特許第5986085号(P5986085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986085振動音響減衰のための中間層の選択方法、中間層、およびこのような中間層を含むグレージングユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986085
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】振動音響減衰のための中間層の選択方法、中間層、およびこのような中間層を含むグレージングユニット
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20160823BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160823BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C03C27/12 Z
   B32B7/02 101
   B60J1/00 H
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-525335(P2013-525335)
(86)(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-541484(P2013-541484A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】FR2011051927
(87)【国際公開番号】WO2012025685
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月15日
(31)【優先権主張番号】1056725
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】マルク ルフェル
(72)【発明者】
【氏名】タビド フルニエ
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−206445(JP,A)
【文献】 特開2004−075501(JP,A)
【文献】 特表2005−527806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの外部層(4、5)と1つの中心層(3)とを含み、グレージングユニットの2枚のガラスシート(1、2)の間に組込まれるように構成された粘弾性プラスチック中間層を選択するための方法において、
− 中心層(3)を形成するように構成された粘弾性プラスチック材料製の第1のコンポーネント、および、外部層(4、5)を形成するように構成された粘弾性プラスチック材料製の第2のコンポーネントを提供するステップと、
− 前記第1のコンポーネントおよび前記第2のコンポーネントの剛性率G’を、ビスコアナライザを用いて測定するステップと、
− 前記第2のコンポーネントの材料を、その剛性率G’が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×10Pa以上である場合にのみ選択するステップと、
− 前記第1のコンポーネントの厚みhを、hが0.31mm〜1.20mmとなり、かつ、せん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×10Pa/m〜2.37×10Pa/mとなるように設定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のコンポーネントの厚みhは、hが0.50mm〜0.90mmとなり、G’/hが20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について7.56×10Pa/m〜1.42×10Pa/mの間に存在するように、設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記厚みhを設定するステップの前に、
− 前記ビスコアナライザを用いて、20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について、前記第1のコンポーネントの損失係数tanδを測定するステップと、
− 前記第1のコンポーネントを、その損失係数tanδが0.6より大きい場合にのみ選択するステップと、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
− 前記第2のコンポーネントの材料を、その剛性率G’が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について10Pa〜2×10Paである場合にのみ選択するステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
− 前記第2のコンポーネントの材料の接着力が規則R43の要件に適合していることを、2枚のガラスシートにボンディングされた前記第2のコンポーネントの材料で構成された中間層の供試体を捩ること、前記第2のコンポーネントの材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定すること、および、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算することによって確認し、接着強度(τ)のこの値を5MPa未満の許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにするステップと、
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと前記第2のコンポーネントの材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し、
・ 前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc−ref)、前記基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei−ref)、および前記基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg−ref)を決定し、
・ 前記基準積層グレージングユニット内の基材厚みに等しい任意の積層グレージングユニットの基材厚みについて作成されている規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc−min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(e)の一関数として表わすグラフ(C)であって、前記基準積層グレージングユニットの基材厚みに等しい、いずれかの積層グレージングユニットの基材厚み(e=eg−ref)のために構築された、グラフ(C)を用いて、前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc−min=Jc−ref)に対応する最小所要中間層厚み(ei−min)を推定し、
・ eが前記最小所要中間層厚み(ei−min)以上となるように前記第2のコンポーネントの厚みeを設定する、
ことによって、前記第2のコンポーネントの厚みeを設定するステップと、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
グレージングユニットの2枚のガラスシートの間に組込まれてこのグレージングユニットに振動音響減衰特性を与えるように構成された粘弾性プラスチック中間層であって、
− 20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×10Pa以上の剛性率G’を有する粘弾性プラスチック材料で作られた2つの外部層(4、5)と、
− 厚みhが0.31mm〜1.20mmとなり、中心層のせん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×10Pa/m〜2.37×10Pa/mとなるような、厚みhの粘弾性減衰特性を有する、中心層(3)と、
を含み、
前記中心層(3)が前記2つの外部層(4、5)の間にある、中間層。
【請求項7】
前記中心層(3)の厚みhは、hが0.50mm〜0.90mmとなり、G’/hが20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について7.56×10Pa/m〜1.42×10Pa/mの間に存在するように設定される、請求項6に記載の中間層。
【請求項8】
前記中心層(3)が、20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について、0.6より大きな損失係数tanδを有する、請求項6または7に記載の中間層。
【請求項9】
前記外部層(4、5)が、20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について10Pa〜2×10Paの剛性率G’を有する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の中間層。
【請求項10】
前記外部層(4、5)の各々は、厚みeを有し、
− 前記外部層の材料の接着力は、規則R43の要件に適合し、前記接着力は、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定すること、および、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算すること、そして次に、接着強度(τ)のこの値を5MPa未満の許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにすることにより、決定され、
− 前記外部層の各々の厚みeは、規則R43の要件を満たすように設定され、
前記厚みeは、
・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し、
・ 前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc−ref)、前記基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei−ref)、および前記基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg−ref)を決定し、
・ 前記基準積層グレージングユニット内の基材厚みに等しい任意の積層グレージングユニットの基材厚みについて作成されている規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc−min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(e)の一関数として表わすグラフ(C)であって、基準積層グレージングユニットの基材厚みに等しい、いずれかの積層グレージングユニットの基材厚み(e=eg−ref)のために構築された、グラフ(C)を用いて、前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc−min=Jc−ref)に対応する最小所要中間層厚み(ei−min)を推定し、
・ 前記厚みeが前記最小所要中間層厚み(ei−min)以上となるように、外部層の各々の厚みeを設定することによって、決定される、請求項6または記載の中間層。
【請求項11】
− 1.4mm〜2.1mmの厚みを有するガラスシート(1)と、
− 1.1mm〜1.6mmの厚みを有するガラスシート(2)と、
− ガラスシート(1、2)の間にある、請求項6〜10のいずれかに記載の中間層(3、4、5)と、
を含むグレージングユニット。
【請求項12】
前記外部層(4、5)の各々の厚みe、および前記ガラスシートの合計厚みは、
− 前記外部層の材料の接着力が、規則R43の要件に適合し、前記接着力は、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算すること、そして次に、接着強度(τ)のこの値を5MPa未満の許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにすることにより決定され、
− 前記外部層の各々の厚みe、および前記ガラスシートの合計厚みは、規則R43の要件を満たすように設定され、
前記外部層の各々の厚みe、および前記ガラスシートの合計厚みは、
・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し、
・ 前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc−ref)、前記基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei−ref)、および前記基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg−ref)を決定し、
・ 規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc−min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(e)および任意の積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(e)の一関数として表わすグラフ(C)であって、前記基準積層グレージングユニットの基材厚みに等しい、いずれかの積層グレージングユニットの基材厚み(e=eg−ref)のために構築された、グラフ(C)を用いて、前記基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc−min=Jc−ref)に対応する中間層厚みとガラスシートの厚みの最適値(ei−opt、eg−opt)の組合せを推定し、
・ eが前記最適な中間層厚み値(ei−opt)以上となるように、前記外部層の各々の厚みeを設定し、かつ、ガラスシートの厚み(eg−dim)を前記最適なガラスシート厚み値(eg−opt)以上に設定する、ことによって決定される、請求項11に記載のグレージングユニット。
【請求項13】
1.4mm〜2.1mmの厚みを有するガラスシート(1)が車両の外側に向けられ、1.1mm〜1.6mmの厚みを有するガラスシート(2)が車両の内側に向けられている、請求項11または12に記載のグレージングユニットを含む車両。
【請求項14】
2枚のガラスシートおよびガラスシートの間に組込まれた中間層で構成されたフロントガラスの第2および第3の固有周波数の振動音響減衰のための、請求項6〜10のいずれか一項に記載の中間層の使用。
【請求項15】
車両のフロントガラス、車両のサイドウィンドウまたは車両のルーフウィンドウとしての、請求項11または12に記載のグレージングユニットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に移動用車両、特に自動車用に構成された積層グレージングユニット内に組込むことを目的として音響減衰特性を有する中間層を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車や自動車などの近代的輸送手段において快適性に寄与するあらゆる品質のうち、静音性が決定的要因となっている。
【0003】
エンジン、タイヤまたはサスペンション由来の騒音などの騒音をその発生源においてまたは空気または固体を介したその伝播の間に例えば吸収性コーティングまたはエラストマ製連結用構成要素などを用いて処理することにより、ここ数年来音響快適性は改善されてきている。
【0004】
空気を介した騒音の侵入を改善し、それ自体騒音源である乱流を低減させるために、車両の形状もまた改良されてきた。
【0005】
ここ数年間にわたって、音響快適性を改善する上でグレージングユニット特にプラスチック中間層フィルムを含む積層グレージングユニットが果たす役割が注目を集めてきた。積層グレージングユニットにはさらに、突発的破壊の際に断片が飛来する危険性を無くし、車上荒らしを予防するなどの他の利点がある。
【0006】
積層グレージングユニットにおいて標準的プラスチックフィルムを使用することは、音響快適性を改善する上では好適ではないことが実証されてきた。こうして、音響快適性の改善を可能にする減衰特性を有する特定的プラスチックフィルムが開発されてきた。
【0007】
以下の記述において、減衰フィルムに対する言及は、グレージングユニットに騒音削減の機能を与えるための改良型振動減衰を提供する粘弾性プラスチックフィルムに関するものである。
【0008】
グレージングユニットの音響性能は、中間層フィルムを構成する材料の損失係数tanδの値によって左右されることが示されてきた。損失係数は、熱の形で消散するエネルギーと弾性歪みエネルギーの間の比であり、これは材料のエネルギー消散能力を特徴づける。損失係数が高くなればなるほど消散されるエネルギーは大きくなり、したがって材料が果たす減衰能力は高くなる。
【0009】
この損失係数は、温度および周波数の一関数として変動する。所与の周波数について、損失係数は、ガラス転移温度として公知の温度でその最大値に達する。
【0010】
積層グレージングユニットの中間層として使用される材料は、所与の温度範囲および所与の周波数範囲について少なくとも0.6超などのかなり高い損失係数を有する、例えばアクリルポリマーまたはアセタール樹脂またはポリウレタンタイプの粘弾性プラスチックフィルムである。
【0011】
損失係数tanδは、ビスコアナライザーを用いて評価される。ビスコアナライザーは、材料の試供体を精確な温度および周波数条件下で歪みに付し、こうして材料を特徴づけるあらゆる規模のレオロジー値を獲得し処理することを可能にする機械である。
【0012】
積層グレージングユニット内への減衰中間層の統合に関して、損失係数tanδを単独で考慮すべきではなく、剛性率(shear modulus)G’が中間層の減衰特性において考慮すべき別の特性を構成しているということも同様に記述されてきた。欧州特許出願公開第844075号(EP−A−844075)明細書は、振動を減衰させるために、積層グレージングユニットの中間層は、剛性率G’および損失係数tanδに関して特定の値に対応していなければならない、ということを教示している。剛性率G’が材料の剛性を特徴づけるということが想起される。すなわち、G’が高くなればなるほど材料の剛性は高くなり、G’が低くなれば、材料の可撓性は高くなる。剛性率は温度と周波数に左右される。剛性率G’も同様に、ビスコアナライザーを用いて評価される。この文書では、より具体的に固体伝播由来の騒音を減衰させるためには、10℃〜60℃の温度、50Hz〜10,000Hzの周波数について、中間層の損失係数tanδは0.6より大きく、中間層の剛性率G’は2×107Pa未満であることが記載されている。
【0013】
さらに、積層グレージングユニットは、それがフロントガラスとして使用される場合、それに特異的な音響振動に付される。したがって、音響的に言えば、フロントガラスの4つの最初の固有周波数、詳細には100Hz〜240Hzであるフロントガラスの第2および第3の固有周波数は、きわめて不快である。欧州特許出願公開第844075号(EP−A−844075)明細書の中間層は、固体伝播騒音を減衰するためには好適であるものの、フロントガラス第1の固有周波数、詳細には第2および第3の固有周波数の振動音響減衰のためには好適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、フロントガラスの重量を増加させることなくフロントガラスの第1の固有周波数、詳細にはフロントガラスの第2および第3の固有周波数の減衰を最適化することを可能にする中間層を選択するための方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため本発明は、2つの外部層と1つの中心層とを含み、グレージングユニットの2枚のガラスシートの間に組込まれるよう構成された粘弾性プラスチック中間層を選択するための方法において、
− 中心層を形成するように構成された粘弾性プラスチック材料製の第1のコンポーネントおよび外部層を形成するように構成された粘弾性材料製の第2のコンポーネントを提供するステップと;
− 第1のコンポーネントと第2のコンポーネントの剛性率G’を、ビスコアナライザを用いて測定するステップと;
− 第2のコンポーネントの材料を、その剛性率G’が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×107Pa以上である場合にのみ選択するステップと;
− 第1のコンポーネントの厚みhを、hが0.31mm〜1.20mmとなり、かつせん断パラメータ(shear parameter)g=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mとなるように定めるステップと、
を含む方法を提供している。
【0016】
別の特徴によると、第1のコンポーネントの厚みhは、hが0.50mm〜0.90mmとなり、G’/hが20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について7.56×108Pa/m〜1.42×109Pa/mとなるように設定される。
【0017】
別の特徴によると、この方法は、厚みhを設定するステップの前に、
− ビスコアナライザを用いて第1のコンポーネントの損失係数tanδを測定するステップと;
− 第1のコンポーネントを、その損失係数tanδが0.6より大きい場合にのみ選択するステップと;
をさらに含む。
【0018】
別の特徴によると、この方法は、
− 第2のコンポーネントの材料を、その剛性率G’が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について108Pa〜2×108Paである場合にのみ選択するステップ、
をさらに含む。
【0019】
別の特徴によると、この方法は、
− 第2のコンポーネントの材料の接着力が規則R43の要件に適合していることを、2枚のガラスシートにボンディングされた第2のコンポーネントの材料で構成された中間層の供試体を捩ること、第2のコンポーネントの材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度(adhesive shear strength)を計算することによって確認し、接着強度のこの値を許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにするステップと;
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと第2のコンポーネントの材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し;
・ 基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度、基準積層グレージングユニットの中間層の厚みおよび基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚みを決定し;
・ 基準積層グレージングユニット内の基材厚みに等しい任意の積層グレージングユニットの基材厚みについて作成されている規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚みの一関数として表わすグラフを用いて、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値に対応する最小所要中間層厚みを推定し;
・ eが前記最適な中間層厚み値以上となるように第2のコンポーネントの厚みeを設定する、ことによって、第2のコンポーネントの厚みeを設定するステップと、
をさらに含む。
【0020】
同様に、フロントガラス重量を増加させることなく、フロントガラスの第1の固有周波数、詳細にはフロントガラスの第2および第3の固有周波数の減衰を最適化することを可能にする中間層に対するニーズも存在する。
【0021】
このため、本発明は、グレージングユニットの2枚のガラスシートの間に組込まれてこのグレージングユニットに振動音響減衰特性を与えるように構成された粘弾性プラスチック中間層において、
− 20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×107Pa以上の剛性率G’を有する粘弾性プラスチック材料で作られた2つの外部層と;
− 厚みhが0.31mm〜1.20mmとなり、中心層のせん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mとなるような、厚みhの粘弾性減衰特性を有する中心層と、
を含み、中心層が2つの外部層の間にある、中間層を提案している。
【0022】
別の特徴によると、中心層の厚みhは、hが0.50mm〜0.90mmとなり、G’/hが20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について7.56×108Pa/m〜1.42×109Pa/mとなるように設定される。
【0023】
別の特徴によると、中心層は、0.6より大きな損失係数tanδを有する。
【0024】
別の特徴によると、外部層は、20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について108Pa〜2×108Paの剛性率G’を有する。
【0025】
別の特徴によると、外部層の各々は、
− 外部層の材料の接着力が、規則R43の要件に適合し(なおこの接着力は、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度を計算すること、そして次に、接着強度のこの値を許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにすることにより決定される);
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し;
・ 基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度、基準積層グレージングユニットの中間層の厚みおよび基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚みを決定し;
・ 基準積層グレージングユニット内の基材厚みに等しい任意の積層グレージングユニットの基材厚みについて作成されている規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚みの一関数として表わすグラフを用いて、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値に対応する最小所要中間層厚みを推定し;
・ eが前記最適な中間層厚み値以上となるように外部層の厚みeを設定する;
ことによって決定される外部層各々の厚みeが、規則R43の要件を満たすように設定される、
ような厚みeを有している。
【0026】
別の特徴によると、中心層は、
− 厚みがhAでせん断パラメータgAを有する粘弾性プラスチック材料Aで作られた減衰フィルムと、
− 厚みがhBでせん断パラメータgBを有する粘弾性プラスチック材料Bで作られた減衰フィルムと、
を含み、材料AとBは各々、それぞれの温度範囲tAおよびtB全体にわたり、かつ100Hz〜240Hzの周波数について、0.6より大きな損失係数と5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mのせん断パラメータを有し、それぞれ温度範囲tAまたはtB内に含まれる所与の温度範囲について、最高の損失係数を有するフィルムは、前記温度範囲についての他のフィルムの等価せん断パラメータよりも小さい等価せん断パラメータgAorBeq=gAorB×h[式中gAorBはフィルムを構成する材料のせん断パラメータであり、hは中間層の厚みである]を有する。
【0027】
本発明は同様に、
− 1.4mm〜2.1mmの厚みを有するガラスシートと、
− 1.1mm〜1.6mmの厚みを有するガラスシートと、
− ガラスシートの間にある、上述の中間層と、
を含むグレージングユニットにも関する。
【0028】
別の特徴によると、外部層の各々の厚みeおよびガラスシートの合計厚みは、
− 外部層の材料の接着力が規則R43の要件に適合し(なおこの接着力は、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算すること、そして次に、接着強度(τ)のこの値を許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにすることにより決定される);
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し;
・ 基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc-ref)、基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei-ref)および基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg-ref)を決定し;
・ 規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc-min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei)および任意の積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg)の一関数として表わすグラフ(C4)を用いて、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc-min=Jc-ref)に対応する中間層厚みとガラスシートの厚みの最適値(ei-opt、eg-opt)の組合せを推定し;
・ eが前記最適な中間層厚み値(ei-opt)以上となるように外部層の厚みeを設定し、ガラスシートの厚み(eg-dim)を前記最適なガラスシート厚み値(eg-opt)以上に設定する;
ことによって決定される外部層各々の厚みeおよびガラスシートの合計厚みが、規則R43の要件を満たすように設定される、
ようなものである。
【0029】
本発明は同様に、1.4mm〜2.1mmの厚みを有するガラスシートが車両の外側に向けられ、1.1mm〜1.6mmの厚みを有するガラスシートが車両の内側に向けられている、上述のグレージングユニットを含む車両にも関する。
【0030】
本発明は同様に、2枚のガラスシートおよびガラスシートの間に組込まれた中間層で構成されたフロントガラスの第2および第3の固有周波数の振動音響減衰のための、上述の中間層の使用にも関する。
【0031】
本発明は同様に、車両のフロントガラスとしての、上述のグレージングユニットの使用にも関する。
【0032】
本発明の他の特徴および利点を、ここで図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】20℃で100Hz〜240Hzの周波数、そして0.10〜1.20mmの中心層の厚みについての積層フロントガラスの中間層の中心層のせん断パラメータの一関数としての積層フロントガラスのモード減衰の曲線を表わす。
図2】本発明に係るグレージングユニットの断面図を表わす。
図3】本発明の別の実施形態に係るグレージングユニットの断面図を表わす。
図4】厚み2.1mmの2つのガラス基材と2MPa〜5MPaの接着強度を有する中間層とを含む積層グレージングユニットについて、かつ4mの落下高さについて作成された、積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるのに必要とされる最小中間層引裂強度を、積層グレージングユニットの中間層の厚みの一関数として表わすグラフを示す。
図5】2MPa〜5MPaの接着強度を有する中間層を含む積層グレージングユニットについて、かつ4mの落下高さについて作成された、積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるのに必要とされる最小中間層引裂強度を、積層グレージングユニットの中間層の厚みおよびガラス厚みの両方の一関数として表わす3次元グラフを示す。
図6】組合わされているガラスシートに対する中間層の接着力を評価するための実験装置の概略的前面図を表わす。
図7】組合わされているガラスシートに対する中間層の接着力を評価するための装置の一変形形態の斜視図を表わす。
図8】中間層の引裂強度を評価するための実験装置の概略図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0034】
さまざまな図中おける同一の参照番号は、同一のまたは類似の構成要素を表わす。
【0035】
本出願中に示されている間隔の中にはその上下限値が含まれるということも指摘しておくべきである。
【0036】
本発明は、2つの外部層と1つの中心層とを含み、グレージングユニットの2枚のガラスシートの間に組込まれるよう構成された粘弾性プラスチック中間層を選択するための方法を提供する。
【0037】
本発明には以下のステップが含まれる:
− 中心層を形成するように構成された粘弾性プラスチック材料製の第1のコンポーネントおよび外部層を形成するように構成された粘弾性材料製の第2のコンポーネントを提供するステップと;
− 第1のコンポーネントと第2のコンポーネントの剛性率G’を、ビスコアナライザを用いて測定するステップと;
− 第2のコンポーネントの材料を、その剛性率G’が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×107Pa以上である場合にのみ選択するステップと;
− 第1のコンポーネントの厚みhを、hが0.31mm〜1.20mmとなりかつせん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mとなるように設定するステップ。
【0038】
100Hz〜240Hzの周波数範囲には、発明人らが車両試験によって測定できた通りの積層フロントガラスの最初の4つの固有周波数、詳細には第2および第3の固有周波数が含まれる。
【0039】
さらに、発明人らは、上述のhとgの条件を満たす材料が、積層フロントガラスの第1の固有周波数、詳細には上述の通りに選択された中間層と2枚のガラスシートとを含むフロントガラスの第2および第3の固有周波数の減衰の最適化を可能にすることを実証した。
【0040】
具体的には、以下で、詳細には図1を検討する間にわかるように、発明人らは、100Hz〜240Hzの周波数範囲についてのこれらの5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mというgの値に0.31〜1.20mmというhの値を組合せた場合に、100Hz〜240Hzの周波数の音響的減衰の最適化が可能になるということを示した。
【0041】
第1のコンポーネントの材料が、0.31〜1.20mmの厚みについて5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mのせん断パラメータgを取り得ない場合には、その材料は中間層を製造するために選択されない。
【0042】
さらに、中心層が正しく振動するためには、外部層が中心層よりも高い剛性を有することが必要であり、これは、定義された弾性条件によって達成される。
【0043】
本発明は同様に、グレージングユニットの2枚のガラスシートの間に組込まれてこのグレージングユニットに振動音響減衰特性を与えるように構成された粘弾性プラスチック中間層において、
− 20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について3×107Pa以上の剛性率G’を有する粘弾性プラスチック材料で作られた2つの外部層と;
− 厚みhが0.31mm〜1.20mmとなり、中心層のせん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mとなるような、厚みhの改良された粘弾性減衰特性を有する中心層と;
を含む、中間層にも関する。
【0044】
中間層は、上述の選択方法により得られる。
【0045】
中間層は、積層フロントガラスの第1の固有周波数、詳細にはフロントガラスの第2および第3の固有周波数の減衰を最適化できるようにし、ここでこの積層フロントガラスは2枚のガラスシートとそれらの間に組込まれた中間層とを含む。
【0046】
中間層は、グレージングユニット内に統合されるように構成されている。グレージングユニットは車両内で、特にフロントガラスとして使用されるよう構成されている。
【0047】
本発明はまた、このような中間層を含むグレージングユニットにも関する。本発明は同様に、このようなグレージングユニットを含む車両にも関する。
【0048】
図2は、本発明に係るグレージングユニットの断面図を表わす。
【0049】
グレージングユニットは、2枚のガラスシート1、2を含み、その間に中間層が挿入される。ガラスシートに対する中間層のボンディングは、公知の手段、例えばガラスシートと中間層を積重ね、アセンブリをオートクレーブ内に通すことによって実施される。
【0050】
グレージングユニットのガラスシート1は、車両の外側に向けられるように構成され、一方ガラスシート2は、車両の内側に向けられるように構成されている。ガラスシート1は、ガラスシート2よりも厚く、グレージングユニットが外部の攻撃(悪天候、砂利の飛来など)に対するより優れた保護を示すようになっている。実際、ガラスが厚くなればなるほど、機械的強度は高くなる。しかしながら、ガラスが厚くなればなるほど、重量は増加する。したがって、機械的強度とグレージングユニットの重量の間の妥協点を見い出すことが必要である。こうして、ガラスシート1の厚みは例えば1.4mm〜2.1mmであり、ガラスシート2の厚みは例えば1.1mm〜2.1mmである。
【0051】
既存のグレージングユニットにおいて、ガラスシート1の厚みは一般に2.1mmであり、ガラスシート2の厚みは一般に1.6mmである。
【0052】
好ましくは、本発明によると、ガラスシート1の厚みは1.8mm、ガラスシート2の厚みは1.4mmであり、こうしてフロントガラスの重量を制限して、その取扱いをより容易にし材料を節約することができるようになっている。これは同様に、このようなフロントガラスを備えた車両の燃費の削減も可能になる。ガラスシートのこれらの厚み削減は、以下でさらに見ていく通り、既存のグレージングユニットと比べた音響的または機械的性能の損失なく可能である。
【0053】
本発明は同様に、ガラスシート1の厚みが1.6mmでガラスシート2の厚みが1.2mmであるフロントガラス、あるいはガラスシート1の厚みが1.4mmでガラスシート1の厚みが1.1mmであるフロントガラスにも適用可能である。
【0054】
中間層は、間に中心層3が挿入された2つの外部層4、5で構成されている。
【0055】
外部層4、5は、20℃で、100Hz〜240Hzの周波数範囲について、3×107Pa以上の剛性率G’を有する。好ましくは、外部層の剛性率G’は、中心層の振動音響減衰をさらに改善するため、108Pa〜2×108Paである。外部層は例えば、ポリビニルブチラール(PVB)で製造される。
【0056】
中心層3は、その厚みhが0.31mm〜1.20mmとなり、中心層のせん断パラメータg=G’/h(G’は剛性率である)が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mとなるように選択される。こうして中心層3は100Hz〜240Hzの周波数について最適化された音響性能を有する。中心層は例えば、積水化学工業株式会社から市販されている商標名SAF RZN−12の3層の音響PVBの中心層または、Solutia Companyから市販されている商標名QC55の3層音響PVBの中心層で構成されている。
【0057】
振動音響減衰をさらに一層最適化するため、中心層は、好ましくはhが0.50mm〜0.90mmとなり、G’/hが20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について7.56×108Pa/m〜1.42×109Pa/mとなってそれを可能にするように選択される。
【0058】
中心層3の音響特性は同様に、その損失係数tanδによっても定義される。中心層3は、満足のいく減衰を可能にするため、その損失係数が20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲について0.6より大きくなるように選択される。
【0059】
剛性率G’および損失係数tanδは、ビスコアナライザーを用いて測定される。
【0060】
ガラスシートは、グレージングユニットの振動音響的特性に寄与する。ガラスシートが厚くなればなるほど、グレージングユニットを振動させるために必要な励起は高くなる。しかしながら、100Hz〜240Hzの周波数について中間層の音響性能を最適化することにより、車両の外側に向けられるよう構成されたガラスシートについては1.8mmまで、さらには1.6mmまたは1.4mmにまで、そして車両の内側に向けられるよう構成されたガラスシートについては1.4mmまで、さらには1.2mmまたは1.1mmにまで、既存のグレージングユニットに比べた音響損失無くガラスシートの厚みを削減することが可能になる。典型的には、既存のフロントガラスグレージングユニットは、それぞれ厚み2.1mmおよび1.6mmのガラスシートを有し、これらのガラスシートの間には、20℃の温度、100Hzの周波数について0.6より大きな損失係数および5・105〜2・107Paの剛性率G’を有する厚み0.12mmの粘弾性プラスチック材料の中心層を含む中間層が挿入されている。ガラスシートの厚みの削減により、グレージングユニットの重量の削減、ひいては取扱い易さの改善と同様、材料の削減およびこのようなフロントガラスの備わった車両の燃費の削減が可能になる。
【0061】
2つの外部層4、5は同じ厚みeを有する。各外部層4、5の厚みeは、それが可能なかぎり小さくなるように、と同時に外部層の機械的特性が、自動車用に規定された機械的強度規格、詳細には強衝撃強度規格に関する国連規則第43号(規則R43と呼ばれる)を満たすのに充分なものとなるように、決定される。関連規則R43は、安全性グレージングおよび道路車両内でのこのグレージングの設置の認証に関係する統一技術仕様の採用に関するものである。具体的には、一方ではフロントガラスが備わった車両の燃費を削減できるようにするフロントガラス重量上の理由で、また他方では材料の節約を理由として、中間層の合計厚みを可能なかぎり小さくすることが望ましい。
【0062】
これを行なうために、厚みeは、外部層の材料で構成された中間層の2枚のガラスシートに対する接着力と同時に、外部層の材料の引裂強度をも考慮に入れることで最小限におさえられる。
【0063】
接着力は、以下で反復する欧州特許出願公開第1495305号(EP−A−1495305)に記載の試験および計算方法に基づいて評価される。
【0064】
最初に、2枚のガラスシートと外部層の材料からなる中間層とで構成された積層グレージングユニットの供試体に対して、少なくとも1枚のガラスシートとの関係における外部層の材料からなる中間層の剥離が開始するまで、捩り応力が加えられる。実際には、例えば図6に例示されている公知のタイプの捩り装置500を用いて、10mmに等しい半径rを有するグレージングの丸い供試体50に対して、試験が実施される。
【0065】
装置500は、3つのジョー51、52、53と、垂直軸の駆動チェーン55に連結された100mmに等しい半径Rの滑車54を含む。ジョーは各々、120°の円弧の形をしており、こうして供試体全体を把持している。ジョーの表面コーティングは、例えばアルミニウム、テフロン(商標登録)またはポリエチレンなど、ガラスと機械的に相容性ある材料で作製される。
【0066】
ジョーの1つはフレームに対して固定状態で保持され、一方他のジョーは、供試体に捩りを加える目的で回転するように構成された滑車54に対して締結されている。滑車54は、それに連結されたチェーン55の運動によって回転させられる。滑車は最低35〜50mm/分の一定速度で牽引される。
【0067】
供試体が捩られた時に外部層の材料で構成された中間層の剥離を開始させるのに必要とされる力Fを測定するために、力センサーが使用される。この値から次に、公知の式すなわちτ=2FR/πr3(式中、Fは外部層の材料で構成された中間層の剥離を開始させるのに必要とされる力であり、Rは滑車54の半径であり、rは供試体の半径である)を用いて計算により接着せん断強度を推定することが可能である。
【0068】
しかしながら、欧州特許出願第1495305(EP−A−1495305)で説明されているように、装置500は嵩の高いものであり、これはすなわち実験室内で試験を実施しなければならないということを意味している。したがって、装置500は、積層グレージング製造ライン上の「プロセス標識」タイプの測定には適していない。しかしながら、積層グレージングユニットの製造にあたって、ポリマー中間層の組成は本発明が設定している強度値を満たすように設計されているものの、それでも、グレージングユニットの製造方法に付随するパラメータ、例えば中間層の保管条件、ガラス洗浄の質あるいはまたボンディングの品質に影響を及ぼすガラスおよび中間層の組立て中のカレンダー加工ステップの間の温度および圧縮力などに起因して、完成品の中間層に接着力低下が発生する場合がある。
【0069】
製造ライン近くで製造を監視している間に測定を行い、低い測定強度値に応答してプロセスに迅速に介入可能となるように、一変形形態として、有利にもよりコンパクトで容易に輸送可能な別の測定装置600を使用することができる。図7に表わされているこの装置600は、およそ60cm×20cmに小型化され、2つの3基ジョーシステム60および61、回転シャフト62、シャフトを回転させるためのモーター63、トルク計64および計算素子を収納するボックス65を含む。
【0070】
2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とからなる積層グレージングユニットの円形の供試体は、2つのジョーシステム60および61の間に挟持されるように構成されており、このシステムのうちの一方60は固定されており、他方はシャフト62に対するその連結を介して移動および回転可能である。トルク計はモーターと可動ジョーシステム61の間に設置される。シャフトの回転速度は、中間層の厚みによって左右される。一例として、0.76mmの厚みを有する外部層の材料で構成された中間層については、回転速度はおよそ0.08rpmである。
【0071】
システム61が回転し、測定されたトルクが逆転した時点で、外部層の材料で構成された中間層の剥離が起こった。トルク計は、接着強度τの値を直接読取ることのできるディスプレー部分を含むボックス65の計算素子に接続されている。
【0072】
どのような装置が使用されるのであれ、接着強度τの値における散布を詳細に理解するために、例えば最低5個といった複数の供試体について試験を反復することそして強度τの平均をその標準偏差と共に計算することが好ましい。
【0073】
あらゆる積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力(強衝撃強度)に耐えることができるように、得られた接着強度τの値が許容値の範囲内にあることを確認する。この許容値範囲は、異なる組成の積層グレージングユニットについて実施された規則R45に規定されている標準化された機械的強度試験から、実験的に決定される。
【0074】
その範囲内であれば接着強度τのどの値でも接着力基準を満たすのに好適である規則R43の許容値範囲内に入るのは、5MPa未満の全ての値である。好ましくは、規則R43のための接着強度τの許容値範囲は、2MPaと5MPaの間であり、この値範囲の下限は、グレージングユニットの機械的強度の考慮事項とは無関係に、グレージングユニットの優れた透明度を保証するように決定される。
【0075】
外部層の材料で構成された中間層の接着強度τが上述の許容値範囲内にあることがひとたび確認されたならば、中間層の外部層の実際の寸法が決定される。
【0076】
図4および5のグラフは、強衝撃強度についての規則R43の要件を満たすように、これらの外部層の寸法を決定するための2つの考えられるアプローチを例示している。
【0077】
図4に対応する第1のアプローチによると、グレージングユニットは、例えば2.1mmという各ガラスシートの厚みに対応する4.2mmに等しい積層グレージングユニット内のガラスシートの固定合計厚みeg-dimと、例えばPVBベースの中間層などの特定の組成ciを有する外部層の材料で構成された中間層とにより寸法が決定される。中心層は、外部層の厚みの決定のためには無視される。
【0078】
この場合、外部層の材料で構成された中間層を寸法を決定するため、まず最初に、任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えることができるために必要とされる最低の中間層引裂強度Jc-minを表わす図4に見られる曲線C3が、任意の積層グレージングユニットの中間層厚みeiの一関数としてプロットされ、この曲線は、4.2mmに等しいガラスシート厚みについて作成されている。実際には、曲線C3は、中間層の厚みに関して異なる組成の積層グレージングユニットについて実施された規則R43で規定されている機械的強度の標準化された試験から得られる。
【0079】
次に、4.2mmに等しいガラス基材厚みで規則R43に対応する応力に耐え、かつ特定の組成ciを有する中間層を含む基準積層グレージングユニットが識別される。このような基準積層グレージングユニットの一例は、各々2.1mmの厚みを有する2枚のガラス基材と、0.38mmの標準厚みを有しかつ0.76mmに等しい基準積層グレージングユニットの中間層厚みei-refに対応する組成ciを有する2つの中間層を含む、公知のグレージングユニット2.1/0.76/2.1である。この基準グレージングユニットの規則R43に対応する応力に対する耐性は、この例では4mの衝撃落下高さで、標準化された機械的強度試験により確認される。
【0080】
このとき、基準グレージングユニット2.1/0.76/2.1の中間層の引裂強度Jc-refが、Tielking方法によって決定される。
【0081】
M.Tielkingにより開発されたこの方法は、亀裂ルートのエネルギーJを計算する方法に基づいて材料の強度を評価することからなる。Tielking方法は、詳細には以下で一部反復する欧州特許出願公開第1,151,855号(EP−A−1151855)および第1495305号(EP−A−1495305)において説明されている。
【0082】
中間層の引裂強度は、それを構成する材料に固有の特性である。それは、材料の中で開始された亀裂が伝播するのに必要とされるエネルギーを表わすエネルギー値によって特徴づけされる。臨界エネルギーJcとして公知のこのエネルギーは、各々の材料タイプについて異なり、中間層フィルムの厚みとは無関係である。
【0083】
引裂強度または臨界エネルギーJcは、亀裂の場所における非常に高い応力を受けるフィルム内の亀裂のルートに局所化されたエネルギーを定義づける。RiceのJ積分に基づくエネルギー方法によって提供される。それは、以下変位dと呼ぶ被験供試体の所与の伸びdについて
【数1】
という簡略化された数学的形式で表わされ、式中、e1は供試体の厚み、aは亀裂の長さであり、Uは供試体のポテンシャルエネルギーである。
【0084】
引裂強度を決定するための実験的装置は、図8に示されている。複数の供試体Exn、例えば同じ材料で表面積が100mm2(長さ50mm×幅20mm)に等しい4つの供試体について、引張−圧縮機700を用いた引張試験が実施される。各供試体は、その側面上で引張力に対して垂直に切り込みが入れられ、各供試体Exnについてのそれぞれ5、8、12および15mmに対応する異なる亀裂長aを有する。
【0085】
各供試体Exnは、温度が20℃の環境内で亀裂20に対して垂直に、100mm/分の伸び率で、所与の伸び長さまたは距離dにわたり、伸長される。
【0086】
欧州特許出願公開第1495305号(EP−A−1495305)で詳述されている方法によると、供試体(図示せず)が受ける伸びdの一関数としての亀裂ルートエネルギーJの変動の曲線を作成することが可能である。亀裂70の伝播を表示するビデオカメラを用いて、このとき、どの変位dcにおいて供試体内の亀裂の伝播が開始するかが検出される。その後、曲線J(d)から、変位dcに対応する供試体の引裂の開始のための臨界エネルギーJcの値が推定される。材料が引裂し、その結果所要の機械的機能に関して材料が機械的損傷を受けるのは、この臨界値Jcにおいてである。
【0087】
基準グレージングユニット2.1/0.76/2.1の組成ciの中間層について測定された引裂強度Jc-refの値は、31000J/m2である。
【0088】
図4の曲線C3を用いて、このとき、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要引裂強度値Jc-minに対応する最小所要中間層厚みei-minが推定される。曲線C3に示されているように、最小所要中間層厚みei-minは0.45mmに等しい。
【0089】
したがって、最小所要中間層厚みei-min=0.45mm以上の中間層厚みei-dimで、各々2.1mmの厚みを有する2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とで構成された積層グレージングユニットの寸法を決定することが可能である。好ましくは、積層グレージングユニット厚みei-dimは、最小所要中間層厚み値ei-minを20%だけ超過する限界内でのみこの値より大きいものである。すなわち、先の例において、ei-dimは好ましくは、0.45mm≦ei-dim≦0.55mmとなるようなものである。
【0090】
こうして、2.1mmの厚みを有する2枚のガラスシート1、2と、各々厚み0.225mm〜0.275mmの2つの外部層4、5と中心層3を伴う中間層とを含む、規則R43の要件を満たす積層グレージングユニットが得られる。
【0091】
曲線C3は、例えば1.8mmと1.4mmなどの他のガラスシート値についてプロットされ得る。このとき、外部層の各々は、0.2mm〜0.37mmの厚みを有する。
【0092】
図5に対応する中間層の外部層の寸法を決定するための考えられる第2のアプローチによると、積層グレージングユニットは、外部層の材料で構成された中間層を含み、ガラスシートの厚みを任意に設定することなく寸法が決定される。
【0093】
任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるために必要とされる最小中間層引裂強度Jc-minを、任意の積層グレージングユニットの外部層の材料で構成された中間層の厚みeiおよび任意の積層グレージングユニットのガラスシートの厚みegの両方の関数として表わす、図5に見られる3次元グラフC4がプロットされる。図5のグラフC4は、中間層厚みおよび基材厚みに関して異なる組成を有する積層グレージングユニットに対して実施された規則R43に規定されている標準化された機械的強度試験から得られる。
【0094】
規則R43に対応する応力に耐え、特定の組成ciを有する中間層を含む基準積層グレージングユニットの引裂強度Jc-refが、次に決定される。
【0095】
上述の公知の積層グレージングユニット2.1/0.76/2.1は、例えば、0.76mmに等しい中間層厚みei-refに対応する組成ciを有する標準厚み0.38mmの外部層の材料で構成された中間層の2層とそれぞれ2.1mmと1.8mmの厚みを有する2枚のガラスシートとを含む同じく公知の積層グレージングユニット2.1/0.76/1.8と同様に、基準積層グレージングユニットとして作用することができるかもしれない。規則R43に対応する応力下での一方または他方の基準グレージングユニットの引裂強度Jc-refは、前述の通り、Tielking方法により評価される。
【0096】
次に、グラフC4を用いて、外部層の材料で構成された中間層の厚みおよび基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度Jc-refに等しい最小所要中間層引裂強度値Jc-minに対応するガラスシートの厚みの最適値ei-opt、eg-optの組合せが推定される。例えば、31,000J/m2の引裂強度Jc-refの値に対応する基準グレージング2.10/0.76/2.1から出発して、最適値ei-opt、eg-optの組合せを提供する点は、31,000J/m2のJc-min値に対応するグラフC4の部域または表面の点である。この問題に関して、最適値ei-optまたはeg-optの各々が、必ずしも個別に、外部層の材料で構成された中間層の厚みの最小値または、ガラスシートの厚みの最小値ではないということが指摘される。積層グレージングユニットの全体的厚みの最小値を結果としてもたらすのは、値ei-optおよびeg-optの組合せである。
【0097】
グラフC4を見ればわかるように、値ei=0.5mmおよびeg=1.8mm/1.4mmの組合せは、最適値の組合せ以上の値の組合せである。
【0098】
したがって、外部層の材料で構成された中間層の厚みei-dimを0.5mm以上とし、ガラスシートの厚みeg-dimをそれぞれ1.8mmおよび1.4mmとして、積層グレージングユニットの寸法を決定することが可能であり、この積層グレージングユニットは、規則R43の要件を満たしている。
【0099】
上述の例で考慮された組成ciの中間層は、その引裂強度という視点から見て平均的性能を有し、現在公知であるより性能の高い中間層の組成の引裂強度レベルから、先に示した値と比べてさらに削減された最適値ei-opt、eg-optの組合せを企図することが可能である。
【0100】
詳細には、1.8mmと1.4mmというそれぞれの厚みを有する2つのガラス基材を含み、規則R43に対応する応力に耐えるのに好適な積層グレージングユニットについては、最小所要中間層厚みei-minは0.4mm前後まで降下するかもしれない。したがって、それぞれ1.8mmおよび1.4mmの厚みを有する2枚のガラス基材を含み規則R43の要件に対応する積層グレージングユニットの最適化された中間層厚みei-dimは、一般に、0.45mm≦ei-dim≦0.74mmとなるようなものであり、この間隔の下限は、その引裂強度の観点から見て高い性能を有する中間層組成に対応している。
【0101】
こうして、それぞれ1.8mmおよび1.4mmの厚みを有する2枚のガラスシート1、2と中心層3および各々厚みが0.2mm〜0.37mmの2つの外部層4、5を伴う中間層を含む、規則R43の要件を満たす積層グレージングユニットが得られる。
【0102】
こうして、各外部層4、5の厚みeは、グレージングユニットに充分な機械的特性すなわち規則R43を満たす特性を提供するように設定される。これは以下の要領で実施される:
− 外部層の材料の接着力が規則R43の要件に適合していることを、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算することによって確認し、接着強度(τ)のこの値を許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにする;
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し;
・ 基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc-ref)、基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei-ref)および基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg-ref)を決定し;
・ 基準積層グレージングユニット内の基材厚みに等しい任意の積層グレージングユニットの基材厚みについて作成されている、規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc-min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei)の一関数として表わすグラフ(C3)を用いて、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc-min=Jc-ref)に対応する最小所要中間層厚み(ei-min)を推定し;
・ eが前記最適な中間層厚み値(ei-opt)以上となるように各外部層の厚みeを設定する、
ことによって、規則R43の要件を満たすような外部層の各々の厚みeを設定する。
【0103】
一変形形態として、各外部層4、5の厚みeとガラスシートの厚みは両方共、アセンブリがグレージングユニットに充分な機械的特性、すなわち規則R43を満たす機械的特性を提供すように設定される。これは以下の要領で実施される:
− 外部層の材料の接着力が規則R43の要件に適合していることを、2枚のガラスシートにボンディングされた外部層の材料で構成された中間層の供試体を捩ること、外部層の材料で構成された中間層とガラスシートの分離が開始した捩り力(F)を測定することおよび、この力から対応する接着せん断強度(τ)を計算することによって確認し、接着強度(τ)のこの値を許容値範囲と比較して任意の積層グレージングユニットが規則R43に対応する応力に耐えるようにする;
− ・ 規則R43に対応する応力に耐えかつ2枚のガラスシートと外部層の材料で構成された中間層とを含む基準積層グレージングユニットを識別し;
・ 基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度(Jc-ref)、基準積層グレージングユニットの中間層の厚み(2e-ref)および基準積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg-ref)を決定し;
・ 規則43に対応する応力に任意の積層グレージングユニットが耐えるように求められる最小中間層引裂強度(Jc-min)を、任意の積層グレージングユニットの中間層の厚み(ei)および任意の積層グレージングユニットのガラスシートの厚み(eg)の一関数として表わすグラフ(C4)を用いて、基準積層グレージングユニットの中間層の引裂強度に等しい最小所要中間層引裂強度値(Jc-min=Jc-ref)に対応する中間層厚みとガラスシートの厚みの最適値(ei-opt、eg-opt)の組合せを推定し;
・ eが前記最適な中間層厚み値(ei-opt)以上となるように各外部層の厚みeを設定し、ガラスシートの厚み(eg-dim)を前記最適なガラスシート厚み値(eg-opt)以上に設定する、
ことによって、規則R43の要件を満たすような外部層各々の厚みeおよびガラスシートの合計厚みを設定する。
【0104】
中間層の合計厚みは好ましくは、0.86mm以下である。
【0105】
図3は、別の実施形態にしたがった、本発明に係るグレージングユニットの断面図である。
【0106】
ガラスシート1、2および中間層の外部層4、5は、図2のものと同一である。
【0107】
中心層3は、2枚の減衰フィルム6、7を含む。減衰フィルム6は、減衰フィルム7を構成する粘弾性材料Bとは異なる粘弾性プラスチック材料Aで構成されている。一実施形態によると、材料A、Bは同時押出しされる。一変形形態として、これらの材料は積層される。
【0108】
中心層3を構成する減衰フィルム6、7は、異なる温度範囲にわたる音響振動の減衰を最適化することを可能にする。したがって、フィルム6は任意には、第1の温度範囲全体にわたり音響振動を減衰させ、フィルム7は任意には第2の温度範囲全体にわたって音響振動を減衰させる。第1および第2の温度範囲は、重複しない。こうして、100Hz〜240Hzの周波数の減衰をより広い温度範囲にわたって最適化することが可能になる。
【0109】
これを行なうために、材料Aは、温度範囲tA全体にわたり、100Hz〜240Hzの周波数について、0.6超の損失係数と、5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mのせん断パラメータを有するように選択される。同様にして、材料Bは、温度範囲tB全体にわたり、100Hz〜240Hzの周波数について、0.6超の損失係数と、5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mのせん断パラメータを有するように選択される。
【0110】
さらに、それぞれ温度範囲tAまたはtBの内部に含まれる所与の温度範囲について最高の損失係数を有するフィルム6または7は、前記所与の温度範囲について他方のフィルム7または6の等価せん断パラメータよりもはるかに低い等価せん断パラメータgAorBeq=h×gAorB[式中、gAorBはそれぞれフィルム6または7を構成するそれぞれの材料AまたはBのせん断パラメータであり、hは中心層の厚みである]を有する。等価せん断パラメータは、剛性率に対応する。
【0111】
所与の温度範囲は、フィルム6または7がそれぞれに100Hz〜240Hzの周波数で音響振動を任意に減衰させる第1または第2の温度範囲である。
【0112】
したがって、その対応する温度範囲でフィルム6、7の各々の損失係数が0.6超でありフィルム各々の材料のせん断パラメータが5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mであることが必要であるのみならず、対応する温度範囲内で最も減衰するフィルム(最高のtanδ)が、他方のフィルムよりもはるかに低い等価剛性率を有することも必要である。このようにして、中間層は、各温度範囲全体にわたり最も減衰させられたフィルムと類似の挙動を有する。中間層はこうして、中間層を構成するフィルムの各々が最適な減衰の役割を果たす温度範囲の各々全体にわたり最適な減衰を提供する。
【0113】
ここで、100Hz〜240Hzの周波数の減衰が上述のgの範囲について実際に最適であることの証拠を示す。
【0114】
図1は、20℃で100Hz〜240Hzの周波数についての積層フロントガラスの中間層の中心層のせん断パラメータの一関数としての積層フロントガラスのモード減衰の曲線を表わしている。この曲線は、有限要素法によって計算された。
【0115】
計算は、粘弾性プラスチック材料製の中間層が間に組込まれた、それぞれ1.4mmおよび1.8mmの厚みを有する2つのガラスシートで構成されたフロントガラスについて実施された。中間層は、2つの外部層の間に組込まれた中心層という3つの層を含む。図1の曲線の各点は、中心層の厚みhについてのせん断パラメータの一関数としてのモード減衰の値を表わしており、さまざまな点が0.10mm〜1.20mmの厚みhに対応している。
【0116】
下表1は、hの各値についてのせん断パラメータgの値およびモード減衰の値を網羅している。
【0117】
【表1】
【0118】
図1および表1に示されているように、20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲についての0.31mm〜1.20mmの厚みhを有する中心層3の5.58×108Pa/m〜2.37×109Pa/mというせん断パラメータgの範囲は、0.327以上のモード減衰を可能にし、したがってこれは、厚み0.76mmの中心層について曲線の最大値が0.338にあることを理由として、非常に優れたものである。
【0119】
20℃で100Hz〜240Hzの周波数範囲についての、0.50mm〜0.90mmの厚みhを有する中心層3の7.56×108Pa/m〜1.42×109Pa/mというせん断パラメータgの範囲は、0.336以上のモード減衰を可能にし、したがってこれは、最適化された減衰である。
【0120】
したがって、本発明は実際、上述の中間層を含むフロントガラスの第1の固有周波数の振動音響減衰を最適化することを可能にする。
【0121】
本発明に係る中間層は、同様に、それが最適化される周波数範囲外でも優れた振動音響減衰を可能にする。
【0122】
本発明に係るインサートは、好ましくはフロントガラスの2枚のガラスシートの間で使用される。これは、車両例えば自動車のサイドグレージングまたはルーフ用グレージングにおいても使用されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8