特許第5985930号(P5985930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985930
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】密封容器
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20160823BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20160823BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20160823BHJP
   B65B 7/28 20060101ALI20160823BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M2/06 K
   B65D77/20 G
   B65B7/28 C
   B32B27/00 H
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-189015(P2012-189015)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-49197(P2014-49197A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/040634(WO,A1)
【文献】 特開2002−260603(JP,A)
【文献】 特開2007−330851(JP,A)
【文献】 特開2003−154467(JP,A)
【文献】 特開2000−301356(JP,A)
【文献】 特開2008−243760(JP,A)
【文献】 特開2010−274296(JP,A)
【文献】 米国特許第06632538(US,B1)
【文献】 特開2000−264313(JP,A)
【文献】 特開2000−223090(JP,A)
【文献】 特開2004−087239(JP,A)
【文献】 特開平11−104859(JP,A)
【文献】 特開2008−207818(JP,A)
【文献】 特開2006−282259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02〜2/08
B32B 27/00
B65B 7/28
B65D 77/20
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア層の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されたラミネート包材が熱可塑性樹脂層を内側にして重ねられ、重ねられたラミネート包材の周縁を接合して封止することによって収容部が形成される密封容器であって、
前記周縁の封止部は、熱可塑性樹脂層が溶着したヒートシール部とバリア層同士が接合された多数のバリア層接合部とを有し、前記多数のバリア層接合部はヒートシール部中に連続することなく斑点状に配置されていることを特徴とする密封容器。
【請求項2】
前記バリア層は金属からなる請求項1に記載の密封容器。
【請求項3】
前記封止部の周に直交する任意の直線上に少なくとも1つのバリア層接合部が存在する請求項1または2に記載の密封容器。
【請求項4】
前記封止部の周に直交する直線とのなす角度が45°未満である任意の直線上に少なくとも1つのバリア層接部が存在する請求項1〜3のいずれかに記載の密封容器。
【請求項5】
前記バリア層接合部の平面形状が菱形である請求項1〜4のいずれかに記載の密封容器。
【請求項6】
前記バリア層接合部の平面形状が対角線の長さの異なる菱形であり、該バリア層接合部は長い方の対角線が封止部の周方向に沿って配置されている請求項5に記載の密封容器。
【請求項7】
前記封止部の幅方向においてバリア層接合部が複数列に配置されている請求項1〜6のいずれかに記載の密封容器。
【請求項8】
前記封止部の内周側領域にバリア層接合部を有さずヒートシール部のみからなる領域を有する請求項1〜7のいずれかに記載の密封容器。
【請求項9】
前記密封容器は電池用ケースである請求項1〜8のいずれかに記載の密封容器。
【請求項10】
電池本体が請求項9に記載の電池用ケース内に装填され、前記電池本体に接続された電極用リードがケース外に引き出された状態で該ケースの周縁に封止部が形成されていることを特徴とする電池。
【請求項11】
金属からなるバリア層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層が積層されたラミネート包材を熱可塑性樹脂層が内側となるようにして重ねる工程と、
重ねたラミネート包材の周縁を押さえ板で挟んで加熱することにより熱可塑性樹脂層同士を溶着するヒートシール部形成工程と、
重ねたラミネート包材の周縁に、表面に多数の突起が連続することなく斑点状に設けられた突起付治具を押し付けながら超音波振動を付与し、前記突起の先端面で熱可塑性樹脂層を押し退けてバリア層を露出させ、露出させたバリア層同士を接合するバリア層接合部形成工程とを行い、
重ねたラミネート包材の周縁に、ヒートシール部中に多数のバリア層接合部が連続することなく斑点状に配置された封止部を形成することを特徴とする密封容器の製造方法。
【請求項12】
前記ヒートシール部形成工程を行った後、熱可塑性樹脂層が軟化状態にある間にバリア層接合部形成工程を行う請求項11に記載の密封容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の電池用ケースや各種食品のレトルトパウチ等に用いられる密封容器およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光、酸素、水分を嫌うものの包装には、これらを遮断する金属バリア層に熱可塑性樹脂層を積層したラミネート包材を用いた密封容器が使用されている。図1および図2に示すように、前記密封容器は(100)、ラミネート包材(10a)(10b)の熱可塑性樹脂層(14)を内側にして重ね、周縁部をヒートシールして製造するのが一般的である。図11に示すように、この方法で製造された密封容器(100)の周縁封止部(101)は熱可塑性樹脂層(14)同士が溶着することによって形成されている。
【0003】
前記密封容器(100)は金属バリア層(13)によって外部の光、酸素、水分から遮断されている。しかし、前記密封容器(100)の封止部(101)は外周端から内周端まで熱可塑性樹脂層(14)が通じているため、封止部(101)の外周端面から侵入した微量の光、酸素、水分は熱可塑性樹脂層(14)を通って収容部(16)にまで侵入するおそれがある。これらの侵入量が微量であっても収容部(16)に侵入すると様々な問題が発生する懸念がある。例えば、レトルトパウチ等の食品用容器において酸素が侵入すると内容物が劣化する。またリチウムイオン二次電池のように電解液を包装している場合は、水分が侵入するとフッ酸が発生し、密封性能が著しく低下するおそれがある。
【0004】
かかる問題に対し、特許文献1は重ねたラミネート包材を強く押圧してバリア層同士が周方向に沿って線状に接近または接触するようにシールする方法を提案している。このシール方法によれば、バリア層同士を接近させれば狭くなった熱可塑性樹脂層が隘路となって光等が侵入しにくくなる。またバリア層同士が接触すれば接触点で熱可塑性樹脂層が途切れるので光等の侵入を阻止することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−264313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法によってバリア性を向上させることができる。しかし、バリア層を接近させて隘路を形成しても侵入断面積が小さくなるだけであるから光等を完全に遮断することはできない。しかも、ヒートシール装置からの熱の伝わり方が外気温等によってばらつくことがあるので侵入断面積を安定させることが困難であり、ひいてはバリア性能も安定しない。また、バリア層同士を接触させるには樹脂を押し退けることなるが、線状接触では一軸方向にしか樹脂を押し退けられないので樹脂の流れ性が悪い。このため、確実に樹脂を押し退けてバリア層同士を接合するには大きい加圧力が必要となる。また、押し退け量が不足して接合界面に樹脂が残っていれば外部からの侵入路となる。線状接触部の一部に未接合部分があれば、光等はそこを通って最短距離で内部に侵入することになるのでバリア性能が不安定になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、高いバリア性能を安定して得ることができる密封容器およびその関連技術の提供を目的とする。
【0008】
即ち、本発明は下記[1]〜[12]に記載の構成を有する。
【0009】
[1]バリア層の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層が積層されたラミネート包材が熱可塑性樹脂層を内側にして重ねられ、重ねられたラミネート包材の周縁を接合して封止することによって収容部が形成される密封容器であって、
前記周縁の封止部は、熱可塑性樹脂層が溶着したヒートシール部とバリア層同士が接合された多数のバリア層接合部とを有し、前記多数のバリア層接合部はヒートシール部中に連続することなく斑点状に配置されていることを特徴とする密封容器。
【0010】
[2]前記バリア層は金属からなる前項1に記載の密封容器。
【0011】
[3]前記封止部の周に直交する任意の直線上に少なくとも1つのバリア層接合部が存在する前項1または2に記載の密封容器。
【0012】
[4]前記封止部の周に直交する直線とのなす角度が45°未満である任意の直線上に少なくとも1つのバリア層接触部が存在する前項1〜3のいずれかに記載の密封容器。
【0013】
[5]前記バリア層接合部の平面形状が菱形である前項1〜4のいずれかに記載の密封容器。
【0014】
[6]前記バリア層接合部の平面形状が対角線の長さの異なる菱形であり、該バリア層接合部は長い方の対角線が封止部の周方向に沿って配置されている前項5に記載の密封容器。
【0015】
[7]前記封止部の幅方向においてバリア層接合部が複数列に配置されている前項1〜6のいずれかに記載の密封容器。
【0016】
[8]前記封止部の内周側領域にバリア層接合部を有さずヒートシール部のみからなる領域を有する前項1〜7のいずれかに記載の密封容器。
【0017】
[9]前記密封容器は電池用ケースである前項1〜8のいずれかに記載の密封容器。
【0018】
[10]電池本体が前項9に記載の電池用ケース内に装填され、前記電池本体に接続された電極用リードがケース外に引き出された状態で該ケースの周縁に封止部が形成されていることを特徴とする電池。
【0019】
[11]金属からなるバリア層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層が積層されたラミネート包材を熱可塑性樹脂層が内側となるようにして重ねる工程と、
重ねたラミネート包材の周縁を押さえ板で挟んで加熱することにより熱可塑性樹脂層同士を溶着するヒートシール部形成工程と、
重ねたラミネート包材の周縁に、表面に多数の突起が連続することなく斑点状に設けられた突起付治具を押し付けながら超音波振動を付与し、前記突起の先端面で熱可塑性樹脂層を押し退けてバリア層を露出させ、露出させたバリア層同士を接合するバリア層接合部形成工程とを行い、
重ねたラミネート包材の周縁に、ヒートシール部中に多数のバリア層接合部が連続することなく斑点状に配置された封止部を形成することを特徴とする密封容器の製造方法。
【0020】
[12]前記ヒートシール部形成工程を行った後、熱可塑性樹脂層が軟化状態にある間にバリア層接合部形成工程を行う前項11に記載の密封容器の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
上記[1]に記載の密閉容器によれば、封止部の端面から容器内に侵入しようとする光、水、酸素等の劣化促進物はバリア層接合部で遮断されるのでバリア層接合部を迂回してヒートシール部のみを辿る。このような侵入路は隣合うバリア層接合部間に形成された隘路であり断面積が小さくなっているので劣化促進物の侵入が抑制される。さらに、迂回路となることによって侵入路の距離が長くなるので劣化促進物の侵入が抑制される。
【0022】
また、前記バリア層接合部はヒートシール部中に連続することなく斑点状に形成されているので、バリア層接合部の全周囲はヒートシール部であり熱可塑性樹脂である。従って、バリア層同士を接合するために熱可塑性樹脂を押し退けてバリア層を露出させる際には、樹脂をバリア層接合部(予定部)の周りの全方向に押し退けることができるので、樹脂が良好に流れてバリア層を露出させることが容易である。このため、少ない加圧力で確実にバリア層接合部を形成することができ、ひいては安定したバリア性能を得ることができる。
【0023】
また、樹脂同士が溶着したヒートシール部よりもバリア層接合部の結合力が強くなった場合は、封止部は外部からの応力に対して耐剥離強度が向上する。
【0024】
上記[2]に記載の密封容器によれば、ラミネート包材のバリア層が金属であるからバリア性能および強度が高い。
【0025】
上記[3]に記載の密封容器によれば、封止部を最短距離で横断する侵入路が存在しないので、確実に侵入路の距離を長くすることができる。
【0026】
上記[4]に記載の密封容器によれば、封止部の周に直交する直線に対し、直線の侵入路の傾斜角度は45°以上となる。前記傾斜角度が大きくなるほど侵入路の距離が長くなり、前記傾斜角度に相応する劣化促進物の侵入抑制効果が得られる。
【0027】
上記[5]に記載の密封容器によれば、バリア層接合部を形成するための突起付治具をワイヤーカット加工によって製作できるので、低コストで治具を製作できる。
【0028】
上記[6]に記載の密封容器によれば、封止部の周に直交する直線に対し、直線の侵入路の傾斜角度は45°超となる。前記傾斜角度が大きくなるほど侵入路の距離が長くなり、前記傾斜角度に相応する劣化促進物の侵入抑制効果が得られる。
【0029】
上記[7]に記載の密封容器によれば、侵入路の迂回回数が列数に応じて増えるので侵入路の距離をより長くすることができる。
【0030】
上記[8]に記載の密封容器によれば、封止部の内周側領域はバリア層接合部が存在せずヒートシール部のみで構成されているから、内容物は熱可塑性樹脂のみに接触する。かかる密封容器はバリア層との接触を避ける必要のある内容物の包装にも安全に使用できる。
【0031】
上記[9]に記載の密封容器によれば、電池用ケースにおいて上記の効果を得ることができる。
【0032】
上記[10]に記載の電池によれば、劣化促進物に対してバリア性能が高く、かつ安定したバリア性能が得られる。
【0033】
上記[11]に記載の密封容器の製造方法によれば、バリア層が金属であるラミネート包材を用いて安定したバリア性能を有する密封容器を製造することができる。
【0034】
上記[12]に記載の密封容器の製造方法によれば、先に行うヒートシール部形成工程によって熱可塑性樹脂層が押し潰されて薄くなっているので、後に行うバリア層接合部形成工程の超音波接合で押し退ける樹脂量が少なくて済むのでバリア層同士の接合が容易になる。しかも、樹脂が軟化状態にある間に超音波接合することによって樹脂の押し退けが容易であるからバリア層接合部の形成が容易であり、効率良く封止処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の密閉容器の一実施形態である電池用ケースの封止処理前の状態を示す斜視図である
図2図1の電池用ケースの封止用周縁部の断面図である。
図3図1の電池用ケースを用いた電池の斜視図である。
図4A】電池用ケースの封止部の平面図である。
図4B】電池用ケースの封止部の断面図である。
図5】密閉容器における封止部の他の実施形態である。
図6】密閉容器における封止部のさらに他の実施形態である。
図7】密閉容器における封止部のさらに他の実施形態である。
図8】密閉容器における封止部のさらに他の実施形態である。
図9】密閉容器における封止部のさらに他の実施形態である。
図10】本発明の密閉容器の製造方法において、封止処理工程を示す断面図である。
図11】従来の密封容器の周縁封止部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[密封容器の概要]
図1および図2にラミネート包材による電池用ケース(1)の封止処理前の状態を示し、図3に前記電池用ケース(1)に封止処理を行って製作した電池(2)を示す。封止処理を施した電池用ケース(1)は本発明の密閉容器の一実施形態である。また、以下の説明において、密封容器の外部から侵入して内容物を劣化させる光、酸素、水分等を包括して「劣化促進物」と称する。
【0037】
電池用ケース(1)は、平面視四角形の凹部(11)の開口周縁から略水平方向の外方に向けて延ばされた封止用周縁部(12)が形成された2個のケース半体(10a)(10b)を、凹部(11)の開口部が向かい合うように配置し、重なった封止用周縁部(12)を接合することによって収容部(16)を形成するものとなされている。図2に示すように、前記ケース半体(10a)(10b)は、バリア層(13)の一方の面に熱可塑性樹脂層(14)を積層し、他方の面に外側層(15)を積層したラミネート包材に絞り加工を施して凹部(11)を成形したものであり、組み付けたケース半体(10a)(10b)は封止用周縁部(12)において熱可塑性樹脂層(14)同士が接触している。
【0038】
[ラミネート包材]
前記ラミネート包材(10a)(10b)において、各層の好ましい材料は以下のとおりである。
【0039】
バリア層(13)の材料は劣化促進物を遮断できるものであれば限定されない。バリア層(13)の好ましい材料として、バリア性が高く、接合強度が高い点でアルミニウム、銅、鉄等の金属を推奨できる。さらに、バリア層材料としてこれらの金属を用いることで後述する封止処理において超音波接合を適用することができる。
【0040】
密封容器の内面となる熱可塑性樹脂層(14)の材料は熱可塑性樹脂で溶着可能なものであれば任意のものを用いることができ、特にCPP(無延伸ポリプロピレン)やポリエチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は軟化しやすいので樹脂を押し退けてバリア層(13)同士を接合させる封止処理に適している。
【0041】
外側層(15)の材料は熱可塑性樹脂層(14)よりも融点の高い樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートやポリアミドを推奨できる。
【0042】
本発明の密封容器に適用可能なラミネート包材は、容器の内側に臨む面が熱可塑性樹脂層(14)であり、この熱可塑性樹脂層層(14)よりも外側にバリア層(13)と有することが必要条件であり、この条件を満たすものであれば他の積層構造の包材にも適用できる。図示例の外側層(15)の有無も任意であるが、バリア層(13)の保護のために外側層(15)を有するラミネート包材を用いることが好ましい。また、後述する封止処理においても、外側層(15)があれば封止用治具で挟んで加圧した場合のバリア層(13)の損傷を回避することができる。また、バリア層(13)と熱可塑性樹脂層(14)または外側層(15)の間に中間層を有する積層構造であっても良い。
【0043】
前記ラミネート包材(10a)(10b)を構成する各層の厚みも限定されないが、本発明では熱可塑性樹脂層(14)の樹脂を押し退けてバリア層(13)同士を接合させる封止処理を行うので、接合強度を確保できる限り熱可塑性樹脂層(14)は薄い方が好ましい。かかる観点より、熱可塑性樹脂層(14)の厚みは10〜100μmが好ましく、特に20〜40μmが好ましい。また、前記バリア層(13)の厚みは熱可塑性樹脂層(14)の厚みの1/3以上であることが好ましい。封止処理ではラミネート包材(10a)(10b)を治具で挟み込んで樹脂を押し退けるので、この工程でバリア層(13)を断裂させないためにも上記範囲の厚みであることが好ましい。特に好ましい外側層(15)の厚みは10〜80μmである。
【0044】
[密封容器を用いた電池]
図3に示すように、前記電池用ケース(1)を用いた電池(2)の製造においては、一方のケース半体(10b)の凹部(11)に電池本体を収納し、電池本体の正極および負極のそれぞれに接続にされた正極用リード(20)および負極用リード(21)を外部に引き出した状態で他方のケース半体(10a)を被せて封止用周縁部(12)を重ねて封止処理を行う。前記正極用リード(20)および負極用リード(21)はそれぞれタブフィルム(22)(23)で挟んだ状態で封止用周縁部(12)(12)の間に配置されている。従って、封止用周縁部(12)(12)の封止処理を行うと、リード(20)(21)が引き出されていない部分に形成される第1封止部(31)は上下の封止用周縁部(12)(12)が直接接合され、リード(20)(21)を引き出した部分に形成される第2封止部(32)はリード(20)(21)およびタブフィルム(22)(23)を介して上下の封止用周縁部(12)(12)が接合される。前記電池用ケース(1)は、2つの第1封止部(31)および2つの第2封止部(32)からなる周縁封止部(30)が全周に形成されてリード(20)(21)がケース外に引き出された状態で密封されている。
【0045】
[密封容器の封止部]
前記周縁封止部(30)において、リード(20)(21)が引き出されていない部分に形成される第1封止部(31)は本発明における封止部に対応するものであり、ヒートシール部とバリア層接合部とにより構成されている。
【0046】
図4Aおよび図4Bに示すように、第1封止部(31)は、熱可塑性樹脂層(14)(14)の溶着によって形成されるヒートシール部(33)と熱可塑性樹脂層(14)の樹脂が押し退けられてバリア層(13)(13)同士が接合された多数のバリア層接合部(34)とにより形成されている。前記ヒートシール部(33)が第1封止部(31)の幅方向の全域にわたって形成されているのに対し、バリア層接合部(34)は幅方向における中間領域(35)にのみ形成されており、内周側領域(36)および外周側領域(37)はバリア層接合部(34)が存在せずヒートシール部(33)のみが存在している。
【0047】
前記ヒートシール部(33)が第1封止部(31)の全域で途切れることなく連続しているのに対し、多数のバリア層接合部(34)は互いに非連続でありヒートシール部(33)中に斑点状に存在している。また、各々のバリア層接合部(34)の形状は2本の対角線の長さの等しい菱形(正方形)であり、2本の対角線が第1封止部(31)の周方向および幅方向に沿って配置されている。また、これらのバリア層接合部(34)は封止部(30)の幅方向において複数列に配置され、かつ周方向および幅方向の両方向に対してジグザグに斜行して千鳥状に配置されている。このようなバリア層接合部(34)の配置は菱形の最密配置であり、中間領域(35)におけるヒートシール部(33)はバリア層接合部(34)の最密配置によって斜格子形状となっている。
【0048】
容器外部からもたらされる劣化促進物はバリア層(13)によって完全に遮断されるが、熱可塑性樹脂層(14)には微量が入り込む可能性がある。従って、図4Aに示す第1封止部(31)の平面視において、外周端面から入り込んだ劣化促進物はヒートシール部(33)のみを辿って容器内に到達し、ヒートシール部(33)が侵入路となる。前記ヒートシール部(33)はバリア層接合部(34)に挟まれて隘路となり、侵入路の断面積が小さくなることで劣化促進物の侵入が抑制される。また、前記ヒートシール部(33)は第1封止部(31)の外周端から内側に至るまで繋がっているものの中間領域(35)では斜め格子形状であるから、劣化促進物の侵入路(38)(39)はバリア層接合部(34)を避けて迂回しながらのジグザグ状の道筋(38)となるか、あるいは斜行直線(39)となる。ジグザグ状の侵入路(38)や斜行直線の侵入路(39)は、第1封止部(31)の周に直交する直線で表される最短距離の道筋(S)よりも距離が長くなり、侵入路の距離を長くすることで劣化促進物の侵入が抑制される。以上より、本実施形態の第1封止部(31)は劣化促進物の侵入路の断面積を小さくし、かつ侵入路を長くすることで相乗的に侵入が抑制されてバリア性が高められている。
【0049】
また、バリア層接合部(34)は樹脂同士が溶着したヒートシール部(33)よりも結合力が強い。このためヒートシール部(33)中にバリア層接合部(34)を形成したことで外部からの応力に対して耐剥離強度が向上する。
【0050】
本発明の封止部(31)はヒートシール部(33)中に多数のバリア層接合部(34)が斑点状に存在しているので、ヒートシール部(33)の幅が実質的に封止部(31)の幅(W1)となる(図4A参照)。本発明は封止部(31)の幅(W1)を制限するものではないが、容器の内圧に対して接合強度を確保するためには幅(W1)が1mm以上の封止部(31)を形成することが好ましい。また幅(W1)が10mmあれば十分な接合強度が得られる。従って、好ましい封止部(31)の幅(W1)は1〜20mmである。また、前記封止部(31)の幅(W1)の好適値は熱可塑性樹脂層(14)の厚みや樹脂のMFR値にも影響を受けるので、これらに応じて1〜20mmの範囲内で適宜設定することが好ましい。特に好ましい封止部(31)の幅(W1)は3〜10mmである。
【0051】
また、封止部(31)の内周側端部は内容物が接触するので熱可塑性樹脂層(14)の材料のみで形成されていることが好ましい。内容物によってはバリア層(13)の材料(例えば金属)との接触を避けなければならない、あるいは避けることが好ましいものがある。例えば電池の場合は電解液が金属製のバリア層(13)に接触することは避けなければならない。このため、封止部(31)の内周側領域(36)にはバリア層接合部(34)を設けず、ヒートシール部(33)のみが存在する領域を形成することが好ましく、バリア層との接触を避ける必要のある内容物の包装にも安全に使用できる。前記内周側領域(36)の幅(W2)は3〜15mmが好ましく、特に5〜10mmが好ましい。一方、封止部(31)の外周側領域(37)におけるバリア層接合部(34)の有無は問わない。
【0052】
上記実施形態に基づいて説明したように、封止部(31)において、劣化促進物の侵入路の断面積を小さくし、あるいはさらに侵入路を迂回させて距離を長くすることによって劣化促進物の侵入を抑制できる。
【0053】
前記侵入路の断面積の縮小は侵入路の幅を縮小すれば良く、侵入路の幅の縮小はヒートシール部(33)中に多数のバリア層接合部(34)を非連続に形成すればバリア層接合部(34)の形状や形成位置に関係なく実現できる。侵入路の幅はバリア層接合部(34)間の間隔(D)であるから、間隔(D)を狭くすることによって劣化促進物の侵入を抑制することができる(図4A参照)。一方、バリア層接合部(34)間の間隔(D)を小さくするほど樹脂を押し退けるために大きな圧力が必要になる等加工条件が厳しくなり、また樹脂が押し退けられなかった場合はバリア層(13)同士を接触させることができずバリア層接合部(34)が形成されない。かかる観点より、バリア層接合部間(34)の間隔(D)は0.2〜3mmの範囲に設定することが好ましく、特に0.5〜1.5mmが好ましい。
【0054】
また、個々のバリア層接合部(34)の大きさは、その外接円の直径で0.2〜5mmが好ましく、特に0.5〜1.5mmが好ましい。
【0055】
また、侵入路の距離の拡大は、バリア層接合部(34)の形状または形成位置、あるいはこれらの組み合わせによって実現できる。図4Aに示すように、最短の侵入路は封止部(31)の周に直交する直線(S)上にあり、この第1封止部(31)を最短距離で横断する場合の距離は封止部(31)の幅(W1)の寸法であるから、前記直線(S)上に少なくとも1つのバリア層接合部(34)が存在すればこのバリア層接合部(34)を迂回することによって侵入路の距離を長くすることができる。従って、封止部(31)の周に直交する任意の直線(S)上に少なくとも1つのバリア接合部(34)が存在するようにバリア層接合部(34)を配置すれば上述した最短距離の侵入路は存在しなくなり、侵入路は封止部(31)の幅(W1)よりも長くなる。また図4Aに示したように、封止部(31)の幅方向においてバリア層接合部(34)を複数列に形成すれば迂回回数が増えるので、侵入路の距離をより長くすることができる。ただし、限られた幅(W1)内において列数が増えるとバリア層接合部(34)間の間隔(D)も狭くなり、押し退けた樹脂の流れが滞り易くなるので、列数は20列以下が好ましい。
【0056】
図5の封止部(40)はヒートシール部(41)中に図4Aと同形のバリア層接合部(34)を千鳥状ではなく整列配置させたものである。このような整列配置の場合は周方向に隣合うバリア層接合部(34)の間を通る直線(42)が最短距離の侵入路であり、この直線は封止部(40)の周に直交する直線で表される最短距離の道筋(S)であるから、侵入路の距離を長くすることはできない。なお、前記封止部(40)は多数のバリア層接合部(34)が非連続に形成され、侵入路の断面積を縮小することで劣化促進物の侵入を抑制する効果を有しているので本発明に含まれる。
【0057】
[バリア層接合部の他の形状例および配置例]
図6図9に示した封止部(45)(50)(55)(60)は本発明の封止部の他の実施形態である。
(1)図6
封止部(45)は、ヒートシール部(46)中に、封止部(45)の幅方向において平行四辺形の多数のバリア層接合部(47)を1列に配置した例である。1列配置であっても平行四辺形の内角と隣合うバリア層接合部(47)との間隔の設定値によって、封止部(45)の周に直交する任意の直線(S)上に少なくとも1つのバリア接合部(47)を存在させることができる。図中(48)は最短の侵入路である。
(2)図7
封止部(50)は、ヒートシール部(51)中に、三角形のバリア層接合部(52)を封止部(50)の幅方向において複数列に配置し、かつ三角形の頂点の向きを1列毎に交互に逆転させて配置した例である。この封止部(50)は周に直交する任意の直線(S)上に少なくとも1つのバリア接合部(52)が存在するだけではなく、直線の侵入路が存在せず、侵入路(53)は全てジグザグ状となる。
(3)図8
封止部(55)は、ヒートシール部(56)中に、円形のバリア層接合部(57)を封止部(55)の幅方向において複数列に配置し、かつ周方向および幅方向の両方向に対してジグザグに斜行させて千鳥状に配置したものである。この封止部(55)は周に直交する任意の直線(S)上に少なくとも1つのバリア接合部(57)が存在するだけではなく、直線の侵入路が存在せず、侵入路(58)は全てバリア層接合部(57)を迂回して曲がりくねったつづら折状となる。
(4)図9
封止部(60)は、ヒートシール部(61)中に、菱形のバリア層接合部(62)を封止部(60)の幅方向において複数列に配置し、かつ周方向および幅方向の両方向に対してジグザグに斜行させて千鳥状に配置したものである。前記バリア層接合部(62)は2本の対角線の長さが異なる菱形であり、長い方の対角線(63)が周方向に沿うように配置されている。即ち、前記バリア層接合部(62)は周方向に長い菱形である。
【0058】
菱形が最密配置された封止部(60)における直線の侵入路(64)の傾斜角度(α)、即ちその封止部(60)の周に直交する直線で表される最短距離の道筋(S)と直線の侵入路(64)とがなす角度は、その菱形の内角の1/2角である。前記内角は、2対の内角のうちの、封止部(60)の周に直交する直線(S)上にある1対の内角である。従って、前記内角(2α)が大きくなるほど侵入路(64)の傾斜角度(α)が大きくなって距離が長くなり劣化促進物の侵入抑制効果が大きくなる。前記内角(2α)は2本の対角線の長さによって決まり、菱形の2本の対角線のうちの長い方の対角線(63)が周方向に沿い、かつ対角線の長さの差が大きくなるほど侵入路(64)の距離が長くなり、距離相応の侵入抑制効果が得られる。
【0059】
図9に示した菱形の内角(2α)は鈍角であるから、侵入路(64)の傾斜角度(α)は45°超である。従って、菱形が最密配置された封止部において、長い方の対角線が周方向に沿うように菱形を配置すれば、直線の侵入路(64)の傾斜角度(α)は45°超となる。一方、図4Aの封止部(31)のバリア層接合部(34)は2本の対角線の長さが等しい菱形(正方形)であるから、侵入路の傾斜角度(α)は45°である。換言すると、前記封止部(31)の周に直交する直線とのなす角度が45°未満の任意の直線上には少なくとも1つのバリア層接触部(34)が存在し、傾斜角度(α)が45°未満の直線の侵入路は存在しない。
【0060】
以上より、菱形のバリア層接合部を最密配置する場合は、2本の対角線の長さに差をつけ、長い方の対角線を周方向に沿う方向に配置することが好ましく、対角線の長さの差が大きいほど劣化促進物の侵入抑制効果が大きい。また、菱形の好ましい大きさは、長い対角線寸法が0.05〜20mm、短い対角線寸法が0.02〜10mmであり、特に好ましい大きさは長い対角線寸法が0.5〜3mm、短い対角線寸法が0.2〜1.2mmである。
【0061】
また、直線の侵入路の距離が封止部の周に直交する直線に対する侵入路の傾斜角度が大きくなるほど長くなるのは、上述したバリア層接合部が菱形である場合に限らず、どのような形状においても共通である。従って、封止部の周に直交する直線とのなす角度が45°未満である任意の直線上に少なくとも1つのバリア層接触部が存在すれば、傾斜角度が45°未満の直線の侵入路は存在せず、直線の侵入路の傾斜角度は45°以上となり、前記角度に相応する劣化促進物の侵入抑制効果が得られる。
【0062】
[密封容器の用途]
本発明の密封容器は、電池、食品等の光、酸素、水分をきらうものの包装する容器として広く用いることができる。また、密封容器の形状、シート状のラミネート包材の成形の有無(凹部成形の有無)、密封容器の寸法も問わない。但し、容器の周縁に封止処理を施す必要上、平面寸法が10mm×20mm以上、厚さが3mm以上の容器に適用することが好ましい。また、平面寸法が300mm×300mm以下、厚さが50mm以下の容器に適用することが好ましい。
【0063】
また、本発明の密封容器は周縁の少なくとも一部に多数のバリア層接合部が連続することなく形成された封止部(以下、「本発明の封止部」と略する)が形成されていることが条件であり、周の一部に本発明の封止部が形成されていない容器も本発明に含まれる。例えば、図3に参照されるように、電池用ケースに適用する場合は電極用リードが容器外に引き出されるので、電極用リードの引き出し部には本発明の封止部は形成されておらず、引き出し部を除く周縁に形成されている。また、容器の内容物に拘わらず、容器の周縁に内容物充填用開口部を残して封止処理を行い充填後に開口部を閉じることがあるが、充填用に開口部を残した容器も本発明に含まれる。
【0064】
[密封容器の製造方法]
以下に、ラミネート包材のバリア層が金属である場合の密封容器の製造方法について、図4Aおよび図4Bの封止部(31)の封止処理を例に挙げ、図10を参照しつつ詳述する。
【0065】
ヒートシール部(33)は熱可塑性樹脂層(14)同士の接合であるから、重ねた封止用周縁部(12)をヒートシール用の押さえ板(70)(71)で挟んで加熱することにより形成することができる(ヒートシール部形成工程)。バリア層接合部(34)は、バリア層接合部(34)の形状および配置に対応して多数の突起(72)を形成した突起付治具(73)を押し付けて加圧しながら超音波振動を与え、突起(72)の先端面で樹脂を押し退けて接合界面にバリア層(13)を露出させ、露出させたバリア層(13)同士を接合させることによって形成する(バリア層接合部形成工程)。突起(72)の押し付けおよび超音波振動によって押し退けられた樹脂は突起(72)の全周囲に存在する凹部(74)に流れるのでバリア層(13)を露出させやすい。従って、少ない加圧力で確実にバリア層接合部(34)を形成することができ、ひいては安定したバリア性能を得ることができる。
【0066】
上記の封止方法を密封容器側から説明すると、前記バリア層接合部(34)はヒートシール部(33)中に連続することなく斑点状に形成されているので、バリア層接合部(34)の全周囲はヒートシール部(33)であり熱可塑性樹脂である。従って、バリア層(13)同士を接合するために熱可塑性樹脂を押し退けてバリア層(13)を露出させる際には、樹脂をバリア層接合部(34)(予定部)の周りの全方向に押し退けることができるので、樹脂が良好に流れてバリア層を露出させることが容易である。
【0067】
前記ヒートシール部形成工程およびバリア層接合部形成工程を行うことによって、ラミネート包材の周縁に本発明の封止部(31)を形成することができる。これらの工程は同時に行っても良いし、順次行っても良い。
【0068】
2つの工程を同時に1工程で行う場合は、図10に示したように、押さえ板(71)に突起付治具(73)を取り付け、封止用周縁部(12)を挟んで加熱加圧しながら突起付治具(73)に超音波振動を与える。
【0069】
2つの工程を順次行う場合は、先に押さえ板(70)(71)のみを用いてヒートシール部(33)を形成し(ヒートシール部形成工程)、その後突起付治具(73)を用いてバリア層接合部(34)を形成する(バリア層接合部形成工程)。2工程に分けて封止処理を行えば、先に行うヒートシール部形成工程によって熱可塑性樹脂層(14)押し潰されて薄くなっているので、後に行うバリア層接合部形成工程の超音波接合で押し退ける樹脂量が少なくて済むのでバリア層(13)同士の接合が容易になる。また、バリア層接合部形成工程は、ヒートシール部形成工程を行った後、樹脂温度が低下しないうちに連続して行うことが好ましい。樹脂温度が高く樹脂が軟化状態にある間に超音波接合すれば、樹脂の押し退けが容易であるからバリア層接合部(34)の形成が容易である。超音波振動によっても樹脂は軟化するが、ヒートシール時の熱を利用することによって効率良くバリア層接合部(34)を形成し、ひいては効率良く封止処理を行うことができる。
【0070】
前記ヒートシールおよび超音波接合の条件の限定は無く、ラミネート包材の熱可塑性樹脂層およびバリア層の材料および厚み、密封容器の用途等に応じて適宜設定する。
【0071】
例えばヒートシールの温度は、熱可塑性樹脂層(14)がLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の場合は140℃以上、CPP(無延伸ポリプロピレン)の場合は160℃以上が好ましい。また、樹脂からなる外側層(15)を有するラミネート包材の場合は樹脂の融点よりも低い温度であることが条件となる。前記外側層を構成する樹脂がPETの場合は250℃以下、ナイロンの場合は230℃以下が好ましい。また、ヒートシール時の加圧力は0.2〜1.0MPaが好ましく、加熱時間は2〜5秒が好ましい。
【0072】
また、超音波接合の条件としては、周波数:15〜40kHz、加圧力:5〜20MPa、エネルギー:0.5〜100J、超音波照射時間:0.1〜2秒が好ましい。
【0073】
超音波接合用の突起付治具(73)において、突起(72)の先端面形状および配置は封止部(31)におけるバリア層接合部(34)の形状および配置に対応する。前記突起付治具の製造方法は限定されず、形状に応じて任意の方法で製作したものを用いることができる。例えば、図4A図9の菱形のバリア層接合部(34)(62)を最密配置するための突起付治具や図6の平行四辺形のバリア層接合部(47)を整列配置させるための突起付治具は、隣合うバリア層接合部(34)(62)(47)の間のヒートシール部(33)(61)(46)に対応する部分をワイヤーカット加工で切除することによって製造することができる。ワイヤーカット加工で製作可能な治具はカットライン上にバリア層接合部が存在しない形状に限定されるが、所要形状への加工が容易であるから低コストで製作できるというメリットがある。
【0074】
また、図4A図9図6に参照されるように、ワイヤーカット加工で製作可能な突起付治具による封止部(31)(60)(45)は直線の侵入路(39)(64)(48)を有するものとなるが、侵入路(39)(64)(48)の距離が長くなるようにこれらの傾斜角度(α)を大きくすることによって劣化促進物の侵入抑制効果を大きくすることができる。例えば菱形バリア層接合部に最密配置においては、2本の対角線のうちの長い方の対角線を周方向に沿わせ、かつ対角線の長さの差を大きくするほど傾斜角度(α)が大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、リチウムイオン二次電池用ケースや食品のレトルトパウチ等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1…電池用ケース(密封容器)
2…電池
10a、10b…ケース半体(ラミネート包材)
11…凹部
12…封止用周縁部
13…バリア層
14…熱可塑性樹脂層
15…外側層
16…収容部
20…正極用リード
21…負極用リード
30…周縁封止部
31…第1封止部(封止部)
33、41、46、51、56、61…ヒートシール部
34、47、52、57、62…バリア層接合部
36…内周側領域
40、45、50、55、60…封止部
63…長い方の対角線
70、71…ヒートシール用押さえ板
72…突起
73…突起付治具
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11