特許第5986100号(P5986100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986100フィルタの段階的浸水を伴う体外血液処理用装置の充填および空気抜きを行うための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986100
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】フィルタの段階的浸水を伴う体外血液処理用装置の充填および空気抜きを行うための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   A61M1/36 113
   A61M1/36 121
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-542536(P2013-542536)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-504906(P2014-504906A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011072143
(87)【国際公開番号】WO2012076632
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】10194071.6
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10194069.0
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10194070.8
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/420,758
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/420,760
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/420,763
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/962,618
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/962,622
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/962,626
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513143308
【氏名又は名称】ゾール ライフブリッジ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ZOLL LIFEBRIDGE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アルツト、ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ブリースケ、ゲーアハルト
(72)【発明者】
【氏名】ザーゲビール、フローリアン
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0171960(US,A1)
【文献】 特表2007−515252(JP,A)
【文献】 特開昭61−50564(JP,A)
【文献】 特表2008−540003(JP,A)
【文献】 特開2006−142031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理用装置の充填および空気抜きを、患者に取り付けられていない状態で行うための方法であって、前記装置より高い位置にある充填液コンテナからの充填液が重力によって前記装置の静脈側を介してリザーバの中に流入しそして前進して前記リザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入し、フィルタの空気抜きライン用の第1の制御可能弁(HC1)が開放され、前記リザーバの上側充填レベルセンサの反応後に閉止され、前記フィルタはその上部高さが上側充填レベルセンサより高い位置に配置され、送血ポンプの始動停止動作が実行され、その結果、前記フィルタが段階的に浸水される、方法。
【請求項2】
充填液で充填された前記送血ポンプが周期的間隔で第1の低い速度にて作動して充填液を前記リザーバから人工肺へそして前進して動脈フィルタへと運搬し、前記第1の速度は、前記フィルタの入口側からの緩やかな充填が生じて前記フィルタが部分的にのみ充填されるように選択されたものであり、フィルタ膜の上部は、前記充填液によって湿らせられないままであり、それゆえさらなる充填および空気抜き作業の間も常に空気浸透性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の制御可能弁(HC1)は、前記上側充填レベルセンサの反応後に前記フィルタのさらなる能動的充填を制御すべく閉止され、重力による充填が行われた後の前記送血ポンプの前記始動停止動作により前記送血ポンプ内にある空気は出口に運ばれて確実に追い出され、前記送血ポンプの停止中に空気はポンプ出口の方向に上昇し、前記送血ポンプの始動によって運び出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
閉止された前記第1の制御可能弁(HC1)およびそれにより閉止された空気抜きラインならびにフィルタ出口部に位置する充填液によって、前記フィルタ内に、入って来る充填液の流れの挙動を鈍らせる空気クッションが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リザーバから収集容器への空気抜きチャネル内の第2のポンプは、前記上側充填レベルセンサの反応に応じてすなわち前記リザーバの充填状態に従って、開放または閉止される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記リザーバの前記上側充填レベルセンサの反応後、前記第2のポンプのスイッチが切られ、それゆえ空気はそれ以上前記空気抜きチャネルを通って前記収集容器へと抜け出ることはできず、前記充填液コンテナによる前記リザーバの充填は停止される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記上側充填レベルセンサの反応時、充填液は前記リザーバの前記上側充填レベルセンサのレベルに到達し、それゆえその下流の構成部品は重力によって充填液で充填される、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記装置内にある前記送血ポンプは、遠心ポンプであり、上を向いた接線方向出口を有し、当該方法では、前記送血ポンプは前記上を向いた接線方向出口および軸方向の入口を通して重力により充填液で充填され、前記送血ポンプ内の空気は上昇して前記接線方向出口を経由して追い出される、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
混入空気はフィルタ処理後側からフィルタ処理前側へと横断して追い出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
導入された充填液は、フィルタ膜の下方部分を流通してフィルタ処理後の出口側へ流れ、下流の循環システムを充填する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
フィルタの出口側に取り付けられたホースからの空気はフィルタの中へ抜け出る、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の速度すなわち第1の送達率での規定の第1の充填時間の後、前記送血ポンプの速度は次第に増大させられて一定の第2の速度値となり、第4の制御可能弁(HC4)の閉止によってバイパスは閉止され、このようにして、液体が取り付けられたテーブルセットを通過して該テーブルセットの空気抜きが行われる、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
規定の第2の充填時間の後、前記第4の制御可能弁(HC4)は再び開放されて前記送血ポンプの速度はさらに第3の充填時間の間に第3の速度値へと増大され、前記第4の制御可能弁(HC4)はその後再び閉止されて前記送血ポンプの速度はさらに第4の速度値へと増大され、前記送血ポンプの送達率の増大は、より多くの液体を前記テーブルセットを通過させて該テーブルセットをさらに空気抜きすることを意味し、そのうちに前記第1の制御可能弁(HC1)が開放されてフィルタの上部に残っている空気を抜け出させ、その後前記第4の制御可能弁(HC4)がバイパスの空気抜きをもう1度行うために再び開放される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
システム内の空気を気泡センサにより検出し、気泡が検出されると、制御可能弁(QAHC)が前記テーブルセットのスイッチを切り、第4の制御可能弁(HC4)が再開し、システム内の空気がリザーバを経由して追い出される、請求項12および13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
システムに十分な充填液を供給するように液位は常にリザーバ内の充填レベルセンサによってモニタリングされる、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
空気抜き作業は記録されて読取り可能な形態に文書化され、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量から選択される少なくとも一つが保存される、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
空気抜き作業は輸送の間に実行されるか、または該方法は全自動で空気抜きを行うための方法であるかのうち少なくともいずれかであり、かつ、空気抜き作業の開始後に、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスが自動的に実行される、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
開始後、第3の制御可能弁(HC3)は投液ライン(17)を開放し、該ラインを通して貯留コンテナ(45)からの充填液が装置の循環の中に導入可能であり、かつ、第2の制御可能弁(HC2、22)、第4の制御可能弁(HC4、24)および急動ホースクランプ(QAHC、20)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放される、請求項17に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して体外血液処理を実行するための方法および装置に関するとともにそのような装置を備えるシステムおよびキットに関する。特に、本発明は、人工心肺のようなシステム、および関連する患者モジュールのような体外血液処理用装置、ならびに関連する空気抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工心肺が使用可能となる前に、人工心肺は患者をシステムに迅速かつ安全に接続されうるように準備されなければならない。これには、血液を運搬する構成部品を充填液により空気抜き(「脱気」とも呼ばれる)した人工心肺が必要である。充填作業は人工心肺の「プライミング」とも呼ばれる。
【0003】
空気の混入や空気の排出量は、後に患者に使用される際に空気塞栓症を引き起こすことがあり、最悪の場合には死亡原因となりうる。
従来の人工心肺の構成部品およびホース系統は、従来大部分は手動で充填および空気抜きが行われて使用準備がなされる。この準備は、例えば、構成部品の部分的充填、ホースラインの手動締止、気泡の「たたき出し」、構成部品の角度調節、または送血ポンプの周期的駆動によって行なわれる。人工肺、フィルタおよび送血ポンプのような構成部品に加えて、ホース、コネクタおよびリザーバのような構成部品も空気抜きが行われなければならない。従来の人工心肺の空気抜きを充填で行う場合、その充填作業は専門家(心臓技術者)により行なわれなければならない。これは通常の手術にも当てはまる。上述の手動介入によって、システムの使用準備が完了となる。あるシステムでは、充填作業は半自動的に行なわれるが、それでもなお充填作業を実施する熟練の技術職員または心臓技術者のうち少なくともいずれかを必要とする。半自動的な方法では、作業者はホースの締止、ポンプ作用の開始などを一部行わなければならない。
【0004】
一般に、これらの手動介入は複雑であり、かつ人員の点でコストが大きい。これらの手動介入は誤も生じやすく、文書化も困難である。
手動介入の使用は、特に緊急事態においては、人工心肺の迅速な始動を頼りとする患者に難事をもたらすことがある。加えて、介入作業に必要とされるコストおよび時間が増加する。
【0005】
ライフブリッジ・メディツインテヒニーク・アーゲーの特許文献1は、半自動的充填を備えたポータブル人工心肺について述べている。これらのポータブル人工心肺は、ベースステーションと、付属の患者モジュールを備えた制御モジュールとで構成されている。特許文献1は、その全体があらゆる目的に関して本願に援用される。患者モジュールは血液運搬用の構成部品を包含し、使用後は制御モジュールから分離することにより処分される。血液運搬用の構成部品は、遠心ポンプの形態の送血ポンプ、充填レベルセンサを備えたリザーバ、動脈フィルタ、人工肺、様々な接続用ホースおよびバイパス、ならびに、空気泡およびガス泡の検出用のセンサならびに圧力および流量測定用のセンサも備えている。
【0006】
特許文献1に記載されているポータブル人工心肺では、構成部品の充填および空気抜きは、完成品ユニットを充填位置まで手動で90度回転することによって行われる。充填位置では、次いで充填を可能にする自動的方法が開始される。充填作業の後、該ユニットは充填済作動位置に戻るように90度回転される。作動位置への回転、ならびに気泡の自動的検出および除去の方法により、システムは作動状態に至る。
【0007】
しかしながら、空気抜きの間の回転移動については、患者モジュールを備えた制御モジュールを作動位置から充填位置へ、および再び元通りに移動させるために、付加的な機械的回転ホルダが必要である。
【0008】
さらに、手動のシステムにおいて、また半自動システムにおいても、構成部品の目視検査にもかかわらず見落とされているかまたは検出されていない混入空気の危険が存在する。
【0009】
本出願人と同じ出願人の特許文献2(すべての目的に関して全体が本願に援用される)には、特に人工心肺において体外血液循環を利用可能にするための装置が開示されており、その装置は、静脈接続部および動脈接続部を備え、それら接続部の間に血液リザーバ、送血ポンプおよび気泡検出用の気泡検出器が設けられ、該気泡検出器の下流に、動脈クランプを介して動脈接続部に通じる動脈ラインおよびバイパスクランプを介して血液リザーバに戻るバイパスを備え、血液リザーバは該血液リザーバから空気を抜き取るポンプに接続されている。また、そのような装置の操作方法が開示されている。特許文献3には、「体外血液回路プライミングシステムおよび方法」が開示されている。心肺バイパス手術の間に使用されてガス交換、熱伝達および微小塞栓濾過機能を行なう使い捨て式の統合型体外血液回路が開示される。手動のプライミング方法が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1661592号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/171960号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/065743号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、そのようなプライミングの改善を可能にする改善されたプライミング方法およびシステムを提供する必要がある。好都合には、プライミングは自動で行われるべきである。
【0012】
したがって、本開示のねらいは、人工心肺が、作業者による入力を伴うことなく全自動で充填により空気抜きされ、ひいては安全に使用準備完了となりうることを確実にすることである。人工心肺の起動(初期設定、様々なホースラインの手動取り付けおよび充填液の手動取り付け)と患者への取り付けとの間に、患者モジュール内の構成部品に対して空気抜きのための手動介入は行なわれるべきではない。さらに、空気抜き方法の所要時間は、空気抜き作業のための事前に必要なベースモジュールの回転をなくすことにより、さらに短縮されるように意図される。これによりシステムは、特に短期的な緊急使用について、迅速に使用可能となる。
【0013】
したがって、ポータブル人工心肺の形態の人工心肺の準備および空気抜きのための方法であって、作業者の介入を伴わずに行われうる方法を利用可能にすることが望ましい。充填液の取り付けおよびテーブルラインの取り付けの後、充填作業が手動で開始されて全自動で進行することが特に望ましい。
【0014】
送血ポンプおよび動脈フィルタのような空気抜きが困難な構成部品は、該空気抜き方法において、構成部品内の空気がうまく追い出されて抜け出ることができるような方法で利用可能となるようになっていることが好ましい。該構成部品および方法によって空気抜き作業の文書化が可能となるはずである。
【0015】
本開示の目的は、従来の方法および装置の上記短所を克服し、有利な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、添付の特許請求の範囲の独立請求項の特徴を有する本発明の装置、システム、方法またはコンピュータプログラムによって達成される。
輸送中であっても信頼できる充填により、本明細書中以下に記載されるシステムおよび方法の利用可能範囲が拡大する。
【0017】
従って、本発明の実施形態は、少なくとも下記の長所を有する方法及び装置を提供することにより、上記に特定された単独または任意の組み合わせのような当分野における1または複数の欠陥、短所または問題点の軽減、緩和または排除を図ることが好ましい。
【0018】
好ましくはポータブル人工心肺の形態の人工心肺のような体外血液処理用の装置において準備および空気抜きを行うための方法であって、作業者の介入を伴わずに続行可能である方法が提供される。この作業の準備および開始のみが必要である。該作業の残りの部分は自動的に行われ、かつモニタリングされる。充填液の取り付けおよびテーブルラインの取り付けの後、充填作業は手動で開始され、次いで全自動で行なわれる。
【0019】
好ましくは人工心肺のような、体外血液処理用の該システムは、静止環境だけでなく輸送中にも充填が行われうる。
体外血液処理用の装置の、送血ポンプおよび動脈フィルタのような空気抜きが困難な構成部品からも、該構成部品の設計および配置ならびに該空気抜き方法により、空気が追い出されて抜け出ることができる。
【0020】
電子プロトコル中に空気抜き作業をモニタリングして記録することが可能である。該システムの最も重要な状態についてそこに保存されてもよい。上記状態には、例えば、クランプの状態、時間の状態、圧力、流量、気泡検出のようなパラメータ用のセンサの状態が含まれる。
【0021】
用語「備える」は、本明細書中で使用される場合、明記された特徴、整数、ステップまたは構成部品の存在を指定するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成部品またはこれらの集合物の存在または付加を妨げるものではないことを強調しておく。
【0022】
本発明の実施形態が有しうる上記のおよびその他の態様、特徴および利点は、添付図面を参照しながらの以降の本発明の実施形態の説明から明白となり、かつ解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】通常の充填方向における動脈フィルタの断面図。
図2】逆行する充填方向における動脈フィルタの断面図。
図3】送血ポンプの概略図。
図4】送血ポンプの概略図。
図5】方法1用循環システムの模式図。
図6】逆行式充填を伴う方法2用循環システムの模式図。
図7】圧力測定を統合した方法1用循環システムの模式図。
図8】圧力測定を統合した方法2用循環システムの模式図。
図9a】様々な方法のステップの概略図。
図9b】様々な方法のステップの概略図。
図10a】方法を実行するための様々なコンピュータプログラムの概略図。
図10b】方法を実行するための様々なコンピュータプログラムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について、様々な実施形態において、かつ本発明を実行するための様々な方法の説明と共に記載するが、当業者には、これらの実施形態は本発明がとりうる多数の形態の実例となる非限定的な実施例にすぎないことが認識されるであろう。体外血液処理用の装置は、人工心肺に配置されることが好ましい。他の適用は、例えば他の実施形態における透析機などにある。
【0025】
より具体的には、記載される本発明の装置およびシステムの実施形態は、自動の空気抜き方法を実行するのに適している。
人工心肺の充填に際して空気抜きを実行するためのそのような方法のいくつかの例は、下記に詳細に記載される。
【0026】
上述のように、特許文献1に記載されたポータブル人工心肺では、完成品ユニットを充填位置へと手動で90度回転することによって構成部品が充填および空気抜きされる。充填作業の後、完成品ユニットは充填済の作動位置へと90度逆に回転される。
【0027】
充填ステップは、患者モジュール内にある構成部品の空気抜きを行う役割を果たし、ベースステーション上で患者モジュールを備えた制御モジュールを90度回転移動することによって実行される。患者モジュールを備えた制御モジュールが充填位置にあるとき、送血ポンプは付属の注入液バッグからリザーバ経由でシステム内へと時間制御方式で充填液を送液する。このようにして構成部品は充填液で充填され、該部品内にあった空気は追い出される。その後の使用に際し、患者モジュールを備えた制御モジュールは作動位置に戻るように回転され、充填液をさらにポンプ送液することにより作動位置において規定時間にわたって構成部品の空気抜きが継続される。
【0028】
充填位置への回転、およびこの充填位におけるシステムの空気抜きは、送血ポンプ(遠心ポンプ)のポンプヘッドおよび動脈フィルタという2つの構成部品にとって必要である。
【0029】
ポンプヘッドは、作動位置にあるシステムにおいて、ポンプの出口が下方を向くように、したがって作動中に混入し得る空気が該ヘッドの内部で上昇してそこに集まり、循環システム内へは入ることができないように配置される。充填が作動位置で行われれば、ポンプヘッドの上部内の空気は抜け出ることはできないであろう。この理由から、システムは、空気がポンプヘッドの入口から抜け出ることを可能にし、したがって空気を含まない充填を確実にするために、充填位置へと90度回転される。
【0030】
動脈フィルタは、システムが作動位置にあるときに、その構造ゆえに出口が下方を向くようにかつ入口が該フィルタの一番上で横方向に配置されるように、配置される。仮にフィルタが作動位置において入口側(フィルタ処理前側)から充填される場合、充填液がフィルタ処理前側からフィルタ処理後側へと横断してフィルタは充填される。フィルタ処理後側では、内側フィルタエリアにおいて、充填により混入空気は上部および同様に下部へと導かれうる。フィルタの下部出口エリアの混入空気は、作動中に抜け出すことがあり、よって循環内に入ることがある。対照的に、フィルタが該フィルタの一番上に配置された空気抜きライン(パージライン)から最初に充填され、次いで充填位置における入口側(水平方向)から充填される場合、フィルタ内の空気は排出されうる。フィルタ内に残っている空気の残りは、作動位置への回転後に空気抜きラインを介してフィルタから除去される(図1を参照)。
【0031】
システムの90度の回転がなければ、従来、送血ポンプおよび動脈フィルタの空気抜きにおいて問題が発生する恐れがあった。従来では気泡が1つ以上の構成部品に蓄積することがあった。
【0032】
フィルタについても、従来、フィルタの充填の間に、該フィルタの膜構造が充填液の表面張力によって「閉鎖」されることにより空気抜きが不可能となることもあった。空気は湿った膜を通って抜け出し得ない。
【0033】
さらに、フィルタの出口部に装着されたホースから上昇する空気はフィルタの出口エリアに集まった。この混入空気は入口側から流れ込んでいる液体を通り抜けて上昇することはできず、フィルタ出口の方向に連続的に「連行」されて粉砕された。
【0034】
原則としては、それでも気泡を毛細管力より高い圧力で強制的に湿った膜を通すということも考えられる。しかしながら実際には、これはいくつかの理由で実現可能ではない。例えば、リザーバが破壊される恐れがある。フィルタも影響を受ける恐れがある。ポンプが過負荷となって機能しなくなる恐れがある。加えて、システムの最大作動圧より高い圧力が必要になるであろうが、これは漏れを引き起こす恐れがある。あるいは、より高い作動圧に耐え得る構成部品を使用しなくてはならないかもしれないが、それらは非常に高価であり、したがって市販の代替品は存在しない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、圧力は、高いポンプ速度で作動している送血ポンプによって、充填作業の終了時に一時的に上昇する。システム内の圧力は、最大作動圧を下回るが最大作動圧に接近するように選択される。
【0036】
先行技術の上述した短所は本発明の実施形態によって回避される。システムを90度回転することなく空気抜きを伴う全自動の充填が可能となる。これは以下に詳細に説明される。
【0037】
実施形態に記載される体外血液処理システムは、付属の患者モジュールを備えた制御モジュールで構成されている。自動ホースクランプ、送血ポンプ駆動装置、ならびに評価および制御エレクトロニクスは、制御モジュール内にある。患者モジュールは体外血液処理用の装置である。循環血液を運搬する構成部品は患者モジュール内にある。システムはこのように2部構成である。患者モジュールの作動位置はその充填位置でもある。回転ホルダは省略される。
【0038】
図5乃至図8に示された患者モジュールの構成部品は概略図ではあるが、相互の水平方向の位置関係は実際のものになっている。これは特にリザーバ2、送血ポンプ6、人工肺3およびフィルタ5に当てはまる。構成部品の相互位置の詳細および重要性については、ここでいくつかの実施形態によって一層詳細に説明される。
【0039】
流れ方向は、該当するライン、ホースまたは構成部品の上の太字矢印によって図中に示されている。
図5は循環システムを示す。循環は以下のように構築される。すなわち:静脈側から始まって、静脈ライン15はスクリーン28を備えたリザーバ2で終了する。静脈ライン15に接続されるのは投液ライン17であり、該投液ラインを通して、貯留コンテナ45からの充填液および任意選択で使用中に供給される液体が回路内に導入されうる。この投液ライン17から静脈ライン15へは第3ホースクランプ23(HC3)によって制御される。
【0040】
本明細書中に記載されたホースクランプは流体ライン用の一般的な制御可能弁である。流体とは、血液または代用血液のような液体、または空気のような気体として理解される。
【0041】
欧州特許第1705375号明細書(参照により全体がすべての目的に関して本願に援用される)に記載されるように、リザーバ2は、静脈ライン15からの入口12、およびリザーバ2の空気抜きを行う目的でリザーバの上部13に取り付けられたホースクランプ機能を備えたローラポンプ39を有している。
【0042】
リザーバ2には、上側充填レベルセンサ10および下側充填レベルセンサ11が装備されている。リザーバは、リザーバの表面の4/5にわたって入口エリアと出口エリアとを隔てるスクリーン28を備える。
【0043】
さらにリザーバ2は下部に送血ポンプ6への出口部を有する。
図3および4に示したように、送血ポンプ6は遠心ポンプであることが好ましい。送血ポンプ6の出口62は接線方向に上を向いている。送血ポンプ6の入口61は軸方向に配置される。空気抜き作用を達成するために、ポンプヘッドは、図4に示したように直角位置から時計回りに約10度および反時計回りに約20度回転されうる。
【0044】
リザーバ2の下流の送血ポンプ6は、リザーバ2に取り付けられる軸方向の入口61を有し、接線方向出口62は人工肺3の静脈側に接続される。
人工肺3の動脈接続部から、液体ライン(例えばホース)が動脈フィルタ5へと延びる。人工肺3はさらに、酸素供給(図示せず)のための接続部、および循環システム内の液体の温度を制御するための温熱装置(図示せず)のための接続部を有する。人工肺3はさらに、第2のホースクランプ22(HC2)を介してリザーバの上部に分離可能なように接続される空気抜きライン18のための接続部を有する。
【0045】
図1および図2は異なる状態の動脈フィルタ5を示す。動脈フィルタ5は、動脈側への出口51に加えて、さらに、該フィルタの上部に装着されてリザーバの上部13に通じている空気抜きライン55も有し、この空気抜きライン55は第1のホースクランプ21(HC1)によって締止されうる。該フィルタは、フィルタ処理前側53およびフィルタ処理後側54を有する。
【0046】
動脈フィルタの下流に配置された気泡センサ30は、気泡を検出すると下流の急動ホースクランプ20(QAHC)を活性化する。そのようなQAHC20は欧州特許第1,698,371号明細書(全体がすべての目的に関して本願に援用される)に記載されている。
【0047】
気泡センサによって気泡が検出されると、QAHC20は動脈ライン42を閉止してバイパス40のための第4のホースクランプ24(HC4)を開放し、その結果液体は、検出される気泡が患者モジュール1の循環内に存在しなくなるまでその回路を回ってポンプ送液されるようになっている。圧力および流量のセンサ34、37、38は同様に循環内に組み込まれる。システムの空気抜きが行われる前に、テーブルセット33が静脈接続部32bおよび動脈接続部32aに取り付けられるが、テーブルセット33は循環を閉止し、かつ空気抜きの際に充填もなされる。患者は充填作業の間は該循環につながれていない。
【0048】
患者モジュール1の構成部品は、以下のように該部品の位置に配置される。
リザーバ2は45度傾斜した位置に設置される。しかしながら、システム内で直立することもできる。リザーバ2の最大充填レベル100は上側充填レベルセンサ10によって調節される。充填作業の間、患者モジュール1の液位はこのように、動脈フィルタ5の上面56より下に位置するように調節されうる。この位置により、フィルタ5が液体で完全に充填されてその結果該フィルタのフィルタエレメント52の膜の上部が充填液で湿る状況が回避される。混入空気は、フィルタ5の膜の、常に「開放状態」であって湿っていない、したがって気体浸透性の上部を通過することが可能であり、抜け出ることができる。
【0049】
人工肺3の上面は、フィルタ5の上面よりも下にあるかまたは同じ高さに位置する。リザーバ2の送血ポンプ6は、リザーバの最大充填レベルより下方、上側充填レベルセンサ10の水平位置より下方に位置する。送血ポンプ6は、リザーバ2の下端縁より下に配置されてもよい。ポンプ6の液体運搬部は、このように常に上側充填レベルセンサ10より下方に位置する。したがって、充填液は、充填液コンテナ45からポンプ6の接線方向出口62を通って下流の構成部品へと単に重力のみによって通過することができる。ポンプ6においては混入空気の危険はない。
【0050】
人工心肺用の患者モジュール1には、構成部品の相対的な空間的な位置を確実なものとする支持構造物が提供されている。したがって、患者モジュール1は、送血ポンプ6、上面を備えた人工肺3、上面を備えたフィルタ5、およびリザーバ2を備えた血液回路を包含している。患者モジュールの作動位置において、構成部品は支持構造物の中で相互に水平な位置に配置されている。人工肺3の上面は、フィルタ5の上面より下にあるかまたは同じ高さに位置している。送血ポンプ6の液体運搬部は、リザーバ2の上側充填レベルセンサ10の水平位置より下方に位置し、よってリザーバ2の最大充填レベルより下方に位置する。フィルタの上面は、リザーバの上側充填レベルセンサよりも高い位置にある。したがって、フィルタ5の部分的な充填が制御可能であることにより、血液回路の有利な空気抜きが可能となる。
【0051】
1つの実施形態では、患者モジュールのフィルタ5は上面に取り付けられた空気抜きラインを有し、該空気抜きラインの取り付け地点は上側充填レベルセンサ10よりも高い所にある。
【0052】
第1の制御可能弁21(HC1)はフィルタの空気抜きラインに配置される。人工心肺の制御ユニット302(図10aおよびb)は、上側充填レベルセンサ10の反応後に第1の制御可能弁21(HC1)が少なくとも部分的に閉止されるように構成される。リザーバ2の下端縁は下端縁を有し、送血ポンプ6は該下端縁の下方にあるかまたはリザーバの下端縁の水平レベルより下方にある(図示せず)。別の例では、送血ポンプ6はリザーバの下3分の1の高さにある。
【0053】
患者モジュールはさらなる第5のホースクランプ25(HC5)を有することもできる。HC5 25は、静脈ライン15において投液口およびリザーバ2と、リザーバ、フィルタおよび人工肺より高い所にある充填液の供給地点との間に配置される(図6の患者モジュールの実施形態を参照)。
【0054】
人工心肺は、本発明による患者モジュールの全自動の充填および空気抜きを行うための制御ユニットを有する。患者モジュールの充填および空気抜きを行うための該制御ユニットは、フィルタ5の能動的な充填を制御するために、フィルタ5の空気抜きラインに対する充填作業の開始後およびリザーバ2の上側充填レベルセンサ10の反応後に開放される第1の制御可能弁21(HC1)を、閉止するように構成されている。よって、患者モジュールより高い所に位置し、かつ患者モジュールに接続された充填液コンテナ45からの充填液は、重力によって、システムの静脈側を介してリザーバ2へ、かつ前進してリザーバ2の下端に位置する送血ポンプ6の中へ、次いで前進してフィルタ5の中へ流入する。
【0055】
したがって、閉止された第1の制御可能弁21(HC1)およびそれゆえ閉止された空気抜きラインによってフィルタ内に空気クッションが作出される。空気クッションは、入って来る充填液の流れの挙動を鈍らせる。送血ポンプの第1の速度は制御ユニット302によって選択されて、入口側からのフィルタ5の緩慢な充填が生じ、かつこのフィルタは部分的にのみ充填されるように、またフィルタ膜52の上部は充填液によって湿ることのないままであり、よってさらなる充填および空気抜き作業に関しては空気浸透性のままであるようになっている。
【0056】
さらに、図6のような実施形態では、制御ユニットは、リザーバ内の充填液が下側充填レベルセンサ11によって検出されると第5の制御可能弁25(HC5)を閉止するように構成される。この結果、投液口とリザーバ2との間の静脈接続は、第5の制御可能弁25(HC5)によって分離される。これで充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス40経由で動脈フィルタ5へ流れることになる。したがって、加わる圧力によって、フィルタ5は出口側から重力によって逆行方式で充填される。
【0057】
患者モジュールは気泡センサ30を備えることができる。気泡センサはシステム内の空気を検出するように配置される。気泡が該センサによって検出されると、制御ユニットは急動ホースクランプ(QAHC)20によりテーブルセットのスイッチを切るように構成される。第4の制御可能弁24(HC4)は再び開放され、システム内の空気はリザーバ経由で追い出される。
【0058】
人工心肺に提供される患者モジュールは、充填および空気抜き作業が人工心肺の輸送中に行なわれることを可能にする。輸送は、そのような装置の、定常動作とは異なる課題をもたらす作動状態である。例をあげると、例えば救急車またはヘリコプター内では空間に制限がある。さらに、作業者を得られる機会が制限される場合もある。このことから、自動プライミングが本明細書中に記載される信頼性の高い方法で提供されることは重要である。
【0059】
制御ユニット302は、全自動で空気抜きを実行するように、また、空気抜き作業の開始後に、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスを自動的に実行するように、なされている。
【0060】
開始後、投液ラインは第3の制御可能弁23(HC3)によって開放され、その際に、第2の制御可能弁HC2 22、第4の制御可能弁24 HC4および急動ホースクランプQAHC 20ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ39も開放される。
【0061】
いくつかの実施形態では、人工心肺は、充填および空気抜き作業を記録するように、かつしたがって後者を読取り可能な形態で文書化するようになされている。例えば、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量のような他のパラメータなどのデータは、記憶ユニットに保存されうる。制御ユニット302は、これらのデータの記憶ユニットからの出入を管理することができる。
【0062】
プログラム命令でエンコードされた非一時的なコンピュータ可読記憶媒体について、ここで説明する。前記記憶媒体は装置のコンピュータ制御システムにロードされており、かつ前記プログラム命令により前記コンピュータ制御ユニットが患者への接続に先立って装置のプライミングを制御するようになっている。
【0063】
患者モジュールの充填および空気抜きを制御するためのコンピュータプログラム301は図10aに示されている。人工心肺において、患者に取り付けられていない状態で、コンピュータプログラム301は制御ユニット302のようなコンピュータユニットによって実行される。コンピュータプログラムはコンピュータ可読記憶ユニットに実装される。前記の充填および空気抜きの際、患者モジュールより高い位置にある充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入する。コンピュータプログラムはコードセグメントを備え、1つのコードセグメント310は最初にフィルタの空気抜きラインの制御可能弁を開放し、そしてリザーバの上側充填レベルセンサからの反応後に閉止される。コンピュータプログラム301は、「第1の方法」の以下に述べる実施形態を実行するのに適していることが好ましい。人工心肺用のキットは、患者モジュール、テーブルセット33、および充填液用の充填液コンテナ45を備える。
【0064】
患者モジュールの充填および空気抜きを制御するための別のコンピュータプログラム401は図10bに示されている。人工心肺において、患者に取り付けられていない状態で、該コンピュータプログラムは制御ユニット302のようなコンピュータユニットによって実行される。コンピュータプログラム401はコンピュータ可読記憶ユニットに実装される。前記の充填および空気抜きの間、患者モジュールより高い位置にある充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入する。送血ポンプはリザーバの下側充填レベルセンサより下に位置する。コンピュータプログラムはコードセグメントを備え、1つのコードセグメント410は、下側充填レベルセンサによりリザーバ内の充填液が検出されると第5の制御可能弁25(HC5)を閉止し、その結果として、投液口とリザーバとの間の静脈接続は分離され、充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス経由で動脈フィルタへと流れ、また、加わる圧力によって、フィルタは出口側から重力によって逆行方式で充填される。コンピュータプログラム401は、「第2の方法」の以下に述べる実施形態を実行するのに適していることが好ましい。
【0065】
図9aは、第1の方法のステップの概略図を示し、図10aは、第1の方法を実行するためのコンピュータプログラムの概略図を示す。
図5は、図9aに示したような第1の方法200のための上述した循環システムを示す。この方法200は、人工心肺内の患者モジュールを充填および空気抜きする方法である。患者は、充填作業の間は該モジュールに接続されていない。該方法はステップ210を備え、該ステップにおいて、患者モジュールより高い位置にある充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入する。第1の制御可能弁21 HC1はフィルタ5の空気抜きラインのために開放される。さらなるステップ212において、第1の制御可能弁は、リザーバ内の上側充填レベルセンサからの反応後に閉止される。
【0066】
空気抜き作業の開始後、全てのプロセスステップは空気抜き作業が完了するまで自動的に行われる。開始後、HC3 23は投液ラインを開放する。患者モジュールより高い所に位置する充填液コンテナ45からの充填液は、重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ2の中に流入しそして前進してリザーバ2の下端に位置する遠心ポンプの形態の送血ポンプ6の中に流入する。HC2 22、HC4 24およびQAHC20ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ39は開放される。フィルタ5の空気抜きライン用のHC1 21も同様に開放されて、リザーバ内の上側充填レベルセンサ10の反応後にのみ閉止される。ローラポンプ39も同様にリザーバ内の上側充填レベルセンサ10の反応後に閉止され、このようにしてそれ以上の空気が空気抜き経路35を通って収集バッグ36へと抜け出ることはできず、充填液コンテナ45を用いたリザーバ2の充填は停止される。リザーバ2の充填の状態に応じて、ローラポンプ39は開放または閉止される。充填液がリザーバ2の上側充填レベルセンサ10に到達すると、下流の構成部品は重力によって充填液で充填されると考えられる。上側充填レベルセンサ10への到達がなされた後、HC1 21はフィルタ5の継続的な能動的充填を確実にするために閉止される。有利な空気クッションが生じる。
【0067】
遠心ポンプの構造上、液体は該液体の能動的送達を可能にするためにポンプの中に存在しなければならない。ダイアフラムポンプでのような、ポンプヘッド内の空気に関する吸込挙動は存在しない。
【0068】
患者モジュール内にある送血ポンプ6は、上を向いた接線方向出口62および軸方向の入口61(図3を参照)を通して重力によって充填液で充填されうるような方法でその設置状態に配向される。空気は送血ポンプ6の中で上昇し、出口62を経由して追い出される。
【0069】
重力による充填が行われた後、ポンプ6の始動停止動作により、該送血ポンプ内にある空気が出口62に運ばれて追い出されることが確実となる。ポンプの停止中は、空気はポンプ出口62の方向に上昇することが可能であり、送血ポンプ6の始動によって運び出されうる。
【0070】
リザーバ2および送血ポンプ6の配置により、すなわちリザーバ2の最大充填レベルより下方では、送血ポンプ6は重力によって充填されることが確実となり、このようにして、空気抜き作業の間は送血ポンプ6の中に常に液体が存在する。
【0071】
充填液で充填された送血ポンプ6は、設計および送達率に応じて、低い速度にて周期的間隔で作動させられる。充填液は、リザーバ45から人工肺3の中へ、および前進して動脈フィルタ5の中へと運搬される。フィルタ5を入口側50からゆっくりと充填することにより、フィルタは部分的にのみ充填される。フィルタ膜52の上部は充填液によって湿らないままであり、したがって常に空気浸透性である。いかなる混入空気もフィルタ処理後側54からフィルタ処理前側53へと横断して追い出されうる。導入された充填液は、フィルタ膜の下方部分を通り抜けてフィルタ処理後の流出側54に至り、下流の循環システムを充填する。フィルタ流出側54に取り付けられたホースからの空気は、フィルタ5の中へ、またフィルタ膜52の湿っていない部分を通ってフィルタ処理前側53へ、抜け出ることができる。
【0072】
さらに、HC1が閉止され、かつ充填液がフィルタ出口部に位置しているので、空気抜きラインの閉鎖によりフィルタ5に空気クッションが生じる。空気クッションは、入って来る充填液の流れの挙動を鈍らせるのに好都合である。
【0073】
低い速度およびしたがって低い送達率での規定の充填時間の後、送血ポンプ6の速度は次第に増大させられて一定値となり、バイパス40はホースクランプHC4 24の閉止によって締止され、このようにして、取り付けられたテーブルセット33に液体が通過せしめられて該テーブルセットの空気抜きが行われる。
【0074】
次のステップにおいて、HC4 24は再び開放され、送血ポンプ6の速度はさらに増大させられる。HC4 24のさらなる閉止、ならびに送血ポンプ6の速度のさらなる増大およびしたがって吐出率の増大により、さらなる液体がテーブルセット33を通過せしめられ、テーブルセットのさらなる空気抜きがなされる。この間、HC1 21すなわち動脈フィルタ5の空気抜きクランプは開放されている。フィルタの上部に残っている空気はこうして抜け出ることができる。
【0075】
再びバイパスの空気抜きを行うために、HC4 24は再び開放される。最終ステップにおいてシステム内の空気が気泡センサ30によって検出される場合、QAHCによりテーブルセット33が締止され、HC4 24が開き、そしてシステム内の空気はリザーバ2経由で追い出されうる。システムに十分な充填液を供給するために、リザーバ2の充填レベルセンサによって液位は常にモニタリングされる。
【0076】
空気抜き作業は記録され、それにより読取り可能な形態に文書化される。ホースクランプの指標となる位置、リザーバの充填状態、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量のような他のパラメータが保存されうる。
【0077】
空気抜き作業はさらに、人工心肺の輸送または移動時使用の間にも実行されうる。図7は、圧力測定を統合した第1の方法200のための循環システムの模式図を示す。該循環システムは、上述した第1の方法に関するものに似ているが、4つの制御可能弁(ここではホースクランプ)を備えている。図6に示されたクランプHC1 21およびHC2 22は、ここでは圧力測定を送血ポンプ6と人工肺3および人工肺3とフィルタ5の間のホース系統に統合することによって組み合わされて、1つのホースクランプ21aとなっている。
【0078】
図6は、逆行式充填を伴う第2の方法220のための循環システムの図式的概観である。図9bは、第2の方法220のステップの概略図である。図10bは、第2の方法を実行するためのコンピュータプログラム401の概略図である。
【0079】
条件は第1の方法のとおりであり、ただしリザーバ2上の送血ポンプ6を備え、該ポンプはリザーバ2の下側充填レベルセンサ11より下に位置している。送血ポンプ6は、リザーバ2の下端縁より下に配置されてもよい。さらなる制御可能弁、ここではホースクランプHC5 25が、静脈ラインにおいて投液口およびリザーバ2と、リザーバ、フィルタおよび人工肺より高い所にある充填液の供給地点との間に配置される。
【0080】
第2の方法220は、患者に取り付けられていない人工心肺の患者モジュールの充填および空気抜きを行うための方法である。患者モジュールより高い位置にある充填液コンテナからの充填液は重力によって患者モジュールの静脈側を介してリザーバ2の中に流入しそして前進してリザーバ2の下端に位置する送血ポンプ内に流入する。送血ポンプは、リザーバ2の下側充填レベルセンサ11より下方に位置する。
【0081】
リザーバ2の中の充填液が検出されると、第5の制御可能弁25(HC5)は下側充填レベルセンサ11によって閉止される。したがって、第5の制御可能弁25によって、投液口とリザーバ2との間の静脈接続が分離される。これで充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス40経由で動脈フィルタ5へと流れる。重力によって加わる圧力により、フィルタは出口側51(図2を参照)から逆行方式で充填される。
【0082】
空気抜き作業の開始後、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスが自動的に実行される。開始後、HC3 23は投液ラインを開放する。患者モジュールより高い位置にある充填液コンテナ45からの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ2の中に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する遠心ポンプの形態の送血ポンプ6の中へ流入する。HC1 21、HC2 21、HC4 24、HC5 25およびQAHC20、ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ39は、開放される。
【0083】
充填液は、重力によって同時に、静脈ラインを通ってリザーバ2の中へ、またバイパス40経由で動脈フィルタ5の出口部の方向へ流れる。フィルタ5は、その高い設置位置のおかげで充填液が流れ出てリザーバ2の中に入るのでいっぱいになることはない。
【0084】
患者モジュール内にある送血ポンプ6は、上を向いた接線方向出口62および軸方向の入口61(図3を参照)を通して重力によって充填液で充填されうるような方法で、その設置状態に配向される。空気は送血ポンプ6の中で上昇し、出口62を経由して追い出される。リザーバ2の充填液がリザーバ内の下側充填レベルセンサ11に達するとすぐに、下流の送血ポンプは充填液で完全に充填される。
【0085】
下側充填レベルセンサ11はリザーバ内の充填液を検出し、HC5 25は閉止される。このように投液口とリザーバ2との間の静脈接続は分離される。充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス40経由でフィルタ5へと流れることができる。重力によって加わる圧力により、フィルタ5は出口側から逆行方式で充填される。このようにして、フィルタ内において、空気はフィルタ処理後側からフィルタ処理前の入口側へと抜け出ることができる(図2を参照)。重力による充填は、フィルタ5の緩やかな空気抜きおよび充填をもたらす。空気はフィルタの上部の空気抜きラインを通って抜け出ることが可能であり、充填液は前進して人工肺3へと流れることができる。逆行式の充填が人工肺3において同様に生じる。空気は人工肺の空気抜きラインを通じて追い出される。
【0086】
次のステップでは、HC5 25は開放され、充填液は、上側充填レベルセンサ10が液体を検出するまで再びリザーバ2に流入する。このようにして、送血ポンプ6は活性化され、その速度は一定値まで段階的に増大させられる。さらに、バイパス40はホースクランプHC4 24の閉止によって締止され、液体は取り付けられたテーブルセット33を通って流れる。
【0087】
次のステップでHC4 24は再び開放され、送血ポンプ6の速度はさらに増大させられる。HC4 24のさらなる閉止および速度のさらなる増大、ならびにしたがって送血ポンプ6の吐出率の増大によって、より多くの液体がテーブルセット33を通って流れ、また該テーブルセットのさらなる空気抜きが行われる。HC1 21およびHC2 22による、フィルタ5および人工肺の空気抜きラインの開放により、構成部品の中に存在するあらゆる空気がリザーバ2へと抜け出ることが可能となる。
【0088】
HC4 24およびQAHC20の閉止により、人工肺3の空気抜きラインおよび動脈フィルタ5の空気抜きラインは、空気抜き作業の最後のステップにおいて再びフラッシングされる。
【0089】
もし最後のステップにおいて気泡センサ30によってシステム内の空気が検出された場合には、QAHC20はテーブルセットを締止し、HC4 24は開き、システム内の空気はリザーバ2を経由して追い出されうる。
【0090】
システムに十分な充填液を供給するように、リザーバ2の充填レベルセンサによって液位は常にモニタリングされる。
図8は、統合圧力測定を伴う第2の方法のための循環システムの模式図である。
【0091】
循環システムは第2の方法220について図6に記載されているように構造化されており、ただしホースクランプは5個である。HC1 21およびHC2 22は、圧力測定を送血ポンプ6と人工肺3および人工肺3とフィルタ5の間のホース系統に統合することによって組み合わされて1つのホースクランプ21aとなっている。送血ポンプ6はリザーバの下端縁より下方に配置されている。
【0092】
空気抜き作業は記録され、それにより読取り可能な形態に文書化される。ホースクランプの指標となる位置、リザーバの充填状態、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量のような他のパラメータが保存されうる。
【0093】
空気抜き作業はさらに、人工心肺の輸送または移動時使用の間にも実行されうる。
充填および空気抜きの作業の後、患者は以下のように接続される。患者は、充填作業の間に、大腿動脈に導入されている動脈ニードルおよび患者の大腿静脈に導入されている静脈ニードルの準備がなされる。システムが充填された後、該システムとともに充填されたテーブルセットは中間で分離(切断)され、準備されたニードル上に混入空気を伴わないように差し込まれ、灌流が開始される。
【0094】
その後、いくつかの医学的処置が患者に対して行なわれうる。医学的適用の例は、数あるなかでも特に、急性心不全(心臓性ショック)に対する緊急使用;臓器損傷を回避するための心臓の支援;肺不全(ARDS);心臓に対するハイリスクな介入(PCI[ステント](DAVI[心臓弁]));拍動下心臓手術(CABG[拍動している心臓に対するバイパス術])の支援;臓器移植のためのドナー候補の灌流;低体温患者の温度安定化(患者を身体温に暖めること);患者の体温制御⇒低体温法、身体温の計画的な低減(例えば卒中)、である。
【0095】
プライミング後に記載の人工心肺を使用する方法の実例をここで概説する。最初に、人工心肺は、滅菌生理食塩水のようなプライミング液を用いて(好ましくは上述のような方法で)プライミング、すなわち充填が行われる。開始されてしまえば、プライミングは人的介入を伴わずに自動的に行われうる。その後、装置は充填(またはプライミング)モードから自動運転モードに切り替えられる。プライミングがなされると、装置は、ドナーの循環系に、装置の静脈連結部へは静脈を通じて、かつ装置の動脈連結部へは動脈を通じて流体連結される。該方法は、人工心肺を介した血液への医薬品または他の添加剤の添加を含むことができる。例えば、凝血を防ぐために血液に抗凝血剤が加えられてもよい。提供される予定の臓器は人工心肺を使用して移植まで保持されてもよいし、または、臓器が人工心肺によって保持され、採取され、かつ移植前に別々に輸送されてもよい。臓器が臓器被提供者に移植される直前まで、人工心肺は臓器の変質を防止することができる。1つ以上の臓器の生存度はその後の移植のために臓器提供者において維持される。臓器が臓器被提供者に移植される準備ができたとき、提供者の身体または採取された臓器は人工心肺から離脱せしめられる。
【0096】
加えてまたは代替として、1つ以上の採取された臓器は採取後に人工心肺によって生かされる場合もある。その後、臓器は輸送の間に人工心肺によって灌流されてもよい。そのような採取後の輸送に特に適した臓器には、限定するものではないが、心臓、肺、肝臓、または四肢が含まれる。しかしながら、これは一定の環境下では眼のような一部の臓器については実現可能ではない。そのような環境下では、眼のようなある種の臓器は、死亡、脳死、または臨床死の臓器提供者の全身を灌流することによって維持されて変質しないように保たれることが好ましい。
【0097】
このように、該方法は、1つ以上の臓器が移植のためにある場所から別の場所へと輸送されることを可能にする。輸送は、前述の実施形態に従って人工心肺を使用することにより特に容易になる。臓器は、人工心肺と臓器との相互作用がなければ生じるであろう臓器の変質の防止を可能にする状態に保たれうる。血液または代用血液が臓器を灌流するための方法において使用されてもよい。
【0098】
プライミング後に記載の人工心肺を使用する別の実例となる方法についてここで概説する。滅菌生理食塩水のようなプライミング液を用いて人工心肺を(好ましくは上述のように)プライミング、すなわち充填する方法。開始されてしまえば、プライミングは人的介入を伴わずに自動的に行われうる。その後、装置は充填(またはプライミング)モードから自動運転モードに切り替えられる。プライミングされて運転状態になると、装置は、患者の循環系に、装置の静脈連結部へは静脈を通じて、かつ装置の動脈連結部へは動脈を通じて流体連結される。
【0099】
患者の心臓は、必要に応じて任意選択で拍動抑制されるかまたは停止せしめられてもよい。患者に戻される血液は酸素が富化されている。ある場合には、血液温度は、正常な体温より低くかつ臓器が損傷されうる温度より高い体温に制御されてもよい。そのような温度は、患者または心臓のみを手術中に氷槽中に入れることにより現在も達成可能な範囲内にある。しかしながら、血液温度を制御し、かつ静脈血管接続部を介して該血液を患者に再注入する前に該血液を恐らくは冷却することは、体温をはるかに上手く制御することができる見事な解決策である。
【0100】
該方法は、人工心肺による血液への医薬品またはその他の添加剤の追加を含むことができる。例えば、凝血を防ぐために血液に抗凝血剤が加えられてもよい。その後、弁置換または弁修復が医学的処置の際に実施される。心臓弁が人工弁ユニットに交替されるか、または心臓弁の修復が行われる。
【0101】
弁修復には、弁輪形成インプラント、弁葉クリップ、または欠陥を有する心臓弁を修復するのに適したその他の医療用装置の位置調整が含まれうる。このようにして例えば逆流が治療されうる。別例として、または追加として、例えば弁の閉鎖不全を修正するために弁葉の一部が除去される外科的方法が実施されてもよい。
【0102】
弁置換または弁修復は、侵襲性が最も少ない方法で実施されることが好ましい。循環系内のイントロデューサおよびカテーテルを介した心臓への経皮的アクセスは、本発明の状況下での心臓へのアクセスに適した医学的処置である。
【0103】
弁置換は、機能不全に陥った心臓弁の除去を備える場合もある。別例として、または追加として、置換を必要とする機能不全の弁の場所に人工弁が配置される。例えばいわゆるステント弁が使用される場合、機能不全の弁は人工置換弁の位置調整の前に外科的に除去される必要がない場合もある。
【0104】
修復または交換されることになる心臓弁は例えば僧帽弁または三尖弁である。弁の置換または修復が終了した時、医学的処置はまさに仕上げとなるところである。心臓にアクセスするために使用された用具は取り除かれる。イントロデューサは取り除かれて、傷が閉創される。望ましい場合には、患者の心臓は再始動され、必要に応じて、患者は人工心肺から離脱せしめられ、該装置の運転は終了する。
【0105】
プライミング後に記載の人工心肺を使用する別の実例となる方法についてここで概説する。本発明による該方法は、滅菌生理食塩水のようなプライミング液を用いて人工心肺を(好ましくは上記に概説されるように)プライミング、すなわち充填することを備える。開始されてしまえば、プライミングは人的介入を伴わずに自動的に行われうる。プライミングされて運転状態になると、該装置は、患者の循環系に、装置の静脈連結部へは静脈を通じて、かつ装置の動脈連結部へは動脈を通じて流体連結される。
【0106】
患者の心臓は、必要に応じて任意選択で拍動抑制されるかまたは停止せしめられてもよい。患者に戻される血液は酸素が富化されている。ある場合には、血液温度は、正常な体温より低くかつ臓器が損傷されうる温度より高い体温に制御されてもよい。そのような温度範囲は、患者または心臓のみを手術中に氷槽中に入れることにより現在でも達成可能である。血液温度を制御し、かつ静脈血管接続部を介して該血液を患者に再注入する前に該血液を恐らくは冷却することは、体温または心臓の温度のうち少なくともいずれかがはるかに上手く制御される見事な解決策である。
【0107】
伏在静脈のセグメント、内胸動脈、または橈骨動脈のような、冠動脈バイパスグラフトおよびグラフト血管が患者から採取される場合には、カニューレが心臓内に縫合され、人工心肺を使用した心肺バイパスが開始される。大動脈は締止され、心臓は停止せしめられて例えば29℃に冷却される。グラフト血管の一端が、バイパスされるべき閉塞部の向こう側の冠状動脈に縫合される。その後、心臓は再開され、心臓が拍動している中でグラフト血管の他端が大動脈に縫合され、人工心肺が患者から離脱せしめられる。
【0108】
該方法は、人工心肺による血液への医薬品またはその他の添加剤の追加を含むことができる。例えば、心臓が停止している間の凝血を防ぐために血液に抗凝血剤が加えられてもよい。
【0109】
経皮的な血管形成またはステント留置の場合には、通路の拡幅のために、または動脈を広げて該動脈を通る血流を改善するためのより広い形状に該動脈を支持することになるステントの拡張のために、バルーンが冠状動脈の内部で膨張させられる。心臓は、可能ではあっても通常は経皮的血管形成またはステント留置のためには停止されないが、動脈の内部におけるバルーン付きカテーテルの拡張は動脈を破裂させて緊急心臓外科が必要になることがある。人工心肺は、そのような合併症や、心臓の停止または拍動抑制を必要とする他の合併症の場合に使用されてもよい。人工心肺は、必須ではないが、可能性のある合併症の前の予防措置としてプライミングされてもよい。
【0110】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく記載の実施例に変更および改変がなされうることを認識するであろう。
[付記1]体外血液処理用装置の充填および空気抜きを、患者に取り付けられていない状態で行うための方法であって、前記装置より高い位置にある充填液コンテナからの充填液が重力によって前記装置の静脈側を介してリザーバの中に流入しそして前進して前記リザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入し、フィルタの空気抜きライン用の第1の制御可能弁(HC1)が開放され、前記リザーバの上側充填レベルセンサの反応後に閉止され、前記フィルタはその上部高さが上側充填レベルセンサより高い位置に配置され、送血ポンプの始動停止動作が実行され、その結果、前記フィルタが段階的に浸水される、方法。
[付記2]充填液で充填された前記送血ポンプが周期的間隔で第1の低い速度にて作動して充填液を前記リザーバから人工肺へそして前進して動脈フィルタへと運搬し、前記第1の速度は、前記フィルタの入口側からの緩やかな充填が生じて前記フィルタが部分的にのみ充填されるように選択されたものであり、フィルタ膜の上部は、前記充填液によって湿らせられないままであり、それゆえさらなる充填および空気抜き作業の間も常に空気浸透性である、付記1に記載の方法。
[付記3]前記第1の制御可能弁(HC1)は、前記上側充填レベルセンサの反応後に前記フィルタのさらなる能動的充填を制御すべく閉止され、重力による充填が行われた後の前記送血ポンプの前記始動停止動作により前記送血ポンプ内にある空気は出口に運ばれて確実に追い出され、前記送血ポンプの停止中に空気はポンプ出口の方向に上昇し、前記送血ポンプの始動によって運び出される、付記1または2に記載の方法。
[付記4]閉止された前記第1の制御可能弁(HC1)およびそれにより閉止された空気抜きラインならびにフィルタ出口部に位置する充填液によって、前記フィルタ内に、入って来る充填液の流れの挙動を鈍らせる空気クッションが形成される、付記3に記載の方法。
[付記5]前記リザーバから収集容器への空気抜きチャネル内の第2のポンプは、前記上側充填レベルセンサの反応に応じてすなわち前記リザーバの充填状態に従って、開放または閉止される、付記1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
[付記6]前記リザーバの前記上側充填レベルセンサの反応後、前記第2のポンプのスイッチが切られ、それゆえ空気はそれ以上前記空気抜きチャネルを通って前記収集容器へと抜け出ることはできず、前記充填液コンテナによる前記リザーバの充填は停止される、付記5に記載の方法。
[付記7]前記上側充填レベルセンサの反応時、充填液は前記リザーバの前記上側充填レベルセンサのレベルに到達し、それゆえその下流の構成部品は重力によって充填液で充填される、付記3乃至6のいずれか1項に記載の方法。
[付記8]前記装置内にある前記送血ポンプは、遠心ポンプであり、上を向いた接線方向出口を有し、当該方法では、前記送血ポンプは前記上を向いた接線方向出口および軸方向の入口を通して重力により充填液で充填され、前記送血ポンプ内の空気は上昇して前記接線方向出口を経由して追い出される、付記3乃至7のいずれか1項に記載の方法。
[付記9]混入空気はフィルタ処理後側からフィルタ処理前側へと横断して追い出される、付記8に記載の方法。
[付記10]導入された充填液は、フィルタ膜の下方部分を流通してフィルタ処理後の出口側へ流れ、下流の循環システムを充填する、付記8または9に記載の方法。
[付記11]フィルタの出口側に取り付けられたホースからの空気はフィルタの中へ抜け出る、付記7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
[付記12]前記第1の速度すなわち第1の送達率での規定の第1の充填時間の後、前記送血ポンプの速度は次第に増大させられて一定の第2の速度値となり、第4の制御可能弁(HC4)の閉止によってバイパスは閉止され、このようにして、液体が取り付けられたテーブルセットを通過して該テーブルセットの空気抜きが行われる、付記8乃至10のいずれか1項に記載の方法。
[付記13]規定の第2の充填時間の後、前記第4の制御可能弁(HC4)は再び開放されて前記送血ポンプの速度はさらに第3の充填時間の間に第3の速度値へと増大され、前記第4の制御可能弁(HC4)はその後再び閉止されて前記送血ポンプの速度はさらに第4の速度値へと増大され、前記送血ポンプの送達率の増大は、より多くの液体を前記テーブルセットを通過させて該テーブルセットをさらに空気抜きすることを意味し、そのうちに前記第1の制御可能弁(HC1)が開放されてフィルタの上部に残っている空気を抜け出させ、その後前記第4の制御可能弁(HC4)がバイパスの空気抜きをもう1度行うために再び開放される、付記12に記載の方法。
[付記14]システム内の空気を気泡センサにより検出し、気泡が検出されると、制御可能弁(QAHC)が前記テーブルセットのスイッチを切り、第4の制御可能弁(HC4)が再開し、システム内の空気がリザーバを経由して追い出される、付記12および13のうちいずれか1項に記載の方法。
[付記15]システムに十分な充填液を供給するように液位は常にリザーバ内の充填レベルセンサによってモニタリングされる、付記1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
[付記16]空気抜き作業は記録されて読取り可能な形態に文書化され、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量から選択される少なくとも一つが保存される、付記1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
[付記17]空気抜き作業は輸送の間に実行されるか、または該方法は全自動で空気抜きを行うための方法であるかのうち少なくともいずれかであり、かつ、空気抜き作業の開始後に、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスが自動的に実行される、付記1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
[付記18]開始後、第3の制御可能弁(HC3)は投液ライン(17)を開放し、該ラインを通して貯留コンテナ(45)からの充填液が装置の循環の中に導入可能であり、かつ、第2の制御可能弁(HC2、22)、第4の制御可能弁(HC4、24)および急動ホースクランプ(QAHC、20)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放される、付記17に記載の方法。
[付記19]体外血液処理用装置の充填および空気抜きを、患者に取り付けられていない状態で行うための方法であって、該装置より高い位置にある充填液コンテナからの充填液は、重力によって前記装置の静脈側を介してリザーバの中に流入しそして前進して前記リザーバの下端に位置する送血ポンプ内に流入し、前記送血ポンプはリザーバの下側充填レベルセンサより下方に位置し、前記リザーバ内の充填液が前記下側充填レベルセンサによって検出されると第5の制御可能弁(HC5)は閉止され、その結果、前記第5の制御可能弁(HC5)によって投液口と前記リザーバとの間の静脈接続は分離され、充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス経由で動脈フィルタへと流れ、加わる圧力によって、フィルタは出口側から重力によって逆行方式で充填される、方法。
[付記20]前記第5の制御可能弁(HC5)は、静脈ラインにおいて投液口およびリザーバと、リザーバ、フィルタおよび人工肺より高い所にある充填液の供給地点との間に位置し、かつ、フィルタ内の空気はフィルタ処理後側からフィルタ処理前の入口側へのみ抜け出る、付記19に記載の方法。
[付記21]重力による充填は緩やかな空気抜きおよび逆行による充填をもたらす、付記19または20に記載の方法。
[付記22]空気はフィルタの上部の空気抜きラインを経由して抜け出て、充填液は前進して人工肺へと流れ、人工肺において同様に逆行式の充填が生じ、空気は取り付けられた空気抜きラインを通って追い出される、付記20および21のうちいずれかに記載の方法。
[付記23]次いで第5の制御可能弁(HC5)の開放が行われ、充填液はリザーバの前記上側充填レベルセンサが液体を検出するまで再びリザーバ内に流入し、上側充填レベルが検出されると前記送血ポンプが活性化され、その速度は一定値まで段階的に増大させられる、付記19乃至22のいずれか1項に記載の方法。
[付記24]バイパスは第4のホースクランプHC4の閉止によって締止され、液体は取り付けられたテーブルセットを通って流れる、付記23に記載の方法。
[付記25]次いで第4のホースクランプHC4は再び開放されて前記送血ポンプの速度はさらに増大させられ、その結果として、より多くの液体が前記テーブルセットを通って流れ、かつ該テーブルセットのさらなる空気抜きが行われる、付記24に記載の方法。
[付記26]フィルタおよび人工肺の空気抜きライン(HC1およびHC2)が開放され、構成部品の中に存在する空気がリザーバへと抜け出る、付記23乃至25のいずれか1項に記載の方法。
[付記27]次いで人工肺および動脈フィルタのHC4およびQAHCの閉止によりフラッシングが再び実行される、付記26に記載の方法。
[付記28]システム内の空気は気泡センサによって検出され、気泡が検出されると、制御可能弁(QAHC)は前記テーブルセットのスイッチを切り、第4の制御可能弁(HC4)は再開し、システム内の空気はリザーバを経由して追い出される、付記27に記載の方法。
[付記29]リザーバ内の充填レベルセンサによって、システムに十分な充填液を供給するように液位は常にモニタリングされる、付記19乃至28のいずれか1項に記載の方法。
[付記30]開始後、HC3は投液ラインを開放し、装置より高い所に位置する充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入し、前進してリザーバの下端に位置する遠心ポンプの形態の前記送血ポンプの中に流入し、第1の制御可能弁HC1、第2の制御可能弁(22)、第4の制御可能弁(24)、第5の制御可能弁(25)および急動ホースクランプ(QAHC、20)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放される、付記19乃至29のいずれか1項に記載の方法。
[付記31]充填液は、重力によって同時に、静脈ラインを通ってリザーバの中へ、またバイパス経由で動脈フィルタの出口の方向へ流れ、かつ、フィルタは、その高い設置位置のおかげで充填液が流れ出てリザーバの中に入るので、充填されることはない、付記19乃至30のいずれか1項に記載の方法。
[付記32]装置内にある前記送血ポンプは、上を向いた接線方向出口および軸方向の入口を通して、重力によって充填液で充填されうるような方法でその設置状態に配向され、前記送血ポンプ内の空気は上昇して出口を経由して追い出される、付記19乃至31のいずれか1項に記載の方法。
[付記33]リザーバ内の充填液がリザーバ内の下側充填レベルセンサに達するとすぐに、下流の前記送血ポンプは完全に充填液で充填される、付記19乃至32のいずれか1項に記載の方法。
[付記34]空気抜き作業の開始後、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスが自動的に実行される、付記19乃至33のいずれか1項に記載の方法。
[付記35]空気抜き作業は記録され、それにより読取り可能な形態に文書化され、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、ならびに圧力および流量から選択される少なくとも一つが保存される、付記19乃至34のいずれか1項に記載の方法。
[付記36]空気抜き作業は輸送の間に実行されるか、または該方法は全自動で空気抜きを行うための方法であるかのうち少なくともいずれかであり、かつ、空気抜き作業の開始後に、空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスが自動的に実行され、かつ、開始後、第3の制御可能弁(HC3)は投液ラインを開放し、かつ、第2の制御可能弁(HC2 22)、第4の制御可能弁(24 HC4)および急動ホースクランプ(QAHC 20)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放される、付記19乃至35のいずれか1項に記載の方法。
[付記37]支持構造物を備えた、モジュール装置を有する、体外血液処理用の装置であって、該装置は、装置の作動位置において支持構造物の中で互いに対して水平な位置に配置された送血ポンプ、上面を備えた人工肺、上面を備えたフィルタ、およびリザーバを備えた血液循環を備え、人工肺の上面はフィルタの上面より下にあるかまたは同じ高さに位置し、前記送血ポンプの液体運搬部はリザーバの上側充填レベルセンサの水平位置より下方に、よってリザーバの最大充填レベルより下方に位置し、フィルタの上面はリザーバの前記上側充填レベルセンサよりも高い所にある、装置。
[付記38]フィルタは上面に取り付けられた空気抜きラインを有し、該空気抜きラインの取り付け地点は前記上側充填レベルセンサよりも高い所にある、付記37に記載の装置。
[付記39]第1の制御可能弁(HC1)がフィルタの空気抜きラインに配置され、人工心肺の制御ユニットは、前記上側充填レベルセンサの反応後に、第1の制御可能弁(HC1)が少なくとも部分的に閉止されるように構成される、付記38に記載の装置。
[付記40]リザーバは下端縁を有し、前記送血ポンプは該下端縁より下方もしくはリザーバの下端縁の水平レベルより下方にあるか、またはリザーバの下3分の1の高さにある、付記37乃至39のいずれか1項に記載の装置。
[付記41]装置内にある前記送血ポンプは遠心ポンプであり、上を向いた接線方向出口を有する、付記37乃至40のいずれか1項に記載の装置。
[付記42]前記接線方向出口は、直角位置から時計回りに最大10度および反時計回りに最大20度回転される、付記41に記載の装置。
[付記43]前記送血ポンプは軸方向の入口を有し、作動位置において、上を向いた接線方向出口および軸方向の入口を通して重力によって充填液で充填されうるような方法で配向される、付記41または42に記載の装置。
[付記44]装置に十分な充填液を供給するために、リザーバ内に配置された、リザーバ内の液位をモニタリングするための下方および上方の充填レベルセンサからなる充填レベルセンサを備える、付記37乃至43のいずれか1項に記載の装置。
[付記45]第5のホースクランプ(HC5)を、静脈ラインにおいて投液口およびリザーバと、リザーバ、フィルタおよび人工肺より高い所にある充填液の供給地点との間に備える、付記37乃至44のいずれか1項に記載の装置。
[付記46]体外血液処理用の装置の全自動の充填および空気抜きを行うための制御ユニットを備えた、体外血液処理のための医療用システムであって、装置の充填および空気抜きを行うための制御ユニットは、フィルタの能動的な充填を制御するために、充填作業の開始後およびリザーバ内の充填レベルセンサの反応後に開放された第1の開放状態の制御可能弁(HC1)を閉止するように構成されており、装置より高い所に位置する充填液コンテナからの充填液は、重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入し、前進してリザーバの下端に位置する前記送血ポンプの中に流入し、次いで前進してフィルタ内に流入する、システム。
[付記47]閉止された第1の制御可能弁(HC1)およびそれゆえ閉止された空気抜きラインならびにフィルタ出口にある充填液によって、入って来る充填液の流れの挙動を鈍らせる空気クッションがフィルタ内に作出されるか、または、フィルタの緩慢な充填が入口側から生じてこのフィルタは部分的にのみ充填され、かつフィルタ膜の上部は充填液によって湿らないままであり、よってさらなる充填および空気抜き作業に関して空気浸透性のままであるように第1の速度が選択されるか、のうち少なくともいずれかである、付記46に記載のシステム。
[付記48]付記37乃至45のいずれか1項に記載の体外血液処理用の装置の全自動の充填および空気抜きを行うための制御ユニットを備えた、付記37乃至45のいずれか1項に記載の装置を含んでいる体外血液処理のためのシステムであって、制御ユニットは、リザーバ内の充填液が下側充填レベルセンサによって検出されると第5の制御可能弁(HC5)を閉止するように構成され、その結果、第5の制御可能弁(HC5)によって、投液口とリザーバとの間の静脈接続は分離され、充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス経由で動脈フィルタへ流れ、加わる圧力によって、フィルタは出口側から重力によって逆行方式で充填される、システム。
[付記49]制御ユニットは、空気抜き作業を記録し読取り可能な形態で文書化するように構成され、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応ならびに圧力および流量から選択される少なくとも一つが記憶ユニットに保存される、付記47乃至48のいずれか1項に記載のシステム。
[付記50]体外血液処理用の装置内に、システム内の空気を検出するように配置された気泡センサを備え、制御ユニットは、気泡が検出されると、制御可能弁(QAHC)テーブルセットのスイッチを切るように構成されており、第4の制御可能弁(HC4)は再開し、システム内の空気はリザーバを経由して追い出される、付記47乃至49のいずれか1項に記載のシステム。
[付記51]空気抜き作業は輸送の間に実行可能であるか、または、
制御ユニットは、空気抜きを全自動で実行し、かつ空気抜き作業の開始後には空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスを自動的に実行し、かつ開始後に第3の制御可能弁(HC3)を介して投液ラインを開放するようになされ、それゆえ第2の制御可能弁(HC2)、第4の制御可能弁(HC4)および急動ホースクランプ(QAHC)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放されるか、
のうち少なくともいずれかである、付記47乃至50のいずれか1項に記載のシステム。
[付記52]患者に取り付けられていないシステムにおいて付記37乃至45のいずれか1項に記載の体外血液処理用の装置の充填および空気抜きを制御するための、コンピュータユニットで実行するコンピュータプログラムであって、装置より高い所に位置する充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する前記送血ポンプの中に流入することと、フィルタの空気抜きラインの第1の制御可能弁(HC1)を制御するためのコードセグメントであって、この制御可能弁が開放され、そしてリザーバの上側充填レベルセンサからの反応後に閉止されるコードセグメントを備えることと、を特徴とするコンピュータプログラム。
[付記53]患者に取り付けられていないシステムにおいて付記37乃至45のいずれか1項に記載の体外血液処理用の装置の充填および空気抜きを制御するための、コンピュータユニットで実行するコンピュータプログラムであって、装置より高い所に位置する充填液コンテナからの充填液は重力によって装置の静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する前記送血ポンプの中に流入し、前記送血ポンプはリザーバの下側充填レベルセンサより下方に位置しており、リザーバ内の充填液が下側充填レベルセンサによって検出されると、第5の制御可能弁(HC5)はコードセグメントにより閉止され、その結果、第5の制御可能弁(HC5)によって、投液口とリザーバとの間の静脈接続は分離され、充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス経由で動脈フィルタへと流れ、加わる圧力によって、フィルタは出口側から重力によって逆行方式で充填されることを特徴とする、コンピュータプログラム。
[付記54]体外血液処理用の装置であって、
支持構造物と、
送血ポンプを備えた血液循環システムと、
上面を備えた人工肺と、
上面を備えたフィルタと、
上側充填レベルセンサおよび最大充填レベルを備えるリザーバと
からなり、
前記送血ポンプ、人工肺、フィルタ、およびリザーバは、前記装置が作動位置にあるときの前記支持構造物の中で、互いに対して水平な位置に配置されており、
人工肺の上面はフィルタの上面より下方かまたは同じ高さに位置し、
前記送血ポンプの液体運搬部は前記リザーバの前記上側充填レベルセンサの水平位置より下方でかつリザーバの最大充填レベルより下方に位置し、
フィルタの上面はリザーバの前記上側充填レベルセンサよりも高い位置にある、体外血液処理用の装置。
[付記55]フィルタは上面に取り付けられた空気抜きラインを有し、該空気抜きラインの取り付け場所は前記上側充填レベルセンサよりも高い位置にある、付記54に記載の装置。
[付記56]第1の制御可能弁がフィルタの空気抜きラインに配置され、装置の制御ユニットは、前記上側充填レベルセンサの反応後に第1の制御可能弁が少なくとも部分的に閉止されるように構成される、付記55に記載の装置。
[付記57]リザーバは下端縁を有し、前記送血ポンプはリザーバの下端縁のレベルより下方にあるかまたはリザーバの下3分の1の高さにある、付記54に記載の装置。
[付記58]前記送血ポンプは遠心ポンプであり、上を向いた接線方向出口を有する、付記54に記載の装置。
[付記59]前記接線方向出口は、直角位置から時計回りに最大10度および反時計回りに最大20度回転される、付記58に記載の装置。
[付記60]前記送血ポンプは軸方向の入口を有し、作動位置において、上を向いた接線方向出口および軸方向の入口を通して重力によって充填液で充填されうるように配向される、付記58に記載の装置。
[付記61]リザーバ内の液位をモニタリングするための下方レベルセンサをさらに備える、付記54に記載の装置。
[付記62]投液口およびリザーバと、リザーバ、フィルタおよび人工肺より高い所にある充填液の供給地点とを接続している静脈ラインにホースクランプをさらに備える、付記54に記載の装置。
[付記63]付記57に記載の体外血液処理用装置を備え、かつ該装置の全自動の充填および空気抜きを行うための制御ユニットをさらに備える、体外血液処理のための医療用システムであって、該制御ユニットは、フィルタの充填を制御するために、充填作業の開始後およびリザーバ内の上側充填レベルセンサからの信号に反応してフィルタの空気抜きラインの開放状態の制御可能弁を閉止するように構成されている、医療用システム。
[付記64]閉止された第1の制御可能弁によって、入って来る充填液の流れを鈍らせる空気クッションがフィルタ内に作出されるか、または、フィルタの緩慢な充填がフィルタの入口側から生じ、該フィルタは部分的にのみ充填され、フィルタ膜の上部は充填液によって湿らないままであり、よってさらなる充填および空気抜き作業に関して空気浸透性のままであるように第1のポンプ速度が選択されるか、のうち少なくともいずれかである、付記63に記載の医療用システム。
[付記65]付記54に記載の体外血液処理用装置を備え、かつ該装置の全自動の充填および空気抜きを行うための制御ユニットをさらに備える、体外血液処理のための医療用システムであって、
該制御ユニットは、リザーバ内の充填液が下側充填レベルセンサによって検出されると制御可能弁を閉止するように構成され、その結果、該制御可能弁によって、投液口とリザーバとの間の静脈接続は分離され、充填液は静脈ラインのみを通ってバイパス経由で動脈フィルタへ流れ、加わる圧力によって、フィルタは出口側から重力によって逆行方式で充填される、医療用システム。
[付記66]制御ユニットは、充填作業を、制御可能弁の指標となる位置、リザーバの充填レベル、スイッチを入れる時間およびスイッチを切る時間、気泡センサの反応、圧力および流量のうち少なくともいずれかによって記録および保存するように、かつ前記作業を読取り可能な形態で文書化するように構成されている、付記63に記載の医療用システム。
[付記67]体外血液処理用装置内に、システム内の空気を検出するように配置された気泡センサを備え、制御ユニットは、気泡が検出されると、制御可能弁(QAHC)テーブルセットのスイッチを切るように構成されており、第4の制御可能弁(HC4)は再開し、システム内の空気はリザーバを経由して追い出される、付記46乃至49のいずれか1項に記載のシステム。
[付記68]空気抜き作業は輸送の間に実行可能であるか、または、
制御ユニットは、空気抜きを全自動で実行し、かつ空気抜き作業の開始後には空気抜き作業が完了するまで全てのシーケンスを自動的に実行し、かつ開始後に第3の制御可能弁(HC3)を介して投液ラインを開放するようになされ、それゆえ第2の制御可能弁(HC2)、第4の制御可能弁(HC4)および急動ホースクランプ(QAHC)ならびにホースクランプ機能を備えたローラポンプ(39)も開放されるか、
のうち少なくともいずれかである、付記46乃至50のいずれか1項に記載のシステム。
[付記69]患者に取り付けられていないシステムにおいて付記37乃至45のいずれか1項に記載の体外血液処理用装置の充填および空気抜きを制御するための、コンピュータユニットで実行するコンピュータプログラムであって、装置より高い所に位置する充填液コンテナからの充填液は重力によってシステムの静脈側を介してリザーバ内に流入しそして前進してリザーバの下端に位置する前記送血ポンプの中に流入することと、フィルタの空気抜きラインの第1の制御可能弁(HC1)を制御するためのコードセグメントであって、この制御可能弁が開放され、そしてリザーバの上側充填レベルセンサからの反応後に閉止されるコードセグメントを備えることと、を特徴とするコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0111】
5:フィルタ
51:出口
52:フィルタエレメント
53:フィルタ処理前側
54:フィルタ処理後側
55:空気抜き接続部
56:フィルタの上面
6:送血ポンプ
61:軸方向の入口
62:接線方向出口
1:患者モジュール
1a:患者モジュール
10:上側充填レベルセンサ
100:上側充填レベルセンサの位置
11:下側充填レベルセンサ
110:下側充填レベルセンサの位置
12:静脈ラインからリザーバ2への入口
13:リザーバの上部
15:静脈ライン
17:投液ライン
18:人工肺の空気抜きライン
2:リザーバ
3:人工肺
20:急動ホースクランプ QAHC
21:ホースクランプ1 HC1
22:ホースクランプ2 HC2
23:ホースクランプ3 HC3
24:ホースクランプ4 HC4
25:ホースクランプ5 HC5
28:リザーバ2のスクリーン
30:気泡センサ
31:流量センサ
32a:コネクタ
32b:コネクタ
33:テーブルセット
34:圧力計
35:空気抜きライン
36:収集バッグ
37:圧力計
38:圧力計
39:ローラポンプ
40:バイパス
42:動脈ライン
45:貯留コンテナ
200:方法1
210:方法のステップ
212:方法のステップ
220:方法1
230:方法のステップ
232:方法のステップ
300:記憶媒体
301:コンピュータプログラム
401:コンピュータプログラム
302:プロセッサ、制御ユニット
310:プログラムセグメント
410:プログラムセグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b