特許第5986110号(P5986110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986110子宮頚部の異形成または癌腫の治療用の亜セレン酸あるいは亜セレン酸イオン含有化合物を含有する医薬調製物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986110
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】子宮頚部の異形成または癌腫の治療用の亜セレン酸あるいは亜セレン酸イオン含有化合物を含有する医薬調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/04 20060101AFI20160823BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A61K33/04
   A61K47/38
   A61K47/12
   A61K47/04
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/107
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61P15/00
   A61P29/00
   A61P35/00
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-553740(P2013-553740)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2014-505708(P2014-505708A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】AT2012000032
(87)【国際公開番号】WO2012109685
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】A201/2011
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513208135
【氏名又は名称】セロ メディカル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SELO MEDICAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フックス、 ノルベルト
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0048134(US,A1)
【文献】 Cell Biol Toxicol,2008年,Vol. 24,p. 123-141
【文献】 Oncology,1992年,Vol. 49,p. 237-240
【文献】 新・薬剤学総論(改訂第3版),1987年 4月10日,p. 414-416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PAP III以上のPAPスコア、及び/又はCIN I以上のCINスコアを有する子宮頚部細胞の異形成治療用の医薬組成物であって、
亜セレン酸イオン含有化合物と、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、炭酸、硫酸、硝酸、塩化水素酸、酒石酸、シュウ酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種の製薬的に許容される酸と、を含有し、
外用として、あるいは粘膜または膣内への投与用として調製されている
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
ゲル化剤を含有することを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
水性のゲル化剤含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースから選択される、ゲル化剤含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ゲルの形状で存在しており、工学的な分散媒体、及び/又は、吸着剤として、高密度分散された二酸化ケイ素を含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
7.0未満pH値を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
溶液、エマルジョン、軟膏またはスポンジ(タンポン)の形状をとることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらなる添加物及び/又はさらなる活性成分含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤またはそれらの組み合わせを含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
PAP III、PAP IIIDのPAPスコアを有する、子宮頚部の炎症を治療するために使用されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
子宮頚部の癌腫を治療するために使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
水性ゲル化剤として、セルロース誘導体を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項13】
ゲル化剤として、ヒドロキシエチルセルロースを含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
4.0〜2.5の範囲のpH値を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
緩衝液成分、着色剤、安定化剤、担体物質またはそれらの組み合わせを含有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜セレン酸イオン含有化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の子宮頚部の炎症性及び/又は進行性の異形成は、着実に拡大している社会的な健康問題である。子宮頚部の細胞塗布物の検査は、ギリシャ人医師のゲオルグ・パパニコロウ(George Papanicolau)により開発され、そして、塗布物は、所謂、ミュンヘン分類基準II“Munchener Nomenklatur II”に基づき分類される。この基準では、分類PAP Iは正常な結果に、PAP IIは低度の炎症性及び/又は進行性の異形成に、PAP IIIは判別することができず精査を必要とする細胞プロファイルに、PAP IIIDは異形成に、PAP IVは重篤な癌腫の初期段階に、ならびにPAP Vは悪性腫瘍に、対応している。異形成PAP IIIDおよびPAP IVの形状は、細胞学的には、軽度の異形成に対するCIN 1、中等度の異形成に対するCIN 2、重度の異形成に対するCIN 3の段階を持つ、所謂、子宮頚部上皮内新生物“cervikale intraepitheliale Neoplasien”(CIN)にさらに分類される。CIN 1(PAP IIID)から、CIN 2(PAP IIID)、CIN 3(PAP IV)までの組織学的分類に類似して、世界の英米地域で使用される、所謂、ベテスタ分類も参照される。この分類では、低度扁平上皮内病変“Low-Grade Squamous Intraepithelial lesion”(LSIL)は、ミュンヘン分類のCIN 1に対応しており、より高度の細胞病変、すなわち、高度扁平上皮内病変“High-Grade Squamous Intraepithelial lesion”(HSIL)は、WHOの分類CIN 2ならびにCIN 3に対応している。
【0003】
1年の間に、軽度の異形成(PAP IIID / CIN 1 / LSIL)が正常な結果(PAP IならびにPAP II)まで退縮する平均的頻度は、ほぼ15%程度と低い。軽度の異形成(PAP IIID / CIN 1 / LSIL)がより高度の異形成に進行する傾向は、一般に7%を超える、平均的な一年間の移行確率を示すが、より高度の異形成が子宮の癌腫へと進行する頻度は、0.74%である。
【0004】
細胞病変の重篤度ならびにその存在部位に依存して、子宮頚部上皮内新生物(CIN)ならびに子宮頚部の微小浸潤癌の治療に対する、現在の国際的な婦人科のガイドラインは、病変組織の表面の除去、外科用メス、レーザまたはLEEP(ループ式電気外科円錐切除法)を利用した円錐切除、あるいは子宮摘出を含んでいる。現在のところ、それ以外の非外科的な治療法は知られていない。
【0005】
電気化学的な視点では、炎症性の組織病状経過は、常に、所謂、活性酸素種(ROS)、すなわち、フリーラジカルおよび過酸化物の(局所的な)増加を伴っている。これら酸化性の炎症性因子の自発的な寛解の状況においては、体自体の免疫系の応答能ならびに体内の内因性および外因性の抗酸化剤の濃度が重要な生物学的な役割を果たしている。抗酸化性組成物の抗炎症性ならびに抗ウイルス性効果は、既に多数の学術的刊行物ならびに国際的な特許文献(すなわち、特許文献1:WO2001/093910A2と特許文献2:WO2003/047604A1)において、検証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2001/093910号
【特許文献2】国際公開第2003/047604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、子宮頚部の炎症、異形成及び又は癌腫の予防ならびに治療のための新たな手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、子宮頚部の炎症、異形成、及び/又は癌腫の治療に使用される、亜セレン酸イオン含有化合物、ならびに、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、炭酸、硫酸、硝酸、塩化水素酸、フルーツ酸(例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、特にはクエン酸)またはそれらの混合物から選択される、製薬的に許容される酸を含有する医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に関連して、子宮頚部の癌腫が早期に発見された範囲内では、その後の(WO2001/093910A2ならびにWO2003/047604A1に基づく)抗酸化性のセレン含有調製物の生体内の局所投与は、驚くべきことに、負の細胞病変(異形成および癌腫)に対して、明確な影響を有することも見出された。子宮における、HPVに起因する疾患とHPVに起因していない疾患の双方に対して、本発明は適合している。HPV感染の明確の検出は、しばしばその後の治療法の決定に影響を及ぼさないため、婦人科診療において、HPVの検出、その特定はしばしば省略されるので、前記の特徴は、実用上極めて重要である。しかし、HPVに起因していない子宮の疾患の独創的な治療(すなわち、子宮頚部の炎症、異形成及び/又は癌腫の治療、あるいは医薬品としての本発明にかかる調製物の使用)は、本発明の特に好ましい実施形態である。従って、本発明は、特定の病原体を標的とする方法を限定的に示すものではなく、寧ろ、決められた方法による、子宮頚部の炎症、異形成及び/又は癌腫の治療を対象としており、すなわち潜在的な病原体が疾病の症状を引き起こした後(ずっと後)でもその治療法を採用することができる。
【0010】
強化された抗酸化能を具える組成物は、無機のセレン化合物の水溶液に、上述の酸を添加することにより提供されることを示している。その際、本発明に基づき調製された組成物、すなわち、特には、溶液、ゲル、エマルジョン、分散液、軟膏等は、前記酸の存在によって、少なくとも限られた期間は、強化された抗酸化能を保持するように、本発明に従って使用できるため、本発明による治療効果を発揮する。治療対象部位に投与した際、強化された抗酸化能は、依然として存在しており、また、例えば、投与によって、(例えば、静脈内投与の場合)血液、(例えば、経口投与の場合)消化器流路の内容物等の、溶液あるいは体液によって、直ちに希釈されていない場合に相当する。
【0011】
従って、本発明は、好ましくは、外用(例えば、表皮上あるいは口腔内)、あるいは、粘膜上への直接投与(粘膜塗布)用の調製物の表皮上、粘膜上ならびに膣内投与に関する。表皮上、粘膜上ならびに膣内投与に適合する典型的な投与用剤型は、当業者には公知であり、また、関連する薬局方中に記載されている。
【0012】
亜セレン酸塩と上述の酸の必須成分に加えて、本発明にかかる組成物は、それ以外の適合する成分及び/または薬学的に許容される添加物を含有することもできる。本発明にかかる組成物は、該組成物100g当たり、好ましくは1〜500mgの範囲、より好ましくは10〜100mgの範囲、特には30〜70mgの範囲の含有量で亜セレン酸塩を含有する。好ましくは、本発明にかかる組成物は、(40℃で、結晶水の離脱が開始する、5水和物として、多くの場合存在している)亜セレン酸ナトリウムの形状の亜セレン酸塩を含有している。
【0013】
非依存的に、本発明にかかる組成物は、(特には、前記酸を固体形状で添加すると仮定する場合)該組成物100g当たり、好ましくは酸自体を1mg〜10gの範囲、より好ましくは酸自体を10mg〜5gの範囲、特には酸自体を100mg〜1gの範囲の総含有量で、一種類またはそれ以上の酸を含有する。代わりに、前記酸は、液体形状(例えば、水とともに、すなわち、水溶液として)で添加することもできる。本発明にかかる組成物に対して、それぞれ、場合によっては、さらなる成分を含有してもよい、水ならびに水溶液を、該組成物100g当たり、0〜(約)99.9gの範囲、好ましくは50〜99gの範囲、特には80〜98gの範囲の含有量で添加することもできる。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明は、ゲルの形状で提供される。従って、好ましくは、本発明にかかる組成物はゲル化剤を含有している。ゲル化剤として、無機ならびに有機の水溶性ゲル化剤のいずれも使用することができる。特に適合するゲル化剤は、セルロース誘導体、特には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびに、とりわけヒドロキシエチルセルロースである。ゲル化剤、特に、ヒドロキシエチルセルロースは、該組成物100g当たり、好ましくは0.1g〜30gの範囲、より好ましくは0.5g〜5gの範囲、特には1g〜3gの範囲の合計濃度で使用される。
【0015】
本発明にかかるゲル状組成物の特に好ましい実施形態は、工学的な分散媒体、及び/又は、吸着剤として、二酸化シリコン、特には、例えばWO2001/85852A1に従って、高密度分散された二酸化シリコンを含有する。該組成物100g当たり、好ましくは100mg〜50gの範囲、より好ましくは500mg〜10gの範囲、特には1g〜5gの含有量でSiOを使用する。
【0016】
本発明にかかる組成物は、好ましくは7.0未満、より好ましくは5.0未満、特には4.0〜2.5の範囲のpH値を有する。
【0017】
本発明にかかる組成物は、好ましくは、溶液、エマルジョン、軟膏あるいはスポンジ(タンポン)の形状で存在する。該組成物は、適宜、さらなる添加物、及び/又はさらなる活性成分、特には、緩衝液成分、着色剤、安定化剤、保存料、担体物質、あるいはそれらの組み合わせを含有することができる。かかる物質の好ましい例は、マルトデキストリン、例えば、レモン香料、ペパーミント油等の香料、(保存料として)ソルビン酸カリウムならびに安息香酸ナトリウムなどである。
【0018】
好ましい、さらなる活性成分は、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤またはそれらの組み合わせである。
【0019】
本発明にかかる組成物は、驚くべきことに、≧ PAP III のPAP指数、及び/または、≧ CIN 1 のCIN指数を有する子宮頚部の細胞病変の治療に特に効果的であることが判明した。特に、本発明は、PAP III ならびにPAP IIIDのPAP指数を有する子宮頚部の炎症の治療に使用することができる。
【0020】
さらに、本発明は、子宮頚部の癌腫の治療に適合していることを指摘しておく必要がある。
【0021】
さらなる形態においては、本発明は、子宮頚部の炎症、異形成及び/又は癌腫を治療する方法に関し、その際、上記の疾患を患っている患者に対して、本発明にかかる組成物を有効量で投与する。好ましい用量は、(例えば、ゲルとして存在する際)亜セレン酸ナトリウム・5水和物は、ゲル100g当たり0.005g〜0.1gの範囲、特には、ゲル100g当たり0.01g〜0.1gの範囲となっている。
【実施例】
【0022】
本発明を下記の実施例によってより詳細に説明する。但し、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1:酸性亜セレン酸ナトリウム・ゲルの調製
酸性亜セレン酸ナトリウム・ゲルは、(100g当たり)下記の組成に調製した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例2:子宮頚部の異形成の治療
計画:マルチセンター パイロット 研究
対象者の選択基準:年齢 >19才
PAP ≧III、 <IV
方法:
PAP≧III、<IVと診断された症例に対して、亜セレン酸ナトリウム・ゲル5mlを、1日1回、90日間に亘り、膣内投与する。月経の間は前記投与は中断する。90日間のゲル投与の後、追跡調査を実施する。
【0026】
結果:
31名の患者のうち27名(87.1%)は感応を示した;4名の患者(12.9%)は非感応者であった。
【0027】
実施例3:酸性亜セレン酸ナトリウム・ゲルの効果
【0028】
【表2】
【0029】
2名の患者において、酸性亜セレン酸ナトリウム・ゲルを適用することによって、該ゲルは、本発明に係る効果を発揮し、そして、子宮頚部の異形成に治療において、効果的に使用できることを示すことができた。
【0030】
実施例4:(実施例1に従って調製された)酸性亜セレン酸ナトリウム・ゲルを用いた、38才の患者における、子宮頚部の扁平上皮癌の治療
子宮頚部の明白な異形成(ステージ PAP IV、CIN 3による生検結果)のため、1975年12月31日出生の患者IGは、オーストリアの総合公立病院に、2008年5月28日〜2008年6月2日の間の入院期間中に、子宮頚部の掻爬ならびに円錐切除を施術された。患者から採取された、組織サンプルの細胞学的検査を含む、さらなる診察の結果、子宮頚部の侵襲性の扁平上皮癌、ならびに、その内部に、ステージ FIGU IB 1の癌腫の診断がなされた。この診断結果は、他のオーストリアの病院の婦人科において、引き続き入院している間に確認された。
【0031】
CT、MRI、ならびに超音波検査の結果、子宮頚部の上方領域中に位置する、大きさ10〜12mmの明白な悪性腫瘍と診断され、既に、卵管峡部まで拡がっているが、リンパ系を介する転移拡散にはまだ至っていない。少なくとも、残留腫瘍の位置が卵管峡部の領域内であるため、この結果から、かかる腫瘍の位置に対しては子宮を保存して手術を行うことは不可能であり、Wertheim PIVER IIに従った根治的な手術が治療として推奨された。決定を下すために極めて時間的な制約があったが、患者は、医学的なセカンド・オピニオンを求め、そして、最終的に、本発明にかかる調製物を用いる子宮を保存することを可能とする治療を受けることを決定した。本発明にかかるゲルを用いた4か月の治療期間の後、継続的な婦人科的、放射線による、ならびに、組織学的な、患者の経過観測の結果、炎症の鎮静、ならびに、腫瘍サイズの実質的な低減が得られた。本発明にかかる調製物を用いたさらに2カ月間の治療の後には、腫瘍は消滅し、そして組織学的な細胞塗布において、PAP II+まで炎症の鎮静がもたらされた。