特許第5985911号(P5985911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985911
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】瞬時電圧調整装置及び瞬時電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20160823BHJP
   G05F 1/14 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H02J3/18 107
   G05F1/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-158211(P2012-158211)
(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公開番号】特開2014-23227(P2014-23227A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 新吾
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−182814(JP,A)
【文献】 特開平8−335119(JP,A)
【文献】 特開平8−335121(JP,A)
【文献】 特開平11−95846(JP,A)
【文献】 特開2005−341668(JP,A)
【文献】 特開2010−103395(JP,A)
【文献】 特開2012−125020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/14
H01F 29/04
H02J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200[V]の配電線に直接接続される電圧調整器として、直列変圧器と、所定の電圧構成比を有する二次巻線から構成される補助変圧器と、補助変圧器の二次巻線に接続され、負荷側電圧の上昇量又は下降量に応じて当該二次巻線の電圧構成を切り替える半導体スイッチ回路と、前記直列変圧器の二次巻線に並列接続される短絡防止回路を備え、前記補助変圧器の二次巻線は、前記補助変圧器の一次巻線電圧を2n[V]刻みで調整する場合、前記直列変圧器のレシオが1/m[V]であれば、直列変圧器の二次巻線への印加電圧をn×m[V]刻みで調節可能な電圧構成比とし、前記半導体スイッチ回路と短絡防止回路を操作して前記補助変圧器の電圧構成を切り替えて、直列変圧器の二次巻線に印加する電圧を下降又は上昇させることにより、直列変圧器の一次巻線を介して200[V]の配電線の電圧を直接調整することを特徴とする瞬時電圧調整装置。
【請求項2】
前記補助変圧器の二次巻線は、1:3:9の電圧構成比とすることを特徴とする請求項1記載の瞬時電圧調整装置。
【請求項3】
200[V]の配電線に直接接続される電圧調整器として、直列変圧器を接続し、該直列変圧器の一次巻線の負荷側には補助変圧器を接続し、該補助変圧器は、当該補助変圧器の一次巻線電圧を2n[V]刻みで調整する場合、前記直列変圧器のレシオが1/m[V]であれば、直列変圧器の二次巻線への印加電圧をn×m[V]刻みで調節可能な電圧構成比を有する複数の二次巻線を備え、補助変圧器の二次巻線に接続される半導体スイッチと短絡防止回路を操作することによって補助変圧器の二次巻線の電圧構成を切り替えて、直列変圧器の二次巻線に印加する電圧を下降又は上昇させることにより、直列変圧器の一次巻線を介して200[V]の配電線の電圧を直接調整することを特徴とする瞬時電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧配電線に電圧変動が生じた場合でも低圧側電圧を一定に調整することが可能な瞬時電圧調整装置及び瞬時電圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配電系統の進み力率によるフェランチ現象や、太陽光発電等の分散型電源からの逆潮流による低圧配電線の電圧上昇が問題となってきている。また、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による電力供給不安から、国内では再生可能エネルギーへの転換の機運が高まっており、家庭用太陽光発電の導入が進み、これに伴う低圧配電線の電圧変動への影響が拡大することが想定される。
【0003】
家庭用太陽光発電等の分散電源の増加に伴う低圧配電線の電圧変動に対応するため、電圧変動を検知しながら二次電圧を一定とするよう、一次タップ電圧を自動調整する機能を付加した柱上変圧器が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の変圧器はタップ電圧を手動で変更する必要がないため、停電を伴わずに二次電圧の調整ができる点で非常に有効であるが、タップ電圧の切り替えが機械式であり、接触子は電気学会電気規格調査会標準規格JEC−2220によって求められる電流遮断性能および耐用切替回数(10万又は20万回)に耐えうる設計がされている。
【0006】
上記の如く、電気的,機械的に耐用回数に制限があることにより、20年の設計寿命を維持するためには切替感度を鈍らせたり、不感帯を設けて切替回数を減らす対応をしており、細かな電圧調整ができないといった欠点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を解消するために、二次電圧を半導体リレーの切り替えによって調整することで、切替回数の制限を無くすとともに、切り替えの高速化を実現できる瞬時電圧調整装置及び瞬時電圧調整方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、200[V]の配電線に直接接続される電圧調整器として、一対の直列変圧器と、当該一対の直列変圧器の一次巻線の負荷側に接続される一次巻線および所定の電圧構成比を有する二次巻線から構成される補助変圧器と、補助変圧器の二次巻線に接続され、負荷側電圧の上昇量又は下降量に応じて当該二次巻線の電圧構成を切り替える半導体スイッチ回路と、前記直列変圧器の二次巻線に並列接続される短絡防止回路と、前記補助変圧器の二次巻線を、前記補助変圧器の一次巻線電圧を2n[V]刻みで調整する場合、前記直列変圧器のレシオが1/m[V]であれば、直列変圧器の二次巻線への印加電圧をn×m[V]刻みで調節可能な電圧構成比とし、前記半導体スイッチ回路と短絡防止回路を操作して前記補助変圧器の電圧構成を切り替えて、直列変圧器の二次巻線に印加する電圧を下降又は上昇させることにより、直列変圧器の一次巻線を介して200[V]の配電線の電圧を直接調整することを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記補助変圧器の二次巻線は、1:3:9の電圧構成とすることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、200[V]の配電線に直接接続される電圧調整器として、一対の直列変圧器を接続し、該直列変圧器の一次巻線の負荷側には補助変圧器を接続し、当該補助変圧器は、当該補助変圧器の一次巻線電圧を2n[V]刻みで調整する場合、前記直列変圧器のレシオが1/m[V]であれば、直列変圧器の二次巻線への印加電圧をn×m[V]刻みで調節可能な電圧構成比を有する複数の二次巻線を備え、補助変圧器の二次巻線に接続される半導体スイッチと短絡防止回路を操作することによって補助変圧器の二次巻線の電圧構成を切り替えて、直列変圧器の二次巻線に印加する電圧を下降又は上昇させることにより、直列変圧器の一次巻線を介して200[V]の配電線の電圧を直接調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、二次電圧の調整を半導体スイッチによって実現できるので、切替回数に制限はなく、切替速度を高速化することができる。
【0013】
また、請求項記載の発明によれば、補助変圧器の電圧構成比を可変することで、所望する刻み電圧で二次電圧の緻密な調整が可能となる。
【0014】
請求項記載の発明によれば、補助変圧器のタップ数を減らして広範囲の電圧調整が可能となる。
【0015】
請求項記載の発明によれば、上昇又は下降の何れの電圧調整も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の瞬時電圧調整装置を具備した自動電圧調整型柱上変圧器を配電系統に設置した状態を示す図である。
図2】前記自動電圧調整型柱上変圧器の回路図である。
図3】前記瞬時電圧調整装置を構成する半導体スイッチのON/OFFパターンを示す表である。
図4】前記瞬時電圧調整装置を構成する半導体スイッチのON/OFFパターンと直列変圧器の二次電圧及び調整電圧の関係を示す表である。
図5】前記半導体スイッチのON/OFF操作とON/OFF動作タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図5を用いて説明する。図1は本発明の瞬時電圧調整装置を具備した自動電圧調整型柱上変圧器Aを配電系統に設置した状態を示す図である。図1に示す自動電圧調整型柱上変圧器Aは、高圧6.6[kV]を低圧200/100[V]に変換するものであり、本発明の瞬時電圧調整装置はこの自動電圧調整型柱上変圧器に付属するものである。
【0018】
つまり、低圧配線路に接続された家庭用太陽光発電(PV)等の再生可能エネルギー等に起因する電圧変動を検知しながら二次電圧一定とするよう調整する機能として瞬時電圧調整装置が柱上変圧器に付属するのである。
【0019】
図2は前記自動電圧調整型柱上変圧器Aの回路図である。前述したように、自動電圧調整型柱上変圧器Aは、6.6[kV]を200/100[V]に降圧する変圧器1に本発明に係る瞬時電圧調整装置2を付属して構成されている。
【0020】
瞬時電圧調整装置2は、変圧器1の二次巻線1bに直列接続される2つの変圧器(以下、直列変圧器という)3,4と、直列変圧器3,4の負荷側に直列接続される補助変圧器5と、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bと補助変圧器5の二次巻線5b,5c,5d間に接続される半導体スイッチ回路6と、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bに対して並列接続される短絡防止回路7によって構成されている。
【0021】
前記半導体スイッチ回路5は、補助変圧器5の二次巻線5b,5c,5dに対して、複数のソリッドステイトリレーSSR1A〜1D,2A〜2D,3A〜3Dをブリッジ接続することによって構成されており、前記短絡防止回路7は、ソリッドステイトリレーSSRRと抵抗素子RUを直列接続し、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bに対して並列に、かつ、変圧器1の二次巻線1bの中性線に接続されている。
【0022】
また、ソリッドステイトリレーSSR1A〜1D,2A〜2D,3A〜3Dは、図3に示すように、SSR※A,※DがONのときSSR※B,※CがOFFする「上げ」と、SSR※A,※DがOFFのときSSR※B,※CがONする「下げ」と、SSR※A,※BがONのときSSR※C,※DがOFFする「素通し」の3動作の何れかが実行されるものである(※は1〜3の何れか)。
【0023】
そして、前記補助変圧器5の2次巻線5b,5c,5dは、電圧構成が20[V],60[V],180[V]、つまり、1:3:9の電圧構成比を採用しており、SSR1(1A〜1D)が「上げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を+20[V]調整することができ、SSR1(1A〜1D)が「下げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を−20[V]調整することができ、SSR1(1A〜1D)が「素通し」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を0[V]調節することができる。
【0024】
同様に、SSR2(2A〜2D)が「上げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を+60[V]調整することができ、SSR2(2A〜2D)が「下げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を−60[V]調整することができ、SSR2(2A〜2D)が「素通し」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を0[V]調節することができる。
【0025】
また、SSR3(3A〜3D)が「上げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を+180[V]調整することができ、SSR3(3A〜3D)が「下げ」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を−180[V]調整することができ、SSR3(3A〜3D)が「素通し」動作のときは、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bの電圧を0[V]調節することができる。
【0026】
この結果、直列変圧器3,4の二次電圧をSSR1〜SSR3の「上げ」,「下げ」,「素通し」動作の組み合わせによって、図4に示すように、直列変圧器3,4の二次巻線の電圧を−260[V]〜+260[V] まで、20[V] 刻みで調節することが可能となる。
【0027】
そして、直列変圧器3,4のレシオが7/280Vであれば、各々の直列変圧器3,4の一次巻線3a,4aの電圧を−6.5[V]〜+6.5[V]まで0.5[V]刻みで調節することができ、2つの直列変圧器3,4によって合計−13[V] 〜+13[V]まで1[V] 刻みで補助変圧器5の一次巻線5aの電圧(出力電圧)を調節することが可能となる。
【0028】
次に、前記瞬時電圧調整装置2の動作について説明する。図1に示すように家庭用太陽光発電PVの接続により低圧配電線に電圧変動が生じた場合、自動電圧調整型柱上変圧器Aは、図示しない電圧検知手段によってこれを検知し、図2に示す半導体スイッチ回路6のソリッドステイトリレーSSR1A〜1D,2A〜2D,3A〜3Dに対してON/OFF指令を出力する。
【0029】
例えば、電圧変動によって出力電圧が−5[V]となった際に+1[V]に調節する場合、図4に示すように、SSR1「上げ」,SSR2「上げ」,SSR3「下げ」の状態にあるソリッドステイトリレーを、SSR1「上げ」,SSR2「素通し」,SSR3「素通し」の状態へ移行させることにより、出力電圧を+1[V]に調節することができる。
【0030】
この際、SSR1,SSR2,SSR3は、補助変圧器5が短絡しないように一旦全てをOFFする必要があるが、これにより、直列変圧器3,4の二次側のインピーダンスが無限大となって、直列変圧器3,4の一次側に200[V]がかかることになるので、直列変圧器3,4の二次側が高電圧(200[V]×280/7[V]=8000[V])となってしまう。
【0031】
これを防止するために、出力電圧の調整をする際は、予め、短絡防止回路7のSSRRをONさせて直列変圧器3,4の二次側を低抵抗(例えば、50Ω)とした後に、SSR1〜SSR3を全てOFFしてから、新たにSSR(本実施例ではSSR1A,1D、SSR2A,2B、SSR3A,3B)をONする。これにより、出力電圧を−5[V]から+1[V]に調整することができる。
【0032】
図5は、電圧波形と上記SSR1〜SSR3,SSRRのON/OFFのタイミングを示す図であり、出力電圧が−5[V]のときにONしているSSR群をαとし、出力電圧が+1[V]のときにONするSSR群をβとしている。
【0033】
図5に示すように、SSR群αがON状態にあるとき出力電圧は−5[V]に調整されている。+1[V]に調整する目的で電圧ピーク時にSSR群αをOFF操作するがSSRの特性上、電流が流れている間はOFF動作することはない。
【0034】
また、電圧ピーク時にSSRRをON操作するがSSRRの特性上、電圧がゼロになるまではON動作せず、電圧及び電流がゼロになった時にSSR群αがOFF動作し、SSRRがON動作して抵抗素子RUの素通し状態となる。
【0035】
そして、抵抗素子RUが素通し状態の電圧ピーク時に、SSRRをOFF操作、SSR群βをON操作すると、電圧及び電流がゼロになった時にSSRRがOFF動作、SSR群βがON動作して出力電圧が+1[V]に調整される。
【0036】
つまり、電圧調整の切替時間は、図5に示す正弦波の半波で完了することができ、非常に高速での切り替えが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本発明の瞬時電圧調整装置及び瞬時電圧調整方法は、出力電圧(二次電圧)の調整を半導体スイッチによって実現できるので、切替回数に制限はなく、切替速度を高速化することができる。
【0038】
なお、上記実施例では、補助変圧器の二次巻線5b,5c,5dを20[V],60[V],180[V]と、1:3:9の電圧構成比とすることで電圧調整幅を−13[V]〜+13[V]とした例について説明したが、1:3:9:27のようにして電圧調整幅をより広くとっても良い。
【0039】
また、上記のように1:3:9の電圧構成比とすることにより、タップ数を減らして広範囲な電圧調整が可能となるが、20[V],40[V],80[V]といったように1:2:4のような異なる電圧構成比で電圧調整をしても良いことは当然である。
【0040】
さらに、直列変圧器3,4のレシオは7/280[V]を例にとり説明したが、レシオを1/m[V]としたならば、直列変圧器3,4の二次巻線3b,4bへの印加電圧をn×m[V]刻みで調整可能な電圧構成比で補助変圧器の二次巻線5b〜5dを構成すれば、出力電圧を2n[V]刻みで調整することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、とりわけ柱上変圧器に付属して利用される可能性が高い。
【符号の説明】
【0042】
1 柱上変圧器
2 瞬時電圧調整装置
3,4 直列変圧器
5 補助変圧器
6 半導体スイッチ回路
7 短絡防止回路
A 自動電圧調整型柱上変圧器
SSR,SSRR ソリッドステイトリレー
RU 抵抗素子
図1
図2
図3
図4
図5