(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る灯体組立装置1について説明する。
【0015】
この灯体組立装置1で組み立てられる灯体2は、第1の光学系ユニット2aと第2の光学系ユニット2bとで構成される。そして、第1の光学系ユニット2aが第2の光学系ユニット2bに対して傾動可能に結合された状態で、灯体2が所定の設置部(不図示)に設置される。第1及び第2の光学系ユニット2a,2bは、それぞれ光源とレンズ等の光学部材とを有する。灯体2としては、例えば、特許文献2に開示された車両用前照灯が対象となる。
【0016】
灯体組立装置1は、第1の光学系ユニット2aと接続され、該第1の光学系ユニット2aを傾動させる駆動部3と、第1の光学系ユニット2aを第2の光学系ユニット2bに対して固定させる固定部4と、灯体2の配光パターンを取得する配光パターン取得部5と、配光パターン取得部5からの信号に基づいて駆動部3及び固定部4を制御する制御部6とを備える。
【0017】
駆動部3は、例えば、パルスモータ3a,3b,3cを駆動源として、各モータの動力を出力するアクチュエータで構成される。光学系パルスモータ3aは、第1の光学系ユニット2aを上下方向に回動させる。俯角軸パルスモータ3b及び回転軸パルスモータ3cは、灯体2全体をそれぞれ上下方向及び左右方向に回動させる。
【0018】
ここで、第1の光学系ユニット2aを第2の光学系ユニット2bに対して傾動させる機構について説明する。
図6(a)に示すように、第1の光学系ユニット2aは、上下の連結ナット12,13を介して、第2の光学系ユニット2bに対して傾動可能に結合されている。詳細には、
図6(b)に示すように、第1の光学系ユニット2aの上部に連結ナット12が結合され、この連結ナット12は、その内部を貫通する貫通孔12a及びこれと連通する上部中央の長孔12bを備えている。貫通孔12aには、第2の光学系ユニット2bから延びた結合部22が貫通し、長孔12bを介して上記ネジ11が当該結合部22に仮止めされている。この状態で、連結ナット12を長孔12bの長手方向に動かすことにより、第1の光学系ユニット2aを傾動させることができる。
【0019】
図7(a)及び(b)に示すように、制御部6は、ガイド17の下面に沿って移動可能に支持されたステージ16と、このステージ16と連結部材15を介して連結されたチャック14とを介して第1の光学系ユニット2aを傾動させる。詳細には、制御部6が、ステージ16を
図7において左右方向で示される前後方向に移動するように駆動部3の駆動を制御することにより、チャック14に前後を挟まれた連結ナット12が前後方向に動く。これにより、第1の光学系ユニット2aは、その下部に結合した連結ナット13を介して第2の光学系ユニット2bの下端部に支持された状態で、第1の光学系ユニット2aの上部が連結ナット12と連動して動く。かくして、第1の光学系ユニット2aを第2の光学系ユニット2bに対して傾動させることができる。
【0020】
固定部4は、例えば、サーボモータにより構成され、制御部6からの固定信号に基づき、固定手段としてのネジ11を介して第1の光学系ユニット2aを第2の光学系ユニット2bに対して固定する。そのため、固定部4は、
図7(a)及び(b)に示された上方位置から下降し、下端がネジ11の頭部に係合してこれを回転させることで、ネジ11の頭部で連結ナット12を締付け固定するように配置されている。
【0021】
再び
図1を参照して、配光パターン取得部5は、例えば照度センサにより構成され、灯体2から出た光の一部を所定距離(例えば10m)離れた位置で受光し、その照度に応じた信号を制御部6に出力する。
【0022】
制御部6は、コンピュータにより構成される。コンピュータは、例えば、CPU等の演算処理装置と、ROM又はRAM等のメモリ等の記憶媒体と、A/D変換器等の入出力デバイスとから構成される。当該コンピュータは、あらかじめ記憶媒体に記録されたプログラム及びデータを演算処理装置が読みだし、当該プログラムに従って処理をするように構成されている。
【0023】
制御部6は、上記配光パターン取得部5からの入力信号に応じて、駆動部3及び固定部4の駆動を制御する信号を出力する。制御部6は、これらの信号に基づいて、後述の「配光パターン取得処理」及び「第1の光学系ユニット傾動固定処理」を行う。
【0024】
次に、
図2(a)(b)を参照して、灯体2の配光パターンについて説明する。
図2(a)において、L1は第1の光学系ユニット2aからの配光パターン、L2は第2の光学系ユニット2bからの配光パターン、Lは第1及び第2の光学系ユニット2a、2bの配光パターンを合成して形成された合成配光パターンを示す。
【0025】
図2(a)に示す合成配光パターンLは、配光パターンL1及びL2のズレがない状態であり、本実施形態の灯体組立装置1は、このような合成配光パターンLを形成するような状態で、第1の光学系ユニット2aを固定することを目標とする。
【0026】
しかし、組み立て段階においては、
図2(b)に示すように、配光パターンL1と配光パターンL2との間にズレΔLがある場合、合成配光パターンL’は所定の合成配光パターンLと異なるものとなる。
【0027】
このようなズレΔLを解消するための制御部6の一連処理を、以下説明する。
【0028】
制御部6は、まず、第1の光学系ユニット2aに対し、「配光パターン取得処理(
図5(a)参照)」を行う。
【0029】
「配光パターン取得処理」が開始されると、制御部6は、俯角軸パルスモータ3b及び回転軸パルスモータ3cを介して灯体2をそれぞれ上下方向及び左右方向に回動させて、配光パターン取得部5が、
図2(b)に示すように、配光パターンL1の上方の点SP1に位置するように調節する(
図5(a)/STEP010)。
【0030】
詳細には、制御部6が、灯体2を俯角軸パルスモータ3b及び回転軸パルスモータ3cを介してそれぞれ上下及び左右方向に回動させることにより、配光パターン取得部5が設置されている平面上の灯体2由来の配光パターンの位置が変化する。例えば、
図3(b)に示すように、灯体2を下側に傾けた場合、
図3(a)に示すように、配光パターン取得部5が位置P1に位置し、その下方に配光パターンL1が形成される。
【0031】
この状態で、制御部6が、俯角軸パルスモータ3bを介して灯体2を上方向に回動させることにより、
図3(c)に示すように、光が上方に向けられる。この場合、
図3(a)に示すように、配光パターン取得部5の位置P2は、配光パターンL1の内に位置することとなる。
【0032】
同様にして、制御部6が俯角軸パルスモータ3bを介して灯体2を上下方向に回動させることにより、配光パターン取得部5の位置は、
図3の一点鎖線上を移動することになる。また、制御部6が回転軸パルスモータ3cを介して左右方向に回動させることにより、配光パターン取得部5の位置は、配光パターンの右左方向へ移動する。
【0033】
制御部6は、灯体2をあらかじめ定めた量だけ上下及び左右方向に回動させることにより、
図2(b)に示すように、配光パターン取得部5を配光パターンL1の上方の点SP1に位置させるように調節することができる。
【0034】
STEP010の後、制御部6は、配光パターン取得部5を介して、受光した光の照度Sn(n:初期値1)を取得し、不図示の記憶装置に記憶する(
図5(a)/STEP020)。そして、制御部6は、俯角軸パルスモータ3bを介して、灯体2を上方向へ所定の角度回動させる(
図5(a)/STEP030)。
【0035】
その後、制御部6は、終了条件を判定する(
図5(a)/STEP040)。終了条件としては、例えば、灯体2の回動限界であるか否か、回動量が所定の回動量以上であるか否か、照度の変化量が所定量を超えたか否か等の種々の条件を採用することができる。
【0036】
終了条件が満たされていない場合(
図5(a)/STEP040でNO)、制御部6は、nにn+1を代入(nをインクリメント)して(
図5(a)/STEP042)、STEP020の処理を再び実行する。
【0037】
終了条件が満たされている場合(
図5(a)/STEP040でYES)、制御部6は、記憶装置(不図示)に記憶された照度Snの変化量が最大となるnを求め(
図5(a)/STEP050)、基準位置G1として該記憶装置に記憶する。この基準位置G1は、
図2(b)に示すようにカットオフライン上の点を示す。
【0038】
以上で、制御部6は「配光パターン取得処理」を終了する。
【0039】
制御部6は、第2の光学系ユニット2bに対しても同様に「配光パターン取得処理(
図5(a)参照)」を行う。制御部6は、灯体2を、点SP1の横方向にあらかじめ定めた量だけ回動させることにより、配光パターン取得部5を配光パターンL2の上方向に位置する点SP2に位置させるように調節する(
図5(a)/STEP010、
図2(b)参照)。以降、制御部6は、第1の光学系ユニット2aと同様にして(
図5(a)/STEP020〜042)、照度Snの変化量が最大となるnを求め(
図5(a)/STEP050)、基準位置G2として記憶装置(不図示)に記憶する。この基準位置G2は、
図2(b)に示すようにカットオフライン上の点に相当する。
【0040】
基準位置G1、G2を求めた後、制御部6は、「第1の光学系ユニット傾動固定処理(
図5(b)参照)」を行う。
【0041】
まず、制御部6は、基準位置G1を示すnをAとし、基準位置G2を示すnをBとして、(B−A)を差分Cとして算出する(
図5(b)/STEP110、
図4参照)。その後、所定の配光パターンにおける基準位置GR1を示すnと基準位置G2を示すnとの差分Dから差分Cを引いた値を傾動量Eとして記憶する(
図5(b)/STEP120、
図4参照)。
【0042】
制御部6は、傾動量Eの値だけ、光学系パルスモータ3aを介して第1の光学系ユニット2aを上方向へ回動させる(
図5(b)/STEP130)。この回動処理により、第1及び第2の光学系ユニット2a、2bの配光パターンを合成して形成された合成配光パターンは、
図4に示すように合成配光パターンLとなる。
【0043】
そして、制御部6は、固定部4を介して、ネジ11により、第1の光学系ユニット2aを第2の光学系ユニット2bに対して固定する(
図5(b)/STEP140)。
【0044】
本実施形態によれば、前記したように、組立中の灯体2の合成配光パターンに、
図2(b)に示すようなズレΔLがあったとしても、灯体組立装置1が人の手を煩わせることなくズレΔLを修正するから、配光パターン調節の手間を削減することができる。さらに、灯体組立装置1は、当該修正にあたって、灯体2由来の光の照度という定量的な値に基づいて第1の光学系ユニット2aを傾動させているから、手動で行うよりも精度高く配光パターンの調節を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、制御部6は、光学系パルスモータ3aを介して第1の光学系ユニット2aを傾動させたが、これに代えて、
図8に示すように、前記特許文献2に開示された車両用前照灯であって、第1の光学系ユニットの傾動装置21を内蔵させた灯体2’の組み立てに際し、制御部6は、光学系パルスモータ3aに代えて、当該傾動装置21を駆動させる駆動部3’を介して第1の光学系ユニット2a’を第2の光学系ユニット2b’に対して傾動させるように構成されてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、灯体2(の設置部)から所定距離(例えば10m)離れたところに配光パターン取得部5が配置されたが、これに代えて、
図9に示すように、光反射体30を経路上に置くことによって、灯体2由来の光が所定距離を経たところに配光パターン取得部5が配置されてもよい。このような配置により、実際に所定距離を離れた地点でなくとも配光パターンを取得できるため、灯体組立装置1の省スペース化が図られる。
【0047】
また、本実施形態では、基準位置G1及びG2を算出し、それらに基づいて「第1の光学系ユニット傾動固定処理」を行ったが、これに限られず、第1及び第2光学系ユニットの配光パターン並びにそれらの合成配光パターンに基づいて第1の光学系ユニットを傾動させ、固定してもよい。例えば、色度センサを用いてそれぞれの光学系ユニットの配光パターンにおける色度を取得し、特定の色度を有する個所をそれぞれの基準位置として、「第1の光学系ユニット傾動固定処理」を行ってもよい。
【0048】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、灯体2(の設置部)から所定距離(例えば10m)離れたところに配光パターン取得部5を配置したが、これに代えて、
図10に示すように、灯体2(設置場所)から所定距離離れたスクリーン20上に移された配光パターンLを、カメラ等の撮像装置により構成される配光パターン取得部5’により撮像してもよい。
【0049】
この場合、灯体2を回動させるための俯角軸パルスモータ3b及び回転軸パルスモータ3cは不要となる。また、この場合、「配光パターン取得処理」の代替として、制御部6は、配光パターン取得部5’により撮像した画像から公知の画像処理等によって基準位置G1及びG2を算出し、それらに基づいて「第1の光学系ユニット傾動固定処理」を行ってもよい。また、制御部6は、これらに代えて、撮像した画像から公知の画像処理等によって合成配光パターンを取得し、所定の配光パターンとのズレを画像処理等によって算出してそのズレを修正するように第1の光学系ユニットを傾動させてもよい。
【0050】
また、制御部6は、これらに代えて、第2の光学系ユニットの撮像した画像から公知の画像処理等によって取得した配光パターンを基に灯体の姿勢を整えた後、(1)第1の光学系ユニット2aを傾動させる、(2)新たに合成配光パターンLを撮像する、(3)撮像した画像から公知の画像処理等によって取得した合成配光パターンLが所定の合成配光パターンとなっているか否かを判定する、という(1)〜(3)の処理を繰り返し実行することにより、所望の配光パターンとなる第1の光学系ユニット2aの角度位置を求めてもよい。
【0051】
(他の実施態様)
組立対象の灯体は、上記の灯体2に限られない。
【0052】
例えば、
図11(a)に示すような配光パターンL1’、L2’を有する灯体であってもよい。この場合も、「配光パターン取得処理」等によって基準位置G1’及びG2’を求めることにより、「第1の光学系ユニット傾動固定処理」と同様にして第1の光学系ユニットの固定位置を求めることができる。
【0053】
また、
図11(b)に示すように、配光パターンL1’’とL2’’が重なり合う灯体であってもよい。この場合、例えば、点P1’〜P4’の照度に基づき、第1の光学系ユニットの固定位置を求めることができる。例えば、点P1’のみ所定の照度よりも低い照度で、他の点P2’〜P4’が所定の照度よりも高い照度である場合、少しずつ第1の光学系ユニットを上方にずらすことにより、所望の配光パターンを得られる。また、点P1’のみ所定の照度よりも高照度である場合、第1の光学系ユニットを大幅に下方に回動させることにより、所望の配光パターンを得られる。