(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明は、密封容器内で分散媒中に分散している樹脂粒子に物理発泡剤を含有させて発泡性粒子を得る工程と、軟化状態の該発泡性粒子を分散媒と共に密封容器内から該密封容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる工程からなる、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。本発明は、上記樹脂粒子が、後述する特定の改質ポリ乳酸系樹脂からなることを特徴とする。以下、「ポリ乳酸系樹脂発泡粒子」は単に「発泡粒子」ともいい、「ポリ乳酸系樹脂」は「PLA樹脂」ともいい、「改質ポリ乳酸系樹脂」は「改質PLA樹脂」ともいい、「改質ポリ乳酸系樹脂からなる樹脂粒子」は単に「樹脂粒子」ともいう。
本発明の製造方法の好ましい態様においては、樹脂粒子を密封容器内で、物理発泡剤の存在下又は非存在下で水性媒体中に分散させ、該容器内を加熱すると共に該容器内に物理発泡剤を圧入して、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子とし、該発泡性粒子を高温、高圧条件下の密封容器内から水性媒体と共に、該密封容器内よりも低い圧力下に放出して、発泡粒子を製造する方法、所謂、分散媒放出発泡方法により発泡粒子が製造される。なお、上記分散媒放出発泡方法においては、物理発泡剤を密封容器内に圧入するタイミングは該容器内を加熱前に該容器内に物理発泡剤を圧入しても、加熱後に該容器内に物理発泡剤を圧入してもよい。また、該容器内に物理発泡剤を圧入する代わりに、物理発泡剤を予め含有させたポリ乳酸系樹脂粒子を密封容器内に入れる方法を採用することもできる。
【0019】
本発明方法で用いるPLA樹脂 は、ポリ乳酸、或いはポリ乳酸と他の樹脂との混合物からなるものである。なお、該ポリ乳酸は、乳酸に由来する成分単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。該ポリ乳酸としては、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)これら(a)〜(e)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。また、該ポリ乳酸には、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ステレオブロックポリ乳酸と呼ばれるものも包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
上記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、上記(c)及び(e)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、上記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0021】
本発明方法で用いられるポリ乳酸の製造方法としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5310865号に示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2758987号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、重合する開環重合法(例えば、米国特許4057537号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5428126号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許公報第0712880 A2号に開示されている製造方法)、乳酸重合体を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法は、特に限定されない。
【0022】
更に本発明においては、PLA樹脂は、エポキシドにて改質される。この改質PLA樹脂を用いて発泡粒子が製造される。該エポキシドとしては、エポキシ基含有アクリル系重合体が好ましく挙げられる。
該エポキシ基含有アクリル系重合体としては、重量平均分子量8.0×10
3〜1.5×10
4のものが好ましく用いられる。該アクリル系重合体は、エポキシ価が1.2meq/g以上のものが好ましく、特に1.2〜2.4meq/gのものが好ましい。
【0023】
エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基を有するアクリル系モノマー成分を重合することにより得られるものである。該エポキシ基を有するアクリル系モノマー成分としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられ、中でも反応性の高い(メタ)アクリル酸グリシジル構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0024】
該アクリル系重合体には、エポキシ基を有するアクリル系モノマー成分と重合可能な他のモノマー成分を共重合させたものも含まれる。その場合、エポキシ基を有するアクリル系モノマー成分単位の含有量は10〜70重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。
【0025】
エポキシ基を有するアクリル系モノマー成分と重合可能な他のモノマー成分としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する。
【0026】
エポキシドの添加量は、改質PLA樹脂が下記の条件(1)、(2)を満足するものとなるように添加される。具体的には、エポキシドの添加量は、エポキシドの反応性にもよるが、PLA樹脂100重量部に対して0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.8〜25重量部である。
【0027】
20mN≦MT≦200mN・・・(1)
logMT≧0.93logη−1.90・・・(2)
(但し、MTは温度190℃における改質PLA樹脂の溶融張力(mN)、ηは温度190℃,せん断速度20秒
−1における改質PLA樹脂の溶融粘度(Pa・s)を表す)
【0028】
改質PLA樹脂の溶融張力と溶融粘度が上記(1)、(2)で定まる特定の範囲内であれば、前記発泡性粒子を分散媒放出発泡法により発泡させる際に、改質PLA樹脂が適度な粘弾性挙動を示し、気泡膜が破れることなく大きく延伸され、改質PLA樹脂が分子配向することに加え、分子量が増加していることにより、気泡膜の強度が著しく高くなって、発泡後の発泡粒子の収縮が防止されていると考えられる。また、そのことによりPLA樹脂が有する潜在的な物性も充分に引き出されていると考えられる。更には、このようにして得られた発泡粒子を用い金型内で加熱して成形することにより、発泡粒子が型内で更に発泡することにより気泡膜が延伸され、優れた機械的物性を示す発泡成形体を得ることが可能となっていると考えられる。
【0029】
かかる観点から、上記(1)で表される溶融張力の上限は190mNが好ましく、100mNがより好ましい。溶融張力の下限は25mNが好ましく、30mNがより好ましく、35mNが特に好ましい。
【0030】
また、溶融張力と溶融粘度は、下記条件(3)、特に下記条件(4)を満たすことが好ましい。
logMT≧0.93logη−1.85・・・(3)
logMT≧0.93logη−1.80・・・(4)
(但し、MT及びηは前記に定義した通りである)
【0031】
上記の溶融張力と溶融粘度の条件を満足する改質PLA樹脂は、得られる発泡粒子の収縮が抑制され、該発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体(以下、単に成形体ともいう。)の圧縮強度や曲げ弾性率が従来のものよりも大きく向上している。その理由は、発泡工程において、気泡膜が形成され、気泡膜が伸張され、該伸張が止まり気泡の成長が終了するまでに充分な気泡膜の延伸がなされ、樹脂が充分に分子配向している状態になっていると考えられる。
また、上記の条件(1)、(2)を満足する改質PLA樹脂から構成される発泡粒子は、型内成形時の二次発泡性や融着性に優れるものとなる。
その理由は、条件(1)、(2)を満足するPLA樹脂は、発泡する際に、適度な粘弾性挙動を示し気泡膜が破れ難い状態にあり、独立気泡率が高い等良好な発泡粒子となる。そのため、該発泡粒子は、型内成形時の二次発泡性に優れることから、発泡粒子同士が互いに十分に圧着して融着性に優れた成形体を得ることが可能になると考えられる。
【0032】
本明細書において改質PLA樹脂の溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dなどの測定装置を使用して測定することができる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とし、80℃にて充分に乾燥させた測定試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、せん断速度20sec
−1で溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出し、その時の溶融粘度を測定する。
【0033】
本明細書における溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって増速巻取りによる測定法にて測定することができる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とし、80℃にて充分に乾燥させた測定試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してからピストン速度10mm/minとして溶融樹脂を紐状に押し出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、10分で引取り速度が0m/minから200m/minに達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物破断時に当該装置にて検出される溶融張力を得る。なお、紐状物が引取り速度200m/minで破断しない場合は、引取り速度200m/minで当該装置にて検出される溶融張力を採用する。
上記操作を異なる試料を使用し、計10回の測定を行い、10回で得られた極大値の最も大きな値から順に3つの値と、極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を本発明における溶融張力(mN)とする。
なお、改質PLA樹脂の溶融粘度、溶融張力の測定は、基本的には、分散媒放出発泡方法において耐圧容器内に入れる樹脂粒子について行うこととする。したがって、PLA樹脂のエポキシドによる改質を、耐圧容器内にPLA樹脂の粒子を投入後、該容器内にて行うような場合は、改質PLA樹脂の溶融粘度、溶融張力の測定は、改質後の樹脂を、発泡剤を含浸させる前に該容器から取り出して測定することとする。
【0034】
また、本発明で用いられる改質PLA樹脂は、分子鎖末端が封鎖されていることが好ましい。これにより、発泡粒子の製造過程での加水分解をより一層確実に抑制することができ、前記分散媒放出発泡が容易になることから、樹脂の物性低下に繋がる加水分解に大きく囚われることなく、高温ピークの生成、制御が確実なものとなり、型内成形時の樹脂の加水分解にも耐え得る良好な型内成形に耐え得る発泡粒子が得られ易くなる。更には型内成形により得られる成形体の耐久性が向上する。
【0035】
上記末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどの芳香族モノカルボジイミド、ポリ(4−4'−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。末端封鎖剤の配合量は、改質PLA樹脂100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0036】
本発明で用いるPLA樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において他の樹脂を混合したものも含まれる。なお、本発明においてPLA樹脂が、ポリ乳酸と他の樹脂との混合樹脂からなる場合には、混合樹脂中にはポリ乳酸が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。また、ポリ乳酸と混合できる他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、前記PLA樹脂以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸又は芳香族多価カルボン酸との重縮合物等が挙げられる。
【0037】
本発明の発泡粒子を構成するPLA樹脂に必要に応じ適宜の添加剤を配合することができる。添加剤としては、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、導電性付与剤等が挙げられる。
これらの添加剤をPLA樹脂に配合する場合には、添加剤をそのままPLA樹脂に練り込むこともできるが、通常は添加剤のPLA樹脂中での分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作製し、それとPLA樹脂とを混練することが好ましい。
該添加剤の配合量は、添加剤の種類によっても異なるが、通常、PLA樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部、更に0.01〜5重量部とすることが好ましい。
【0038】
本発明方法においては、前記条件(1)、(2)を満たす改質PLA樹脂を用いて製造された発泡性粒子を、該発泡性粒子が発泡する温度と、得られた発泡粒子の気泡膜を構成する改質PLA樹脂が良好に延伸、配向する温度とが重なる発泡温度で低圧域下に放出する必要がある。本発明において、両者の温度が重なるようにするために前記条件(1)、(2)を満たす改質PLA樹脂が採用される。
なお、具体的該発泡温度としては、改質PLA樹脂の融点を基準として、(融点−10℃)〜(融点−30℃)が好ましく、より好ましくは(融点−10℃)〜(融点−25℃)、更に好ましくは(融点−15℃)〜(融点−25℃)である。発泡温度が低すぎる場合は、見かけ密度の低い発泡粒子が得られ難く、発泡温度が高すぎる場合は、発泡粒子の収縮が発生し易くなり、該発泡粒子の型内成形にて得られる成形体の機械的物性が低下する虞がある。
【0039】
また、発泡時に気泡膜を構成する樹脂が延伸され、分子が配向された機械的強度に優れる発泡粒子を得るために、発泡直後の発泡粒子を急冷することが好ましい。発泡後に改質PLA樹脂粒子のガラス転移温度以下に早期に冷却することにより、分子が配向した状態で非晶分子鎖の運動性が低下することにより、より高い延伸効果を得ることができる。また、このような理由から、該急冷により、発泡粒子の収縮を抑制することもできる。
発泡粒子を急冷させる方法としては、例えば、発泡後の雰囲気下に冷却媒体として空気を送風する方法、発泡後の雰囲気下に冷却媒体として水を導入する方法、水槽内に発泡する方法等が挙げられる。
【0040】
本発明方法においては、密封容器内で樹脂粒子を加熱し、完全に結晶が融解しない温度範囲で熱処理を行なうことにより、得られる発泡粒子に、後述する1回目のDSC曲線(I)に現れる高温ピークを生成させることが好ましい。該熱処理は、以下のとおり、樹脂粒子を特定の温度に特定時間保持することにより行なわれる。該高温ピークを生成させる温度は、発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の密度にも関係するが、通常は樹脂粒子を構成する改質PLA樹脂の(融点−30℃)〜(融点−10℃)の範囲で行なわれる。また、熱処理時間は、好ましくは5〜60分、好ましくは5〜15分であり、熱処理時間が長すぎると改質PLA樹脂の加水分解に繋がる虞がある。
【0041】
前記のように熱処理を行なうと、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に1回目のDSC曲線(I)を測定し、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線(I)を測定した場合、該1回目のDSC曲線(I)には、2回目のDSC曲線(I)の融解ピークの頂点温度(但し、2回目のDSC曲線(I)に、複数の融解ピークが現れる場合や融解ピークの高温側にショルダー部が現れる場合は、それらの融解ピークの頂点やショルダー部の変曲点のうち、最も高温側の、融解ピークの頂点温度またはショルダー部の変曲点温度を、2回目のDSC曲線(I)の融解ピークの頂点温度とする。)を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピーク(以下、高温ピークともいう。)と、該基準の頂点温度よりも低温側(該基準の頂点温度を含む)に頂点温度を有する融解ピーク(以下、固有ピークともいう。)とが現れる。
【0042】
高温ピークを有する発泡粒子は、耐熱性や高温時の剛性が向上していること、型内成形時において発泡粒子の二次発泡速度が抑制されていること、発泡粒子が過度に二次発泡することが抑制されていることになると考えられるため、成形型内において、加熱媒体での十分な発泡粒子の加熱が隅々まで可能になる。その結果、発泡粒子の型内成形時の融着性が向上し、最終的に得られる成形体は、厚みが厚いものや形状が複雑なものであっても融着性に優れるものとなる。
【0043】
なお、前記高温ピークは、前記示差走査熱量測定によって得られる発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)にのみに現れ、2回目のDSC曲線(I)には現れないものである。本発明方法における前記高温ピークは、前記した熱処理により結晶を成長させることにより上記のとおり発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に出現する。一方、発泡粒子の2回目のDSC曲線(I)に現れる固有ピークは、改質PLA樹脂固有の結晶構造に起因する融解ピークである。
このような発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に高温ピークが現れる現象は、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る際の熱履歴により形成される二次結晶に起因するものである。
【0044】
上記1回目のDSC曲線(I)の一例を
図1に、2回目のDSC曲線(I)の一例を
図2に示す。
図1と
図2の対比から、
図2の二つの融解ピークの最も高温側の融解ピークの頂点温度を基準にして、
図1において該基準の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピークが高温ピークであり、該基準の頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピークが固有ピークということになる。即ち、
図1において、融解ピークaが固有ピークであり、融解ピークbが高温ピークである。
【0045】
なお、
図1には2つの融解ピークa,bが滑らかな曲線で描かれているが、DSC曲線は必ずしもこのように滑らかな曲線になるとは限らず、複数の融解ピークの重なりによりDSC曲線が形成され、複数の固有ピークや複数の高温ピークが、DSC曲線上に現れる場合もある。
【0046】
高温ピークの吸熱量(J/g)は、
図1に示すように、1回目のDSC曲線(I)の融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点αとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点βとし、固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点γから、点αと点βを結ぶ直線へ、グラフの縦軸に平行な線を引き、その交点を点δとした場合、点γと点δとを結ぶ直線、点δと点βとを結ぶ直線、およびDSC曲線によって囲まれる部分(
図1の斜線部分)の面積に対応する吸熱量である。なお、
図1には現れてはいないが、融解ピークaの低温側に該融解ピークaと連続して発熱ピークが現れる場合があり、そのような場合は、上記のように、融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点として点αを定めることが困難となる為、その場合は、低温側のベースラインから該発熱ピークが離れる点を点αとする。
【0047】
前記高温ピークの吸熱量(高温ピークが複数の融解ピークにて構成されている場合は、それらの総吸熱量)は、0.5〜8J/gが好ましい。高温ピークの吸熱量(以下、高温ピーク熱量ともいう。)が小さすぎると、型内成形時に金型内に蒸気を導入して加熱する際に、金型表面に近い部分の発泡粒子の二次発泡が必要以上に優先的に進み、発泡粒子が充填されている成形型内内部まで、充分に水蒸気等の加熱媒体を行き亘らせることの妨げとなり、成形体の内部まで融着性が良好な成形体を得ることが難しくなる虞がある。一方、高温ピークの吸熱量が大きすぎると、型内成形時の発泡粒子の二次発泡が不十分となり、発泡粒子の融着性や成形体の外観が良好な成形体が得られ難しくなる虞がある。これらのことから、高温ピーク熱量はより好ましくは1〜7J/gである。なお、高温ピーク熱量の上限は概ね25J/gである。
【0048】
本明細書において、上記2回目のDSC曲線(I)における最も面積の大きな融解ピークの頂点温度、即ち
図2の融解ピークcの頂点温度をPLA樹脂の融点(Tm)とする。また、
図2のように融解ピークの高温側の裾がベースラインに戻った点の温度を融解終了温度(Te)とする。
【0049】
分散媒放出発泡方法においては、前記のとおり、例えば樹脂粒子を密封容器(例えば、オートクレーブなどの耐圧容器)中で、水などの分散媒に分散させ、所望量の発泡剤を圧入し、加圧、加温下に撹拌して発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性粒子とした後、容器内の軟化状態の発泡性粒子と分散媒を高温、高圧の容器内より、該容器内よりも、低圧の雰囲気下に放出して発泡性粒子を発泡させて、発泡粒子を得る。発泡粒子は次いで冷却される。この放出時には容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。
【0050】
なお、特に低い見かけ密度(高発泡倍率)の発泡粒子を得るにあたっては、上記の方法で得られた発泡粒子を、通常行われる大気圧下での養生工程を経て、再度、密封容器に充填し、空気などの加圧気体により例えば0.01〜0.10MPa(G)の圧力にて加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を予備発泡機内にて、熱風やスチームや空気とスチームとの混合物などの加熱媒体を用いて加熱する、所謂、二段発泡により、高発泡倍率化させることもできる。
【0051】
前記樹脂粒子を分散させる分散媒としては、水が好ましいが、水以外にも樹脂粒子を溶解させない液体であれば適宜採用することもできる。
【0052】
また、樹脂粒子を分散媒に分散させるに際しては、必要に応じて分散剤や分散助剤を分散媒に添加することができる。
該分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを分散媒に添加することもできる。
これら分散剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.05〜3重量部使用することができ、これら分散助剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.001〜0.3重量部使用することができる。
【0053】
分散媒放出発泡方法で用いる物理発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン等のハロゲン化炭化水素などの有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水などの無機系物理発泡剤を、単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの物理発泡剤のなかでも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機系物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましい。より好ましくは二酸化炭素がよい。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。
【0054】
該物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、添加剤等の配合量、目的とする発泡粒子の見かけ密度等に応じて適宜調整することができる。例えば無機系物理発泡剤は、PLA樹脂100重量部あたり概ね0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1〜10重量部使用することがよい。
【0055】
次に、本発明方法で用いるエポキシド改質PLA樹脂からなる樹脂粒子の製造方法について説明する。
エポキシドによるPLA樹脂の改質は、PLA樹脂の粒子製造工程において行なうことが好ましい。
この場合の粒子製造工程においては、押出機にPLA樹脂とエポキシド、さらに必要に応じて添加剤を供給して溶融混練してPLA樹脂を改質し、溶融混練物を押出機先端のダイ出口に付設された口金の細孔からストランド状押出物を押出し、該ストランド状押出物を水没させることにより冷却した後、樹脂粒子の重量が所定重量になるようにペレタイザーで切断して樹脂粒子が製造される(ストランドカット法)。なお、樹脂粒子の製造方法としては、該口金の細孔から押出される押出物を、樹脂粒子の重量が所定重量になるように切断後又は切断と同時に、冷却すること(アンダーウォーターカット法)によってもよい。
【0056】
前述のPLA樹脂の改質工程においては、エポキシドの反応性および押出機の吐出量等を考慮して押出機内での溶融混練時の温度(通常は200℃前後)およびパスタイムを適宜設定すればよい。本発明において改質PLA樹脂は、PLA樹脂とエポキシドの化学反応により得られる。この改質反応は通常170〜230℃の範囲で行うことができる。
【0057】
PLA樹脂に前記末端封鎖剤を添加して反応させ末端封鎖PLA樹脂とする際は、エポキシドによるPLA樹脂の改質後に当該末端封鎖を行なう等、前述したエポキシド改質工程と末端封鎖工程とを別工程とする方法が好ましく採用される。
【0058】
なお、前記の、改質PLA樹脂からなる樹脂粒子の製造方法は、好適例であるが、本発明においてはこれらに限定されるものではなく、エポキシド改質工程と樹脂粒子製造工程とを別工程とする方法など、その他の方法を採用することもできる。
【0059】
例えば、予めPLA樹脂とエポキシドを押出機にて溶融混練して一旦エポキシド改質PLA樹脂を作製し、次いで該改質PLA樹脂を、必要に応じて添加剤と共に、再度、押出機に供給して前記のように樹脂粒子を作製することもできる。また未改質のPLA樹脂の粒子を密封容器中で分散液に分散させた後、密封容器内でエポキシドによる改質反応を行うことにより樹脂粒子を製造ことも考えられる。
【0060】
前記樹脂粒子の1個当りの平均重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。
該平均重量が軽すぎる場合には、樹脂粒子の製造が特殊なものになる。一方、該平均重量が重すぎる場合には、得られる発泡粒子の密度分布が大きくなったり、型内成形時の充填性が悪くなったりする虞がある。
該樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。なお、樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した相似形状となる。
【0061】
前記樹脂粒子製造工程においては、通常、原料PLA樹脂を予め乾燥させておく。このことにより、PLA樹脂の加水分解による劣化を抑制することができる。また、PLA樹脂の加水分解による劣化を抑制するために、ベント口付き押出機を使用して、真空吸引を行ってPLA樹脂から水分を除去する方法も採用することができる。PLA樹脂の水分を除去することにより、樹脂粒子中に気泡が発生することを抑制し、押出成形時の安定性を向上させることもできる。
【0062】
また、前記樹脂粒子中には、得られる発泡粒子の見かけ密度及び気泡径を適切な値に調整するために添加剤を予め添加しておくことができる。該添加剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、架橋ポリスチレン等の重合体を採用することができる。前記添加剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に、疎水性であるポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0063】
得られる発泡粒子の見かけ密度及び気泡径はタルク等の前記添加剤の添加量によっても変化するため、それらの調整効果が期待できる。通常、PLA樹脂100重量部に対して、該添加剤を0.001〜5重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。この場合には、発泡粒子の見かけ密度の低下(発泡倍率の向上)及び気泡径の均一化を図ることができる。
【0064】
PLA樹脂に種々の目的に応じて添加剤を添加する場合には、ペレタイズの際に添加剤をそのままPLA樹脂に練り込むこともできるが、分散性等を考慮して通常は添加剤のマスターバッチを作製し、それとPLA樹脂とを混練することが好ましい。
【0065】
PLA樹脂は加水分解し易いことから、PLA樹脂に配合する添加剤としてはできるだけ親水性の物質を避け、疎水性物質を選択して添加することが好ましい。添加剤として疎水性のものを採用することにより、PLA樹脂の加水分解による劣化を抑えながら添加剤としての効果が得られる。
【0066】
本発明においては、樹脂粒子を芯層と外層を有する多層構造の樹脂粒子(以下、多層樹脂粒子ともいう。)として製造することが好ましい。該多層樹脂粒子は、芯層形成用押出機と外層形成用押出機とが、共押出ダイに連結された装置を用いて製造することができる。共押出成形技術については、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報に記載されている。
【0067】
該多層樹脂粒子を用いて前記方法により発泡させて製造された発泡粒子は、PLA樹脂により構成される芯層と、他のPLA樹脂により構成される該芯層を覆う外層とを有する多層構造の発泡粒子(以下、多層発泡粒子ともいう。)となる。この場合、多層発泡粒子の少なくとも芯層は、エポキシドにて改質され、かつ上記の条件(1)、(2)を満足する改質PLA樹脂から構成されるものである。以下の多層樹脂粒子に関する記述において、「PLA樹脂」はそれが芯層を構成する場合は「改質PLA樹脂」を意味し、外層を構成する場合は「未改質のPLA樹脂」又は「改質PLA樹脂」を意味する。なお、前記多層発泡粒子において、該外層は芯層全体を覆っている必要はなく、芯層を構成する樹脂が多層発泡粒子表面に露出している部分があってもよい。
【0068】
該外層を構成するPLA樹脂の軟化点(B)[℃]は、該芯層を構成するPLA樹脂の軟化点(A)[℃]よりも低く、かつ該軟化点(A)と該軟化点(B)との差[(A)−(B)]が0℃を超え105℃以下であることが好ましく、より好ましくは該差が15〜105℃であり、更に好ましくは該差が20〜105℃である。該差が前記範囲内である多層発泡粒子は、前記樹脂粒子製造工程において、外層と芯層とを構成する軟化点(B)と(A)を示すPLA樹脂を共押出する等の方法にて多層樹脂粒子を製造し、該多層樹脂粒子を発泡させることにより得ることができ、後述する(5)式及び(6)式、更には(7)式を満足する多層発泡粒子を効率良く得ることができ、一層安定して型内成形時に優れた熱融着性を示す多層発泡粒子となる。
なお、外層を構成するPLA樹脂の軟化点は、多層発泡粒子の取り扱い性および得られる成形体の高温時の機械的強度の観点から、芯層を構成するPLA樹脂の軟化点との関係が上記範囲であると共に、50℃以上、更に55℃以上、特に65℃以上であることが好ましい。
【0069】
本明細書における軟化点とは、JIS K7206(1999)に基づく、A50法で測定されたビカット軟化温度を意味する。測定試験片としては、PLA樹脂を、真空オーブンを使用して充分に乾燥させた後、200℃、20MPaの条件下で加圧し、必要に応じて空気抜き操作を行い気泡が混入しないようにして縦20mm×横20mm×厚み4mmの試験片を作製し、該試験片を80℃のオーブン内で24時間アニーリング処理した後に測定に用いる。測定装置としては、株式会社上島製作所製「HDT/VSPT試験装置 MODEL TM−4123」などを使用することができる。
【0070】
前記多層樹脂粒子および多層発泡粒子においては、芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比が99.9:0.1〜75:25であることが好ましく、より好ましくは99.7:0.3〜85:15、更に好ましくは99.5:0.5〜90:10である。外層を形成している樹脂の重量比が小さすぎると、多層発泡粒子の外層部分の厚みが薄すぎて型内成形時の融着性向上の効果が低下する。また、多層樹脂粒子を製造する際の生産上の問題が発生する虞がある。一方、外層を形成している樹脂の重量比が大きすぎると、多層樹脂粒子の外層を形成している樹脂が必要以上に発泡してしまうことにより多層発泡粒子の型内成形時の融着性向上の効果が低下することがある。また、成形体の機械的物性が低下し易くなる虞がある。なお、多層発泡粒子において、外層を形成している樹脂は本発明の目的効果が達成できる限りにおいて発泡していてもよい。
多層発泡粒子における芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比の調整は、多層樹脂粒子の芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比を調整することにより行なわれる。
【0071】
前記多層樹脂粒子および多層発泡粒子を構成するPLA樹脂の前記末端封鎖剤による末端封鎖は、多層樹脂粒子の製造時において、少なくとも芯層を構成するPLA樹脂に添加されていることが好ましく、芯層及び外層の双方を構成するPLA樹脂に添加されていることがより好ましい。少なくとも芯層、好ましくは芯層及び外層の双方を構成するPLA樹脂が末端封鎖処理されていることにより、該樹脂を発泡させる際の加水分解がより一層抑制され、一層安定して多層発泡粒子を製造できるようになる。更には、成形体製造時の加水分解も一層抑制され、成形体の安定生産にも繋がるとともに、製品として使用される際においても高温多湿下での使用に耐え得るようになるなど、更なる耐久性の向上が期待できる。
【0072】
多層発泡粒子の外層の厚みについては、得られる成形体の機械的強度が向上する観点から厚みが薄い方が好ましい。なお、該外層があまりに薄すぎる場合には、外層を設けることによる多層発泡粒子同士の融着性向上効果が不充分になることが懸念されるが、下記の厚み範囲であれば十分な融着性向上効果が発現される。すなわち、多層発泡粒子の外層の平均厚みは、0.1〜25μm、更に0.2〜15μm、特に0.3〜10μmであることが好ましい。多層発泡粒子の外層の平均厚みが前記範囲となるように調整するには、多層樹脂粒子製造段階で外層と芯層の重量比を調整して多層樹脂粒子の外層の平均厚みを調整すればよい。なお、多層樹脂粒子の外層の平均厚みは、樹脂粒子の重量、目的発泡倍率などに応じて適宜調整されるべきであるが、概ね2〜100μm、更に3〜70μm、特に5〜50μmが好ましい。
【0073】
前記多層発泡粒子の外層の平均厚みは次の方法により測定される。
多層発泡粒子を略二等分し、その拡大断面の写真から、該断面の上下左右の4箇所の外層の厚みを求め、その平均を一つの多層発泡粒子の外層の厚さとする。この作業を無作為に選んだ10個の多層発泡粒子について行い、各多層発泡粒子の外層の厚さを相加平均した値を多層発泡粒子における外層の平均厚みとする。多層樹脂粒子の外層の平均厚みにおいても、同様の方法で測定する。なお、多層発泡粒子、或いは樹脂粒子の外層が芯層の周囲に部分的に形成されている場合には、前記4箇所の外層の厚みをどうしても測定できない場合があるが、その場合は測定できる任意の4箇所の外層厚みを求め、その平均を一つの多層発泡粒子、或いは樹脂粒子の外層の厚さとする。また、多層発泡粒子の外層部分が判別し難いときには、予め外層を構成する樹脂に着色剤を添加して多層樹脂粒子を製造することができる。
【0074】
前記樹脂粒子においては、多層樹脂粒子であるか否かに拘わらず樹脂粒子全体が特定の吸熱量(Rr:endo)を有することが好ましい。また、多層樹脂粒子の場合には樹脂粒子外層の吸熱量(Rs:endo)と樹脂粒子芯層の吸熱量(Rc:endo)とが特定の関係を有することが好ましい。次に、このことについて詳しく説明する。
【0075】
本発明における樹脂粒子は、熱流束示差走査熱量測定法により下記測定条件1で求められる、熱処理後の樹脂粒子全体の吸熱量(Rr:endo)[J/g]が下記(5)式を満足することが好ましい。
(Rr:endo)>25J/g ・・・(5)
(5)式において、(Rr:endo)が25J/g超であることは、(5)式を満足する樹脂粒子から得られる発泡粒子において、該発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、該ポリ乳酸による発泡粒子の結晶成分の量が多い状態になることを意味している。すなわち、充分な熱処理を行って該樹脂粒子から得られる発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化度を高めることにより、結晶化度の高められた成形体を得ることができることを意味する。したがって、最終的に得られる成形体の機械的強度、高温時の圧縮強さ等の耐熱性が高められることが期待できる。このような観点から、(Rr:endo)は、30J/g以上、更に35J/g以上が好ましい。また、(Rr:endo)の上限は、概ね70J/g、好ましくは60J/gである。
【0076】
更に、多層樹脂粒子においては、熱処理後の樹脂粒子外層の吸熱量(Rs:endo)[J/g]と熱処理後の樹脂粒子芯層の吸熱量(Rc:endo)[J/g]との関係が下記(6)式を満足することが好ましい。
(Rc:endo)>(Rs:endo)≧0 ・・・(6)
【0077】
上記(6)式の関係が満たされるということは、(6)式を満足する樹脂粒子から得られる発泡粒子において、該発泡粒子の外層および該発泡粒子の芯層を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、発泡粒子の外層を構成するポリ乳酸の結晶成分の量が、発泡粒子の芯層を構成するポリ乳酸の結晶成分の量より少ない状態になることを意味している。このことは、発泡粒子の芯層のポリ乳酸は、充分な熱処理により結晶化度が高められ、発泡粒子の芯層のポリ乳酸の結晶化度が向上することにより発泡粒子全体としては発泡粒子全体の耐熱性等を向上させることができる。一方、発泡粒子の外層のポリ乳酸は、充分な熱処理によっても結晶化度が発泡粒子の芯層より低くなることから、発泡粒子表面の軟化点は低いものとなっている。したがって、(6)式の関係が満たされる樹脂粒子から得られる発泡粒子は、その製造前後の熱履歴によらず型内成形時の発泡粒子相互の熱融着性において優れた融着性を発現できる発泡粒子となる。かかる観点から、発泡粒子表面の融着性をより向上させるために、樹脂粒子外層の吸熱量(Rs:endo)は15J/g以下(0も含む)、更に10J/g以下(0も含む)が好ましい。また、発泡粒子の耐熱性、機械的強度を向上させるために、樹脂粒子芯層の吸熱量(Rc:endo)は25J/g以上、更に30J/g以上、特に35J/g以上が好ましい。また、(Rc:endo)の上限は、概ね70J/g、更に60J/gである。
また、(Rc:endo)と(Rs:endo)とは、10J/g以上の熱量差、更に25J/g以上の熱量差を有することが好ましい。なお、前記(6)式を満足する範囲において、多層樹脂粒子外層を構成しているポリ乳酸は、非晶性ポリ乳酸でも非晶性ポリ乳酸と結晶性ポリ乳酸との混合樹脂であってもよい。
【0078】
本明細書において、樹脂粒子全体の吸熱量(Rr:endo)[J/g]、多層樹脂粒子外層の吸熱量(Rs:endo)[J/g]及び多層樹脂粒子芯層の吸熱量(Rc:endo)[J/g]は、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の測定条件1にて求められる測定値である。
【0079】
測定条件1
[測定試料の調整]
樹脂粒子全体の吸熱量測定試料は樹脂粒子を基本的には切断することなく測定試料とする。また、多層樹脂粒子外層の吸熱量測定試料は、該樹脂粒子外層を構成する樹脂原料を測定試料とし、多層樹脂粒子芯層の吸熱量測定試料は、該樹脂粒子芯層を構成する樹脂原料を測定試料とする。
【0080】
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Rr:endo)、(Rs:endo)、または(Rc:endo)の測定値は、各々上記測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度10℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度10℃/minにて30℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度5℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、「2回目のDSC曲線(II)」ともいう。)に基づいて求められる値とする。なお、(Rr:endo)の測定試料採取にあたり、1粒の樹脂粒子の重量が4mgを超える場合には樹脂粒子を2等分するなど同形状に等分して1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
【0081】
なお、吸熱量(Rr:endo)は、
図3に示すように、2回目のDSC曲線(II)の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしても
図4に示すようにベースラインが湾曲してしまう場合には、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。また、吸熱量(Rs:endo)、吸熱量(Rc:endo)も、2回目のDSC曲線(II)から(Rr:endo)と同様にベースラインを定めて点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる。
【0082】
なお、前記吸熱量(Rr:endo)、(Rs:endo)、(Rc:endo)の測定において、測定試料のDSC曲線の測定条件として、110℃での120分間の保持を採用する理由は、測定試料のPLA樹脂の結晶化を極力進ませた状態での吸熱量(Rr:endo)、(Rs:endo)、(Rc:endo)を求めることを目的としている為である。
【0083】
前記吸熱量(Rr:endo)の値は、樹脂粒子と、その発泡粒子と、その成形体から採取される発泡粒子から求められる値とは、同様の値となる。即ち、前記吸熱量(Rr:endo)の値、更に、(Rs:endo)、(Rc:endo)の値についても、樹脂粒子の熱履歴により変動するものではない。
【0084】
本発明に係る樹脂粒子が、前記(5)式を満足することにより、該樹脂粒子から最終的に得られる熱処理された成形体において、機械的強度や高温時の圧縮強さにおいて特に優れるものとなる。更に、樹脂粒子が多層樹脂粒子であって、前記(6)式を満足することにより、得られる発泡粒子表面の軟化温度を低く保つことができ、型内成形時の融着性に優れた発泡粒子となる。
【0085】
また、本発明の方法にて得られる発泡粒子においては、熱流束示差走査熱量測定法により下記測定条件2で求められる、熱処理前の発泡粒子中心部の吸熱量(Bfc:endo)[J/g]と発熱量(Bfc:exo)[J/g]とが下記(7)式を満足することが好ましい。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>10 ・・・(7)
【0086】
測定条件2
[測定試料の調整]
(発泡粒子中心部の吸熱量および発熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。具体的には、発泡粒子の表面を含まない内部の発泡層を切り出すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い、該発泡粒子中心部を測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し、且つ発泡粒子の中心とできる限り同じ中心をもつように切削処理前の発泡粒子の粒子重量の5分の1〜3分の1の範囲内で発泡粒子中心部を切り出す。この際、切り出された測定試料は、切削処理前の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあるようにする。
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)および発熱量(Bfc:exo)の測定値は、発泡粒子の中心部から採取された測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線(I)に基づいて求められる値とする。なお、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合は前記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行い1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
【0087】
前記(7)式における差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、熱流束示差走査熱量測定を行う際に既に発泡粒子中心部が有していた結晶部分と、該測定時の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化した部分とが融解する際に吸収するエネルギーである吸熱量(Bfc:endo)と、熱流束示差走査熱量測定の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化することにより放出されるエネルギーである発熱量(Bfc:exo)との差を表し、該差が小さいほど熱流束示差走査熱量測定前において発泡粒子中心部の結晶化が、進んでいなかったことを意味し、該差が大きくて吸熱量(Bfc:endo)の値に近いほど、発泡粒子中心部の結晶化が該測定前において進んでいたことを意味する。差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、発泡粒子が型内成形時に良好な二次発泡性を示し、型内成形時において良好な成形体が得られる成形温度範囲が広くなる観点から前記(7)式の範囲内であることが好ましい。更に発泡粒子の二次発泡性の観点から、差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、更に35J/g以下、特に30J/g以下が好ましい。一方、型内成形時の温度調整の容易性、型内発泡成形体の収縮防止の観点から差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、更に12J/g以上、特に15J/g以上が好ましい。
【0088】
前記多層発泡粒子においては、吸熱量(Bfc:endo)は25〜70J/gが好ましい。この吸熱量(Bfc:endo)が大きいほど発泡粒子を構成するPLA樹脂が熱処理によって結晶化度が高くなるものであり、最終的に成形体の機械的強度が高いものに調整することが出来る。一方、該吸熱量(Bfc:endo)が小さすぎる場合には、最終的に成形体の機械的強度、特に高温時の機械的強度が不十分なものとなる虞がある。この観点から、(Bfc:endo)は、更に30J/g以上、特に35J/g以上が好ましい。また、(Bfc:endo)の上限は、概ね70J/g、更に60J/gである。
【0089】
また、発熱量(Bfc:exo)は、差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]の関係を満足できる範囲内で、5〜30J/g、更に10〜25J/gであることが、発泡粒子の優れた二次発泡性や成形性の観点から好ましい。この発熱量(Bfc:exo)が大きいほど、発泡粒子中心部の結晶性のPLA樹脂の結晶化が、熱流束示差走査熱量測定前において、進んでいなかったことを意味する。
【0090】
尚、本明細書において発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)は、前記の通り、JIS K7122(1987)に記載される熱流束示差走査熱量測定(測定条件2)によって求められる値であり、発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)の測定は次の基準で行なわれる。
発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は1回目のDSC曲線(I)の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は、1回目のDSC曲線(I)の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点eとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。但し、1回目のDSC曲線(I)におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合には、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点e、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点fとする。
【0091】
例えば、
図5に示す場合には、前記の通り定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)を求め、前記の通り定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)を求める。また、
図6に示すような場合には、前記のように点dと点eを定めることが困難である為、前記の通り定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点d(点e)と定めることにより、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を求める。また、
図7に示すように、吸熱ピークの低温側に小さな発熱ピークが発生するような場合には、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は、
図7中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Bとする。一方、
図7において、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。
【0092】
本発明方法により得られる発泡粒子の見かけ密度は、軽量性、型内成形性、機械的強度、及び型内成形性に優れるという観点から、24〜240g/Lが好ましく、40〜200g/Lがより好ましい。見かけ密度が小さすぎると、型内成形後の収縮率が大きくなる虞があり、見かけ密度が大きすぎると、見かけ密度のばらつきが大きくなり易く、型内にて加熱成形する際の発泡粒子の膨張性、融着性、見かけ密度のばらつきに繋がり、得られる成形体の物性低下の虞がある。
【0093】
本明細書における発泡粒子の見かけ密度は次のように測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置して養生する。次に、同恒温室内にて、約500mlの養生後の発泡粒子群の重量W1(g)を測定し、重量を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。次に、金網等の道具の水面下の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の体積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1を体積V1で割り算(W1/V1)することにより見かけ密度(g/L)を求める。
【0094】
また、本発明の発泡粒子の平均気泡径は、型内成形性、得られる成形体の外観が更に向上するという観点から、30〜500μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。
【0095】
本明細書において、発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで前記4本の各線分と交わる気泡の数(n1〜n4)をカウントし、各線分と交わる気泡の数の総和N=n1+n2+n3+n4(個)を求める。次いで4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を無作為に選んだ10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0096】
また、本発明方法により得られる発泡粒子の独立気泡率は、発泡粒子の優れた型内成形性、得られる成形体の機械的強度の充分な発現性の観点から、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0097】
本明細書において、発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、養生後の嵩体積約20cm
3の発泡粒子を測定用サンプルとし水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(8)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
【0098】
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(8)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の体積と発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
3)
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
3)
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
3)
【0099】
本発明方法により得られる発泡粒子を用いて型内成形をすることにより、ポリ乳酸系樹脂成形体が得られる。その形状は特に制約されず、板状、柱状、容器状、ブロック状は、もとより三次元の複雑な形状のものや、厚みの厚いものも得ることができる。該成形体は、包装用容器、自動車内装材、緩衝材、FRP芯材など、各種用途に好適に用いることができる。
【0100】
該成形体は、本発明の特定の改質ポリ乳酸系樹脂粒子を分散媒放出発泡法により発泡させる方法にて得られた発泡粒子を型内成形して得られたものであることからPLA樹脂の潜在的物性が向上していると共に、その樹脂からなる樹脂粒子が発泡する際に気泡膜が大きく延伸され、改質PLA樹脂が充分に分子配向している状態にあるものと考えられることから、圧縮強度や曲げ弾性率等に優れるものである。更に、前記高温ピークを有する発泡粒子からなるものの場合には、発泡粒子相互の融着性が更に向上し、寸法安定性、機械的強度も更に改善されているものとなる。なお、成形体は、熱処理(ヒートセット)にて充分にPLA樹脂の結晶化度を高めることにより、耐熱性、機械的強度等においてより一層優れるものとなる。
【0101】
該成形体の密度は、軽量であると共に機械的強度に優れるという観点から、15〜150g/Lであることが好ましく、25〜125g/Lがより好ましい。
【0102】
また、成形体の独立気泡率は、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。該独立気泡率が低すぎると成形体の圧縮強度等の機械的強度が低下する虞がある。
【0103】
成形体の独立気泡率測定は、成形体中央部より縦25mm、横25mm、厚み30mmの直方体形状のサンプルを切出し(スキンはすべて切り落とす)、測定用サンプルとする他は、前記発泡粒子の独立気泡率の測定と同様にして求めることができる。
【0104】
本発明方法により得られる成形体の融着率は50%以上、更に60%以上、特に80%以上であることが好ましい。融着率が高い成形体は機械的強度、特に曲げ強度に優れる。
なお、該融着率は、成形体を破断した際の破断面に存在する全ての発泡粒子の個数に対する該破断面に存在する材料破壊した発泡粒子の個数の百分率を意味し、破断面において全ての発泡粒子が材料破壊した場合が融着率100%である。なお、該破断面において融着していない発泡粒子は材料破壊せず、発泡粒子の界面で剥離する。
【0105】
次に、本発明方法により得られる発泡粒子を用いる成形体の製造方法について説明する。該成形体の製造にあたっては、公知の型内成形方法を採用することができる。該製造においては、高温ピークを有する発泡粒子を用いることが好ましく、該発泡粒子を用いて公知の型内成形を行なうことにより、成形体を容易に得ることができる。
例えば、従来公知の発泡粒子成形金型を用いる、圧縮成形法、クラッキング成形法、加圧成形法、圧縮充填成形法、常圧充填成形法(例えば、特公昭46−38359号公報、特公昭51−22951号公報、特公平4−46217号公報、特公平6−22919号公報、特公平6−49795号公報等参照)などが挙げられる。
【0106】
通常好ましく行なわれる型内成形法としては、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子成形機に取り付けられた金型のキャビティー内に発泡粒子を充填し、飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)、好ましくは0.01〜0.20MPa(G)の水蒸気を供給して金型内で発泡粒子同士を加熱することにより発泡粒子を膨張、融着させ、次いで得られた成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法等が挙げられる。
【0107】
前記水蒸気の供給方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組み合わせる従来公知の方法を採用できる。特に、発泡粒子の型内成形においては、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。
【0108】
また、前記成形体は、発泡粒子を通路内の上下に沿って連続的に移動するベルトによって形成される型内に連続的に供給し、水蒸気加熱領域を通過する際に飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)の水蒸気を供給して発泡粒子を膨張、融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた成形体を通路内から取り出し、適宜長さに順次切断する連続式型内成形法(例えば特開平9−104026号、特開平9−104027号及び特開平10−180888号等参照)により製造することもできる。
【0109】
前記型内成形に先立ち、前記方法で得られた発泡粒子を密封容器に充填し、空気などの加圧気体により加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行って発泡粒子内の圧力を0.01〜0.15MPa(G)に調整した後、該発泡粒子を容器内から取り出して型内成形を行なうことにより、発泡粒子の型内成形性をより一層向上させることが出来る。
【実施例1】
【0110】
以下、本発明の発泡粒子の製造方法について、実施例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0111】
実施例1〜8、10、11及び比較例1〜5
実施例1〜8、10、11においては、表1に示す芯層形成用の原料PLA樹脂とエポキシドを内径30mmの二軸押出機に供給し温度条件200〜220℃にて溶融混練した後、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断することによりエポキシドで改質された改質PLA樹脂からなるペレットを作製した。なお、エポキシドとして使用した商品名:ARUFON UG−4035(東亜合成(株)製、アクリル系重合体、重量平均分子量:11000、エポキシ価:1.8meq/g)および商品名:VYLON RF−100−C01(東洋紡績(株)製、ポリエステル系重合体、重量平均分子量:20000〜30000)は、表1、2に示す配合量となるように供給した。ARUFON UG−4035については、マスターバッチで供給した。
得られたエポキシド改質PLA樹脂ペレットは、80℃で十分に乾燥させた。
【0112】
実施例1〜7、10、11、及び比較例1〜5において、内径65mmの芯層形成用単軸押出機および内径30mmの外層形成用単軸押出機の出口側に多層ストランド形成用の共押出ダイを付設した共押出用の押出機を用い、芯層形成用押出機に表1、2に示す芯層を形成するPLA樹脂ペレットを供給し、外層形成用押出機に表1、2に示す外層を形成するPLA樹脂ペレットを押出機に供給し夫々溶融混練した。それらの溶融混練物を前記の共押出ダイに導入してダイ内で合流させて共押出ダイの口金の細孔から、表1、2に示す重量割合で芯層の周囲に外層が被覆された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを、水槽を通過させることにより水冷し、その後、ペレタイザーで重量が2mgとなるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の溶融張力、溶融粘度等の諸物性を表1,2に併せて示す。
【0113】
なお、気泡調整剤マスターバッチおよび末端封鎖剤マスターバッチを前記芯層形成用押出機へPLA樹脂と共に供給することにより、芯層のPLA樹脂には、気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を1000重量ppm含有させると共に、配合量1.5重量%のカルボジイミド化合物(商品名:スタバクゾール1−LF、ラインケミー社製、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)にてPLA樹脂の末端封鎖を行なった。
また、外層のPLA樹脂には、カルボジイミド化合物(商品名:スタバクゾール1−LF、ラインケミー社製、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を配合量1.5重量%となるようにマスターバッチで供給した。
【0114】
また、実施例8で用いる単層の樹脂粒子は、外層形成用押出機を停止し、芯層形成用押出機のみを作動させることにより作製した以外は、実施例4と同様にして、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の溶融張力、溶融粘度等の諸物性を表1,2に併せて示す。
【0115】
次に、前記樹脂粒子を用いて発泡粒子を製造した。
まず、前記のようにして得られた樹脂粒子50kgを分散媒としての水270Lと共に撹拌機を備えた内容量400Lの密封容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム300g、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬(株)製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として4g添加した。次いで、撹拌下で表1、表2に示す発泡温度まで昇温し、密封容器内に発泡剤としての二酸化炭素を表1、表2に示す密封容器内圧力になるまで圧入しその温度で15分間保持した。その後、二酸化炭素にて背圧を加えて容器内の圧力が一定になるようにして内容物を表1、表2に示す発泡温度、容器内圧力の条件下の密封容器内から常温、常圧の大気圧雰囲気下に放出して表1、表2に示す見かけ密度の発泡粒子を得た。
【0116】
得られた発泡粒子の高温ピークの吸熱量、見かけ密度、独立気泡率、平均気泡径、目視による発泡粒子の収縮の有無などの諸物性を測定、評価した結果を表1、2に示す。
【0117】
実施例9
実施例3で用いた多層樹脂粒子を用い、次のようにして発泡粒子を作製した。
多層樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた内容量5Lの密封容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム3g、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬(株)製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.1g添加した。次いで、撹拌下で密封容器内に発泡剤としてのイソブタンを75g添加し、次いで表1に示す発泡温度まで昇温し、その温度で15分間保持した。その後、窒素にて背圧を加えて容器内の圧力が一定になるようにして内容物を表1に示す発泡温度、容器内圧力の条件下の密封容器内から常温、常圧の大気圧雰囲気下に放出して表1に示す見かけ密度の発泡粒子を得た。
【0118】
得られた発泡粒子の高温ピークの吸熱量、見かけ密度、独立気泡率、平均気泡径、目視による発泡粒子の収縮の有無などの諸物性を測定、評価した結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
次に、前記発泡粒子を用いて成形体を作製した。
縦200mm、横250mm、厚さ50mmの平板成形型を取り付けた汎用の発泡粒子成形機を使用し、実施例、比較例で得られた発泡粒子に表3、4に示す内圧を付与し、内圧を高めた発泡粒子を平板成形型のキャビティー内に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の成形体を得た。前記スチーム加熱手順は、固定側と移動側の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱を行ったのち、固定側の型のドレン弁を開放した状態で移動側の型から成形型のキャビティー内にスチームを3秒間供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側の型から成形型のキャビティー内にスチームを3秒間供給した後、固定側と移動側の型のドレン弁を閉じた状態で、両方の型から成形型のキャビティー内の圧力が表3、4に示す成形蒸気圧になるまでスチームを供給して加熱を行なった。
【0122】
加熱終了後、放圧し、成形型内の表面圧力計が0.01MPa(G)に低下するまで水冷した後、成形型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は40℃のオーブン内にて15時間養生した後、次いで70℃のオーブンにて15時間養生し、その後、室温まで徐冷して、成形体を得た。
このようにして得られた成形体について、外観、曲げ弾性率、50%圧縮応力、独立気泡率、融着率、収縮率などの各種物性を評価した。その結果を
表3および表4に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
表3,4に示した発泡粒子内圧、成形体の密度の測定方法は以下のとおりである。
「発泡粒子内圧」
成形体を作製する際の発泡粒子の内圧は、型内成形機充填直前の発泡粒子の一部(以下、発泡粒子群という)を使用して次のように測定した。
加圧タンク内にて内圧が高められた型内成形機充填直前の発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴を多数穿設した袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温恒湿室に移動した。続いてその恒温恒湿室内の秤に発泡粒子群の入った袋を乗せて重量をよみとった。この重量の測定は、前記した発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから120秒後におこなった。この時の重量をQ(g)とした。続いてその発泡粒子群の入った袋を同恒温恒湿室に10日間放置した。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過とともに気泡膜を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、10日間後では平衡に達しているのでその重量は安定していた。よって、この10日間後の発泡粒子群の入った袋の重量を同恒温恒湿室内にて再度測定し、この重量をU(g)とした。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、下記の(5)式により発泡粒子の内圧P(MPa)を計算した。なお、この内圧Pはゲージ圧に相当する。
【0126】
P=(W÷M)×R×T÷V ・・・(5)
但し、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気を採用されているので、ここでは296(K)の定数である。V(L)は発泡粒子群の見かけ体積から発泡粒子群中に占めるPLA樹脂の体積を差し引いた体積を意味する。
【0127】
なお、発泡粒子群の見かけ体積(L)は、養生10日間後に袋から取り出された発泡粒子群の全量を直ちに同恒温恒湿室内にて23℃の水が入っているメスシリンダー内に水没させた時の目盛り上昇分から、発泡粒子群の体積Y(cm
3)を算出し、これを単位に換算することによって求められる。発泡粒子群中に占めるPLA樹脂の体積(L)は、前記発泡粒子群重量(U(g)と前記の針穴を多数穿設した袋の重量Z(g)との差)を、発泡粒子をヒートプレスにて脱泡して得られる樹脂の密度(g/cm
3)にて除し、単位換算して求められる。
なお、以上の測定においては、前記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)が0.5000〜10.0000gで、かつ体積Yが50〜90cm
3となる量の複数個の発泡粒子群が使用される。
なお、本明細書において二段発泡する際の発泡粒子の内圧も前記の方法と同様の方法にて測定することができる。
【0128】
「成形体の密度」
成形体の密度は、次のように測定した。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した成形体の外形寸法から嵩体積を求めた。次いで該成形体の重量(g)を精秤した。成形体の重量を嵩体積にて除し、単位換算することにより成形体の密度(g/L)求めた。
【0129】
成形体の物性評価方法は下記により行った。
「外観」
成形体の表面を肉眼で観察し以下の基準にて評価した。
◎:成形体の表面に粒子間隙が殆ど認められず、良好な表面状態を示す。
○:成形体の表面に粒子間隙が著しくはないが認められる。
×:成形体の表面に粒子間隙が著しい。
【0130】
「融着率」
融着率の測定は、成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合(百分率)を融着率とした。具体的には、成形体から縦50mm、横50mm、厚み50mmの試験片を切り出し、カッターナイフで各試験片に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から成形体を破断させた。次に、成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とした。
【0131】
「収縮率」
平板成形型の横寸法に対する養生後の成形体の横方向の寸法変化を、下式にて求めた。
収縮率(%)=(1−(養生後の成形体の横方向の最小寸法(mm)/250mm))×100
【0132】
「50%圧縮応力」
成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片(表皮なし)を切り出し、JIS K6767(1999)に基づき、圧縮速度10mm/分にて試験片を厚み方向に圧縮する圧縮試験を行い成形体の50%圧縮応力を求めた。
【0133】
「曲げ弾性率」
成形体から長さ120mm、幅25mm、厚さ20mmの試験片(表皮なし)を切り出し、JIS K7221−1(1999)に基づき、速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の曲げ弾性率を求めた。
【0134】
「加熱寸法変化率」
成形体の耐熱性を加熱寸法変化率にて評価した。JIS K6767(1999)に記載されている熱的安定性(高温時の寸法安定性・B法)に準拠して、120℃に保ったギアオーブン内に試験片を入れ22時間加熱を行った後取り出し、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室に1時間放置し、加熱前後の寸法より下式を用いて面方向の加熱寸法変化率を求めた。
加熱寸法変化率(%)=(加熱後の寸法−加熱前の寸法)/加熱前の寸法 ×100
【0135】
実施例と比較例の対比から、実施例に示すものは、全て収縮のない発泡粒子が得られており、実施例の発泡粒子から得られる成形体は、機械的物性(曲げ弾性率や圧縮強度)において特に優れることがわかる。