(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、力布取付部材が受圧部材の近傍に配置されているから、他車両が自車両の後方から自車両の後部に衝突した時には、受圧部材が力布取付部材に当たってしまう虞があり、乗員の上体を後方に沈み込ませる効果が力布取付部材によって低減してしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、受圧部材が力布取付部材に当たってしまうことを抑制して、乗員の上体を後方に沈み込ませる効果が低減しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための請求項1に係る発明は、左右に並列されたサイドフレームと、前記サイドフレームの間に設けられ、前後に揺動可能に設けられた受圧部材と、前記サイドフレームに取り付けられたエアバッグモジュールと、前記サイドフレームの前面及び前記受圧部材の前面に覆い被さるクッションパッドと、前記クッションパッドに覆い被さる表皮と、前記サイドフレームに取り付けられた力布取付部材と、前記表皮の裏側から前記エアバッグモジュールの周辺を経由して前記力布取付部材まで架け渡された力布と、を備え、前記受圧部材が、本体部と、前記本体部の左右の側部からそれぞれ
左前方、
右前方へ延出し
、前端が前記サイドフレームの同一の高さの部分よりも前方に位置するよう備えられた延出部と、を有し、前記力布取付部材は、前記受圧部材の前後の揺動に伴う前記延出部の軌跡を避けた位置に設けられているシートのバックレストである。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記力布取付部材が前記延出部の前端よりも前の位置に設けられている請求項1に記載のシートのバックレストである。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記延出部が後ろ上がりに後傾し、前記力布取付部材が前記延出部の下端から上又は下に避けた位置に設けられている請求項1又は2に記載のシートのバックレストである。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記力布取付部材が前記延出部から上に避けた位置若しくは下に避けた位置又はこれらの両方の位置に設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のシートのバックレストである。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記延出部にビードが形成され、前記力布取付部材の上下方向の位置と前記延出部の上下方向の位置が揃っており、前記力布取付部材が前記ビードから上又は下に避けた位置に設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のシートのバックレストである。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記延出部にビードが形成され、前記力布取付部材が、前記サイドフレームの前において上下に延在するとともに前記力布が掛けられる支持部と、前記支持部の上端及び下端から後方に折れ曲がって前記サイドフレームの前側及び内側に沿って延在し、その後端部が前記サイドフレームに取り付けられた上下一対のアーム部と、を有したワイヤであり、前記アーム部が前記ビードから上下に避けた位置に設けられている請求項1に記載のシートのバックレストである。
【0015】
請求項7に係る発明は、前前記サイドフレームには、前方に張り出した張り出し部が形成され、前記力布取付部材が前記張り出し部のうち最も前に張り出した部位から上下に避けた位置に設けられている請求項1から6の何れか一項に記載のシートのバックレストである。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記サイドフレームの前端に取り付けられたサイドサポート部材を更に備え、前記サイドサポート部材が、前記サイドフレームの前端から離れて上下に延在した縦部位と、前記縦部位の端部から後方に折り曲げられて前記サイドサポート部材の前端に固定された折り曲げ部位と、を有し、横から見て、前記サイドフレームの前端と前記縦部位との間の領域内に前記延出部の前端が配置されている請求項1から7の何れか一項に記載のシートのバックレストである。
【0017】
請求項9に係る発明は、前記サイドフレームには、前方に張り出した張り出し部が形成され、前記力布取付部材がクリップであり、前記力布取付部材が前記張り出し部のうち最も前に張り出した部位から下に避けた位置に設けられている請求項1から
5の何れか一項に記載のシートのバックレストである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、受圧部材の後退の際に延出部が力布取付部材に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができる。そのため、受圧部材の後退距離を確保することができ、乗員の上体が後方に沈み込むことが低減されることを抑制することができる。
【0019】
請求項2,3,4に係る発明によれば、延出部が力布取付部材に当たることをいっそう抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることをいっそう抑制することができる。そのため、受圧部材の後退距離をいっそう確保することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、延出部の形状の自由度が向上する。また、力布取付部材が前記延出部から上に避けた位置と下に避けた位置の両方に設けられていれば、力布が安定して取り付けられる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、ビードが力布取付部材に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができる。また、ビードによって延出部の剛性が向上する。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、ビードが力布取付部材のアーム部に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができ、受圧部材の後退距離を確保することができる。また、ビードによって延出部の剛性が向上する。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、延出部が力布取付部材に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができ、延出部の形状の自由度が向上する。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、延出部がサイドサポート部材に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができる。そのため、受圧部材の後退距離を確保することができ、乗員の上体が後方に沈み込むことが低減されることを抑制することができる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、延出部が力布取付部材に当たることを抑制することができ、受圧部材の後退が低減されることを抑制することができ、延出部の形状の自由度が向上する。また、クリップである力布取付部材を小型化にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が以下の実施形態に付されているので、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0028】
図1は、シート1の斜視図である。以下の説明では、シート1の後ろから前へ向かって見て「左」及び「右」を定める。つまり、シート1に着座した者の視点で「左」及び「右」を定める。
【0029】
このシート1は乗物用シートであり、特に自動車の室内に設けられる車両用シートである。
【0030】
シート1はボトムシート3、バックレスト4及びヘッドレスト6等を備える。ボトムシート3はスライド機構を介して車室内のフロア上に設けられ、スライド機構によってボトムシート3が前後移動可能に設けられている。バックレスト4の下端部がリクライニング機構によってボトムシート3の後端部に連結され、バックレスト4がボトムシート3の後端部で立てられている。バックレスト4は、その下端部を支点にして、リクライニング機構によってボトムシート3に対して前後方向に傾動可能である。ヘッドレスト6がバックレスト4の上端部に設けられている。
【0031】
以下、
図2〜
図5を参照して、バックレスト4について詳細に説明する。
図2はバックレスト4の分解斜視図である。
図3はバックレスト4のサイドフレーム40b等を示した斜視図である。
図4はバックレスト4の側面図である。
図5はバックレスト4の左部位の横断面を上から見て示した断面図である。
【0032】
バックレスト4はフレーム40、受圧部材41、クッションパッド48、表皮49、エアバッグモジュール50、力布(案内布)51及び上下2つの力布取付部材52,52等を備える。
【0033】
フレーム40を前から見るとフレーム40が枠状に形作られ、フレーム40の枠内に受圧部材41が設けられ、エアバッグモジュール50がフレーム40の左側面に取り付けられ、フレーム40及び受圧部材41がクッションパッド48に包み込まれ、エアバッグモジュール50がクッションパッド48の左側面において露出するようにクッションパッド48の左部位に埋め込まれ、表皮49がクッションパッド48及びエアバッグモジュール50に覆い被さっている。フレーム40の下端部がリクライニング機構に連結され、そのリクライニング機構がボトムシート3のフレームの後端部に連結され、フレーム40がリクライニング機構によって前後に傾動可能に設けられている。
【0034】
フレーム40について説明する。
図2及び
図3に示すように、フレーム40は、上部フレーム40a、サイドフレーム40b,40b及び下部フレーム40cを有する。サイドフレーム40b,40bが、間隔をおいて左右に並列されているととともに、上下に延在する。上部フレーム40aが左右に延在し、上部フレーム40aの左端が左のサイドフレーム40bの上端に連結され、上部フレーム40aの右端が右のサイドフレーム40bの上端に連結されている。下部フレーム40cが左右に延在し、下部フレーム40cの左端が左のサイドフレーム40bの下端に連結され、下部フレーム40cの右端が右のサイドフレーム40bの下端に連結されている。
【0035】
ここで、サイドフレーム40bは縦パイプ部40b1及びサイドフレーム本体部40b2から構成されている。左右の縦パイプ部40b1,40b1が上部フレーム40aの左右の端部から下方に折れ曲がっており、縦パイプ部40b1,40b1と上部フレーム40aが一体成形されている。つまり、パイプ材を門型(例えば、逆U字形状、横コ字状)に屈曲することによって縦パイプ部40b1,40b1及び上部フレーム40aが構成される。サイドフレーム本体部40b2,40b2が板金からなり、サイドフレーム本体部40b2,40b2が左右方向に間隔をおいて互いに対向し、左右のサイドフレーム本体部40b2,40b2が左右の縦パイプ部40b1,40b1の下部にそれぞれ溶接され、サイドフレーム本体部40b2,40b2が縦パイプ部40b1,40b1の下端から下方に延出する。下部フレーム40cが板金からなり、下部フレーム40cの左右両端がサイドフレーム本体部40b2,40b2の下端にそれぞれ溶接されている。また、
図3及び
図4に示すように、サイドフレーム本体部40b2,40b2の下部には、前方に張り出した張り出し部40b3が形成されている。
【0036】
図2及び
図4に示すように、右のサイドフレーム40bの前端にはサイドサポート部材40dが溶接等によって取り付けられている。サイドサポート部材40dは鉤状(釣り針型)に曲げられたロッド部材からなる。つまり、サイドサポート部材40dは、サイドフレーム40bの前端から離れて上下に延在した縦部位40d1と、縦部位40d1の上端から後方に折り曲げられて更に下に折り曲げられた折り曲げ部位40d2と、を備える。折り曲げ部位40d2の後端がサイドフレーム本体部40b2の前端の上側に溶接等によって固定され、縦部位40d1の下端部が張り出し部40b3の前端の上側に溶接等によって固定されている。そのため、横から見て、サイドフレーム40bの前端とサイドサポート部材40dによって囲われた領域40d3が縦部位40d1とサイドサポート部材40dの前端との間に形成されている。
【0037】
図2に示すように、サイドフレーム40b,40bの間にはクロスメンバ42が設けられている。クロスメンバ42は、正面から見て波形に形作られたロッド部材からなる。クロスメンバ42の左右端部が溶接等によって縦パイプ部40b1,40b1にそれぞれ連結されている。
【0038】
受圧部材41について説明する。
図2に示すように、受圧部材41は、フレーム40によって囲まれた枠の開口を部分的に塞ぐようにして設けられ、サイドフレーム40b,40bの間に架設されたアッパーワイヤ(線材)43及びロアワイヤ44(線材)によって前後に揺動可能に設けられている。
【0039】
アッパーワイヤ43がクロスメンバ42の下方においてサイドフレーム40b,40bの間に架設され、アッパーワイヤ43の左右端部が縦パイプ部40b1,40b1にそれぞれ連結されている。アッパーワイヤ43は、正面から見て波形に形作られている。アッパーワイヤ43が可撓性・弾性を有し、クロスメンバ42がこのアッパーワイヤ43よりも剛性が十分に高い。
【0040】
ロアワイヤ44がアッパーワイヤ43の下方においてサイドフレーム本体部40b2,40b2の間に架設されている。具体的には、
図2,
図3に示すように、ロアワイヤ44の左端部が左の揺動部材45aに連結され、ロアワイヤ44の右端部も同様にして右の揺動部材45aに連結され、これら揺動部材45a,45aが前後に揺動可能となって左右のサイドフレーム本体部40b2,40b2にそれぞれ連結されている。揺動部材45aの前後にストッパ45b,45cが配置され、これらストッパ45b,45cがサイドフレーム本体部40b2に固定されている。揺動部材45aに引張バネ45dの一端部が連結され、引張バネ45dが揺動部材45aの上斜め前においてサイドフレーム40bに連結されている。引張バネ45dが揺動部材45aを前方に引き、揺動部材45aが前のストッパ45bに当接することによって引張バネ45dの引張荷重がストッパ45bに受け止められている。所定値以上の後方への荷重がロアワイヤ44に作用した場合には、揺動部材45aが引張バネ45dの引張荷重に抗して後方へ揺動し、揺動部材45aが後ろのストッパ45cに当接することによって揺動部材45aが止められる。
【0041】
ロアワイヤ44は、正面から見て波形に形作られている。ロアワイヤ44が可撓性・弾性を有し、クロスメンバ42がこのロアワイヤ44よりも剛性が十分に高い。
【0042】
受圧部材41がアッパーワイヤ43及びロアワイヤ44に支持され、受圧部材41がアッパーワイヤ43及びロアワイヤ44によって吊り下げられた状態でサイドフレーム40b,40bの間に配置されている。また、受圧部材41がクロスメンバ42の下方に配置されている。
【0043】
受圧部材41が板状の樹脂プレートで構成されている。受圧部材41の後面に複数の爪41c,41c…及び爪41d,41d…が形成され、爪41c,41c…がアッパーワイヤ43に引っ掛けられ、爪41d,41d…がロアワイヤ44に引っ掛けられることによって、受圧部材41が立てられた状態でアッパーワイヤ43及びロアワイヤ44に支持されている。
【0044】
受圧部材41が本体部41a及び左右一対の延出部41b,41bを有する。本体部41aが上下左右に延在した板状に設けられ、左の延出部41bが本体部41aの左の側部から左方に延び出て、右の延出部41bが本体部41aの右の側部から右方に延び出ている。延出部41b,41bが本体部41aの左右両側から前方へ湾曲し、延出部41b,41b及び本体部41aを上から見ると、延出部41b,41b及び本体部41aが全体として後ろに凸状且つ前に凹状のシリンドリカル型に湾曲する。
【0045】
延出部41b,41bには、左右に延在したビード41b4,41b4が形成されている。ビード41b4,41b4は、延出部41b,41bの前面において凹状に設けられ、延出部41b,41bの後面において凸状に設けられている。ビード41b4,41b4によって延出部41b,41bの剛性が向上する。なお、ビード41b4,41b4が延出部41b,41bの前面において凸状に設けられ、延出部41b,41bの後面において凹状に設けられていてもよい。
【0046】
後方に向かう荷重が受圧部材41に作用すると、アッパーワイヤ43及びロアワイヤ44が受圧部材41によって後方に引っ張られ、アッパーワイヤ43及びロアワイヤ44が弾性変形して、受圧部材41が後方へ後退する。後方に向かう荷重が衝撃力等のように強いと、揺動部材45a,45aがロアワイヤ44によって引っ張られて、揺動部材45a,45aが引張バネ45dの引張力に抗して後方に揺動し、受圧部材41が更に後方へ後退する。受圧部材41の上部を支えたアッパーワイヤ43の端部がサイドフレーム40bに固定され、受圧部材41の下部を支えたロアワイヤ44の端部が揺動部材45aによって前後動可能となってサイドフレーム40bに連結されているから、受圧部材41の後方への変位は上に向かうほど小さく、下に向かうほど大きい。
【0047】
後方に向かう荷重が受圧部材41に作用せず、受圧部材41が後退していない状態(以下、自然状態という。)では、受圧部材41が後ろ上がりに後傾しており、受圧部材41の本体部41a及び延出部41b,41bが後ろ上がりに後傾している。
【0048】
横から見て(
図4参照)、左右の延出部41b,41bの前端(延出端)41b1は、サイドフレーム40bの前端とサイドサポート部材40dによって囲われた領域40d3内に配置されている。
【0049】
エアバッグモジュール50について説明する。
図1〜
図5に示すように、エアバッグモジュール50は左のサイドフレーム40bの外側(左側)の側面に取り付けられている。エアバッグモジュール50は少なくともインフレータ及びエアバッグを備え、必要に応じてリテーナ、リッド、衝撃センサー及びコントロール回路等がエアバッグモジュール50に組み込まれている。車両の衝撃が衝撃センサーによって検知されると、衝撃センサーからの信号がコントロール回路を経由してインフレータに入力され、その信号によりインフレータが点火され、インフレータから発生したガスによってエアバッグが瞬時に膨らむ。
【0050】
クッションパッド48及び表皮49について説明する。
図2及び
図5に示すように、クッションパッド48は、発泡ウレタンフォーム材といったクッション材からなる。クッションパッド48は、少なくともフレーム40及び受圧部材41の前からフレーム40の左側、右側及び上側にかけて、フレーム40及び受圧部材41を覆っている。更に、クッションパッド48は、フレーム40及び受圧部材41の後ろからフレーム40及び受圧部材41を覆っても良い。
【0051】
クッションパッド48は、背受け部48a及び左右の土手部48b,48bを有する。背受け部48aがクッションパッド48の中央部位であり、左の土手部48bがクッションパッド48の左の部位であり、右の土手部48bがクッションパッド48の右の部位である。背受け部48aと土手部48b,48bが一体成形されており、右の土手部48bが背受け部48aの右側に設けられ、左の土手部48bが背受け部48aの左側に設けられている。土手部48b,48bが背受け部48aの前面の左右両側から前方へ膨出するように設けられおり(
図5参照)、土手部48b,48bと背受け部48aの境界部が谷線となっている。
【0052】
クッションパッド48には、エアバッグモジュール50を格納するための格納空間48sが形成されている。具体的には、左の土手部48bの左側面に格納空間48sが形成され、格納空間48sが土手部48bの左側面からその内側の面まで貫通している。この格納空間48s内にエアバッグモジュール50が格納されている。
【0053】
クッションパッド48の前面には、溝48c,48c,48dが形成されている。溝48c,48cは、土手部48b,48bと背受け部48aの境界部に沿って上下方向に延びている。溝48dは、背受け部48aの前面の中央部よりやや上側に形成されていて、左右に延在する。溝48dの左端が左の溝48cに連通し、溝48dの右端が右の溝48cに連通する。
【0054】
溝48cの底にはスリット48e,48fが形成されており(
図5、
図7等参照)、スリット48e,48fが溝48cの底から背受け部48aの裏側及び土手部48b,48bの内側まで貫通する。これらスリット48e,48fは、溝48cに沿って延在し、上下に細長く形成されている。スリット48e及び溝48cが背受け部48aと土手部48b,48bとの境界部に沿って形成されているから、背受け部48aが後ろへ押されることによって背受け部48aが後退しやすい。ここで、
図7はクッションパッド48を縦断面に沿って破断した状態で示したバックレスト4の部分断面背面図である。
【0055】
背受け部48aが、下部フレーム40c、受圧部材41の本体部41a、クロスメンバ42及び上部フレーム40aの前面に覆い被さるとともに、上部フレーム40aの上面に覆い被さる。左の土手部48bは、左の延出部41bの前面及び左のサイドフレーム40bの前面に覆い被さるとともに、左のサイドフレーム40bの左側面及び後面に覆い被さる。更に左の土手部48bは、上部フレーム40aの左端部の上面及び左のサイドフレーム40bの上面に覆い被さる。右の土手部48bは、右の延出部41bの前面及び右のサイドフレーム40b及びサイドサポート部材40dの前面に覆い被さるとともに、右のサイドフレーム40bの右側面及び後面に覆い被さる。更に右の土手部48bは、上部フレーム40aの右端部の上面及び右のサイドフレーム40bの上面に覆い被さる。サイドサポート部材40dは、右の土手部48bを後ろから支えて、その土手部48bを前方に膨出させるものである。
【0056】
背受け部48aの左右の幅がサイドフレーム40b,40bの左右の間隔よりも短く、バックレスト4の正面に向かって見て背受け部48aがサイドフレーム40b,40bの間に配置されている。また、バックレスト4の正面に向かって見て溝48c,48cがサイドフレーム40b,40bの間に位置する。
【0057】
受圧部材41の本体部41aの左右の幅が溝48c,48cの左右の間隔よりも短い。そのため、バックレスト4の正面に向かって見て、受圧部材41の本体部41aが溝48c,48cの間に配置されている。
【0058】
受圧部材41の左の延出部41bは、本体部41aの左の側部から左方に延出して、背受け部48aの裏側及び土手部48bの内側において左の溝48cの底のスリット48eを乗り越えるように設けられている。左の土手部48bの内側の面のうち延出部41bに対向する部位には、凹部48gが形成されている。左の土手部48bは凹部48gが形成されている部位において薄肉化されており、その薄肉化された部位を薄肉部48kという。同様にして右の延出部41bも右の溝48cの底のスリット48eを乗り越えるように設けられ、右の土手部48bの内側の面にも凹部48gが形成され、左の土手部48bも薄肉部48kを有する。
【0059】
受圧部材41の本体部41aの前面が背受け部48aの裏側の面に当接する。左の延出部41bは、背受け部48aの裏側の面の右部位に当接するとともに、左の凹部48g内において左の土手部48bの内側の面の左部位に当接する。特に、左の延出部41bの前端(延出端)41b1が左の凹部48g内において左の土手部48bの内側の面に当接する。右の延出部41bは、背受け部48aの裏側の面の右部位に当接するとともに、右の土手部48bの内側の面の左部位に当接する。右の延出部41bの前端が右の凹部48g内において右の土手部48bの内側の面に当接する。
【0060】
表皮49がクッションパッド48の表面に吊り込まれている。吊り込みとは、クッションパッド48の表面に覆い被さった表皮49が張った状態でクッションパッド48の表側の面に沿っていることをいう。
【0061】
表皮49が複数の表皮パーツを有し、これら表皮パーツを縫い合わせることによって表皮49が袋状に設けられている。具体的には、表皮49は前面表皮パーツ49a、左右一対の土手面表皮パーツ49b,49b、左右一対の側面表皮パーツ49c,49c及び背面表皮パーツを有する。土手面表皮パーツ49b,49bが前面表皮パーツ49aの左右両側に縫い付けられ、左の側面表皮パーツ49cが左の土手面表皮パーツ49bの左側に縫い付けられ、右の側面表皮パーツ49cが右の土手面表皮パーツ49bの右側に縫い付けられ、背面表皮パーツが前面表皮パーツ49aの上側に縫い付けられ、背面表皮パーツが前面表皮パーツ49aの後ろに折り返されて、側面表皮パーツ49c,49cが背面表皮パーツの左右両側にファスナーによって開閉自在に留められている。
【0062】
クッションパッド48及びフレーム40が表皮49内に入れられ、クッションパッド48が表皮49によって被包されている。前面表皮パーツ49aが背受け部48aの前面に覆い被さり、土手面表皮パーツ49bが土手部48bの前面に覆い被さり、側面表皮パーツ49cが土手部48bの側面から背面にかけて覆い被さり、背面表皮パーツがフレーム40の裏側を覆っている。また、左の土手面表皮パーツ49bがエアバッグモジュール50を覆い、格納空間48sが左の土手面表皮パーツ49bによって塞がれている。
【0063】
溝48c,48c,48dのうちスリット48e,48e,48fが形成されていない箇所では、表皮49の内側がCリング等の係合部材によってクッションパッド48に止められている。また、側面表皮パーツ49cの端末にフック49fが設けられ、フック49fがサイドフレーム40bに引っ掛かっている。これにより、表皮49がクッションパッド48の表面に吊り込まれ、表皮49の張力が維持される。
【0064】
図5及び
図7に示すように、表皮49の内側であって前面表皮パーツ49aと土手面表皮パーツ49b,49bの縫い目には、左右一対の引き帯(引き部材)49e,49eが縫合、接着、溶着等によって連結されている。より具体的には、引き帯49eは前面表皮パーツ49aの端末と土手面表皮パーツ49bの端末に挟まれた状態で前面表皮パーツ49aと土手面表皮パーツ49bに縫い付けられている。表皮49と引き帯49e,49eの連結箇所は、スリット48e,48eに重なる位置である。引き帯49e,49eが背受け部48a及び土手部48b,48bの表側から裏側へスリット48e,48eに通され、表皮49が引き帯49e,49eによって後ろに引かれた状態で、引き帯49e,49eが背受け部48aの裏側において面ファスナー49gによって互いに貼着されている。引き帯49e,49eが張っており、背受け部48aが引き帯49e,49eによって締め付けられている。これにより、表皮49がクッションパッド48の表面に吊り込まれ、表皮49の張力が維持される。
背受け部48aの裏側の面のうち面ファスナー49gに重なる部位には、窪み48mが形成されており、面ファスナー49gが背受け部48aと受圧部材41の間に挟み込まれることが抑止されている。そのため、面ファスナー49gが背受け部48aや受圧部材41に接して異音が発生することを抑制することができる。
【0065】
なお、
図8に示すように、引き帯49e,49の代わりに第一係合部材49d及び第二係合部材48uによって表皮49がクッションパッド48の表面に吊り込まれてもよい。つまり、表皮49の内側であって前面表皮パーツ49aと土手面表皮パーツ49bの縫い目には複数の第一係合部材49dが設けられ、これら第一係合部材49dが溝48cに沿って配列されている。一方、溝48cのうちスリット48e,48eに重なる部位にも第二係合部材48uが設けられ、表皮49が張った状態で、第一係合部材49dが溝48c,48cに差し込まれ、第一係合部材49dと第二係合部材48uが係合する。
【0066】
表皮49には破裂予定部49tが形成されている。破裂予定部49tが形成されている位置は左の土手部48bの側面の前側である。左の側面表皮パーツ49cと左の土手面表皮パーツ49bの縫い目が破裂予定部49tである。破裂予定部49tは表皮49の他の部位よりも低強度であり、破裂予定部49tの縫い目の強度は表皮49の他の縫い目の強度よりも低い。また、破裂予定部49tの縫い目は、通常の使い勝手に耐えられる強度を保ちつつ、エアバッグモジュール50のエアバッグの膨張による引張力で断裂する強度を持つ。
【0067】
力布51及び力布取付部材52,52について説明する。
図5に示すように、力布51の一方の端末51aが表皮49の内側の面に連結されている。具体的には、力布51の一方の端末51aが破裂予定部49tにおいて左の土手面表皮パーツ49b及び側面表皮パーツ49cに縫い付けられている。
【0068】
力布51の他方の端末51bが力布取付部材52によってサイドフレーム40bに連結されている。
図6は、力布取付部材52がサイドフレーム40bに取り付けられた状態で示す断面図である。
図6に示すように、力布取付部材52は樹脂材料からなるクリップである。力布取付部材52は渦巻状部52a、渦巻状ノッチ52b、係止片部52c及び弧状ノッチ52dを有する。渦巻状部52aが隙間をおいて渦巻状に巻かれ、渦巻状部52aによって囲われた隙間が渦巻状ノッチ52bであり、その渦巻状ノッチ52bが渦巻状部52aの最外部において開口し、係止片部52cが渦巻状部52aの最外周部の中心寄り部位から渦巻状部52aの最外周部に沿って延出し、係止片部52cと渦巻状ノッチ52bとの間に隙間が存在し、その隙間が弧状ノッチ52dであり、弧状ノッチ52dが係止片部52cの突端において開口する。サイドフレーム40b(特に、サイドフレーム本体部40b2)の前端部40b5が鉤状に湾曲し(以下、その湾曲した部分を鉤状部40b5という)、鉤状部40b5の先端部位が弧状ノッチ52dに差し込まれ、鉤状部40b5の内側に渦巻状部52aが配置され、鉤状部40b5の先端部位が渦巻状部52aと係止片部52cとの間に挟持されている。これにより、力布取付部材52がサイドフレーム40bに取り付けられている。力布51の端末が渦巻状ノッチ52bに差し込まれ、力布51の端末が渦巻状ノッチ52bに沿って巻かれ、力布51の端末が渦巻状部52aによって挟み込まれている。これにより、力布取付部材52が力布51の端末に取り付けられている。なお、板状又は棒状等の埋め部材が渦巻状ノッチ52bに挿入され、力布51の端末がより力強く渦巻状部52aによって挟み込まれてもよい。
【0069】
図5に示すように、力布51は、張った状態で破裂予定部49tからエアバッグモジュール50の周辺を経由して力布取付部材52,52まで架け渡されている。具体的には、力布51は、左の土手部48bの側面の前側から格納空間48sの縁にかけてその土手部48bの側面に吊り込まれており、更に格納空間48sの縁から格納空間49sに通されてサイドフレーム40bまで張った状態に設けられている。
【0070】
力布51は、伸縮性の小さい布状素材からなる。エアバッグモジュール50のエアバッグが膨張すると、力布51の張力が増大して、力布51がその張力を破裂予定部49tに伝達する役割を果たす。また、力布51はエアバッグモジュール50の展開方向を案内する案内部材であり、エアバッグモジュール50のエアバッグが膨張する際にそのエアバッグが力布51によって破裂予定部49tへ案内される。そのため、エアバッグが膨張すると、エアバッグが破裂予定部49tを突き破って前方に膨張する。
【0071】
力布取付部材52,52が設けられた位置について説明する。
力布取付部材52,52は、受圧部材41が前後に揺動する際の左の延出部41bの軌跡を避けた位置に設けられている(
図2〜
図5参照)。
また、下の力布取付部材52は、受圧部材41が自然状態(後方に向かう荷重が受圧部材41に作用せず、受圧部材41が後退していない状態)にあるときにおける左の延出部41bの前端(延出端)41b1の位置よりも前の位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図4及び
図5参照)。
また、上の力布取付部材52は、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bの下端41b2から上に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図2〜
図4参照)。下の力布取付部材52は、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bの下端41b2から下に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図2〜
図4参照)。
また、上の力布取付部材52は、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bの上端41b3から上に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図2〜
図4参照)。つまり、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bから上に避けた位置と左の延出部41bから下に避けた位置とのそれぞれに力布取付部材52,52がサイドフレーム40bに取り付けられている。なお、上の力布取付部材52と下の力布取付部材52のどちらか一方を省略してもよい。つまり、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bの上方の位置又は下方の位置に力布取付部材52がサイドフレーム40bに取り付けられている。
また、力布取付部材52,52は、張り出し部40b3のうち最も前に張り出した部位40b4から上下に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図4参照)。
また、力布取付部材52,52は、受圧部材41が自然状態にあるときにおけるビード41b4,41b4から上又は下に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図3参照)。
【0072】
上の力布取付部材52が左の延出部41bよりも上に配置され、下の力布取付部材52が左の延出部41bよりも下に配置され、これら力布取付部材52,52が上下に離れているから、力布51が安定して取り付けられる。
【0073】
続いて、上記のように構成されたシート1の挙動及び使用方法について説明する。
乗員がボトムシート3に座って上体をバックレスト4に凭れる。乗員は頭部をヘッドレストから若干前方に離した姿勢をとることが多い。
【0074】
乗員の背中が背受け部48aの前面に受け止められ、背受け部48aが弾性的に圧縮する。また、乗員の上体の左右の側部(主に肩、肩甲骨、脇腹、上腕等)が土手部48b,48bに受け止められ、土手部48b,48bが僅かに圧縮する。土手部48b,48b(薄肉部48k,48k)が内側から延出部41b,41bによって支えられているため、薄肉部48k,48kが乗員の上体によって後方に押されても、薄肉部48k,48kが後方に大きく撓むことがない。そのため、乗員の上体の横からのホールド性が凹部48gによって低下することを受圧部材41の延出部41bによって抑制することができる。
【0075】
また、溝48c,48cの底にスリット48e,48eが形成されているから、薄肉部48k,48kが後方に撓みやすい。しかし、延出部41b,41bがスリット48e,48eを跨いで薄肉部48k,48kを後方から受け止めているから、バックレスト4に凭れかかった乗員の上体によって薄肉部48k,48kが後方に押されても、薄肉部48k,48kが後方に大きく撓まない。そのため、乗員の上体の横からのホールド性を確保することができる。
【0076】
乗員がバックレスト4に凭れかからなくても、延出部41bが土手部48b(薄肉部48k)の内側に当接している。そのため、乗員がバックレスト4に凭れかかるとすぐに乗員の上体が土手部48bによって横からホールドされる。また、乗員の体重が軽くとも、乗員の上体の横からのホールド性を確保することができる。
【0077】
後退する自車両(シート1が設けられた車両をいう。)の後部が他車両或いは障害物に衝突した場合や、他車両が自車両の後方から自車両の後部に衝突した場合、後方に向かう慣性力が乗員やシート1に作用する。そうすると、背受け部48a及び受圧部材41が後退し、バックレスト4に凭れかかった乗員の背中が猫背のように丸まりながら上体が後方に沈み込む。それとほぼ同時に乗員の後頭部がヘッドレスト6に当たる。乗員の上体が猫背のように丸まった状態で、乗員の後頭部がヘッドレスト6に受け止められるので、乗員の頸部が後ろに反ることを抑制することができ、乗員の頸部への負担を軽減することができる。
【0078】
また、背受け部48aと土手部48b,48bとの間にスリット48e,48eが形成されているから、背受け部48a及び受圧部材41が大きく後退する。この際、土手部48b,48bの薄肉部48k,48kが乗員の上体の左右の側部(主に肩、肩甲骨、脇腹、上腕等)によって後方に押され、土手部48b,48bの薄肉部48k,48kが後方へ撓む。受圧部材41の延出部41b,41bも薄肉部48k,48kによって後方に押され、延出部41b,41bが後方へ撓む。土手部48b,48bの裏側の面に凹部48g,48gが形成されており、薄肉部48k,48kや受圧部材41の延出部41b,41bが後退するスペースが土手部48b,48bの裏側に確保されているから、乗員の上体が後方に沈み込むことが土手部48b,48bによって低減されることを抑制することができる。
【0079】
衝撃力が大きければ、揺動部材45a,45aが引張バネ45d,45dの引張荷重に抗して後方へ揺動し、受圧部材41が更に後退する。揺動部材45a,45aが後方へ揺動する際には、受圧部材41の後方への変位は上に向かうほど小さく、下に向かうほど大きい。
【0080】
以上のように受圧部材41が後退しても、力布取付部材52,52が左の延出部41bの軌跡を避けているから、左の延出部41bが力布取付部材52,52に当たることを抑制することができ、左の延出部41bや受圧部材41の後退が低減されることを抑制することができる。そのため、受圧部材41の後退距離を確保することができ、乗員の上体が後方に沈み込むことが力布取付部材52,52によって低減されることを抑制することができる。
【0081】
下の力布取付部材52が左の延出部41bの前端(延出端)41b1よりも前においてサイドフレーム40bに取り付けられているから、左の延出部41bの後退が下の力布取付部材52によって低減されることをいっそう抑制することができる。よって、受圧部材41の後退距離をいっそう確保することができる。
【0082】
延出部41bの後方への変位が下に向かうほど大きくても、力布取付部材52,52の上下方向の位置が左の延出部41bの下端41b2からずれているから、左の延出部41bの後退が力布取付部材52,52によって低減されることをいっそう抑制することができる。よって、受圧部材41の後退距離をいっそう確保することができる。
【0083】
上の力布取付部材52が左の延出部41bよりも上に配置され、下の力布取付部材52が左の延出部41bよりも下に配置されているから、左の延出部41bの後退が力布取付部材52,52によって低減されることをいっそう抑制することができ、受圧部材41の後退距離をいっそう確保することができる。更に延出部41bの形状の自由度が広がり、延出部41bをより大きくすることができる。延出部41bが大きいほど、乗員の上体の横からのホールド性が高くなる。
【0084】
力布取付部材52,52が張り出し部40b3の最大張り出し部位40b4から上下に避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられているから、左の延出部41bの後退が力布取付部材52,52によって低減されることをいっそう抑制することができる。更に延出部41bの形状の自由度が広がり、延出部41bをより大きくすることができ、乗員の上体の横からのホールド性を高めることができる。
【0085】
また、右の延出部41bの前端(延出端)41b1がサイドフレーム40bの前端とサイドサポート部材40dによって囲われた領域40d3内に配置されているから、右の延出部41bが後方に撓んでも、その延出部41bがサイドサポート部材40dに当たることを抑制することができる。そのため、受圧部材41の後退距離を確保することができ、乗員の上体が後方に沈み込むことがサイドサポート部材40dによって低減されることを抑制することができる。
【0086】
力布取付部材52,52がクリップであるから、力布取付部材52,52を小型化することができる。そのため、受圧部材41の後退の際に延出部41bが力布取付部材52,52に当たることを抑制することができる。
【0087】
本発明を適用可能な実施形態は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、幾つかの変形例について説明する。以下に説明する変形例は、変更個所を除いて上述した実施形態と同様である。また、以下に説明する各変形例を可能な限り組み合わせてもよい。
【0088】
〔変形例1〕
上述の実施の形態では、上の力布取付部材52が左の延出部41bの上端41b3から上に避けた位置おいてサイドフレーム40bに取り付けられていた。それに対して変形例1では、上の力布取付部材52は、受圧部材41が自然状態にあるときにおける左の延出部41bの下端41b2から上に避けた位置であって左の延出部41bの上端41b3から下に避けた位置おいてサイドフレーム40bに取り付けられている(
図9参照)。つまり、上の力布取付部材52の上下方向の位置と左の延出部41bの上下方向の位置が揃っている。この場合、ビード41b4,41b4が形成された位置は、上の力布取付部材52から上や下にずれた位置である。そのため、左の延出部41bの後退する際にビード41b4,41b4が上の力布取付部材52に当たることを抑制することができる。
【0089】
〔変形例2〕
上述の実施形態では、1又は2の力布取付部材52,52が左のサイドフレーム40bに取り付けられていた。それに対して変形例2では、力布取付部材52の数が3以上である。力布取付部材52の数が3以上の場合でも、何れの力布取付部材52も、受圧部材41が前後に揺動する際の左の延出部41bの軌跡を避けた位置においてサイドフレーム40bに取り付けられている。
【0090】
〔変形例3〕
上述の実施の形態では、力布取付部材52,52が樹脂を成形したものであって、渦巻状部52a及び係止片部52cによってサイドフレーム40bの鉤状部40b5を把持するクリップであった。それに対して変形例3では、
図10〜
図13に示すように、力布取付部材52,52の代わりの力布取付部材53が、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス線等の線材を折り曲げたリスティングワイヤである。力布取付部材53は、サイドフレーム40bの左前において上下に延在した支持部53aと、支持部53aの上端及び下端から後方へ折れ曲がって左のサイドフレーム40bの右側(内側)及び前側に沿って延在した上下一対のアーム部53b,53bと、アーム部53b,53bの後端部から鉤状に折れ曲がったフック部53c,53cと、を有する。この力布取付部材53は、金属バー等からなる掛け止め部材54を介してサイドフレーム40b(特に、サイドフレーム本体部40b2)に取り付けられている。掛け止め部材54は、左のサイドフレーム40b(特に、サイドフレーム本体部40b2)の後端に溶接されているとともに、そのサイドフレーム40bから右に突き出ている。掛け止め部材54のうちサイドフレーム40bから右に突き出た部位が門型状(例えば、コ字状、U字状等)に形成され、力布取付部材53のフック部53c,53cが掛け止め部材54の門型部に引っ掛かる(又は絡み止められる)ことによってアーム部53b,53bの後端部が掛け止め部材54を介して左のサイドフレーム40bに取り付けられている。なお、力布取付部材53のフック部53c,53cが左のサイドフレーム40bの後端面の右側(内側)に直接引っ掛かることによって、アーム部53b,53bの後端部が左のサイドフレーム40bに取り付けられてもよい。
【0091】
力布51は、張った状態で破裂予定部49tからエアバッグモジュール50の周辺を経由して力布取付部材53の支持部53aまで架け渡されている。力布51の他方の端末51bが支持部53aによって折り返されて縫製されることによって、その端末51bが筒状に設けられ、支持部53aがその筒状部位に挿通され、これにより力布51の他方の端末51bが支持部53aに掛けられている。
【0092】
力布取付部材53は、受圧部材41が前後に揺動する際の左の延出部41bの軌跡を避けた位置に設けられている。そのため、左の延出部41bの後退が力布取付部材53によって低減されることを抑制することができる。
【0093】
横から見て、力布取付部材53がビード41b4,41b4から避けた位置に設けられている。つまり、横から見て、アーム部53b,53bがビード41b4,41b4から上下に避けている。そのため、左の延出部41bの後退する際にビード41b4,41b4が力布取付部材53に当たることを抑制することができる。
【0094】
横から見て、一方のアーム部53bが延出部41bの下端41b2から上に避けた位置にあり、他方のアーム部53bが延出部41bの下端41b2から上に避けた位置にある。そのため、左の延出部41bの後退が力布取付部材53によって低減されることをいっそう抑制することができる。
【0095】
力布取付部材53が張り出し部40b3の最大張り出し部位40b4から上に避けた位置にある。そのため、左の延出部41bの後退が力布取付部材53によって低減されることをいっそう抑制することができる。
【0096】
〔変形例4〕
上述の説明のシート1の構造を左右反転させてもよい。つまり、上述の説明のシート1に対して鏡像の関係にあるシートでもよい。