特許第5985935号(P5985935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985935管接続具、当該管接続具の固定構造及び止水部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985935
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】管接続具、当該管接続具の固定構造及び止水部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20160823BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20160823BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F16L5/02 J
   F16L5/02 L
   F16L5/00 A
   H02G9/06
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-196210(P2012-196210)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-52022(P2014-52022A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 祐介
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−107673(JP,A)
【文献】 特許第4961174(JP,B2)
【文献】 特開平11−266519(JP,A)
【文献】 特開平09−092060(JP,A)
【文献】 米国特許第06126173(US,A)
【文献】 実開昭61−001791(JP,U)
【文献】 特開2005−324587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00 − 5/14
F16J 15/10
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に穿設された貫通孔に配置されると共に管材を接続する受け口を備えた管接続具であって、
前記貫通孔を貫通する筒状部、及び、この筒状部の一端側に設けられたフランジ部を有する管接続具本体と、
前記筒状部の他端側から取着され、前記フランジ部と協働して前記壁を挟圧するための挟圧部材と、
前記フランジ部と前記壁との間に配置され、前記貫通孔周縁の壁面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形して前記壁面に密接すべく環状凹部を備えた止水部材と、を備えることを特徴とする管接続具。
【請求項2】
前記止水部材は、前記フランジ部に密着状態で当接すると共に前記筒状部の外周に密接して取着される基部と、この基部に連設され、前記壁面に密接する環状の当接片と、を備え、前記基部と前記当接片とで前記環状凹部を形成し、前記当接片が前記基部から裾広がり状に延出していることを特徴とする請求項1に記載の管接続具。
【請求項3】
前記筒状部の外周面には螺子部が形成され、前記挟圧部材が前記螺子部に螺合して取着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の管接続具。
【請求項4】
前記挟圧部材には、前記壁面に当接し、前記貫通孔周縁を止水する止水パッキンを備えてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の管接続具。
【請求項5】
前記筒状部の他端側に前記受け口が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の管接続具。
【請求項6】
前記受け口を備えた接続体を備え、前記接続体は、筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の管接続具。
【請求項7】
内面が所定の勾配で傾斜している側壁、及び、前記側壁に穿設された貫通孔を備えた地中埋設箱への管接続具の固定構造であって、
前記管接続具は、
管材を接続するための受け口と、
前記貫通孔を貫通する筒状部、及び、この筒状部の一端側に設けられたフランジ部を有する管接続具本体と、
前記筒状部の他端側から取着され、前記フランジ部と協働して前記側壁を挟圧するための挟圧部材と、
前記フランジ部と前記側壁内面との間に配置され、前記貫通孔周縁の側壁内面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形して側壁内面に密接すべく環状凹部を備えた止水部材と、を備えており、
前記筒状部の他端が側壁外面に突出するように前記筒状部が前記貫通孔を貫通し、前記側壁外面側から前記挟圧部材前記筒状部に取着されていることにより、前記挟圧部材と前記フランジとで前記側壁を挟圧し、
前記止水部材が前記側壁内面の傾斜勾配に応じた変形量で圧縮されて前記貫通孔周縁全周に密接した状態で、前記管接続具が前記側壁に固定されてなることを特徴とする管接続具の固定構造。
【請求項8】
前記止水部材は、前記フランジ部に密着状態で当接すると共に前記筒状部の外周に密接して取着される基部と、この基部に連設され、前記側壁内面に密接した環状の当接片と、を備え、前記基部と前記当接片とで前記環状凹部を形成し、前記当接片が前記基部から裾広がり状に延出していることを特徴とする請求項7に記載の管接続具の固定構造。
【請求項9】
前記筒状部の外周面には螺子部が形成され、前記挟圧部材が前記螺子部に螺合して取着されることを特徴とする請求項7又は8に記載の管接続具の固定構造。
【請求項10】
前記挟圧部材には、前記側壁外面に当接し、前記貫通孔周縁を止水する止水パッキンを備えてなることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の管接続具の固定構造。
【請求項11】
前記筒状部の他端側に前記受け口が設けられていることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の管接続具の固定構造。
【請求項12】
前記受け口を備えた接続体を備え、前記接続体は前記筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の管接続具の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に穿設された貫通孔に配置されると共に、壁内外を連通させるように管を接続するための受け口を備えた管接続具、側壁内面に傾斜勾配を有する地中埋設箱への当該管接続具の固定構造、及び、止水状態で壁面に密接可能な止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中埋設ケーブルを中継接続し、或いは、当該地中埋設ケーブルの配線方向を変換させるために地中埋設箱(又はハンドホール)が使用されている。一般に、地中埋設箱は、底壁、側壁、上面開口及び上面開口を閉塞する蓋体から構成されているコンクリート製のコンクリート桝である。地中埋設箱のようなコンクリート桝では、内周型枠を脱型するために側壁内面に抜き勾配が存在しているため、側壁の肉厚が底壁側に向かって増すように側壁内面が傾斜して形成されている。そして、地中埋設箱を中継して地中埋設ケーブルを接続するために地中埋設箱の側壁に貫通孔が形成され、且つ、当該貫通孔には地中埋設ケーブルを保護するためのカバー用の管材が接続される。当該管材は地中埋設箱に対して止水状態で固定されなければならない。
【0003】
特許文献1の螺旋管体取付け用コネクタは、ハンドホールの側壁の貫通孔に管材を連結するのに用いられる。当該コネクタは、貫通孔を貫通する筒状部(11)及び当該筒状部(11)の外周(12)に管材の内周面と係合する係合突起(13)を有するベルマウス(1)と、管材の外周螺旋に嵌合する螺旋状突起(23)を有するホルダー(2)と、該ホルダー(2)の外側に配置された水密用のパッキング部材(3)とを備える。そして、ハンドホールの側壁外面の貫通孔周縁にパッキング部材(3)が密着することにより、ハンドホール内への止水効果を発揮している。しかしながら、特許文献1の発明では、ハンドホールの側壁外面に位置するパッキング部材(3)は、雨水や泥水などに直接曝されるため、経時劣化し易い。そして、側壁外面のパッキング部材(3)が一端劣化してしまうと、止水効果が薄まり、雨水や泥水がハンドホール内に侵入することを防止できないという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献2の管体接続部構造は、貫通孔周縁で側壁内面に当接する鍔部(63)が形成されたベルマウス(61)と、貫通孔周縁で側壁外面に当接する鍔部(55)が形成された締め付け部材(51)と、を備え、鍔部(52)と側壁(11)外面との間に止水材(55)が設けられ、且つ、鍔部(63)と側壁(11)内面との間に止水材(65)が設けられている。当該止水材(65)は、水分を吸収して膨張する不織布(64)からなり、当該不織布(64)が侵入してくる水を吸って膨張変形することによってハンドホール側壁内面と鍔部(63)との間を止水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−266519号公報
【特許文献2】特許第4961174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の管接続具の固定構造では、その傾斜勾配が異なる壁等への設置について配慮されておらず、そのために止水効果を十分に発揮できなかったり、なお且つ、壁面への固定が不安定となったりする問題があった。
【0007】
特に、引用文献2の管体接続部構造では、側壁内外面の傾斜勾配が平行の場合には適用可能であるが、平行でない場合には勾配に応じて鍔部(63)と側壁面との距離が、例えば、その上部、下部等で異なり、尚且つ、不織布の厚みが一様であるため、距離が遠い(離隔した)部分で鍔部と側壁面との間に必然的に隙間が生じ得る。すなわち、不織布が乾燥した状態では隙間の存在により、水の侵入を完全に防ぐことができない。また、当該隙間に塵や埃が入り込み、或いは、泥水が隙間に侵入することにより、砂利又は泥が不織布の壁側当接面に付着する虞があり、これら砂利等が(不織布の膨張による)隙間の閉塞を妨害し、安定的に止水効果を発揮することができない。そもそも、鍔部と側壁内面との間には、圧縮された後の復元性に乏しい不織布による隙間が存在しているため、結果として鍔部間の挟圧力が弱まり、側壁外面側の止水効果をも低下させる。また、不織布が吸水して膨らんだとしても、不織布は柔軟な素材であるため、管体接続部(ベルマウス)自体が側壁に対してぐらつき、管体接続部構造全体としての固定状態が不安定となり、止水効果が低下することが問題であった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、傾斜勾配を有する壁面とフランジ部とを止水した状態で壁に強固に固定することが可能な、そして、止水効果を十分に発揮できる管接続具、止水部材及び当該管接続具の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の管接続具は、壁に穿設された貫通孔に配置されると共に管材を接続する受け口を備えた管接続具であって、貫通孔を貫通する筒状部、及び、この筒状部の一端側に設けられたフランジ部を有する管接続具本体と、筒状部の他端側から取着され、フランジ部と協働して壁を挟圧するための挟圧部材と、フランジ部と壁との間に配置され、貫通孔周縁の壁面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形して壁面に密接すべく環状凹部を備えた止水部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の管接続具は、請求項1の管接続具において、止水部材は、前記フランジ部に密着状態で当接すると共に筒状部の外周に密接して取着される基部と、この基部に連設され、壁面に密接する環状の当接片と、を備え、基部と当接片とで環状凹部を形成し、当接片が基部から裾広がり状に延出していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の管接続具は、請求項1又は2の管接続具において、筒状部の外周面には螺子部が形成され、挟圧部材が螺子部に螺合して取着されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の管接続具は、請求項1から3のいずれかの管接続具において、挟圧部材には、壁面に当接し、貫通孔周縁を止水する止水パッキンを備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の管接続具は、請求項1から4のいずれかの管接続具において、筒状部の他端側に受け口が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の管接続具は、請求項1から5のいずれかの配管装置において、受け口を備えた接続体を備え、接続体は、筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることを特徴とする
【0015】
請求項7に記載の管接続具の固定構造は、内面が所定の勾配で傾斜している側壁、及び、側壁に穿設された貫通孔を備えた地中埋設箱への管接続具の固定構造であって、管接続具は、管材を接続するための受け口と、貫通孔を貫通する筒状部、及び、この筒状部の一端側に設けられたフランジ部を有する管接続具本体と、筒状部の他端側から取着され、フランジ部と協働して側壁を挟圧するための挟圧部材と、フランジ部と側壁内面との間に配置され、貫通孔周縁の側壁内面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形して側壁内面に密接すべく環状凹部を備えた止水部材と、を備えており、筒状部の他端が側壁外面に突出するように筒状部が貫通孔を貫通し、側壁外面側から挟圧部材筒状部に取着されていることにより、挟圧部材とフランジ部材とで側壁を挟圧し、止水部材が側壁内面の傾斜勾配に応じた変形量で圧縮されて貫通孔周縁全周に密接した状態で、管接続具が側壁に固定されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の管接続具の固定構造は、請求項7の管接続具の固定構造において、止水部材は、フランジ部に密着状態で当接すると共に筒状部の外周に密接して取着される基部と、この基部に連設され、側壁内面に密接した環状の当接片と、を備え、基部と当接片とで環状凹部を形成し、当接片が基部から裾広がり状に延出している。
【0017】
請求項9に記載の管接続具の固定構造は、請求項7又は8の管接続具の固定構造において、筒状部の外周面には螺子部が形成され、挟圧部材が螺子部に螺合して取着されることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の管接続具の固定構造は、請求項7から9のいずれかの管接続具の固定構造において、挟圧部材には、側壁外面に当接し、貫通孔周縁を止水する止水パッキンを備えてなることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の管接続具の固定構造は、請求項7から10のいずれかの管接続具の固定構造において、筒状部の他端側に受け口が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の管接続具の固定構造は、請求項7から11のいずれかの管接続具の固定構造において、受け口を備えた接続体を備え、接続体は筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、止水部材に環状凹部が形成されていることにより、フランジ部と挟圧部材とで壁を挟圧した際に、止水部材が貫通孔周縁の壁面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形してフランジ部と壁との間をより確実に密封することができる。すなわち、環状凹部によって環状の凸部が相対的に形成される。当該環状凹部によって止水部材(環状凸部)が変形するための空間が創出されるので、止水部材の一部(例えば、環状凹部の外周側部分)が環状凹部の半径方向内外へと変形可能となる。そして、止水部材を圧縮変形させた際、止水部材の一部が、各当接箇所の圧接の度合いに応じて、それぞれ所定の変形量で半径方向に撓み変形可能である。すなわち、壁面の内外面で傾斜勾配が異なるとき、フランジ部と壁面との間の距離が前記勾配に応じて変化するが、当該距離に反比例した変形量で止水部材の各当接箇所が圧縮変形するため、止水部材が貫通孔周縁全周に効果的に密接する。より具体的には、止水部材の各当接位置において、フランジ部と壁面との距離が大きいほど圧縮変形量が小さくなり、フランジ部と壁面との距離が小さいほど圧縮変形量が大きくなるため、フランジ部と壁面とが離れても、止水部材の当接面が傾斜壁面に確実に密着する。さらに、止水部材がフランジ部と壁面との間に圧縮変形した状態で存在するので、フランジ部と壁面間のぐらつきを防ぎ、当該管接続具を壁に強固に固定することができる。したがって、本発明の管接続具は、傾斜勾配を有する壁面とフランジ部とをより確実に止水することが可能であり、尚且つ、壁に強固に固定可能である。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、壁面に密接するための環状の当接片が基部から裾広がり状に延出していることにより、止水部材を圧縮変形させたとき、当接片が環状凹部の外方に変形する。すなわち、当接片が貫通孔の半径外側方向に広がるため、貫通孔の周縁全周を効率的に覆い、より確実に止水部材の当接片と壁面とを密接させることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、筒状部の外周面には螺子部が形成され、挟圧部材が螺子部に螺合するように構成されていることにより、簡単に挟圧部材を筒状部に取着可能であり、且つ、挟圧部材を回転させるだけで、挟圧部材とフランジ部とで壁を効果的に挟持することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれかの発明の効果に加えて、挟圧部材には、壁面に当接し、貫通孔周縁を止水する止水パッキンが設けられていることにより、挟圧部材と壁面の貫通孔周縁との間を密封し、さらなる止水効果を発揮することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれかの発明の効果に加えて、筒状部の他端側に受け口が設けられていることにより、壁の他方側の空間に管材を配管することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれかの発明の効果に加えて、受け口を有する接続体が筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることにより、管接続具本体から管材を容易に取り付け及び取り外し可能となり、管接続具の施工性を改善する。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、止水部材に環状凹部が形成されていることにより、フランジ部と挟圧部材とで地中埋設箱の側壁を挟圧した際に、止水部材が貫通孔周縁の側壁内面の傾斜勾配に合わせて圧縮変形してフランジ部と側壁との間をより確実に密封することができる。すなわち、環状凹部によって環状の凸部が相対的に形成される。当該環状凹部によって、止水部材(環状凸部)が変形するための空間を創出し、止水部材の一部(例えば、環状凹部の外周側部分)が環状凹部の半径方向内外へと変形可能となる。そして、本固定構造の止水部材を圧縮変形させた状態では、止水部材の一部が、各当接箇所の圧接の度合いに応じて、それぞれ所定の変形量で半径方向に撓み変形している。すなわち、側壁内面に傾斜勾配により、フランジ部と側壁内面との間の距離が止水部材の当接位置に応じて変化するが、当該距離に反比例した変形量で止水部材の各当接箇所が圧縮変形するため、止水部材が貫通孔周縁全周に効果的に密接している。より具体的には、止水部材の各当接位置において、フランジ部と側壁内面との距離が大きいほど圧縮変形量が小さくなり、フランジ部と壁面との距離が小さいほど圧縮変形量が大きくなるため、フランジ部と側壁内面とが離れても、止水部材の当接面が傾斜する側壁内面に確実に密着した状態を維持している。さらに、止水部材がフランジ部と側壁内面との間に圧縮変形した状態で配置されているので、フランジ部と側壁内面間のぐらつきを防ぎ、当該管接続具が側壁に強固に固定されている。したがって、本発明の管接続具の固定構造は、地中埋設箱の傾斜勾配を有する側壁内面を止水部材でより確実に止水することができ、尚且つ、側壁に管接続具を強固に固定するものである。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7の発明の効果に加えて、側壁内面に密接するための環状の当接片が基部から裾広がり状に延出していることにより、止水部材を圧縮変形させたとき、当接片が環状凹部の外方に変形する。すなわち、当接片が貫通孔の半径外側方向に広がるため、貫通孔の周縁全周を効率的に覆い、より確実に止水部材の当接片と側壁内面とを密接させることができる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、請求項7又は8の発明の効果に加えて、筒状部の外周面には螺子部が形成され、挟圧部材が螺子部に螺合するように構成されていることにより、簡単に挟圧部材を筒状部に取着可能であり、且つ、挟圧部材を回転させるだけで、挟圧部材とフランジ部とで側壁を効果的に挟持することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、請求項7乃至9のいずれかの発明の効果に加えて、挟圧部材には、側壁外面に当接し、貫通孔周縁を止水する止水パッキンが設けられていることにより、挟圧部材と側壁外面の貫通孔周縁との間を密封し、さらなる止水効果を発揮することができる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、請求項7乃至10のいずれかの発明の効果に加えて、筒状部の他端側に受け口が設けられていることにより、地中埋設箱の外側の空間に管材を配管することができる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、請求項7乃至11のいずれかの発明の効果に加えて、受け口を有する接続体が筒状部の外周面に形成された螺子部に螺合してなることにより、管接続具本体から管材を容易に取り付け及び取り外し可能となり、管接続具の施工性を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態における管接続具の固定構造の側方断面図。
図2図1の固定構造の部分拡大断面図。
図3図2の管接続具の分解斜視図。
図4図2の管接続具の止水部材の(a)平面図、(b)側面図、(c)斜視図。
図5図2の管接続具の接続体の(a)側面図、(b)横断面図、(c)縦断面図。
図6図2の管接続具の係合体の(a)平面図、(b)側方断面図。
図7】(a)及び(b)は、本実施形態の管接続具を地中埋設箱の側壁に固定する方法を示す図。
図8図1の固定構造において、止水部材及び側壁の当接の態様を示し、(a)はその正面図、(b)は側方断面図。
図9】(a)〜(c)は、管材を受け口から離脱させるように係合体を接続体から離脱させる工程を示す。
図10】係合体を接続体から引き抜いた状態の固定構造の部分側方断面図。
図11】本発明の別実施例における管接続具の止水部材の(a)側面図、(b)斜視図。
図12】本発明の別実施例における管接続具の止水部材の(a)側面図、(b)斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明に係る一実施形態の管接続具固定構造10の断面図であり、コンクリート桝の地中埋設箱200に管接続具100が固定されている。
【0038】
地中埋設箱200はハンドホールとも呼ばれ、地中埋設ケーブル(図示せず)の中継接続や配線方向の変換等に使用される。当該地中埋設箱200は、四方を囲む側壁201と底壁202とからなり、その上面が開放されている。図示しないが、一般に地中埋設箱200の上面には蓋体が取り付けられる。地中埋設箱200をコンクリート成形する際、内周型枠を脱型することによって中空空間が形成される。一般的に、コンクリート成形の分野では、内周型枠をコンクリート成形体から効果的に脱型するために、内周型枠(及び側壁内面)に抜き勾配を設けることが必須である。この抜き勾配によって、側壁201の肉厚が上方から下方に向かって増すように側壁内面203が所定角度α(約2〜3度)で傾斜している。他方、側壁外面204は、底壁202から垂直に立設している。すなわち、側壁両面で傾斜勾配が相対的に異なっている。
【0039】
そして、側壁201には、地中埋設ケーブルを地中埋設箱200の内部から引き出し(又は引き入れ)可能に所定径の貫通孔205が穿設されている。当該貫通孔205に管接続具100を配置し、当該管接続具100を介して管材Pを接続することにより、地中埋設箱200内外に地中埋設ケーブルを配線することを可能とする。本実施形態の管材Pは外周に蛇腹形状を有するフレキシブル管である。また、当該貫通孔205は、打ち抜き加工又はコンクリート成形により形成される。図1に示すとおり、左右両側壁201の貫通孔205周縁に管接続具100がそれぞれ固定されている。なお、本発明の管接続具は、一般的に貫通孔が形成された壁であれば取り付け可能であり、取り付け対象が本実施形態の地中埋設箱200に限定されないことは言うまでもない。
【0040】
図2は、図1の固定構造10の一方の管接続具100が側壁201に固定された態様をより詳細に示している。図2に示すとおり、管接続具100は、筒状部111及びフランジ部112を有する管接続具本体110と、フランジ部112及び側壁内面203間に配置された止水部材120と、フランジ部112と協働して側壁201を挟圧する挟圧部材130と、管材Pの受け口141が形成された接続体140と、管材Pを受け口141に接続固定するための係合体150と、を備える。そして、管接続具100の一端100aが地中埋設箱200の内側に位置し、管接続具100の他端100bが地中埋設箱200から外方に延びていると共に、側壁外面204側の空間で管材Pが受け口141に接続されている。また、管材Pの外周にはパッキンP1が配置されており、管材P外面と筒状部111内周との間を止水する。なお、以下、各部材について、固定状態における側壁内面203側を一端、側壁外壁204側を他端として定義する。
【0041】
図3は、本実施形態の管接続具100の分解斜視図であり、管接続具100の一端100aから順に、管接続具本体110、止水部材120、挟圧部材130、係合体150及び接続体140が配置される。以下、各部材について、図3〜6を参照して詳細に説明する。
【0042】
管接続具本体110は、図3に示すとおり、貫通孔205を貫通可能に一端100aから他端100bに延びる中空円筒形状を有する筒状部111と、当該筒状部111の一端からその半径方向に突出した正面視略円形状のフランジ部112と、該フランジ部112の略中央に形成された開口部113と、を備える。当該筒状部111は、貫通可能に側壁201の肉厚よりも長くなるように長手状に形成されている。そして、筒状部111の外周面には、後述する挟圧部材130及び接続体140が螺着可能な外周螺子部111aが形成されている。さらに、筒状部111の他端の端面には、鋸歯111bが形成されている。また、フランジ部112は、貫通孔205の内径よりも大きい外径の円板形状に形成されている。
【0043】
挟圧部材130は、図3に示すとおり、正面視円形の短筒状に形成されており、その内周面に内周螺子部131が形成されている。当該内周螺子部131は筒状部111の外周螺子部111aに対応しており、挟圧部材130を筒状部111に他端側から螺着させることができる。また、挟圧部材130の一端側の端面には、弾性体(本実施形態ではゴム)である止水パッキン132が側壁外面204に密接可能に取着されている。さらに、挟圧部材130の外周には、周方向に直交するように突出したリブ133が形成されている。挟圧部材130を回転させるときに、当該リブ133に手又は治具が引っ掛かるため、挟圧部材130による螺着及び挟圧を迅速に行うことができる。
【0044】
図4は、本実施形態の止水部材120を示している。図4(a)〜(c)に示すとおり、止水部材120は、平面視円環形状及び側面視略T字形状を有しており、弾性体(本実施形態ではゴム)から形成されている。止水部材120は、筒状の基部121と、当該基部121の一端から外方に延出していると共に、その延出幅が一端(フランジ部112側)から他端(側壁201側)にかけて増加する裾広がり形状の当接片122と、基部121及び当接片122の間に形成された環状凹部123と、を備える。
【0045】
基部121は、その一端側の端面に形成されたフランジ部112と当接する平坦な取着面125と、筒状部111の一端部近傍の外周面と密着するように形成された内周面126と、を有する。つまり、基部121の内周面126が筒状部111の一端部近傍の外周面と密着し、且つ、取着面125がフランジ部112と密着することにより、止水部材120が管接続具本体110に密着状態で取着される。すなわち、この取着面125は、フランジ部112によって側壁内面203に押圧されるため、押圧面として機能する。
【0046】
そして、断面視略三角形状の当接片122が、当該基部121の取着面125の反対側に延出するように、斜め方向(図4(b)の下方向及び半径外側方向)に垂れ下がっている。換言すると、基部111と当接片122との間に、裾広がり状の空間である環状凹部123が形成されている。この環状凹部123が当接片122の可動領域を創出し、当接片122が半径方向の内外に弾性変形することが可能となるため、当該当接片122の他端(側壁201側)端面及びその近傍には、側壁内面203に密接する当接面124が形成される。当該当接面124は、当接片122(又は止水部材が圧縮変形120)が圧縮変形して側壁内面203に当接する箇所であり、当接片122の端面から裾面に亘る略円環状の領域である。なお、止水部材120の素材は弾性体が好ましいが、圧縮されて可撓変形可能であればよい。
【0047】
図5は、本実施形態の接続体140を示している。図5(a)〜(c)に示すとおり、接続体140は短円筒形状を有しており、他端側の端面には、管材Pを内包するための受け口141が形成されている。そして、当該受け口141に隣接するように、係合体150を収容するための収容部142が設けられている。当該収容部142は、受け口141と、接続体140の内周面と、当該内周面に沿って部分的に突出した壁部146とによって形成された空間である。
【0048】
そして、収容部142と連通するように、収容部142周囲の周壁には、少なくとも1つの矩形状の通孔143が穿設されている。当該通孔143は、係合体150が通過可能な大きさの(軸方向の)幅及び(周方向の)長さを有している。図示しないが、通孔143には、当該通孔143を閉塞するための蓋部を設けることも可能であり、この蓋部により、埃や塵が接続体140内部に侵入することを防止する共に、収容部142内に配置される係合体150が露出しないように保護することができる。当該蓋部には、接続体140の外周面又は内周面に取り付けられて周方向にスライド式に開閉可能なもの、あるいは、接続体140と別体に構成されて通孔143の縁に係合させて取着可能なものなどを採用することができる。
【0049】
また、接続体140の内周面において、通孔143の周方向の一方の縁部には、通孔143の幅方向に沿って突出する当接部144が形成されている。接続体140の収容部143内で、当該当接部144が係合体150の切断部153における切断面153a、153bと係合し、係合体150の周方向への回転を係止(又は阻止)すると共に係合体150の位置決め手段として機能する。また、当該接続体140の内周面の一端側(受け口141の反対側)には、管接続具本体110の筒状部111の外周螺子部111aに対応した内周螺子部145が形成されている。すなわち、接続体140は管接続具本体110に螺着可能に構成されている。さらに、壁部146の一端側の面には、段差147が形成されている。当該接続体140が管接続具本体110に締め付け固定された際、反対方向(すなわち、緩める方向)に接続体140が回転しないように当該段差147が筒状部111端面の鋸歯111bと係合し、締結が緩むことを抑える。
【0050】
図6は、本実施形態の係合体150を示している。図6(a)及び(b)に示すとおり、係合体150は、可撓性を有する円環状の帯状体151と、当該帯状体151から半径方向内側に突出する複数の係止爪152と、を備える。環状の帯状体151は、1箇所の切断部153において切断されており、当該帯状体151の一端及び他端に第1切断面153a及び第2切断面153bを形成する。当該係合体150は、その可撓性により、第1切断面153a及び第2切断面153bが互いに離れるように円環形状から略紐形状へと展開(引き伸ばし)変形可能である。
【0051】
また、係止爪152が管材Pの外周面の蛇腹に嵌合するように構成されている。そして、係合体150が管材Pの外周面に係合する際、管材Pの差込方向への移動は許容されるが、管材Pの離脱方向への移動が係止されるように、係止爪152の先端が帯状体151の半径方向内側に屈曲している。つまり、係合体150が接続体140の収容部142に配置された状態で受け口141に管材Pを挿入すると、管材Pの蛇腹と当接して係合爪152が半径方向外側に撓み変形するため、管材Pを受け口141に押し込むことが可能であるが、反対方向に管材Pを引っ張っても、係止爪152が撓み変形せずに管材Pを係止するため、管材Pを受け口141から引き抜くことができない。
【0052】
なお、本実施形態の管接続具100では、管接続具本体110、挟圧部材130の本体、接続体140、及び、係合体150は、硬質合成樹脂でそれぞれ一体成形されることにより作製されている。また、止水材120及び止水パッキン132は、弾性体であるゴムから形成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、その材質及び製法を任意に選択可能である。
【0053】
次に、上記管接続具100を地中埋設箱200の側壁201に固定する方法を説明する。
【0054】
まず、止水部材120を筒状部111及びフランジ部112に密着状態で取着し、接続体140の収容部142内に係合体150を配置する。当該係合体150は、管接続具本体110に接続体140が取着されていない場合、受け口141、その反対側の開口、又は、通孔143から挿入されて収容部142に配置される。あるいは、管接続具本体110に接続体140が取着されている場合、受け口141又は通孔143から挿入されて収容部142に配置される。このとき、係合体150は、切断部153の切断面153a、153bが接続体140の当接部144に当接するように位置決めされる。後述するように、当該位置決めは、管材Pを受け口141から離脱させるときに、係合体150を通孔143から引き抜いて係合(固定)を解除するために必要となる。すなわち、この位置決めは管材Pを接続するときに必須の工程ではないため、管材Pを接続した後に管材Pを回転させて、係合体150の回り止め及び位置決めをしてもよい。
【0055】
次に、図7(a)に示すとおり、管接続具本体110の筒状部111の他端が側壁外面204から突出するように、筒状部111を貫通孔205に該側壁内面203側から挿通する。そして、側壁外面204側から挟圧部材130を筒状部111の他端に螺着し、フランジ122が側壁内面203に当接すると共に止水パッキン132が側壁外面204に当接するまで当該挟圧部材130を回転させる。さらに、筒状部111の他端に接続体140を同様に螺着し、壁部146が筒状部111他端の端面に当接するまで締め付ける。このとき、筒状部111端面の鋸歯111bと壁部146の段差147とが係合することによって、反対方向への回転が抑えられる。
【0056】
そして、挟圧部材130を強く締め付ける。図7(b)に示すとおり、フランジ部122と側壁内面203との間の止水部材120が弾性圧縮変形し、貫通孔205の周縁で傾斜する側壁内壁203に密接すると共に、止水パッキン132が貫通孔205の周縁で直立する側壁外壁204に密接するように、フランジ部122と挟圧部材130とで側壁201を挟圧する。こうして、管接続具100の固定構造10が構築される。この固定構造10に対して、受け口141に管材Pを押し込むことにより、係合体150の係止爪152が半径方向外側に撓み変形して管材Pの蛇腹に抜け防止状態で係合し、管材Pが地中埋設箱200に対して接続される。
【0057】
上述の工程で構築した管接続具100の固定構造10において圧縮変形した止水材120の態様について図8を参照して詳細に説明する。
【0058】
図8(a)に示すとおり、固定構造10では、止水材120がフランジ部112と側壁内面203との間で弾性圧縮変形し、止水部材120の当接面124が貫通孔205の周縁で傾斜する側壁内面203に密接している。このとき、止水部材120の当接片122が環状凹部123の半径方向外側に広がるように弾性変形し、当接片122の先端及びその近傍が、傾斜する側壁内面203に密接している。なお、環状凹部123が当接片122の可動域を形成するため、当接片122が内外に変形可能である。
【0059】
また、側壁内壁201が角度αで傾斜していることにより、フランジ112と側壁内面203との距離dが当接位置と共に変化して、上方ほどdが小さくなっている。dの変化率は、側壁内面203の傾斜角度αによって定まる。そして、この距離dに応じて当接片122の変形量xが変化する。当該変形量xはフランジ部112から半径方向外側に突出した幅として定義される。傾斜角度αが非常に大きい場合であっても、止水部材120の厚みや当接片122の長さ等を増やすように、その形状を設計することで、最大変形量xmaxを増加させて対応することができる。なお、傾斜角度αは0°を含む概念でもあり、本発明の管接続具の使用は、傾斜面に限定されるものではない。
【0060】
図8(b)に示すとおり、距離dが相対的に大きい止水部材120の上側では変化量がxであり、中央位置の変化量がxであり、距離dが相対的に小さい下側では変化量がxである。各位置の変化量xの関係は、x<x<xであり、距離dに反比例して変化量xが変化する。つまり、側壁内面203の傾斜に合わせて、止水部材120の各位置で当接片122が異なる変形量xで変形することにより、貫通孔205の周縁全周に沿って、止水可能に側壁内面203に密着した環状の当接面124を形成する。
【0061】
次に、固定構造10において、管材Pを受け口141から離脱させる方法を図9及び図10を参照して説明する。なお、以下に説明する方法は、管接続具100を分解しないで管材Pを受け口402から離脱する方法であり、分解に係る手間を省略することができる。しかしながら、管接続具100を分解して管材Pを受け口402から離脱することも可能であることは言うまでもない。
【0062】
図2及び図9(a)に示すとおり、管材Pの接続状態では、係合体150の帯状体151が管材Pの外周を包囲し、且つ、係合体150の係止爪152が管材Pの蛇腹谷部内に嵌り込んでいる。係止爪152は、管材Pの挿入方向への移動は許容するが、管材Pの反対側の離脱方向への移動を係止するように、管材Pに係合している。
【0063】
まず、図9(a)に示すとおり、係合体150の切断部153の第1切断面153aを通孔143の縁から突出する当接部144に当接させることにより、係合体150の第2切断面153a側の端部(及び切断部153)を通孔143から露出するように配置する。この位置合わせは、管材Pが接続する前に係合体150を収容部142内で内周壁に沿って当接部144に当接するまで回すことで行われる。あるいは、管材Pを装着した後、管材Pを係合体150と共に回転させることで行ってもよい。
【0064】
次に、図9(b)に示すとおり、帯状体151を引き伸ばすように可撓変形させながら、第2切断面153b側の端部を治具又は手で引っ張って係合体150を通孔143から引き出す。そして、図9(c)に示すとおり、係合体150の端部をさらに引っ張ると、帯状体151が長手状に展開すると共に係止爪152が管材Pの蛇腹谷部からその半径方向外側に外れながら、帯状体151が収容部142の内周面に沿って周方向に移動していき、係合体150が通孔143から引き出される。完全に係合体150を通孔143から外に引き抜くことにより、係合体150と管材Pとの係合が解除される。図10は、係合体150を完全に引き抜いた状態を示しており、管材Pを受け口141から簡単に離脱させることができる。
【0065】
他方、再度、管材Pを受け口141に接続する場合には、係合体150を可撓変形させつつ、第1切断面153a側の端部を通孔143から差し込み、第1切断面153aが当接部144に当接するまで、係合体150を収容部142の内周面に沿って周方向に移動させるように押し込むことで、係合体150を収容部142の所定位置に再配置することができる。そして、管材Pを受け口141に挿入することにより、管材Pが管接続具100に接続固定される。なお、この差込作業は、管材Pを受け口141に内包した状態でも可能であり、係合体150を収容部142内に挿入すると、管材Pが係合体150に係合して管接続具100に接続固定される。つまり、この作業は、接続体140を管接続具本体110から取り外し不可能な状況において特に重宝される。
【0066】
以下、本発明に係る一実施形態の配管装置10の作用効果について説明する。
【0067】
本実施形態の管接続具100及びその固定構造10では、止水部材120の側壁内面203への当接面124に環状凹部123が形成されていることにより、フランジ部112と挟圧部材130とで地中埋設箱200の側壁201を挟圧した際に、止水部材120が貫通孔205周縁の側壁内面203の傾斜勾配(傾斜角α)に合わせて圧縮変形してフランジ部112と側壁201との間をより確実に密封することができる。環状凹部123により、その外周側に設けられた当接片122が半径方向に圧縮変形可能であり、尚且つ、当接片122が半径方向外側に裾広がり状に突出していることにより、止水部材120の圧縮変形に当接片122が貫通孔205の半径方向外側へ変形するようにガイドされる。そして、止水部材120を圧縮変形させた状態では、止水部材120の当接片122が、各当接箇所の圧接の度合いに応じて、それぞれ所定の変形量xで半径方向に撓み変形する。このため、側壁内面201の傾斜勾配により、フランジ部112と側壁内面203との間の距離dが当接位置に応じて変化するが、当該距離dに反比例した変形量xで止水部材の各当接箇所が圧縮変形するため、止水部材120が貫通孔205周縁全周に密接している。
【0068】
より具体的には、止水部材120の各当接位置において、フランジ部112と側壁内面203との距離が大きいほど当接片122の圧縮変形量xが小さくなり、フランジ部112と側壁内面203との距離dが小さいほど圧縮変形量xが大きくなるため、フランジ部112と側壁内面203とが離れても、止水部材120の当接面124が傾斜する側壁内面203に確実に密着した状態を維持する。つまり、環状凹部が設けられていない平板状パッキンや止水用不織布では、傾斜面に合わせて変形できないため、乾燥状態では常に距離dが大きい上方に隙間が生じ、埃、塵、泥などの不織布の当接面に付着して止水性能が低下する虞がある。これに対して、本実施形態では、設置当初より止水部材120の内方に埃、塵、泥水などが侵入することができないため、優れた止水性能を発揮することができる。
【0069】
さらに、止水部材120がフランジ部112と側壁内面203との間に圧縮変形した状態で配置されているので、その弾性復帰力も相まって、フランジ部112と側壁内面203間のぐらつきを防ぎ、当該管接続具100が側壁201に強固に固定される。したがって、本実施形態の管接続具100の固定構造10は、地中埋設箱200の傾斜勾配(α)を有する側壁内面203を止水部材120でより確実に止水した状態で、側壁201に管接続具100を強固に固定するものである。
【0070】
(変形例1)
本発明の管接続具及びその固定構造の形態は、上記実施形態に限定されない。特には、本発明の止水部材は、環状凹部が形成されていれば、他の形状とすることも可能である。例えば、図11の止水部材120Aは、筒状の基部121Aと、当接片122Aとからなる側面視T字形状の弾性体である。そして、基部121Aの上面には、取着面125Aが形成されており、当該取着面125Aの外周から垂直下方向に接続片122Aが延びている。この接続片122Aは、環状凹部123の半径方向内外に所定量で変形して、傾斜面に密接可能である。すなわち、管接続具100Aと側壁内面203との間で止水効果を発揮することができる。
【0071】
(変形例2)
図12の止水部材120Bは、筒状の基部121Bと、当接片122Bとからなる側面視T字形状の弾性体である。この止水部材120Bは矩形環状体であり、基部121Bの上面の取着面125Bの周囲から、当接片122Bが半径方向外方に突出しつつ下方に延びている。この矩形環状の止水部材120Bは、管接続具本体筒状部のフランジ部近傍の形状を矩形状とすることで筒状部に取着可能である。
【0072】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0073】
10 管接続具の固定構造
100 管接続具
100a 一端
100b 他端
110 管接続具本体
111 筒状体
111a 外周螺子部
112 フランジ部
120 止水部材
121 基部
122 当接片
123 環状凹部
124 当接面
125 取着面(押圧面)
130 挟圧部材
131 内周螺子部
132 止水パッキン
140 接続体
141 受け口
142 収容部
143 通孔
150 係合体
151 帯状体
152 係止爪
153 切断部
200 地中埋設箱
201 側壁
202 底壁
203 側壁内面
204 側壁外面
205 貫通穴
P 管材
α 傾斜勾配
w 変形量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12