特許第5985966号(P5985966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985966ホバリング可能な航空機のための遊星歯車列
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985966
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ホバリング可能な航空機のための遊星歯車列
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/12 20060101AFI20160823BHJP
   F16H 48/10 20120101ALI20160823BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20160823BHJP
【FI】
   B64C27/12
   F16H48/10
   F16H57/04 D
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-258291(P2012-258291)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2013-139254(P2013-139254A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】11425316.4
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591069248
【氏名又は名称】アグスタウェストランド ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼッペ ガスパリーニ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ラ フォルテッツァ
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ コロンボ
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−175898(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0424341(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/12 − 27/18
F16H 48/10 − 48/11
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホバリング可能な航空機(1)のための遊星歯車列(6)であって、
第1の軸線(A)中心に回転すると共に外部歯(8)を有する太陽歯車(7)と、
内部歯(10)を有すると共に前記第1の軸線(A)と同軸上で且つ前記太陽歯車(7)に対して径方向外方に配置された固定されたリング歯車(9)と、
複数の遊星歯車(11)であって、外部歯(12)をそれぞれ有し、前記太陽歯車(7)及び前記リング歯車(9)の歯(8、10)間に挿入されると共に該歯(8、10)とかみ合い、且つ、それぞれの第2の軸線(B)中心に回転して前記第1の軸線(A)中心に旋回する複数の遊星歯車(11)と、
潤滑剤の流れ(F)を生じさせるために前記第1の軸線(A)及び前記太陽歯車(7)の周りに配置された複数のノズル(17)を有する前記潤滑剤の供給手段(16)と、を具備する遊星歯車列において、
前記流れが環状流であり、
前記供給手段(16)が、前記第1の軸線(A)の周りに延在すると共に前記ノズル(17)を有する分配器(18)を具備し、
前記分配器(18)がそれぞれの凹部を対面させながら前記第1の軸線(A)の正反対側に位置した2つの略Cの形をした管路(19)を具備することを特徴とする遊星歯車列。
【請求項2】
前記管路(19)が、前記分配器(18)の2つの半体を形成する請求項に記載の遊星歯車列。
【請求項3】
前記管路(19)の各々が、ギザギザ形状を有すると共に、一体で形成された請求項又は請求項のいずれか1つに記載の遊星歯車列。
【請求項4】
前記管路(19)の各々が、1又は複数の隣接した直線部(20)に対してそれぞれ180°よりも小さい角度を形成する複数の直線部(20)を具備する請求項に記載の遊星歯車列。
【請求項5】
前記直線部(20)の各々が、前記潤滑剤の通過流を生じさせるために前記1又は複数の隣接した直線部(20)の前記1又は複数の長手穴(21)と連通する長手穴(21)を有する請求項に記載された遊星歯車列。
【請求項6】
前記直線部(20)の各々が、隣接した直線部(20)の前記長手穴(21)に接続された1つの端部(22)を有し、且つ、対向する外方に開口した端部(23)は、外側から通過可能であると共に使用時にはそれぞれのプラグ(24)によってシールされる請求項に記載の遊星歯車列。
【請求項7】
前記管路(19)の前記直線部(20)に形成されると共に前記長手穴(21)と連通する横方向の穴によって、前記ノズル(17)が画成された請求項又は請求項のいずれか1つに記載の遊星歯車列。
【請求項8】
前記管路(19)の各々のため、前記分配器(18)が、前記管路(19)から反対方向に他の前記管路(19)へと突出すると共に前記潤滑剤のための供給口(26)を有する分岐路(25)を具備する請求項から請求項のいずれか1つに記載の遊星歯車列。
【請求項9】
前記リング歯車(9)が、前記供給手段(16)を支持する支持プレート(15)に固定された請求項1から請求項のいずれか1つに記載の遊星歯車列。
【請求項10】
ホバリング可能な航空機(1)であって、
回転翼(3)と、
駆動部材と、
前記回転翼(3)と前記駆動部材との間に挿入されると共に請求項1から請求項のいずれか1つに記載の遊星歯車列(6)を具備するトランスミッション(5)と、を具備し、
前記遊星歯車列(6)が、前記遊星歯車(11)に接続された遊星キャリア(13)を具備し、
前記太陽歯車(7)及び前記遊星キャリア(13)のいずれか一方(7)が、前記駆動部材からトルクを受け、
前記太陽歯車(7)及び前記遊星キャリア(13)の他方(13)が、前記回転翼(3)の駆動シャフトへと接続された航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転換式航空機又はヘリコプターのようなホバリング可能な航空機のための遊星歯車列に関し、以下で例示によって明確に説明される。
【背景技術】
【0002】
公知のように、ヘリコプターは、1又は複数のタービンからメイン回転翼及び/又は尾部回転翼への動力伝達のため及び/又はタービンから例として搭載設備を操作するために例えば必要エネルギーを供給する附属装置への動力伝達のため、概して複数のトランスミッションを搭載している。1つのトランスミッションは、概してタービンとメイン回転翼駆動シャフトとの間に挿入される。トランスミッションの最終減速段階は、概して回転翼シャフトへと適切なトルク及び速度で動力伝達するための遊星減速歯車である。
【0003】
遊星減速歯車は、概して固定された第1の軸線中心に回転する第1の歯車又は太陽歯車と、第1の軸線と同軸の固定された第2の歯車又はリング歯車と、太陽歯車及びリング歯車とかみ合うと共に第1の軸線と平行であるそれぞれの可動な第2の軸線中心に回転する複数の遊星歯車と、を具備する。
【0004】
上述した遊星減速歯車は、第1の軸線中心に回転すると共に遊星歯車に接続された遊星キャリアも具備する。従って、それぞれの第2の軸線中心の回転に加え、遊星歯車は、太陽歯車の第1の軸線中心の旋回も行う。より詳細には、太陽歯車は入力シャフトに接続され、遊星キャリアは回転翼シャフトに接続された出力シャフトとして駆動する。言い換えると、機械的動力は、太陽歯車を介して遊星減速歯車に入力され、遊星キャリアによって回転翼シャフトへと適切なトルク及び速度で伝達される。太陽歯車、リング歯車及び遊星歯車は、全て環状底部支持プレートに取付けられ、第1の軸線に対して径方向で且つ太陽歯車の外周縁から延在するプレートに固定される2つのバーに適合されたノズルによってオイル潤滑化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0299974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽歯車に対する2つの所定の位置におけるノズルの配置及び遊星歯車のサイズのため、ノズルからのオイル流れのための空間は極めて制限され、そのため、かみ合う太陽歯車と遊星歯車の歯への一定の潤滑剤の注入が妨げられ、その結果、特に複数のかみ合いサイクルを概して旋回ごとに実行する太陽歯車の潤滑不足となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1は、請求項1の前提部(preamble)に係る遊星歯車列を開示している。上述した欠点を安価で容易に除外するように設計されたホバリング可能な航空機のための遊星歯車列を提供することが本発明の目的である。本発明によれば、請求項1で請求されたようなホバリング可能な航空機のために提供された遊星歯車列がある。本発明は、更に請求項12で請求されたようなホバリング可能な航空機に関する。
【0008】
好適な本発明に係る制限しない実施形態は、添付された図面を参照にしつつ例示によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る遊星歯車列を具備するホバリングする航空機、特にヘリコプターの斜視図を示す。
図2図1の航空機に組み込まれた遊星歯車列の分解斜視図を示す。
図3】使用時の図2の遊星歯車列の拡大斜視図を示す。
図4】明確にするために部品を取り除いた図3の遊星歯車列の拡大斜視図を示す。
図5】明確にするために部品を取り除いた図3の遊星歯車列の拡大斜視図を示す。
図6図5の詳細の拡大斜視図を示す。
図7図6の詳細な横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1の符号1は、ホバリング可能な航空機全体を示し、例示においてヘリコプターを示す。ヘリコプター1は、概して機体2と、第1平面で回転し且つヘリコプターを全体として維持するために機体2に取付けられたメイン回転翼3と、回転翼3によって機体2の回転に抗するために機体2の後端に取付けられると共に第1平面と交差する第2平面で回転する尾部回転翼4と、を具備する。
【0011】
ヘリコプター1は、タービン(図示せず)から回転翼3の駆動シャフト(図示せず)への動力伝達のためのメイントランスミッション5と、トランスミッション5によって動力付与されると共に同様に回転翼4に動力付与する補助的トランスミッションと、を更に具備する。トランスミッション5は、概して遊星歯車列6(図2及び3)によって画成される最終段階を具備し、その遊星歯車列は、回転翼3の駆動シャフトへと適切なトルク及び角速度で動力を伝達する。例示において示された遊星歯車列6は、減速ギヤである。
【0012】
特に図2から図5を参照すると、遊星歯車列6は、概して軸線A中心に回転する外部歯8を有すると共に歯車列6が一部を形成する段階の入力シャフト(図示せず)に機能的に接続された太陽歯車7と、内部歯10を有すると共に軸線Aと同軸線上に延在する、太陽歯車7の周りの固定されたリング歯車9と、軸線Aと平行なそれぞれの軸線B中心に回転すると共に太陽歯車7及びリング歯車9とかみ合うそれぞれの外部歯12を有する複数(例示において5つ)の遊星歯車11と、軸線A中心に回転すると共に回転翼3の駆動シャフト(図示せず)に直接接続され且つ遊星歯車11に接続される遊星キャリア13と、を具備する。
【0013】
リング歯車9は太陽歯車7より径が大きく、遊星歯車11は、リング歯車9と太陽歯車7との間に挿入される。各遊星歯車11は、遊星歯車11自体の軸線B中心に回転すると共に軸線A中心に、例えば軸線Bが軸線A中心に可動となるように旋回する。機械的動力は、太陽歯車7を介して遊星歯車列6に入力され遊星キャリア13によって回転翼3のシャフトへと適切なトルク及び速度で出力される。
【0014】
より詳細には、各遊星歯車11が軸線B中心に回転すると共に軸線A中心に旋回するとき、遊星歯車11の外部歯12は、周期的に太陽歯車7の外部歯8及びリング歯車9の内部歯10とかみ合う。
【0015】
図2から図5に示されたように、リング歯車9は、リング歯車9、太陽歯車7、遊星歯車11及び遊星キャリア13の真下に配置された軸線A上の環状プレート15に固定される。図2、5、6及び7に示されたように、歯車列6は、プレート15に固定された潤滑剤(概してオイル)供給装置16も具備する。
【0016】
本発明に係る重要な特徴は、装置16が、潤滑剤(図5及び図6)の環状流Fを生じさせるため、軸線A中心に且つ太陽歯車7の周りに配置された複数のノズル17を具備することである。より詳細には、ノズル17は、軸線Aの周りに延在する分配器18に形成される。
【0017】
本発明に係る好適な実施形態において、分配器18は、それぞれの凹部を対面させながら軸線Aの正反対側に位置した2つの略Cの形をした管路19を具備する。より詳細には、管路19は、分配器18の2つの半体を形成すると共に、ギザギザ形状(jagged profile)を備えた一体型でそれぞれ形成される。
【0018】
図2、5、6及び7に示されたように、各管路19は、複数の直線部20を具備し、その各直線部20が、1又は複数の隣接した直線部20と180°以下の角度を形成し、且つ、その各直線部20が、潤滑剤の通過流を可能とするために1又は複数の隣接した直線部20の1又は複数の長手穴21に接続された長手穴21を有する。
【0019】
図5、6及び7に示したように、各直線部20は、隣接した直線部20の長手穴21に接続された1つの端部22を有し、且つ、対向する外方に開口した端部23は、外側から通過可能であると共に使用時にはそれぞれのプラグ24によってシールされる。従って、各管路19は、外側から通過可能な端部23から各直線部20に沿ってドリル加工された中実体から形成されることができ、その結果できた穴21は、次いでそれぞれのプラグ24でシールされる。
【0020】
ノズル17は、管路19の直線部20に形成されると共に長手穴21と連通する横方向の穴によって画成される。各管路19のため、分配器18は、管路19から反対方向に他の管路19へと突出すると共に潤滑剤供給口26を有する分岐路25を具備する。分岐路25は、ノズル17も有する。分配器18の管路19及び分岐路25は、下部のプレート15への組立てのための側部フランジ27を有する。
【0021】
実際の使用において、動力は、軸線A中心に回転する太陽歯車7を介して遊星歯車列6に入力される。太陽歯車7が回転するとき、遊星歯車11は、それぞれの軸線B中心に回転すると共に軸線A中心に旋回し、且つ遊星歯車11の歯12は、固定されたリング歯車9の歯10とかみ合う。従って、遊星キャリア13は、回転翼3のシャフトへと適切な速度で動力伝達するため軸線A中心に回転する。運転中、ノズル17からの潤滑剤は、任意のかみ合い状態で、太陽歯車7の外部歯8及び遊星歯車11の外部歯12を徹底的に潤滑化する。
【0022】
本発明に係る遊星歯車列6の利点は、上述した説明から明らかである。特に、太陽歯車7周りのノズル17の環状構成は、太陽歯車7及び遊星歯車11の外部歯8及び12の一定の潤滑化を可能とする。分配器18が構成される方法は、(例えば鋳造によって得られる解決法と比較して)長手穴21周りの材料厚さの最小化を提供し、従って歯車列6の全体重量を最小化し、概して溶接管部材を含む解決法に関連したシーリング問題を回避する。
【0023】
添付された特許請求の範囲で定義された保護的範囲から逸脱することなく、ここで説明され且つ図示されたような遊星歯車列6が変形されてもよいことは明らかである。特に、遊星歯車列6は、転換式航空機で使用されてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 ホバリング可能な航空機
2 機体
3 メイン回転翼
4 尾部回転翼
5 トランスミッション
6 遊星歯車列
7 太陽歯車
8 外部歯
9 リング歯車
10 内部歯
11 遊星歯車
12 外部歯
13 遊星キャリア
15 環状プレート
16 潤滑剤供給装置
17 ノズル
18 分配器
19 管路
20 直線部
21 長手穴
22 端部
23 端部
24 プラグ
25 分岐路
26 供給口
27 側部フランジ
A 軸線
B 軸線
F 流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7