(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<用語及び記号の定義>
本明細書における用語及び記号の定義は下記の通りである。
(1)偏光板の透過率
透過率(T)は、JlS Z 8701−1995の2度視野に基づく、三刺激値のY値である。
(2)屈折率(nx、ny、nz):
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(3)面内の位相差値:
面内の位相差値(Re[λ])は、23℃で波長λ(nm)における面内の位相差値をいう。Re[λ]は、サンプルの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求められる。
(4)厚み方向の位相差値:
厚み方向の位相差値(Rth[λ])は、23℃で波長λ(nm)における厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、サンプルの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求められる。
(5)厚み方向の複屈折率:
厚み方向の複屈折率(Δn
xz[λ])は、式;Rth[λ]/dにより算出される値である。ここで、Rth[λ]は、23℃で波長λ(nm)における厚み方向の位相差値を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す。
(6)Nz係数:
Nz係数は、式;Rth[590]/Re[590]により算出される値である。
(7)本明細書において、「nx=ny」又は「ny=nz」と記載するときは、これらが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、例えば、nx=nyと記載する場合は、Re[590]が10nm未満である場合を包含する。
(8)本明細書において「実質的に直交」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、90°±2°である場合を包含し、好ましくは90°±1°である。「実質的に平行」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、0°±2°である場合を包含し、好ましくは0°±1°である。
(9)本明細書において、例えば、添え字の「1」は第1の保護層を表し、添え字の「2」は第2の保護層を表す。
【0010】
<A.偏光板の概要>
図1は、本発明の偏光板の概略断面図である。この偏光板50は、偏光子10と、偏光子10の一方の側に配置された第1の保護層21と、偏光子10の他方の側に配置された第2の保護層22とを備える。上記第1の保護層21は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を、反射させる機能を有する。
【0011】
上記偏光板の厚みは、好ましくは10μm〜500μmであり、さらに好ましくは30μm〜300μmである。
【0012】
実用的には、上記偏光板50の各構成部材の間には、任意の接着層が設けられ得る。上記「接着層」とは、隣り合う部材との面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。上記接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート剤が形成され、その上に接着剤層又は粘着剤層が形成されたような多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0013】
図2は、好ましい実施形態における本発明の偏光板の概略斜視図である。第1の保護層21は、分離された直交する2つの偏光成分のうち、一方の偏光成分を透過させる軸方向(透過軸方向4)と、他方の偏光成分を反射させる軸方向(反射軸方向3)とを有する。偏光子10は、吸収軸方向1と透過軸方向2とを有する。第2の保護層は、遅相軸方向22を有する。偏光子10の透過軸方向2と、第1の保護層21の透過軸方向4とは、実質的に平行である。図示例では、偏光子10の吸収軸方向1と、第2の保護層22の遅相軸方向5とが、実質的に直交である場合を示しているが、これは、実質的に平行であってもよいし、直交でも平行でもない関係であってもよい。以下、本発明の構成部材の詳細について説明するが、本発明は、下記の特定の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
<B.偏光子>
本発明に用いられる偏光子は、任意の適切なものが選択され得る。好ましくは、上記偏光子は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を、吸収する機能を有する。
【0015】
上記偏光子の透過率(T)は、好ましくは40%〜45%であり、さらに好ましくは41%〜45%である。上記偏光子の偏光度(P)は、好ましくは99%以上であり、さらに好ましくは99.5%以上である。T及びPを、上記範囲にすることによって、より一層、コントラスト比が高い液晶表示装置を得ることができる。
【0016】
上記透過率(T)及び偏光度(P)は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製
製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光板の平行透過率(H
0)及び直交透過率(H
90)を測定し、式:偏光度(%)={(H
0−H
90)/(H
0+H
90)}
1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H
0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。また、上記直交透過率(H
90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701−1995の2度視野に基づく、三刺激値のY値である。
【0017】
1つの実施形態において、上記偏光子は、二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂の延伸フィルムである。本明細書において「二色性色素」とは、色素分子の長軸方向の遷移モーメントが、短軸方向に比べて大きい、または短軸方向の遷移モーメントが、長軸方向に比べて大きい色素をいう。
【0018】
上記の延伸フィルムは、例えば、特開2004−341515号に記載されているように、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを、膨潤させた後、二色性色素に染色しながら、元長の4倍〜6倍に延伸することによって得ることができる。
【0019】
上記二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂の延伸フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜100μmであり、さらに好ましくは10μm〜50μmである。
【0020】
上記二色性色素としては、ヨウ素や、二色性染料等が挙げられる。上記二色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジSおよびファーストブラック等が挙げられる。
【0021】
上記二色性染料の含有量は、好ましくは1重量%〜10重量%である。上記二色性染料が、ヨウ素である場合、そのヨウ素含有量は、好ましくは1.5重量%〜5.0重量%である。偏光子のヨウ素含有量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の透過率と、偏光度が得られ得る。
【0022】
好ましくは、二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂の延伸フィルムは、カリウム及び/又はホウ素をさらに含有する。上記カリウム含有量は、好ましくは0.2重量%〜1.0重量%である。上記ホウ素含有量は、好ましくは0.5重量%〜3.0重量%である。カリウム含有量及びホウ素含有量を上記範囲とすることによって、好ましい範囲の透過率と、偏光度が高い偏光板を得ることができる。
【0023】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは95.0モル%〜99.9モル%である。上記ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。ケン化度が上記範囲であるポリビニルアルコール系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。
【0024】
別の実施形態において、上記偏光子は、配向させたリオトロピック液晶の固化層又は硬化層である。本明細書において「リオトロピック液晶」とは、温度や溶質(液晶化合物)の濃度を変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こすものをいう。「固化層」は、軟化、溶融又は溶液状態の液晶性組成物を冷却して固まった状態のものをいい、「硬化層」は、液晶性組成物の一部又は全部が、熱、触媒、光及び/又は放射線により架橋されて、不溶不融又は難溶難融の状態となったものをいう。
【0025】
上記の配向させたリオトロピック液晶の固化層又は硬化層は、吸収二色性に優れるため、厚みを薄くすることができる。上記固化層又は硬化層の厚みは、好ましくは0.1μm〜10μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜5μmである。
【0026】
上記の配向させたリオトロピック液晶の固化層又は硬化層は、例えば、リオトロピック液晶と溶媒(例えば、水)とを混合し、ネマチック液晶相を示す溶液を調整し、該溶液を基材の表面に流延し、乾燥させて得ることができる。
【0027】
上記溶液の濃度は、用いるリオトロピック液晶の種類によって、液晶相を示す範囲に適宜、調整され得る。上記溶液のリオトロピック液晶の濃度は、好ましくは5重量%〜40重量%である。
【0028】
上記リオトロピック液晶が、溶液状態において示す液晶相としては、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相などが挙げられる。好ましくは、ネマチック液晶相である。なお、これらの液晶相は、偏光顕微鏡で観察される液晶相の光学模様によって、確認、識別することができる。
【0029】
上記リオトロピック液晶は、好ましくは、波長400nm〜780nmのいずれかの波長の光を吸収するものである。上記二色性色素は、化学構造による分類によれば、例えば、アゾ系色素、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、インダンスロン系色素、イミダゾール系色素、インジゴイド系色素、オキサジン系色素、フタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、ピラゾロン系色素、スチルベン系色素、ジフェニルメタン系色素、ナフトキノン系色素、メトシアニン系色素、キノフタロン系色素、キサンテン系色素、アリザリン系色素、アクリジン系色素、キノンイミン系色素、チアゾール系色素、メチン系色素、ニトロ系色素、ニトロソ系色素などが挙げられる。本発明においては、黒色の偏光子を得るために、異なる吸収スペクトルを有する複数の二色性色素を混合して用いることが好ましい。
【0030】
好ましくは、上記リオトロピック液晶は、アゾ系色素、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、インダンスロン系色素、イミダゾール系色素、又はそれらの混合物を含む。このような化合物は、液晶相を発現するために必要な剛直性と異方性を有し、溶液中で、安定な液晶相を示し、且つ、波長400nm〜780nmの広範囲の波長領域で光を吸収する。
【0031】
好ましくは、上記リオトロピック液晶は、−SO
3M基及び/又は−COOM基を含む多環式化合物である(ここで、Mは、対イオンを表す)。特に好ましくは、水への溶解性を向上させるために、−SO
3M基を含む多環式化合物である。上記の多環式化合物は、−SO
3M基及び/又は−COOM基を含むことによって、溶液中で、秩序性が高い会合体を形成し易くなる、このために、かかる溶液から形成されたフィルムも高い配向性を示し、結果として、光学特性に優れる偏光子を得ることができる。
【0032】
上記Mは、対イオンであり、好ましくは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、金属イオン、又は置換若しくは無置換のアンモニウムイオンである。上記金属イオンとしては、例えば、Ni
2+、Fe
3+、Cu
2+、Ag
+、Zn
2+、Al
3+、Pd
2+、Cd
2+、Sn
2+、Co
2+、Mn
2+、Ce
3+等が挙げられる。例えば、偏光子が水溶液から形成される場合、上記Mは、当初、水への溶解性を向上させる基を選択しておき、成膜後は、偏光子の耐水性を高めるために、水に不溶性又は難溶性の基に置換することもできる。
【0033】
上記の多環式化合物を用いれば、塗布方向と実質的に平行に透過軸を有する偏光子を作製することができる。このような偏光子は、延伸方向と実質的に平行に透過軸方向を有する第1の保護層と、ロール・トゥ・ロールで貼着することができるため、偏光板の生産性を大幅に向上させることができる。
【0034】
上記多環式化合物へのスルホン基の導入方法(スルホン化)は、例えば、有機化合物に、硫酸、クロロスルホン酸、又は発煙硫酸を作用させて、核の水素をスルホン基に置換する方法が挙げられる。上記有機化合物の塩は、酸の解離できる水素原子を、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンなどの1価のカチオンで置換されたものである。
【0035】
上記リオトロピック液晶は、これらの他に、例えば、特開2006−047966号公報、特開2005−255846号公報、特開2005−154746号公報、特開2002−090526号公報、特表平8−511109号公報、特表2004−528603号公報、特表2004−528603号公報、特表2004−528603号公報などに記載の化合物が用いられ得る。
【0036】
<C.第1の保護層>
本発明に用いられる第1の保護層は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を反射させる機能を有する。また、上記第1の保護層は、偏光子が収縮や膨張することを防ぐことができる。第1の保護層は、分離された直交する2つの偏光成分のうち、一方の偏光成分を透過させる軸方向(透過軸方向)と、他方の偏光成分を反射させる軸方向(反射軸方向)とを有する。
【0037】
上記第1の保護層は、液晶表示装置に白画像を表示した場合に、輝度(白輝度)を向上させるために用いられる。従来の偏光板は、輝度向上フィルムを用いることによって、白輝度を増加させることはできるが、それと同時に黒画像を表示した場合の輝度(黒輝度)が増加してしまい、結果として、高い正面方向のコントラスト比が得られないという問題があった。本発明の構成の偏光板であれば、白輝度を増加させる一方で、黒輝度の増加を最小限度に抑えることができるので、高い正面方向のコントラスト比を得ることができる。
【0038】
上記第1の保護層の、波長590nmにおける反射軸方向の反射率(R
1x[590])は、好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。上記第1の保護層の、透過軸方向の反射率(R
1y[590])は、好ましくは50%未満であり、さらに好ましくは30%以下である。なお、反射軸方向及び透過軸の反射率は、積分球アクセサリと偏光子とを備える分光光度計を用いて、第1の保護層の反射軸方向及び透過軸方向を、それぞれ入射光の偏光電界ベクトルと平行となるようにして、測定した値である。
【0039】
上記第1の保護層の、透過軸方向の透過率(T
1y[590])は、好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。上記第1の保護層の、反射軸方向の透過率(T
1x[590])は、好ましくは50%未満であり、さらに好ましくは30%以下である。なお、透過軸方向及び反射軸の透過率は、積分球アクセサリと偏光子とを備える分光光度計を用いて、第1の保護層の透過軸方向及び反射軸方向を、それぞれ入射光の偏光電界ベクトルと平行となるようにして、測定した値である。
【0040】
上記第1の保護層は、好ましくは、接着層を介して、上記偏光子に接着される。好ましくは、上記偏光子の透過軸方向と、第1の保護層の透過軸方向とは、実質的に平行である。すなわち、上記偏光子の吸収軸方向と、第1の保護層の透過軸方向とは、実質的に直交である。
好ましくは、上記第1の保護層は、熱可塑性樹脂層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを含む積層体である。代表的には、上記第1の保護層は、熱可塑性樹脂層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを交互に並べたもの(ABABAB・・・)である。上記第1の保護層を構成する層の数は、好ましくは10層〜900層であり、さらに好ましくは50層〜700層である。上記第1の保護層の総厚みは、好ましくは20μm〜800μmである。
【0041】
好ましくは、上記熱可塑性樹脂層(A)は、光学的に異方性を示す。上記熱可塑性樹脂(A)の面内の複屈折率(Δn
A)は、好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは、0.1以上であり、特に好ましくは0.15以上である。光学的な均一性の観点から、上記Δn
Aの上限値は、好ましくは0.2である。ここで、上記Δn
Aは、遅相軸方向の屈折率(nx
A)と進相軸方向の屈折率(ny
A)との差(nx
A−ny
A)を表す。
【0042】
上記熱可塑性樹脂層(B)は、好ましくは、光学的に等方性を示す。上記熱可塑性樹脂(B)の面内の複屈折率(Δn
B)は、好ましくは5×10
−4以下であり、
より好ましくは1×10
−4以下であり、特に好ましくは0.5×10
−4以下である。上記Δn
Bの下限値は、好ましくは0.01×10
−4である。ここで、上記Δn
Bは、nx
B(遅相軸方向の屈折率)とny
B(進相軸方向の屈折率)との差(nx
B−ny
B)を表す。
【0043】
上記熱可塑性樹脂層(A)のny
Aと上記熱可塑性樹脂層(B)のny
Bとは、好ましくは、実質的に同一である。ny
Aとny
Bとの差の絶対値は、好ましくは5×10
−4以下であり、
より好ましくは1×10
−4以下であり、特に好ましくは0.5×10
−4以下である。このような光学特性を有する第1の保護層は、偏光成分を反射させる機能に優れる。なお、上記熱可塑性樹脂層(B)が、完全に等方性である場合は、上記ny
Bは、ny
Aと同一方向の屈折率を表す。
【0044】
上記の第1の保護層は、例えば、特表2000−506989号に記載されているように、2種類の樹脂を共押出し、その押出フィルムを延伸して作製される。このような方法によれば、熱可塑性樹脂層(A)が光学的に異方性を示し、延伸方向と実質的に平行に遅相軸が発現する。そして、延伸条件と適宜、設定することにより、上記熱可塑性樹脂層(A)のny
Aと上記熱可塑性樹脂層(B)のny
Bとを実質的に同一とすることができる。結果として、延伸方向に対して平行に、反射軸を有する層を作製することができる。
【0045】
上記熱可塑性樹脂層(A)を形成する樹脂としては、任意の適切なものが選択され得る。上記熱可塑性樹脂層(A)は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、又はこれらの混合物を含む。これらの樹脂は、延伸による複屈折の発現性に優れ、延伸後の複屈折の安定性に優れる。
【0046】
上記熱可塑性樹脂層(B)としては、任意の適切なものが選択され得る。上記熱可塑性樹脂層(B)は、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレングリシジルメタクリレート系樹脂、又はこれらの混合物を含む。上記の樹脂は、屈折率を高めるために、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン基が導入されていてもよい。あるいは、上記の樹脂は、屈折率を調整するために、任意の添加剤を含有し得る。
【0047】
上記第1の保護層は、市販の輝度向上フィル
ムをそのまま用いることができる。市販の輝度向上フィルムとしては、例えば、住友スリーエム(株)製 ビキュイティDBEFシリーズ等が挙げられる。
【0048】
<D.第2の保護層>
本発明に用いられる第2の保護層は、上記偏光子の第1の保護層が配置される側とは反対側に配置される。上記第2の保護層は、上記偏光子が収縮や膨張することを防ぐことができる。上記第2の保護層は、好ましくは、接着層を介して、上記偏光子に接着される。
【0049】
上記第2の保護層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。上記第2の保護層の厚みは、好ましくは10μm〜200μmである。上記第2の保護層の波長590nmにおける透過率(T
2[590])は、好ましくは90%以上である。
【0050】
上記第2の保護層の面内及び厚み方向の位相差値は、目的に応じて、適宜、設定され得る。上記第2の保護層の、波長590nmにおける面内の位相差値(Re
2[590])は、好ましくは10nm〜400nmであり、さらに好ましくは40nm〜400nmである。上記第2の保護層の、波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth
2[590])は、好ましくは10nm〜800nmであり、さらに好ましくは40nm〜800nmである。上記のように、第2の保護層に位相差を付与することによって、本発明の偏光板を液晶表示装置に用いた場合、正面方向だけでなく、斜め方向も高いコントラスト比を得ることができる。なお、上記第2の保護層は、目的によっては、等方性であってもよい。
【0051】
好ましくは、上記第2の保護層の遅相軸方向は、上記偏光子の吸収軸方向と実質的に平行又は直交である。このような光学軸の位置関係を有する偏光板は、ノーマリーブラック方式の液晶表示装置に好ましく用いられる。
【0052】
1つの実施形態において、本発明の偏光板が、バーティカルアライメントモードのようなホメオトロピック配向した液晶層を備える液晶セルに用いられる場合、上記第2の保護層の屈折率楕円体は、好ましくは、nx≧ny>nzの関係を満足する。この場合、該第2の保護層の遅相軸方向は、好ましくは、隣接する偏光子の吸収軸方向と、実質的に直交である。別の実施形態において、本発明の偏光板が、インプレーンスイッチングモードのようなホモジニアス配向した液晶層を備える液晶セルに用いられる場合、上記第2の保護層の屈折率楕円体は、好ましくは、nx≧nz>nyの関係を満足する。この場合、該第2の保護層の遅相軸方向は、好ましくは、隣接する偏光子の吸収軸方向と、実質的に直交である。
【0053】
上記第2の保護層を形成する材料としては、任意の適切なものが選択され得る。好ましくは、上記第2の保護層は、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選択される、少なくとも1種の樹脂を含有する。本明細書において「樹脂」は、1種類のモノマーから得られる単独重合体であってもよいし、2種類以上のモノマーから得られる共重合体であってもよい。上記第2の保護層は、上記の樹脂を、全固形分100重要部に対して、好ましくは60重量部〜100重量部含有する。
【0054】
上記セルロース系樹脂は、例えば、特開平7−112446号公報に記載の方法によって得ることができる。上記ノルボルネン系樹脂は、例えば、特開2001−350017号公報に記載の方法によって得ることができる。上記ポリイミド系樹脂は、米国特許第5,344,916号に記載の方法によって得ることができる。上記ポリエステル系樹脂は、例えば、米国特許第6,964,795号に記載の方法によって得ることができる。上記アクリル系樹脂は、例えば、特開2004−198952号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0055】
上記第2の保護層を形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。成形加工法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等が挙げられる。
【0056】
上記第2の保護層は、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、市販のフィルムに延伸処理及び/又は収縮処理などの2次的加工を施したものを用いることができる。市販のフィルムは、例えば、富士写真フィルム(株)製 フジタックシリーズ(商品名;ZRF80S,TD80UF,TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製 商品名「KC8UX2M」、オプテス(株)製 ゼオノアシリーズ、JSR(株)製 アートンシリーズ等が挙げられる。
【0057】
<E.製法>
本発明の偏光板の製造方法としては、任意の適切な方法が選択され得る。1つの実施形態において、本発明の偏光板は、以下の工程A
1〜工程D
1を含む製造方法により、作製されることが好ましい。
工程A
1:リオトロピック液晶と溶媒とを含有し、液晶性を示す溶液を調製する工程、
工程B
1:上記工程A
1で調整した溶液を、長尺状の基材の表面に一方向に塗布して、リオトロピック液晶の固化層又は硬化層を形成する工程、
工程C
1:熱可塑性樹脂層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを含む混合樹脂を長尺状のフィルムに成形し、該フィルムを、透過軸が長手方向に発現するように延伸する工程、
工程D
1:上記工程B
1で得られた長尺状の基材と、工程C
1で得られた長尺状のフィルムを、上記リオトロピック液晶の固化層又は硬化層が、該基材と該フィルムに挟持されるように、且つ、長手方向が一致するように積層する工程。
【0058】
このような製法であれば、長手方向に透過軸と有する偏光子と、長手方向に透過軸を有する第1の保護層とを、ロール・トゥ・ロールで貼着することができるため、偏光板の生産性を大幅に向上させることができる。
【0059】
別の実施形態において、本発明の偏光板は、以下の工程A
2〜工程C
2を含む製造方法により、作製されることが好ましい。
工程A
2:二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂の長尺状のフィルムを長手方向に延伸する工程、
工程B
2:熱可塑性樹脂層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを含む混合樹脂を長尺状のフィルムに成形し、該フィルムを、透過軸が幅方向に発現するように延伸する工程、
工程C
2: 上記工程A
2で得られた長尺状のフィルムと、工程B
2で得られた長尺状のフィルムを、長手方向が一致するように積層する工程。
【0060】
このような製法であれば、幅方向に透過軸と有する偏光子と、幅方向に透過軸を有する第1の保護層とを、ロール・トゥ・ロールで貼着することができるため、偏光板の生産性を大幅に向上させることができる。
【0061】
<F.他の層>
本発明の偏光板は、任意の構成部材をさらに含んでいてもよい。
図1を参照すると、第2の保護層22の偏光子10を備える側とは反対側、或いは第2の保護層21の偏光子10を備える側とは反対側には、任意の部材が配置され得る。
【0062】
1つの実施形態において、第2の保護層22の、偏光子10を備える側とは反対側に、接着層をさらに備える。上記接着層は、例えば、液晶表示装置に用いる場合、第2の保護層が液晶セルに対向するように、液晶セルの表面に貼着するために用いられる。
【0063】
上記接着層は、特に制限はないが、好ましくは、粘着剤層を備える。一般的に、液晶表示装置は、出荷前に検査が行われる。このとき、偏光板自体に欠陥があったり、偏光板と液晶セルとの間に異物が混入していたりする場合、液晶セルを再利用するために、当該偏光板は剥離される(リワークともいう)。上記粘着剤層は、リワークが可能なように、接着性と剥離性に優れるものが好ましい。
【0064】
好ましくは、粘着剤層は、(メタ)アクリレート系(コ)ポリマーと、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤と、シランカップリング剤とを少なくとも配合した組成物を架橋させて得られ得る粘着剤を含む。
【0065】
別の実施形態において、第2の保護層22の、偏光子10を備える側とは反対側に、位相差層をさらに備える。例えば、本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合、上記位相差層の屈折率楕円体は、液晶表示装置に搭載される液晶セルの屈折率楕円体によって、適宜、設定される。例えば、本発明の偏光板が、バーティカルアライメントモードのような液晶セル(屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を示すもの)に用いられる場合、上記位相差層の屈折率楕円体は、好ましくは、nx=ny>nzの関係を満足する(すなわち、当該位相差層は、ネガティブCプレートである)。あるいは、ヘンドネマチックモードやツイスティッドネマチックモードのような液晶セル(液晶セル中、液晶分子の配向方向が厚み方向に段階的に変化するもの)に用いられる場合、上記位相差層は、好ましくは、ポジティブOプレート又はネガティブOプレートである。
【0066】
<G.液晶表示装置>
本発明の偏光板は、好ましくは液晶表示装置に用いられる。この液晶表示装置の用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0067】
好ましくは、本発明の液晶表示装置の用途は、テレビである。上記テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0068】
本発明について、以上の実施例及び比較例を用いて更に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光子の透過率、偏光度:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて測定した。透過率(T)は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
(2)二色比(DR)の測定方法:
積分球付き分光光度計[(株)日立製作所製 製品名「U−4100」]を用いて、グラントムソンプリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、各直線偏光に対する透過率;k
1及びk
2を求めた。単体透過率(Ts)は、式;Ts=(k
1+k
2)/2より算出した。二色比(DR)は、式;DR=log(1/k
2)/log(1/k
1)により算出した。ここで、k
1は、最大透過率方向の直線偏光の透過率を表し、k
2は、最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を表す。
(
3)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(
4)位相差値(Re[λ]、Rth[λ])、Nz係数、T[590]の測定方法:
王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−M4」]を用いて測定した値を用いた。
(
5)光弾性係数の絶対値(C[590])の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、サンプル中央の位相差値(23℃/波長590nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
【0069】
偏光子の作製
[参考例1]
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ(株)製 商品名「VF−PS#7500」)を30℃の純水で膨潤させた後、0.032重量部のヨウ素と、水100重量部に対し、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む水溶液中で、染色しながら、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して、6.2倍となるように延伸した。この延伸フィルムを40℃の空気循環式乾燥オーブン内で1分間乾燥させた。このようにして得られた偏光子Aは、厚み=25μm、透過率=42.6%、偏光度=99.99%であった。
【0070】
[参考例2]
スルホン化されたペリレン系色素を含有する二色性色素(OPTIVA社製 商品名「LCポラライザー」)と、純水とを含み、上記二色性色素の濃度が12.2重量%に調整した水溶液を、バーコーターを用いて塗工し、自然乾燥させて、トリアセチルセルロースフィルムの表面に偏光子を作製した。このようにして得られた偏光子Bは、厚み=0.2μm、単体透過率=42.1%、二色比(於600nm)=35であった。なお、上記水溶液は、偏光顕微鏡観察すると、23℃でネマチック液晶相を示した。
【0071】
第1の保護層の作製
[参考例3]
ポリエチレンナフタレート75重量%と、シンジオタクティックポリスチレン25重量%とを含む混合樹脂を、溶融押出法にて、厚み600μmのフィルムを成形した。ポリエステルフィルム用幅出機を用いて、得られたフィルムを135℃で、幅方向に延伸した。このようにして得られたフィルム(第1の保護層A)は、幅方向に反射軸を、機械方向に透過軸を有し、厚み=400μm、R
1x[590]=73%であり、透過軸方向の反射率(R
1y[590])は35%であった。
【0072】
第2の保護層の作製
[参考例4]
厚み100μmのノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム[(株)オプテス製
商品名「ゼオノア ZF14−100」]を、テンター延伸機を用いて、固定端横一軸延伸法(長手方向を固定し、幅方向に延伸する方法)により、150℃の空気循環式恒温オーブン内で、2.7倍に延伸した。このようにして得られた位相差フィルム(第2の保護層A)は、屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を示し、厚み35μm、T[590]=91%、Re[590]=120nm、Rth[590]=160nm、Nz係数=1.33、C[590]=5.1×10
−12m
2/Nであった。
【0073】
位相差層の作製
[参考例5]
上記ポリイミド粉末(6FDA/TFMB)をメチルイソブチルケトンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。このポリイミド溶液を、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製 商品名「TD80UF」]の表面に、スロットダイコーターにてシート状に均一に流延した。次に、該フィルムを多室型の空気循環式乾燥オーブン内へ投入し、80℃で2分間、135℃で5分間、150℃で10分間、乾燥し、最後にトリアセチルセルロースフィルムを剥離した。このようにして得られた、ポリイミド層(位相差層A)は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示し、厚み=5μm、T[590]=90%、Re[590]=1nm、Rth[590]=210nmであった。
【0074】
偏光板の作製
[実施例1]
参考例1で作製した偏光子Aの一方の側に、ポリビニルアルコール系樹脂[日本合成化学工業(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を含む水溶性接着剤と介して、参考例3で得られた第1の保護層Aを、その透過軸方向が、該偏光子Aの透過軸方向と実質的に平行となるように、貼着した。次に、上記偏光子Aの他方の側に、上記水溶性接着剤と介して、参考例4で作製した第2の保護層Aを、その遅相軸方向が、該偏光子Aの吸収軸方向と実質的に直交するように、貼着した。次に、この第2の保護層Aの上記偏光子Aを備える側とは反対側に、アクリル系粘着剤を介して、参考例5で得られた位相差層Aを、貼着した。このようにして得られた偏光板は、液晶表示装置に用いた場合、従来の偏光板に比べて、高いコントラスト比を示した。