【文献】
Lee, Su-Lin; Hsu, En-Chi; Chou, Chih-Chien; Chuang, Hsiao-Ching; Bai, Li-Yuan; Kulp, Samuel K.; Chen, Ching-Shih,Identification and Characterization of a Novel Integrin-Linked Kinase Inhibitor,Journal of Medicinal Chemistry ,2011年,Vol. 54, Iss. 18,P. 6364-6374,Publish Online 2011.8.8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者らは、インテグリン結合キナーゼ阻害剤として、および被験体において癌を処置するまたは予防するために使用され得る、多くの新規化合物を開発してきた。これらの化合物は、本明細書中でより詳細に定義される置換基を有する、式Iによって記載される。
【0019】
【化4】
定義
本明細書中で述べる用語は、実施態様の説明のためのみであり、そして本発明を全体として制限するものと解釈されるべきではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その周囲の文脈によって禁忌でなければ、その複数形を含む。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「有機基」という用語は、脂肪族基、環式基、または脂肪族基および環式基の組み合わせ(例えばアルカリール基およびアラルキル基)として分類される炭化水素基を意味して使用される。アルカリール基は、介在するアルキル基によって残りの構造に結合しているアリール基であり、一方アラルキル基は、構造に直接結合しているが、それに結合した1つ以上のさらなるアルキル基を含むアリール基である。本発明の文脈において、本発明の化合物のために適当な有機基は、その化合物の望ましい活性(例えばその抗癌活性)を妨害しないものである。本発明の文脈において、「脂肪族基」という用語は、飽和または不飽和の、鎖状または分枝状の炭化水素基を意味する。この用語を、例えばアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含むよう使用する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」という用語、および接頭辞「アルカ−(alk−)」は、直鎖基および分枝鎖基を含む。他に特定しなければ、これらの基は、1から20個の炭素原子を含み、アルケニル基は2から20個の炭素原子を含む。いくつかの実施態様において、これらの基は、全部で多くとも10個の炭素原子、多くとも8個の炭素原子、多くとも6個の炭素原子、または多くとも4個の炭素原子を有する。4個またはそれより少ない炭素原子を含むアルキル基はまた、低級アルキル基とも呼ばれ得る。アルキル基はまた、それらが含む炭素原子の数によっても呼ばれ得る(すなわち、C
1〜C
4アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基である)。
【0022】
本明細書中で使用される場合、シクロアルキルは、環構造を形成するアルキル基(すなわち、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基)を指す。環式基は、単環式または多環式であり得、そして好ましくは3から10個の環炭素原子を含む。シクロアルキル基は、4個またはそれより少ない炭素原子を含むアルキル基を介して主構造に結合され得る。代表的な環式基は、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、ならびに置換および非置換の、ボルニル、ノルボルニル、およびノルボルネニルを含む。
【0023】
他に特定されなければ、「アルキレン」および「アルケニレン」は、上記で定義した「アルキル」基および「アルケニル」基の二価の形態である。「アルキレニル」および「アルケニレニル」という用語は、「アルキレン」および「アルケニレン」がそれぞれ置換された場合に使用する。例えば、アリールアルキレニル基は、アリール基が結合したアルキレン部分を含む。
【0024】
「ハロアルキル」という用語は、過フッ素化基を含む、1つ以上のハロゲン原子で置換された基を含む。これはまた、接頭辞「ハロ」を含む他の基にもあてはまる。適当なハロアルキル基の例は、クロロメチル、トリフルオロメチル等である。ハロ部分は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を含む。
【0025】
本明細書中で使用される「アリール」という用語は、炭素環式芳香環または環系を含む。アリール基は、単一の芳香環、複数の別々の芳香環、または縮合した芳香環系を含み得る。炭素環式芳香環は、ヘテロ原子を含まない。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニルおよびインデニルを含む。アリール基は、置換または非置換であり得る。
【0026】
他に示さなければ、「ヘテロ原子」という用語は、原子O、S、またはNを指す。「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの環ヘテロ原子(例えばO、S、N)を含む芳香環または環系を含む。いくつかの実施態様において、「ヘテロアリール」という用語は、2から12個の炭素原子、1から3個の環、1から4個のヘテロ原子、およびヘテロ原子としてO、S、および/またはNを含む環または環系を含む。適当なヘテロアリール基の例は、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、ナフチリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、プリニル、キナゾリニル、ピラジニル、1−オキシドピリジル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル等を含む。
【0027】
「縮合アリール基」という用語は、縮合した炭素環式芳香環または環系を含む。縮合アリール基は、縮合して単一の芳香族系を形成する、複数の芳香環を含む。縮合アリール基の例は、ナフタレン(C
10)、アントラセン(C
14)、フェナントレン(C
14)、およびピレン(C
16)縮合アリール基を含む。集団的に、縮合アリール基を、それらが含む炭素環の数に関して、すなわちC
10〜C
18カルボアリール基と呼び得る。
【0028】
「縮合ヘテロアリール基」という用語は、縮合して単一の芳香族系を形成する複数の芳香環を含む芳香環系を指し、ここで1つ以上の芳香環が複素芳香環である。縮合ヘテロアリール基は、その他は縮合アリール基と同様である。縮合ヘテロアリール基の例は、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン(bezothiopene)、インドール、イソインドール、キノリン由来のC
10ヘテロアリール基、イソキノリン、ベンゾジアジン(benodiazine)、ピリドピリジン、およびアクリジン由来のC
14ヘテロアリール基およびキサンテンを含む。
【0029】
基が本明細書中で記載されるあらゆる式または図式において1回より多く存在する場合、それぞれの基(または置換基)は、明白に述べられているかどうかに関わらず、独立に選択される。例えば、式−C(O)−NR
2に関して、各R基は独立に選択される。
【0030】
本出願中で使用されるある用語の考察および引用を簡単にする手段として、「基」および「部分」という用語を、置換が可能であるまたは置換され得る化学種、および置換が可能でないまたは置換され得ない化学種の間を区別するために使用する。従って、「基」という用語を、化学的置換基を説明するために使用する場合、その説明された化学物質は、非置換基および1つ以上の非過酸化性O、N、S、またはF置換基またはメチル基のような他の従来の置換基を有する基を含む。「部分」という用語を、化学的化合物または置換基を説明するために使用する場合、非置換の化学物質のみを含むよう意図される。例えば、「アルキル基」という語句は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル等のような、純粋な直鎖(open chain)飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル等のような、当該分野で公知のさらなる置換基を有するアルキル置換基も含むよう意図される。従って、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、シアノアルキル等を含む。他方、「アルキル部分」という語句は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル等のような、純粋な直鎖(open chain)飽和炭化水素アルキル置換基のみを含むよう限定される。
【0031】
基において任意で置換され得るさらなる置換基を、下記でさらに定義する。
【0032】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):−C(=O)OR、式中、Rはエステル置換基、例えばC
1〜7アルキル基、またはC
5〜20アリール基、好ましくはC
1〜7アルキル基(C
1〜7アルキルエステル)である。エステル基の例は、−C(=O)OCH
3、−C(=O)OCH
2CH
3、−C(=O)O(CH
3)
2、−(CH
2)
3C(=O)OCH
3、および−C(=O)OPhを含むがこれに限らない。
【0033】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):−C(=O)NR
1R
2、式中、R
1およびR
2は、独立にアミノ基に関して定義したようなアミノ置換基である。アミド基の例は、−C(=O)NH
2、−C(=O)NHCH
3、−C(=O)N(CH
3)
2、−C(=O)NHCH
2CH
3、および−C(=O)N(CH
2CH
3)
2を含むがこれに限らない。
【0034】
アミノ:−NR
1R
2、式中、R
1およびR
2は独立にアミノ置換基、例えば水素またはC
1〜7アルキル基である。アミノ基の例は、−NH
2、−NHCH
3、−NHCH(CH
3)
2、−N(CH
3)
2、−N(CH
2CH
3)
2、および−NHPhを含むがこれに限らない。環式アミノ基の例は、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノを含むがこれに限らない。
【0035】
アシルアミド(アシルアミノ):−NR
1C(=O)R
2、式中、R
1はアミド置換基、例えば水素またはC
1〜7アルキル基である。アシルアミド基の例は、−NHC(=O)CH
3、−NHC(=O)CH
2CH
3、および−NHC(=O)Phを含むがこれに限らない。アシルアミド基は置換され得る;例えば、そのアシルアミド基は、式−NH−CO−(CH
2)
X−NH
2を有する、アミン置換アシルアミド基であり得、式中、xは1〜4の整数である。
【0036】
ウレイド:−N(R
1)CONR
2R
3、式中、R
2およびR
3は、独立にアミノ基に関して定義されたようなアミノ置換基であり、そしてR
1はウレイド置換基、例えば水素またはC
1〜7アルキル基である。ウレイド基の例は、−NHCONH
2、−NHCONHMe、−NHCONHEt、−NHCONMe
2、−NHCONEt
2、−NMeCONH
2、−NMeCONHMe、−NMeCONHEt、−NMeCONMe
2、−NMeCONEt
2、および−NHC(=O)NHPhを含むがこれに限らない。
【0037】
スルホンアミド−S(=O)
2NRR
1、式中、R
1は、アミノ基に関して定義したようなアミノ置換基であり、そしてRはスルホンアミノ置換基、例えばC
1〜7アルキル基またはC
5〜20アリール基である。スルホンアミド基の例は、−S(=O)
2NHCH
3、−S(=O)
2NHPh、および−S(=O)
2N(Me)
2を含むがこれに限らない。
【0038】
本発明は、異性体(例えばジアステレオマーおよびエナンチオマー)、互変異性体、塩、溶媒和物、多形、プロドラッグ等を含む、その薬学的に許容可能な形態のいずれかで、本明細書中で記載された化合物を含む。特に、もし化合物が光学活性なら、本発明は明確に、上記化合物のエナンチオマーのそれぞれ、およびそのエナンチオマーのラセミ混合物を含む。「化合物」という用語は、明白に述べられているかどうかに関わらず(時々、「塩」は明白に述べられているが)、あらゆるまたは全てのそのような形態を含むことが理解されるべきである。
【0039】
「処置する」、「処置すること」および「処置」等は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの症状の減弱または抑制による病状の改善、疾患の進行の遅延、疾患の発症の予防または遅延等を含む、癌のような病状または疾患に冒された被験体に利益を提供するあらゆる行為を指す。
【0040】
予防は、本明細書中で使用される場合、癌の発症の回避、または癌が発現する疾患の1つ以上の症状の抑制を含む、癌のような病状または疾患に冒されるリスクのある被験体に利益を提供するあらゆる行為を指す。その被験体は、発癌物質への曝露のために、または家族歴の結果として、危険な状態であり得る。
【0041】
本明細書中で使用される「薬学的に許容可能な」は、その化合物または組成物が、疾患の重症度および処置の必要性を考慮して過度に有害な副作用なく、本明細書中で記載される方法のために被験体へ投与するために適当であることを意味する。
【0042】
「治療的に有効な」および「薬理学的に有効な」という用語は、典型的に代替治療に関連するもののような副作用を回避しながら、疾患の重症度を低下させる目標を達成する、各薬剤の量を認定することを意図する。その治療的に有効な量を、1回以上の用量で投与し得る。
【0043】
本発明は、抗癌剤またはインテグリン結合キナーゼ阻害剤として使用され得る、多くの化合物を提供する。これらの化合物は、式Iによって記載され得る:
【0044】
【化5】
式中、Arは、置換または非置換の、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基から成る群から選択され;Yは、スルホンアミド、
【0046】
【化6-2】
から成る群から選択され、式中、nは0〜3の整数であり、R
1は、H、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、またはベンジルであり;そしてR
2は、H、メチル、またはエチルであり;Xはモルホリン、グアニジン、ニトロ、
【0048】
【化7-2】
から成る群から選択され、式中、R
3は、H、SO
2NH
2、L−Lys、D−Lys、β−Ala、L
eu、L−Ile、Phe、Asp、Asn、Glu、またはGlnであり、そしてR
4はH、メチル、エチル、アリル、CH
2CH
2OH、またはCH
2CNである;またはその薬学的に許容可能な塩であり得る。X、Y、およびArの置換基は全て互いに独立に変化され得る。
【0049】
いくつかの実施態様において、式Iの化合物は、式IIによるビフェニル基としてArを含む
【0050】
【化8】
式中、R
5は、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、CF
3、CCl
3、ヒドロキシル、OMe、CN、NO
2、NH
2、CONH
2、CONHMe、アセテート、CO
2H、CO
2Me、F、Cl、Br、またはIである。いくつかの実施態様において、R
5は、ハロメチル基のようなハロアルキル基であり、一方さらなる実施態様において、R
5はトリフルオロメチル部分(CF
3)である。
【0051】
式Iの化合物のさらなる実施態様において、Ar基は、縮合アリール基である。例えば、Ar基は、ナフチル基、アントリル基、またはフェナントリル基であり得る。縮合アリール基は、環のあらゆる位置で残りの化合物に結合され得る。
【0052】
いくつかの実施態様において、式Iの化合物のY置換基は、スルホンアミド、カルボキサミド(すなわち
【0053】
【化9】
)、およびエステル(すなわち
【0054】
【化10】
)から選択され得、式中、nは0〜3の整数であり、R
1はH、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、またはベンジルであり;そしてR
2はH、メチル、またはエチルである。例えば、Yは
【0057】
さらなる実施態様において、置換基Xは変化され得る。例えば、Xは、モルホリン、グアニジン、ニトロ、アルキルアミン(すなわち
【0058】
【化12】
)およびピペラジン(すなわち
【0059】
【化13】
)から選択され得る。アルキルアミンのR
3基は、H、SO
2NH
2、L−Lys、D−Lys、β−Ala、L−L
eu、L−Ile、Phe、Asp、Asn、Glu、またはGlnであり得る。本発明の好ましい実施態様において、R
3基はβ−アラニンである。R
3のアミノ酸は、そのカルボキシル部分によってアミンに結合し、アミド結合または「ペプチド」結合を形成する。ピペラジンのR
4基は、H(ピペラジンを生じる)、メチル、エチル、アリル、CH
2CH
2OH、またはCH
2CNであり得る。
【0060】
上記で記載した置換基の特定の組み合わせを、本発明のさらなる実施態様において使用する。例えば、式Iの化合物のさらなる実施態様は、Arをフェナントリルとして、Xをピペラジンとして、Yを
【0061】
【化14】
として、およびR
1をH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルとして提供する。
【0062】
本発明の多くの実施態様において、Ar基は、下記に示すような、4’−トリフルオロメチル,1,1’−ビフェニル部分である:
【0063】
【化15】
Arが4’−トリフルオロメチル,1,1’−ビフェニル部分である実施態様において、Xはピペラジンであり、Yは
【0065】
【化16-2】
であり、そしてR
1はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルである。あるいは、R
1はメチルまたはエチルのいずれかであり得る。
【0066】
Arが4’−トリフルオロメチル,1,1’−ビフェニル部分であるさらなる実施態様において、Xは
【0069】
【化18-2】
であり、そしてR
1はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルである。
【0070】
式Iの化合物の多くの実施態様において、Arは式II
【0071】
【化19】
によるビフェニル基であり、そしてXはピペラジンである。これらの実施態様のいくつかにおいて、R
5はCN、メチル、または水素であり、Yは
【0072】
【化20】
であり、そしてR
1はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルである。
【0073】
候補薬剤を、動物モデルにおいて試験し得る。典型的には、その動物モデルは、癌の研究のためのものである。動物モデル(例えばマウス)における様々な癌の研究は、ヒト癌の研究のために通常受け入れられる行為である。例えば、ヒト腫瘍細胞を動物に注射するヌードマウスモデルは、広く様々な癌の研究のために有用な一般的なモデルとして広く受け入れられている(例えば、Polinら、Investig.New Drugs、15:99−108(1997)を参照のこと)。典型的には、候補薬剤で処置したコントロール動物および処置を受けなかったコントロール同腹仔の間で結果を比較する。トランスジェニック動物モデルも利用可能であり、そしてヒト疾患のモデルとして通常受け入れられている(例えば、Greenbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:3439−3443(1995)を参照のこと)。候補薬剤をこれらの動物モデルにおいて使用して、候補薬剤が、例えば癌転移、癌細胞運動性、癌細胞侵襲性、またはその組み合わせを含む、癌に関連する1つ以上の症状を減少させるかどうかを決定し得る。
【0074】
本発明の化合物を用いた癌処置
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を被験体に投与することによって、被験体において癌を処置するまたは癌の発症を予防する方法を提供する。癌は、異常なおよび過剰な細胞増殖の疾患である。癌は、一般的に環境による傷害、または複製のエラーによって始まり、それは細胞の小さい画分が増殖に対する正常なコントロールを回避し、そしてその数を増やすことを可能にする。その損傷またはエラーは一般的に、腫瘍抑制因子遺伝子のような、細胞周期チェックポイントのコントロール、または細胞増殖コントロールの関連する局面をコードするDNAに影響する。この細胞の画分が増殖する時に、さらなる遺伝変異体が産生され得、そしてもしそれらが増殖優位性を提供するなら、進化的な様式で選択される。増殖優位性を発現したが、まだ完全に癌性になっていない細胞は、前癌性細胞と呼ばれる。癌は、被験体において癌細胞の数の増加を引き起こす。これらの細胞は、腫瘍と呼ばれる細胞の異常な塊を形成し得、その細胞は腫瘍細胞と呼ばれる。被験体の体内の腫瘍細胞の全体量は、腫瘍量と呼ばれる。腫瘍は、良性または悪性のいずれかであり得る。良性腫瘍は、増殖しているが、特定の部位に留まり、そして多くの場合被包性の細胞を含む。他方、悪性腫瘍の細胞は、浸潤および付近の組織を破壊し、そして転移と呼ばれる過程によって体の他の部分へ広がる。
【0075】
癌は一般的に、そのもとの組織に基づいて名付けられる。いくつかの主要な型の癌が存在する。癌腫は、皮膚または内臓を裏打ちもしくは覆う組織において始まる癌である。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合もしくは支持組織で始まる癌である。白血病は、骨髄のような血液形成組織において始まり、そして多数の異常な血液細胞が産生され、そして血流に入ることを引き起こす癌である。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞において始まる癌である。本発明の化合物を用いて処置され得る癌の型の例は、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系の癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、および乳癌から成る群から選択される癌を含む。
【0076】
癌性または潜在的に癌性の細胞内のシグナル伝達経路を調節して過剰な増殖を防止する、または細胞内の他の異常な過程の調節を提供することによって、癌を処置または予防し得る。理論に拘束されることを意図しないが、本発明の化合物は、Aktシグナル伝達経路の調節を提供することによって、癌を処置または予防し得る。Aktシグナル伝達経路は、セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼファミリーのメンバーである酵素を含み、そして例えばアポトーシス過程を阻害することによって、細胞生存経路に関与する。Aktの活性化は、2つのアミノ酸残基におけるリン酸化を必要とし、そのうち1つはホスホイノシチド依存性キナーゼ2(PDK2)部位である。インテグリン結合キナーゼ(ILK)は、PDK2部位をリン酸化し得ると同定されたキナーゼの1つである。本明細書中で提供される実施例において示されるように、本発明の化合物は、インテグリン結合キナーゼの阻害の結果として、PDK2リン酸化を防止し得、そしてそれによってAktの活性化を減少させる。よって、本発明の1つの局面は、細胞を、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩と接触させることによって、細胞におけるインテグリン結合キナーゼを阻害する方法を提供する。細胞を、インビボ、インビトロ、またはエキソビボにおいて接触させ得る。いくつかの実施態様において、その接触させる細胞は癌細胞であり得る。
【0077】
本発明の化合物を使用して、予防的および/または治療的処置を提供し得る。本発明の化合物を、例えば癌の発生に先だって、被験体に予防的に投与し得る。予防的(prophylactic)(すなわち予防の(preventive))投与は、被験体において癌が続いて起こる可能性を減少させる、または続いて起こる癌の重症度を減少させるために有効である。癌の家族歴を有する被験体、または高レベルの発癌物質への曝露のような、癌を発症するリスクの高い被験体に、予防的処置を提供し得る。あるいは、本発明の化合物を、例えば既に癌に罹患した被験体に治療的に投与し得る。治療的投与の1つの実施態様において、化合物の投与は、癌を排除するために有効であり、別の実施態様において、その化合物の投与は、癌の重症度を減少させるために、または罹患した被験体の寿命を延長するために有効である。その被験体は、好ましくは家畜化された農場動物(例えばウシ、ウマ、ブタ)、またはペット(例えばイヌ、ネコ)のような哺乳類である。より好ましくは、その被験体はヒトである。
【0078】
本発明の化合物の投与および処方
本発明はまた、活性成分として式Iによって定義されるもののような化合物、およびその活性成分と組み合わせて薬学的に許容可能な液体または固体の担体(単数または複数)を含む薬学的組成物を提供する。上記で癌の処置のために適当であると記載したあらゆる化合物が、本発明の薬学的組成物に含まれ得る。
【0079】
その化合物を、薬学的に許容可能な塩として投与し得る。薬学的に許容可能な塩は、化合物の比較的無毒性の、無機および有機酸付加塩を指す。これらの塩を、化合物の性質によって、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間に系中で、または精製した本発明の化合物を、適当な対イオンと別に反応させ、そして形成された塩を単離することによって調製し得る。代表的な対イオンは、塩化物、臭化物、硝酸塩、アンモニウム塩、硫酸塩、トシラート、リン酸塩、酒石酸塩、エチレンジアミン、およびマレイン酸塩等を含む。例えばHaynesら、J.Pharm.Sci.94、2111−2120頁(2005)を参照のこと。
【0080】
その薬学的組成物は、当業者に公知の様々な希釈剤または賦形剤を含む、1つ以上の、様々な患者に伝達するための生理学的に許容可能な担体と共に、1つ以上の本発明の化合物を含む。例えば、非経口投与に関して、等張食塩水が好ましい。局所投与に関して、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような担体、またはその化合物の活性を遮断または阻害しない、局所クリームにおいて典型的に見出される他の薬剤を含むクリームを使用し得る。他の適当な担体は、アルコール、リン酸緩衝化食塩水、および他の平衡塩類溶液を含むがこれに限らない。
【0081】
その処方物を、単位投与形態において簡便に提示し得る、および調剤の分野において周知のあらゆる方法によって調製し得る。好ましくは、そのような方法は、活性薬剤を、1つ以上の補助成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般的に、その活性薬剤を、液体担体、細かく分割した固体担体、または両方と均一におよび緊密に結合させ、そして次いで、もし必要なら、その生成物を望ましい処方物に成形することによって、その処方物を調製する。本発明の方法は、被験体、好ましくは哺乳類、およびより好ましくはヒトに、本発明の組成物を、望ましい効果を生じるのに有効な量で投与することを含む。その処方された化合物を、単回用量として、または複数回用量で投与し得る。活性薬剤の有用な投与量を、動物モデルにおけるそのインビトロ活性およびインビボ活性を比較することによって決定し得る。マウス、および他の動物における有効な投与量のヒトへの外挿の方法は、当該分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。
【0082】
本発明の薬剤を、好ましくは薬学的組成物に処方し、そして次いで、本発明の方法によって、ヒト患者のような被験体に、選択された投与経路に適合させた様々な形態で投与する。その処方物は、経口、直腸内、膣内、局所、鼻、眼、または非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、および静脈内を含む)投与のために適当なものを含むがこれに限らない。
【0083】
経口投与のために適当な本発明の処方物を、それぞれ前もって決定した量の活性薬剤を粉末または顆粒として含む、錠剤、トローチ、カプセル、ロゼンジ、ウエハ、またはカシェ剤のような分離した単位として、活性化合物を含むリポソームとして、またはシロップ、エリキシル、エマルション、または水薬のような水性液体または非水性液体における溶剤または懸濁剤として提示し得る。そのような組成物および調製物は、典型的には少なくとも約0.1wt%の活性薬剤を含む。本発明の化合物(すなわち活性薬剤)の量は、その投与量レベルが、被験体において望ましい結果を生じるために有効である量である。
【0084】
鼻用スプレー処方物は、保存剤および等張剤と共に、活性薬剤の精製水溶液を含む。そのような処方物を、好ましくは鼻粘膜と適合性のpHおよび等張状態に調整する。直腸内または膣内投与のための処方物を、カカオバター、または水素化脂肪または水素化脂肪カルボン酸のような、適当な担体を含む坐剤として提示し得る。眼用処方物を、pHおよび等張因子を好ましくは眼のものと調和するように調整する以外は、鼻用スプレーと同様の方法によって調製する。局所処方物は、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール、または局所薬学的処方物に使用される他の基剤のような、1つ以上の媒体に溶解または懸濁された活性薬剤を含む。
【0085】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等はまた、1つ以上の以下のものを含み得る:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤;リン酸ジカルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテームのような甘味料;および天然または人工香料。その単位投与形態がカプセルである場合、それはさらに植物油またはポリエチレングリコールのような液体担体を含み得る。様々な他の物質が、コーティング剤として、または他の方法でその固体単位投与形態の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルを、ゼラチン、ワックス、シェラック、糖等でコーティングし得る。シロップ、またはエリキシルは、1つ以上の甘味料、メチルパラベンまたはプロピルパラベンのような保存剤、糖の結晶化を遅らせる薬剤、多価アルコール、例えばグリセロールまたはソルビトールのような、あらゆる他の成分の溶解度を増加させる薬剤、色素、および香料を含み得る。あらゆる単位投与形態を調製するために使用する材料は、採用される量で実質的に無毒性である。活性薬剤を、徐放調製物および装置に組込み得る。
【0086】
化合物の調製
本発明の化合物を、特に本明細書中に含まれる説明を考慮して、化学的分野において周知のものと同様の過程を含む合成経路によって合成し得る。出発材料は、一般的にAldrich Chemicals(Milwaukee、Wisconsin、USA)のような市販の供給源から入手可能である、または当業者に周知の方法を用いて容易に調製される(例えば、一般的にLouis F.FieserおよびMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、v.1−19、Wiley、New York(1967−1999編);Alan R.Katritsky、Otto Meth−Cohn、Charles W.Rees、Comprehensive Organic Functional Group Transformations、v1−6、Pergamon Press、Oxford、England(1995);Barry M.TrostおよびIan Fleming、Comprehensive Organic Synthesis、v.1−8、Pergamon Press、Oxford、England(1991);または増補を含むBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、4、Aufl.Ed.Springer−Verlag、Berlin、Germany(Beilsteinオンラインデータベースからも入手可能)において記載された方法によって調製される)。
【0087】
当業者は、本発明の化合物を合成するために、他の合成経路を使用し得ることを認識する。特定の出発材料および試薬が、反応概略図において示され、そして下記で議論されるが、様々な誘導体および/または反応条件を提供するために、他の出発材料および試薬で容易に置き換えられ得る。さらに、下記で記載した方法によって調製される多くの化合物を、当業者に周知の従来の方法を用いて、この開示を考慮してさらに改変し得る。
【0088】
本発明を、以下の実施例によって説明する。特定の実施例、材料、量、および手順は、本明細書中で述べるような本発明の範囲および趣旨によって、広く解釈されることが理解される。
【実施例】
【0089】
実施例1:式Iの化合物の調製
本発明の化合物の調製の一般的な経路を
図1に示す。
【0090】
1−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)エタノン前駆体の合成を、
図1の工程1で示す。4−ブロモアセトフェノン(11.8g、59mmol)、トリクロロメチルフェニルボロン酸(11.4g、60mmol)、酢酸パラジウム(II)(250mg、2mol%)、粉末炭酸カリウム(20.3g、147mmol)、およびテトラブチルアンモニウムブロミド(20.1g、62mmol)の混合物を、アルゴンでフラッシュし、そして水(500mL)をシリンジで導入した。生じた懸濁液を、撹拌および60度まで2時間加熱し、次いで室温まで冷却し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、Na
2SO
4で乾燥し、そして減圧下で乾燥するまで濃縮して、生成物を得た(淡黄色の固体;15.6g、定量的収率)。その生成物を、さらなる精製無しに工程2において使用した。
【0091】
(Z)−エチル2−ヒドロキシ−4−オキソ−4−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ブタ−2−エノエート前駆体の合成を、工程2に示す。100mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中の水素化ナトリウム(鉱油中60%;6.3g、157mmol)の懸濁液に、シュウ酸エチル(14.4g、99mmol)をアルゴン下で加えた。室温(RT)で10分間撹拌した後、50mLのテトラヒドロフラン溶液中の1−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)エタノン(13.7g、52mmol)を滴下してその溶液に加えた。その混合物は、RTで30分以内に透明および暗赤色になった。その混合物を、次いで減圧下で濃縮し、そして水に懸濁させ、塩酸(2N)で中和し、その混合物は山吹色の懸濁液になった。その混合物を減圧ろ過して生成物を得る(黄色固体;18.5g、定量的収率)。その生成物を、さらなる精製無しに工程3において使用した。
【0092】
エチル1−(4−ニトロフェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキシレート(14)の合成を、工程3において示したように行った。200mLのエタノール中、(Z)−エチル2−ヒドロキシ−4−オキソ−4−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ブタ−2−エノエート(10g、27mmol)の懸濁液に、4−ニトロ−フェニルヒドラジン塩酸塩(5g、33mmol)を加えた。室温で16時間撹拌した後、その混合物は褐色の懸濁液を含む暗褐色の溶液になった。その溶液を減圧によって濃縮し、そしてエタノールで再結晶化して生成物を得た(褐色固体;8.2g、63%)。その生成物を、さらなる精製無しに、工程4において使用した。
【0093】
N−エチル−1−(4−ニトロフェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(15)の合成を、工程4において示したように行った。5mLのエタノール中、化合物14(218mg、0.45mmol)の懸濁液に、エチルアミン(メタノール中70%、5mL)を加えた。その混合溶液を、密封チューブの中に移し、ビンを脱気および密封した。そのビンを120℃に加熱し、そして16時間撹拌した。その反応混合物は、黄色の懸濁液を有する黒色の溶液になった。加熱後、溶媒を減圧下で除去し、そしてエタノールで再結晶化して、生成物を得た(黄色固体;153mg、70%)。
【0094】
1−(4−アミノフェニル)−N−エチル−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(16)の合成を、
図1の工程5において示したように行った。20mLのメタノール中、化合物15(153mg、0.32mmol)の溶液に、活性炭上のパラジウム(Pd/C;15mg)を加え、H
2下で、70psiで12時間撹拌した。その溶液を次いでセライトフィルターパッドを通してろ過して触媒を除去し、そして減圧下で乾燥するまで濃縮した。その未精製の生成物を、次いでクロロホルムによって再結晶化して、生成物を得た(白色固体;130mg、91%)。
【0095】
N−メチル−3−(1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−イル)プロパンアミド(2)の合成を、工程6で示したように行った。20mLのキシレン中、化合物20(2g、4.3mmol)の懸濁液に、ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩(1053mg、5.9mmol)を加え、その後その混合物を170℃まで加熱した。20時間撹拌した後、その溶液は褐色の粘着性の混合物になった。減圧を用いて溶媒を除去し、そして未精製の生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、続いて酢酸エチルによって再結晶して、生成物を得た(白色固体;1334mg、58%)。
【0096】
1−(4−(3−アミノプロパンアミド)フェニル)−N−メチル−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(4)の合成を、工程7および8において示すように行った。15mLの無水テトラヒドロフラン中、化合物16(95mg、0.21mmol)の溶液に、β−Ala−OH(111mg、0.59mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、248mg、1.6mmol)を加えた。次いでその混合物を室温で16時間撹拌し、そして次いで減圧下で乾燥するまで濃縮した。その残渣を水中に懸濁し、そしてその生成物をジクロロメタンによって抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で乾燥するまで濃縮して化合物17(61mg、47%)を得た。化合物17(61mg、0.1mmol)を、10mLの塩酸メタノール溶液(3N、41mL)に溶解し、室温で2時間撹拌し、そして減圧下で乾燥するまで濃縮した。その未精製の生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、化合物4を白色粉末として得た(59mg、定量的収率)。
【0097】
(Z)−エチル4−ヒドロキシ−6−オキソ−6−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ヘキサ−4−エノエート前駆体の合成を、工程9で示したように行った。500mLのジクロロメタン中、1−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)エタノン(17g、64mmol)の溶液に、調製済みのエチル4−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−4−オキソブタノエート(19.8g、80mmol)、臭化マグネシウムエチルエーテラート(22g、85mmol)を、アルゴン下で加えた。室温で10分間撹拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、20ml、115mmol)を、アルゴン下でその溶液に滴下して加えた。室温で16時間撹拌した後、そして水で洗浄した(200mL×2)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で乾燥するまで濃縮した。その未精製の生成物を、次いでシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、続いてエタノールによって再結晶して、生成物を得た(白色結晶;20.9g、83%)。
【0098】
多くのさらなる化合物を、上記で記載した方法を用いて調製した。Ar基は、当業者に公知の技術を用いて、容易に
図1に示したものから変化し得ることに注意する。これらのさらなる化合物の名前および関連する
1H NMR(プロトン核磁気共鳴)および高分解能質量分析データを下記で提供する。
【0099】
N−エチル−1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(1):
【0100】
【化21】
HRMS(M+H
+):理論質量、520.2324;実際の質量、520.2312。
【0101】
N−メチル−3−(1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−イル)プロパンアミド(2):
【0102】
【化22】
HRMS(M+H
+):理論質量、534.2481;実際の質量、534.2467。
【0103】
N−エチル−3−(1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−イル)プロパンアミド(3);
【0104】
【化23】
HRMS(M+H
+):理論質量、548.2637;実際の質量、548.2623。
【0105】
1−(4−(3−アミノプロパンアミド)フェニル)−N−メチル−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(4):
【0106】
【化24】
HRMS(M+H
+):理論質量、508.1960;実際の質量、508.1953。
【0107】
1−(4−(3−アミノプロパンアミド)フェニル)−N−エチル−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(5):
【0108】
【化25-1】
HRMS(M+H
+):理論質量、522.2117;実際の質量、522.2112。
【0109】
1−(4−(3−アミノプロパンアミド)フェニル)−N−イソプロピル−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(6);(
1H−NMRデータは入手可能でない);
【0110】
【化25-2】
:理論質量、536.2273;実際の質量、536.2269。
【0111】
3−アミノ−N−(4−(3−(3−(メチルアミノ)−3−オキソプロピル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)フェニル)プロパンアミド(7):
【0112】
【化26】
HRMS(M+H
+);理論質量、536.2273;実際の質量、536.2269。
【0113】
3−アミノ−N−(4−(3−(3−(エチルアミノ)−3−オキソプロピル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)フェニル)プロパンアミド(8):
【0114】
【化27】
HRMS(M+H
+):理論質量、550.2430;実際の質量、550.2429。
【0115】
3−アミノ−N−(4−(3−(3−(イソプロピルアミノ)−3−オキソプロピル)−5−(4’−(トリフルオロメチル)−[1,1、’−ビフェニル]−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)フェニル)プロパンアミド(9):
【0116】
【化28】
HRMS(M+H
+):理論質量、564.2586;実際の質量、564.2579。
【0117】
3−(5−(4’−シアノ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)−N−メチルプロパンアミド(10):
【0118】
【化29】
N−メチル−3−(5−(4’−メチル−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)プロパンアミド(11):
【0119】
【化30】
3−(5−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)−N−メチルプロパンアミド(12):
【0120】
【化31】
N−メチル−3−(5−(フェナントレン−2−イル)−1−(4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)プロパンアミド(13):
【0121】
【化32】
実施例2:化合物1〜13の薬理学
化合物1〜9を、PC−3ヒト前立腺癌細胞において、(a)PDK2阻害活性の証拠(すなわち、PDK1部位[T308]に対してPDK2部位[S473]においてAktリン酸化を選択的に阻害する能力)、および(b)ウェスタンブロット分析およびMTTアッセイそれぞれによる抗増殖性活性に関してスクリーニングした。
図2Aに示すように、スクリーニングした化合物のうち2つ(2および3)が、Akt−S473リン酸化の明白な選択的阻害を誘発し、PDK2阻害活性を示した。さらに、化合物2および3はまた、抗増殖性活性に関して9つの化合物のうち最も強力であった(
図2B)。
【0122】
構造的に関連する化合物2および3は、N−アルキル部分においてのみ異なる(すなわちメチル対エチル)ので、より詳細な評価のために化合物2を選択した。細胞生存能に対する化合物2の用量依存性および時間依存性効果を、2つの前立腺癌細胞系(PC−3、LNCaP)および5つの乳癌細胞系(MDA−MB−468、MDA−MB−231、CAL51、MCF−7、SKBR3)のパネルで決定した(
図3AおよびB)。さらに、癌細胞系をまた、非悪性前立腺および乳腺上皮細胞と並行して評価した(
図3A、下パネル;3B右下パネル)。重要なことに、化合物2は、その非悪性対応物に対して、癌細胞に関して選択的な細胞毒性を示した。
【0123】
そのデータは、化合物2は、インテグリン結合キナーゼの推定阻害剤であることを示す。Aktの完全な活性化は、2つのアミノ酸残基:ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ−1(PDK1)によってリン酸化されるT302、およびPDK2部位として公知であり、そして多くの異なるキナーゼによってリン酸化され得るS473、におけるリン酸化を必要とする。これらのうちの1つ、インテグリン結合キナーゼ(ILK)は、その発現および活性が、様々な型の癌において増加しており、そしてその阻害はアポトーシスおよび細胞周期停止を誘発することによって癌細胞の生存を抑制し得るので、有望な抗癌標的として同定された。
【0124】
ホスホ−Akt−T308のものと相対的なホスホ−Akt−S473レベルの選択的抑制を示すウェスタンブロットデータに基づいて(
図2A)、化合物2を、PDK2活性の阻害剤として同定した。ILKシグナル伝達を阻害する能力に関して化合物2を評価するために、ILKの下流の標的に対するその効果を、PC−3細胞およびMDA−MB−468細胞において、ウェスタンブロッティングによって評価した(
図4)。ホスホ−S473−Aktレベルにおける明白なおよび選択的な減少を引き起こすことに加えて、化合物2はまた、別のILK基質、GSK3βのリン酸化を抑制し、このことは化合物2がILKの阻害剤であることを示唆した。
【0125】
別のシリーズの試験において、化合物10〜13を、化合物2と並行して、PC−3ヒト前立腺癌細胞におけるMTTアッセイによって、抗増殖性活性に関してスクリーニングした。
図5Aに示すように、化合物11および13は、2〜3μMの範囲で、IC
50値で最も高い効力を示したが、どちらも化合物2を超えなかった。PC−3細胞におけるILKの下流の標的のリン酸化状態に対する、化合物13対化合物2の効果を、ウェスタンブロッティングによって評価した。化合物13は、ホスホ−Akt−T308と比較してホスホ−Akt−S473の強力な抑制を誘発したが、化合物2とは異なり、GSK3βリン酸化に対する実質的な抑制効果を示さなかった(
図5B)。
【0126】
以前に前立腺癌細胞系においてスクリーニングした(
図2)化合物4〜9を、MCF−7ヒト乳癌細胞およびSKBR3ヒト乳癌細胞において抗増殖性活性に関して評価した。化合物5は、試験したものの中で、いずれの細胞系においても活性を示した(4〜5μMの範囲のIC
50値)唯一の化合物であり(
図6)、それはこれらの同じ細胞系において化合物2が示したよりも強力ではなかった(
図3B)。
【0127】
PC−3前立腺腫瘍異種移植モデルにおける化合物2のインビボ腫瘍抑制活性も評価した。上記で記載した結果に基づいて、化合物2を新規ILK/PDK2阻害剤として開発するリード薬剤として同定した。化合物2のインビボ抗腫瘍活性を評価するために、確立した皮下PC−3腫瘍異種移植片(平均開始腫瘍体積、157.1±29.1mm
3)を有する胸腺欠損ヌードマウスを、25mg/kgまたは50mg/kgで1日1回の化合物2、またはビヒクル(滅菌水中0.5%メチルセルロースおよび0.1%Tween 80)で、35日間、経口で処置した(n=5匹のマウス)。
図7に示すように、25mg/kgおよび50mg/kgの化合物2によるマウスの毎日の処置は、処置35日目に、ビヒクル処置コントロールと比較して、PC−3腫瘍の増殖をそれぞれ42%(P=0.10)および56%(P=0.03)阻害した。経口投与後の化合物2のインビボ有効性は、その経口生物学的利用能を示す。さらに、その化合物は、マウスによってよく許容され、研究の過程において、毒性の明白な徴候、または体重の有意な変化を示さなかった。
【0128】
本明細書中で引用される全ての特許、特許出願、および刊行物の完全な開示、および電子的に入手可能な資料は、参考文献に組み込まれる。前述の詳細な説明および実施例は、理解の明確さのためにのみ提供された。不必要な制限はそこから理解されない。特に、本発明の化合物が有効であることを通して可能性のあるメカニズムを説明する理論を提示し得るが、発明者らは、本明細書中で記載された理論によって拘束されない。当業者に明らかな変更は、特許請求の範囲によって定義される本発明に含まれるので、本発明は、示されたおよび記載された正確な詳細に制限されない。