特許第5986102号(P5986102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986102マイクロエマルジョン及びマイクロエマルジョンを用いて作製されたフルオロポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986102
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】マイクロエマルジョン及びマイクロエマルジョンを用いて作製されたフルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/22 20060101AFI20160823BHJP
   C08F 14/18 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C08F2/22
   C08F14/18
【請求項の数】1
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2013-544681(P2013-544681)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2013-545877(P2013-545877A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2011064571
(87)【国際公開番号】WO2012082707
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/424,330
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】タツオ フクシ
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ ディー.ダールケ
(72)【発明者】
【氏名】デニス ドゥチェスン
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー エム.エー.グルータート
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル エー.ゲラ
(72)【発明者】
【氏名】ラリー エー.ラスト
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェイ.スコット
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ−ミン チウ
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−509244(JP,A)
【文献】 特表2011−503299(JP,A)
【文献】 特開2006−131588(JP,A)
【文献】 特表2008−545873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 14/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水と、
(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、
(c)(i)下式(IV):
【化1】
を有し、式中、X、X、及びXが独立して、F、Cl、及びCFから選択され、Rが独立して、H、I、Br、直鎖又は分枝鎖のアルキル、及び直鎖又は分枝鎖のフルオロアルキル基から選択され、所望によりヘテロ原子を含有し、R1が、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、−(CF−[O−(CF(CF)CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]−、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdが独立して、少なくとも1である、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化連結基であり、Mがカチオンであり、mが少なくとも2である化合物、
(ii)下式(II):
【化2】
を有し、式中、X、X、又はXが独立して、H、F、Cl、及びCFから選択され、R2が、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、−(CF−[O−(CF(CF)CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]−、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdが独立して、少なくとも1である、飽和又は不飽和及び置換又は非置換であってよく、所望によりヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖のフッ素化連結基であり、Gが、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ニトリル、ハロゲン化スルホニル、スルホン酸塩、イミダート、アミジン、アルコール、及びメルカプタンから選択され、nが少なくとも1である繰り返し単位を含む化合物
(iii)下式(VI):
【化3】
を有し、式中、X、X、及びXが独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つがHであり、R、−(CH−、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdは独立して、少なくとも1である連結基であり、Z及びZが独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Mがカチオンであり、pが0又は1であり、nが少なくとも2である繰り返し単位を含む化合物、及び
(iv)下式
【化4】
有し、式中、X、X、及びXが独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、R、−(CH−、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdは独立して、少なくとも1である連結基であり、Z及びZが独立して、Br、Cl、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Yが、−H、−Br、−COOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]q、飽和又は不飽和及び置換又は非置換であってよく、所望によりヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖のフッ素化基から選択され、Yが、−H、−Br、−COOM、−SOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]qから選択され、Z及びZが独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Mが有機カチオンであり、pが0又は1であり、mが少なくとも1であり、qが少なくとも1である繰り返し単位を含む化合物
からなる群より選択されるオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物と、
を含むマイクロエマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物を含有する組成物に由来するマイクロエマルジョン及びフッ素化モノマーの水性エマルジョン中の(共)重合プロセスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、即ちフッ素化主鎖を有するポリマーは、長く知られており、また耐熱性、耐化学性、耐候性、UV安定性等のいくつかの望ましい特性から、種々の用途に使用されてきた。種々のフルオロポリマーは、例えば、John Scheirs,Wiley Science 1997により編集される「Modern Fluoropolymers」に記載されている。広く知られている又は商業的に利用されているフルオロポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー(FEPポリマー)、ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(VDF)のターポリマー(いわゆる、THV)、並びにポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が挙げられる。商業的に使用されているフルオロポリマーとしてはまた、フルオロエラストマー及び熱可塑性フルオロポリマーも挙げられる。
【0003】
フルオロポリマーを生成するためのいくつかの方法が知られている。このような方法としては、懸濁重合、水性乳化重合、溶液重合、超臨界COを用いる重合、及び気相中における重合が挙げられる。フルオロモノマーの重合では、伝統的にモノマーが重合を開始するための反応開始剤並びに溶媒と共にケトルに添加され、水性乳化重合の場合は、乳化を安定させるために、重合が、水中及び典型的には界面活性剤の存在下で行われる。
【0004】
水性乳化重合は、通常、フッ素化界面活性剤の存在下で重合することを伴い、その界面活性剤は一般的に形成されるポリマー粒子の安定化のために用いられる。懸濁重合は一般に、界面活性剤を使用しないが、結果的に水性乳化重合の場合よりも実質的により大きなポリマー粒子をもたらす。したがって、懸濁重合の場合、ポリマー粒子は、すぐに沈殿するのに対して、乳化重合において得られた分散の場合は、一般に、長時間にわたって良好な安定性が得られる。界面活性剤を使用しない水性乳化重合は、一般的に、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のホモ−及びコポリマーを生成することが一般的に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳化剤を用いない重合が知られているにもかかわらず、界面活性剤の存在下における水性乳化重合プロセスは、高収量で安定なフルオロポリマー粒子分散体を得ることができるため、依然としてフルオロポリマーを生成するための望ましいプロセスである。乳化重合プロセスは、例えば、界面活性剤としてペルフルオロアルカン酸又はその塩等の様々なフッ素化界面活性剤を用いて行われている。ペルフルオロアルカン酸又はその塩は、高速の重合、フッ素化オレフィンのコモノマーとの良好な共重合特性、得られた分散体の小粒子径が達成され得ること、良好な重合収量、即ち、高収量の固体が生成され得ること、良好な分散安定性等の多種多様の望ましい特性を提供するため、好ましい界面活性剤であった。しかしながら、環境問題により、ペルフルオロアルカン酸又はその塩は、最近、例えば、直鎖及び分枝鎖の部分的又は完全フッ素化ポリエーテル等の他のフッ素化界面活性剤で置き換えられた。しかしながら、ペルフルオロアルカン酸又はその塩を使用するとき、得られるものと同様の生成物の特徴を提供するために、ペルフルオロアルカン酸又はその塩よりも高収量で前述のフッ素化乳化剤が使用されなければならず、概ね、フルオロモノマーの水性乳化重合中、不活性ペルフルオロ化合物の添加を必要とする。
【0006】
重合率を増加させ、更に低いレベルで有効であり得る、より有効な界面活性剤が必要とされるが、これは、例えば、界面活性剤の回復システム等の製造原価を節約する。また、フルオロモノマーの水性乳化重合中、不活性フルオロ化合物の添加を必要としない界面活性剤を必要とする。また、界面活性剤の回復及び再利用装置及びプロセスの必要がない得られたフルオロポリマーの一部となる界面活性剤を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、水と、少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物及び/又は少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物と、を混合することにより得られるマイクロエマルジョンを提供する。本開示はまた、少なくとも1つのエチレン性不飽和のフッ素化モノマーの重合のためのそのようなマイクロエマルジョンの使用も提供する一方で、他の利益としては、高速の重合、フッ素化されたオレフィンのコモノマーとの良好な共重合特性、小粒子径の得られた分散体、良好な重合収量、即ち、高収量の固体が生成され得ること、及び良好な分散安定性等を得る。
【0008】
本開示の一態様に従って、(a)水と、(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、(c)少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物と、を含む、組成物に由来するマイクロエマルジョンが提供される。
【0009】
別の態様では、本開示は、(a)水と、(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物と、を含む、組成物に由来するマイクロエマルジョンを提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、これらのマイクロエマルジョンの水性乳化重合を含むフルオロポリマーを作製するための方法を提供する。
【0011】
更に別の態様では、本開示は、これらのマイクロエマルジョンに由来するフルオロポリマーを提供する。
【0012】
上記の概要は、各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。他の特徴、目的、及び利点は、説明文及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では以下の用語を使用する。
【0014】
「a」、「an」、及び「the」は、互換可能なものとして使用され、1つ以上を意味し、「及び/又は」は、一方又は両方の記述された事例が起こる場合があることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。本明細書においては更に、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上のすべての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0015】
「オリゴマー」は、20,000g/mol未満、15,000g/mol未満、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、2,000g/mol未満、1,000g/mol未満、及び500g/mol未満を意味する。
【0016】
「連結基」は、二価連結基を意味する。一実施形態では、連結基は、少なくとも1個の炭素原子(いくつかの実施形態では、少なくとも2、4、8、10、又は更に20個の炭素原子)を含む。連結基は、飽和又は不飽和、置換又は非置換であり得る直鎖又は分枝鎖の環式又は非環式の構造であり得、所望により、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する、及び/又は、所望により、エステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、炭酸塩、ウレタン、尿素、及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含有する。別の実施形態では、連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄、又は窒素等のカテナリーヘテロ原子である。
【0017】
「高度にフッ素化された」は、所望により、それから由来されるオリゴマー上に塩素を含有し得る部分的にフッ素化された末端基で完全フッ素化された反復モノマー単位を意味する。例えば、完全フッ素化された反応開始剤が使用されるとき、完全フッ素化されたスルフィン酸オリゴマーが産生される。別例では、有機反応開始剤が使用されるとき、水素原子が、(上記に示される)式Iの「R」末端基に存在する。
【0018】
「スルフィン酸塩」は、スルフィン酸及びスルフィン酸塩の両方を示すために使用される。また本明細書においては、「フルオロスルフィン酸塩」及び「フッ素化されたスルフィン酸塩」が、少なくとも1つのフッ素原子を含有するスルフィン酸及びスルフィン酸塩を示すために互換可能に使用される。
【0019】
「重合性」は、フルオロスルフィン酸化合物が、完全フッ素化されたビニルエーテルモノマーのフルオロスルフィン酸化合物であり、例えば、米国特許第5,639,837号(Farnhamら)の実施例5に開示されるフルオロスルフィン酸塩のように、4位において、第二炭素がない。
【0020】
また、本明細書に使用される
【0021】
【化1】
【0022】
は、オリゴマー等の化合物において、セグメントX(例えば、モノマー)を指す。この場合、「n」は、セグメントXが化合物において反復される回数を指し、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーのいずれかの配置を含み得る。例えば、
【0023】
【化2】
【0024】
において、化合物は、例えば、
−XXXYYY−並びに−XYXYXY−又は−YXXYXY−のブロックコポリマー及びランダムコポリマーの配置を含む。
【0025】
水性乳剤中のフッ素化モノマーの(共)重合のためのプロセスは、Giannettiらの米国特許第4,864,006号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において説明され、Viscaらの米国特許第4,990,283号によるペルフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルジョン(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が反応媒質に添加される。Abuslemeらの米国特許第5,959,026号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、乳剤中の従来の(共)重合プロセスについて、マイクロエマルジョンの使用は、より大きな生産性、反応を実行する際及び最終生成物の特性におけるより良好な再現性、及び反応動力のより容易な制御等の様々な利点を提供する。理論に拘束されることなく、これらの利点は、主として、マイクロエマルジョンと従来の(又はマクロエマルジョン)乳剤との違いによるものであると考えられる。マイクロエマルジョンは、水相が油相(油中水系の場合)中又はその逆(水中油系の場合)に分散される系であり、分散された相は、例えば、200nmより小さい直径を有するような非常に小さい滴の形態である。マイクロエマルジョンは、透明かつ巨視的な均一の溶液として現れる。マクロエマルジョンは、乳白色の態様を有する熱力学的に不安定な系であるため、分散した相は、(ほぼ数ミクロン以上の)高い直径の数滴の形態である。マクロエマルジョンを得るために、高い機械的エネルギーを供給することが必要であり、得られた系は、エージング又は遠心分離により、2つの異なる相において混在しない傾向がある。
【0026】
本開示は、水、少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマー、及び少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物、及び/又は少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物を含有する組成物に由来するマイクロエマルジョンに関する。本発明において有用なオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物及び/又は少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、部分的にフッ素化又は高度にフッ素化され得る。本開示において有用なオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物は、以下の式(IV)による高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーを含む。
【0027】
【化3】
【0028】
いくつかの実施形態では、X、X、及びXは独立して、F、Cl及びCFから選択される。Rは独立して、水素、ヨウ素、臭素、及び所望により直鎖又は分枝鎖のアルキル、及び直鎖又は分枝鎖のフルオロアルキル基から選択され、所望によりカテナリーヘテロ原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は最大20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、R1は直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化連結基である。この連結基は、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、Yはハロゲン化物である。本開示において有用なハロゲン化物は、フッ素及び塩素を含む。Mは、カチオンである。本開示において有用な例示のカチオンは、H、NH、PH、H、Na、Li、Cs、Ca+2、K、Mg+2、Zn+2、及びCu+2、並びに/又はN(CH、NH(CH、N(CHCH、NH(CHCH、NH(CH、((CHCHCHCH)P等が挙げられるが、これらに限定されない有機カチオン、並びにそれらの組み合わせを含む。本開示において有用な方法のために、mは、2又はそれ以上の任意の数から選択される。
【0030】
本開示において式(IV)による高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーは、以下の方法における工程:
(a)高度にフッ素化されたハロゲン化ビニルスルホニルを提供する工程と、
(b)反応開始剤を用いて高度にフッ素化されたハロゲン化ビニルスルホニルをオリゴマー化して、式(I)による高度にフッ素化されたオリゴマーのハロゲン化スルホニルを提供する工程と、
【0031】
【化4】
【0032】
c)高度にフッ素化されたオリゴマーのハロゲン化スルホニルを、式(IV)による高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーに還元する工程と、により調製することができ、
【0033】
【化5】
【0034】
、X、X、R、R1、Y、M及びmは、上に定義されたものと同じである。
【0035】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたハロゲン化ビニルスルホニルは、例えば、ペルフルオロビニルエーテルスルホニルフルオリド等のハロゲン化ペルフルオロビニルエーテルスルホニルである。本開示による例示のペルフルオロビニルエーテルスルホニルフルオリドとしては、
CF=CF−O−CFCF−SO
CF=CF−O−CFCF−SOCl
CF=CF−O−CFCFCF−SO
CF=CF−O−CFCFCF−SOCl
【0036】
【化6】
【0037】
CF=CF−O−CFCFCFCF−SO
CF=CF−O−CFCFCFCF−SOCl
CF=CF−O−CFCFCFCFCF−SO
CF=CF−O−CFCFCFCFCF−SOCl
CF=CF−O−CFCFCFCFCFCF−SO
CF=CF−O−CFCFCFCFCFCF−SOCl
【0038】
【化7】
【0039】
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SOCl
【0040】
【化8】
【0041】
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCFCF−SOCl
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCFCF−SO
CF=CF−O−[CFCF(CF)−O]−CFCFCFCF−SOCl
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたオリゴマーのスルフィン酸を調製するための方法はまた、工程(c)からの高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーを酸性化し、それから高度にフッ素化されたスルフィン酸オリゴマーを抽出する工程(d)もまた含む。いくつかの酸を、工程(d)に使用することができる。例示の酸は、硫酸、塩酸、及び他の強い鉱酸等、並びにこれらの組み合わせを含む。抽出は、例えば、更なる成分の添加を伴って、又は添加しない、真空除去及び/又は濾過を用いるような任意の公知の抽出技術を用いて実行され得る。例示の成分としては、アルコール、エーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、メタノールが好ましい。いくつかの実施形態では、メチル−t−ブチルエーテルが好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたオリゴマーのスルフィン酸を調製するための方法はまた、その塩を形成するために、工程(d)から高度にフッ素化されたオリゴマーのスルフィン酸を変換する工程(e)も含む。いくつかの実施形態では、工程(e)は、有機塩基を用いて実行される。いくつかの実施形態では、工程(e)は、無機塩基を用いて実行される。いくつかの実施形態では、水酸化アンモニウムが好ましい。いくつかの実施形態では、水酸化カリウムが好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたオリゴマーのスルフィン酸を調製するための方法はまた、スルホン酸塩が高度にフッ素化されたオリゴマーのハロゲン化スルホニルの部分的な還元によって生成され、続いて、残りのハロゲン化スルホニルのスルホン酸塩への加水分解も含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたオリゴマーのスルフィン酸を調製するための方法はまた、式(II)による構造を提供するために高度にフッ素化されたビニルエーテルを用いた式(I)による高度にフッ素化されたオリゴマーのハロゲン化スルホニルの共重合も含む。
【0046】
【化9】
【0047】
いくつかの実施形態では、X、X、又はXは独立して、H、F、Cl及びCFから選択される。いくつかの実施形態では、R2は、直鎖又は分枝鎖フッ素化連結基であり、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む。この連結基は、飽和又は不飽和及び置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む。
【0048】
Gは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、官能基、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキル基は、最大30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルコキシ基は、最大30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、Gが官能基であるとき、この官能基は、カルボン酸及びその誘導体、ニトリル、ハロゲン化スルホニル、スルホン酸塩、イミダート、アミジン、アルコール、メルカプタン、ヨウ素、臭素、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0049】
変数nは、少なくとも1である。本開示において有用な方法については、X、X、X、G及びR2は、式(II)による高度にフッ素化されたビニルエーテルが、式(I)による高度にフッ素化されたオリゴマーのハロゲン化スルホニルとは異なるように選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(II)による高度にフッ素化されたビニルエーテルは、例えば、高度にフッ素化されたビニルエーテルのアルコール誘導体を生成するために、工程(c)において還元される。例えば、式(II)中のGは、カルボニル基であるように選択されるとき、式(II)による高度にフッ素化されたビニルエーテルは、そのアルコール誘導体を生成するために工程(c)において還元される。
【0051】
式(I)中のR1及び式(II)中のR2は、直鎖又は分枝鎖のフッ素化された連結基である。いくつかの実施形態では、R1及びR2は独立して、−(CF−、−O(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]、−(CF−[O−(CF(CF)CF、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdは独立して、少なくとも1である。本開示においてR1及びR2として有用な例示の直鎖及び分枝鎖の連結基としては、−CFCF−、−CFCFCFCF−、−CFCF(CF)−O−CFCF−が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、高度にフッ素化されたスルフィン酸を調製するための方法はまた、上に示される工程(b)において、式(III)による構造を提供するために、エチレン性不飽和で重合性モノマーのモノマーを用いて式(I)による高度にフッ素化されたハロゲン化ビニルスルホニルの共重合も含み得る。
【0053】
【化10】
【0054】
いくつかの実施形態では、Zは、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ素化アルキルビニルエーテル、フッ素化アルコキシビニルエーテル、官能基を含有するフッ素化ビニルエーテル、ペルフルオロ−1,3−ジオキソール等、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来する。変数pは、少なくとも1である。
【0055】
いくつかの実施形態では、式(III)によるエチレン性不飽和のモノマーは、式(I)による高度にフッ素化されたハロゲン化ビニルスルホニル及び式(II)による高度にフッ素化されたビニルエーテルで共重合化され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、Zは、官能基を含有するエチレン性不飽和のモノマーであり、この官能基は、臭素及び/又はヨウ素から選択される。官能基を含有する例示のエチレン性不飽和のモノマーは、式(V):
CX=CX(Z)
の1つ以上の化合物に由来する。いくつかの実施形態では、それぞれのXは独立して、水素又はフッ素から選択される。いくつかの実施形態では、Zは、ヨウ素、臭素又はR−Uから選択され、式中、Uは、ヨウ素又は臭素から選択され、Rは、所望により、酸素原子を含有する完全フッ素化又は部分的に完全フッ素化されたアルキレン基である。いくつかの実施形態では、非フッ素化ブロモ−又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。官能基を含有する例示のエチレン性不飽和のモノマーとしては、
CH=CHI
CF=CHI
CF=CFI
CH=CHCH
CF=CFCF
CH=CHCFCF
CH=CHCFCFCHCH
CH=CH(CF
CH=CH(CFCHCH
CH=CH(CF
CH=CH(CFCHCH
CF=CFCHCH
CF=CFCFCF
CF=CFOCFCF
CF=CFOCFCFCHCH
CF=CFOCFCFCF CF
CF=CFOCFCFCF
CF=CFOCFCFCFCHCH
CF=CFOCFCFCH
CF=CFOCFCFCFCH
CF=CFCFOCHCH
CF=CFO(CF−OCFCF
CH=CHBr
CF=CHBr
CF=CFBr
CH=CHCHBr
CF=CFCFBr
CH=CHCFCFBr
CF=CFOCFCFBr
CF=CFCl
CF=CFCFCl
並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、オリゴマー化の工程(b)は、溶媒の不在下で行われる。つまり、溶媒は、工程(b)において、オリゴマー化又は共オリゴマー化された混合物に添加されない。いくつかの実施形態では、オリゴマー化の工程(b)は、溶媒の存在下で行われる。本開示において有用な溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロエーテル、クロロフルオロエーテル、クロロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、及び水等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
溶媒は、反応中、十分な攪拌及び熱伝達を可能にするのに十分な量で存在すべきである。いくつかの実施形態では、溶媒は、反応の完了後、除去され得る。
【0059】
いくつかの従来の方法を使用して、抽出、減圧下の蒸留、カラムクロマトグラフィー、及び任意の他の分離方法のような溶媒を除去してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、反応開始剤が使用される。例えば、過硫酸塩、過酸化物(例えば、ジアシル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ヒドロペルオキシド等の有機過酸化物)、光照射、アゾ化合物等の任意の従来の反応開始剤が使用され得る。いくつかの実施形態では、好ましい反応開始剤は、ペルオキシ化合物から選択される。過酸化水素、過酸化アシル、例えば、過酸化ジアセチル、過酸化ジプロピオニル、過酸化ジブチリル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ベンゾイルアセチル、過酸化ジラウノイル、過酸化ジコハク酸、又は過酸化ジグルタル酸等が、本明細書では言及されるが、例としてのみであり得る。加えて、過酢酸等の水溶性過酸、及びそれらの水溶性塩(具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム塩、若しくはカリウム塩)又はそれらのエステル、例えば、tert−ブチルペロキシアセテート及びtert−ブチルペルオキシピバレートが言及され得る。水溶性塩、特にペルオキソモノ−及びペルオキソジスルフィン酸塩、過リン酸塩、過ホウ酸塩及び過炭酸塩等の他の過酸のアンモニウム、カリウム及びナトリウム塩もまた使用され得る。ペルフルオロアシルペロキシド又はΩ−ヒドロペルフルオロアシルペロキシドが更に好適である。本開示において有用なアゾ化合物は、アゾイソブチロニトリル及びアゾ−2−シアノ吉草酸等を含む。いくつかの実施形態では、ある水溶性アゾ化合物が、好ましい。10℃〜50℃の温度で十分な範囲までラジカルを生成する従来の活性酸化還元系はまた、とりわけ、低温の範囲での反応開始剤としても使用され得る。例示の酸化還元系は、亜硫酸水素塩と、又は二亜硫酸塩若しくはホルムアルデヒドとのその添加生成物と、チオ硫酸と、例えばヒドラジン又はアゾジカルボキサミドとのジイミンを解放する化合物と、水溶性ペルオキシ化合物、好ましくはペルオキソ二硫酸塩の組み合わせを含む。塩、好ましくは、アルカリ金属塩、特に、言及される化合物のアンモニウム塩がまた、酸化還元の組み合わせに存在する。オリゴマー化が有機溶媒で生じる場合、それぞれの場合において、上述の触媒のものは、関与する溶媒中に十分溶解するように選択されなければならない。
【0061】
このプロセスでは、全量の反応開始剤は、工程(b)におけるオリゴマー反応の開始時に添加することができる。しかしながら、工程(b)におけるオリゴマー化の進行中に継続的に全量の反応開始剤において、すすぐために比較的大きなバッチにおいて好都合であり得る。同様に、反応開始剤の量の一部は、代替として、開始時に添加することができ、1つ以上のバッチの残部は、後ですすぐことができる。コアクチベータ、即ち、例えば、鉄及び銀の可溶性塩の添加は、特に、酸化還元系が反応開始剤として使用されるときに、有利であり得る。
【0062】
本開示において有用な還元剤としては、例えば、以下に列挙されるもの等の還元剤として一般に知られるものが挙げられる。例示の還元剤には、MeLH等の金属水素化物を含み、式中、Meはアルカリ金属であり、Lは、アルミニウム又はホウ素及びMeHのいずれかであり、Meは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のいずれかであり、xは1又は2である。これらの種類の還元剤は、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化バリウム、水素化カルシウム等を含む。いくつかの実施形態では、好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0063】
いくつかの実施形態では、有用な還元剤は、還元無機酸を含む。これらの種類の還元剤は、例えば、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、ヒドロリン酸、硫化水素酸、亜ヒ酸、亜リン酸、亜硫酸、亜硝酸、ギ酸、シュウ酸等を含む。いくつかの実施形態では、有用な還元剤は、金属と酸の混合物を含む。これらの種類の還元剤において有用な金属は、例えば、錫、鉄、亜鉛、亜鉛のアマルガム等を含む。これらの種類の還元剤において有用な酸は、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、有用な還元剤は、例えば、ブチルリチウム、グリニャール試薬(1〜8個のアルキル炭素原子等)、ハロゲン化アリールマグネシウム、トリエチルアルミニウム、トリソブチルアルミニウム、ナトリウムベンゼン、ナトリウムナフタレン等の有機金属化合物を含む。いくつかの実施形態では、低原子価を有する金属化合物は、例えば、塩化第一スズ、硫酸第一鉄、三塩化チタン、塩化第一鉄、硫酸第一スズ、硫化第一鉄、硫化第一スズ、臭化第一鉄、臭化第一スズ、水酸化第一鉄等の有用な還元剤である。いくつかの実施形態では、無機酸の還元塩及び同一の化合物は、有用な還元剤である。これらの種類の還元剤は、例えば、ヨウ化物、臭化物、硫化物、亜リン酸塩、亜硫酸塩、亜ヒ酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硝酸塩、ギ酸塩等を含む。金属、水、水蒸気、アルコール、又はアルカリの混合物はまた、本開示において還元剤としても使用され得る。また、例えば、トリエタノールアミン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の還元有機化合物、及び例えば、一酸化炭素、二酸化硫黄、ヨウ化水素、臭化水素、硫化水素等の還元ガスも還元剤として有用である。いくつかの実施形態では、本開示において有用な還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化アルミニウムリチウム、NHNH、KSO、NaSO、NaHSO、及びKHSOのうちの少なくとも1つから選択される。
【0065】
本開示において有用なオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物には、式(VI):
【0066】
【化11】
【0067】
による部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーが含まれ、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つはHであり、Rは連結基であり、Z及びZは独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Mはカチオンであり、pは0又は1であり、nは少なくとも2である。
【0068】
いくつかの実施形態では、部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーには、
【0069】
【化12】
【0070】
が更に含まれ、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、Rは連結基であり、Z及びZは独立して、Br、Cl、F、CF、及びペルフルオロアルキルビニル基から選択され、Yは、−H、−Br、−COOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]qから選択され、Yは、−H、−Br、−COOM、−SOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]qから選択され、Mは有機カチオンであり、pは0又は1であり、mは少なくとも1であり、qは少なくとも1である。
【0071】
いくつかの実施形態では、部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーを作製するための方法が説明され、本方法は、スルフィン化系を用いてハロフルオロアルケンモノマー、CX=CX−(R−CZ−Yをオリゴマー化して、式(I)の組成物を生成することを含み、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、X、X、及びXのうちの少なくとも1つはHであり、Rは連結基であり、Z及びZは独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1であり、YはI、Br、及びClから選択される。
【0072】
エチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、式(VII):
CX=CX−O−R−CFX−SO
による高度にフッ素化されたビニルエーテルスルフィン酸塩から選択され、式中、X、X、及びXは独立して、F、Cl、及びCFから選択され、XはFであるか、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化アルキル基であり、Rは、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化連結基であり、Mはカチオンである。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(VII)中のR−CFX基は、−CFCF−、−CFCFCFCF−、−CFCFOCFCF−、−CFCF(CF)−O−CFCF−から選択される。いくつかの実施形態では、式(VII)中のX、X、及びXは、フッ素である。いくつかの実施形態では、本開示において有用な例示の高度にフッ素化されたビニルエーテルスルフィン酸塩は、
CF=CF−O−C−SO
CF=CF−O−C−O−CF
CF=CF−O−CFCF(CF)−OC−SOFを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、式(VII)による高度にフッ素化されたビニルエーテルスルフィン酸塩は、米国特許第4,544,458号(Grotら)及び日本特許第52−24176号(Sekoら)に報告されるように、ハロゲン化フルオロスルホニルポリマー側鎖の還元、及び脱ハロゲン化、及びハロゲン化アルキルポリマーの側鎖のスルフィン化等の方法を使用することによって合成される。
【0075】
本開示において有用なエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物はまた、式(VIII):
CX=CX−(R−CZ1 Z2−SOM(VIII)
に示されるものも含み、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つはHであり、R1は連結基であり、Z1及びZ2は独立して、F、Cl、I、Br、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1であり、Mはカチオンである。
【0076】
は、非フッ素化されても(水素はフッ素原子により置き換えられない)、部分的にフッ素化されても(水素のいくつかは、フッ素原子により置き換えられる)、又は完全フッ素化されても(水素のすべてが、フッ素原子により置き換えられる)よい。いくつかの実施形態では、水素原子は、例えば、塩素、臭素、又はヨウ素原子等のフッ素以外のハロゲン、又はこれらの組み合わせと置き換えられる。Rは、二重結合を含んでも、含まなくてもよい。Rは、置換又は非置換、直鎖又は分枝鎖、環式又は非環式であってもよく、所望により、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含み得る。
【0077】
一実施形態では、Rは、−(CH−、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdは独立して、少なくとも1、2、3、4、10、20等である。
【0078】
一実施形態では、Rは、完全フッ素化基、所望により、ヘテロ原子を含み、X、X、及びXはすべて、Hである。
【0079】
別の実施形態では、Rは、酸素、硫黄、又は窒素等のカテナリーヘテロ原子である。
【0080】
式(VIII)中のMは、H、無機カチオン(Na、Li、Cs、Ca+2、K、NH、Mg+2、Zn+2、及びCu+2が挙げられるが、これらに限定されない)、並びに/又はN(CH、NH(CH、N(CHCH、NH(CHCH、NH(CH、及び((CHCHCHCH)Pが挙げられるが、これらに限定されない有機カチオンを含み得る。
【0081】
式(VIII)による例示のモノマーには、CH=CH−(CF−SOH、CH=CF−(CF−SOH、CH=CH−(CF−SOH、CH=CH−(CF−SOH、CH=CH−CF−SOH、CH=CH−(CF−SONH、CH=CH−(CF−SONH、CH=CH−(CF−SONH、CH=CH−CF−SONH、CH=CH−(CF−SONa、CH=CH−(CF−SONa、CH=CH−(CF−SONa、CH=CH−CF−SONa、CH=CH−(CF−SOK、CH=CH−(CF−SOK、CH=CH−(CF−SOK、CH=CH−CF−SOK、CH=CH−(CF−SOLi、CH=CH−(CF−SO2Li、CH=CH−(CF−SOLi、CH=CH−CF−SOLi、CH=CH−(CF−O(CF−SOH、CH=CH−(CFO(CF−SOH、CH=CH−(CF−O(CFSONH、CH=CH−(CF−O(CFSONH、CH=CH−(CF−O(CFSONa、CH=CH−(CF−O(CFSONa、CH=CH−(CF−O(CFSOK、CH=CH−(CF−O(CFSO2K、CH=CH−(CF−O(CFSOLi、及びCH=CH−(CF−O(CFSOLiが挙げられる。
【0082】
一実施形態では、式(VIII)によるモノマーには、
CH=CH−(CF−SOM (VIIIa)が含まれ、
式中、Mはカチオンであり、nは少なくとも1、2、4、6、10、20等である。別の実施形態では、式(VIII)によるモノマーには、
CH=CH−−(CFO(CF−SOM(VIIIb)(式中、Mは上記に定義される)が含まれる。
【0083】
本開示では、式(VIII)によるモノマーは、以下に開示される方法I又は方法IIにより調製され得る。
【0084】
式(VIII)のモノマー前駆体は、式(IX):
CX−CX−(R−CZ1Z2−SOM (IX)
に示され、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF又はCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つは、Hであり、X及びXは独立して、H、F、Cl、Br及びIから選択され、Rは連結基であり、Z1及びZ2は独立して、F、Cl、I、Br、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1であり、Mは、F及びカチオンから選択される。
【0085】
は、非フッ素化、部分的にフッ素化、又は完全フッ素化され得る。いくつかの実施形態では、水素原子は、例えば、塩素、臭素、又はヨウ素原子等のフッ素以外のハロゲン、又はこれらの組み合わせと置き換えられる。Rは、二重結合を含んでも、含まなくてもよい。Rは、置換又は非置換、直鎖又は分枝鎖、環式又は非環式であってもよく、所望により、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、Rは、完全フッ素化基であり、所望により、ヘテロ原子を含み、X、X、及びXはすべて、Hである。いくつかの実施形態では、Rは、酸素、硫黄、又は窒素等のカテナリーヘテロ原子である。
【0087】
式(VIII)中のMは、F、H、無機カチオン(Na、Li、Cs、Ca+2、K、NH、Mg+2、Zn+2、及びCu+2が挙げられるが、これらに限定されない)、並びに/又はN(CH、NH(CH、N(CHCH、NH(CHCH、NH(CH、及び((CHCHCHCH)Pが挙げられるが、これらに限定されない有機カチオンを含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(VIII)によるモノマーには、
XCHCH−(CF−SOM (VIIIc)
が含まれ、式中、Mは上記のように定義され、Xは、H、F、Cl、Br、I、CF又はCHから選択され、nは、少なくとも1、2、4、6、10、20等である。いくつかの実施形態では、式VIIIによるモノマーには、
XCH−CH−−(CFO(CF−SOM (VIIId)
が含まれ、式中、MはF又はカチオンであり、XはF、Cl、Br、及びIから選択される。
【0089】
式(IX)に示される前駆体は、以下の方法IIに開示されるように、プロセス中に得られる。
【0090】
方法Iでは、末端アルケン化合物及びハロフルオロスルホニルフッ化物は一緒に反応させて、ハロヒドロフルオロスルホニルフッ化物を生成する。次いで、ハロヒドロフルオロスルホニルフッ化物は、脱ハロ水素化して、アルケンフルオロスルホニルフッ化物を生成する。次いで、アルケンフルオロスルホニルフッ化物を還元して、アルケンフルオロスルフィン酸又は塩を生成する。例示の反応スキームを以下に示す。
【0091】
【化13】
【0092】
本開示の末端アルケン化合物は、炭素二重結合から少なくとも1つの水素を有する末端炭素−炭素二重結合を含む。例示の末端アルケン化合物には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブロモエチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、CH=CHCl、CFOCH=CH、COCH=CH、及びCHOCH=CHが含まれる。
【0093】
本開示のハロフルオロスルホニルフルオリドは、
【0094】
【化14】
【0095】
である。ハロフルオロスルホニルフルオリドは、一般式:X(R−CZ1Z2−SOFの化合物を含み、式中、Xは、Br、I、及びClから選択され、Rは、上記の連結基であり、Z1及びZ2は独立して、F、Cl、Br、CF及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1である。
【0096】
例示のハロフルオロスルホニルフルオリドとしては、ICFCF−O−CFCFSOF、ICFCFCFCF−O−CFCFSOF、I(CFSOF、I(CFSOF、I(CFSOF、I(CFSOF、BrCFSOF、BrCFCF−O−CFCFSOF、BrCFCFCFCF−O−CFCFSOF、Br(CFSOF、Br(CFSOF、Br(CFSOF、Br(CFSOF、ICFSOF、及びBrCFSOFが挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの反応は、光照射により、又は反応開始剤の存在下で、又はそれらの組み合わせにより、熱的に開始される。
【0098】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの反応は、少なくとも10℃、20℃、25℃、30℃、又は更には35℃、せいぜい90℃、100℃、150℃、200℃、又は更には220℃の間の温度で行われ得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの反応は、光照射、例えば、紫外線放射を用いて行われ得る。
【0100】
反応開始剤が使用される場合、例示の反応開始剤としては、過酸化物、ジアゾ化合物、金属又は金属錯体等の単一原子供与体、及びフッ素化ヨウ化物のラジカル反応の還元系が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの反応は、溶媒の不在下で行われる。溶媒の除去は、溶媒の購入及び処理と関連する処理費用を低減し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの反応は、第1の溶媒の存在下で行われる。例示の第1の溶媒としては、ペルフルオロモルホリン等の完全フッ素化溶媒、並びにCOCH及びCOCHCH等の部分的にフッ素化された溶媒が挙げられる。
【0103】
ハロヒドロフルオロスルホニルフルオリドを生成するための末端アルケン化合物とハロフルオロスルホニルフルオリドの比は、少なくとも1対1、又は更には2:1である。好ましくは、付加反応において過度の末端アルケン化合物がある。
【0104】
次いで、生成された(例えば、上記(a)の)ハロヒドロフルオロスルホニルフルオリドは、脱ハロ水素化されて(ハロ水素、例えばHIの欠失)、アルケンフルオロスルホニルフルオリドを生成する。アルケンフルオロスルホニルフルオリドは、(b)に示されるような、末端二重結合を連結するフッ素化炭素基及び末端スルホニルフルオリド基を含む。
【0105】
脱ハロ水素化は、塩基の存在下で行われ得る。例示の塩基としては、1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデス−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、及びトリブチルアミンが挙げられる。塩基は、出発物質のスルホニルフルオリドが加水分解されないように選択されるべきである。いくつかの実施形態では、脱ハロ水素化反応は、少なくとも10℃、20℃、25℃、30℃、又は更には35℃、せいぜい60℃、70℃、80℃、又は更には90℃の間の温度で行われ得る。塩基とハロヒドロフルオロスルホニルフルオリドの比は、少なくとも1対1、又は更には2:1である。好ましくは、過度の塩基がある。
【0106】
いくつかの実施形態では、脱ハロ水素化反応は、溶媒の存在下で行われる。例示の溶媒としては、エーテル、アルコール等が挙げられる。
【0107】
アルケンフルオロスルホニルフルオリドを形成するためにハロヒドロフルオロスルホニルフルオリドを脱ハロ水素化した後、アルケンフルオロスルホニルフルオリドは還元されて、式(VIII)によるモノマー、アルケンフルオロスルフィン酸又は塩(例えば、上記(c))を生成する。
【0108】
還元工程は、還元剤及び第2の溶媒の存在下で行われ得る。第2の溶媒の選択は、使用される還元剤に依存し得る。例示の第2の溶媒としては、エーテル(ジアルキルエーテル(例えば、ジエチルエーテル)、CHOCHCHOCH、t−ブチルメチルエーテル、グリコールジアルキルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン)、アルコール、アセトニトリル、水、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
本開示において有用なヒドリド還元剤は、式M’LHにより示されるものを含み、式中、M’は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Lは、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、及び水素化アルミニウムリチウムを含む、アルミニウム又はホウ素である。有用なヒドリド還元剤はまた、式M”Hにより示されるものを含み、式中、M”は、アルカリ金属であり、nは、1又は2から選択される整数であり、例えば、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化バリウム、及び水素化カルシウムを含む。他の有用なヒドリド還元剤は、モノ−、ジ−、又はトリ(低級アルコキシ)アルカリ金属アルミニウムヒドリド、モノ−、ジ−、又はトリ(低級アルコキシ低級アルコキシ)アルカリ金属アルミニウムヒドリド、ジ(低級アルキル)アルミニウムヒドリド、アルカリ金属シアノホウ素ヒドリド、トリ(低級アルキル)スズヒドリド、トリ(アリール)スズヒドリド、Li(CBH、及び(((CHCHCHAlH)を含む。別の有用な還元剤は、−CFSOF又は−CFSOM等の亜硫酸塩であり、KSO、NaSO、KHSO及びNaHSOが含まれる。
【0110】
方法IIでは、末端アルケン化合物は、ジハロフルオロカーボンと反応して、ハロアルケンフルオロカーボンハロゲン化物を生成する。次いで、ハロアルケンフルオロカーボンハロゲン化物は、スルフィン化されて、ハロアルケンフルオロスルフィン酸又は塩を生成する。次いで、ハロアルケンフルオロスルフィン酸又は塩は、脱ハロ水素化されて、アルケンフルオロスルフィン酸又は塩を生成する。例示の反応スキームを以下に示す。
【0111】
【化15】
【0112】
本開示の末端アルケン化合物は、炭素二重結合から少なくとも1つの水素を有する末端炭素−炭素二重結合を含む。例示の末端アルケン化合物には、エチレン、プロピレン、ブチレン、CH=CHCl、CH=CCl、CH=CHF及びCH=CFが含まれる。本開示のジハロフルオロカーボンは、一般式:X−(R−CZ1 Z2−Xを含み、式中、X及びXは独立して、Cl、Br、及びIから選択され、Rは、上記の連結基であり、Z1及びZ2は独立して、F、Cl、Br、CF及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1である。
【0113】
末端アルケン化合物とジハロフルオロカーボンとの反応は、ハロアルケンフルオロカーボンハロゲン化物(例えば、上記(d))を生成する。反応は、少なくとも10℃、20℃、25℃、30℃、又は更には35℃、せいぜい90℃、100℃、150℃、200℃又は更には220℃の間の温度で行われ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、末端アルケン化合物とジハロフルオロカーボンの反応は、反応開始剤の存在下で開始される。当該技術分野において既知の反応開始剤が、使用され得、これには、過酸化物、ジアゾ化合物、金属、及びこれらの組み合わせが含まれる。例示の過酸化物の反応開始剤としては、ジイソブチリルペルオキシド(AkzoNobel,Amsterdamから商品名「TRIGONOX 187−C30」で入手可能)、クミルペルオキシネオデカン酸塩(AkzoNobelから商品名「TRIGONOX 99−C75」で入手可能)、ペルオキシジカルボネート(AkzoNobelから商品名「TRIGONOX ADC」で入手可能)、t−ブチルペルオキシネオデカン酸塩(AkzoNobelから商品名「TRIGONOX 23」で入手可能)、ジベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、及びt−ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。例示のジアゾ化合物の反応開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(E.I.du Pont de Nemours & Co(Wilmington,DE)から商品名「VAZO 67」で入手可能)及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。例示の金属の反応開始剤としては、Pd(PPh、Pt(PPh、Pb(OAc)、及びRhCl(PPhのようなZn、Mg、Ni、及びCu又は金属錯体が挙げられる。
【0115】
次いで、生成されたハロアルケンフルオロカーボンハロゲン化物は、スルフィン化されて、式(IX)による前駆体、ハロアルケンフルオロスルフィン酸又は塩(上記(e)を参照)を生成する。本開示では、スルフィン化系を使用して、ハロアルケンフルオロカーボンハロゲン化物を脱ハロスルフィン化する(即ち、ハロゲンを除去し、化合物をスルフィン化する)。スルフィン化系は、当業者の周知とするところである。例示のスルフィン化系は、Na、NaHSO/(NHCe(NO、NaHSO/FeCl、NaHSO/K[Fe(CN)]、HOCHSONa、(NHCSO、Na、及びこれらの組み合わせを含む。
【0116】
次いで、ハロアルケンフルオロスルフィン酸又は塩は、脱ハロ水素化されて、式(VIII)によるモノマー、アルケンフルオロスルフィン酸又は塩(例えば、上記(f))を生成する。
【0117】
脱ハロ水素化は、塩基の存在下で行われ得る。例示の塩基は、KOH、NaOH、LiOH、NaCO、NaHCO、KCO、1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデス−7−エン(DBU)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0118】
一実施形態では、脱ハロ水素化反応は、少なくとも10℃、20℃、25℃、30℃、又は更には35℃、せいぜい60℃、70℃、80℃、又は更には90℃の間の温度で行われ得る。
【0119】
塩基とハロアルケンフルオロスルフィン酸又はその塩の比は、少なくとも1対1、又は更には2:1である。好ましくは、過度の塩基がある。
【0120】
一実施形態では、脱ハロ水素化反応は、溶媒の存在下で行われる。例示の溶媒は、水、アルコール、及びこれらの組み合わせを含む。
【0121】
式(VIII)によるモノマー及び/又は式(IX)による前駆体は、既知の方法により単離されても、精製されてもよい。いくつかの実施形態では、粗生成物は、濾過により反応混合物から単離されて、不溶性無機塩を除去し、次いで、回転蒸発して、溶媒を除去し、スルフィン酸塩固体を得る。いくつかの実施形態では、粗固体は、イソプロパノール等の温アルコールで抽出して、不溶性の無機不純物を除去し、続いて、溶媒を取り除くことにより精製される。いくつかの実施形態では、例えば、硫酸等の濃縮酸の添加は、スルフィン酸塩をプロトン化するために添加され、分相をもたらす。いくつかの実施形態では、粗生成物は、例えば、硫酸等の酸の添加、続いて、t−ブチルメチルエーテル及びジエチルエーテル等の有機溶媒で抽出することにより単離される。次いで、酸性形態で所望の生成物は、有機溶媒の除去により単離される。
【0122】
いくつかの実施形態では、粗生成物の更なる精製は、場合によっては、必要とされない。精製工程がなくなることで、プロセスの時間及びコストを削減することができる。必要に応じて、例えば、反復した再結晶によって反応混合物又は粗生成物を精製することができる。
【0123】
有利に、式(VIII)によるモノマーは、少数の望ましくない末端極性基を有するポリマーの反応開始剤として、又は重合性界面活性剤として有用であり得、ひいては、重合後、界面活性剤を除去する必要がなくなる。
【0124】
本開示のエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、フルオロポリマーの重合において使用され得る。例えば、式(VI)によるエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物の一方の末端は、二重結合を含み、エチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、重合反応において使用され得る。式(VIII)によるエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物のもう一方の末端は、スルフィン酸又はその塩を含むため、この部位は、重合反応においてラジカルを形成し、反応開始剤としての役割を果たすことができる。したがって、式(VIII)によるエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、重合中、消費されてもよい。更に、スルフィン酸末端基のため、この反応開始剤を使用して作製されたポリマーは、ポリマーの安定性に役立ち得る、極性末端基の量を削減するか、又はなくてもよい。
【0125】
式(IV)及び(VI)によるオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物、並びに式(VII)及び(VIII)によるエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、界面活性剤が必要とされるか、又は望ましい様々な出願において使用され得る。式(IV)及び(VI)によるオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物、並びに式(VII)及び(VIII)によるエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、フッ素化及び/又は非フッ素化モノマーの水性乳化重合で用いるのに適していることが見出されている。具体的には、本開示のオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルフィン酸化合物は、部分的又は完全にフッ素化された主鎖を有するフルオロポリマーを作製するために、少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマー、例えば、フッ素化オレフィンの水性乳化重合に使用することができる。
【0126】
特定の好ましい実施形態では、式(IV)及び(VI)による1つ以上のオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物並びに/又は式(VII)及び(VIII)によるエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和のフルオロモノマー、特にガス状フッ素化モノマーの水性乳化重合に使用される。ガス状フッ素化モノマーとは、重合条件下で、ガスとして現れるモノマーを意味する。特定の実施形態では、エチレン性不飽和のフルオロモノマーの重合は、式(IV)及び/若しくは(VI)による少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物、並びに/又は式(VII)及び(VIII)によるエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルホン酸化合物の存在下で開始される。使用されるオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物の量は、固体の量、粒径等の所望の特性に依存して異なり得る。
【0127】
概ね、オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物は、重合における水の重量に基づいて、0.001重量%〜5重量%、例えば0.005重量%〜2重量%である。実用的範囲は、0.05重量%〜1重量%である。重合が、概ね、オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物の存在下で開始される一方で、重合中の更なるフッ素化界面活性剤の添加は除かれないが、そのようなことは通常、必要とされない。それでもなお、水性乳化の形態で重合にいくらかのモノマーを添加することが望ましい場合がある。例えば、フッ素化モノマー、及び特に重合条件下で液体である完全フッ素化されたコモノマーは、水性乳化の形態で有利に添加され得る。
【0128】
水性乳化重合は、10℃〜150℃、好ましくは20℃〜110℃の温度で実行することができ、圧力は、典型的には、2〜30バール(200〜3000kPa)、特に5〜20バール(500〜2000kPa)である。反応温度は、重合中、分子量分布に影響を及ぼす、即ち、広い分子量分布を得る、又は二峰性若しくは多峰性分子量分布を得るために変更され得る。
【0129】
重合媒体のpHは、pH 2〜11、好ましくは3〜10、最も好ましくは4〜10の範囲であってよい。
【0130】
オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルホン酸化合物の使用に加えて、水性乳化重合は、典型的に、フッ素化モノマーのフリーラジカル重合を開始することで知られている反応開始剤のいずれかを含む反応開始剤により開始される。いくつかの実施形態では、特定の酸化剤と組み合わせた、式(IV)及び(VI)によるオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物並びに式(VII)及び(VIII)によるエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルホン酸化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーの水性乳化重合の開始のための反応開始剤系として使用され得る。本開示において有用な酸化剤は、水溶性酸化剤である。いくつかの実施形態では、本開示において有用な酸化剤は、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム過硫酸塩、過リン酸塩、過ホウ酸塩、並びに過炭酸塩を含む。特に好ましい酸化剤は、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム過硫酸塩である。いくつかの実施形態では、本開示において有用な酸化剤は、塩素酸イオン、臭素酸イオン、及び次亜塩素酸塩イオン等のうちの少なくとも1つから選択されるもの、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、好適な反応開始剤としては、過酸化物、及びアゾ化合物、及び酸化還元系反応開始剤が挙げられる。過酸化物反応開始剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム又は過酸化バリウム、過酸化ジアセチルのような過酸化ジアシル、過酸化ジスクシニル、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、及びジラウリルペルオキシド、並びに更に過酸及び例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のようなこれらの塩が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に用いることができ、これらの例としてはtert−ブチルペルオキシアセテート及びtert−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。無機の例としては、例えば、過硫酸塩、過マンガン酸又はマンガン酸の、アンモニウム−、アルカリ−、又はアルカリ土類塩、あるいはマンガン酸が挙げられる。過硫酸塩反応開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)はそのままで用いてもよく、又は還元剤と組み合わせて用いてもよい。好適な還元剤としては、例えば、重亜硫酸アンモニウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムのような重亜硫酸塩、例えば、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、又はチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボン酸塩及びアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。使用してもよい更なる還元剤は、米国特許第5,285,002号に開示されるようなホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(商品名「Rongalit」で入手可能なもの等)又はフルオロアルキルスルフィン酸塩を含む。還元剤は、典型的には、過硫酸塩反応開始剤の半減期を減少させる。更に、例えば、銅塩、鉄塩又は銀塩のような金属塩触媒を添加してよい。反応開始剤の量は、0.01重量%(生成されるフルオロポリマー固体に基づいて)〜1重量%であってよい。1つの実施形態では、反応開始剤の量は、0.05〜0.5重量%である。別の実施形態では、量は0.05〜0.3重量%であってよい。
【0132】
マイクロエマルジョンは、緩衝剤及び所望であれば、錯体形成剤又は連鎖移動剤等のその他の物質を更に含んでよい。用いてもよい連鎖移動剤の例としては、ジメチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エタン、プロパン、及びn−ペンタンのような1〜5個の炭素原子を有するアルカン、CCl、CHCl及びCHClのようなハロゲン化炭化水素、CHF−CF(R134a)のようなヒドロフルオロカーボン化合物が挙げられる。更に、酢酸エチル、マロン酸エステルのようなエステルが適用可能である。
【0133】
本開示のマイクロエマルジョンを用いて重合化され得るエチレン性不飽和のフルオロモノマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、部分的又は完全にフッ素化されたアリルエーテル、並びに部分的又は完全にフッ素化されたビニルエーテルのようなフッ素化オレフィンを含む、部分的又は完全にフッ素化されたガス状モノマーを含む。重合は、エチレン及びプロピレン等の非フッ素化モノマーを更に含んでよい。
【0134】
本開示によるマイクロエマルジョンに使用してもよいエチレン性不飽和のフルオロモノマーの更なる例は、次式に対応するものを含み、
CF=CF−O−R
式中、Rは、1つ以上の酸素原子を含有してもよい完全フッ素化脂肪族基を表す。好ましくはペルフルオロビニルエーテルは、次の一般式に対応し、
CF=CFO(RO)n(R’O)R”
式中、R及びR’は、2〜6個の炭素原子の異なる直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは独立して、0〜10であり、R”は、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。上記の式によるペルフルオロビニルエーテルの例としては、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CFが挙げられる。
【0135】
使用することができるフッ素化アリルエーテルの例は、次の一般式に対応するものを含み、
CF=CF−CF−O−R
式中、Rは、1つ以上の酸素原子を含有してもよい完全フッ素化脂肪族基を表す。
【0136】
なお更に、マイクロエマルジョンは、例えば、過酸化物の硬化反応に関与することが可能な基のような官能基を有するコモノマーを含み得る。そのような官能基は、Br又はI並びにニトリル基等のハロゲンを含む。ここで列挙され得るそのようなコモノマーの特定の例は、以下のものを含む。
【0137】
(a)次式を有するブロモ−又はヨード−(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロビニルエーテル:
Z−R−O−CX=CX
式中、それぞれのXは、同一又は異なるものであってよく、H又はFを示し、Zは、Br又はIであり、Rは、(ペル)フルオロアルキレンC〜C12であり、所望により、塩素及び/又はエーテル酸素原子を含有し、例えば、BrCF−O−CF=CF、BrCFCF−O−CF=CF、BrCFCFCF−O−CF=CF、CFCFBrCF−O−CF=CF等である、
(b)次式を有するもののようなブロモ−又はヨード−を含有するフルオロオレフィン:
Z’−(R’)−CX=CX
それぞれのXは独立して、H又はFを表し、Z’は、Br又はIであり、R’は、ペルフルオロアルキレンC〜C12であり、所望により、塩素原子を含有し、rは、0又は1であり、例えば、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−ペルフルオロブテン−1等であるか、又は1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1等のブロモフルオロオレフィンである。
【0138】
使用され得るニトリルを含有するモノマーの例は、式:
CF=CF−CF−O−R−CN
CF=CFO(CFCN
CF=CFO[CFCF(CF)O](CFOCF(CF)CN
CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCNのうちの1つに対応するものを含み、
式中、Lは、2〜12の整数を表し、gは、0〜4の整数を表し、kは、1又は2を表し、vは、0〜6の整数を表し、uは、1〜6の整数を表し、Rは、ペルフルオロアルキレン又は二価ペルフルオロエーテル基である。ニトリル含有フッ素化モノマーの具体的な例としては、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF=CFO(CFCN、及びCF=CFO(CFOCF(CF)CNが挙げられる。
【0139】
マイクロエマルジョンは、完全にフッ素化された主鎖、並びに部分的にフッ素化されたフルオロポリマーを有する、ペルフルオロポリマーを含む、様々なフルオロポリマーを生成するために使用され得る。また、マイクロエマルジョンは、溶解処理可能なフルオロポリマー、並びに例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びいわゆる修飾されたポリテトラフルオロエチレン等の溶解処理可能でないものをもたらし得る。本開示のマイクロエマルジョンを用いた重合プロセスは、フルオロエラストマー並びにフルオロサーモプラスチック(fluorothermoplast)を作製するために硬化され得るフルオロポリマーを更に産出することができる。フルオロサーモプラスチックは、概ね、典型的には、60℃〜320℃又は100℃〜320℃の範囲で、明白かつ顕著な融点を有する、フルオロポリマーである。したがって、それらは、実質的な結晶相を有する。フルオロエラストマーを作製するために使用されるフルオロポリマーは、典型的には、非晶質である、及び/又はこれらのフルオロポリマーに対する融点が全くない、又はほとんどないような、ごく少量の結晶化度を有する。
【0140】
本開示のマイクロエマルジョンの水性乳化重合は、水中フルオロポリマーの分散液をもたらす。一般的に、重合から直接得られる分散液中のフルオロポリマーの固形分の量は、重合条件に応じて3重量%〜約40重量%で変動する。典型的な範囲は、5〜30重量%、例えば10〜25重量%である。フルオロポリマーの粒径(体積平均直径)は、典型的には、40nm〜200nmである。得られた分散液中のオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物及び/又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物の総量は、典型的には、分散液中のフルオロポリマーの固形物の量に基づいて、0.001〜5重量%である。典型的な量は、0.01〜2重量%、又は0.02〜1重量%であってよい。
【0141】
フルオロポリマーは、固形物形態のポリマーが望ましい場合、固化による分散液から単離されてよい。また、フルオロポリマーが使用されるべき用途の必要条件に応じて、フルオロポリマーは、いずれかの熱的に不安定な末端基を安定なCF末端基に転換するように、後フッ素化されてもよい。フルオロポリマーは、例えば、欧州特許第222945号に記載されているように、後フッ素化されてもよい。一般的には、フルオロポリマーは、CF以外のフルオロポリマー中の末端基の量が、100万個の炭素原子当たり80個未満となるように、後フッ素化される。
【0142】
コーティング用途に関しては、フルオロポリマーの水性分散体が望ましく、したがって、フルオロポリマーを分散体から分離又は固化する必要はない。例えば、布地の含浸における、又は例えば、調理器具を製造するための金属基材のコーティングにおける、等のコーティング用途で使用するのに好適なフルオロポリマー分散体を得るためには、一般には、更なる安定化界面活性剤を添加すること、及び/又はフルオロポリマー固体を更に増加させることが望ましい。例えば、非イオン性安定化界面活性剤をフルオロポリマー分散体に添加してもよい。典型的には、これらは、フルオロポリマー固体に対して1〜12重量%の量でそれらに添加される。
【0143】
添加されてよい非イオン性界面活性剤の例は、下式で示される:
−O−[CHCHO]−[RO]−R (X)
を含み、式中、Rは、少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族、直鎖状又は分枝状炭化水素基を表し、Rは、3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、Rは、ハロゲン又はC〜Cアルキル基を表し、nは、0〜40の値を有し、mは、0〜40の値を有し、及びn+mの合計は、少なくとも2である。上記の式(X)において、n及びmにより示される単位は、ブロックとして現れてもよく、それらが交互の構成若しくはランダムな構成で存在してもよいということが理解されるであろう。上記式(X)による非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、エトキシ単位の数が約10である商標名「トリトンX 100」又はエトキシ単位の数が約7〜8である商標名「トリトンX 114」として入手可能なものである、商標名「トリトン」として市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノールのような、アルキルフェノールオキシエチレートが挙げられる。更なる例としては、上記式(X)のRは4〜20個の炭素原子のアルキル基を表し、mは0であり、Rは水素であるものが挙げられる。それらの例としては、約8個のエトキシ基でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられ、これは「GENAPOL X080」の商標名にてClariant GmbHから市販されている。親水性部分がエトキシ基及びプロポキシ基のブロックコポリマーを含む、式(X)による非イオン性界面活性剤も同様に使用してよい。かかる非イオン性界面活性剤は、「GENAPOL PF 40」、及び「GENAPOL PF 80」の商標名で、Clariant GmbHから市販されている。
【0144】
添加してもよい非イオン性界面活性剤の更なる例は、アルコールエトキシレート、又は式(XI):
R(OCHCHOH
のアルコールエトキシレートの混合物を含み、式中、Rは、分枝鎖アルキル、分枝鎖アルケニル、シクロアルキル、又は8〜18個の炭素原子を有するシクロアルケニル炭化水素基であり、nは、5〜18の平均値である。例えば、本発明のエトキシレートは、(1)分枝鎖アルキル、分枝鎖アルケニル、シクロアルキル、若しくはシクロアルケニルから選択される炭化水素基からなる第一級アルコール、又は(2)第二級又は第三級アルコールから調製されることが考慮され得る。いずれにしても、本発明のエトキシレートは、芳香族基を含有しない。分子の親水性部分のエチレンオキシド単位の数は、典型的に供給されるような広い若しくは狭い単峰性分布か、又はブレンドにより得られ得る広い若しくは二峰性分布のいずれかを含み得る。そのような非イオン性界面活性剤は、Dow Chemical Corporationから「TERGITOL TMN−6」及び「TERGITOL TMN−10」として市販されている。
【0145】
分散体中のフルオロポリマー固体の量は、必要に応じ又は場合により、30〜70重量%の量まで高濃縮されてよい。限外濾過及び熱的高濃縮を包含する、いかなる既知の高濃縮技術を用いてもよい。
【0146】
以下の実施形態は、本出願の主題を示す。
【0147】
実施形態1
マイクロエマルジョンであって、
(a)水と、
(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、
(c)少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルフィン酸化合物と、を含む、マイクロエマルジョン。
【0148】
実施形態2
オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が、高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーである、実施形態1に記載のマイクロエマルジョン。
【0149】
実施形態3
高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーが、式(IV):
【0150】
【化16】
【0151】
による少なくとも1つの高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーから選択され、式中、X、X、及びXは独立して、F、Cl及びCFから選択され、Rは独立して、H、I、Br、直鎖又は分枝鎖アルキル、及び直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル基から選択され、所望によりヘテロ原子を含有し、R1は、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化連結基であり、Mはカチオンであり、mは少なくとも2である、実施形態2に記載のマイクロエマルジョン。
【0152】
実施形態4
式(IV)による高度にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーに由来する塩を更に含む、実施形態3に記載のマイクロエマルジョン。
【0153】
実施形態5
少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が、式(II):
【0154】
【化17】
【0155】
による第2の単位を更に含み、式中、X、X、又はXは独立して、H、F、Cl及びCFから選択され、R2は、飽和又は不飽和及び置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖のフッ素化連結基であり、Gは、ペルフルオロアルキル及び官能基から選択され、nは少なくとも1であり、X、X、X、G及びR2は、式(II)により得られる単位が式(I)による得られる単位とは異なるように選択される、実施形態1〜4のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0156】
実施形態6
官能基が、カルボン酸及びその誘導体、ニトリル、ハロゲン化スルホニル、スルホン酸塩、イミダート、アミジン、アルコール、メルカプタン、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態5に記載のマイクロエマルジョン。
【0157】
実施形態7
式(II)による官能化されたペルフルオロビニルエーテルは、官能基がカルボン酸誘導体であるとき、官能基が還元されて、アルコール誘導体を提供する、実施形態5又は6に記載のマイクロエマルジョン。
【0158】
実施形態8
オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が、部分的にフッ素化されている、実施形態1に記載のマイクロエマルジョン。
【0159】
実施形態9
部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーが、式(VI):
【0160】
【化18】
【0161】
による少なくとも1つの部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーから選択され、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つはHであり、Rは連結基であり、Z及びZは独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Mはカチオンであり、pは0又は1であり、nは少なくとも2である、実施形態8に記載のマイクロエマルジョン。
【0162】
実施形態10
部分的にフッ素化されたスルフィン酸塩オリゴマーが、
【0163】
【化19】
【0164】
を更に含み、式中、X、X、及びXは独立して、H、F、Cl、Br、I、CF、及びCHから選択され、Rは連結基であり、Z及びZは独立して、Br、Cl、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Yは、−H、−Br、−COOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]q、飽和又は不飽和及び置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖のフッ素化基から選択され、Yは、−H、−Br、−COOM、−SOM、−SOM、及び−[CX−CX(RCZ)]qから選択され、Z及びZは独立して、Br、Cl、I、F、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、Mは有機カチオンであり、pは0又は1であり、mは少なくとも1であり、qは少なくとも1である、実施形態8又は9に記載のマイクロエマルジョン。
【0165】
実施形態11
少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が、式(III):
【0166】
【化20】
【0167】
による構造を提供するために、モノマーを更に含み、式中、Zは、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ素化アルキルビニルエーテル、フッ素化アルコキシビニルエーテル、官能基を含有するフッ素化ビニル、ペルフルオロ−1,3−ジオキソール、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来し、更にpは少なくとも1である、実施形態1〜10のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0168】
実施形態12
R1及びR2は独立して、−(CF−、−(CF−O−(CF−、−(CF−[O−(CF−、−(CF−[O−(CF(CF)CF−、及び−[(CF−O−]−[(CF−O−]−、並びにこれらの組み合わせから選択され、式中、a、b、c、及びdは独立して、少なくとも1である、実施形態1〜11のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0169】
実施形態13
R1及びR2は独立して、−CFCF−、−CFCFCFCF−、−CFCFOCFCF−、−CFCF(CF)−O−CFCF−から選択される、実施形態1〜12のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0170】
実施形態14
少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が、20,000グラム/モルを超えない多くの平均分子量を有する、実施形態1〜13のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0171】
実施形態15
Mは、H、NH、PH、H、Na、Li、Cs、Ca+2、K、Mg+2、Zn+2、及びCu+2、並びに/又はN(CH、NH(CH、N(CHCH、NH(CHCH、NH(CH、((CHCHCHCH)Pが挙げられるが、これらに限定されない有機カチオン、並びにこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜14のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0172】
実施形態16
少なくとも1つのオリゴマーのフルオロスルホン酸化合物が水溶性である、実施形態1〜15のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0173】
実施形態17
マイクロエマルジョンであって、
(a)水と、
(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和のフルオロモノマーと、
(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合性モノマーのフルオロスルフィン酸化合物と、を含む、マイクロエマルジョン。
【0174】
実施形態18
少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物が、式VII:
CX=CX−O−R−CFX−SO
による高度にフッ素化されたビニルエーテルスルフィン酸塩から選択され、式中、X、X、及びXは独立して、F、Cl、及びCFから選択され、XはFであるか、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化アルキル基であり、Rは、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望によりカテナリーヘテロ原子を含む、直鎖又は分枝鎖の完全フッ素化連結基であり、Mはカチオンである、実施形態17に記載のマイクロエマルジョン。
【0175】
実施形態19
R−CFX基が、−CFCF−、−CFCFCFCF−、−CFCFOCFCF−、−CFCF(CF)−O−CFCF−から選択され、X、X、及びXが、フッ素である、実施形態18に記載のマイクロエマルジョン。
【0176】
実施形態20
少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物が、式VIII:
CXX=CX−(R−CZ1 Z2−SOM (VIII)
による少なくとも1つのエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物から選択され、式中、X、X、及びXが独立して、H、F、Cl、Br、I、CF及びCHから選択され、X、X、又はXのうちの少なくとも1つはHであり、Rは連結基であり、Z1及びZ2は独立して、F、Cl、Br、I、CF、及びペルフルオロアルキル基から選択され、pは0又は1であり、Mはカチオンである、実施形態17に記載のマイクロエマルジョン。
【0177】
実施形態21
、X、及びXがすべてHであり、Rが完全フッ素化基である、実施形態20に記載のマイクロエマルジョン。
【0178】
実施形態22
組成物が、式VIIIa又はVIIIb:
CH=CH−(CF)−SOM(VIIIa)及び
CH=CH−(CFO(CF−SOM (VIIIb)
を含み、式中、Mはカチオンである、実施形態20又は21に記載のマイクロエマルジョン。
【0179】
実施形態23
酸化剤を更に含む、実施形態1〜22のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0180】
実施形態24
酸化剤が、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、塩素酸イオン、臭素酸イオン、及び次亜塩素酸塩イオンのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態23に記載のマイクロエマルジョン。
【0181】
実施形態25
オリゴマーのフルオロスルホン酸化合物又はエチレン性不飽和で重合モノマーのフルオロスルホン酸化合物の量が、マイクロエマルジョンの水相中の水の量に基づいて、0.001〜5重量%である、実施形態1〜24のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0182】
実施形態26
1つ以上のフッ素化界面活性剤を更に含む、実施形態1〜25のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0183】
実施形態27
フッ素化界面活性剤が、完全フッ素化ポリエーテル界面活性剤を含む、実施形態26に記載のマイクロエマルジョン。
【0184】
実施形態28
フルオロポリマー粒子を更に含む、実施形態1〜27のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【0185】
実施形態29
実施形態1〜28のいずれかに記載のマイクロエマルジョンの水性乳化重合を含むフルオロポリマーを作製するための方法。
【0186】
実施形態30
実施形態1〜29のいずれかに記載のマイクロエマルジョンに由来する、フルオロポリマー。
【実施例】
【0187】
以下の実施例はあくまで例示を目的としたものにすぎず、付属の「特許請求の範囲」に対して限定的であることを意図するものではない。特に断らないかぎり、以下の実施例及び明細書の残りの部分に記載される部、比率(%)、比などはすべて重量基準のものである。これらの略語は、以下の実施例に使用される:g=グラム、min=分、hr=時間、sec=秒、mL=ミリリットル、L=リットル、s=秒。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特段の規定がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)より入手した。
【0188】
【表1】
【0189】
スルフィン酸塩オリゴマー1の調製
CF2=CF−O−C4F8−SO2F(MV4S)のオリゴマー化は、200gのMV4S及び20gのLUPEROX 575を充填し、65℃で20時間反応させることにより600mLのPARR反応器内で行われた。真空蒸留により低沸点留分を除去し、ポット内に残留する生成物は5mmの真空で220℃よりも高い沸点を有した。100gのテトラヒドロフラン(THF)中の6gのNaBH4を用いた25gのオリゴマーのMV4S(o−MV4S)の還元を、65℃で1時間行った。混合物を冷却し、200gの水中の14gの濃硫酸を添加した。上相の生成物を真空脱気し、溶媒を除去し、生成物を50gのメタノール中に溶解し、濾過し、真空脱気して、50%の水溶液中に作製された25gのオリゴマーのマルチスルフィン酸(o−MV4SO2H)を得た。5gの試料を27%の水酸化アンモニウムで中和し、固体になるまで真空乾燥させた。表面張力測定をフルオロオリゴマーのマルチスルフィン酸アンモニウム塩(o−MV4SO2NH4)に対して以下のように行う。
【0190】
スルフィン酸塩オリゴマー2の調製
50gのMV3b2S、7gのLUPEROX 575及び196gのテトラクロロヘキサフルオロブタン溶媒を充填し、65℃で20時間反応させることにより、CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCF−SOF(MV3b2S)のオリゴマー化を600mLのPARR反応器内で行った。真空蒸留により低沸点留分を除去し、ポット内に残留する生成物は15mmの真空で225℃よりも高い沸点を有した。20gのTHF中の1.5gのNaBHを用いた6gのオリゴマーのMV3b2S(o−MV3b2S)の還元を、65℃で1時間行った。混合物を冷却し、50gの水中の10gの濃硫酸を添加した。上相の生成物を真空脱気し、溶媒を除去し、生成物を50gのメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)中に溶解し、濾過し、真空脱気して、5gのオリゴマーのマルチスルフィン酸(o−MV3b2SO2H)を得た。5gの試料を27%の水酸化アンモニウムで中和し、固体になるまで真空乾燥させた。表面張力測定は、フルオロオリゴマーのマルチスルフィン酸アンモニウム塩(o−MV3b2SO2NH4)に対して以下のように行う。
【0191】
スルフィン酸塩オリゴマー3の調製
ポリスルフィン酸塩は、4−ブロモテトラフルオロブテン(CH=CHCFCFBr)とNaとの反応により調製した。138gの脱イオン水、123gのアセトニトリル(CHCN)、及び25.6gのNaHCO(0.305モル)を、600mLのPARR反応器内に充填した。溶液を2分間窒素ガスで発泡させて、酸素を除去した。次いで、以下の物質を窒素雰囲気下で順に添加した:50gのBrCFCFCH=CH(0.24モル)、続いて、添加中、発生ガスの徐放のために4回に分けて、53.2gのNa(0.26モル)を添加した。添加後、反応器を密閉し、溶液を60℃まで加熱し、60℃(内部温度)で15時間反応させた。20℃まで冷却した後、圧力を放出し、反応混合物は、いくつかの固体を含む2つの分離した相を得た。濾過後、294.8gの液体を回収し、固体を除去した。上記の濾過した溶液の19F NMR(核磁気共鳴分光法)分析により、非常に複雑な信号が、113〜134ppm(化学シフト)で観察されるが、これは−CFSONa基(通常、約−130ppm)の存在を示した。また、小さな信号は、−CFBr及び−CFHにおいても見られた。上記の濾過した溶液を、1N HCl溶液で酸性化し、溶媒を取り除いた。得られた固体をジエチルエーテル(100gの分量で5回)で抽出した。合わせたエーテル抽出溶液を水(50gの分量で2回)で洗浄した。溶媒を取り除き、室温で一晩、完全真空下で乾燥させた後、30.32gの赤い半固体を単離した。FT−IR(フーリエ変換赤外)分析により、二重結合信号のCH=CH−は観察されず、これは、二重結合のオリゴマー化を示した。次いで、この固体を水中に分散した。未反応のCH=CH−は、H NMR分析より、観察されなかった。GPC(ゲル透過クロマトグラフィー、テトラヒドロフラン中のポリスチレン標準と比較してダルトンで表される)は、Mn(平均モル質量)=1400ダルトン、Mw(重量平均モル質量)=1600ダルトン、及び多分散性(PD)=1.2を示した。
【0192】
スルフィン酸塩オリゴマー4の調製
138gの脱イオン水、100gのCHCN及び25gのNaHCOを、600mLのPARR反応器内に充填した。溶液を2分間窒素ガスで発泡させて、酸素を取り除いた。次いで、50gのBrCFCFCH=CH及び10gのCCH=CHを、窒素雰囲気下で添加し、続いて、58gのNaを添加した。反応器を密閉し、60℃(内部温度)で24時間反応させた。20℃まで冷却した後、残りの圧力を放出し、いくらかの固体を含む353gの液体(2相)を得た。溶液を濾過して、固体を除去し、115gの上部の透明溶液を単離した。19F NMRによりフッ素化された生成物が上相に見られたが、下相には見られなかった。回転蒸発により上相の溶媒を除去して、33gの半固体を得た。この半固体を、pH約1になるまで2N HSOで酸性化し、次いで、200mLのt−BuOCHで2回抽出した。溶媒を回転蒸発により抽出物から除去し、次いで、残りの液体を完全真空下で一晩乾燥させて、31.26gの透明な液体を得た。19F NMR分析により、実施例1と同様に、純粋なBrCFCFCH=CHからの反応生成物と比較して、CFCFCFCFCH=CHからの透明なCF−信号が観察されたが、これは、CFCFCFCFCH=CH及びBrCFCFCH=CHの共重合を示した(いかなる非重合のCFCFCFCFCH=CHも、58℃のその低沸点により、完全真空脱気後、最終生成物に残留すべきではない)。実施例1の19F NMR分析の場合、非常に複雑な信号が、−113〜−134ppmで観察された。また、−CFSOH及び−CFBrの信号も、19F NMR分析により、単離された生成物から特定された。CH=CH−信号が、FT−IR及びH−NMR分析により単離された生成物から観察された。単離された生成物は、BrCFCFCH=CHのホモオリゴマー化からのものと比較して、水中の溶解度が低いことを示すが、これは、CFCFCFCFCH=CHとの共オリゴマー化であることの更なる証拠であった。GPC分析は、Mn=810ダルトン、Mw=990ダルトン、及びPD=1.2を示した。
【0193】
スルフィン酸塩オリゴマー5の調製
BrCFCFCH=CH及びCFOCFCFCFOCF=CF(MV−31)は、Naと反応した。
【0194】
50gのBrCFCFCH=CH及び10gのCFOCFCFCFOCF=CF(MV−31)は、600mLのPARR反応器内で、138gのHO及び100gのCHCN中の58gのNa及び25gのNaHCOと、60℃で24時間反応させた。33.58gの液体生成物は、濾過、相分離、酸性化、抽出、及び乾燥後、単離された。実施例1の19F NMR分析と同様に、非常に複雑な信号が、−113〜−134ppmで観察された。19F NMR分析により、実施例1と同様に、純粋なBrCFCFCH=CHからの反応生成物と比較して、CFOCFCFCFOCF=CFからのCFOCF−の新しい信号が観察されるが、これは、CFOCFCFCFOCF=CF及びBrCFCFCH=CHの共重合を示した(いかなる非重合のCFOCFCFCFOCF=CFは、真空脱気後、残留すべきではない)。また、−CFSOH及び−CFBrの信号も単離された生成物から特定された。未反応のCH=CH−信号は、FT−IR及びH−NMR分析により、単離された生成物から観察されなかった。GPC分析は、Mn=620ダルトン、Mw=830ダルトン、及びPD=1.5を示した。
【0195】
スルフィン酸塩オリゴマー6の調製
50gのMV4Sを、Arkema Inc.(Philadelphia,Pennsylvania)から商標名「LUPEROX TAEC」で市販されている、6.21gのtert−アミル−2−エチルヘキシルモノペルオキシ炭酸塩と、窒素下で、120℃で24時間オリゴマー化した。低沸点画分を、真空下で、120℃で取り出し、62%の単離された収率を有する31gの強粘液体を得た。FTIRは、2968cm−1で、炭化水素の反応開始剤からのCHに対する信号を示し、1463、1349、1212、1148及び1072cm−1で、C−F及び−SOF基に対する強い信号を示した。19F NMRは、CF=CFO−基に対する信号はなく、−81及び−87ppmで、−CFO−に対する2つの信号、+43ppmでSOFの信号、−110ppmで−CFSOFの信号、並びに−123及び−128でCFCF−の信号を示した。−(CFCF(O−)−のオリゴマー化されたビニル信号は、複雑な多重線を伴って、−121及び−147ppmで見られた。液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)分析により、オリゴマーは、平均3.2単位及び1320のMWを有した。
【0196】
37gのTHF溶媒中の25.6gの上記の強粘のオリゴマー液体(約0.067当量−SOF)を、窒素下で、−5〜10℃で20分間0.5gのNaBH(0.0132モル)で処理し、続いて、20℃で更に2時間反応させた。19F NMRは、20%の−SOF(+43ppm)が反応して、対応する−SOMを得、−111ppmで、−CFSOFの対応する信号は減少し、−132ppmで、−CFSOMに対する新しい信号が生じた。0.28gのNaBH(合計0.78g、0.0206モル)を、20分間にわたって−5〜10℃で添加し、続いて、20℃で2時間反応させた。変換率は、36%まで上昇した。NaBHの添加を3回繰り返し、合計1.1gのNaBH(0.029モル)を添加したとき、変換率は、50%まで上昇した。19F NMRは、−126、−128及び−132ppmで化学シフトを有する−OCFCFCFCFSOM、並びに−123、−128及び−111ppmで化学シフトを有する−OCFCFCFCFSOFを示した。−SOFの残りの信号は、+42ppmで見られた。
【0197】
5グラムの水を、攪拌しながら、THF中の上記の部分的に還元したオリゴマー溶液に添加し、いかなる未反応の還元剤も破壊した。次いで、この溶液を、溶液のpHが塩基性(pH>9)になるまで攪拌しながら、20℃で10%のKOH水溶液で処理した。この溶液を、20℃で更に30分間攪拌した。19F NMRは、+42ppmで、−SOFの信号を示し、これは、完全に消失した。pH<2になるまで2N HSOで溶液を酸性化した後、混合物をt−BuOMe(3×50mL)で抽出した。溶媒を取り出した後、32gの湿式生成物を得た。この湿式生成物を、20gの水中に溶解した。溶液の19F NMR分析は、約50重量%の固体、及び54:46の−CFSOH(−132ppm)と−CFSOH(−111ppm)の比を示した。
【0198】
スルフィン酸塩オリゴマー7の調製
50gのBrCFCFCH=CH及び10gのMV4Sを、600mLのPARR反応器内で、138gのHO及び100gのCHCN中の58gのNa及び25gのNaHCOと、60℃で24時間反応させた。38gの液体生成物は、濾過、相分離、酸性化、抽出及び乾燥後、単離された。実施例1の19F NMR分析と同様に、非常に複雑な信号が、−113〜−134ppmで観察された。また、少量の−CFBrも特定された。加えて、実施例1と同様に、純粋なBrCFCFCH=CHからの反応生成物と比較して、CF=CFOCF(CFSOFからの−OCF−の新しい信号は、−87ppmで観察され、これは、CF=CFO(CFSOFとBrCFCFCH=CHとの共オリゴマー化を支持した。また、+43ppmで、−SOFの信号も消失し、極めて強い−CFSOHの信号が観察され、これは、反応中、−SOFから−SOHへの変換を示した。二重結合の信号は、FT−IR分析により、単離された生成物から観察されず、これは、CH=CH−及びCF=CFO−基のオリゴマー化を示した。
【0199】
スルフィン酸塩モノマー1の調製
3Lの3口丸底フラスコに、255g(0.67モル)のCF2=CF−O−C4F8−SO2F、MV4S及び600mLの試薬用エタノール溶媒を添加した。この溶液を撹拌し、0℃に冷却した。更なる44g(1.16mol)のNaBH4を、2時間にわたって少量ずつ添加し、1分量当たり5℃の発熱温度上昇があった。NaBH4の添加を通して、この反応は、10℃未満に維持した。フラスコを室温まで加温して、スラリーを30分間攪拌した。更なる1250gの水中の250gの濃硫酸を、ゆっくりと添加し、32℃の温度上昇があった。500gのMTBEの充填を用いて、上相の生成物を抽出した。溶媒を真空脱気し、固体を濾過により除去した。212gのペルフルオロビニルエーテルスルフィン酸(MV4SO2H)の収率が単離され、110gのMV4SO2Hが、75gの水中の19gの27%の水酸化アンモニウムで滴定された。固体ペルフルオロビニルエーテルスルフィン酸アンモニウム塩(MV4SO2NH4)の定量収率が、真空脱気後に単離され、表面張力が測定された。
【0200】
スルフィン酸塩モノマー2の調製
1Lの3口丸底フラスコに、45g(0.10モル)のCF=CF−O−CFCF(CF)−C−SOF(MV3b2S)及び180mLの試薬用エタノール溶媒を添加した。この溶液を撹拌し、0℃に冷却した。更なる6.9g(0.18モル)のNaBHを、30分間にわたって少量ずつ添加し、1分量当たりわずかな発熱温度上昇があった。NaBHの添加を通して、この反応を、10℃未満に維持した。フラスコを室温まで加温して、スラリーを30分間攪拌した。250gの水中の更なる50gの濃硫酸をゆっくりと添加し、39℃の上昇があった。150gのMTBEの充填を用いて、上相の生成物を抽出した。溶媒を真空脱気し、固体を濾過により除去した。42gのペルフルオロビニルエーテルスルフィン酸(MV3b2SO2H)の収率が単離され、10gのMV3b2SO2Hが、10gの水中の1.5gの27%の水酸化アンモニウムで滴定された。固体ペルフルオロビニルエーテルスルフィン酸アンモニウム塩(MV3b2SO2NH4)の定量収率が、真空脱気後に単離され、表面張力が測定された。
【0201】
スルフィン酸塩モノマー3の調製
600mLのPARR圧力反応器に、223gのI(CFI(MW=454、0.491モル)を、4.58gの反応開始剤の存在下で、15.4gのCH=CH(MW=28、0.55モル、少量ずつ充填)と、60psi(414kPa)以下で、60℃で24時間反応させた。反応混合物の19F NMR分析は、50%の未反応のI(CFI、43%のICHCHCFCFCFCFI、及び7%のICHCHCFCFCFCFCHCHIを示した。標準圧で反応混合物の蒸留は、70gの純粋なI(CFI(31.4%)及び16.5gのI(CFIとICHCHCFCFCFCFIの混合物(MW=482)を回収した。真空中の蒸留により、79.1gのICHCHCFCFCFCFI(MW=482、約33.4%の単離収率と同等である)が、88〜91℃の沸点/7〜7.5mmHgで単離された。GC(ガスクロマトグラフィー)分析は、95%の純度を示した。残りの固体残留物から、12gのICHCHCFCFCFCFCHCHIが、精製後、ヘキサン(融点96〜97℃)からの再結晶により単離された。ICHCHCFCFCFCFIに対する、19F NMR、−57(m、−CFI)、−111(m、2F)、−113(m、2F)、及び−121(t、−CFCH−)ppm。
【0202】
窒素下で、50gの上記の蒸留したICHCHCFCFCFCFI(MW=482、95%、0.1モル)を、50gのCHCN及び68gのHO中の26gのNa(MW=174、91%、0.136モル)、及び13gのNaHCO(MW=84、0.154モル)で、室温で2時間処理した。19F NMRは、−CFI(−67ppm)の完全な変換が、約−130ppmで、対応する−CFSONaを形成し、所望のICHCH(CFSONaを得たことを示した。混合物を濾過して、固体を除去した。濾過した溶液は、2つの相を示し、19F NMR分析に基づいて、上相のみが、フッ素化された生成物を示した。上相を分離し、回転蒸発により溶媒を除去して、76.5gの湿式固体を得た。この湿式固体を、水中に溶解し、−115(dxt)、−122(m)、−124(m)、及び−130(dxt)ppmの化学シフトを記録した。ICHCH−における影響は、H NMR分析(−CHIに対して2.5〜3ppmの多重線及び−CHCF−)に対して3.2ppm(txm))に基づいて、脱ハロスルフィン酸化中に観察されなかった。
【0203】
上記のパートIIからのICHCH(CFSONa固体を、エタノール中に溶解し、8.7gのKOH(MW=56、85%、0.132モル)を用いて、室温で、次いで、50℃で8時間処理して、固体を沈殿させた。反応混合物を20℃に冷却し、固体を除去した。19F NMRにおける有意な変化は観察されなかった。溶媒を取り出し、得られた固体を、pH<2になるまで2N HSOで酸性化した。酸性化した溶液を、t−BuOMe(3回、それぞれ100mL)で抽出し、合わせたエーテル溶液をMgSOで乾燥させた。最後に、溶液を濾過し、溶媒を取り出し、水溶性である、28gの所望の半固体の生成物、CH=CH(CFSOH(MW=292)を得た。生成物の構造は、NMR分析、19F NMRにより、−115(m、=CHCF−)、−122(txm)、−125(txm)、及び−130(t、−CFSOH);H NMR、4.4〜5.6(m)ppmであることが確認され、これは、これ以上、ICHCH−の信号がないことを示した。しかしながら、エタノール残留物は、最終生成物において確認され、これは、反復調製からの酸性化前に、固体を完全に乾燥させることにより、除去することができる。
【0204】
重合実施例1
4リットルの反応容器を、2,590gの水、50gの水を含む2gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)、50gの水を含む4gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、及び6.3gの50%の「スルフィン酸塩オリゴマー1」と1.1gの28%のNHOHの混合物で充填した。混合物のモル比は、1:1であった。反応容器を排気し、真空を破り、25psi(0.17MPa)になるまで窒素を加圧した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を80℃まで加熱し、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(SynQuest Labs Inc.(Alachua,FL)から入手可能)、及び3−エトキシドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン(3M Co.(St.Paul,MN)からHFE 7500として入手可能)のブレンドを用いて82psi(0.51MPa)まで加圧した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500のブレンドを調製するために、1リットルのステンレス鋼シリンダーを排気し、窒素で3回パージした。1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及びHFE 7500をシリンダーに添加した後、添加した1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの量を基準としてHFPを添加した。次にブレンドを反応容器に取り付け、窒素ブランケットを使用して供給した。ブレンドは、97.3重量%のHFP、1.4重量%の1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及び1.4重量%のHFE 7500を含有していた。次に、反応容器にフッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500の上記ブレンドを充填し、反応容器圧力を220psi(1.52MPa)にした。VDF及びHFP、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500のブレンドの全プレチャージは、それぞれ、99g、及び179gであった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500とのブレンド、及びVDFを反応容器へ連続的に供給し、圧力を220psi(1.52MPa)に維持した。ブレンドとVDFの重量比は、0.691であった。4.3時間後、モノマー及びブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率33.4重量%及びpH 3.6を有した。分散体粒径は50nmであり、分散体の総量は約3,986gであった。
【0205】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を3038gの1.25重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて.34のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、77.6モル%のVDFの共重合化単位及び22.4モル%のHFPを含有していた。フッ素含量は、66.1重量%であった。ムーニー粘度は、ASTM D1646−06 TYPE Aに従って、MV 2000装置(Alpha Technologies(Akron,OH)から入手可能)にて、大型ローター(ML 1+10)を用いて121℃にて測定した。結果はムーニー単位で報告されている。
【0206】
重合実施例2
4リットルの反応容器を、2,590gの水、50gの水を含む2gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)、50gの水を含む4gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、及び4.0gの50%の「スルフィン酸塩オリゴマー3」と2.2gの28%のNHOHの混合物で充填した。混合物のモル比は、1:1であった。反応容器を排気し、真空を破り、25psi(0.17MPa)になるまで窒素を加圧した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を80℃まで加熱し、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(SynQuest Labs Inc.(Alachua,FL)から入手可能)、及び3−エトキシドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン(3M Co.(St.Paul,MN)からHFE 7500として入手可能)のブレンドを用いて82psi(0.51MPa)まで圧入した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500のブレンドを調製するために、1リットルのステンレス鋼シリンダーを排気し、窒素で3回パージした。1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及びHFE 7500をシリンダーに添加した後、添加した1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの量を基準としてHFPを添加した。次にブレンドを反応容器に取り付け、窒素ブランケットを使用して供給した。ブレンドは、97.2重量%のHFP、1.4重量%の1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及び1.4重量%のHFE 7500を含有していた。次に、反応容器にフッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500との上記ブレンドを充填し、反応容器圧力を220psi(1.52MPa)にした。VDF及びHFP、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500のブレンドの全プレチャージは、それぞれ、99g、及び179gであった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7500とのブレンド、及びVDFを反応容器へ連続的に供給し、圧力を220psi(1.52MPa)に維持した。ブレンドとVDFの比は、重量比で0.691であり、重合のために乳化剤は使用しなかった。5.6時間後に、モノマー及びブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率30.4重量%及びpH 3.8を有した。分散体粒径は177nmであり、分散体の総量は3,857グラムであった。
【0207】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を3038gの1.25重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、100℃にて12.3のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、79.8モル%(62.7重量%)のVDFの共重合化単位及び20.2モル%(37.3重量%)のHFPの共重合化単位を含有していた。フッ素含量は65.5重量%であった。ムーニー粘度は、ASTM D1646−06 TYPE Aに従って、MV 2000装置(Alpha Technologies(Akron,OH)から入手可能)にて、大型ローター(ML 1+10)を用いて121℃にて測定した。結果はムーニー単位で報告されている。
【0208】
重合実施例3
4リットルの反応容器を、2,250gの水、1.7gのマロン酸ジエチル(DEM)、及び5.2gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)を含有する水溶液、5.0gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、及び100gの水中4.4gの「スルフィン酸塩モノマー1」(固体のアンモニア中和型)で充填した。固体試薬を添加した容器をすすぎ、全325gの洗浄水を反応容器に添加した。反応容器を排気し、真空を破り、その容器を25psi(0.17MPa)になるまで窒素を圧入した。この排気及び加圧サイクルを3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を73.9℃まで加熱し、22gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)を用いて圧入した。次いで、反応容器を、139gのフッ化ビニリデン(VDF)及び109gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)で充填した。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器の圧力が低下するのに伴い、HFP及びVDFを反応容器に連続して供給して、圧力を160psi(1.11MPa)に維持した。HFPとVDFの重量比は0.651であった。3.0時間後に、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率31.0重量%及びpH 3.7を有した。ラテックス中の平均粒径は127nmであり、分散体の総量は約3,986gであった。
【0209】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を3038gの1.25重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて56のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、77.3モル%のVDFの共重合化単位及び22.7モル%のHFPを含有していた。フッ素含量は、66.1重量%であった。ムーニー粘度は、ASTM D1646−06 TYPE Aに従って、MV 2000装置(Alpha Technologies(Akron,OH)から入手可能)にて、大型ローター(ML 1+10)を用いて121℃にて測定した。結果はムーニー単位で報告されている。
【0210】
重合実施例4〜7
「スルフィン酸塩モノマー1」の量をそれぞれのレシピにおいて変更することを除いては、実施例3のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0211】
重合実施例8
(水酸化アンモニウム溶液でその場で中和された)「スルフィン酸塩オリゴマー1」を、「スルフィン酸塩モノマー1」の代わりに使用したことを除いては、実施例3のように、重合を実施した。更に、ポリマー分散体(3000g)は、6300gの4.8重量%のMgCl水溶液に添加することにより固化された。表2を参照のこと。
【0212】
重合実施例9
「スルフィン酸塩モノマー2」を、「スルフィン酸塩モノマー1」の代わりに使用したことを除いては、実施例3のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0213】
重合実施例10
「スルフィン酸塩オリゴマー2」を、「スルフィン酸塩モノマー1」の代わりに使用したことを除いては、実施例3のように、重合を実施した。更に、ポリマー分散体(3000g)は、6300gの4.8重量%のMgCl水溶液に添加することにより固化された。表2を参照のこと。
【0214】
重合実施例11
4リットルの反応容器を、2,250gの水、1.8gのマロン酸ジエチル(DEM)、及び9.7gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)、5.3gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、及び100gの水中13.2gの「スルフィン酸塩モノマー1」で充填した。固体試薬を添加した容器をすすぎ、全325gの洗浄水を反応容器に添加した。次いで、反応容器を排気し、真空を破った後、その容器を25psi(0.17MPa)になるまで窒素を圧入した。この排気及び加圧サイクルを3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を71.1℃まで加熱し、40psi(0.27MPa)になるまでヘキサフルオロプロピレン(HFP)を圧入した。次いで、反応容器を、反応容器内で160psi(1.11MPa)の重合条件に達するまでフッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びテトラフルオロエチレン(TFE)の混合物で充填した。昇圧時のHFPとVDFの重量比は3.24であり、昇圧時のTFEとVDFの比は1.00であった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器の圧力が低下するのに伴い、HFP、VDF、及びTFEを反応容器に連続して供給して、圧力を160psi(1.11MPa)に維持した。HFPとVDFの重量比は1.24で維持される一方、TFEとVDFの比は0.73であった。3.0時間後、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率33.6重量%及びpH 2.7を有した。ラテックス中の平均粒径は57nmであり、分散体の総量は約4,061gであった。
【0215】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を3038gの1.25重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。
【0216】
FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、50.0モル%のVDFの共重合化単位、23.9モル%のTFE、及び26.1モル%のHFPを含有していた。フッ素含量は、70.4重量%であった。
【0217】
重合実施例12
「スルフィン酸塩モノマー1」の量が17.6gであったことを除いては、実施例11のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0218】
重合実施例13
「スルフィン酸塩モノマー1」がレシピになかったことを除いては、実施例11のように、重合を実施した。その代わりは、「スルフィン酸塩オリゴマー1」のアンモニウム塩の溶液であった。更に、ポリマー分散体(3000g)は、6300gの4.8重量%のMgCl水溶液に添加することにより固化された。表2を参照のこと。
【0219】
重合実施例14
4リットルの反応容器を、2,250gの水、1.5gのマロン酸ジエチル(DEM)、及び6.0gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)及び50gの水中8.8gの「スルフィン酸塩モノマー1」で充填した。固体試薬を添加した容器をすすぎ、全325gの洗浄水を反応容器に添加した。次いで、反応容器を排気し、真空を破った後、その容器を25psi(0.17MPa)になるまで窒素を圧入した。この排気及び加圧サイクルを3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を71.1℃まで加熱し、22gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)を添加することにより、真空を破って圧入した。次いで、反応容器を、反応容器内で160psi(1.11MPa)の重合条件に達するまでフッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びテトラフルオロエチレン(TFE)の混合物で充填した。昇圧時のHFPとVDFの重量比は5.4であり、昇圧時のTFEとVDFの比は2.7であった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器の圧力が低下するのに伴い、HFP、VDF、及びTFEを反応容器に連続して供給して、圧力を160psi(1.11MPa)に維持した。HFPとVDFの重量比は0.63で維持される一方、TFEとVDFの比は1.83であった。6.5時間後、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率17.2重量%及びpH 2.0を有した。ラテックス中の平均粒径は132nmであり、分散体の総量は約3,271gであった。
【0220】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を3038gの1.25重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。
【0221】
重合実施例15〜17
「スルフィン酸塩モノマー1」の量がそれぞれ、11.0、13.2、及び17.6gであったことを除いては、実施例14のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0222】
重合実施例18
「スルフィン酸塩モノマー1」がレシピになかったことを除いては、実施例14のように、重合を実施した。その代わりは、「スルフィン酸塩オリゴマー1」のアンモニウム塩の溶液であった。更に、ポリマー分散体(3000g)は、6300gの4.8重量%のMgCl水溶液に添加することにより固化された。表2を参照のこと。
【0223】
重合実施例19
4リットルの反応容器を、2,590gの水、50gの水を含む2gの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)、50gの水を含む4gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、及び6.3gの50%の「スルフィン酸塩オリゴマー1」(0.0087モルの−SOH機能)と1.1gの28%のNHOHの混合物で充填した。混合物のモル比は、1:1であった。反応容器を排気し、真空を破り、25psi(0.17MPa)になるまで窒素を加圧した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器を80℃まで加熱し、82psi(0.51MPa)になるまでヘキサフルオロプロピレン(HFP)を圧入した。次いで、反応容器をフッ化ビニリデン(VDF)及び上記ヘキサフルオロプロピレン(HFP)で充填し、反応容器の圧力を220psi(1.52MPa)にした。VDF及びHFPの全プレチャージはそれぞれ、103g、及び207gであった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器の圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びVDFを反応容器に連続して供給して、圧力を220psi(1.52MPa)に維持した。HFPとVDFの重量比は0.691であった。5.3時間後、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率30.4重量%及びpH 4.0を有した。分散体粒径は、83nmであり、分散体の総量は3,959グラムであった。
【0224】
固化のために、上記のように作製された3000gの分散体を6300gの4.8重量%のMgCl水溶液に添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過すること、及びゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全4回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを130℃の炉内で16時間にわたって乾燥させた。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて181のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、62.2重量%のVDFの共重合化単位及び37.8重量%のHFPを含有していた。フッ素含量は、65.6重量%であった。ムーニー粘度は、ASTM D1646−06 TYPE Aに従って、MV 2000装置(Alpha Technologies(Akron,OH)から入手可能)にて、大型ローター(ML 1+10)を用いて121℃にて測定した。結果はムーニー単位で報告されている。
【0225】
重合実施例20
重合実施例20では、12.6gの25%の「スルフィン酸塩オリゴマー4」水溶液が「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されたことを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。7.2時間後、重合実施例19のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率13.5重量%及びpH 4.0を有した。分散体粒径は118nmであり、分散体の総量は約3,115gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて104のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、60.2重量%のVDFの共重合化単位及び39.8重量%のHFPを含有していた。フッ素含有量は、66.0重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0226】
重合実施例21
重合実施例21では、6.3gの50%の「スルフィン酸塩オリゴマー5」水溶液が「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されたことを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。7.6時間後、重合実施例19のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率9.1重量%及びpH 3.4を有した。分散体粒径は109nmであり、分散体の総量は約2,985gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて36のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、55.8重量%のVDFの共重合化単位及び44.2重量%のHFPを含有していた。フッ素含量は、66.7重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0227】
重合実施例22
重合実施例22では、10.9グラムの29%の「スルフィン酸塩オリゴマー6」水溶液が「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されたことを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。5.3時間後、重合実施例19のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率12.9重量%及びpH 3.6を有した。分散体粒径は、86nmであり、分散体の総量は約3,101gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて49のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、59.0重量%のVDFの共重合化単位及び41.0重量%のHFPを含有していた。フッ素含有量は、66.2重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0228】
重合実施例23
重合実施例23では、6.3gの50%の「スルフィン酸塩オリゴマー7」水溶液が「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されたことを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。5.4時間後、重合実施例19のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率32.1重量%及びpH 3.7を有した。分散体粒径は123nmであり、分散体の総量は約3,953gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて196のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、57.0重量%のVDFの共重合化単位及び43.0重量%のHFPを含有していた。フッ素含量は、66.5重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0229】
重合比較実施例A
ADONAを、「スルフィン酸塩モノマー1」の代わりに使用したことを除いては、実施例3のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0230】
重合比較実施例B
重合において、「スルフィン酸塩モノマー1」を使用せず、乳化剤を全く使用しなかったことを除いては、実施例3のように、重合を実施した。表2を参照のこと。
【0231】
重合比較実施例C
「スルフィン酸塩モノマー1」がレシピになかったことを除いては、実施例11のように、重合を実施した。この重合において界面活性剤を使用しなかった。表2を参照のこと。
【0232】
重合比較実施例D
「スルフィン酸塩モノマー1」がレシピになかったことを除いては、実施例11のように、重合を実施した。その代わりは、ADONAの溶液であった。表2を参照のこと。
【0233】
重合比較実施例E
「スルフィン酸塩モノマー1」がレシピになかったことを除いては、実施例14のように、重合を実施した。その代わりは、ADONAの溶液であった。この重合の結果は、液体分散液ではなく、半固体のペーストであった。表2を参照のこと。
【0234】
重合比較実施例F
「スルフィン酸塩オリゴマー1」及びNHOHが使用されなかったことを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。2.9時間後、重合実施例19のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率31.5重量%及びpH 4.2を有した。分散体粒径は389nmであり、分散体の総量は約3,890gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて、180℃のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、60.7重量%のVDFの共重合化単位及び39.3重量%のHFPを含有していた。フッ素含量は、65.9重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0235】
重合比較実施例G
重合実施例19において「スルフィン酸塩オリゴマー1」としてモル当量である5.2gの48%のC4モノスルフィン酸塩CSOH(0.0087モルの−SOH機能)が、「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されることを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。3.0時間後、重合実施例20のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率30.4重量%及びpH 3.4を有した。分散体粒径は、573nmであり、分散体の総量は約3,898gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて、162℃のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、61.1重量%のVDFの共重合化単位及び38.9重量%のHFPを含有した。フッ素含量は、65.8重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0236】
重合比較実施例H
重合実施例19において「スルフィン酸塩オリゴマー1」としてモル当量である1.23gのC3ジスルフィン酸HOSCSOH(0.0087モルの−SOH機能)が、「スルフィン酸塩オリゴマー1」の代わりに使用されることを除いては、重合実施例19のように、フルオロエラストマーが重合化され、試験された。3.0時間後、重合実施例20のように、モノマーの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率31.5重量%及びpH 4.0を有した。分散体粒径は407nmであり、分散体の総量は約4,013gであった。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、121℃にて162のムーニー粘度を有した。FT−IR分析によると、フルオロエラストマーは、60.7重量%のVDFの共重合化単位及び39.3重量%のHFPを含有していた。フッ素含量は、65.9重量%であった。重合及び試験の結果は表2にまとめられている。
【0237】
【表2】
【0238】
1=すべてのデータはダイン/cmであり、2=M1はモノマー1等であり、3=O1はオリゴマー1等である。
【0239】
【表3】
【0240】
使用されたすべての乳化剤は、アンモニウム塩であり、乳化剤の割合(%)は、最終ポリマー分散体の重量に基づいた。
【0241】
** 凝集され、分散体は形成されなかった。
【0242】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容を、あたかもそれぞれが個々に援用されたのと同様にしてそれらの全容を援用するものである。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる代表的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲及び本プロセスにより作製された多層物品によってのみ限定されると意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。