蓄圧手段に蓄積された流体の下流側への供給を停止して前記一方の蓄圧手段に前記増圧された流体を蓄積するとともに、前記他方の蓄圧手段に蓄積された流体を下流側へ供給することで、前記第1の蓄圧手段及び前記第2の蓄圧手段から下流側へ前記増圧された流体を連続的に供給するとよい。
【0015】
これにより、蓄圧部で蓄圧した流体圧の下流側への供給のタイミングや、下流側に供給する流体圧の大きさを任意で制御することが可能になる。
【0016】
前記蓄圧部は、前記蓄圧手段を複数有するとよい。
【0017】
これにより、複数の蓄圧手段のいずれかの蓄圧手段が蓄圧している間に他の蓄圧手段が高流体圧の供給を行う、すなわち、複数の蓄圧手段で交互に高流体圧を供給する構成とすることで、高流体圧の連続的な供給が可能となる。
【0018】
前記蓄圧部と、前記蓄圧部で蓄圧された流体圧の供給先と、の間に逆止弁を備えるとよ
い。
【0019】
蓄圧部と高流体圧供給先との間に逆止弁を設けることで、逆止弁から流体圧供給先側と、逆止弁から蓄圧部側(上流側)とで系を分けることができる。これにより、流体圧供給先側が高圧仕様の場合でも蓄圧部側の各要素を高圧仕様にせずに高流体圧の供給が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、増圧部を備えた流体圧制御装置の構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例に係る流体圧制御装置の油圧回路図
図2】油圧リモコン弁の2次圧特性を示す図
図3図1の増圧装置の拡大図
図4】増圧装置の他の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
〈実施例〉
図1は、本発明の実施例に係る油圧制御装置(流体圧制御装置)の油圧回路図である。本実施例に係る油圧制御装置は、例えば、普通乗用車や、トラック、油圧ショベル、フォークリフト、クレーン、ごみ収集車等におけるブレーキ、ステアリング、トランスミッション等の油圧装置に適用可能である。なお、図1に示す油圧回路は、本発明の流体圧制御装置の流体圧回路のあくまで1例であり、図1の構成に限定されるものではない。
【0024】
本実施例に係る油圧制御装置は、概略、エンジンや電動モータなどの駆動機構1の動力を油圧によって制御して目標Wに伝える構成となっている。なお、駆動機構1としては、車両における他の機構の動力源も兼ねたものでもよいし、油圧制御装置の専用の動力源であってもよい。
【0025】
駆動機構1には、いわゆる可変容量形ポンプであるメイン回路用油圧ポンプ2(以下、油圧ポンプ2)とパイロット回路用油圧ポンプ3(以下、油圧ポンプ3)が連結され、これらは駆動機構1によって駆動される。油圧ポンプ2と油圧ポンプ3は、駆動機構1からの動力によって回転することにより、油圧を油圧ライン12、18を介して下流側へ供給する。
【0026】
油圧ポンプ2から吐出された圧油は、油路13を通って切換弁4に流入する。切換弁4は、6ポート3位置タイプのオープンセンタ型切換弁であり、その中立位置では、油圧ポンプ2から吐出された圧油の全量が油路14を通ってタンク11に流れる。
【0027】
油圧ポンプ3から吐出された圧油は、油路18を通って油圧リモコン弁6(以下、リモコン弁6)に供給される。リモコン弁6は、可変型の減圧弁であり、レバー6−1を前後に操作することにより、減圧された2次圧が、信号油路21、22を通って切換弁4の信号ポート4−1、4−2に供給される。
【0028】
図2は、油圧リモコン弁6の2次圧特性を示す図である。レバー6−1を伸び又は縮み
方向に操作すると図2に示すようなレバー操作量Lxに比例した2次圧Pxが、切換弁4の信号ポート4−1又は4−2に供給されることにより、切換弁4が「伸び」位置又は「縮み」位置に切り換わる。なお、ポンプ3から吐出された圧油のうち、リモコン弁6から各信号ポート4−1、4−2に供給されない余剰油は、油路26を通って増圧装置32側に供給される作動油を除いて、全て油路19、リリーフ弁8、油路20を通ってタンク11へ排出される。
【0029】
リモコン弁6の操作レバー6−1を縮み方向に操作して切換弁4が縮み位置に切り換わると、ポンプ2からの圧油は油路12、15、切換弁4、油路24を通ってシリンダ5の油室5−1に流入する。油室5−1への圧油の流入によってシリンダ5内のロッドが縮み位置へ移動し、油室5−2内の油が油路23、切換弁4、油路25を通ってタンク11に排出される。このとき、パイロット信号油路22上に設置されている圧力センサ10からの電気信号がコントローラ34に入力される。
【0030】
操作レバー6−1を伸び方向に操作して切換弁4が伸び位置に切り換わると、ポンプ2からの圧油は油路12、15、切換弁4、油路23を通ってシリンダ5の油室5−2に流入する。油室5−2への圧油の流入によってシリンダ5内のロッドが伸び位置へ移動し、油室5−1内の油が油路24を通って切換弁4を介して油路25を通ってタンク11に排出される。このとき、パイロット信号油路21上に設置されている圧力センサ9からの電気信号がコントローラ34に入力される。
【0031】
以上のシリンダ5内のロッドの移動によって駆動機構1の動力が目標Wに伝達される。なお、シリンダ5内のロッドが伸び終端もしくは縮み終端に達した際やシリンダ5へ急激な負荷が加わると、回路内の油が閉塞状態となって異常高圧になることがある。本回路には、そのような異常高圧状態が発生したときに回路内の油機が破損するのを防ぐためにリリーフ弁7が設置されている。異常高圧油は、油路16、リリーフ弁7、油路17を通ってタンク11に排出される。
【0032】
(増圧装置)
油路18より分岐した油路26上には電磁切換弁27が設けられている。電磁切換弁27は、その中立位置では油路26と油路28は遮断されており、同時に油路28は電磁切換弁27、油路29を介してタンク11(第1流体圧供給部)に接続されている。また、油路28は切換弁30、油路31を介して増圧装置(増圧部)32に接続している。
【0033】
電磁切換弁27は、スイッチ33をON状態にするとコントローラ34からの電気信号が電気信号ライン68を通って入力されることにより切り換わり、油路26と油路28が接続され、同時に油路28と油路29が遮断される。
【0034】
図3は、図1における増圧装置32を拡大して示す模式図である。図3に示すように、増圧装置32は、ケース(シリンダ)32−1内にピストン32−2が内封されており、ケース内を摺動する。また、ピストン32−2は端面32−2bにて切換弁部32−3のガイド部32−3aと接しており、スプリング(付勢部)32−4の付勢力により、ガイド部32−3aの端面が常にピストン端面32−2bに押接されている。
【0035】
ピストン端面32−2aへの負荷圧が低い状態、すなわち、タンク圧(第1流体圧)が負荷された状態では、ピストン32−2はスプリング32−4の付勢力により、ピストン32−2がケース32−1内の端部32−1a部に押接されている。また、切換弁部(第2切換弁部)32−3にて、パイロット油路35とドレン油路36がつながっており、タンク11に接続されていると同時にパイロット油路37は遮断されている。
【0036】
次に、ピストン端面32−2aに所定以上の負荷圧がかかると、すなわち、油圧ポンプ3(第2流体圧供給部)から吐出された圧油(第2流体圧の作動流体)が負荷されると、ピストン32−2がスプリング32−4の付勢力に抗してピストン端面32−2bがケース32−1のストッパ部32−1bに当たるまで左方に移動する。このとき、ピストン端面32−2bがケース32−1のストッパ部32−1bに当たる直前に切換弁部32−3が切り換わり、パイロット油路35と37がつながり、ドレン油路36が遮断される。
【0037】
ピストン32−2は、大径部と小径部を有することで段差が設けられており、大径部の端部32−2aと段差部における環状の端面32−2cとの間を導通させる通路32−5上に逆止弁32−6が設置されている。小径部のドレン室32−7は、油路66を介してタンク11に接続されている。
【0038】
パイロット油路35は、可調式スローリターン弁38、パイロット油路39を通って切換弁30の信号ポートに接続されている。パイロット油路35において、増圧装置32の切換弁部32−3からの油圧信号はスローリターン弁38の可変絞り部38−1(絞り部)で絞られる。逆に、切換弁30からの油圧信号は絞られることなくスローリターン弁38の逆止弁38−2を通って増圧装置32の切換弁部32−2に流れる。また、パイロット油路37は、油路28に接続されている。なお、逆止弁38−2は、作動油が切換弁30から切換弁部32−3へ向かう方向に流れるときに弁が解放され、切換弁部32−3から切換弁30へ向かう方向に流れるときには弁が閉じられるように構成されている。以下、他の逆止弁も同様の構成である。
【0039】
ここで、
S1:ピストン端面32−2aの大径部断面積
S2:段差部32−2cの断面積
F1:ピストン32−2がケース32−1の端部32−1a部に押圧されているときのスプリングの付勢力
P1x:ピストン32−2がケース32−1の端部32−1a部に押圧されているときのピストン端面32−2aへの負荷圧
P2x:ピストン32−2がケース32−1の端部32−1a部に押圧されているときの段差部32−2cへの負荷圧
F2:ピストン32−2がケース32−1のストッパ部32−1bに押圧されているときのスプリングの付勢力
P1y:ピストン32−2がケース32−1のストッパ部32−1bに押圧されているときのピストン端面32−2aへの負荷圧
P2y:ピストン32−2がケース32−1のストッパ部32−1bに押圧されているときの段差部32−2cへの負荷圧
とすると、下記2式が成り立つ。
P2x・S2+F1≧P1x・S1 … (式1)
P2y・S2+F2≦P1y・S1 … (式2)
【0040】
(アキュムレータへの蓄圧)
スイッチ33を入れると、コントローラ34から電気信号ライン68を介して電磁切換弁27に電気信号が入力され(ON状態)、電磁切換弁27が切り換わり、油路26と油路28が接続される。これにより、油圧ポンプ3からの圧油Pp(≧P1y)が切換弁30を介して増圧装置32のピストン端面32−2aに負荷される。式2より、ピストン32−2はケース32−1のストッパ部32−1bに当たるまで(第2流体圧負荷時のストローク終端位置まで)左方に移動する。このピストン32−2のストロークにより高圧にされた段差部油室32−8内の油は、油路40、逆止弁41を通って油路42に流入され、油路43、44、逆止弁45、46を通って蓄圧手段としてのアキュムレータ49、5
0にそれぞれ蓄圧される。ここで、S1をS2に比べ十分に大きな値にすることでパスカルの定理により、各アキュムレータ49、50への押し込み圧力は十分に高い圧力とすることが可能である。アキュムレータ49、50は、従来技術を適宜採用できる。例えば、ピストンや弾性体によって密閉区画された蓄圧室と背圧室を備え、蓄圧室内の圧力が背圧室内の圧力を上まわったときにピストンの移動や弾性体の変形によって蓄圧室の容積を拡大されることで油圧が蓄積される構成が知られている。
【0041】
また、ピストン32−2がケース32−1のストッパ部32−1bに当たる直前に切換弁部32−3が切り換わると、パイロット油路35と37が導通するので油路28からの圧力信号がスローリターン弁38の可変絞り部38−1を通って切換弁30の信号ポートに入力される。これにより、切換弁30が切り換わると油路28と油路31は遮断されると同時に油路31がドレン油路69を通ってタンク11に導通され、増圧装置32のピストン端面32−2a部への負荷圧がタンク圧となる。式1により、ピストン32−2はスプリング32−4の付勢力によりピストン端面32−2aがケース端部32−1a部に押接される位置(第1流体圧負荷時のストローク終端位置)まで押し戻される。このとき、段差部油室32−8内にはタンク11より油路69、31、32−5及び逆止弁32−6を介して油が流入される。なお、図4に示すように、段差部油室32−8は、ピストン32−2を貫通する油路32−5の代わりに、ケース32−1の外部と直接流通する油路32−5’及び逆止弁32−6’を設けて油路31と接続する構成としてもよい。図4は、本発明の実施例における増圧装置の他の例を示す模式図である。
【0042】
同時に、切換弁部32−3も中立位置に戻されると、今度は、パイロット油路35がドレン油路36を介してタンクに導通した瞬間、切換弁30の信号ポート圧がタンク圧まで低下する。これにより、切換弁30が内蔵されているスプリングにより中立位置に復帰し、再び油路28と油路31が導通して油圧ポンプ3からの圧油Ppがピストン32−2端面32−2aに負荷される。再び式2より、ピストン32−2はケース32−1のストッパ部32−1bに当たるまで左方に移動し、段差部油室32−8内の油は油路40、逆止弁41、油路42を通って油路42に流入され、油路43、44及び逆止弁45、46を通ってアキュムレータ49、50に蓄圧される。以上のプロセスが連続的に繰り返される。すなわち、スイッチ33を入れると、増圧装置32によって連続的にアキュムレータ49、50に圧油を蓄積することができる。
【0043】
なお、増圧装置32によるアキュムレータ49、50への蓄圧スピードはスローリターン弁38の可変絞り部38−1の開度を調節することにより切換弁30の切換タイミングを変えることによって調整することができる。
【0044】
(蓄圧油の回生)
本実施例における蓄圧部の構成について説明する。油路47、48上には、それぞれ圧力検知手段としての圧力センサ51、52が設置されている。また、油路47、48から分岐した油路53、54及び逆止弁55、56を介してノーマルクローズ型の電磁比例切換弁57、58が接続されている。電磁比例切換弁57、58は、油路59、60、逆止弁61及び油路62を介して油路23に接続している。また、アキュムレータ49、50の容量が許容容量に達した場合は、余剰油が油路42上に設置されたリリーフ弁66及び油路67を通ってタンク11に排出されるようになっている。なお、リリーフ弁66の設定圧は、シリンダ5への回生時に必要な油圧よりも若干高めの設定にしておけばよく、メイン回路に使用されているリリーフ弁7に比べ、十分に低い設定圧力にすることが可能である。
【0045】
コントローラ34は、電磁比例切換弁57、58を切り換えることで、アキュムレータ49、50への蓄圧、及び、アキュムレータ49、50に蓄積された圧油の下流側への供
給・非供給を制御する。すなわち、操作レバー6−1を伸び方向に操作すると切換弁4が伸び位置に切り換わってポンプ2からの圧油は、油路12、15、切換弁4、油路23を通ってシリンダ5の油室5−2に流入し、油室5−1内の油が油路24、切換弁4、油路25を通ってタンク11に排出される。このとき、圧力センサ9からの電気信号がコントローラ34に入力されることにより、予めコントローラに実装されている演算回路によって電気信号がまず電気信号ライン63を通って電磁比例切換弁57に入力される。そして、電磁比例切換弁57が切り換わると、アキュムレータ49内の蓄圧油が油路53、逆止弁55、電磁比例切換弁57、油路59、逆止弁61、油路62を通って油路23に合流し、シリンダ5の油室5−2に回生される。また、このとき、同時にコントローラ34より、電気信号が電気信号ライン65を通って駆動機構1に入力され、駆動力が低減される。すなわち、操作レバー6−1の伸び方向への操作が、増圧(蓄圧の回生)のスイッチとなる。
【0046】
さらに、アキュムレータ49内の圧力が所定の値以下に低下すると圧力センサ51からの電気信号がコントローラ34に入力され、予めコントローラに実装されている演算回路によって電気信号が電気信号ライン64を介して電磁比例切換弁58に入力される。そして、電磁比例切換弁58が切り換わりアキュムレータ50内の蓄圧油が油路54、逆止弁56、電磁比例切換弁58、油路60、逆止弁61、油路62を通って油路23に合流し、シリンダ5の油室5−2に回生される。
【0047】
また、同時に電磁比例切換弁57への電気信号が遮断されて閉状態になることにより、再び増圧回路32からの圧油がアキュムレータ49に蓄圧される。アキュムレータ50内の蓄圧量が減少して所定の圧力以下となった場合、圧力センサ52からの電気信号を受けてコントローラ34に予め実装されている演算回路によって電気信号が電気信号ライン63を介して電磁比例切換弁57に入力される。そして、電磁比例切換弁57が切り換わって、再びアキュムレータ49内の蓄圧油が油路59、逆止弁61、油路62を通って油路23に合流し、シリンダ5の油室5−2に回生される。
【0048】
上述のような演算回路を構成することにより、アキュムレータ49、50に蓄圧された増圧装置から発生した圧油を連続的にメイン回路に回生させることができる。
【0049】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、機械的に動作する切換弁30、切換弁部32−3、スプリング32−4の協働によって、ピストン32−2を連続的に往復動させることができる。したがって、電気的な制御を行うことなく、高圧の流体圧を連続的に生成することができる。これにより、従来のような電気制御が不要となり、流体圧制御回路の構成の簡素化を図ることができる。
【0050】
また、スローリターン弁38を切換弁30と切換弁部32−3との間に設けることで、切換弁部32−3からタンク圧を切換弁30に供給する際の切換弁30の切り換わりが絞りによる流量の規制によって徐々に進行することになる。すなわち、スローリターン弁38は、タイマーのような働きをし、ピストン32−2が元の位置に戻る時間(ストローク時間)を制御することが可能となる。なお、切換弁30の負荷される流体圧の変化の速度を制御可能な構成であれば、他の構成を採用してもよい。
【0051】
増圧装置32が生成する高圧流体は、ピストン32−2の往復によって供給されるため、ピストン32−2の往復動による脈動が生じ、その状態で流体圧を供給すると、脈動により装置に悪影響が出る恐れがある。本実施例によれば、増圧装置32から供給される高圧流体を常時アキュムレータ49、50に溜めることが可能であり、これにより常に一定量の高圧流体を供給することが可能となる。
【0052】
アキュムレータ49、50とメイン回路との間に逆止弁61を設けることで、逆止弁61からメイン回路側と、逆止弁61からアキュムレータ49、50側(上流側)とで系を分けることができる。したがって、メイン回路側が高圧仕様の場合でもアキュムレータ49、50側の各要素を高流体圧の供給先への回生に必要な最小限の圧力仕様にすることにより不必要な高圧仕様にせずに高圧流体の供給が可能となる。
【0053】
なお、本実施例では、付勢部としてスプリング32−4を用いていたが、付勢手段としてはこれに限られるものではなく、機械的にピストンを押し戻す力を発生できる構成であれば適宜採用することができる。
【0054】
また、第2切換弁部として切換弁部32−3をピストン32−2と一体的に移動可能な構成とすることで弁位置が切り換えられるようにしているが、ピストン32−2の移動に連動して弁位置が切り換えられる構成であれば、適宜他の構成を採用することができる。
【0055】
さらに、本実施例では、蓄圧装置としてアキュムレータを2つ備える構成としているが、3つ以上備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動機構
2 メイン回路用油圧ポンプ
3 パイロット回路用油圧ポンプ(第2流体圧供給部)
4 切換弁
5 シリンダ5
6 油圧リモコン弁
11 タンク(第1流体圧供給部)
30 切換弁(第1切換弁部)
32 増圧装置(増圧部)
32−1 ケース(シリンダ)
32−2 ピストン
32−3 切換弁部(第2切換弁部)
32−4 スプリング(付勢部)
38 可変式スローリターン弁(絞り部)
49、50 アキュムレータ(蓄圧部)
図1
図2
図3
図4