(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985972
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】双方向コンバータおよびそれを用いた無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20160823BHJP
H02H 7/122 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 N
H02H7/122 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-267958(P2012-267958)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-117023(P2014-117023A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊秀
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−189633(JP,A)
【文献】
特開2007−159234(JP,A)
【文献】
特開2003−134694(JP,A)
【文献】
特開2004−088865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42− 7/98
H02H 7/00
H02H 7/10− 7/20
H02M 7/00− 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の交流ラインと直流正母線および直流負母線との間に接続され、三相交流電力と直流電力の間の双方向の電力変換を行なう双方向コンバータであって、
それぞれ前記三相の交流ラインに対応する3つの電力変換回路を備え、
各電力変換回路は、
第1のノードと対応の相の交流ラインとの間に接続された第1のトランジスタと、
対応の相の交流ラインと第2のノードとの間に接続された第2のトランジスタと、
それぞれ前記第1および第2のトランジスタに逆並列に接続された第1および第2のダイオードと、
前記第1および第2のノード間に接続された平滑コンデンサとを含み、
さらに、各電力変換回路に対応して設けられ、対応の第1のノードと前記直流正母線との間に接続された第1のヒューズと、
各電力変換回路に対応して設けられ、対応の第2のノードと前記直流負母線との間に接続された第2のヒューズと、
各電力変換回路の前記第1および第2のトランジスタのオン/オフを制御する制御部と、
前記直流正母線または前記直流負母線に流れる電流の瞬時値を検出する電流検出器と、
前記電流検出器の検出結果に基づいて、3組の前記第1および第2のヒューズのうちの少なくとも1つのヒューズが溶断されたことを検出する故障検出器とを備え、
前記故障検出器は、前記電流検出器の検出値の交流成分の大きさが予め定められたしきい値を超えた場合に前記少なくとも1つのヒューズが溶断されたと判別する、双方向コンバータ。
【請求項2】
前記電流検出器の検出値の交流成分は前記三相交流電力の周波数を有する、請求項1に記載の双方向コンバータ。
【請求項3】
前記故障検出器は、
前記電流検出器の検出値から前記交流成分を抽出するフィルタと、
前記フィルタで抽出された前記交流成分の絶対値平均を求める絶対値平均回路と、
前記絶対値平均回路によって求められた前記交流成分の絶対値平均と前記予め定められたしきい値との高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する比較器とを含む、請求項1または請求項2に記載の双方向コンバータ。
【請求項4】
前記直流正母線および直流負母線はそれぞれ電力貯蔵装置の正極および負極に接続され、
前記電力貯蔵装置を充電する場合は、前記三相の交流ラインは三相交流電源から前記三相交流電力を受け、前記双方向コンバータは、前記三相交流電源からの前記三相交流電力を前記直流電力に変換して前記電力貯蔵装置に供給し、
前記電力貯蔵装置によって負荷を駆動させる場合は、前記三相の交流ラインは前記負荷に接続され、前記双方向コンバータは、前記電力貯蔵装置からの前記直流電力を前記三相交流電力に変換して前記負荷に供給する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の双方向コンバータ。
【請求項5】
前記三相交流電源は前記三相の交流ラインを介して前記負荷に接続され、
前記三相の交流ラインに介挿され、前記三相交流電源が正常である場合は導通し、前記三相交流電源が正常でない場合は非導通になる三相スイッチと、
請求項4に記載の双方向コンバータとを備え、
前記双方向コンバータは、前記三相スイッチと前記負荷の間において前記三相の交流ラインに接続され、前記三相交流電源が正常である場合は、前記三相交流電源から前記三相スイッチを介して供給される前記三相交流電力を前記直流電力に変換して前記電力貯蔵装置に供給し、前記三相交流電源が正常でない場合は、前記電力貯蔵装置から供給される前記直流電力を前記三相交流電力に変換して前記負荷に供給する、無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は双方向コンバータおよびそれを用いた無停電電源装置に関し、特に、交流電力と直流電力の間の双方向の電力変換を行なう双方向コンバータと、それを用いた無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
双方向コンバータは、三相の交流ラインと直流正母線および直流負母線との間に接続され、三相交流電力と直流電力の間の双方向の電力変換を行なうものである。双方向コンバータは、それぞれ三相の交流ラインに対応する3つの電力変換回路を備える。各電力変換回路は、第1のノードと対応の相の交流ラインとの間に接続された第1のトランジスタと、対応の相の交流ラインと第2のノードとの間に接続された第2のトランジスタと、それぞれ第1および第2のトランジスタに逆並列に接続された第1および第2のダイオードと、第1および第2のノード間に接続された平滑コンデンサとを含む。第1および第2のノードは、それぞれ直流正母線および直流負母線に接続される。直流正母線および直流負母線は、それぞれバッテリの正極および負極に接続される。
【0003】
バッテリを充電する場合は、三相の交流ラインは三相交流電源に接続される。双方向コンバータは、三相交流電源から三相の交流ラインを介して供給される三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を直流正母線および直流負母線を介してバッテリに供給する。
【0004】
バッテリによって負荷を駆動させる場合は、三相の交流ラインは負荷に接続される。双方向コンバータは、バッテリから直流正母線および直流負母線を介して与えられる直流電力を三相交流電力に変換し、その三相交流電力を三相の交流ラインを介して負荷に供給する。
【0005】
なお、特許文献1には、インバータにおいて交流電流指令値と交流電流帰還値の偏差が設定値を超えた場合にインバータが故障したと判別する故障検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−227086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような双方向コンバータにおいて、電力変換回路が過電流によって破壊されるのを防止するため、各電力変換回路の第1のノードと直流正母線との間に第1のヒューズを介挿するとともに各電力変換回路の第2のノードと直流負母線との間に第2のヒューズを介挿する方法がある(
図1参照)。
【0008】
しかし、この方法では、バッテリの充電中に過電流によってヒューズが溶断された場合でも、平滑コンデンサに電流が流れるので、交流側の電流に変化が現われ難く、特許文献1に記載されているような方法で交流側から故障を検出することは困難であった。
【0009】
また、ヒューズが溶断された状態でバッテリの充電を継続すると、平滑コンデンサが過度に充電されて過電圧破壊される恐れがある。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、過電流から電力変換回路を保護し、故障の発生を容易に検出することが可能な双方向コンバータと、それを用いた無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る双方向コンバータは、三相の交流ラインと直流正母線および直流負母線との間に接続され、三相交流電力と直流電力の間の双方向の電力変換を行なう双方向コンバータであって、それぞれ三相の交流ラインに対応する3つの電力変換回路を備えたものである。各電力変換回路は、第1のノードと対応の相の交流ラインとの間に接続された第1のトランジスタと、対応の相の交流ラインと第2のノードとの間に接続された第2のトランジスタと、それぞれ第1および第2のトランジスタに逆並列に接続された第1および第2のダイオードと、第1および第2のノード間に接続された平滑コンデンサとを含む。この双方向コンバータは、さらに、各電力変換回路に対応して設けられ、対応の第1のノードと直流正母線との間に接続された第1のヒューズと、各電力変換回路に対応して設けられ、対応の第2のノードと直流負母線との間に接続された第2のヒューズと、各電力変換回路の第1および第2のトランジスタのオン/オフを制御する制御部と、直流正母線または直流負母線に流れる電流の瞬時値を検出する電流検出器と、電流検出器の検出結果に基づいて、3組の第1および第2のヒューズのうちの少なくとも1つのヒューズが溶断されたことを検出する故障検出器とを備える。
この故障検出器は、電流検出器の検出値の交流成分の大きさが予め定められたしきい値を超えた場合に少なくとも1つのヒューズが溶断されたと判別する。
【0013】
また好ましくは、電流検出器の検出値の交流成分は三相交流電力の周波数を有する。
また好ましくは、故障検出器は、電流検出器の検出値から交流成分を抽出するフィルタと、フィルタで抽出された交流成分の絶対値平均を求める絶対値平均回路と、絶対値平均回路によって求められた交流成分の絶対値平均と予め定められたしきい値との高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する比較器とを含む。
【0014】
また好ましくは、直流正母線および直流負母線はそれぞれ電力貯蔵装置の正極および負極に接続される。電力貯蔵装置を充電する場合は、三相の交流ラインは三相交流電源から三相交流電力を受け、双方向コンバータは、三相交流電源からの三相交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に供給する。電力貯蔵装置によって負荷を駆動させる場合は、三相の交流ラインは負荷に接続され、双方向コンバータは、電力貯蔵装置からの直流電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する。
【0015】
また、この発明に係る無停電電源装置では、三相交流電源は三相の交流ラインを介して負荷に接続される。この無停電電源装置は、三相の交流ラインに介挿され、三相交流電源が正常である場合は導通し、三相交流電源が正常でない場合は非導通になる三相スイッチと、上記双方向コンバータとを備える。双方向コンバータは、三相スイッチと負荷の間において三相の交流ラインに接続され、三相交流電源が正常である場合は、三相交流電源から三相スイッチを介して供給される三相交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に供給し、三相交流電源が正常でない場合は、電力貯蔵装置から供給される直流電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る双方向コンバータおよび無停電電源装置では、直流正母線または直流負母線に流れる電流の瞬時値を検出し、その検出
値の交流成分の大きさが予め定められたしきい値を超えた場合に少なくとも1つのヒューズが溶断され
たと判別する。したがって、過電流から電力変換回路を保護し、故障の発生を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態1による双方向コンバータの構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】
図1に示した故障検出器の原理を説明するための図である。
【
図3】
図1に示した故障検出器の構成を示す回路ブロック図である。
【
図4】実施の形態1の変更例を示す回路ブロック図である。
【
図5】この発明の実施の形態2による無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
本願の実施の形態1による双方向コンバータは、
図1に示すように、三相の交流ラインUL,VL,WLと直流正母線PLおよび直流負母線NLとの間に接続され、三相交流電力と直流電力の間の双方向の電力変換を行なうものである。
【0019】
直流正母線PLおよび直流負母線NLは、それぞれバッテリ11(電力貯蔵装置)の正極および負極に接続される。交流ラインUL,VL,WLは、それぞれU相、V相、W相に対応して設けられている。バッテリ11を充電する場合は、交流ラインUL,VL,WLは三相交流電源12に接続される。バッテリ11によって負荷を駆動させる場合は、三相交流電源12の代わりに負荷が接続される。
図1では、バッテリ11を充電する場合が示されている。
【0020】
双方向コンバータは、電力変換回路1〜3、ヒューズF1〜F6、電流検出器4,5、電圧検出器6,7、制御部8、故障検出器9、および報知部10を備える。電力変換回路1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)Q1,Q4、ダイオードD1,D4、および平滑コンデンサC1を含む。電力変換回路2は、IGBTQ2,Q5、ダイオードD2,D5、および平滑コンデンサC2を含む。電力変換回路3は、IGBTQ3,Q6、ダイオードD3,D6、および平滑コンデンサC3を含む。
【0021】
IGBTQ1〜Q3のコレクタは、それぞれノードN1〜N3に接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流ラインUL,VL,WLに接続される。IGBTQ4〜Q6のコレクタはそれぞれ交流ラインUL,VL,WLに接続され、それらのエミッタはそれぞれノードN4〜N6に接続される。ダイオードD1〜D6は、それぞれIGBTQ1〜Q6に逆並列に接続される。平滑コンデンサC1〜C3の一方端子はそれぞれノードN1〜N3に接続され、それらの他方端子はそれぞれノードN4〜N6に接続される。
【0022】
ヒューズF1〜F3の一方端子はともに直流正母線PLに接続され、それらの他方端子はそれぞれノードN1〜N3に接続される。ヒューズF4〜F6の一方端子はそれぞれノードN4〜N6に接続され、それらの他方端子はともに直流負母線NLに接続される。ヒューズF1〜F6の各々は、所定値を超える値の電流が流れると溶断する。ヒューズF1〜F6は、それぞれIGBTQ1〜Q6が過電流によって破壊されるのを防止するために設けられている。
【0023】
電流検出器4は、直流正母線PLに流れるバッテリ電流Ibの瞬時値を検出し、検出値を示す信号φ4を制御部8および故障検出器9に与える。電流検出器5は、交流ラインULに流れるU相電流Iuの瞬時値を検出し、検出値を示す信号φ5を制御部8に与える。
【0024】
電圧検出値6は、直流正母線PLおよび直流負母線NL間の電圧すなわちバッテリ11の端子間電圧Vbの瞬時値を検出し、検出値を示す信号φ6を制御部8に与える。電圧検出値7は、交流ラインUL,VLの線間電圧Vuvの瞬時値を検出し、検出値を示す信号φ7を制御部8に与える。
【0025】
制御部8は、電流検出器4,5および電圧検出器6,7の出力信号φ4〜φ7と故障検出器9からの故障検出信号φ9とに基づいて、IGBTQ1〜Q6を制御する。すなわち、制御部8は、バッテリ11を充電する場合は、線間電圧Vuv(信号φ7)に同期して動作し、IGBTQ1〜Q6の各々を所定のタイミングでオン/オフさせる。これにより、三相交流電源12から交流ラインUL,VL,WLを介して与えられる三相交流電力は電力変換回路1〜3によって直流電力に変換され、その直流電力は直流正母線PLおよび直流負母線NLを介してバッテリ11に供給される。このとき、バッテリ11に流れる電流Ib(信号φ4)は所定の上限値以下の値に制限される。また、バッテリ11の端子間電圧Vb(信号φ6)が所定の直流電圧値に到達すると充電は停止される。
【0026】
また、制御部8は、三相交流電源12の代わりに接続された負荷に三相交流電力を供給するためにバッテリ11を放電する場合は、IGBTQ1〜Q6の各々を所定のタイミングでオン/オフさせる。これにより、バッテリ11から直流正母線PLおよび直流負母線NLを介して与えられる直流電力は電力変換回路1〜3によって三相交流電力に変換され、その三相交流電力は交流ラインUL,VL,WLを介して負荷に供給される。
【0027】
また、制御部8は、故障検出信号φ9が活性化レベルの「H」レベルにされた場合は、平滑コンデンサC1〜C3が過電圧破壊されるのを防止するためIGBTQ1〜Q6をオフ状態に固定する。
【0028】
故障検出器9は、電流検出器4の出力信号φ4に基づいて、ヒューズQ1〜Q6のうちの少なくとも1つのヒューズFが溶断されたか否か判別し、溶断されたと判別した場合は故障検出信号φ9を「L」レベルから「H」レベルに立ち上げる。報知部10は、故障検出信号φ9が「H」レベルにされた場合は、音、光などにより、故障が発生したことをユーザに報知する。ユーザは、故障を修理し、溶断されたヒューズFを新しいヒューズFと交換する。
【0029】
次に、故障検出器9がヒューズF1〜F6のうちの少なくとも1つのヒューズFが溶断されたか否かを判別する方法の原理について説明する。
図2(a)は交流ラインUL,VLの線間電圧Vuvの波形を示し、
図2(b)は交流ラインULに流れるU相電流Iuの波形を示し、
図2(c)はコンデンサC1〜C3の端子間電圧VC1〜VC3を示し、
図2(d)はバッテリ電流Ibの波形を示している。
図2(a)〜(d)では、0.2秒の時点でヒューズF1が溶断された場合が示されている。
【0030】
図2(a)〜(d)において、線間電圧VuvとU相電流Iuは、ヒューズF1の溶断の前後でほとんど変わらない。これは、ヒューズF1が溶断されても平滑コンデンサC1に電流が流れるからである。また、ヒューズF1が溶断していない場合は、コンデンサC1〜C3はバッテリ11に並列接続されているので、コンデンサC1〜C3の端子間電圧VC1〜VC3は等しく、ほぼ一定である。ヒューズF1が溶断されるとコンデンサC1がバッテリ11の正極から切り離され、コンデンサC1の端子間電圧VC1に交流成分が現われるとともにVC1が徐々に低下する。VC1の交流成分は、三相交流電力の周波数(線間電圧Vuvの周波数)と同じ周波数(たとえば50Hzまたは60Hz)である。
【0031】
また、ヒューズF1が溶断されていない場合は、バッテリ電流Ibには小さな脈動成分が現われる。この脈動成分は、三相交流電力の周波数(線間電圧Vuvの周波数)の3倍の周波数を有する。ヒューズF1が溶断されると電流変換回路1がバッテリ11の正極から切り離される。これにより、IGBTQ1がオンするタイミングでもヒューズF1に電流が流れなくなり、バッテリ電流Ibに交流成分が発生するとともにバッテリ電流Ibが低下する。バッテリ電流Ibの交流成分は、三相交流電力の周波数(線間電圧Vuvの周波数)に等しくなる。
【0032】
ここでは、ヒューズF1が溶断された場合について説明したが、他のヒューズF2〜F6のうちのいずれかのヒューズが溶断された場合でもバッテリ電流Ibに交流成分が発生するとともにバッテリ電流Ibが低下する。そこで、本願発明では、バッテリ電流Ib(信号φ4)の交流成分のレベルに基づいてヒューズが溶断されたか否かを判別する。
【0033】
図3は、故障検出器9の構成を示す回路ブロック図である。
図2において、故障検出器9は、高域通過フィルタ(HPF)20、絶対値平均回路(ABS)21、および比較器22を含む。高域通過フィルタ20は、電流検出器4の出力信号φ4(バッテリ電流Ib)のうちの直流成分を除去し、交流成分を通過させる。絶対値平均回路21は、高域通過フィルタ20を通過した信号φ4の交流成分の絶対値平均を求める。
【0034】
比較器22は、絶対値平均回路21によって求められた交流成分の絶対値平均と所定のしきい値VTとの高低を比較し、比較結果を示す信号φ9を出力する。信号φ9は、交流成分の絶対値平均が所定のしきい値VTよりも低い場合は「L」レベルにされ、交流成分の絶対値平均が所定のしきい値VTよりも高い場合は「H」レベルにされる。
図2(d)で示したように、ヒューズF1が溶断されると、バッテリ電流Ibの交流成分が増大する。したがって、比較器22の出力信号φ9に基づいて、ヒューズFが溶断されたか否かを判別することができる。
【0035】
この実施の形態1では、直流正母線PLに流れるバッテリ電流Ibの瞬時値を検出し、その検出結果に基づいて少なくとも1つのヒューズFが溶断されたか否かを判別する。したがって、電力変換回路1〜3が過電流によって破壊されるのを防止することができ、かつ故障の発生を容易に検出することができる。
【0036】
なお、本実施の形態1では、直流正母線PLに流れるバッテリ電流Ibに基づいてヒューズFが溶断されたか否かを判別したが、直流負母線NLに流れるバッテリ電流Ibに基づいてヒューズFが溶断されたか否かを判別してもよいことはいうまでもない。
【0037】
図4は、本実施の形態1の変更例を示す回路ブロック図であって、
図3と対比される図である。
図4を参照して、この変更例では、故障検出器9の高域通過フィルタ20が帯域通過フィルタ(BPF)23で置換される。帯域通過フィルタ23は、電流検出器4の出力信号φ4のうちの、三相交流電力の周波数を含む所定の帯域の信号成分を通過させる。ヒューズFが溶断されたときにバッテリ電流Ibに現れる交流成分の周波数は三相交流電力の周波数に等しいので、この変更例でもヒューズFが溶断されたか否かを判別することができる。
【0038】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2による無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図5において、この無停電電源装置は、双方向コンバータ30、三相スイッチ31、および停電検出器32を備える。双方向コンバータ30は、実施の形態1で示した双方向コンバータと同じ構成である。
【0039】
三相交流電源12は、交流ラインUL,VL,WLを介して負荷33に接続されている。双方向コンバータ30は、直流正母線PLおよび直流負母線NLを介してバッテリ11の正極および負極に接続されるとともに、三相スイッチ31と負荷33の間の交流ラインUL,VL,WLに接続されている。
【0040】
停電検出器32は、三相交流電源12と三相スイッチ31との間の交流ラインUL,VL,WLに接続され、三相交流電源12から三相交流電力が正常に供給されているか否かを判別し、判別結果を示す信号φ33を出力する。信号φ33は、三相交流電源12から三相交流電力が正常に供給されている場合は「L」レベルにされ、三相交流電源12から三相交流電力が正常に供給されていない場合、たとえば停電した場合は「H」レベルにされる。信号φ32は、三相スイッチ31および双方向コンバータ30に与えられる。
【0041】
三相スイッチ31は、停電検出器32の出力信号φ32が非活性化レベルの「L」レベルである場合は導通し、信号φ32が活性化レベルの「H」レベルである場合は非導通になる。
【0042】
双方向コンバータ30は、停電検出器32の出力信号φ32が非活性化レベルの「L」レベルである場合は、三相交流電源12から三相スイッチ31および交流ラインUL,VL,WLを介して供給される三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を直流正母線PLおよび直流負母線NLを介してバッテリ11に供給する。
【0043】
また、双方向コンバータ30は、停電検出器32の出力信号φ32が活性化レベルの「H」レベルである場合は、バッテリ11から直流正母線PLおよび直流負母線NLを介して供給される直流電力を三相交流電力に変換し、その三相交流電力を交流ラインUL,VL,WLを介して負荷33に供給する。
【0044】
次に、この無停電電源装置の動作について説明する。三相交流電源12が正常である場合は、停電検出器32の出力信号φ32が「L」レベルになり、三相スイッチ31が導通し、三相交流電源12から三相交流電力が三相スイッチ31を介して負荷33に供給され、負荷33が駆動される。また、三相交流電力は、双方向コンバータ30によって直流電力に変換されてバッテリ11に蓄えられる。
【0045】
バッテリ11の充電中にヒューズFが溶断された場合は、双方向コンバータ30の運転が停止され、報知部10によって双方向コンバータ30が故障したことがユーザに報知される。ユーザは、双方向コンバータ30の故障を修理するとともに溶断したヒューズFを新しいヒューズFと交換する。したがって、双方向コンバータ30が故障したことが停電時に発覚して負荷33の運転が停止される事態を回避することができる。
【0046】
また、三相交流電源12が故障して停電が発生した場合は、停電検出器32の出力信号φ32が「H」レベルになり、三相スイッチ31が非導通になり、三相交流電源12と負荷33とが切り離される。同時に、バッテリ11の直流電力が双方向コンバータ30によって三相交流電力に変換されて負荷33に供給される。したがって、停電時でもバッテリ11に直流電力が蓄えられている期間は負荷33の運転を継続することができる。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
UL,VL,WL 交流ライン、PL 直流正母線、NL 直流負母線、1〜3 電力変換回路、F1〜F6 ヒューズ、4,5 電流検出器、6,7 電圧検出器、8 制御部、9 故障検出器、10 報知部、11 バッテリ、12 三相交流電源、Q1〜Q6 IGBT、D1〜D6 ダイオード、C1〜C3 平滑コンデンサ、20 高域通過フィルタ、21 絶対値平均回路、22 比較器、23 帯域通過フィルタ、30 双方向コンバータ、31 三相スイッチ、32 停電検出器、33 負荷。