(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986145
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ポータブル・デバイス、ケーブル・アセンブリおよびUSBシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20160823BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20160823BHJP
G06F 1/18 20060101ALI20160823BHJP
G06F 3/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
G06F1/26 F
H02J7/02 B
G06F1/18 D
G06F3/00 Q
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-136467(P2014-136467)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15005(P2016-15005A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 記稔
(72)【発明者】
【氏名】右田 剛
【審査官】
佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−009208(JP,A)
【文献】
特開2003−061256(JP,A)
【文献】
特開2005−025405(JP,A)
【文献】
特開2006−099354(JP,A)
【文献】
特開2008−158840(JP,A)
【文献】
特開2013−109518(JP,A)
【文献】
特開2014−003889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
G06F 1/18
G06F 3/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル・デバイスとケーブル・アセンブリを含むUSBシステムであって、
前記ケーブル・アセンブリが、
D±ピンとIDピンとVBUSピンを含むプラグと、
D±ピンとVBUSピンを含み周辺デバイスに接続が可能な第1のUSBコネクタと、
D±ピンとVBUSピンを含みUSB充電器に接続が可能な第2のUSBコネクタと、
前記USB充電器が接続されたときに前記IDピンをグランド状態にし、前記USB充電器が接続されないときに前記IDピンをフローティング状態にするコントロール・ブロックとを有し、
前記ポータブル・デバイスが、
充電式の電池と、
D±ピンとIDピンとVBUSピンを含み前記プラグの接続が可能なUSB規格のレセプタクルと、
USBコントローラと、
前記電池を充電する充電モードまたは前記電池の電圧を前記VBUSピンに出力する出力モードで動作することが可能な電力部と、
前記IDピンの電位と前記VBUSピンの電圧に応じて前記電力部の動作モードを制御する制御部と、
前記D±ピンの電位から前記レセプタクルに接続されたデバイスの種類を識別して前記制御部に制御信号を出力する検出部と
を有するUSBシステム。
【請求項2】
前記ポータブル・デバイスがUSB_OTG規格に適合するデュアル・ロール・デバイスである請求項1に記載のUSBシステム。
【請求項3】
前記制御部は前記VBUSピンに電圧が印加されてから所定の時間が経過した後に検出した前記IDピンの電位がグランド状態だと判断したときは前記電力部を充電モードに設定する請求項2に記載のUSBシステム。
【請求項4】
前記検出部は前記D±ピンの電位から前記第1のUSBコネクタに前記周辺デバイスが接続されたと判断したときに前記レセプタクルと前記USBコントローラのD±ピンを接続する請求項3に記載のUSBシステム。
【請求項5】
前記制御部は前記VBUSピンに電圧が印加されてから所定の時間が経過した後に検出した前記IDピンの電位がフローティング状態だと判断したときに前記電力部を充電モードに設定する請求項3に記載のUSBシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出部から受け取った制御信号に基づいて前記レセプタクルにUSB充電器が接続されたと判断したときは前記電力部を所定の電流値の充電モードに設定する請求項5に記載のUSBシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部から受け取った制御信号に基づいて前記レセプタクルにホスト・デバイスが接続されたと判断したときは前記電力部を前記所定の電流値よりも小さい電流値の充電モードに設定し、かつ前記レセプタクルと前記USBコントローラのD±ピンを接続する請求項6に記載のUSBシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記VBUSピンに電圧を出力しない周辺デバイスが前記レセプタクルに接続され、かつ前記IDピンがグランド状態のときに前記電力部を出力モードに設定する請求項2に記載のUSBシステム。
【請求項9】
ポータブル・デバイスであって、
充電式の電池と、
D±ピンとIDピンとVBUSピンを含むUSB規格のマイクロABレセプタクルと、
USBコントローラと、
前記電池を充電する充電モードまたは前記電池の電圧を前記VBUSピンに出力する出力モードで動作することが可能な電力部と、
前記マイクロABレセプタクルに、USB充電器と周辺デバイスに接続が可能で、D±ピンとIDピンとVBUSピンを含むプラグを備え、前記USB充電器が接続されたときだけ前記IDピンをグランド状態にするケーブル・アセンブリを前記プラグで接続したときに、前記VBUSピンに電圧が印加されてからVBUSラインの電圧の衝突を防ぐための遅延時間が経過した後に検出した前記IDピンの電位がグランド状態のときに前記電力部を充電モードに設定する制御部と、
前記D±ピンの電位を検出して前記USBコントローラと前記レセプタクルのD±ピンの接続を制御する検出部と
を有するポータブル・デバイス。
【請求項10】
前記制御部は、前記ケーブル・アセンブリから前記USB充電器が外されたときに、前記IDピンの電位を検出して前記VBUSピンに電圧を出力しないように前記電力部を制御する請求項9に記載のポータブル・デバイス。
【請求項11】
マイクロABレセプタクルを通じてポータブル・デバイスをUSB充電器で充電しながら前記ポータブル・デバイスと周辺デバイスのUSB通信を可能にするケーブル・アセンブリであって、
D±ピンとIDピンとVBUSピンを含み前記ポータブル・デバイスのマイクロABレセプタクルに接続が可能なプラグと、
前記周辺デバイスに接続が可能な第1のUSBコネクタと、
前記USB充電器に接続が可能な第2のUSBコネクタと、
前記USB充電器が接続されたときに前記IDピンをグランド状態にし、前記USB充電器が接続されていないときに前記IDピンをフローティング状態にするコントロール・ブロックと
を有するケーブル・アセンブリ
【請求項12】
前記第1のUSBコネクタが標準Aレセプタクルで前記第2のUSBコネクタが標準Aプラグである請求項11に記載のケーブル・アセンブリ。
【請求項13】
前記コントロール・ブロックは、前記USB充電器の電圧を動作信号にして前記IDピンをグランド状態またはフローティング状態に制御するトランジスタを含む請求項11に記載のケーブル・アセンブリ。
【請求項14】
電池を搭載するポータブル・デバイスに実装されたD±ピンとIDピンとVBUSピンを含むUSBレセプタクルに、D±ピンとIDピンとVBUSピンを含むケーブル・アセンブリのプラグを接続して前記ケーブル・アセンブリに接続されたUSB充電器で前記電池を充電しながら前記ポータブル・デバイスと前記ケーブル・アセンブリに接続された周辺デバイスの通信を可能にする方法であって、
前記ケーブル・アセンブリが、前記USB充電器が接続されたときに前記IDピンをグランド状態にしかつ前記VBUSピンに電圧を出力するステップと、
前記ケーブル・アセンブリが、前記USB充電器が外されたときに前記IDピンをフローティング状態にするステップと、
前記ケーブル・アセンブリに前記ポータブル・デバイスと前記USB充電器と前記周辺デバイスが接続されたときに、前記ポータブル・デバイスが前記VBUSピンに所定値以上の電圧を検出してから所定の時間が経過したときに検出した前記IDピンの電位がグランド状態だと判断したときに前記USB充電器で前記電池を充電しかつ前記周辺デバイスとUSB通信をするステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記ケーブル・アセンブリから前記USB充電器が外されたときに、前記ポータブル・デバイスは前記IDピンの電位がフローティング状態であることを確認して前記VBUSピンへ電圧を出力しない請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記USB充電器が再接続されたときに前記ケーブル・アセンブリが前記VBUSピンに電圧を出力しかつ前記IDピンをグランド状態にするステップと、
前記ポータブル・デバイスが前記VBUSピンに所定値以上の電圧を検出してから所定の時間が経過したときに検出した前記IDピンの電位がグランド状態だと判断したときに前記USB充電器で前記電池を充電しかつ前記周辺デバイスとUSB通信をするステップを
有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ケーブル・アセンブリから前記周辺デバイスが外されたときに前記USB充電器が前記電池の充電を継続するステップを有する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ポータブル・デバイスが前記VBUSピンの電圧を検出してから所定の時間が経過したときに検出した前記IDピンの電位がフローティング状態だと判断したときに前記USBレセプタクルに接続されたデバイスで前記電池を充電するステップを有する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスがホスト・コンピュータだと判断したときに前記ポータブル・デバイスがBデバイスとして動作して前記ホスト・コンピュータがVBUSラインを通じて供給する電力で前記電池を充電しながら前記ホスト・コンピュータと通信するステップを有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポータブル・デバイスが前記VBUSピンに所定値以上の電圧を検出しないときに検出した前記IDピンの電位がグランド状態だと判断したときに前記ポータブル・デバイスが前記VBUSピンに電圧を出力して前記周辺デバイスとUSB通信をする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル・デバイスが1個のコネクタを通じて内蔵電池を充電しながら他のデバイスと通信する技術に関し、さらにはそのような充電と通信を同時に行うためのポータブル・デバイスのアダプタとポータブル・デバイスとの連動動作に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト・デバイスと周辺デバイスを接続するコンピュータのインターフェースのひとつにUSBがある。USBでは、ホスト・デバイス(マスターともいう。)が収納するUSBコントローラと周辺デバイス(ターゲット、ファンクション、または単にデバイスともいう。)を1対1でまたはハブを介して接続する。ホスト・デバイスはハードウェアとしてルート・ハブとそこに接続された1つ以上のUSBポート(レセプタクル)を備え、ソフトウェアとしてバスの管理や周辺デバイスとのデータ通信をするOSやデバイス・ドライバを備える。
【0003】
データ転送はホスト・デバイスだけが開始することができ、周辺デバイスはホスト・デバイスからの要求に応じたデータをホスト・デバイスに返すというホストとターゲットの関係で行われる。ホスト・デバイスは通常コンピュータであるが、周辺デバイスにはUSBメモリ、ハードディスク・ドライブ、キーボード、マウス、プリンタ、デジタル・カメラ、およびオーディオ・デバイスなどがある。USB2.0規格のラインは1組の差動型のデータ・ライン(D±)、電源ライン(VBUS)、およびグランド・ライン(GND)で構成されている。USB3.0規格のラインには、これに2組の差動型のデータ・ライン(Tx±、Rx±)が追加される。
【0004】
このようなホスト/ターゲット型のUSB通信に対して、非特許文献1、2は、タブレット端末やスマートフォンのようなパーソナル・コンピュータ(PC)以外のデバイスをホスト・デバイスおよび周辺デバイスのいずれでも動作させるためのUSB_OTG(USB On-the-Go)について規定する。USB_OTG規格に適合するOTGデバイスは、ホスト・デバイスおよび周辺デバイスの両方の機能を備えるという意味でデュアル・ロール・デバイスともいう。
【0005】
ホスト・デバイスが充電式の電池を搭載するスマートフォンやタブレット端末のようなポータブル・デバイスの場合は、レセプタクルに直接接続したUSB充電器でVBUSラインを通じて充電することができる。ポータブル・デバイスがOTGデバイスである場合は、通常1個のマイクロABレセプタクルだけを搭載すればよいため小型化に適しているが、USB充電器と周辺デバイスのいずれかしか接続できないため充電と通信を同時行うことはできない。したがって、オフィスや自宅でポータブル・デバイスを充電しながら周辺デバイスを利用するためには特別な装置が必要になる。
【0006】
非特許文献3は、ポータブル・デバイス(OTGデバイス)のマイクロABレセプタクルにUSB充電器とアクセサリを同時に接続するための標準ACA(Standard Accessory Charger Adapter)について規定する。
図6に示す標準ACA10は、ポータブル・デバイス11に接続するためのマイクロAプラグとアクセサリ13に接続するための標準Aレセプタクルを備えている。標準ACAは、チャージャ・スイッチ19とアダプタ・コントローラ21を含む。アダプタ・コントローラ21はID_OTGラインを通じてポータブル・デバイス11に、グランド状態またはフロート状態のいずれかを表明する。
【0007】
ポータブル・デバイス11は、ID_OTGラインの電位を検出して動作モードを決める。標準ACAに、ポータブル・デバイス11とアクセサリ13とUSB充電器15が同時に接続されたときはUSB充電器がVBUSラインに電圧を出力する。ポータブル・デバイス11はVBUSラインの電源で内蔵電池を充電し、アクセサリ13はVBUSラインの電源で動作することができる。また標準ACAとは別に、OTGデバイスに接続するマイクロAプラグと、USB充電器を接続するマイクロBレセプタクルと、周辺デバイスを接続する標準Bレセプタクルを備えるOTGケーブルが市販されている。OTGケーブルでは、OTGデバイスに接続されるVBUSラインがUSB充電器用と周辺デバイス用に分岐している。
【0008】
特許文献1は、2つのUSBポートを備えるホスト・デバイスと周辺デバイスを接続するUSBケーブル装置を開示する。USBケーブル装置は、ホスト・デバイスに接続される2つのポートのVBUSラインを、ダイオードを介して接続することで、1ポートでは不足する周辺デバイスに供給する電力を他のポートで補うようにしている。特許文献2は、ホスト・デバイスまたは周辺デバイスのいずれか一方で動作するOTGデバイスの電力制御について開示する。
【0009】
OTGデバイスは、USBの動作モードを検出する回路機構からホスト信号HSTおよび周辺信号PERのいずれかを受け取って動作モードを決定する。周辺信号PERがアサートされたときは周辺モードに移行する。周辺モードでは、USBポートに接続されたホスト・デバイスからVBUSを通じてOTGデバイスのUSBトランシーバに電力の供給を受ける。このとき、OTGデバイスの非USB回路機構には、バッテリィから電力が供給される。
【0010】
ホスト信号HSTがアサートされると、VBUSラインの静電容量を充電する充電モードに移行し、VBUSラインの電圧が上昇するとホストモードに移行する。ホストモードでは、バッテリィが非USB回路機構に電力を供給しさらにVBUSラインを通じて周辺デバイスのレシーバに電力を供給する。特許文献3は、携帯電話機の充電装置について開示する。携帯電話機は通信と電源に共用できる通信電源コネクタと専用の充電機器に接続される充電用端子部を備える。PCと携帯電話機の間に挿入される通信インターフェース装置は、携帯電話機に接続される電力ラインと信号ラインを含むケーブルで通信電源コネクタに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−306413号公報
【特許文献2】特開2012−502354号公報
【特許文献3】特開2000−357029号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】On-The-Go and Embedded Host Supplement to the USB Revision 2.0 Specification
【非特許文献2】On-The-Go and Embedded Host Supplement to the USB Revision 3.0 Specification
【非特許文献3】USB Battery Charging Specification Revision 1.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
市販のOTGケーブルは、3個のUSBコネクタを含むためそれぞれに対するデバイスの接続の順番により全体がさまざまな動作状態に遷移する。USB充電器を接続したOTGケーブルをポータブル・デバイスに接続した場合は、ポータブル・デバイスはUSB充電器が供給するVBUSラインの電圧を検出してからIDラインの電位を検出するため、VBUSラインに電源を供給することはない。しかし、OTGケーブルだけを先にポータブル・デバイスに接続すると、ポータブル・デバイスはマイクロAプラグのIDピンの電位(グランド状態)を検出してホスト・デバイスとして動作するためVBUSラインに電圧を出力する。
【0014】
その後、OTGケーブルにUSB充電器を接続すると、VBUSラインでUSB充電器の電圧とポータブル・デバイスの電圧が重なってまたは電圧が衝突してシステムの動作に影響を与える場合がある。一旦正しい順番で接続してから、USB充電器の抜き差しをした場合も同様にVBUSラインの電圧が重なるため、ユーザは接続の順番に常に注意を払う必要がある。特許文献1の発明のようにVBUSラインにダイオードを挿入すれば、他方のポートから当該ポートへの電流の逆流を防ぐことはできるが、当該ポートを通じてポータブル・デバイスに充電電流を供給することはできなくなる。
【0015】
非特許文献3に記載する標準ACAは、ポータブル・デバイス11にマイクロAプラグで接続するため、ポータブル・デバイス11は常にAデバイス(ホスト・デバイス)として動作する。また、マイクロAプラグには、グランドに接続されたIDピンとは別にアダプタ・コントローラ21に接続されたID_OTGラインのピンを追加する必要がある。ポータブル・デバイス11のマイクロABレセプタクルには、標準ACA以外のデバイスも接続されるが、接続前に、ポータブル・デバイス11は接続されるデバイスを認識できない。マイクロAプラグのIDピンの電位(グランド状態)を検出したポータブル・デバイスはホスト・デバイスとして動作してVBUSラインへ電圧を出力する。
【0016】
このとき市販のOTGケーブルで発生するようなVBUSラインでの電圧の衝突を防ぐにはポータブル・デバイス11の構造も複雑になる。特にUSB充電器を取り外しVBUSラインの電圧が消滅すると、マイクロAプラグが接続されたポータブル・デバイスの通常の動作では、VBUSラインに電圧を出力する。したがってその後USB充電器15が再接続されたときに電圧の衝突を防ぐ必要がある。また、ポータブル・デバイス11はできるだけUSBコントローラに変更を加えないで充電と通信を同時に行えるようにすることが望ましい。さらに、充電と通信を可能にするケーブル・アセンブリは、アダプタ・コントローラ21のようなデバイスを含まないようにしてより簡単な構造で製造でき、利用できるUSB充電器15も既存のもののなかから柔軟に選択できるようにしておくことが望ましい。
【0017】
そこで本発明の目的は、ポータブル・デバイスが、1個のレセプタクルを通じて内蔵電池を充電しながら他のデバイスとUSB通信をすることを可能にするケーブル・アセンブリを提供することにある。さらに本発明の目的は、接続の順番に係わらずVBUSラインに電圧の衝突が発生しないようにしたケーブル・アセンブリを提供することにある。さらに本発明の目的は、簡単な構造のケーブル・アセンブリを提供することにある。
【0018】
さらに本発明の目的は、ポータブル・デバイスのUSBコントローラに変更を加えないで実現できるケーブル・アセンブリを提供することにある。さらに本発明の目的は、そのようなケーブル・アセンブリと連動して動作するポータブル・デバイスを提供することにある。さらに本発明の目的は、ポータブル・デバイスとケーブル・アセンブリで構成するUSBシステムおよびそのようなUSBシステムにおいてポータブル・デバイスと周辺デバイスが充電と通信を同時に行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、電池を搭載するポータブル・デバイスのD±ピンとIDピンとVBUSピンを含むUSBレセプタクルに、D±ピンとIDピンとVBUSピンを含むケーブル・アセンブリのプラグを接続して、ケーブル・アセンブリに接続されたUSB充電器で電池を充電しながらポータブル・デバイスとケーブル・アセンブリに接続された周辺デバイスの通信を可能にする。ケーブル・アセンブリは、USB充電器が接続されたときにIDピンをグランド状態にしかつVBUSピンに電圧を出力する。ケーブル・アセンブリは、USB充電器が外されたときにIDピンをフローティング状態にしかつVBUSピンへの電圧の出力を停止する。
【0020】
ケーブル・アセンブリにポータブル・デバイスとUSB充電器と周辺デバイスを接続する。ポータブル・デバイスがUSBレセプタクルのVBUSピンの電圧を検出してから所定の時間が経過したときに検出したIDピンの電位がグランド状態だと判断したときにUSB充電器で電池を充電しかつ周辺デバイスとUSB通信をする。
【0021】
ポータブル・デバイスはIDピンがグランド状態のときは、ホスト・デバイスとして動作してVBUSピンに電圧を出力する。上記の構成によれば、ケーブル・アセンブリに対するポータブル・デバイスとUSB充電器の接続の順番に係わらずVBUSラインでの電圧の衝突を防ぐことができる。たとえば、USB充電器が接続されたケーブル・アセンブリをポータブル・デバイスに接続したときは、ポータブル・デバイスは、USB充電器が出力するVBUSラインの電圧を検出する前にIDピンがグランド状態であることを検出してVBUSに電圧を出力することはなく、先にVBUSの電圧を検出してVBUSの電源で電池を充電することができるため電圧の衝突は発生しない。
【0022】
また、最初にポータブル・デバイスにケーブル・アセンブリを接続したときは、ポータブル・デバイスはIDピンがフローティング状態である限りVBUSピンに電圧を出力しないため、つづいてケーブル・アセンブリにUSB充電器を接続しても電圧の衝突は発生しない。ポータブル・デバイスは、USB_OTG規格に適合するデュアル・ロール・デバイスであってもよい。
【0023】
また、USB充電器からVBUSラインに電源を供給しながらポータブル・デバイスと周辺デバイスがUSB通信を開始した後に、USB充電器を取り外して再接続する場合もある。しかしUSB充電器が取り外されてVBUSラインの電圧が消滅したときに、ポータブル・デバイスが、IDピンがフローティング状態である限りVBUSラインに電圧を出力しないようにすれば、USB充電器を再接続しても電圧の衝突は発生しない。
【0024】
ケーブル・アセンブリから周辺デバイスが外されたときには、USB充電器が電池の充電を継続することができる。ポータブル・デバイスは、VBUSピンの電圧を検出してから所定の時間が経過したときに検出したIDピンの電位がフローティング状態だと判断したときにUSBレセプタクルに接続されたデバイスで電池を充電することができる。このときのデバイスは、DCP、CDP、またはSDPのいずれかとすることができる。
【0025】
デバイスがSDPに相当するホスト・コンピュータだと判断したときポータブル・デバイスはBデバイスとして動作してホスト・コンピュータがVBUSラインを通じて供給する電力で電池を充電しながらホスト・コンピュータと通信することができる。ポータブル・デバイスは、VBUSピンに所定値以上の電圧を検出しないときに検出したIDピンの電位がグランド状態だと判断したときに、VBUSピンに電圧を出力して周辺デバイスとUSB通信をすることができる。このときポータブル・デバイスはAデバイスとして動作する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、ポータブル・デバイスが、1個のレセプタクルを通じて内蔵電池を充電しながら他のデバイスとUSB通信をすることを可能にするケーブル・アセンブリを提供することができた。さらに本発明により、接続の順番に係わらずVBUSラインに電圧の衝突が発生しないようにしたケーブル・アセンブリを提供することができた。さらに本発明により、簡単な構造のケーブル・アセンブリを提供することができた。
【0027】
さらに本発明により、ポータブル・デバイスのUSBコントローラに変更を加えないで実現できるケーブル・アセンブリを提供することができた。さらに本発明により、そのようなケーブル・アセンブリと連動して動作するポータブル・デバイスを提供することができた。さらに本発明により、ポータブル・デバイスとケーブル・アセンブリで構成するUSBシステムおよびそのようなUSBシステムにおいてポータブル・デバイスと周辺デバイスが充電と通信を同時に行う方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ケーブル・アセンブリ100を利用してポータブル・デバイス50がUSB充電器60および周辺デバイス70と接続する様子を説明するための図である。
【
図2】マイクロABレセプタクル51に接続することが可能なデバイスとプラグの種類の一例を説明するための図である。
【
図3】ケーブル・アセンブリ100の回路図である。
【
図5】ポータブル・デバイス50とケーブル・アセンブリ100の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】USB規格に規定するマイクロACAを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[定義]
本明細書で使用する用語の意味は、特に注記しない限りUSB規格に従うが、本明細書で使用する主な用語の意味は以下のとおりである。USB_OTGデバイス(以後、OTGデバイス)は、単一のマイクロABレセプタクルを備え、ケーブルの接続を代えないでホスト・デバイスまたは周辺デバイスのいずれかとして動作することができるデバイスをいう。マイクロABレセプタクルには、マイクロAプラグまたはマイクロBプラグのいずれかを接続することができる。
【0030】
OTGデバイスはマイクロABレセプタクルに、マイクロAプラグが接続されたときはホスト・デバイス(Aデバイス)として動作し、マイクロBプラグが接続されたときは周辺デバイス(Bデバイス)として動作する。OTGデバイスはセッションの開始時に役割を確定したあとにHNP(Host Negotiation Protocol)またはRSP(Role Swap Protocol)を利用して役割を交換することができる。なお、役割を交換してもVBUSへの電力供給は最初にホスト・デバイスとして動作したデバイスが継続して行う。
【0031】
マイクロAプラグおよびマイクロBプラグは、標準的なUSBプラグのピンに対してIDピンが追加されたプラグをいう。マイクロAプラグのIDピンはグランド・ラインに接続され(グランド状態)、マイクロBプラグのIDピンはフローティング状態になっている。グランド状態は直接グランドに接続されている状態に加えて、抵抗を経由してグランドに接続されている状態も含む。Aデバイスは、標準Aレセプタクルを搭載するデバイスおよびマイクロAプラグが挿入されたマイクロABレセプタクルを搭載するデバイスをいう。Aデバイスは、セッション(VBUSに電力が供給されている状態)の開始のときにVBUSに電力を供給するとともにホスト・デバイスとして動作する。
【0032】
Bデバイスは、標準Bレセプタクル、ミニBレセプタクル、またはマイクロBレセプタクルを搭載するデバイスおよびマイクロBプラグが挿入されたかプラグが挿入されていないマイクロABレセプタクルを搭載するデバイスをいう。Bデバイスは、セッションの開始のときにVBUSラインに電圧を出力しないで周辺デバイスとして動作する。ホスト・デバイスは、USBコントローラに加え、CPU、システム・メモリ、およびバスなどのハードウェアとオペレーティングおよびアプリケーションなどのソフトウェアを搭載するデバイスをいう。
【0033】
USB充電器は、商用電源または直流電源を電力源としてVBUSラインを通じてUSBデバイスを充電するUSB規格のDCP(Dedicated Charging Port)をいう。USB充電器のD±ラインは短絡または抵抗で接続されている。AデバイスもBデバイスを充電する機能を備えているがその充電容量はUSB規格で制限される。これに対してUSB充電器の充電容量は、Aデバイスよりも大きくすることができる。
【0034】
本明細書ではUSB規格にない用語として、マイクロABレセプタクルに挿入することができ、かつIDピンの状態をフローティング状態またはグランド状態のいずれかに外から制御できるプラグをマイクロABプラグということにする。また、同様に制御するIDピンを含みミニABレセプタクルに挿入することが可能なプラグをミニABプラグということにする。USBコネクタはUSBプラグとUSBレセプタクルの両方の意味を含むものとする。デバイスとは、USBコネクタで接続することが可能な、Aデバイス、Bデバイス、ケーブル・アセンブリ、およびUSB充電器のいずれかとする。
【0035】
[ネットワーク・トポロジー]
図1は、ケーブル・アセンブリ100を利用してポータブル・デバイス50がUSB充電器60および周辺デバイス70と接続する様子を説明するための図である。ケーブル・アセンブリ100は、コントロール・ブロック101と、マイクロABプラグ105が接続されたUSBケーブル103と、USB2.0規格の標準Aプラグ109が接続されたUSBケーブル107と、コントロール・ブロック101に取り付けられたUSB3.0規格の標準Aレセプタクル111を含んでいる。
【0036】
USBケーブル103は、USB2.0規格の通信をするための一対のUTP(Unshielded Twist Pair)ケーブル、電源ケーブル(VBUS)、グランドケーブル(GND)、およびUSB3.0規格の通信をするための2対のSDP(Shielded Differential Pair)ケーブルとグランド・ドレイン(GND)ケーブルを含んでいる。マイクロABプラグ105、標準Aプラグ109および標準Aレセプタクル111は、ケーブル・アセンブリ100の物理的なインターフェースを構成し、それぞれポータブル・デバイス50、USB充電器60および周辺デバイス70を同時に接続することができる。
【0037】
ポータブル・デバイス50は、AデバイスおよびBデバイスのいずれとしても動作するOTGデバイスであるが、本発明の適用においてはAデバイスだけで動作するホスト・デバイスでもよい。ポータブル・デバイス50は、IDピンを含むマイクロABレセプタクル51を備えている。マイクロABレセプタクルに代えて、IDピンを含むミニABレセプタクルを採用することもできる。
【0038】
ポータブル・デバイス50は、1個だけのマイクロABレセプタクル51を備えている場合にケーブル・アセンブリ100を利用することが最も効果的であるが、本発明の適用においては2個以上のUSBレセプタクルを備えていてもよい。マイクロABプラグ105は、形状はマイクロAプラグまたはマイクロBプラグのいずれかとすることができるがIDピンの状態は、コントロール・ブロック101が制御するため、USBの規格上はマイクロAプラグおよびマイクロBプラグのいずれにも帰属しない。
【0039】
ポータブル・デバイス50は、マイクロABレセプタクル51にケーブル・アセンブリ100に代えて他のデバイスを接続することができる。
図2は、マイクロABレセプタクル51に直接接続することが可能なデバイスとプラグの一例を示している。Bデバイス81は、ポータブル・デバイス50がAデバイスとして動作するようにマイクロAプラグで接続することができる。ポータブル・デバイス82は、OTGデバイスで、一方にマイクロAプラグが接続され他方にマイクロBプラグが接続されたOTGケーブルでポータブル・デバイス50に接続することができる。ポータブル・デバイス50とポータブル・デバイス82をOTGケーブルで直接接続する場合はセッションの開始時に、マイクロAプラグが接続されたデバイスがAデバイスとして動作し、マイクロBプラグが接続されたデバイスがBデバイスとして動作する。
【0040】
ホストPC83は、ホスト・デバイスとして動作するノートブック型またはデスクトップ型のコンピュータで、ポータブル・デバイス50がBデバイスとして動作するようにマイクロBプラグで接続する。ホストPC83は、USB規格に規定するSDP(Standard Downstream Port)に相当する。ホストPC83は、ポータブル・デバイス50と通信しながらVBUSラインに最大0.5Aまたは0.9Aの電流を供給することができる。USB充電器91はマイクロBプラグで接続してポータブル・デバイス50を充電するUSB規格に規定するDCP(Dedicated Charging Port)に相当する。
【0041】
USB充電器91は、マイクロAプラグでポータブル・デバイス50に接続することもできるが、マイクロAプラグが接続されたポータブル・デバイス50は、USB充電器91がVBUSラインに電圧を出力していないときにAデバイスとして動作してVBUSラインに電圧を出力する。その後、USB充電器91がVBUSラインに電圧を出力すると電圧の衝突が起きるため、接続の順番に注意する必要がある。CDP(Charging Downstream Port)93は、SDPより大きな電流を供給できる通信可能なUSB規格のデバイスに相当する。CDP93はホストPCやハブとして実現され、マイクロBプラグで接続してVBUSラインに一例として最大1.5Aの電流を供給することができる。
【0042】
図1に戻って、周辺デバイス70は、標準Aプラグで標準Aレセプタクル111に接続することが可能なBデバイスである。コントロール・ブロック101は、標準Aレセプタクル111に代えて、ミニAレセプタクル、マイクロAレセプタクルまたはマイクロABレセプタクルを採用することもできる。後に明らかになるように、本実施の形態ではVBUSラインに電圧の衝突が発生しないようにするために、ポータブル・デバイス50に特別な動作をするように構成し、周辺デバイス70は通常のデバイスとしている。
【0043】
そのために、Aデバイスとして動作してVBUSラインに電圧を出力するホストPC83は周辺デバイス70に代えてコントロール・ブロック101に接続することはできないようにしている。標準レセプタクル111に代えてマイクロABレセプタクルを採用する場合は、OTGケーブルのマイクロBプラグ側をポータブル・デバイス82にし、マイクロAプラグ側をコントロール・ブロック101側にして接続することができる。しかし、接続時にユーザがプラグの方向に特別な注意を払うことは困難である。先に説明したマイクロACAでは、この点にも特別な工夫をする必要がある。なお、コントロール・ブロック101は、標準Aレセプタクルに代えて標準Bプラグを接続したケーブルを直接接続するようにしてもよい。
【0044】
周辺デバイス70は、一例としてヘッドフォンおよびスピーカなどの音響デバイス、プリンタまたは外付けディスプレイのような出力デバイス、マウスまたはキーボードのような入力デバイス、およびメモリ・キーまたはディスク・ドライブのような記憶デバイスなどとすることができる。周辺デバイス70は、VBUSラインを通じてUSBケーブルから電力は受け取るが動作の主たる電源をAC/DCアダプタのような別電源から受け取るセルフ・パワード・デバイスまたはVBUSラインから受け取った電力だけで動作するバス・パワード・デバイスのいずれであってもよい。
【0045】
USB充電器60は、USB充電器91と同様な構成のDCPで、一例では1.5Aの電流を供給できる。ケーブル・アセンブリ100は標準Aプラグ109に代えてUSB充電器60に適応できる容量を備える他の種類のプラグを採用することもできる。あるいは、コントロール・ブロック101にUSB充電器60を接続するためのレセプタクルを実装することもできる。
【0046】
[ケーブル・アセンブリ]
図3は、ケーブル・アセンブリ100の回路図である。マイクロABプラグ105と標準Aレセプタクル111は、USB2.0規格の信号ピン(D±)、USB3.0規格の信号ピン(Tx±、Rx±)が相互に直接接続されている。またVBUSピン同士も相互に直接接続されている。マイクロABプラグ105のIDピンは、抵抗およびn型MOS−FET121を介してグランドに接続されている。IDピンはn型MOS−FET121を介して直接グランドに接続するようにしてもよい。
【0047】
標準Aプラグ109は、パワー(PWR)・ピンがそれぞれ抵抗を介してn型MOS−FET121のゲートと、p型MOS−FET123のゲートと、n型MOS−FET125のゲートに接続され、さらに直接p型MOS−FET123のソースに接続されている。PWRピンは、抵抗およびn型MOS−FET125を介してグランドに接続されている。p型MOS−FET123のドレインはマイクロABプラグ105と標準レセプタクル111のVBUSピンに接続されている。標準Aプラグ109のD±ピンはいずれにも接続されていない。
【0048】
つぎに、ケーブル・アセンブリ100の動作を説明する。標準Aプラグ109にUSB充電器60が接続されていないときは、MOS−FET121〜123はオフ状態である。標準Aプラグ109にUSB充電器60が接続されると、MOS−FET121〜123はオン状態に移行し、その後USB充電器60が外されるとオフ状態に戻る。USB充電器60は、マイクロABプラグ105に接続されるポータブル・デバイス50および標準Aレセプタクル111に接続される周辺デバイスにVBUS電源を供給する。
【0049】
[ポータブル・デバイス]
図4は、ポータブル・デバイス50の回路図である。
図4は、本発明の理解に必要な構成だけを示している。ポータブル・デバイス50は、USBコントローラ201、充電式の電池203、電力部205、検出部207、制御部209、およびマイクロABレセプタクル51を含んでいる。電池203は電力部205を通じて、USBコントローラ201、電力部205、検出部207および制御部209に電力を供給する。
【0050】
USBコントローラ201は、CPU、システム・メモリ、およびI/O制御回路などとともにSOC(System-on-a-chip)手法で形成されている。USBコントローラ201は、ホスト・デバイスとしてのコントローラの機能とルート・ハブの機能を備えている。USBコントローラ201は、USB2.0規格の通信を行う2.0物理層とUSB3.0規格の通信を行う3.0物理層からなる二重バス構造を採用して2つの規格をサポートする。
【0051】
電力部205、検出部207および制御部209は、SOCの外側にファームウェアを含むハードウェア・ロジック回路で形成することができる。したがって、本実施の形態では、ホスト・コントローラ201にケーブル・アセンブリ100に接続するための変更を加える必要がない。マイクロABレセプタクル51のVBUSピンは電力部205と、抵抗を介してn型MOS−FET211のドレインに接続されている。n型MOS−FET211のドレインは、制御部209に接続されている。n型MOS−FET211のソースはグランドに接続されゲートは電力部205に接続されている。
【0052】
マイクロABレセプタクル51のD±ピンは検出部207に接続され、IDピンは所定の電圧でプルアップされて制御部209に接続されている。USBホスト・コントローラ201のD±ピンは検出部207に接続されている。制御部209は検出部207と電力部205とUSBコントローラ201のIDピンに接続されている。USBホスト・コントローラ201とマイクロABレセプタクル51のUSB3.0規格の信号ピン(Tx±、Rx±)は相互に接続されている。
【0053】
ポータブル・デバイス50は、充電モード、通信モードおよび充電通信モードの3つの動作モードのいずれかで動作する。電池203を充電する充電モードには、USB充電器60またはUSB充電器91で充電する場合と、ホストPC83で充電する場合を含む。通信モードは、ポータブル・デバイスがAデバイスとして通信する場合とBデバイスとして通信する場合を含むこが、Aデバイスとしてだけ通信するようにしてもよい。充電通信モードは、ケーブル・アセンブリ100を利用して充電とUSB通信を同時に行う動作モードである。
【0054】
電力部205は、Aデバイスとしての通信モードのときに電池203の電圧を所定の電圧まで昇圧してマイクロABレセプタクル51のVBUSピンに電力を供給する出力モードで動作する。電力部205は、ポータブル・デバイス50が充電モードで動作するときに、マイクロABレセプタクル51のVBUSピンから充電電力を受け取る充電モードで動作する。ホストPC83がVBUSピンに電源を供給するときは、ポータブル・デバイス50がBデバイスとしての通信モードで動作する。
【0055】
VBUSピンに外から電圧が供給されていないときに電力部205は、n型MOS−FET211をオン状態に制御する。電力部205は、VBUSピンに電圧が印加されたときに所定の時間が経過して電圧が安定するとn型MOS−FET211のゲートに信号を送ってオフ状態に制御する。検出部207は、USBホスト・コントローラ201とマイクロABレセプタクル51のD±ラインを、VBUSの電圧およびIDラインの電位とは無関係にマイクロABレセプタクル51に接続されたデバイスの種類に応じて接続または切断する。
【0056】
検出部207は、D±ラインの電位から、マイクロABレセプタクル51に接続されたデバイスが、USB充電器91であると認識したときには、制御部209に制御信号(H)をアサートする。検出部207は、D±ピンの電位からマイクロABレセプタクル51に、USB通信が可能なデバイスが接続されたと認識したときは制御部209に制御信号(L)をアサートするとともに、USBホスト・コントローラ201とマイクロABレセプタクル51のD±ピンを接続する。
【0057】
検出部207が制御信号(L)をアサートするときは、マイクロABレセプタクル51にホストPC83、USB充電器60と周辺デバイス70が接続されたケーブル・アセンブリ100、CDP93またはBデバイス81が接続されていることに相当する。制御部209は、VBUSピンの電圧およびIDピンの電位に基づいて、電力部205を充電モードまたは出力モードに設定する。制御部209は、セッションの開始時に必ずVBUSピンの電圧を先に確認する。
【0058】
制御部209は、VBUSピンの電圧が所定値以上(H)のときに、電力部205を充電モードに設定するための充電信号を出力する。制御部209はVBUSピンの電圧が所定値未満(L)のときに、IDピンがグランド状態のときに限って電力部205を出力モードに設定するための出力信号を出力する。制御部209は、充電信号を出力するときに、検出部207から制御信号(H)を受け取ったときは一例として電力部205に1.5Aの引き込み電流を設定し、制御信号(L)を受け取ったときは0.5A、0.9Aまたは1.5Aの引き込み電流を設定する。
【0059】
[フローチャート]
つぎに、ポータブル・デバイス50にケーブル・アセンブリ100、USB充電器60、周辺デバイス70、または
図2に示したいずれかのデバイスが接続されるときの、ポータブル・デバイス50とケーブル・アセンブリ100の動作を
図5のフローチャートを参照して説明する。ブロック301では、ポータブル・デバイス50の電源が起動しているが、マイクロABレセプタクル51には、いずれのデバイスも接続されていない。
【0060】
USBコントローラ201は、データ通信が行われていないことを検出してすべてのトランシーバを停止させアイドル状態に遷移している。このとき電力部205はVBUSラインに電圧を出力していない。また電力部205はn型MOS−FET211をオン状態にしてVBUSラインを所定の抵抗値でプルダウンしている。検出部207はUSBコントローラ201とマイクロABレセプタクル21の間のD±ラインを切断している。なお、ブロック301は、マイクロABレセプタクル51に、USB充電器60および周辺デバイス70が接続されていない状態(単独状態)のケーブル・アセンブリ100または周辺デバイス70だけが接続されたケーブル・アセンブリ100が接続された状態も含んでいる。
【0061】
ブロック303でマイクロABレセプタクル51に何らかのデバイスが接続される。ブロック305は、マイクロABレセプタクル51のVBUSピンの電圧の状態を示している。電圧が所定値以上(H)のときはブロック307に移行し、所定値未満(L)のときはブロック351に移行する。ブロック307に移行することは、マイクロABレセプタクル51に
図2のノートPC83、USB充電器91、CDP93、USB充電器60が接続されたケーブル・アセンブリ100、またはUSB充電器60と周辺デバイス70が接続されたケーブル・アセンブリ100のいずれかが接続されたことに相当する。ブロック351に移行することは、マイクロABレセプタクル51にVBUSラインに電圧を出力しないデバイスが接続されたことに相当する。
【0062】
そのようなデバイスは本実施の形態では、Bデバイス81、単独状態のケーブル・アセンブリ100または周辺デバイス70だけが接続されたケーブル・アセンブリ100が対応する。ブロック307で電力部205が検出するVBUSラインの電圧が所定値を越えてから安定するまでに、一例として200ミリ秒以上の遅延時間が経過する。遅延時間は、制御部209がVBUSラインの電圧を検出する前にIDピンの電位がグランド状態であることを検出して出力信号を出力し、電力部205がVBUSピンに電圧を出力することを防ぐ意義がある。
【0063】
したがって、必要に応じて電圧が安定するまでの時間よりも長い遅延時間を設定してもよい。ブロック309で遅延時間が経過して電圧が安定すると電力部205は、n型MOS−FETをオフ状態にする。その結果制御部209は、VBUSラインに所定値以上の電圧が発生したことを検出する。ブロック311でVBUSラインの電圧を確認した制御部209はそれに続いてIDピンの電位を確認する。IDピンの電位がフローティング状態のときはブロック313からブロック315に移行し、グランド状態のときはブロック331に移行する。
【0064】
ブロック315に移行する場合は、マイクロABレセプタクル51にホストPC83、USB充電器91、またはCDP93のいずれかが直接接続されたことに相当する。これらのデバイスはマイクロBプラグで接続するため、ポータブル・デバイス50は自らをBデバイスとして認識する。ブロック331に移行する場合は、マイクロABレセプタクル51にUSB充電器60が接続されたケーブル・アセンブリ100、またはUSB充電器60と周辺デバイス70が接続されたケーブル・アセンブリ100が接続されたことに相当する。
【0065】
このとき、IDピンの電位がグランド状態であるため、ポータブル・デバイス50は自らをAデバイスとして認識する。しかし、制御部209はマイクロABレセプタクル51のVBUSピンを通じて電圧が供給されていることを認識しているため、電力部205を出力モードに設定しない。IDピンがグランド状態またはフローティング状態のいずれであっても制御部209は、電力部205に充電信号を送るが、さらに以下の手順により制御部209は電力部205にVBUSピンを通じて受け取る引き込み電流の値を設定する。ブロック315で検出部207がD±ラインの電位から、マイクロABレセプタクル51にUSB充電器91が接続されたと判断して制御信号(H)をアサートしたときはブロック321に移行する。
【0066】
ブロック321で制御部209が電力部205に充電信号を送るとポータブル・デバイス50は充電モードに移行する。このとき制御部209は、電力部205に一例として1.5Aの引き込み電流を設定する。ブロック315で検出部207がD±ラインの電位から、ホストPC83またはCDP93が接続されたと判断して制御信号(L)をアサートしたときはブロック317に移行する。
【0067】
ブロック317で検出部207がUSBコントローラ201とマイクロABレセプタクル51のD±ピンを接続すると、ポータブル・デバイス50はBデバイスとして動作する。ホストPC83またはCDP93がポータブル・デバイス50に対してエニュメレーションを開始してUSB通信を開始する。このときのVBUSの電源は、ホストPC83またはCDP93が供給する。ブロック319で制御部209が電力部205に充電信号を送るとポータブル・デバイス50はBデバイスとして動作する充電通信モードに移行する。このとき制御部209は、USB規格で規定するように電力部205に0.5A、0.9Aまたは1.5Aの引き込み電流を設定する。なお、ブロック317の手順はスキップして、検出部207はポータブル・デバイス50とホストPC83が通信しないようにすることもできる。
【0068】
ブロック331で検出部207がD±ラインの電位から、マイクロABレセプタクル51にUSB充電器60が接続されたケーブル・アセンブリ100が接続されたと判断して制御信号(H)をアサートしたときはブロック337に移行する。ブロック337で制御部209は電力部205に充電信号を送るとポータブル・デバイス50は充電モードに移行する。このとき制御部209は、電力部205に一例として1.5Aの引き込み電流を設定する。ブロック331で検出部207がD±ラインの電位から、USB充電器60と周辺デバイス70が接続されたケーブル・アセンブリ100が接続されたと判断して制御信号(L)をアサートしたときはブロック333に移行する。
【0069】
ブロック333で検出部207がD±ラインを接続すると、ポータブル・デバイス50はAデバイスとして動作する。ブロック335で制御部209が電力部205に充電信号を送るとポータブル・デバイス50はAデバイスとして動作する充電通信モードに移行する。ただし、制御部209が電力部205を出力モードに設定しないため、電力部205はVBUSラインに電圧を出力しない。VBUSラインの電圧はUSB充電器60が供給する。このとき制御部209は、電力部205に一例として1.5Aの引き込み電流を設定する。その後、ポータブル・デバイス50は周辺デバイス70に対してエニュメレーションを開始してUSB通信を行う。
【0070】
ブロック335の状態でケーブル・アセンブリ100からUSB充電器60を外すとVBUSラインの電源が停止し、Bデバイスとして動作する周辺デバイス70もVBUS電源を出力しないためUSB通信は停止する。USB充電器60が外れたときは、マイクロABプラグ105のIDピンがフローティング状態に移行するため、VBUSの電圧が所定値未満のときは、ブロック355の手順で電力部205もVBUSに電圧を供給しない。しかし再びUSB充電器60を接続すればUSB通信を再開することができる。
【0071】
ブロック351で、D±ラインの電位から検出部207は通信可能なデバイスが接続されているか否かを判断する。通信可能なデバイスが接続されてないときは、単独状態のケーブル・アセンブリ100が接続された状態、如何なるデバイスも接続されていない状態、または、OTGケーブルだけが接続された状態に相当するためブロック303に戻る。通信可能なデバイスが接続されていると判断した検出部207は制御部209に制御信号(L)をアサートする。制御信号(L)がアサートされるのは、Bデバイス81が直接接続された状態または周辺デバイス70だけが接続されたケーブル・アセンブリ100が接続された状態に相当する。
【0072】
ブロック353で制御部209は、マイクロABレセプタクル51のIDピンの電位を確認する。IDピンの電位がフローティング状態のときは、周辺デバイス70だけが接続されたケーブル・アセンブリ100が接続されていることに相当するためブロック303に戻る。したがって周辺デバイス70は、ケーブル・アセンブリ100を利用してポータブル・デバイス50に接続する場合にUSB充電器60を接続しない限りUSB通信をすることができない。IDラインの電位がグランド状態のときは、Bデバイス81が直接接続されたことに相当するためブロック356に移行する。ブロック356で制御部209は出力信号を送って電力部205を出力モードに設定する。
【0073】
ブロック357で電力部205は電池203の電圧を昇圧してVBUSラインに出力する。Bデバイス81は、VBUSラインに電圧を供給しないため電圧の衝突は起きない。ブロック361で検出部207がUSBコントローラ201とマイクロABレセプタクル51のD±ラインを接続すると、ブロック363でポータブル・デバイス50はAデバイスとして動作して通信モードに移行しUSB通信を開始する。このときポータブル・デバイス50がBデバイス81に対してエニュメレーションを行う。
【0074】
以上の手順で説明した、各ブロックの順番は本発明を限定するものではない。当業者が予測可能な範囲で同等の機能を発揮するように順番を入れ替えることも本発明の範囲に含む。以上の手順によれば、ポータブル・デバイス50は、ケーブル・アセンブリ100を利用してUSB充電器60で電池203を充電しながら、周辺デバイス70と通信することができる。このときのVBUSラインの電源はUSB充電器60が供給する。
【0075】
ケーブル・アセンブリ100は、USB充電器60が接続されていないときは、IDラインをBプラグに対応するフローティング状態に制御し、USB充電器60が接続されたときはAプラグに対応するグランド状態に制御する。ポータブル・デバイス50は、マイクロAプラグでデバイスが接続されたときはAデバイスとして動作しVBUSに電源を出力する。
【0076】
USB充電器60が接続されたケーブル・アセンブリ100がマイクロABレセプタクル51に接続されたときにポータブル・デバイス50は、IDピンの電位を検出する前にVBUSの電圧を検出する。VBUSラインの電圧が所定値以上(H)のときは、その後検出したIDラインの電位がグランド状態であってもブロック313の手順で、電力部205はVBSUピンに電圧を出力しない。したがって、ポータブル・デバイス50はAデバイスとして動作しながらVBUSラインへ電源を供給しないためVBUSラインでの電圧の衝突を防ぐことができる。
【0077】
ポータブル・デバイス50に接続されたケーブル・アセンブリ100に、先に周辺デバイス70が接続され、つづいて、USB充電器60が接続される場合がある。USB充電器60が接続される前は、ケーブル・アセンブリ100のIDラインがフローティング状態であるため、ポータブル・デバイスはVBUSラインに電圧を出力しない。したがって、その後USB充電器を接続してもVBUSラインでの電圧の衝突は発生しない。
【0078】
ポータブル・デバイス50は、ブロック305で、マイクロABレセプタクル51のVBUSラインに他のデバイスが電源を供給していないときだけブロック357でVBUSラインに電源を供給して通信モードで動作する。したがって、ポータブル・デバイス50に対するケーブル・アセンブリ100およびUSB充電器60の接続の順序がいかなるものであっても、ポータブル・デバイス50の電圧とUSB充電器60の電圧がVBUSライン上で衝突することはない。
【0079】
本発明はケーブル・アセンブリ100を簡素な構成にしながらUSBコントローラ201に修正を加えないで容易に実現することができる。しかも、マイクロABレセプタクル51にケーブル・アセンブリ100以外のデバイスが接続されてもポータブル・デバイス100はAデバイスまたはBデバイスとして動作することができる。
【0080】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0081】
50 ポータブル・デバイス(OTGデバイス)
60 USB充電器
70 周辺デバイス
51 マイクロABレセプタクル
100 ケーブル・アセンブリ
105 マイクロABプラグ
109 標準Aプラグ
111 標準Aレセプタクル