(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986045
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20160823BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01R12/71
H01R13/405
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-149469(P2013-149469)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-22874(P2015-22874A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】桝本 敏男
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−4125(JP,A)
【文献】
米国特許第8202123(US,B1)
【文献】
登録実用新案第3148109(JP,U)
【文献】
特開2013−41830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/71
H01R 13/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に接続され、相手コネクタと着脱自在に接続されるコネクタであって、
帯状の導体板からなるコンタクトと前記コンタクトを保持するハウジングとを備え、
前記コンタクトは、前記接続対象物と接続する端子部と前記相手コネクタと接続する接触部とを有し、
前記ハウジングは、板状の突出部と本体部とを有し、
前記コンタクトは、信号コンタクト及び電源コンタクトを備え、
前記信号コンタクト及び前記電源コンタクトは前記板状の突出部に互いに平行に配置され、
前記電源コンタクトの前記端子部の幅は、前記信号コンタクトの前記端子部の幅よりも広く、
前記電源コンタクトの前記接触部の幅は、前記信号コンタクトの前記接触部の幅よりも広く、
前記電源コンタクトはその幅方向に切れ込みを有し、
前記電源コンタクトの前記接触部は、前記切れ込みよりも前方である前記相手コネクタ側の部分を、前記電源コンタクトの長手方向に沿った折り線で折り曲げた折り曲げ部を備える
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトの配置方向において、前記電源コンタクトは前記信号コンタクトよりも外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記折り曲げ部は、前記帯状の導体板の長さ方向に沿った二辺のうち、前記板状の突出部の外側に位置する辺を折り曲げてなることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記折り曲げ部の外側は絶縁体で覆われていることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記電源コンタクトにおいて、前記接触部の幅と前記端子部の幅とは略同一の幅を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記板状の突出部は前記接触部を保持するための溝を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジング、前記電源コンタクト及び前記信号コンタクトはインサート成形により一体成形されることを特徴とする請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記板状の突出部には予め前記溝が形成され、前記接触部は前記溝に圧入されることを特徴とする請求項6に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記電源コンタクトと前記信号コンタクトとは同じ材質の材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項10】
前記電源コンタクトは、前記信号コンタクトの材料よりも導電性が高い材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項11】
前記折り曲げ部は、前記折り線で略直角に曲げてなることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項12】
前記折り曲げ部は、前記折り線で鈍角または鋭角の角度に曲げてなることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号ライン用の信号端子と電力供給用の電源端子とを備え、信号端子と電源端子とをハウジングに平面上に一列に配置したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
装置を小型化するために、装置に組み込むコネクタについても小型化が求められ、特に、コネクタの低背化、狭幅化が求められている。また、装置を小型化するためには、装置内の部品を高密度に配置することも求められている。つまり、装置を小型化するために、コネクタ等の部品の小型化と、装置筐体への部品の高密度な実装が求められている。
【0003】
一方、部品には正常な動作が保証される温度範囲が定められていることが多いので、装置内では不要な熱の発生を抑制することが望ましいが、装置内の部品の高密度化に伴い、従来は無視することができた発熱量であっても対応が求められるようになっている。
【0004】
装置を小型化する上では、同一コネクタに信号端子と電源端子の両方を収容することが好ましい。低背なコネクタでこれを実現する単純な手法としては、信号端子と電源端子を同一平面上に並べて配置することが考えられる。
【0005】
通常、電源端子には信号端子よりも大きな電流が流れるので、同じ抵抗率、同じ断面積を有する端子を信号端子と電源端子の両方に用いる場合、電源端子では信号端子よりも大きなジュール熱が発生する。この発熱は、コネクタ自身だけではなく、コネクタに隣接して実装される周辺の部品に対しても影響を及ぼす恐れがあるので、できるだけ抑制することが求められる。
【0006】
電源端子でのジュール熱の発熱量を抑える単純な手法としては、例えば、電源端子を信号端子よりも幅広にすることが考えられる。この手法によれば、電源端子の抵抗が下がるのでジュール熱の発熱量も下がるが、コネクタの幅広化に繋がる。
【0007】
別の手法としては、抵抗率の低い導体を電源端子として用いることが考えられる。一般に、低抵抗の導体は高価なのでコネクタのコストアップの一因となる。
【0008】
特許文献1には本発明に関連したコネクタが記載されている。
図21を参照すると、同文献に記載のコネクタ100は、水平に配置される7つのピン210を備え、更に、開口グルーブ111の対向する2つの側壁にそれぞれ取り付けられておりかつeSATA端子セット200の7つのピン210と平行である2つのパワーピン220を備えている。
【0009】
パワーピン220はピン210と平行ではあるものの同一平面上には配置されていない。特に、ピン210は接続プレート120に支持される一方、パワーピン220は接続プレート120上に支持されるものではなく、その両脇の接続プレート120から離れた位置に、接続プレート120の外側を覆う本体110により支持される。このため、信号端子と電源端子の両方を同一の絶縁板上に配置するような構造を有するコネクタに対して特許文献1に記載の発明を適用することはできない。
【0010】
また、パワーピン220は断面コの字型乃至逆コの字型を有する。つまり対向する2つの平面をこれら平面と直交する別の平面で繋ぐ断面形状をしているが、この繋ぎとなる平面はピン210を配置した水平面、或いは、接続プレート120に対して直交する向きに配置されている。従って、パワーピン220の断面形状、特に上述の繋ぎ平面は、コネクタの高さに影響を及ぼす要因のひとつとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3148109号(
図1、段落0011,0012等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、信号端子及び電源端子の両方を備え、ハウジングに信号端子と電源端子を平面上に配置し、低背、狭幅、かつ、電源端子でのジュール熱の発熱量を抑制したコネクタを低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するため、本発明は、その一態様として、接続対象物に接続され、相手コネクタと着脱自在に接続されるコネクタであって、帯状の導体板からなるコンタクトと前記コンタクトを保持するハウジングとを備え、前記コンタクトは、前記接続対象物と接続する端子部と前記相手コネクタと接続する接触部とを有し、前記ハウジングは、板状の突出部と本体部とを有し、前記コンタクトは、信号コンタクト及び電源コンタクトを備え、前記信号コンタクト及び前記電源コンタクトは前記板状の突出部に平行に配置され、前記電源コンタクトの前記端子部の幅は、前記信号コンタクトの前記端子部の幅よりも広く、前記電源コンタクトの前記接触部の幅は、前記信号コンタクトの前記接触部の幅よりも広く、前記電源コンタクトはその幅方向に切れ込みを有し、前記電源コンタクトの前記接触部は、前記切れ込みよりも前方である前記相手コネクタ側の部分を、前記電源コンタクトの長手方向に沿った折り線で折り曲げた折り曲げ部を備えることを特徴とするコネクタを提供する。
【0014】
前記電源コンタクトにおいて、前記接触部の幅と前記端子部の幅とは略同一の幅を有することが好ましい。前記コンタクトの配置方向において、前記電源コンタクトは前記信号コンタクトよりも外側に配置されることが好ましい。このとき、前記折り曲げ部は、前記帯状の導体板の長さ方向に沿った二辺のうち、前記板状の突出部の外側に位置する辺を折り曲げてなることが好ましい。また、前記折り曲げ部の外側は絶縁体で覆われていることが好ましい。
【0015】
前記板状の突出部は前記接触部を保持するための溝を備えることが好ましい。前記ハウジング、前記電源コンタクト及び前記信号コンタクトはインサート成形により一体成形されることが考えられる。或いは、前記板状の突出部には予め前記溝が形成され、前記接触部は前記溝に圧入されることが考えられる。
【0016】
前記電源コンタクトと前記信号コンタクトとは同じ材質の材料からなることとすれば、電源コンタクトのために高導電性の材料を別途用意することなく、大電流に対応したコネクタを提供することができる。一方、前記電源コンタクトは、前記信号コンタクトの材料よりも導電性が高い材料からなることとすれば、更なる大電流にも対応することができるようになる。
【0017】
前記折り曲げ部は、前記折り線で略直角に曲げてなることとすれば、絶縁体の幅を最小限に抑えることができる一方、前記折り曲げ部は、前記折り線で直角以外の角度に曲げてなることとすれば、即ち、鈍角の場合には電源コンタクトの加工が容易になり、鋭角の場合には接触部の浮き上がりを更に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源コンタクトの幅を信号コンタクトの幅よりも広くすることにより、電源コンタクトの導電性を高めつつ、電源コンタクトに切れ込みを入れて、それよりも前方に位置する相手コネクタ側との接触部を折り曲げることにより、ハウジングの板状の突出部の幅を狭くして、ハウジングを狭幅化し、ひいてはコネクタを狭幅化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態であるコネクタ1を嵌合側で、基板への配置側を上方にして見たときの斜視図である。
【
図2】コネクタ1を後方から見たときの背面斜視図である。
【
図3】コネクタ1の突出部41周辺の一部を拡大した図である。
【
図4】
図1のコネクタ1の信号コンタクト2の斜視図である。
【
図5】
図4とは反対側から見た信号コンタクト2の斜視図である。
【
図6】
図1のコネクタ1の電源コンタクト3Aの斜視図である。
【
図7】
図6とは反対側から見た電源コンタクト3Aの斜視図である。
【
図8】金属板を折り曲げる前の電源コンタクト3Aの展開斜視図である。
【
図9】
図1のコネクタ1の電源コンタクト3Bの斜視図である。
【
図10】
図9とは反対側から見た電源コンタクト3Bの斜視図である。
【
図11】金属板を折り曲げる前の電源コンタクト3Bの展開斜視図である。
【
図12】シェル6を外した状態のハウジング4の側面図である。
【
図13】
図12のA−A’断面を矢印の方向からみたときの信号コンタクト2、電源コンタクト3A、3B、ハウジング4の断面図である。
【
図15】
図14のB−B’断面を矢印の方向からみたときの電源コンタクト3Bの断面図である。
【
図16】電源コンタクト3Bの変形例である電源コンタクト3Cの側面図である。
【
図17】
図16のC−C’断面を矢印の方向からみたときの電源コンタクト3Cの断面図である。
【
図18】電源コンタクト3Bの変形例である電源コンタクト3Dの側面図である。
【
図19】
図18のD−D’断面を矢印の方向からみたときの電源コンタクト3Dの断面図である。
【
図20】コネクタ1の端子部を変形したコネクタ70の背面斜視図である。
【
図21】特許文献1に記載のコネクタの構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施の形態であるコネクタ1について説明する。コネクタ1は、コネクタ1の接続対象物である基板(図示せず)上に実装されて、相手コネクタ(図示せず)と着脱自在に接続されるコネクタである。続いて、
図1、2を参照してコネクタ1の各部について説明する。
【0021】
電源コンタクト3A、3Bは帯状の導体を折り曲げた構造を有し、電源線と接続され電力供給用の電源端子として機能する。以下、電源コンタクト3A、3Bを互いに区別する必要がない場合には電源コンタクト3と記す。電源コンタクト3は、コネクタ1の内部に位置し、相手コネクタの対応するコンタクトと電気的に接触する接触部と、コネクタ1の外側に露出して、基板に実装する際に基板上の配線部に接続される端子部とを有する。
【0022】
信号コンタクト2は、電源コンタクト3と同様に、帯状の導体を折り曲げた構造を有し、信号線と接続され信号端子として機能する。コネクタ1は8本の信号コンタクト2を有する。信号コンタクト2についても、電源コンタクト3と同様に接触部と端子部とを有する。
【0023】
ここでは、電源コンタクト3と信号コンタクト2は同一の金属からなるものとする。この金属材料はコンタクトに用いられる一般的な金属であり、具体的にはリン青銅、黄銅などである。
【0024】
ハウジング4は、板状の突出部41と本体部42とを有し、絶縁体である。突出部41には電源コンタクト3、信号コンタクト2をそれぞれ保持するための溝(
図13参照)が形成されている。突出部41の中央に8本の信号コンタクト2が配置され、その両脇に、電源コンタクト3A、3Bがそれぞれ配置される。
図3には、
図1に対応する斜視図と、その一部である囲み20を拡大した斜視図が描かれている。
図3に示すように、電源コンタクト3、信号コンタクト2の接触部側の表面は略同一平面上にあるように構成される。
【0025】
ハウジング4は、金型内の所定の位置に配置した電源コンタクト3、信号コンタクト2の周りに樹脂を注入して一体成形する所謂インサート成形により製造してもよいし、或いは、電源コンタクト3、信号コンタクト2を保持するための溝を設けた樹脂を成形した後で、電源コンタクト3、信号コンタクト2を溝に圧入して製造することとしてもよい。
【0026】
ハウジング4の本体部42は、電源コンタクト3、信号コンタクト2の端子部側を保持する。突出部41と本体部42とは一体に成形されるものであってもよいし、別体として成形された後で組み立てられることとしてもよい。
【0027】
シェル6はハウジング4の一部を覆い、コネクタ1と相手コネクタとが嵌合したとき両者の嵌合部分を覆う嵌合部7、基板に実装する際に用いる固定部8を備える。
【0028】
信号コンタクト2について更に説明する。
図4、
図5を参照すると、信号コンタクト2は、嵌合部7内の突出部41上に配置され、相手コネクタの対応する信号コンタクト(図示せず)と電気的に接触する接触部21と、本体部42の後部からコネクタ1の外側に露出して、基板に実装する際に基板上の信号配線(図示せず)に接続される端子部22と、接触部21と端子部22とを繋ぐ連結部23を備える。先端27は突出部41に埋め込まれるような形で保持されることにより、接触部21がハウジング4から浮き上がるのを防ぐ。(
図3参照)図中のWSは端子部22の幅を示し、WTは接触部21の幅を示す。ここでは、図示したように、接触部21の幅WTは、端子部22の幅WSよりも広く、連結部23の幅よりも広いが、接触部21、端子部22、連結部23の幅をすべて同じにしてもよい。接触部21の幅WTは端子部22の幅WSと同じかそれよりも広く、WT≧WSの関係が成り立つものとする。
【0029】
電源コンタクト3について更に説明する。電源コンタクト3Aと電源コンタクト3Bは形状が異なり、互いに鏡像の関係になっている(
図7、
図10参照)。
【0030】
まず
図6−8を参照して電源コンタクト3Aについて説明する。電源コンタクト3Aは、シェル6の嵌合部7の内部、ハウジング4の突出部41の上に、
図1では右端に配置される。電源コンタクト3Aは、相手コネクタの対応する電源コンタクト(図示せず)と電気的に接触する接触部31と、本体部42の後部からコネクタ1の外側に露出して、基板に実装する際に基板上の電源配線(図示せず)に接続される端子部32と、接触部31と端子部32とを繋ぐ連結部33を備える。
【0031】
また、電源コンタクト3Aは、略矩形乃至帯状の導体板の幅方向に入れた切れ込み34、切れ込み34の先端から導体板の長手方向に向かい、接触部31を折り曲げるための折り線35、折り線35に沿って接触部31を折り曲げた折り曲げ部36Aを有する。即ち、接触部31は折り曲げ部36Aを含んでいる。接触部31の先端37は突出部41に埋め込まれるような形で保持されることにより、接触部31がハウジング4から浮き上がるのを防ぐ(
図3参照)。図中のWPは端子部32の幅を示し、WQは連結部33の幅を示し、WRは
図8の状態、即ち、導体板を折り曲げる前の状態における、接触部31と折り曲げ部36Aを合わせた部分の幅を示す。
【0032】
電源コンタクト3Aの端子部32の幅WPは、信号コンタクト2の端子部22の幅WSよりも広い。電源コンタクト3Aは、
図8に示すような金属板を折り曲げたものだが、
図8から明らかなように、電源コンタクト3Aの導体板は、先端37、切り込み34を除いた部分が全て幅WP以上の幅を有する。
【0033】
次に、
図9−11を参照して電源コンタクト3Bについて説明する。電源コンタクト3Bは、シェル6の嵌合部7の内部、ハウジング4の突出部41の上に、
図1では左端に配置される。電源コンタクト3は、相手コネクタの対応する電源コンタクト(図示せず)と電気的に接触する接触部31と、本体部42の後部からコネクタ1の外側に露出して、基板に実装する際に基板上の電源配線(図示せず)に接続される端子部32と、接触部31と端子部32とを繋ぐ連結部33を備える。
【0034】
また、電源コンタクト3Bは、略矩形乃至帯状の導体板の幅方向に入れた切れ込み34、切れ込み34の先端から導体板の長手方向に向かい、接触部31を折り曲げるための折り線35、折り線35に沿って接触部31を折り曲げた折り曲げ部36Bを有する。先端37は突出部41に埋め込まれるような形で保持されることにより、接触部31がハウジング4から浮き上がるのを防ぐ(
図3参照)。図中のWPは端子部32の幅を示し、ここでは電源コンタクト3Aの端子部32と、電源コンタクト3Bの端子部32の幅はどちらもWPであるとし、連結部33の幅をWQとし、
図11の状態、即ち、導体板を折り曲げる前の状態における、接触部31と折り曲げ部36Bを合わせた部分の幅をWRとする。
【0035】
電源コンタクト3Bの端子部32の幅WPは、信号コンタクト2の端子部22の幅WSよりも広い。電源コンタクト3Bは、
図11に示すような金属板を折り曲げたものだが、
図11から明らかなように、電源コンタクト3Bの導体板は、先端37、切り込み34を除いた部分が全て幅WP以上の幅を有する。
【0036】
図8及び
図11に図示した、電源コンタクト3の接触部31、連結部33、端子部32の各部の幅WP、WQ、WRの間には次のような関係がある。折り曲げ部36A、36Bを含む接触部31の幅WRと連結部33の幅WQは等しい。一方、端子部32の幅WPは連結部33の幅WQよりも狭い。即ち、WR=WQ>WPといった関係が成り立っている。尚、電源コンタクト3の各部の幅の間の関係はこれに限定されたものではない。例えば、端子部32の幅WPと連結部33の幅WQを互いに等しくする一方、折り曲げ部36A、36Bを含む接触部31の幅WRを端子部32、連結部33よりも広いものとして、WR>WQ=WPとしてもよい。或いは、これら各部の幅を全て同じとして、WR=WQ=WPとしてもよい。
【0037】
更に、信号コンタクト2に関する幅WT、幅WSと、電源コンタクト3に関する幅WP、WQ、WRの関係について言及する。電源コンタクト3の幅WP、WQ、WRは、いずれも、信号コンタクト2の幅WTよりも広いものとする。つまり、WP、WQ、WR>WT≧WSという関係にあるものとする。
【0038】
電源コンタクト3において、相手コネクタの電源コンタクトの接触により電流が流れるようになるのは、接触部31上の接触位置から端子部32にかけてである。先端37には実質的には電流はほとんど流れないので、先端37の幅は電流によるジュール熱の発熱量にほとんど影響しない。一方、切れ込み34の部分を除けば、導体として機能する電源コンタクト3の実質的な端子幅は、信号コンタクトの接触部21の幅WTよりも広い。従って、例えば信号コンタクト2と同じ幅の部材をそのまま電源コンタクトとして流用する場合と比較して、電源コンタクト3の抵抗を下げることとなり、ジュールの法則により電源コンタクト3にて発生するジュール熱の量を下げることができる。
【0039】
また、電源コンタクト3A、3Bをなす導体板の一部を折り曲げ部36A、36Bとして折り曲げているので、電源コンタクト3A、8本の信号コンタクト2、電源コンタクト3Bが、突出部41の上で占める幅は、例えば折り曲げ部36A、36Bを折り線35で折り曲げずに突出部41の上に配置した場合と比較して狭くなる。
【0040】
このことを
図12、13を参照して説明する。
図12のA−A’断面である
図13に示すように、突出部41の左右の端部において、電源コンタクト3A、3Bの折り曲げ部36A、36Bは下に折れ曲がっている。突出部41の表面には電源コンタクト溝43A、43Bが形成されている。電源コンタクト3Aの接触部31、折り曲げ部36Aは電源コンタクト溝43Aに埋め込まれる。同様に、電源コンタクト3Bの接触部31、折り曲げ部36Bは電源コンタクト溝43Bに埋め込まれる。信号コンタクト2の接触部21も突出部41の表面に形成される信号コンタクト溝44に埋め込まれる。尚、
図13では各コンタクトと溝の間に隙間があるが、ハウジング4と電源コンタクト3、信号コンタクト2はインサート成形により一体化するので、実際にはこれらの隙間はほとんど存在しない。成形後のハウジング4に電源コンタクト3、信号コンタクト2を圧入してコネクタを組み立てる場合には、若干の隙間が存在する。
【0041】
折り曲げ部36A、36Bに相当する部分を折り曲げずに突出部41の上に配置した場合、
図13の突出部41よりも広い幅の突出部が必要になることが容易に理解されるだろう。電源コンタクト3A、3Bに折り曲げ部36A、36Bを設けたことにより、突出部41の幅を狭くすることができる。
【0042】
突出部41の中央部に信号コンタクト2を配置し、その両脇に電源コンタクト3を配置したレイアウトも突出部41の幅を抑える上で寄与している。
図13を見ると分かるように、突出部41上における電源コンタクト3の幅は、折り曲げにより抑えられているものの、折り曲げ半径と導体板の厚さ分をゼロにすることはできない。このため、仮に、2本の信号コンタクト2の間に電源コンタクト3を配置すると、折り曲げ部がある側とない側で、電源コンタクト3の隣に信号コンタクト2を配置可能な最小ピッチが異なることとなり、突出部41の幅広化に繋がる恐れがある。しかし、電源コンタクト3を左右端に配置することでこの問題を回避することができる。電源コンタクト3A、3Bの形状が互いに鏡像となっているのはこのためであり、接触部31の、突出部41に実装したときに外側となる側を折り下げて折り曲げ部36A、36Bとしている。
【0043】
このように折り曲げ部36A、36Bを埋め込むことは、突出部41の幅が広くなるのを抑えることだけではなく、突出部41を補強することになる。折り曲げ部36A、36Bは、コネクタ1を相手コネクタと着脱する際の進行方向に沿って突出部41に埋め込まれるので、突出部41の曲げ強度を高めることになる。
【0044】
更に、折り曲げ部36A、36Bを突出部41に埋め込む形をとったため、折り曲げ部36A、36Bは、
図13において突出部41の側方からの接触に対して、絶縁性を確保することができる。このような構成とする代わりに、折り曲げ部36A、36Bの外側に位置する絶縁体を省くこととしてもよい。この場合、電源コンタクト3の一部が突出部41の側面から露出することになるが、絶縁体を省略することにより突出部41の幅を更に狭くすることができる。
【0045】
尚、電源コンタクト3において、連結部33、端子部32には折り曲げ部がないが、この部分は突出部41の幅に影響を与えない部分であり、また、例えば
図1、
図2を見ると分かるように、ハウジング4において本体部42の幅は突出部41の幅より広く形成されているため、連結部33、端子部32の幅が多少広くなったとしても、コネクタ1全体の幅にはほとんど影響しない。
【0046】
以上、本発明を実施の形態に即して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば、上述のコネクタ1では、
図14、15に示す電源コンタクト3Bのように、折り線35において接触部31と折り曲げ部36Bとがほぼ直角になるまで曲げていたが、折り曲げ部の曲げ角度は90度に限らない。
【0048】
図16、17に示す電源コンタクト3Cは、電源コンタクト3Bに対応する変形例であるが、折り線35において接触部31と折り曲げ部36Cとが135度程度になるように曲げている。この場合、電源コンタクトを配置するために要するハウジング4の突出部41の幅は、上述のコネクタ1の場合よりも広くなるが、電源コンタクト3A,3Bよりも加工が容易であるという長所がある。
【0049】
図15の電源コンタクト3Bでは、折り曲げ部36Bと接触部31の間の角度は直角であり、
図17の電源コンタクト3Cでは、折り曲げ部36Cと接触部31の間の角度は鈍角である。しかし、電源コンタクトの折り曲げ部と接触部の間の角度はこれらに限定されるものではなく、折り曲げ部36Bと接触部31の間の角度は鋭角であってもよい。この場合でも、電源コンタクトが突出部41の上で占める幅は、直角に曲げた電源コンタクト3Bと同様に、ほぼ折り曲げた後の接触部の幅となるが、折り曲げ部と接触部の間に突出部の表面を挟みこむ形となるため、接触部がハウジング4から浮き上がるのをより効果的に防止することができる。
【0050】
図18、19に示す電源コンタクト3Dは、電源コンタクト3Bに対応する別の変形例である。電源コンタクト3A、3Bでは、折り線35にて折り曲げ部36A、36Bを接触部31に対して略直角に一度だけ曲げたが、電源コンタクト3Dでは、折り線35、35Dの2本の折り線でそれぞれ略直角に曲げていて、折り曲げ部36Dは接触部31とで断面が逆コの字型、または横U字型となっている。このため、折り曲げが一度だけの場合よりも電源コンタクトの断面積を広くすることができ、電源コンタクトの抵抗を下げ、発生するジュール熱の発熱量を更に抑制することができる。このとき、2度の折り曲げを行なっているため、電源コンタクトを配置するために要するインシュレータの幅を広げないだけではなく、ハウジングの高さに及ぼす影響も回避することができる。更に、接触部31が突出部41から浮き上がるのを更に効果的に防止することができる。
【0051】
また、上述のコネクタ1では、端子部22、32を基板に実装する際に基板上の電源配線に半田接続されるものとして説明したが、
図20に図示したコネクタ70の電源コンタクト73A、73B、信号コンタクト72の端子部のように、電線の芯線等(接続対象物、図示せず)を半田付けするための端子としてもよいし、電線の芯線と圧着や圧接する圧着端子部や圧接端子部としたコンタクト(図示せず)にしてもよい。
【0052】
また、コネクタ1では、電源コンタクト3及び信号コンタクト2は同じ金属からなることとしたが、非金属の導体であってもよい。また、電源コンタクト3及び信号コンタクト2は同じ材質の導体であるが、電源コンタクト3に信号コンタクト2より導電性の高い導体を用いることとしてもよい。例えば、信号コンタクト2をリン青銅、黄銅などの一般的なコンタクト用の材料を用いて作る一方、電源コンタクト3をコルソン系銅合金などを用いて作ることとしてもよい。このようにすれば、更に大きな電流を流す場合であってもジュール熱の発熱量を更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、70 コネクタ
2、72 信号コンタクト
3、3A、3B、3C、3D、73A、73B 電源コンタクト
4 ハウジング
41 突出部
42 本体部
43A、43B 電源コンタクト溝(溝)
44 信号コンタクト溝(溝)
6 シェル
7 嵌合部
8 固定部
20 囲み
21、31 接触部
22、32 端子部
23、33 連結部
34 切れ込み
35、35D 折り線
36A、36B、36C、36D 折り曲げ部
27、37 先端