(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原動機と、前記原動機によって駆動される油圧ポンプと、走行用油圧モータと、前記油圧ポンプから前記走行用油圧モータへの圧油の流れを制御する走行用方向切換弁と、走行レバー又は走行ペダルと、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作に応じて前記走行用方向切換弁を切換える走行用操作装置と、運転室の乗降口に設けられ、運転者の乗降を許容するロック位置と運転者の乗降を妨げるロック解除位置に選択的に操作されるゲートロックレバーと、前記ゲートロックレバーがロック位置に操作された場合に、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作による前記走行用油圧モータの駆動を禁止し、前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作された場合に、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作による前記走行用油圧モータの駆動を可能にするロック装置とを備えた建設機械に設けられた走行警報装置において、
前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されているか否かを検出する近接スイッチ又はリミットスイッチと、
前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されているか否かを検出するロック解除検出部と、
前記原動機が駆動されているか否かを検出する原動機駆動検出部と、
走行注意を促す警報を行う警報部と、
前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出された場合であっても、前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていないことが検出されるか、前記原動機が駆動されていないことが検出された場合は、前記警報部が警報を行わず、前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出され、かつ前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていることが検出され、かつ前記原動機が駆動されていることが検出された場合に、前記警報部が警報を行うよう前記警報部を制御する警報制御部と、を備えたことを特徴とする建設機械の走行警報装置。
【背景技術】
【0002】
建設機械の一つである油圧ショベルは、複数の油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動装置を備えている。油圧ショベルの走行に係わる油圧駆動装置の構成として、例えばエンジン(原動機)と、このエンジンによって駆動される油圧ポンプと、左右の走行用油圧モータと、油圧ポンプから左走行用油圧モータへの圧油の流れを制御する左走行用方向切換弁と、油圧ポンプから右走行用油圧モータへの圧油の流れを制御する右走行用方向切換弁と、左右の走行レバー(又は走行ペダル)と、左走行レバー(又は左走行ペダル)の操作に応じて左走行用方向切換弁を切換える走行用操作装置と、右走行レバー(又は右走行ペダル)の操作に応じて右走行用方向切換弁を切換える走行用操作装置とを備えている。また、ロック位置及びロック解除位置に選択的に操作されるロックレバーと、このロックレバーがロック位置に操作された場合に、走行レバー(又は走行ペダル)の操作による走行用油圧モータの駆動を禁止し、ロックレバーがロック解除位置に操作された場合に、走行レバー(又は走行ペダル)の操作による走行用油圧モータの駆動を可能にするロック装置とを備えている。
【0003】
走行用操作装置は、例えば油圧パイロット式又は機械操作式のものが知られている。油圧パイロット式の走行用操作装置は、エンジンによって駆動されたパイロットポンプからの吐出圧を元圧とし、走行レバー(又は走行ペダル)の操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁を有している。そして、パイロット弁で生成されたパイロット圧を走行用方向切換弁の受圧部に出力して、走行用方向切換弁を切換えるようになっている。機械操作式の走行用操作装置は、走行レバーと走行用方向切換弁の間で接続されたリンク機構を有している。そして、リンク機構を介し走行レバーの動作を走行用方向切換弁に伝達して、走行用方向切換弁を切換えるようになっている。
【0004】
ロック装置としては、ロック弁又はロック機構が知られている。ロック弁は、例えば油圧パイロット式の走行用操作装置(及び他の操作装置)とパイロットポンプの間の油路に設けられるものであり、ロックレバーがロック位置に操作された場合に、パイロットポンプから操作装置への供給圧を遮断するようになっている。ロック機構は、機械操作式の走行用操作装置を構成するリンク機構に設けられるものであり、ロックレバーがロック位置に操作された場合に、リンク機構を分断するようになっている。
【0005】
上述した油圧ショベルにおいて、走行注意を促す警報を行う走行警報装置を備えたものが開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の一実施形態の走行警報装置は、左右の走行ペダルのうちの少なくとも一方が操作されているか否かを検出するために、油圧パイロット式の走行用操作装置から走行用方向切換弁に出力されたパイロット圧を、シャトル弁を介して検出する圧力スイッチを備えている。そして、左右の走行ペダルのうちの少なくとも一方が操作された場合に圧力スイッチが閉状態(オン)となり、この圧力スイッチを介しフラッシュランプに電力が供給されて、フラッシュランプが点灯する。あるいは、圧力スイッチを介しブザーに電力が供給されて、ブザーが吹鳴するようになっている。
【0006】
また、特許文献1に記載の他の実施形態の走行警報装置は、左右の走行ペダルのうちの少なくとも一方が操作されているか否かを検出するために、左右の走行ペダルの揺動をそれぞれ検出するリミットスイッチを備えている。そして、走行ペダルが操作された場合にリミットスイッチが閉状態(オン)となり、このリミットスイッチを介しフラッシュランプに電力が供給されて、フラッシュランプが点灯する。あるいは、リミットスイッチを介しブザーに電力が供給されて、ブザーが吹鳴するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の走行警報装置では、左右の走行ペダルのうちの少なくとも一方が操作されているか否かを検出するために、3つのシャトル弁及び1つの圧力スイッチを設けるか、あるいは、2つのリミットスイッチを設けている。ここで、コスト低減の観点から、3つのシャトル弁及び1つの圧力スイッチを設けるよりも、2つのリミットスイッチ(接触式スイッチ)を設けるほうが好ましい。あるいは、2つ又は1つの近接スイッチ(非接触式スイッチ)を設けるほうが好ましい。しかし、リミットスイッチ又は近接スイッチを採用する場合には課題が存在する。すなわち、例えばロックレバーがロック位置に操作されている場合あるいはエンジンが駆動されていない場合(言い換えれば、油圧ショベルが走行していない場合)でも、走行レバーが操作されると、フラッシュランプ又はブザーが作動する可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、コスト低減を図りながら不要な警報を防止することができる建設機械の走行警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原動機と、前記原動機によって駆動される油圧ポンプと、走行用油圧モータと、前記油圧ポンプから前記走行用油圧モータへの圧油の流れを制御する走行用方向切換弁と、走行レバー又は走行ペダルと、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作に応じて前記走行用方向切換弁を切換える走行用操作装置と、
運転室の乗降口に設けられ、運転者の乗降を許容するロック位置
と運転者の乗降を妨げるロック解除位置に選択的に操作される
ゲートロックレバーと、前記
ゲートロックレバーがロック位置に操作された場合に、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作による前記走行用油圧モータの駆動を禁止し、前記
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作された場合に、前記走行レバー又は前記走行ペダルの操作による前記走行用油圧モータの駆動を可能にするロック装置とを備えた建設機械に設けられた走行警報装置において、前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されているか否かを検出する近接スイッチ又はリミットスイッチと、前記
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されているか否かを検出するロック解除検出部と、前記原動機が駆動されているか否かを検出する原動機駆動検出部と、走行注意を促す警報を行う警報部と、
前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出された場合であっても、前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていないことが検出されるか、前記原動機が駆動されていないことが検出された場合は、前記警報部が警報を行わず、前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出され、かつ前記
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていることが検出され、かつ前記原動機が駆動されていることが検出された場合に、前記警報部
が警報を行
うよう前記警報部を制御する警報制御部と、を備える。
【0011】
このように本発明においては、走行レバー又は走行ペダルが中立位置から操作されているか否かを検出するために、近接スイッチ又はロックスイッチを備える。これにより、例えば特許文献1に記載のようにシャトル弁及び圧力スイッチを備える場合と比べ、コスト低減を図ることができる。さらに、本発明においては、
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されているか否かを検出するロック解除検出部と、原動機が駆動されているか否かを検出する原動機駆動検出部と、警報制御部とを備える。警報制御部は、走行レバー又は走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出され、かつ
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていることが検出され、かつ原動機が駆動されていることが検出された場合に、警報部で警報を行わせる。すなわち、例えば
ゲートロックレバーがロック位置に操作されている場合あるいはエンジンが駆動されていない場合(言い換えれば、油圧ショベルが走行していない場合)に、走行レバー又は走行ペダルが操作されても、警報部で警報を行わせない。したがって、不要な警報を防止することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記
ゲートロックレバーがロック位置に操作された場合に開状態、前記
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作された場合に閉状態となるロックスイッチを備え、前記ロック装置は、油圧パイロット式の前記走行用操作装置とパイロットポンプの間の油路に設けられ、前記ロックスイッチを介して供給される電力によって駆動する電磁操作式のロック弁であり、前記ロック解除検出部として、前記ロックスイッチを利用する。
【0013】
ロック解除検出部として既存のロックスイッチを利用することにより、コスト低減を図ることができる。
【0014】
(3)上記(1
)において、好ましくは、前記原動機によって駆動するオルタネータを備え、前記原動機駆動検出部として、前記オルタネータを利用する。
【0015】
原動機駆動検出部として既存のオルタネータを利用することにより、コスト低減を図ることができる。
【0016】
(4)上記(1
)において、好ましくは、前記警報制御部は、常開接点及びコイルを有する警報リレーを備えたリレー回路であって、前記走行レバー又は前記走行ペダルが中立位置から操作されていることが検出され、かつ前記
ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されていることが検出され、かつ前記原動機が駆動されていることが検出された場合に、前記警報リレーのコイルが通電されて前記警報リレーの接点が閉状態に切換えられるように構成されており、前記警報部は、前記警報リレーの接点を介し供給される電力によって駆動して警報を行う。
【0017】
これにより、例えば警報制御部が所定の演算・制御処理を行うコントローラで構成される場合と比べ、コスト低減を図ることができる。
【0018】
(5)上記(1
)において、好ましくは、運転者が操作可能なキャンセルスイッチを備え、前記警報制御部は、前記キャンセルスイッチの操作に応じて前記警報部の警報を停止させるように構成される。
これにより、警報を継続させる必要がなければ、運転者がキャンセルスイッチを操作して警報を停止させることができる。
【0019】
これにより、警報を継続させる必要がなければ、運転者がキャンセルスイッチを操作して警報を停止させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コスト低減を図りながら不要な警報を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本発明の適用対象である小型の油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。なお、以降、油圧ショベルが
図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(
図1中左側)、後側(
図1中右側)、左側(
図1中紙面に向かって手前側)、右側(
図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0024】
この
図1で示すように、本実施形態の油圧ショベルは、機械質量6トン未満のミニショベルである。この油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2の前側にスイングポスト3を介して連結された作業装置4とを備えている。
【0025】
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム5を備えている。トラックフレーム5の左側後端には駆動輪6が回転可能に支持され、トラックフレーム5の左側前端には従動輪(アイドラ)7が回転可能に支持され、これら左側の駆動輪6と左側の従動輪7とで左側の履帯(クローラ)8が掛けまわされている。そして、左側の走行用油圧モータ9Lの駆動によって左側の駆動輪6が回転し、ひいては左側の履帯8が回転するようになっている。
【0026】
また、図示しないが、トラックフレーム5の右側後端には駆動輪6が回転可能に支持され、トラックフレーム5の右側前端には従動輪7が回転可能に支持され、これら右側の駆動輪6と右側の従動輪7とで右側の履帯8が掛けまわされている。そして、右側の走行用油圧モータ9R(後述の
図2参照)の駆動によって右側の駆動輪6が回転し、ひいては右側の履帯8が回転するようになっている。
【0027】
トラックフレーム5の前側には、排土用のブレード10が上下動可能に設けられている。そして、ブレード用油圧シリンダ(図示せず)の駆動によってブレード10が上下動するようになっている。
【0028】
トラックフレーム5の中央部には旋回輪11が設けられ、この旋回輪11を介し上部旋回体2が旋回可能に設けられている。そして、旋回用油圧モータ(図示せず)の駆動によって上部旋回体2が左右に旋回するようになっている。
【0029】
スイングポスト3は、上部旋回体2の前側に左右方向に回動可能に設けられている。そして、スイング用油圧シリンダ(図示せず)の駆動によってスイングポスト3が左右方向に回動し、これによって作業装置4が左右にスイングするようになっている。
【0030】
作業装置4は、ブーム12、アーム13、及びバケット14を備えている。ブーム12は、スイングポスト3に上下方向に回動可能に連結されており、ブーム用油圧シリンダ15の駆動によって上下方向に回動する。アーム13は、ブーム12に上下方向に回動可能に連結されており、アーム用油圧シリンダ16の駆動によって上下方向に回動する。バケット14は、アーム13に上下方向に回動可能に連結されており、バケット用油圧シリンダ17の駆動によって上下方向に回動する。なお、バケット14(標準装備の作業具)は、オプション装備の作業具(図示せず)と交換可能になっている。
【0031】
上部旋回体2は、その下部基礎構造をなす旋回フレーム18と、この旋回フレーム18上の前方左側に設けられたキャノピータイプの運転室19と、旋回フレーム18上の運転室19以外の部分を覆う外装カバー20と、旋回フレーム18上の後側に設けられ作業装置4との釣り合いをとるためのカウンタウェイト21とを備えている。
【0032】
運転室19には、運転者が着座する運転席(座席)22が設けられている。運転席22の前方には、前後方向に操作可能な走行レバー23L,23R(
図1では走行レバー23Lのみ示す。走行レバー23Rは後述の
図2参照)が設けられている。左側の走行レバー23Lは、左側の走行用油圧モータ9Lの動作を指示し、右側の走行レバー23Rは、右側の走行用油圧モータ9Rの動作を指示するものである。なお、走行レバー23L,23Rのそれぞれには走行ペダル(図示せず)が一体的に設けられており、足でも操作可能としている。
【0033】
走行レバー23Lの左側の足元部分には、左右方向に操作可能なオプションペダル(図示せず)が設けられている。オプションペダルは、オプション装備の作業具(詳細には、オプション用油圧アクチュエータが組込まれた作業具)が取付けられた場合に、オプション用油圧アクチュエータの動作を指示するものである。走行レバー23Rの右側の足元部分には、左右方向に操作可能なスイングペダル(図示せず)が設けられている。スイングペダルは、スイング用油圧シリンダの動作を指示するものである。
【0034】
運転席22の左右両側には、十字操作式の作業レバー24L,24R(
図1中作業レバー24Lのみ示す)が設けられている。左側の作業レバー24Lは、前後方向の操作でアーム用油圧シリンダ16の動作を指示し、左右方向の操作で旋回用油圧モータの動作を指示するものである。右側の作業レバー24Rは、前後方向の操作でブーム用油圧シリンダ15の動作を指示し、左右方向の操作でバケット用油圧シリンダ17の動作を指示するものである。運転席22の右側には、前後方向に操作可能なブレードレバー(図示せず)が設けられている。ブレードレバーは、ブレード用油圧シリンダの動作を指示するものである。
【0035】
また、運転席22の左側には、ロック位置及びロック解除位置に選択的に操作可能なロックレバー25が設けられている。なお、本実施形態のロックレバー25は、運転室19の乗降口に設けられたゲートロックレバーであり、ロック位置(上昇位置)に操作された場合に運転者の乗降を許容し、ロック解除位置(下降位置)に操作された場合に運転者の乗降を妨げるようになっている。
【0036】
また、運転席22の右側には、キースイッチ26(後述の
図3参照)が設けられている。キースイッチ26は、エンジンキー(イグニッションキー)を挿入・抜出し可能とし、エンジンキーの回転操作に応じてエンジン27(後述の
図2参照)の起動・停止等を指示するものである。詳細には、エンジンキーがOFF位置からON位置に操作されると、電源オンを指示し、さらにON位置からSTART位置に操作されると、エンジン27の起動を指示する。その後、運転者がエンジンキーから手を離すと、エンジンキーがSTART位置からON位置に自動的に戻る。また、エンジンキーがON位置からOFF位置に操作されると、エンジン27の停止とともに電源オフを指示する。
【0037】
上述した下部走行体1、上部旋回体2、スイングポスト3、ブレード10、ブーム12、アーム13、及びバケット14(及び、オプション装備の作業具)は被駆動体を構成し、油圧ショベルに搭載の油圧駆動装置によって駆動されるようになっている。
図2は、油圧駆動装置の構成のうち、走行に係わる構成を表す油圧回路図である。
【0038】
この
図2で示すように、油圧駆動装置は、エンジン27(原動機)と、このエンジン27によって駆動される油圧ポンプ28及びパイロットポンプ29と、油圧ポンプ28から左側の走行用油圧モータ9Lへの圧油の流れを制御する走行用方向切換弁30Lと、左側の走行レバー23Lの操作に応じて走行用方向切換弁30Lを切換える走行用操作装置31Lとを備えている。また、油圧ポンプ28から右側の走行用油圧モータ9Rへの流れを制御する走行用方向切換弁30Rと、右側の走行レバー23Rの操作に応じて走行用方向切換弁30Rを切換える走行用操作装置31Rとを備えている。なお、走行用操作装置31L,31Rは、一体的に構成されている。
【0039】
油圧パイロット式の走行用操作装置31Lは、左側の走行レバー23Lの操作に応じて、パイロットポンプ29からの吐出圧を減圧してパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)を有している。そして、例えば左側の走行レバー23Lを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が走行用方向切換弁30Lの受圧部30Laへ出力され、これによって走行用方向切換弁30Lが図中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左側の走行用油圧モータ9Lが前方向に回転するようになっている。また、例えば左側の走行レバー23Lを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が走行用方向切換弁30Lの受圧部30Lbへ出力され、これによって走行用方向切換弁30Lが図中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左側の走行用油圧モータ9Lが後方向に回転するようになっている。
【0040】
同様に、油圧パイロット式の走行用操作装置31Rは、右側の走行レバー23Rの操作に応じて、パイロットポンプ29からの吐出圧を減圧してパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)を有している。そして、例えば右側の走行レバー23Rを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が走行用方向切換弁30Rの受圧部30Raへ出力され、これによって走行用方向切換弁30Rが図中右側の切換位置に切換えられる。これにより、右側の走行用油圧モータ9Rが前方向に回転するようになっている。また、例えば右側の走行レバー23Rを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が走行用方向切換弁30Rの受圧部30Rbへ出力され、これによって走行用方向切換弁30Rが図中左側の切換位置に切換えられる。これにより、右側の走行用油圧モータ9Rが後方向に回転するようになっている。
【0041】
走行用操作装置31L,31R(及び図示しない他の操作装置)とパイロットポンプ29との間の油路には電磁操作式のロック弁32(ロック装置)が設けられている。ロック弁32のソレノイド部32aは、キースイッチ26(詳細には、キースイッチ26がOFF位置に操作された場合に開状態となり、キースイッチ26がON位置又はSTART位置に操作された場合に閉状態となる、B端子とACC端子の間の接点)及びロックスイッチ33を介してバッテリ34に接続されている(後述の
図3参照)。ロックスイッチ33は、上述したロックレバー25がロック位置(上昇位置)に操作された場合に開状態(オフ)、ロックレバー25がロック解除位置(下降位置)に操作された場合に閉状態(オン)となる。
【0042】
そして、例えばキースイッチ26がOFF位置に操作されて開状態となるか、若しくはロックレバー25がロック位置に操作されてロックスイッチ33が開状態になると、ロック弁32のソレノイド部32aが通電されない。これにより、ロック弁32は、バネ32bの付勢力によって図中右側の中立位置となる。この中立位置では、パイロットポンプ29からの吐出圧が走行用操作装置31L,31R等に供給されないため、走行用操作装置31L,31R等がパイロット圧を生成不能となる。すなわち、走行レバー23L,23Rの操作による走行用油圧モータ9L,9Rの駆動等が禁止される。
【0043】
一方、例えばキースイッチ26がON位置に操作されて閉状態となり、かつロックレバー25がロック解除位置に操作されてロックスイッチ33が閉状態になると、ロック弁32のソレノイド部32aが通電される。これにより、ロック弁32が図中左側の切換位置に切換えられる。この切換位置では、パイロットポンプ29からの吐出圧が走行用操作装置31L,31R等に供給されるため、走行用操作装置31L,31R等がパイロット圧を生成可能となる。すなわち、走行レバー23L,23Rの操作による走行用油圧モータ9L,9Rの駆動等が可能となる。
【0044】
次に、上述した油圧ショベルに搭載された走行警報装置について説明する。
図3は、本発明の一実施形態における走行警報装置の構成を表す電気回路図である。
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)は、本発明の一実施形態における近接スイッチと検出部の位置関係を表す側面図である。なお、
図4(a)は、走行レバーが中立位置から後側に操作された状態を示し、
図4(b)は、走行レバーが中立位置にある状態を示し、
図4(c)は、走行レバーが中立位置から前側に操作された状態を示している。
【0045】
本実施形態の走行警報装置は、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作されているか否かを検出するために、走行レバー23L,23Rの揺動を検出する1つの近接スイッチ35を備えている。詳しく説明すると、左側走行レバー23Lの下端側には、左側走行レバー23Lと共に揺動する検出部材36L(
図4では一部分のみ示す)が設けられている。この検出部材36Lは、前側検出部36La及び後側検出部36Lbを有している。同様に、右側走行レバー23Rの下端側には、右側走行レバー23Rと共に揺動する検出部材36R(
図4では一部分のみ示す)が設けられている。この検出部材36Rは、前側検出部36Ra及び後側検出部36Rbを有している。
【0046】
そして、
図4(b)で示すように、走行レバー23L,23Rが中立位置にある場合は、前側検出部36La,36Ra及び後側検出部36Lb,36Rbが近接スイッチ35の検出領域Aから離れている。そのため、近接スイッチ35が開状態(オフ)となる。一方、
図4(c)で示すように、走行レバー23L,23Rが中立位置から前側に操作された場合は、前側検出部36La,36Raが近接スイッチ35の検出領域Aにある。あるいは、
図4(a)で示すように、走行レバー23L,23Rが中立位置から後側に操作された場合は、後側検出部36Lb,36Rbが近接スイッチ35の検出領域にある。そのため、近接スイッチ35が閉状態(オン)となる。なお、走行レバー23L又は23Rが中立位置から前側に操作された場合、あるいは走行レバー23L又は23Rが中立位置から後側に操作された場合も、同様に、近接スイッチ35が閉状態となる。
【0047】
また、本実施形態の走行警報装置は、ロックレバー25がロック解除位置に操作されているか否かを検出するために、ロックスイッチ33を利用している(ロック解除検出部)。すなわち、上述したように、ロックレバー25がロック位置に操作された場合は、ロックスイッチ33が開状態となり、ロックレバー25がロック解除位置に操作された場合は、ロックスイッチ33が閉状態となる。
【0048】
また、本実施形態の走行警報装置は、エンジン27が駆動されているか否かを検出するために、エンジン27によって駆動するオルタネータ37を利用している(原動機駆動検出部)。詳細には、オルタネータ37のL端子を利用している。オルタネータ37のL端子は、キースイッチ26がOFF位置に操作された場合にオープンとなる。また、キースイッチ26がON位置に操作されてエンジン27が駆動されていない場合にアースとなり、その後、エンジン27が駆動された場合にオープンとなる。
【0049】
そして、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作されていることが検出され、かつロックレバー25がロック解除位置に操作されていることが検出され、かつエンジン27が駆動されていることが検出された場合に、ブザー38(警報部)を吹鳴させる警報制御部39を備えている。この警報制御部39は、判定リレー40及び警報リレー41を備えたリレー回路で構成されている。判定リレー40は、常閉接点40a及びコイル40bを有し、警報リレー41は、常開接点41a及びコイル41bを有している。そして、ロックスイッチ33とロック弁32のソレノイド部32aの間の配線から、判定リレー40のコイル40bを介してオルタネータ37のL端子が配線接続されている。また、ロックスイッチ33とロック弁32のソレノイド部32aの間の配線から、判定リレー40の接点40a及び警報リレー41のコイル41bを介して近接スイッチ35が配線接続されている。また、ロックスイッチ33とロック弁32のソレノイド部32aの間の配線から、警報リレー41の接点41aを介してブザー38が接続されている。
【0050】
例えばロックレバー25がロック解除位置に操作されてロックスイッチ33が閉状態であっても、エンジン27が駆動されてオルタネータ37のL端子がオープンになる場合は、判定リレー40のコイル40bが通電されず、判定リレー40の接点40aが閉状態となる。さらに、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が操作されて近接スイッチ35が閉状態になると、前述したようにロックスイッチ33及び判定リレー40の接点40aが閉状態であるから、警報リレー41のコイル41bが通電されて励磁され、警報リレー41の接点41aが閉状態となる。これにより、警報リレー41の接点41aを介しブザー38に電力が供給されて、ブザー38が吹鳴する。その結果、油圧ショベルの走行時に走行注意を促すようになっている。
【0051】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0052】
本実施形態においては、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作されているか否かを検出するために、近接スイッチ35を備えている。これにより、例えば特許文献1に記載のようにシャトル弁及び圧力スイッチを備える場合と比べ、コスト低減を図ることができる。また、ロックレバー25がロック解除位置に操作されているか否かを検出するために、既存のロックスイッチ33を利用している。また、エンジン27が駆動されているか否かを検出するために、既存のオルタネータ37を利用している。これにより、コスト低減を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態においては、警報制御部39は、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作されていることが検出され、かつロックレバー25がロック解除位置に操作されていることが検出され、かつエンジン27が駆動されていることが検出された場合に、ブザー38を吹鳴させている。すなわち、例えばロックレバー25がロック位置に操作されている場合あるいはエンジン27が駆動されていない場合(言い換えれば、油圧ショベルが走行していない場合)に、走行レバー23L又は23Rが操作されても、ブザー38を吹鳴させない。したがって、不要な警報を防止することができる。
【0054】
詳しく説明すると、例えばロックレバー25がロック位置に操作されてロックスイッチ33が開状態になる場合は、走行レバー23L又は23Rが操作されて近接スイッチ35が閉状態になっても、警報リレー41のコイル41bが通電されず、警報リレー41の接点41aが開状態となる。したがって、ブザー38が吹鳴しない。
【0055】
あるいは、例えばキースイッチ26がON位置に操作されて閉状態になり、かつロックレバー25がロック解除位置に操作されてロックスイッチ33が閉状態になっていても、エンジン27が駆動されていないとオルタネータ37のL端子がアースになる。この場合、判定リレー40のコイル40bが通電して励磁され、判定リレー40の接点40aが開状態となる。そのため、走行レバー23L又は23Rが操作されて近接スイッチ35が閉状態になっても、警報リレー41のコイル41bが通電されず、警報リレー41の接点41aが開状態となる。したがって、ブザー38が吹鳴しない。
【0056】
本発明の他の実施形態を
図5により説明する。本実施形態は、キャンセルスイッチを設けた実施形態である。
【0057】
図
5は、本実施形態における走行警報装置の構成を表す電気回路図である。なお、この図
5において、上記一実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、警報制御部39Aは、判定リレー40、警報リレー41、モーメンタリ式のキャンセルスイッチ42、及び自己保持型のキャンセルリレー43を備えたリレー回路で構成されている。キャンセルリレー43は、常閉接点43a及びコイル43bを有する。そして、警報リレー41の接点41aとブザー38の間にキャンセルリレー43の接点43aが介在している。また、警報リレー41の接点41aとキャンセルリレー43の接点43aの間の配線から、キャンセルスイッチ42を介してキャンセルリレー43のコイル43bが接続されている。
【0059】
例えばロックレバー25がロック解除位置に操作されてロックスイッチ33が閉状態であっても、エンジン27が駆動されてオルタネータ37のL端子がオープンになる場合は、判定リレー40のコイル40bが通電されず、判定リレー40の接点40aが閉状態となる。さらに、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が操作されて近接スイッチ35が閉状態になると、前述したようにロックスイッチ33及び判定リレー40の接点40aが閉状態であるから、警報リレー41のコイル41bが通電されて励磁され、警報リレー41の接点41aが閉状態となる。これにより、警報リレー41の接点41a及びキャンセルリレー43の接点43aを介しブザー38に電力が供給されて、ブザー38が吹鳴する。
【0060】
その後、運転者がキャンセルスイッチ42を操作して閉状態にすると、キャンセルリレー43のコイル43bが通電されて励磁され、キャンセルリレー43の接点43aが開状態となる。その後、キャンセルスイッチ42が開状態に戻っても、キャンセルリレー43のコイル43bの通電状態が維持され、キャンセルリレー43の接点43aが開状態のままとなる。これにより、ブザー38への電力供給が遮断されて、ブザー38の吹鳴が停止する。
【0061】
以上のように構成された本実施形態においても、上記一実施形態と同様、コスト低減を図りながら不要な警報を防止することができる。また、本実施形態では、警報を継続させる必要がなければ、運転者がキャンセルスイッチ42を操作して警報を停止させることができる。
【0062】
なお、上記実施形態においては、原動機駆動検出部として、エンジン27によって駆動するオルタネータ37を利用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、コスト低減の効果が小さくなるものの、例えば、エンジン27の回転を検出し、エンジン27が回転している場合に開状態(オフ)となる回転検出スイッチを設けてもよい。この場合は、オルタネータ37のL端子に代えて、回転検出スイッチを判定リレー40のコイル40
bに接続すればよい。あるいは、例えば、エンジン27が回転している場合に閉状態(オン)となる回転検出スイッチを設けてもよい。この場合は、図
6で示す警報制御部39Bのように、回転検出スイッチ44及び近接スイッチ35が直列となるように警報リレー41のコイル41bに接続すればよく、判定リレー40を不要とすることができる。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例においては、走行レバー23L,23Rの揺動を検出する1つの近接スイッチ(非接触式スイッチ)を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、コスト低減の効果が小さくなるものの、走行レバー23L,23Rの揺動をそれぞれ検出する2つの近接スイッチ又は2つのリミットスイッチ(接触式スイッチ)を設けてもよい。このような変形例においても、例えば特許文献1に記載のように3つのシャトル弁及び1つの圧力スイッチを設ける場合と比べ、コスト低減を図ることができる。また、上記実施形態においては、走行レバー及び走行ペダルが一体的に設けられた場合を例にとって説明したが、走行レバー及び走行ペダルのうちの一方だけが設けられていてもよい。これらの変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上記実施形態及び変形例においては、油圧パイロット式の走行用操作装置31L,31Rと、これら走行用操作装置31L,31R等とパイロットポンプ29の間の油路に設けられ、ロックスイッチ33を介し供給された電力によって駆動する電磁操作式のロック弁32とを備えた油圧ショベルに適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、機械操作式の走行用操作装置(詳細には、走行レバーと走行用方向切換弁の間で接続され、走行レバーの動作を走行用方向切換弁に伝達するリンク機構)と、油圧ポンプ28と走行用方向切換弁(及び他の方向切換弁)の間に設けられ、ロックスイッチ33を介し供給された電力によって駆動する電磁操作式のロック弁とを備えた油圧ショベルに適用してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、例えば、機械操作式の走行用操作装置と、この走行用操作装置を構成するリンク機構に設けられたロック機構とを備えた油圧ショベルに適用してもよい。このロック機構は、ロックレバー25がロック位置に操作された場合に、走行レバーと走行用方向切換弁の間のリンク機構を分断させ、ロックレバー25がロック解除位置に操作された場合に、走行レバーと走行用方向切換弁の間のリンク機構を連結させる。そして、ロックスイッチ33が無いことから、ロック解除検出部として、ロックレバー25の揺動を検出する近接スイッチ又はリミットスイッチを設ければよい。このような変形例においては、上記実施形態と比べ、コスト低減の効果が小さいものの、不要な警報を防止することができる。
【0066】
また、上記実施形態及び変形例においては、警報制御部39,39A,39Bは、リレー回路で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、所定の演算・制御処理を行うコントローラで構成されてもよい。このコントローラは、例えば近接スイッチ35から入力した信号に基づき、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作されているか否かを判定する。また、例えばロックスイッチ33から入力した信号に基づき、ロックレバー25がロック解除位置に操作されているか否かを判定する。また、例えばオルタネータ37のL端子から入力した信号に基づき、エンジン27が駆動されているか否かを判定する。そして、走行レバー23L,23Rのうちの少なくとも一方が中立位置から操作され、かつロックレバー25がロック解除位置に操作され、かつエンジン27が駆動されていると判定した場合に、ブザー38に駆動信号を出力して、ブザー38を吹鳴させる。さらに、上述の
図5で示された実施形態と同様、キャンセルスイッチ42を設けてもよい。そして、コントローラは、ブザー38の吹鳴中にキャンセルスイッチ
42からの信号が入力された場合、ブザー38の吹鳴を停止させてもよい。このような変形例においては、上記実施形態のようにリレー回路で構成された場合と比べ、コスト低減の効果が小さいものの、不要な警報を防止することができる。
【0067】
また、上記実施形態及び変形例においては、走行注意を促す警報を行う警報部として、ブザー38を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、音声出力器又はランプを備えてもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、建設機械の一つである油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、他の建設機械に適用してもよいことは言うまでもない。