(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986191
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】車両ルーフの可動ルーフ要素を装着するための滑動子ユニット、及び車両ルーフ
(51)【国際特許分類】
B60J 7/02 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
B60J7/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-510827(P2014-510827)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-513646(P2014-513646A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】EP2012059281
(87)【国際公開番号】WO2012159995
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】102011102718.5
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506027147
【氏名又は名称】ヴェバスト ソシエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】ヒルボネン マティアス
【審査官】
常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0062498(US,A1)
【文献】
特表2002−512914(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第2939992(DE,A1)
【文献】
特開2001−163059(JP,A)
【文献】
特開2002−030862(JP,A)
【文献】
特開平08−011547(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0008966(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0068839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ルーフ(12)の可動ルーフ部材(16)を装着するための滑動子ユニット(22)であって、
車両ルーフ(12)の車両固定部(20)内で変位可能に装着するように設計され、車両固定部(20)内に滑動式に接触する滑動面(28)を有する滑動式ブロック(24)と、
車両ルーフ(12)の可動ルーフ部材(16)に機械的にしっかりと連結するように、及び滑動式ブロック(24)に機械的に連結するように設計される担体部材(26)と
を含む滑動子ユニットにおいて、
担体部材(26)が、担体部材(26)内で、滑動子ユニット(22)の変位方向(V)に対して実質中央に配置される第1タブ(30)及び第2タブ(32)を有し、滑動式ブロック(24)の位置を車両ルーフ(12)の車両固定部(20)に対して固定するために第1タブ(30)が滑動式ブロック(24)内で凹部(34)に係合し、第2タブ(32)は、滑動式ブロック(24)の凹部(34)に係合し、滑動子ユニット(22)が装着状態のときに滑動式ブロック(24)が車両固定部(20)に対して事前付勢されるようなやり方で設計され、
担体部材(26)は、滑動子ユニット(22)の中央部分から変位方向(V)に且つ互いに逆方向に延びる二つの担体アーム(38)を有し、これら担体アーム(38)の各々の端部(40)は、滑動式ブロック(24)の対応する端部区域(42)に機械的に連結され、
前記滑動面(28)は、滑動式ブロック(24)の前記変位方向(V)の中央部と、一方及び他方の端部区域(42)との各々の上下面に設けられていることを特徴とする滑動子ユニット(22)。
【請求項2】
タブ(30、32)が、滑動式ブロック(24)内で、滑動子ユニット(22)の変位方向(V)に対して実質中央に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項3】
第2タブ(32)が第1タブ(30)の切り抜き部として構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項4】
滑動式ブロック(24)が、滑動面(28)の領域においてフィン(36)を呈することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項5】
フィン(36)の設計が円錐形又は球形であることを特徴とする、請求項4に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項6】
滑動式ブロック(24)が一体にして形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項7】
担体部材(26)が一体にして形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項8】
担体部材(26)が、ステンレス鋼を含む材料製であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項9】
担体部材(26)が、ばね鋼を含む材料製であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)。
【請求項10】
車両固定部、可動ルーフ部材(16)、及び請求項1〜9のいずれか1項に記載の滑動子ユニット(22)を含む車両ルーフ(12)であって、車両固定部(20)が案内レール(18)として構成され、案内レール(18)に対して可動ルーフ部材(16)が変位可能であるように滑動子ユニット(22)が変位可能に装着される、車両ルーフ(12)。
【請求項11】
可動ルーフ部材(16)が滑動式天井蓋であり、該滑動式天井蓋は、滑動式天井蓋が閉鎖位置のときにルーフ開口部(14)を閉鎖する、又は、更なる位置のときに該ルーフ開口部を少なくとも部分的に開放する、のいずれかであるように設計されることを特徴とする、請求項10に記載の車両ルーフ(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の、車両ルーフの可動ルーフ部材を装着するための滑動子ユニット、及び車両ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の滑動子ユニットを使用して、ガラス要素のある、あるいはガラス要素のない滑動式天井蓋又はローラブラインド、特にサンローラブラインド等の様々な可動ルーフ部材を、車両ルーフの車両固定区域に対して、好ましくは車両長手方向で移動させることができる。
【0003】
特許文献1は、車両の滑動式ルーフの案内配置を開示している。この案内配置は、案内レールと、案内レール内で変位可能な滑動式架台とを含む。滑動式架台の制動部材が案内レールの制動面に押し付けられるようなやり方で、ばねが滑動式架台と相互作用する。
【0004】
特許文献2は、収縮位置と伸張位置との間で変位可能な被覆部材を含む、車両用の被覆装置を開示している。引っ張り棒がその両端部の各々にブロックを有する。ブロックは、いずれの場合も案内レール内に配置される。
【0005】
特許文献3は、窓枠に接続されるローラブラインド用の固定装置を開示している。固定装置は、ローラと、窓枠に接触させることのできる摩擦部材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0068839号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2906188号
【特許文献3】米国特許第804308号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明により扱われる問題とは、車両ルーフの可動ルーフ部材を装着するための滑動子ユニット、及び、優れた機械特性を特徴とする車両ルーフを創生することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、本発明の第1態様によれば、請求項1に記載の滑動子ユニットにより解決される。
【0009】
この種類の滑動子ユニットの1つの利点とは、滑動式ブロックを車両ルーフの車両固定部に対して事前付勢しておくことができ、これによって、車両ルーフの車両固定部に抗して滑動面を確実に嵌合することが可能になることである。2つのタブは異なる機能を果たす。第1タブは、大きな力を吸収して、ルーフ固定部、換言すれば特に案内レールに対する、安定した装着を保証するように設計することができる。第2タブは、そのばね作用に起因して、滑動式ブロックをモータ車両のZ方向へ事前付勢することができる。第2タブはこの間、そのばね作用に起因して滑動式ブロックを車両固定部に押し付け、がたつきを防止する。別の実施形態において、事前付勢は、上方又は下方へ生じさせることができる。
【0010】
本発明による滑動子ユニットの更なる利点として、特に滑動式ブロックの、製造公差への耐性を達成することができる。滑動子ユニットの変位方向に対してタブを中央に配置することが、担体部材から滑動式ブロックへ逸れる力を対称に発生できるという利点を有する。
【0011】
有利な実施形態において、タブは滑動式ブロック内で、滑動子ユニットの変位方向に対して実質中央に配置される。このことは、滑動式ブロック内への力伝達を対称に発生できるという利点を有する。
【0012】
更なる有利な実施形態において、第2タブは第1タブの切り抜き部として構成される。これによって、タブの低材料消費、及び、タブの非常に高い安定性を達成することができる。
【0013】
更なる有利な実施形態において、滑動式ブロックは、滑動面の領域においてフィンを呈する。このことは、滑動式ブロックを、捩れへの耐性があるようにできることを意味する。
【0014】
更なる有利な実施形態において、フィンは円錐形又は球形である。このことは、滑動式ブロックの高い安定性、及び、滑動式ブロックの、捩れへの高い耐性を達成できるという利点を有する。
【0015】
更なる有利な実施形態において、担体部材は、滑動子ユニットの変位方向に延びる担体アームを有する。これらのアームはそれらの端部にて、滑動式ブロックの対応する端部区域に機械的に連結される。このことは、車両ルーフの車両固定部に対する滑動式ブロックの事前付勢を、滑動子ユニットの変位方向に対して横向きに達成できるという利点を有する。
【0016】
更なる有利な実施形態において、滑動式ブロックは一体にして形成される。このことは、滑動子ユニットの部品の数を少なく保つことができるという利点を有する。
【0017】
更なる有利な実施形態において、担体部材は一体にして形成される。このことは、滑動子ユニットの部品の数を少なく保つことができるという利点を有する。
【0018】
更なる有利な実施形態において、担体部材は、ステンレス鋼を含む材料製である。これによって、担体部材の単純な設計を達成することができる。更に、設計において担体部材の曲率半径をより大きくすることができる。
【0019】
更なる有利な実施形態において、担体部材は、ばね鋼を含む材料製である。本発明の第2態様によれば、この問題は、車両固定部、可動ルーフ部材、及び本発明の第1態様による滑動子ユニットを含む車両ルーフにより解決される。車両固定部は案内レールとして構成され、案内レールに対して可動ルーフ部材が変位可能であるように滑動子ユニットが変位可能に装着される。
【0020】
本発明の第2態様の有利な実施形態において、可動ルーフ部材は滑動式天井蓋であり、この滑動式天井蓋は、滑動式天井蓋が閉鎖位置のときにルーフ開口部を閉鎖する、又は、更なる位置のときにルーフ開口部を少なくとも部分的に開放する、のいずれかであるように設計される。
【0021】
従属請求項に、本発明の更なる有利な実施形態を示す。
【0022】
以下で、例示的な実施形態を頼りに、本発明を、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】
図2の線III‐III’に沿った断面図を示す。
【
図4】
図2の線IV‐IV’に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同一の構造又は機能を備えた部材には、図全域にわたって同一の参照符号を用いて表示する。
【0025】
図1は、モータ車両の車両ルーフ12を示す。車両ルーフ12には、可動ルーフ部材16によって閉鎖できる、又は少なくとも部分的に開放できる、ルーフ開口部14が設けられる。可動ルーフ部材16は、例えば内側又は外側で案内される滑動式天井蓋として設計することができる。移動ルーフ部材16の更なる実施形態において、滑動式天井蓋の代わりに、ローラブラインド、特にサンローラブラインドを配置してもよい。
【0026】
車両の長手方向に延び、可動ルーフ部材16がその上を横方向に案内される2つの案内レール18を呈する車両ルーフ12の車両固定部20を
図1及び
図2から推測することができる。案内レール18は、例えば押出アルミニウム区域として構成される。
【0027】
車両ルーフ12は更に、複数の滑動子ユニット22を有する。移動ルーフ部材16が滑動式天井蓋である場合、例えば滑動子ユニット22をそれらの位置に応じて変位方向Vへ変位させることにより、前記滑動式天井蓋は、滑動式天井蓋が閉鎖位置のときルーフ開口部14を閉鎖する、又は、更なる位置のときルーフ開口部を少なくとも部分的に開放する、のいずれかであることが可能である。
【0028】
滑動子ユニット22は、滑動式ブロック24及び担体部材26を有する。滑動式ブロック24は、車両ルーフ12の車両固定部20の案内レール18内に収容される。滑動式ブロック24は、好ましくは一体にして形成される。滑動式ブロック24は、車両ルーフ12の車両固定部20の案内レール18に滑動式に接触する少なくとも2つの滑動面28を有する(
図3及び
図5を参照のこと)。滑動面28は、好ましくは、滑動式ブロック24の、互いから離れる方を向く側に配置される(
図7、
図8を参照のこと)。担体部材26は、車両ルーフ12の可動ルーフ部材16にしっかりと連結される。担体部材26は、好ましくは一体にして形成される。
【0029】
滑動式ブロック24が一体の設計であり、担体部材26が一体の設計であることにより、有利なことに、滑動子ユニット22内の構成要素の数を2つに限定することができる。
【0030】
図6に特にはっきりと見ることができるように、担体部材26は、第1タブ30及び第2タブ32を有する。タブ30、32は、滑動子ユニット22の変位方向Vに対して実質横向きに配置される。滑動式ブロック24内には、第1タブ30及び第2タブ32がそれにより係合する凹部34が形成される。滑動式ブロック24が機械的に事前付勢され、少なくとも2つの滑動面28が車両ルーフの車両固定部20に滑動式に接触するようなやり方で、第1タブ30は第2タブ32と相互作用する。これによって、滑動式ブロック24が持続的なやり方で事前付勢されることを達成することができ、図示するような、滑動式ブロック24の、モータ車両のZ方向への移動による案内レール18内での滑動子ユニット22のがたつきを回避することができる。
【0031】
タブ30、32は、担体部材26内で、滑動子ユニット22の変位方向Vに対して、換言すれば車両長手方向において、実質中央に配置される。ここに図示する実施形態において、タブ30、32は、滑動式ブロック24内に、滑動子ユニット22の変位方向Vに対しても実質中央に配置される。これによって、滑動子ユニット22の高い対称性を達成することができ、図示する、モータ車両のZ方向での滑動子の剛性及び事前付勢を、ならびに、滑動子ユニット22の変位方向Vに対して横向きの事前付勢も、互いとは無関係に設定することができる。特に第1タブ30は、図示する、モータ車両のZ方向での滑動子ユニット22の位置を決定することができ、モータ車両のZ方向の力を吸収することができる。
【0032】
ここに図示する実施形態において、第2タブ32は第1タブ30の切り抜き部として設計される(特に
図6を参照のこと)。これによって、タブ30、32の材料消費を少なくすることができ、タブ30、32の設計を特に安定させることができる。
【0033】
滑動式ブロック24の滑動面28にフィン36が装着される。フィン36の設計は、特に円錐形又は球形である。フィン36が円錐形又は球形の構成であることにより、滑動子ユニット22は、特に捩れへの耐性があるようにすることができ、従って、変位力の変動を非常に小さくすることができる。
【0034】
担体部材26は、実質滑動子ユニット22の変位方向Vに延びる2つの担体アーム38を有する。担体アーム38は、滑動子ユニット22の変位方向Vに互いから最大限離間する端部40を有する。ここに図示する実施形態において、前記端部は実質半円の設計である。従って、担体アーム38の半円の端部40は、滑動式ブロック24の対応する端部区域42に、非常に首尾よく、機械的に連結することができる。滑動式ブロック24に担体アーム38の端部40を、及びタブ30、32をも機械的に連結することにより、滑動式ブロック24と担体部材26との間を、非常に安定させて連結することができる。従って、図示する、モータ車両のZ方向での剛性、Z方向での滑動式ブロック24の事前付勢、及び車両長手方向での滑動子ユニット22の事前付勢を、互いとは無関係に、非常に首尾よく設定することができる。更に、滑動子ユニット22の実施形態は、発生する製造公差への耐性がある。担体アーム38は、滑動子ユニット22の変位方向Vに対する横向きの力を吸収するのみであり、従って、据付高さを小さくすることができる。
【0035】
担体部材26は、好ましくは、全体として又は部分的のいずれかで、ステンレス鋼製である。このようにして、外部水切り、及び、結果として担体アーム38用に必要となる曲率半径を無しで済ますことができる。というのも、担体アーム38は、滑動子ユニット22の変位方向Vに対して横向きの力を吸収しさえすればよいからである。
【0036】
更なる好適な実施形態において、担体部材26は、全体として又は部分的に、ばね鋼製である。従って、熱による後処理及び後続の表面被覆によって担体部材26を単純に製造することができ、担体アームが幾何学形状の構成であること、例えば担体アーム38の端部40が半円の設計であることにより、製造中の、担体アーム38の任意の引っ掛かりを回避することができる。
【0037】
本発明は、図示する例示的な実施形態に限定されるものではない。
【0038】
更に、異なる例示的な実施形態の特徴を互いに組み合わせ、そのような構成を本発明が網羅することが可能である。