(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986069
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】表面を被覆する金属コート、その形成方法および結合剤の使用
(51)【国際特許分類】
B05D 1/06 20060101AFI20160823BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20160823BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
B05D1/06 H
B05D5/06 101A
B32B27/20
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-506630(P2013-506630)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公表番号】特表2013-525102(P2013-525102A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011056575
(87)【国際公開番号】WO2011134956
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】2004623
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】512276603
【氏名又は名称】デ・ヘラー・デザイン・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】ヨンケル,ロベルト・アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ファン・アンデル,アルノルドゥス・ハイスベルトゥス・ウィルヘルムス
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−067848(JP,A)
【文献】
特開昭56−038471(JP,A)
【文献】
特開昭52−071528(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0115477(US,A1)
【文献】
特開平01−085263(JP,A)
【文献】
特開2002−028542(JP,A)
【文献】
特開昭61−026675(JP,A)
【文献】
特開2009−149809(JP,A)
【文献】
特開平08−052412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を被覆する金属コートを形成する方法であって、
(i)導電性二成分結合剤を表面に塗装するステップと、
(ii)前記ステップ(i)で塗装した導電性二成分結合剤に、金属粉末を静電スプレー塗装するステップと
を含み、
前記導電性二成分結合剤がポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに0.2から10%(重量/重量)の第4級窒素化合物を含むものであり、前記金属粉末が80ミクロン未満の平均直径を有する金属粒子を含むものである方法。
【請求項2】
前記導電性二成分結合剤を塗装することがエアレススプレー塗装を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性二成分結合剤の2つの成分がスプレー装置のノズル内で混合される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリウレタンおよび/またはポリ尿素が、ヒマシ油、ダイズ油、ヒマワリ油およびキャノーラ油から成る群より選ばれた植物油中に分散されている請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属粒子が60ミクロン未満の平均直径を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属粒子が球形状を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(i)の前に前記表面にプライマーを塗装することをさらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記表面を被覆する金属コートに、乾燥ステップを受けさせることをさらに含む請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(ii)の後に、古色化、研磨、保護およびサンディングから成る群より選択される1つ以上のステップをさらに含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
厚さ200ミクロン未満である金属コートを形成する請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面が円形板、屋根またはパネルである請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面を被覆する金属コートであって、この金属コートは、導電性二成分結合剤と金属粉末とを含んでなり、前記導電性二成分結合剤がポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに0.2から10%(重量/重量)の第4級窒素化合物を含むものであり、前記金属粉末が80ミクロン未満の平均直径を有する金属粒子を含むものである金属コート。
【請求項13】
金属コートを形成するための導電性二成分結合剤の使用であって、前記導電性二成分結合剤が、ヒマシ油に分散されたポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに1から10%(W/W)の第4級窒素化合物を含む使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を被覆する金属コートを形成する方法に関する。別の態様として、本発明は、金属コートを形成するための結合剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属コーティングは、表面の特性を塗装される金属の特性に変化させる。例えば金属コーティングは、研磨金属の輝きなどの魅力的な外観を提供することができる。さらに金属コーティングは、例えば湿気、塩水スプレー、酸化および摩耗(wear resistance)から表面を保護することができる。金属コーティングは、自動車産業、建築産業、オフショア産業で、または物品の装飾および修復のために幅広く使用されている。
【0003】
一般に金属コートは、少量の金属粉末を結合剤と混合して、この後に混合物を表面に塗装することにより提供される。加えて、結合剤および金属粉末を含む混合物が物体に噴霧される工程が公知である。一般にこのような結合剤はポリエステルおよびエポキシを含む。
【0004】
金属コートを提供するための別の公知の工程は亜鉛めっきであり、亜鉛めっきでは物体が通常、対象である溶融された金属の浴中に浸漬される。一例は、金属物体を亜鉛めっきによって被覆することによる金属物体の保護である。
【0005】
これらの従来技術の方法は、複数の欠点を有する。第1の欠点は、結合剤および金属粉末の混合物中の金属粉末の沈殿に見出すことができる。この沈殿は、不均一なコートを生じさせることがある。さらに、結合剤および金属粉末の混合物のポットライフは制限されている。金属粉末および結合剤を含む混合物の別の欠点は、結合剤の金属粉末による飽和が制限されていることである。例えば結合剤および金属粉末の混合物を塗装する噴霧技法では、結合剤と混合することができる金属粉末の量は制限されている。
【0006】
さらに現行の亜鉛めっき方法は、環境に有害である。亜鉛めっき工程が例えば高いエネルギー消費量を必要とするのは、大量の金属を加熱する必要があるためである。さらに亜鉛めっき法は、溶媒および酸の使用が必要とされる結果として、毒性の金属スラッジ廃棄物を産生する。
【0007】
上の従来方法ならびにその欠点および制限を考慮すると、良好な特性を有する金属コートを生じる、金属コートを塗装するためのより効率的で持続的な方法が当分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、他の目的の中でも金属コートを形成するための方法を提供することである。
この目的は、他の目的の中でも添付の請求項1に定義されたような方法によって満足される。
【0009】
詳細には、この目的は、表面を被覆する金属コートを形成する方法であって、
(i)導電性二成分結合剤を前記表面に塗装するステップと、
(ii)前記ステップ(i)で塗装された結合剤に金属粉末を静電スプレー塗装するステップと
を含み、金属粉末が80ミクロン未満の平均直径を有する金属粒子を含む方法によって満足される。
【0010】
本文脈で使用されるような金属コートは、金属のコート、層、膜またはシートを示す。
【0011】
本文脈で使用されるような表面の被覆は、金属コーティングの技術分野の当業者による解釈によって理解されるはずである。例えば被覆は、本表面の上に層を均等に分布させることによる、表面の一定または均一な被覆、保護、シーリングまたはマスキングを示すことができる。
【0012】
本表面は、任意の種類の表面、例えば3次元物体の表面であり得る。
【0013】
本結合剤の塗装は、複数の技法によって提供することができる。塗装技法の例は、浸漬コーティング、フローコーティング、浸漬−スピンコーティングもしくはロールコーティングなどの非スプレー塗装技法、または従来の空気微粒化、エアレススプレー塗装、空気補助エアレス微粒化、大容量低圧空気噴霧スプレーまたはフレーム溶射コーティングなどのスプレー技法である。さらに導電性二成分結合剤の本表面への塗装は、これにより塗装された結合剤を有する表面を提供することができる。なおさらに、導電性二成分結合剤の本表面への塗装は、本表面に均等に分布したコート、カバー、層またはマスクを提供するのに十分な期間にわたって行うことができる。
【0014】
「導電性二成分結合剤」という用語は、二成分結合剤ならびに塗装された二成分結合剤の層、または少なくとも塗装された二成分結合剤の層が導電性であることを意味することを意図する。
【0015】
塗装された結合剤上への金属粉末の静電スプレー塗装は、金属粒子を含む微粒化粉末を例えば静電スプレーガンによって帯電させることを含み、金属粒子は次に導電性結合剤によって引き付けられる。好ましくは、塗装された結合剤上への金属粉末の静電スプレー塗装のステップは、結合剤を金属粒子によって飽和させるのに十分な期間にわたって行われる。
【0016】
塗装された結合剤上への金属粉末の本静電スプレー塗装は、本表面を被覆する金属コートを提供することができる。好ましくは、本表面を被覆する金属コートは、厚さ200ミクロン未満である。
【0017】
本金属粉末は、1種類の金属を含むことができるか、または合金を含むことができる。さらに各金属または合金を本発明で使用することができる。
【0018】
好ましくは、本ステップ(ii)は、本ステップ(i)の後にすぐにまたは直接、すなわち塗装された本導電性二成分結合剤を乾燥させることなく行われる。
【0019】
本発明の発明者らは、本発明による方法によって、金属コートが効率的で、環境に優しく、持続可能な方法で提供されることを見出した。例えば従来の亜鉛めっき工程と比較して、大量の金属(金属を充填した浴など)を必要としないため、加熱コストが著しく低減される。
【0020】
加えて、本方法を使用することによって金属粒子のパーセンテージが高い金属コートが提供される。さらに詳細には、結合剤またはマトリクスの金属粉末による飽和は最大である。結合剤またはマトリクスのこのような最大飽和の利点は、所望の場合にコート表面の最終処理が容易に施されることである。
【0021】
さらに発明者らは、得られた金属コートが使用した金属の特性および外観を有すること、例えば完璧な金属様の輝きが得られることを見出した。
【0022】
本発明の方法の別の利点は、結合剤への静電塗装金属粉末の塗布力(application force)が低いので、前に塗装された結合剤を押しのけないことである。したがって、完璧に平坦な表面が得られる。
【0023】
本発明の方法のまた別の利点は、この方法によって垂直、傾斜もしくは非水平表面などのいずれの表面にも、または3次元表面にさえ前記好都合なコートを施すことが可能なことである。このため本金属粉末が均等に分布して、本金属粉末によって最大飽和されたマトリクス、すなわち結合剤の完璧に平滑な表面が、これらの垂直、傾斜もしくは非水平表面に、または3次元表面にさえ提供される。
【0024】
さらに本方法の使用により、薄い金属コートを得ることができる。通例、このような層は厚さ200ミクロン未満である。より厚い金属コートが所望である場合、方法の本ステップを例えば1回、2回または3回反復することができる。
【0025】
通例、本方法を使用することによって、提供された金属コートは導電性である。これは例えば、プリント回路基板の生産に好都合である。したがって本方法は、現在利用されているエッチング工程に代わることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態により、導電性二成分結合剤を塗装すること(ステップi)は、エアレススプレー塗装を含む。エアレススプレー塗装を使用することの利点は、方法が迅速であり、高速生産ラインや表面積が大きい場合に利用できることである。
【0027】
好ましくは、導電性二成分結合剤の2つの成分がスプレー装置のノズル内で混合される。このことが好都合であるのは、プレミックス結合剤が不要であり、懸濁物の短いポットライフに伴う問題が回避され、さらに連続工程を提供できるためである。このような連続工程は、大きな表面を被覆する金属コートを提供するために好都合である。
【0028】
本方法の好ましい実施形態により、二成分結合剤は、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに0.2から10%(重量/重量)の間の第4級窒素化合物、例えば1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9、または0.2もしくは1から9%などの、好ましくは0.5から8%の、または10、6、5または4%(重量/重量)未満の第4級窒素化合物を含む。好ましくは、第4級窒素化合物は第4級アンモニウム塩である。さらに二成分結合剤は、芳香族ポリイソシアネートなどのイソシアネートを含むことができる。好ましくは、結合剤はジフェニルメタン−4.4−ジイソシアネートを含む。結合剤は、静電スプレー塗装による金属粉末の塗装に好適であるように特別に開発されている。さらに結合剤により、本発明の方法を内側ならびに外側に行うことができる。その上、結合剤は紫外光、酸、腐食剤、塩および溶媒ならびに−30から+130℃の範囲の温度に対して耐性である。本結合剤は、結合剤の表面張力および粘度に影響を及ぼす充填剤もしくは添加剤を含むことができ、および/または本結合剤は、消泡剤もしくは湿潤剤などの添加剤を含むことができる。充填剤および添加剤は、本技術分野の当業者にとって一般に公知である。
【0029】
無溶媒結合剤は、水の存在下で酸化する鉄などの金属粉末を処理する際に利点を有する。加えて、本結合剤は低い粘度および/または低い表面張力を有する。低い粘度および/または低い表面張力を有する結合剤の利点は、表面の当初の細部を、コートでこれらの当初の細部を充填せずに、正確に再現することである。このことは、例えばブロンズ製の彫像や半身像の、または古典的な木製絵画用額縁の修復などの美術品修復の分野で非常に重要であり得る。
【0030】
本方法のさらなる好ましい実施形態により、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素は、ヒマシ油、ダイズ油、ヒマワリ油およびキャノーラ油から成る群より選ばれる植物油中に分散される。さらに好ましくは、ポリウレタンはヒマシ油中に分散される。ヒマシ油中のポリウレタンの例は、市販のALBODUR 921(Alberdingk Boley)である。
【0031】
本発明の方法のまた別の好ましい実施形態により、金属粒子は、60ミクロン未満の、好ましくは2から55ミクロンの間の、例えば2から40ミクロンの、2から30ミクロンもしくは2から20ミクロン、または5から55ミクロン、10から55ミクロン、20から55ミクロンもしくは30から55ミクロンなどの平均直径を有する。
【0032】
好ましくは、金属粒子は球形状を有する。しかし、金属粒子は結節形状または不規則形状も有することができる。金属粒子は、前記形状のいずれの組合せも有することができる。その上、すべての金属または合金を使用することができる。金属のいくつかの例は、クロム、鉄、ニッケル、鉛、亜鉛、スズ、白金、銀、金、銅またはカドミウム粒子ならびに青銅および真鍮などのその組合せである。例えば銅は、銅(屋根)板を提供するために使用される。本願の利点は、このような建築用板の通常の取引方法に依存せずに、各サイズの銅(屋根)板が得られることである。
【0033】
また別の好ましい実施形態により、本方法は、導電性二成分結合剤を塗装する本ステップの前に、表面にプライマーを塗装することを含む。プライマーを使用することによって、本方法はなおより広い範囲に利用できる。一部の表面、例えば新たに成形されたコンクリートは、そのアルカリ性のために、このような予備処置が必要である。第2に、プライマーによる予備処置によって、塗装された結合剤の上に金属粉末が塗装される前に、強吸収表面における結合剤の漏出が避けられる。さらに平滑表面は、エッチングまたは機械的手段による表面の粗面化を含む予備処置を必要とすることがある。好ましくは、本結合剤はプライマーとして使用される。しかし、他の、一般に使用される市販のプライマーも本発明に含まれる。
【0034】
また別の好ましい実施形態により、本方法は、表面を被覆する金属コートに乾燥ステップを受けさせることを含み、好ましくは表面を被覆する金属コートに赤外光を当てることを含む。しかし、コート表面に別の熱源を当てることもできる。好ましくは、表面を被覆する金属コートに、表面を被覆する金属コートを硬化させるのに十分な期間にわたって乾燥ステップを受けさせる。
【0035】
また別の好ましい実施形態により、本方法は本ステップ(ii)の後に、古色化、研磨、保護およびサンディングから成る群より選択される1つ以上のステップを含む。古色化、研磨、保護および/またはサンディングのこのステップは、本任意の乾燥ステップの後に行われる。古色化は、本文脈において、緑青層を塗装することとして理解することができる。このような層を塗装する目的は、ある効果を得るために、自然の酸化工程に影響を及ぼすことである。このような古色化ステップは、銅の緑化のためには水中の硝酸銅(II)、炭酸カルシウムまたは塩化アンモニウムなどの酸によって、または塩基によって金属コート表面を処置することを含むことができる。別の可能性は、金属コートに着色するために、金属コート表面を炎によって短時間処置することである。例えば銅表面を硬化するために透明トップコーティングを塗装することなどの、コートの他の仕上げステップも本発明に含まれる。
【0036】
また別の好ましい実施形態により、本方法は、180、160、140、120ミクロン未満の、またはなお100ミクロン未満などの厚さ200ミクロン未満である金属コートを形成する。このような薄いコートの利点は、表面の当初の細部を、コートでこれらの当初の細部を充填せずに正確に再現することである。このことは、例えばブロンズ製の彫像や半身像の修復などの美術品修復の分野で非常に重要であることができる。
【0037】
また別の好ましい実施形態により、本表面は回路基板、またはプラスチック製支持体、屋根、板または寄木床部品などの床板である。本方法には多種多様の用途がある。例えば本方法は、支持体、例えばプラスチック製支持体上に金属コートの細いレーンを作ることによって、プリント回路基板を提供するために使用することができる。本用途では、現在使用されているエッチングが避けられる。反対に、本方法は金属コートを有する板を提供するために使用できる。これらの板は通常、外部もしくは上部範囲、または表面、または建物の仕上げのために建築分野で使用される。その上、本表面は、例えばこれらの対象に金めっきを行うための、陶磁器、十字架、風向計、絵画用額縁および/または(他の)美術品の表面であり得る。
【0038】
したがって、また別の態様により、本発明は、本発明の方法によって得ることができるコート表面に関する。これらのコート表面は、マトリクス、すなわち結合剤が金属粉末によって完全に飽和されている、平滑かつ持続性で均一なコートとして優れている。この金属コートは、180、160、140、120ミクロン未満の、またはなお100ミクロン未満などの200ミクロン未満の厚さを有することができる。その上、金属コートは塗装される金属の特性を有し、例えばコートは導電性である。
【0039】
また別の態様により、本発明は、好ましくは金属コート、好ましくは表面を被覆する金属コートを提供するための、ヒマシ油中に分散されたポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに1から10%(重量/重量)の第4級窒素化合物、好ましくはアンモニウム塩を含む導電性二成分結合剤の使用に関する。ここで提供された金属コートは、200ミクロン未満の厚さを有し、および/または導電性である。その上、本発明は、陶磁器、十字架、風向計、絵画用額縁および/もしくは(他の)美術品、ならびに/または屋根板もしくは寄木板などの板およびプラスチック製支持体に金属コートを提供するための、ヒマシ油中に分散されたポリウレタンおよび/またはポリ尿素ならびに1から10%(重量/重量)の第4級窒素化合物、好ましくはアンモニウム塩を含む導電性二成分結合剤の使用に関する。例えば、これらのプラスチック製支持体は、本方法によりプリント回路基板を形成することを意図する。
【0040】
本発明は、好ましい実施形態の以下の非制限的な実施例でさらに説明される。
実施例において、添付図が参照される:
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】物体(1)に塗装されている結合剤(2)上に銅粒子(3)を塗装する概略図を示す。
【
図2】本発明による金属コートを提供するための概略工程を示す。
【
図3】物体(1)に結合剤(2)を静電スプレー塗装することによる銅粒子(3)の塗装を概略的に示す。
【
図4】本発明による方法によって提供される銅コートがコートされた物体を概略的に示す。
【実施例】
【0042】
[比較例]
3次元物体は従来方法によってコートされている。
【0043】
さらに詳細には、二成分ポリウレタン結合剤(Alberdingk Boleyの「ALBODUR 921」)がエアレススプレー塗装によって物体の表面に塗装されている。続いて、平均直径30ミクロンの銅粒子を含む金属粉末は、結合剤に金属粉末を分散させることによって、結合剤に塗装された。
図1は、銅粒子(3)が物体(1)上の結合剤(2)に重力によって達する方法を示す。その後、塗装されたコートは、これに赤外光を当てることによって硬化され、研磨ステップが行われた。
【0044】
金属コートが得られた。しかし、マトリクスの飽和は、完全で均一ではなかった。詳細には、
図1、符号4で見られるように、銅粉末を塗装することによって、結合剤が移動されて、これにより粗表面が生じる。
【0045】
[実施例1]
本発明の方法により、3次元物体がコートされる。
【0046】
図2は、この実施例で従う方法の概略図である。さらに詳細には、
図2は運搬手段(1)を示し、ここで配置された3次元物体は配置されて結合剤の塗装(2)、金属粉末の静電塗装(3)、乾燥(4)ならびに最後のグレーティングおよび/または研磨(5)を受ける。
【0047】
さらに詳細には、使用した結合剤は、ヒマシ油に分散された二成分ポリウレタン結合剤、すなわちAlberdingk Boleyの「ALBODUR 921」である。第2の成分は、ジフェニルメタン−4.4−ジイソシアネートである。この二成分ポリウレタン結合剤は、これをEvonik Industries AGから「Tego@ADDID 240」という名称で販売されている市販の第4級窒素化合物と、5%の第4級窒素化合物を含む混合物が得られるまで混合することによって導電性にされる。
【0048】
次に、この混合物を3次元物体の表面にエアレススプレー塗装によって塗装する。
【0049】
続いて、平均直径30ミクロンの銅粒子を含む金属粉末は、静電スプレーガンを使用して塗装される。
図3は、結合剤中の銅粒子を静電スプレー塗装する際の概略的洞察を示す。銅粒子3は、物体(1)上の結合剤(2)に達する。
【0050】
その後、コートされた物体には、コートを硬化させるために赤外線を当てる。
【0051】
最後に、コートを3Mから入手可能なブリストルブラシによって研磨する。
【0052】
図4に概略的に示すように、完璧な平滑コートが得られた。
図4は、3次元物体の水平ならびに傾斜表面上のマトリクス、すなわち結合剤の完全および均一な飽和を示す。
【0053】
[実施例2]
同様の3次元物体について、実施例1のステップに従った。しかし、結合剤はヒマシ油中のポリ尿素の二成分結合剤であり、第2の成分はジフェニルメタン−4.4−ジイソシアネートであった。この二成分結合剤は、Evonik Industries AGから「Tego@ADDID 240」という名称で販売されている市販の第4級窒素化合物と、3%の第4級窒素化合物を含む混合物が得られるまで混合することによって導電性にされる。
【0054】
3次元物体は、水平ならびに傾斜表面上のマトリクス、すなわち結合剤が完全および均一に飽和された平滑コートを呈した。