【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、電子測定機器、特に、電気インピーダンストモグラフィ装置の電子回路部分と生体(例えば被験者または患者)の皮膚との間に、確実かつ安定した電気的接触を設けることである。さらに、本発明の目的は、皮膚内部への剪断応力ならびに皮膚表面および皮膚内部への高圧力を最小限に抑え、これによって圧力潰瘍などの傷害を防ぐ、電気インピーダンストモグラフィ用の新規かつ改良した電気的患者インターフェースである。さらに別の目的は、皮膚への確実な電気的接触を提供すると同時に、患者が動いていたり電極が動かされていたりしても、電極間のクロストークを回避することである。さらに別の目的は、特に1人の患者に使用する製品向けに、低コストで生産可能な解決策を得ることである。
【0026】
上記の目的は、請求項1に記載の電極センサで解決される。本発明の電極センサは、
(a)間隔をあけた個々の接触素子からなるアレイと、
(b)その接触素子と皮膚との間の接触を形成するためのインターフェース構造であって、
− インターフェース層の一方の面に皮膚接触表面を規定し、もう一方の面にアレイ接触表面を規定する、事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料であるインターフェース層、
− アレイ接触表面にある導電性材料の第1のパターン、
− 皮膚接触表面にある導電性材料の第2のパターン、および
− 第1のパターンと第2のパターンとを接続する電気経路
を備えるインターフェース構造と
を備え、
− 第1のパターンは、パターン素子を備えることと、
− 各々の接触素子は、インターフェース構造のアレイ接触表面と接触する際に、その第1のパターンのいくつかのパターン素子を覆う接触表面領域を有することと、
− 第1のパターンの別個のセクションがその個々の接触素子と接触することによって、電気経路群は、第2のパターンの別個のセクションとさらに接触を達成し、その結果、個々の接触素子は、皮膚接触表面に個々の有効電極を規定すること
とを特徴とする。
【0027】
その電極センサは、接触素子からなるアレイを含むため、電極センサアレイと呼んでもよい。
【0028】
そのため、本発明の電極センサの皮膚接触領域は、導電性か非導電性かのいずれかである領域に分割され、導電性である領域の経路のみが電気的に有効となり、電気コネクタとしての機能性を仮定し、この導電性領域は、一方の面で皮膚と直接接触し、もう一方の面で電子回路部品用のアレイの接触素子の1つと直接接触する。各々の導電経路およびこの導電経路を取り巻く非導電性空間の物理的寸法は、通常、接触素子の全長よりも小さい。実際には、2つ以上または多くの導電経路が、1つの接触素子と皮膚表面との間に単一の電気的接触を形成することが好ましい。さらに詳細には、電極ごとに電気経路が、少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも50個ある。パターンおよび電気経路の導電性材料は、上記の事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料と比較して、良好に導電する。
【0029】
インターフェース構造の第2のパターンも、パターン素子を備えることが好ましい。
【0030】
上記の目的は、
− アレイ接触表面にある導電性材料の第1のパターンは、ドット、線、スポットおよび/またはパッチなどのパターン素子を備え、
− 皮膚接触表面にある導電性材料の第2のパターンは、ドット、線、スポットおよび/またはパッチなどのパターン素子を備え、
− 電気経路は、第1のパターンのパターン素子を第2のパターンのパターン素子と接続する、
電極センサで解決されることが有利である。
【0031】
パターンの前記パターン素子は、相互に電気的に絶縁されていることが好ましい。そのため、パターンは、電気的に整合性がない。電気経路は、第1のパターンの個々のパターン素子を第2のパターンの個々のパターン素子と接続する。
【0032】
各々の接触素子は、接触表面領域を有し、この接触表面領域は、インターフェース構造のアレイ接触表面に接触すると、第1のパターンのいくつかのパターン素子(すなわち多くのドット、線、スポットおよび/またはパッチ)を被覆し、その結果、第1のパターンの別個のセクションがその個々の接触素子と接触することによって、電気経路群は、第2のパターンの異なるセクションとの接触を達成し、その結果、各々の接触素子は、皮膚接触表面に個々の有効電極を規定することが好ましい。
【0033】
インターフェース構造は、皮膚を防護し、間隔をあけた個々の接触素子からなるアレイと皮膚を接触させるための費用効果が高い中間物である。その特殊な利点は、アレイが、インターフェース構造上にランダムに配置されることができるという点である。なぜなら、各々の接触素子は接触表面領域を有し、この接触表面領域は、インターフェース構造のアレイ接触表面と接触すると、第1のパターンの多くのドット、線、スポットおよび/またはパッチを被覆するからである。そのため、その第1のパターンの小さいドット、線、スポットおよび/またはパッチと比較して、接触素子は比較的寸法が大きいために、一度に、インターフェース構造のアレイ接触表面上の位置とは無関係に、いくつかまたは多くの経路と接触することができる。
【0034】
第1のパターンおよび/または第2のパターンは、整合性がないパターンであり、特に、例えば、導電性のスポット、ドット、パッチおよび/または線からなる整合性がないパターンであることが好ましい。これはつまり、スポット、ドット、パッチおよび/または線など、1つのパターンの別個の素子は、互いに電気的に絶縁されているということである。そのため、本明細書での別個の(distinct)という用語は、電気的に絶縁されているという意味である。
【0035】
表面の大部分にあるスポット、ドット、パッチおよび/または線は、互いに電気的に絶縁されているため、言及したパターンは、電気的に整合性がない。しかしながら、一方の表面にある第1のパターンのスポット、ドット、パッチおよび/または線などのパターン素子は、もう一方の表面にある第2のパターンのスポット、ドット、パッチおよび/または線などのパターン素子と個々に接続されていることが好ましい。第1のパターンのスポット、ドット、パッチまたは線と、第2のパターンのスポット、ドット、パッチまたは線との間の個々の接触は、経路を介して達成される。この経路は、互いに電気的に絶縁されている、すなわち相互に電気的に絶縁されていることが有利である。このようにする代わりに、第1のパターンのスポット、ドット、パッチまたは線からなる群と、第2のパターンのスポット、ドット、パッチもしくは線またはスポット、ドット、パッチもしくは線からなる群との間の個々の接触は、分岐経路すなわち相互接続した経路からなる群によって達成される。さらに、このようにする代わりに、第2のパターンのスポット、ドット、パッチまたは線などのパターン素子からなる群と、第1のパターンのスポット、ドット、パッチ、線などのパターン素子またはスポット、ドット、パッチもしくは線からなる群などのパターン素子の群との間の個々の接触は、分岐経路すなわち相互接続した経路からなる群によって達成される。
【0036】
電極センサは、各パターンが、ドット、線、スポットおよび/またはパッチなど、多数の個々の(すなわち電気的に相互に絶縁された)パターン素子で構成されることを特徴とすることが好ましい。そのため、アレイ接触表面にあるパターン素子は、電気的に互いに絶縁されている。その上、皮膚接触表面にあるパターン素子は、電気的に互いに絶縁されていることが好ましい。
【0037】
パターン(すなわち第1のパターンまたは第2のパターン)の多数のパターン素子は、少なくとも3個のパターン素子、さらに好ましくは少なくとも5個のパターン素子、さらに一層好ましくは少なくとも10個のパターン素子を備えることが好ましい。
【0038】
さらに、電極センサは、第1のパターンを第2のパターンに接続している電気経路が、第1のパターンの個々のドット、線、スポット、パッチおよび/またはこの群を、第2のパターンの個々のドット、線、スポット、パッチおよび/またはこの群に接続することを特徴とすることが好ましい。
【0039】
実際には、皮膚接触表面にある個々の有効電極のサイズおよび形状は、個々の接触素子のサイズおよび形状に左右される。例えば、経路が、インターフェース構造の2つの本質的に平行な表面を、その表面に対して本質的に垂直な線と接続している場合、個々の接触素子がインターフェース構造と接触している領域のサイズおよび形状は、皮膚接触表面に伝達されて有効電極を形成する。そのため、接触領域および有効電極は、形状、輪郭および寸法がほぼ同じであってもよい。しかしながら、有効電極を形成する導電パターンは、導電性のドット、パッチおよび/または線からなる整合性がないパターンで構成されてもよい。
【0040】
間隔をあけた個々の接触素子からなるアレイは、アレイ接触表面に取り外し可能なように固定できることが有利である。
【0041】
第1のパターンおよび第2のパターンは、ランダムにまたは規則的に分布したパターン素子からなる構成(好ましくは均質の構成)であることが好ましい。このことから、個々の有効電極の寸法および形状は、個々の接触素子の寸法および形状によって実質的に規定され、この寸法および形状に実質的に一致するということになる。
【0042】
経路は、インターフェース層の両面で実質的に互いに対面して位置するパターン素子を接続することが好ましい。このことから、インターフェース層の一方の面にある個々の有効電極の位置は、実質的にインターフェース層のもう一方の面にある個々の接触素子の位置によって規定され、この位置に一致するということになる。有効電極領域は、これに対応する接触素子の位置に対して、せいぜい10mm、さらに好ましくはせいぜい5mm、またさらに好ましくはせいぜい2mm、皮膚接触表面に平行な任意の方向にシフトされることが好ましい。その電極センサの有利な作用は、インターフェース構造および接触素子からなるアレイを含む2つの部分においてその構造に関連している。センサを使用している間、この2つの部分は、電気的接触を確保するために互いに結合されている必要がある。2つの部分は、恒久的な形で物理的に結合されることができるため、例えば両部分のいずれかが摩耗したり非衛生的になったりしたときは、一緒に取り外される。集中医療の状況など、特定の使用例では、全体的にまたは部分的に使い捨て可能なセンサが好ましいかもしれない。特定の状況では、2つの部分は、例えば摩耗または破損した場合にどちらか一方の部分を廃棄するか、使用していない間どちらか一方の部分を一時的に取り外すかのいずれかにするために、互いに取り外し可能であることが望まれるだろう。例を挙げると、アスリートを分析している間、接触素子からなるアレイは、衣服タイプのインターフェース構造から一時的に取り外されることができる。別の例では、使用中に患者または被験者の皮膚と接触していたインターフェース構造は、使用後に処分され、新しいものと取り替えられることができる。このようにする代わりに、インターフェース部分は、再利用するために洗浄され、再度取り付けられる。そのインターフェース層は、皮膚と直接接触するために汚染され、衛生上の理由から、他の患者または被験者を分析するのに使用してはならない。インターフェース構造は、比較的安価で製造できる。しかしながら、接触素子からなるアレイは再利用可能なものである。そのアレイは、間隔をあけた個々の接触素子(例えばEITチップ)を備え、この接触素子は、バスシステムを介して電気的に接続されることが好ましく、任意にさらに支持構造で支持される。使い捨て可能なインターフェース構造および再利用可能なアレイは、病院、研究機関および個人の家で使用するためのEIT測定法に対する、ユーザに良心的な電極センサを形成する。インターフェース構造は、ベルトまたはストリップとして形成されることができる。しかしながら、インターフェース構造を衣服として設計するか、または衣服の中に組み入れることも可能である。このような設計は、動いているアスリートまたは患者のEIT検査で、最適な使用法を見出すことができる。
【0043】
電極センサは、少なくとも2つの取り外し可能な部分で構成される。一方の部分は、間隔をあけた個々の接触素子からなるアレイである。もう一方の部分は、その接触素子と皮膚との間の接触を形成するためのインターフェース構造である。
【0044】
個々の有効電極は、インターフェース構造にある接触素子の近傍の経路を選択することによって規定されることが好ましい。そのため、各接触素子は、特定の経路群と接触し、これによってこれらの経路は、経路と皮膚との間の接触が達成される皮膚接触領域に通じる。
【0045】
個々の接触素子は、個々の有効電極の少なくとも1つの寸法、すなわち個々の有効電極の幅または長さを規定することが有利である。例えば一実施形態では、接触素子からなるアレイは、ストリップ様の非導電性材料の長手方向の延びに沿って広がっている。各接触素子は、平行な導電線の群に接続し、この導電線は、(アレイと接触している面から始まって)皮膚接触平面の内部およびこの平面に続く。その導電線は、ストリップの長手方向の延びに対して本質的に垂直の方向に配置されることが有利である。皮膚接触平面では、平行な線からなる各群は、幅(または長さ)が対応する接触素子のサイズで定められる特定の領域を被覆する。各導電線の幅は、インターフェース構造が例えば織材料または編材料から製造されている場合、導電性の糸または糸混合物の幅であることが好ましい。しかしながら、特に、導電線の製造にプリント技術が用いられる場合は、様々な形状および寸法が可能である。
【0046】
一方、個々の接触素子は、個々の有効電極の2つの寸法、すなわち個々の有効電極の面積を規定する。例えば別の実施形態では、接触素子からなるアレイは、ストリップ様の非導電性材料の長手方向の延びに沿って広がっている。各接触素子は、導電線からなる群に接続し、この導電線は、(アレイと接触している面から始まって)ストリップ様の非導電性材料を通って皮膚接触平面に現れる。皮膚接触平面では、見えている導電線の各群は、実際には対応する接触素子のサイズおよび形状で定められる特定の領域を被覆する。簡易な実施形態では、第1および第2の導電パターンは、ドットのパターンを形成する。つまり、経路は、見えている端部で導電性のドットを形成する。このほか、さらに精緻なパターンも可能である。例えばドットの直径は、インターフェース構造と接触素子との間および/またはインターフェース構造と皮膚との間の電気的接触を増大させるために、経路の直径に比して大きくしてもよい。
【0047】
原則として、電気的接触を達成するには、接触素子から皮膚接触平面へと通じる単一の電気経路で十分である。しかしながら、個々の有効電極を形成するためには、接触素子を複数の電気経路に接続することが有利である。これによって、確実な接触が達成され、経路のうちのいくつかに欠陥があったとしても電流が流れる。
【0048】
導電性の第1のパターン、導電性の第2のパターンおよびインターフェース構造の電気経路は、インターフェース構造を接触素子と接触させることによって、アレイ接触表面上の接触領域が本質的に皮膚接触表面上の個々の有効電極の領域を規定するように設計されることが好ましい。
【0049】
接触素子は、支持構造に取り付けられ、これによってその支持構造およびインターフェース構造は、互いに解放可能なように固定されることが好ましい。解放可能な接続は、フックとループからなるテープ(例えばベルクロによる留め具)またはその他の解放可能な留め具で達成されることができる。このようにする代わりに、例えばヒートシールによる接続など、解放可能でない接続も可能である。
【0050】
導電性の第1のパターンは、アレイ接触表面上で間隔をあけた導電線で形成され、この線は、経路を介して第2のパターンの別個のセクション、スポットまたは線と個々に電気的に接続されることが好ましい。パターンの1セクションは、パターンのスポット、ドット、線および/またはパッチのサブセット(すなわちパターン素子のサブセット)を規定する。そのため、パターンの1セクションは、少なくとも2つのスポット、ドット、線もしくはパッチまたはスポット、ドット、線およびパッチで構成される群のうちの任意の2つの素子からなる少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0051】
導電性の第2のパターンは、皮膚接触表面上で間隔をあけた導電線で形成され、これによって複数のその線は、個々の有効電極を形成することが好ましい。
【0052】
導電性の第1のパターンは、アレイ接触表面上で間隔をあけた導電スポットで形成され、スポットは、経路を介して第2のパターンの別個のセクション、スポットまたは線と個々に電気的に接続されることが好ましい。
【0053】
導電性の第2のパターンは、皮膚接触表面上で間隔をあけた導電スポットで形成され、これによって複数のそのスポットは、個々の有効電極を形成することが好ましい。
【0054】
導電性の第2のパターンは、皮膚接触表面上で本質的に連続する導電性材料の領域で形成され、これによってその材料のセクションは、個々の有効電極を形成することが好ましい。そのため、第2のパターンは皮膚接触表面のすべてまたはほとんどを被覆するが、その第2のパターンの特定の領域のみが個々の有効電極を形成する。その理由は、第1のパターン上の別個の第1の領域をアレイの接触素子と接触させることによって、第2のパターン上の対応する第2の領域(すなわち、その第1の領域に電気的に接続している第2のパターンの領域)のみが個々の有効電極を形成するからである。
【0055】
一方、導電性の第1のパターンは、インターフェース層のアレイ接触表面から皮膚接触表面まで本質的に垂直に延びている導電経路を介して、第2のパターンに電気的に接続される。これによって、導電経路は、事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料からなるインターフェース層を貫通する。そのため、第1のパターンおよび第2のパターンならびに経路は、共に3次元のパターン(すなわち体積のあるパターン)を形成する。
【0056】
導電性の第1のパターンおよび第2のパターンならびに導電経路は、皮膚接触表面からアレイ接触表面まで延びる、体積のあるパターン(すなわち3次元のパターン)を共に形成することが好ましい。
【0057】
アレイ接触表面の導電性の第1のパターンは、事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料の側面端部の周囲、および任意に非導電性コア材料の周囲に延びる導電経路を介して、皮膚接触表面の第2のパターンに電気的に接続されることが好ましい。これによって、事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料からなるインターフェース層は、側面端部に沿って折れ曲げられることが好ましい。折り曲げることにより、側面の湾曲部が形成される。そのため、第1のパターンおよび第2のパターンは、逆方向を向く2つの外表面に位置する。2つのパターンは、湾曲部の周囲の表面に沿って走る電線を介して電気的に接続される。
【0058】
導電性の第1のパターン、導電性の第2のパターンおよび導電経路は、同一材料で形成されることが好ましい。
【0059】
導電性の第1のパターン、導電性の第2のパターンおよび導電経路は、インターフェース層と一体化していることが好ましい。第1のパターン、第2のパターン、経路およびインターフェース層は、インターフェース構造を形成する。このインターフェース構造は、使い捨て可能なように設計され、比較的安価で製造されることができる。
【0060】
電気経路は、互いに間隔をあけている、すなわち電気的に相互に絶縁されていることが有利である。そのため、例えば経路は、インターフェース層の表面に位置するときは間隔をあけることができ、かつ/またはインターフェース層の厚みを貫通するときは非導電性材料で隔てられることができる。
【0061】
第1のパターンおよび第2のパターンの別個のセクションとの接触を達成している電気経路群は、互いに間隔をあけている、すなわち電気的に相互に絶縁されていることが有利である。例えば電気経路群は、その群を形成する単一の経路よりも長い距離を互いに隔てている。
【0062】
支持構造は、柔軟なベルト様構造を形成することが好ましい。柔軟な構造は、それを貼り付ける体の部分に適応し、着用者にとって快適である。さらに好ましくは、支持構造は、柔軟かつ可撓性である。これによって、特に、生体の胸部周囲に固定される場合に、動作および呼吸の障害にならない。
【0063】
インターフェース層およびこれに伴いインターフェース構造は、フォーム、織繊維、編繊維または不織繊維から製造されることが好ましい。このような材料によって水分発散が可能になるため、着用が快適になる。
【0064】
第1のパターン、第2のパターンおよび経路は、導電性塗料または微粒子からなる材料を備えることが好ましく、この材料は、スパッターまたは印刷、特にマイクロ印刷によって塗布されることが好ましい。
【0065】
このようにする代わりに、第1のパターン、第2のパターンおよび経路は、導電性の糸、ワイヤーまたは繊維を備え、これらは例えば、インターフェース構造内に織り込まれるか、編み込まれるか、または縫い込まれる。
【0066】
インターフェース構造は、第1の導電性を有する複数の非圧縮領域と、第2の導電性を有する圧縮領域とを含むフォーム材から製造されることが好ましく、これによって第2の導電性は、第1の導電性よりも高い。
【0067】
電極センサは、キットの形態で用意することができる。このようなキットは、ユーザが組み立てることのできる構成要素を備えていることが有利である。例えば有用かつ適切なキットは、以下の2つの構成要素(a)および(b):
(a)間隔をあけた個々の接触素子からなるアレイ、および
(b)その接触素子と皮膚との間の接触を形成するためのインターフェース構造であって、
− 事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料からなるインターフェース層であって、このインターフェース層の一方の面に皮膚接触表面を規定し、もう一方の面にアレイ接触表面を規定する、インターフェース層と、
− アレイ接触表面にある導電性材料の第1のパターンと、
− 皮膚接触表面にある導電性材料の第2のパターンと、
− 第1のパターンを第2のパターンに接触させる電気経路と
を備えるインターフェース構造
を備え、
これによってキットは、
− 第1のパターンがパターン素子を備え(かつ任意に第2のパターンもパターン素子を備え)ることと、
− 各々の接触素子が接触表面を備え、この接触表面は、インターフェース構造のアレイ接触表面と接触する際に、その第1のパターンのいくつかのパターン素子を被覆するのに適していることと、
− 第1のパターンの別個のセクションをその個々の接触素子に接触させることによって、電気経路群は、さらに第2のパターンの別個のセクションとの接触を達成し、その結果、個々の接触素子が皮膚接触表面上の個々の有効電極を規定できること
とを特徴とし、このようになるように設計されることが有利である。
【0068】
キットのうちの少なくとも2つの構成要素を組み立てた後、電極センサを使用して電気測定を実行することができる。
【0069】
電極センサの好適な特徴、有利な特徴かつ/または代替の特徴をそれぞれ電極センサのキットに適用してもよい。
【0070】
上記の目的は、請求項8に記載の電極センサ製造方法で解決される。本発明による電極センサの製造方法は、間隔をあけた接触素子からなるアレイおよびその接触素子と皮膚との間の接触を形成するためのインターフェース構造を備え、
− インターフェース層の一方の面に皮膚接触表面を規定し、もう一方の面にアレイ接触表面を規定するインターフェース構造を、事実上電気的に絶縁している材料または導電性に乏しい材料の層の形態で供給するステップと、
− アレイ接触表面に導電性材料の第1のパターンを作成するステップと、
− 皮膚接触表面に導電性材料の第2のパターンを作成するステップと、
− 第1のパターンを第2のパターンに接続する導電経路を作成するステップと、
− 導電性の第1のパターンのセクションを、間隔をあけた接触素子からなるアレイに接触させるステップと
を含む。
【0071】
この製造方法は、アレイおよびインターフェース構造をその特定の用途に応じて別々に製造できるため、特に有利である。例えば、集中治療の場合と、アスリートを検査する場合とでは、測定に求められるインターフェース構造の設計要件は異なる。患者または被験者の状態に応じて、特別に適応させたインターフェース構造を同一のアレイと組み合わせてもよい。さらに、測定目的の場合、様々なアレイの設計を様々なインターフェース構造と組み合わせてもよい。
【0072】
第1のパターンおよび第2のパターンならびに経路は、導電性材料のスポットおよび/または線をインターフェース構造に供給または挿入することによって製造されることが好ましく、インターフェース層を皮膚接触表面からアレイ接触表面まで貫通する。
【0073】
接触素子は、支持構造に取り付けられるまたは固定されることが好ましい。支持構造は、好ましくはアレイ状に接触素子を整列させ、相互の距離および位置を決定する。支持構造は、機械的安定性を付与し、アレイの接触素子とインターフェース構造との間の電気的な相互接続を達成する。支持構造は、インターフェース構造および接触素子からなるアレイが2つの取り外し可能な部分として設計される場所にあることが好ましい。電極センサを使用する場合、接触素子を備えるインターフェース構造およびその支持構造は、互いに接続される。センサを使用している間、インターフェース構造および電極素子は、物理的かつ電気的に互いに接触している。
【0074】
使用の際に有利なのは、使い捨て可能な電極センサである。インターフェース層を有するインターフェース構造、導電性の第1のパターン、導電性の第2のパターンおよび導電経路は、使い捨て可能なものとして設計されることが好ましい。
【0075】
本明細書に記載の電極センサは、医療用のモニタリングに使用することができ、診断の補助にすることができる。電極センサは、生体に電界を印加し、測定するのに有用である。特に、電極センサは、電気インピーダンストモグラフィ(EIT)測定法を実行するのに使用される。その上、電極センサは、生体分析のための非侵襲的方法である。
【0076】
本発明の解決策を、以下の実施形態よび例で詳細に説明する。
【0077】
上記のインターフェース構造の機能は、様々な実施形態を通じて実現することができる。以下にいくつかの例示的実施形態を記載する。特定のニーズに対してさらに最適化するために、これらの例示的実施形態を組み合わせたものを使用してもよい。
【0078】
本発明の好適な一実施形態は、生体適合性があり波形で区分ごとに圧縮された導電性のフォーム材製ストリップを使用する。フォーム材製ストリップの区分された構造は、恒久的に圧縮され、例えばフォーム材製ストリップの製造途中で誘導される。このようにする代わりに、全体的に圧縮されている、すなわちどの箇所でも均等に強く圧縮されているフォーム材製ストリップを使用してもよい。クロストークを避けるため、非圧縮型のフォームの電気抵抗は、人間の皮膚の電気抵抗とほぼ同じ(好ましくは50〜1000オームの)、またはさらに好ましくはそれ以上で、例えば1000オームを上回る、または10000オームを上回る必要があるが、当然ながら人間の皮膚の抵抗を下回ってはならない。その構造のうち、圧縮されて密度が高く、そのために導電性がより高くなっている薄い部分であって、皮膚と接触している前面および電子回路と物理的かつ電気的に接触している背面にある部分は、実際に低インピーダンス電極として作用し、この電極を介して電流が注入され、電圧が測定されるが、皮膚と接触しているがその電子回路とは直接接触していない、圧縮されずに導電性が低いフォーム材の部分は、隣接する導電体または電極の間で絶対的または相対的な電気絶縁体または抵抗として作用する。圧縮されていない区分は電流を良好に伝導しないが、機械的安定性、伸縮性およびパディングに重要な役割を果たしている。導電性フォーム材は、電気的な理由で選択した場所で圧縮されるだけでなく、女性の乳房などの特定構造の領域の特殊なニーズに適応するように変形することもできる。まったく圧縮されていないか、全長にわたって同じ程度で圧縮されているフォーム材製ストリップの材料を使用する場合、クロストークを避けるため、好ましくは、フォーム材の導電性は皮膚に対する導電性に近く、最も好ましくは、導電性は皮膚の導電性と同等またはこれよりも低い。さらに、本発明は、主として非導電性のフォーム(例えばPEまたはPU)を基盤に作製されることもでき、このフォームは、例えば炭素などの導電性物質でコーティングするか、この導電性物質に含浸することによって導電性にされる。この場合、導電体として作用すると思われるそのような区分のみでフォーム材を導電性にすることが有利かもしれない。
【0079】
一般に、網状のフォームが有利に使用される。気体および液体を透過する網状のフォームによって、材料の呼吸がある程度確保されるため、電気的に接触する領域であっても皮膚の正常な水分発散が可能になる。
【0080】
本発明のもう1つの実施形態は、典型的には下着に見られる従来の「ダブルリップ様(double−rip−like)」の形で別々の導電経路を作成するために、織布または編布で作製される。選択される区分は、導電性糸で作製され、隆起した部分は皮膚と接触し、その隣の谷部は、布帛の反対側の面の電子回路との接触を達成し、これによって布帛を介して導電経路を備える。これらの導電部分は、同様の布帛構造または異なる布帛構造をしている非導電性のスペーサ区分を介して体系的に分離され、これによって隣接する導電部分を互いに電気的に絶縁している。電子回路と合わせて使用する場合、各電極の電気的な機能面積のサイズおよび患者インターフェース1つ1つの実際の面積は、両者(片側の皮膚と反対側の電子回路の接触部分)と直接接触している導電素子の総数および長さによって決まる。
【0081】
本発明のもう1つの実施形態は、繊維の片側の表面から反対側の表面までの厚みを通るように通じる導電経路を含む、3次元に編んだ通気性のあるスペーサ繊維で作製される。スペーサ繊維の基本的原理は、いわゆるスペーサ糸で外側の2層を結合すると同時にある程度の距離を保つことによって、外側の生地表面と内部構造とを合わせたものを形成することである。経路は、両側の表面を電気的に接続し、好ましくは各側の表面の個々の電気的接触領域または電気的接触スポットを互いに接続する追加の導電性糸で作製されることができる。各表面の個々の電気的接触領域または電気的接触スポットは、例えば経路を形成する同じ糸または印刷した導電パターンから形成されることができる。
【0082】
本発明のもう1つの実施形態は、導電性のインクもしくは重合体で作製された導電経路またはドットとは別個の機械的キャリア材料として、織繊維または不織繊維の前面に印刷、マイクロ印刷またはスパッターを行うことによって実現できる。これらのインクまたは重合体は、局所的に繊維中、そして繊維を通ってに漏れ、このようにして導電スポットはその背面まで貫通する。このように、繊維の前面から背面までに及ぶ接続されていない別々の導電経路が作成される。印刷、マイクロ印刷またはスパッターによるこのような手法の特定の利点は、面積の大きい布帛または布帛の束全体でさえもこのように準備できるため、生産コストが極めて低くなる点である。マイクロ印刷を利用すれば、空間の解像度も導電路の総数も最大にすることができる上に、生地または繊維の所望で公知の利点(特にその通気性)を維持することができる。このように印刷した導電路を使用して、心臓領域および肺領域など、特に関心のある領域に上記のような印刷箇所を有するTシャツを生産することもできる。
【0083】
本発明のもう1つの実施形態は、互いに電気的に絶縁され、空間的に離れた個々の導電路を、任意の種類のキャリア材料を介して刺繍、ステッチまたは縫製することによって実現される。
【0084】
上記の発明のさらにもう1つの実施形態は、可撓性もしくは非可撓性の不織繊維または織繊維の片側に、所定の距離を置いて平行だが伸縮方向に対して垂直になるように、導電ワイヤーを取り付けて作製される。これによって、伸縮方向は、分析対象の体部分の外周方向と一致する。これらの電気的に絶縁されていない導電ワイヤーは、互いに直接接触していない電気経路を作成する。これらの個々の導電経路は、互いの間にクロストークが生じないように、十分な距離を置いて体系的に隔てられている。1束のワイヤーの一方の端部は、各電極の電子回路に接続され、これによってこのような接続に使用されるワイヤーの総数は、電気的に機能する各電極の幅を決定し、これに伴い各々の患者インターフェースの実際の区分を決定する。両者(片側の皮膚と反対側の電子回路の接触部分)と直接接触しているワイヤーの総数は、幅を決定するが、皮膚と直接接触しているワイヤーの長さにそれぞれの幅を乗算したものは、最終的に電極として作用する有効面積を決定する。優先的に、このような電極の設計は、電子接点がちょうど皮膚との接触箇所の反対側に位置するように、上記の材料を非導電繊維のコアまたはフォームなどのパッド材料の周囲に折り曲げるまたは巻くことによって得ることができる。
【0085】
その他の実施形態は、上記の実施形態を組み合わせたものから得られる。このようにするために、2つの異なる繊維からなる電気経路は、積層した複合体を形成し、これによって2層のインターフェース構造を形成することによって、電気的に接触することができ、この場合、繊維の一方の種類は、皮膚と接触する側に使用され、繊維のもう一方の種類は電極アレイと接触する側に使用される。例えば、導電性のフォーム材製ストリップ(皮膚と接触する側)と編んだスペーサ繊維(電極と接触する側)とを合わせた2層のインターフェース構造を形成することによって、最適な電極接触特性および着用者にとっての快適性をそれぞれ達成することができる。
【0086】
本発明は、1つまたは複数の電極、典型的には電極のアレイと、生体、特に人間の皮膚との間を接触させるのに使用されるものである。本発明の利点は、電極が皮膚に直接触れず、皮膚の表面および内部への摩擦、押圧および剪断応力を防止または分散する繊維層、フォームまたは布帛を介して触れる点である。フォーム、繊維および布帛を使用した場合の利点は、材料の非閉塞性に基づいている。EIT検査中の水分発散は、材料が気体および液体に対して透過性があるために、広範囲で確実に行われる。さらに別の利点は、電極が繊維、フォームまたは布帛からなる層の上で動いているとしても、あるいは電極が体の動きによって動かされているとしても、常に皮膚への所定の経路があるという点である。さらに別の利点は、電極間の電気的接触がないまたは最小限しかなく、すなわちクロストークが最小限であるという点である。さらにまた別の利点は、このような繊維、フォームまたは布帛は、極めて低コストで生産できるという点である。