特許第5986209号(P5986209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986209部分的エッジ化学的強化のための有孔マザーシート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986209
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】部分的エッジ化学的強化のための有孔マザーシート
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/04 20060101AFI20160823BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20160823BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20160823BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20160823BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20160823BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C03B33/04
   C03C15/00 Z
   C03C19/00 Z
   C03C21/00 101
   C03C17/23
   G06F3/041 400
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-530901(P2014-530901)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2014-531391(P2014-531391A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012055613
(87)【国際公開番号】WO2013040484
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】13/233,978
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スン イエ
(72)【発明者】
【氏名】ファインスタイン, ケーシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ファン, リリー
(72)【発明者】
【氏名】カン, ソング
(72)【発明者】
【氏名】ソン, クオ−ヒュア
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジョン ゼット.
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−281501(JP,A)
【文献】 特表2013−537723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00−33/14
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マザーシートの中に1つ以上のボイドを形成する工程と、
前記マザーシートを前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドにおける1つ以上のエッジを強化するために加工する工程と、
前記マザーシートの少なくとも1つの表面上に薄膜を形成するために前記マザーシートを加工する工程と、
前記マザーシートを複数の個々のシートが形成するように分離する工程と、を備え、
前記複数の個々のシートの1つ以上のエッジは、前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、前記マザーシートに薄膜を形成した後であって前記分離する前に、前記マザーシート上に導電性トレースを形成するために前記マザーシートを加工する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドを形成する工程は、前記複数の個々のシートの少なくとも1つの全長に対応する1つ以上のエッジを形成するために、前記1つ以上のボイドを整形及び配置する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドを形成する工程は、前記1つ以上のボイドを、前記マザーシートを複数の個片化前シートにつなぐ1つ以上のタブを作るために、整形及び配置する工程を含み、
前記マザーシートを前記複数の個々のシートが形成するように分離する工程は、前記複数の個々のシートを形成するために前記1つ以上のタブにおいて前記マザーシートから前記複数の個片化前シートを分離する工程を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記マザーシートから分離する前に、前記個片化前シートを試験するための、複数の導電性トレースを収容するために前記タブの幅を構成する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記1つ以上のエッジを強化した後であって前記マザーシート上に前記薄膜を形成する前に、充填材料で前記1つ以上のボイドを充填する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジを強化する工程は、前記マザーシートに全体的な強化処理を適用する工程を含む、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジを強化する工程は、前記マザーシートに局所的な強化処理を適用する工程を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記局所的な強化処理は、前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジにエッジ研磨を適用する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記局所的な強化処理は、前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジに化学的エッチングを適用する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記局所的な強化処理は、前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジに酸性研磨を適用する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記全体的な強化処理は、前記マザーシートを化学的強化剤に浸漬する工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の個々のシートを形成するために前記マザーシートを分離する工程は、前記1つ以上のボイドの少なくとも1つに交差する分離の軌道に沿って分離する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
マザーシートの中に1つ以上のボイドを形成する工程と、
前記マザーシートを前記マザーシートの中の前記1つ以上のボイドにおける1つ以上のエッジを強化するために加工する工程と、
前記1つ以上のボイドを充填材料で充填する工程と、
前記マザーシートを前記マザーシート上に導電性トレースを形成するために加工する工程と、
前記1つ以上のボイドから前記充填材料を除去する工程と、
前記マザーシートを複数の個々のシートが形成するように分離する工程とを備え、
前記複数の個々のシートの1つ以上のエッジは、前記1つ以上のボイドにおける前記1つ以上のエッジを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の化学的強化と、さらに特には、基板のエッジの化学的強化を可能にする基板内のボイドの形成に一般的に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサパネルは、1つ以上の薄膜が製膜され、且つ1つ以上の薄膜が化学的に強化されたガラスシートの片面上又は両面上の導電性トレースへとパターニングされるようにして製造されることができる。
しかし、標準的な薄膜加工装置はカスタムのサイズ又は形状のガラスシートの上に薄膜成膜ができない。代わりに、薄膜成膜はその後に分離され且つ複数の個々のガラスシートに整形される大きな矩形のガラスシート(いわゆるマザーシート)の上に発生する。個々のシートは典型的に別々の電子装置に使用される。
【0003】
マザーシートが個々のシートに分離される場合には、しかしながら、エッジの新しいセットが分離の各軌道に沿って形成される。エッジの新しいセットは化学的に処理されていないため、個々のシートはひびわれがしやすい。
【0004】
化学的な強化ガラスの技術は、シートを特定時間及び特定の温度で化学的処理に浸漬する必要がある。多くのケースにおいては、化学的にエッジを強化することは、露出される膜が処理に必要とされる化学物質と温度とのうち少なくとも1つによって損傷されるために、実行不可能である。
【発明の概要】
【0005】
本願は、少なくとも1つの表面上に成膜される薄膜を有するように構成されるガラスシートのエッジを化学的に強化することに関する。薄膜は化学的に強化されたガラスシートの別個の領域上に成膜され且つパターニングされることができる。このガラスシートはマザーシートと呼ばれる。マザーシートは、別々のシートに切断される(すなわち個片化される)ことができる。各個片化されたシートは、別々の電子的な構成要素又は装置を提供するように構成されることができる。
【0006】
マザーシートが個々のシートに分離されるとき、新しいエッジのセットが分離の軌道に形成される。追加的な新しいエッジは分離の後、個々のシート上の曲線エッジの自由な整形の間に形成されることができる。これら個々のシート上の新しいエッジは化学的に強化されていなく、そのためこれらに加えられた力に敏感である。化学的強化をシートのエッジに適用することがシートをひびわれから保護しえる一方、この工程は薄膜の露出される領域に損害を与えることがある。さらに、標準的な薄膜装置は、マザーシートとサイズが異なることとサイズが小さいこととのうち少なくとも1つであるガラスに対して薄膜工程を適用する能力に欠けるため、多くの場合、薄膜製膜工程は分離工程に先行しなければならない。
【0007】
さまざまな実施形態が、マザーシートの最初の化学的強化の前に個々のシートの新しいエッジの一部を形成することによりこれらの懸念に対処する。これはマザーシートを個々のシートに分離することなくなし得る。結果的に、標準的な薄膜装置を用いた加工が可能となる。1つの実施形態において、ボイドはマザーシート内に形成されることができる。ボイドのエッジは、分離及び自由な整形の間に通常は作られる新しいエッジの一部に対応してもよい。マザーシートはそして化学的強化剤の中に浸漬されることができる。ボイドのエッジは、マザーシートの前面と後面に加えて、化学的に強化されることができる。薄膜加工及び分離の後に得られる個々のシートのそれぞれは、両面上及びそのエッジの一部の上が化学的に強化されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の実施形態による典型的なボイド形成工程を示す。
図1B】本開示の実施形態による強化工程が行われた後の典型的なマザーシートを示す。
図1C】本開示の実施形態による薄膜製膜後の典型的なマザーシートを示す。
図1D】本開示の実施形態による分離工程を示す。
図2】本開示の実施形態による基板強化の例示的な方法を示す高位のフロー図である。
図3A】本開示の実施形態によるボイドのエッジが強化された後の典型的なマザーシートを示す。
図3B】本開示の実施形態による分離後の典型的なマザーシートを示す。
図4】本開示の実施形態による充填材料で充填されたボイドを含む典型的なマザーシートを示す。
図5】本開示の実施形態による強化されたガラス基板上に位置するタッチセンサパネルを含む典型的なコンピューティングシステムを示す。
図6A】本開示の実施形態による強化されたガラス基板上に位置するタッチセンサパネルを含む典型的な携帯電話を示す。
図6B】本開示の実施形態による強化されたガラス基板上に位置するタッチセンサパネルを含む典型的なデジタルメディアプレイヤを示す。
図6C】本開示の実施形態による強化されたガラス基板上に位置するタッチセンサパネル(トラックパッド)とディスプレイとのうち少なくとも1つを含む典型的なパーソナルコンピュータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の様々な実施形態の詳細においては、参照は本明細書の一部を形成する添付の図面についてなされ、且つその添付の図面の中では実施されえる特定の実施形態が例示により示されている。様々な実施形態の範囲から離れることなく、他の実施形態が用いられることが可能で、且つ構造的な変更が行われることが可能であることが理解されるべきである。
【0010】
様々な実施形態は、少なくとも1つの表面上に成膜される薄膜を有するように構成されるガラスシートのエッジを化学的に強化することに関する。薄膜は化学的に強化されたガラスシートの別個の領域上に成膜され且つパターニングされることができる。このガラスシートはマザーシートと呼ばれる。マザーシートは、別々のシートに切断される(すなわち個片化される)ことができる。各個片化されたシートは、別々の電子的な構成要素又は装置を提供するように構成されることができる。
【0011】
マザーシートが個々のシートに分離される場合には、エッジの新しいセットが分離の各軌道に沿って形成される。追加的な新しいエッジは分離の後、個々のシート上の曲線エッジの自由な整形の間に形成されることができる。これら個々のシート上の新しいエッジは化学的に強化されていなく、そのためこれらに加えられた力に敏感である。化学的強化をシートのエッジに適用することがシートをひびわれから保護しえる一方、この工程は薄膜の露出される領域に損害を与えることがある。さらに、標準的な薄膜装置は、マザーシートとサイズが異なることとサイズが小さいこととのうち少なくとも1つであるガラスに対して薄膜工程を適用する能力に欠けるため、多くの場合、薄膜製膜工程は分離工程に先行しなければならない。
【0012】
さまざまな実施形態が、マザーシートの最初の化学的強化の前に個々のシートの新しいエッジの一部を形成することによりこれらの懸念に対処する。これはマザーシートを個々のシートに分離することなくなし得る。結果的に、標準的な薄膜装置を用いた加工が可能となる。1つの実施形態において、ボイドはマザーシート内に形成されることができる。ボイドのエッジは、分離及び自由な整形の間に通常は作られる新しいエッジの一部に対応してもよい。マザーシートはそして化学的強化剤の中に浸漬されることができる。ボイドのエッジは、マザーシートの前面と背面に加えて、化学的に強化されることができる。薄膜加工及び分離の後に得られる個々のシートのそれぞれは、両面上及びそのエッジの一部の上が化学的に強化されている。
【0013】
ここではタッチセンサパネルに関して実施形態が説明及び例示され得るが、実施形態は限定されず、非強化エッジにおいて弱い傾向を示すガラス基板若しくは他の基板の上に形成される任意の回路若しくは通信経路に追加的に適用が可能であることが理解されるべきである。
【0014】
図1A−1Dは本開示の実施形態によるガラス強化の典型的な方法を示す。各図は順に説明される方法の一部を示す。
【0015】
図1Aは本開示の実施形態による典型的なボイド形成工程を示す。初めに、マザーシート100は1つ以上のボイドを形成するように除去される部分を備えるように構成されることができる。マザーシートはしばしば大きな、矩形のガラスシートであるが、様々な実施形態において任意のサイズ若しくは形状であってもよい。
【0016】
1つ以上のボイド102及び104はそして、マザーシートの別個の領域において形成されることが可能である。図1Aはマザーシート100に形成される8つのボイドが示されているが、様々な実施形態において任意の数のボイドが形成されることが可能であることに注意する。さらに、ボイドはマザーシート100に沿って任意の場所において配置されることが可能である。
【0017】
任意の数の手段若しくはメカニズムがマザーシート100のボイド102及び104を形成するために用いられることが可能である。これは、限定することなく、エッチングと、レーザースクライビングと、機械的スクライビングと、研削とのうち少なくとも1つと、研磨を含む。いくつかの実施形態では、ボイドは円若しくは楕円(例えば、ボイド102及び104のエッジにより示されるように)として形成されることが可能である。しかし、ボイドは実施形態により、任意のパターン若しくは幾何学形状を用いて形成されてもよい。これは、矩形、台形、及び曲線状と直線状のエッジの両方を含む形状を含む。
【0018】
図1Bは、本開示の実施形態による強化工程が行われた後の典型的なマザーシート100を示す。複数の実施形態において、全体のマザーシート100がマザーシートに全体的な処理を適用することにより強化されることが可能である。マザーシート100の少なくとも一部は、1つ以上の化学物質の中に浸漬され、且つ特定の温度において処理されることが可能である。例えば、1つの実施形態において、化学物質は約350℃でシートに適用される硝酸カリウム(KNO)を含むことができる。いったん処理工程が完了すれば、外側エッジ110、及びボイド102と104のエッジ106と108はそれぞれ強化される。
【0019】
他の実施形態において、強化工程はボイド102及び104の非強化エッジへの局所的処理を適用することを含むことが可能である。(例えば、前もって化学的強化剤に浸漬することにより)マザーガラス100がすでに化学的に強化されているある実施形態においては、ボイド102及び104の非強化エッジへの局所的処理の適用は、マザーガラス100に全ての側面及びエッジ上に強化された表面をもたらすことが可能である。ボイド102及び104の非強化エッジを強化するために使用される物質は、いくつかの実施形態によるマザーシート100を強化するために使用される物質と同じか又は異なってもよい。
【0020】
さらに、局所的処理は、限定することなく、以下の、エッジ研磨(例えば、酸化セリウム又は他の類似の化合物を介して)と、酸性研磨と、化学的エッチング(例えば、フッ化水素又は塩化水素を介して)と、局所的熱処理(例えば、ガラスを500℃−620℃の範囲におけるガラス転移温度にすること)と、化学的処理とのうち少なくとも1つ以上を含んでもよい。多くの実施形態において、化学的処理は接着剤又はその他の類似の物質でマザーシートの表面内のきずを充填することを含むことが可能である。1つの実施形態においては、例えば、硝酸カリウム(KNO)が350℃で非強化領域に適用されることが可能である。
【0021】
図1Cは本開示の実施形態における薄膜成膜後の典型的なマザーシート100を示す。1つ以上の薄膜112がマザーシート100の領域上に成膜され、及びパターニングされることが可能である。様々な実施形態により、任意の数の薄膜112がマザーシート100の上に成膜されてもよいことに注意する。さらに、薄膜112はマザーシート100の表面の両方の座標軸に沿って任意の場所において配置されることが可能である。
【0022】
いくつかの実施形態において、薄膜112の少なくとも1つはインジウムスズ酸化物(ITO)である。いくつかの実施形態において、他の材料がITOに加えて若しくは代わりに利用されることが可能である。これらの材料は、限定することなく、アモルファスシリコン、セレン化銅インジウム、テルル化カドミウム、及び膜結晶シリコンを含む。付加的に、薄膜112は1つ以上のパッシベーション層(有機と無機とのうち少なくとも1つ)により保護されることが可能である。パッシベーション層は、導電性材料と他の層の上に形成され、腐食とその他の環境的な影響からこれらの材料を保護する構成物である。様々なパッシベーションの種類が実施形態によって採用されることが可能である。これらは、限定することなく、二酸化ケイ素(SiO)と、窒化ケイ素(SiN)とのうち少なくとも1つを含むパッシベーション層を含む。
【0023】
図1Dは本開示の実施形態による分離工程を示す。図に示されるように、マザーシート100は個々のシート120及び122に分離される。図1Dはマザーシート100から形成される2つのシートを示すが、任意の数の個々のシートがマザーシートから形成されてもよいことに注意する。また、いくつかの実施形態において、個々のシートはマザーシート100から分離された上にさらに整形される(例えば、特定の幾何学的形状に切断される)ことが可能である。
【0024】
さらに、任意の数の手段若しくはメカニズムがマザーシート100から分離を果たすために用いられることが可能である。これは、限定することなく、エッチングと、レーザースクライビングと、機械的スクライビングと、研削とのうち少なくとも1つと、研磨を含む。
【0025】
いったん個々のシートが分離されれば、強化されたボイドのエッジ106及び108は個々のシート120及び122のエッジの一部を形成することが可能である。いくつかの実施形態において、ボイドは分離後にそのままであって、個々のシートの内側のエッジを形成することが可能である。例えば、分離後に、ボイド102は分離後にそのままであり、及び、個々のシート120において内側のエッジを形成する。さらに、ボイドが分離の軌道に沿って下がる場合、ボイドのエッジの一部が個々のシートのエッジを形成することが可能である。例えば、ボイド104は分離の軌道に沿い、及び、強化エッジ108の一部は個々のシート122のエッジ124を形成する。
【0026】
さらに、1つ以上の非強化エッジ126及び128が分離の軌道に沿って形成されることができる。いくつかの実施形態において、図1Dに例示される1つのように、非強化エッジは、(例えば、マザーシート100及び強化エッジ106と124に適用される強化工程によって)すでに化学的に強化されている1つ以上の表面に隣接することができる。いくつかの実施形態において、非強化エッジ106及び124は非強化領域のより大きな集合の一部であることが可能である。
【0027】
図2は、本開示の実施形態による基板強化の例示的な方法を示す高位のフロー図である。ブロック202では、1つ以上のボイドがマザーシートの中に形成されることが可能である。多くの方法が様々な実施形態においてボイドを形成するために使用されてもよい。これは、限定することなく、エッチングと、レーザースクライビングと、機械的スクライビングと、研削とのうち少なくとも1つと、研磨を含む。
【0028】
ブロック204では、マザーシートはそして化学的に強化されることができる。いくつかの実施形態において、この化学的強化工程は挟まれたものを化学物質の中に特定の温度において(例えば、350℃において硝酸カリウム(KNO)に)浸漬することを含むことが可能である。他の実施形態においては、化学的強化工程はエッジ研磨処置、化学的エッチング処置若しくは酸性研磨処置、又は局所的熱処理若しくは局所的化学処理をマザーシートに施すことを含むことが可能である。
【0029】
ブロック206では、1つ以上の薄膜がマザーシート上に成膜されることが可能である。様々な実施形態において、薄膜の少なくとも1つはITOである。いくつかの実施形態において、アモルファスシリコン、セレン化銅インジウム、テルル化カドミウム、及び膜結晶シリコンを含む他の材料が利用される。
【0030】
ブロック208では、マザーシートは分離されるか、複数のより小さなシートに整形されるかのうち少なくとも1つが可能である。いくつかの実施形態において、分離及び整形を実行するために用いられる方法は、エッチングと、レーザースクライビングと、機械的スクライビングと、研削とのうち少なくとも1つと、研磨を含む。
【0031】
図1において示されるような実施形態において、ボイドは曲線エッジを伴って形成されてもよい。 レーザースクライビングのような技術は曲線エッジを形成するために利用できない場合があり、そしてエッチングのような他の技術はさらに、ガラスの耐久性を弱く且つ曲線エッジを壊れやすくする可能性のあるエッジ内の微小なひびを形成しやすい場合がある。結果として、いくつかの実施形態では、曲線エッジが化学的に強化されることを確実にすることが重要であってよい。
【0032】
他の実施形態では、曲線エッジ上に焦点を当てるより、むしろ個々のシートの強化される周囲を最大限度にすることが重要であってもよい。図3A及び3Bは本開示の実施形態によるもう一つの典型的なガラスを強化する方法を示す。
【0033】
図3Aは、本開示の実施形態による、ボイドが形成された後の典型的なマザーシート、及び強化されたボイドのエッジを示す。図3Bは、本開示の実施形態による、分離された後の典型的なマザーシートを示す。いくつかの実施形態において、ボイドは分離後に個々の各シートの周囲の高い割合が化学的に強化されるように、配置されることが可能である。例えば、ボイド302は分離後にエッジ304が個々のシート308上のエッジ306の全長に一致するように配置されることが可能である。エッジ306の全長はボイドのエッジ304から形成されることが可能であるため、エッジ306の全長は化学的に強化されることが可能である。加えて、ボイド310は、エッジ312が分離後に個々のシート308上のエッジ314の実質的な部分と一致するように配置されることが可能である。図3Aの領域308として確認される分離前の個々のシート308は、本明細書中において個片化前シート308として称されてもよい。
【0034】
ボイド302、316及び310の形成はまた、パネルをマザーシート300から分離させないタブ318及び320を形成することが可能である。タブ318及び320は、分離軌道322に沿って配置されることが可能である。非強化エッジ部分324及び326は、個々のパネル308がタブ318及び320から分離された場所に形成されることが可能である。タブ318及び320の幅を減少することは、非強化エッジ部分324及び326の長さを減少させることが可能である。従って、個々のシート308の強化される周囲はタブ318及び320の幅を最小限化することによって最大限化されることが可能である。
【0035】
しかし、タブを狭くすることは負の結果を有する可能性がある。例えば、タブは導電性トレースをマザーシート上にパターニングされた薄膜へ通すために用いられてもよい。これらのトレースは分離の前において試験に使用されてもよく、そして、タブは導電性トレースを収容するのに十分な幅でなければならない。さらに、レーザースクライビング工程は、その標的がスクライビングが有効であるための最小限の幅を有することを要求してもよい。従って、レーザースクライビングが個々のシートをマザーシートから分離するために使用される場合、タブは少なくとも分離が成功するための最小限度の幅でなければならない。最後に、薄膜加工はマザーシートの剛性及び耐久性を要求することが可能であり、そして狭すぎるタブは薄膜加工の間マザーシートの剛性及び耐久性を損なう場合がある。
【0036】
いくつかの実施形態において、薄膜加工の間のマザーシートの剛性及び耐久性を向上することが可能な充填材料は、ボイドを充填するために使用されてもよい。図4は本開示の実施形態による充填材料で充填されたボイドを備える典型的なマザーシートを示す。ボイド402はマザーシート400内に形成され、且つ充填材料404で充填されることが可能である。マザーシート400はそして薄膜加工を施されることが可能であり、且つ充填材料404はその後除去されることが可能である。
【0037】
いくつかの実施形態において、充填材料はコーティング工程又はスキージなどのフラット工程を介してボイドに適用されることが可能である。いくつかの実施形態において、剥離溶剤は材料を滑らかに塗布した後に使用されることが可能である。材料はそして材料の内側から溶剤が蒸発するために加熱されることが可能である。
【0038】
任意の数の材料がボイド内を充填するために使用されることが可能である。例えば、充填材料は有機材料、二酸化シリコン、又は金属で作られることが可能である。いくつかの実施形態において、材料は薄膜加工で使用される化学物質の酸性度に耐えることが可能で、且つ材料は薄膜加工が発生する高温に耐えることが可能である。いくつかの実施形態において、材料は工程が完了した時に容易に除去されることが可能である。例えば、二酸化シリコン(SiO)のような材料は酸性度及び熱に順応性であり、且つ溶剤で容易に除去されることが可能である。
【0039】
図5は、上述の実施形態の1つ以上により強化されたガラス基板上に位置するタッチセンサパネル524を含むことが可能である、典型的なコンピューティングシステム500を示す。コンピューティングシステム500は1つ以上のパネルプロセッサ502と周辺機器504、及びパネルサブシステム506を含むことが可能である。周辺機器504は、限定されることなく、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はほかの種類のメモリ若しくは記憶装置、ウォッチドッグタイマーなどを含むことが可能である。パネルシステム506は、限定されることなく、1つ以上の感知チャネル508、チャネルスキャンロジック510及びドライバロジック514を含むことが可能である。チャネルスキャンロジック510はRAM412にアクセスし、自律的に感知チャネルからデータを読み取り、そして感知チャネルに制御を提供することが可能である。加えて、チャネルスキャンロジック510は、タッチセンサパネル524の駆動ラインに選択的に適用されることが可能である様々な周波数及び位相で刺激信号516を生成するために、ドライバロジック514を制御することが可能である。いくつかの実施形態において、パネルサブシステム506、パネルプロセッサ502及び周辺機器504は特定用途向け集積回路(ASIC)に統合されることが可能である。
【0040】
タッチセンサパネル524は複数の駆動ライン及び複数の感知ラインを有する容量性感知媒体を含むことが可能であるが、他の感知媒体がまた使用されることが可能である。駆動ライン及び感知ラインの各交点は、容量性感知ノードを表すことが可能であり、且つ画素(ピクセル)526として見られることが可能であり、これはタッチセンサパネル524がタッチ(接触)の「画像」として取り込むものとして見られる時に特に有用である。(言い換えれば、パネルサブシステム506はタッチイベントがタッチセンサパネル内の各タッチセンサにおいて検出されたか否かを判断した後に、タッチイベントが発生したマルチタッチパネル内のタッチセンサのパターンはタッチの「画像」(例えば、パネルに接触する指のパターン)として見られることが可能である。)タッチセンサパネル524の各感知ラインは、パネルサブシステム506内の感知チャネル508(またここではイベント検出回路及び復調回路として言及される)を駆動することが可能である。
【0041】
コンピューティングシステム500はまた、パネルプロセッサ502から出力を受け取るための、並びに、カーソル若しくはポインターなどのオブジェクトを移動することと、スクロール若しくはパニングをすることと、コントロール設定を調整することと、ファイル若しくはドキュメントを開くことと、メニューを見ることと、選択をすることと、指示を実行することと、ホスト装置に連結された周辺機器を操作することと、電話の呼に応答することと、電話の呼を発信することと、電話の呼を終えることと、音量若しくはオーディオ設定を変更することと、アドレス、頻繁に電話をかける番号、受信、不在着信、などのような電話通信に関連する情報を格納することと、コンピュータ若しくはコンピュータネットワークにログインすることと、コンピュータ若しくはコンピュータネットワークの制限区域へ承認された個人のアクセスを許可することと、ユーザーの好むコンピュータデスクトップの構成に関連するユーザプロフィールをロードすることと、ウェブコンテンツへのアクセスを許可することと、特定のプログラムを起動することと、メッセージを暗号化若しくは復号化することと、その他等と、のうち少なくとも1つを含むことが可能である、この出力に基づいたアクションを実行するためのホストプロセッサ528を含むことが可能である。ホストプロセッサ528はまた、パネルプロセシングに関連しなくてよい付加的な機能を実行することが可能であり、並びに、プログラム格納装置532及び装置のユーザーへUIを提供するためのLCDディスプレイのようなディスプレイ装置530と結合されることが可能である。ディスプレイ装置530は、部分的に若しくは全体がタッチセンサパネルの下に配置されるときは、タッチセンサパネル524と一緒にタッチスクリーン518を形成することが可能である。
【0042】
図6Aは、タッチセンサパネル624及びディスプレイ装置630を含むことが可能である典型的な携帯電話636を示し、様々な実施形態によってガラス基板上に形成されるタッチセンサパネルは強化されている。
【0043】
図6Bは、タッチセンサパネル624及びディスプレイ装置630を含むことが可能である典型的なデジタルメディアプレイヤ640を示し、様々な実施形態によってガラス基板上に形成されるタッチセンサパネルは強化されている。
【0044】
図6Cは、タッチセンサパネル(トラックパッド)624及びディスプレイ630を含むことが可能である典型的なパーソナルコンピュータ644を示し、様々な実施形態によってタッチセンサパネルと(ディスプレイがタッチスクリーンの一部である実施形態において)ガラス基板を有するパーソナルコンピュータのディスプレイとのうち少なくとも1つは強化されている。図6Aの携帯電話、図6Bのメディアプレイヤー及び図6Cのパーソナルコンピュータは、様々な実施形態によって強化されたガラス基板を利用することにより改善された全体的な耐久性を得ることが可能である。
【0045】
実施形態は添付図面を参照して全て説明されているが、様々な変更及び修正が当業者にとって明らかであろうことに注意すべきである。このような変更及び修正は添付の特許請求の範囲によって定義される様々な実施形態の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C