特許第5986223号(P5986223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986223液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法、薬液更新用ノズル及び更新用薬液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986223
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法、薬液更新用ノズル及び更新用薬液
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   C03C15/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-551770(P2014-551770)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2012082088
(87)【国際公開番号】WO2014091561
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】515137439
【氏名又は名称】株式会社トーア電子
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】木内 丈司
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−231919(JP,A)
【文献】 特開2008−162877(JP,A)
【文献】 特開2011−251907(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111602(WO,A1)
【文献】 特開2011−114256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法であって、
薬液を満たすエッチング液槽に、薬液の吐出用のノズルと吸引用のノズルを配置し、
薬液中に上記のノズルを浸漬した状態で薬液の吐出、吸引を行ない、
上記のノズルを用いた吐出、吸引を同時に行ない、均一な応力を薬液に加えることにより薬液の更新が促進されるように構成したことを特徴とする
液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法。
【請求項2】
液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法であって、
薬液の吐出及び吸引に使用するノズルであって、
エッチング処理対象の液晶ガラス部品の全体に一時に薬液を吐出、吸引するために、液晶ガラス部品の長さ以上の長さを有するスリット状の開口部を備えていることを特徴とする
液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液更新用ノズル。
【請求項3】
液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液は、液晶ガラス部品、そのエッチング処理に用いた装置及び付属品類に付着している、ガラス成分とエッチング液との反応によって生成した固形成分を洗浄する洗浄液であって、
硝酸、過酸化水素、塩化アンモニウム又はヨウ化カリウムを必須成分とする
液晶ガラスのエッチング装置に用いる洗浄液
【請求項4】
硝酸0.5〜3.0mol、過酸化水素0.2〜2.5mol、塩化アンモ二ウム又はヨウ化カリウム0.2〜7.0molを含有する
請求項3記載の液晶ガラスのエッチング装置に用いる洗浄液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法、薬液更新用ノズル及び更新用薬液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ガラスは化学処理によりエッチングされるが、このために適用される処理方法は、薄板化、軽量化を目的とするスリミング法と、製品形状加工を目的とするパターニング法に大別することができる。ここで、化学処理において避けられない問題の一つに被加工物質とエッチング液との反応によって生成される固形物質がある。この固形物質の堆積による液流の阻害及びコンタミネーションが進行することは、連続濾過処理方法によるエッチング液管理や、高精度の製造設備における対応を困難にしてきた。
【0003】
また、エッチャント、即ち、液晶ガラス部品に対するエッチング液を液晶ガラス等に吐出する際のノズルには、諸般の事情から、エッチング装置に対して相対的に小型のノズルが用いられている。小型ノズルを使用するということは、1個の液晶ガラス部品に対して多数の小型ノズルが必要ということであり、必然的に多数のノズルにおけるエッチング液吐出条件の均一化という問題を提起する。液晶ガラス部品の内部におけるエッチングのばらつきは製品規格にも影響することであるから、小型ノズルを組み合わせて液晶ガラス部品内部の均一化を図ることには困難が伴い、抜本的な対策が必要である。
【0004】
先行する技術を調査すると、特開2002−251794号のフォトレジスト除去装置があり、これは複数個のスプレーノズルから噴出する置換・洗浄液により薬品を置換し除去し、かつ、ガラス原板保持具を回転させて置換・洗浄液を振り切るという目的ではあるけれども、小型ノズル使用の一例である。また、特開2003−91885号はフォトレジスト層を除去する手段として、ガラス基板を回転させつつ、超音波振動させた上で、フォトレジスト除去薬液をガラス基板表面に滴下させる液吐出ノズルを備えており、これに用いられているノズルもまた小型のものである。このように、エッチング液吐出に用いられているのは、小型ノズルが一般的であった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−251794号
【特許文献2】特開2003−91885号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたもので、その課題は、液晶ガラスのエッチングを最適の環境を維持して行なうために、液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新が促進されるようにし、それによって、高品質の液晶ガラス部品が得られるようにすることである。また、本発明の他の課題は、エッチング装置に用いる薬液を液晶ガラス部品全体に一時に吐出するとともに、上記薬液を吸引することにより、高精度のガラスエッチングを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法について、薬液を満たすエッチング液槽に、薬液の吐出用のノズルと吸引用のノズルを配置し、薬液中に上記のノズルを浸漬した状態で薬液の吐出、吸引を行ない、上記のノズルを用いた吐出、吸引を同時に行ない、均一な応力を薬液に加えることにより薬液の更新が促進されるように構成するという手段を講じたものである。
【0008】
本発明は、液晶ガラスのエッチングに関するものであり、使用される薬液は、主として、エッチング処理のためのエッチャント即ちエッチング液であり、或いはガラス成分とエッチング液との反応によって生成した、固形成分を洗浄するエッチング装置の洗浄処理のための洗浄液等である。
【0009】
エッチング装置は、装置のエッチング液槽の内部に液晶ガラスを搬入するコンベア、コンベア上の液晶ガラスに対してエッチング液を吐出するノズル、エッチング液を供給する配管及び各種弁装置などから成り、これらのエッチング液との接触部分は常に液に濡れている。その反面、稼働しない状態では流れなくなり、また、時にはエッチング液が抜かれるので、非稼動状態では上記の液成分が乾燥する。このように、エッチング液に濡れることと乾燥とが繰り返されると、その都度エッチング装置の表面に固形成分が層となって堆積することが繰り返され、その結果、エッチング液と接触する部分に固形成分が堆積し、エッチング液の流れを阻害することになり、精密なエッチング装置もその本来の性能が次第に発揮され難い傾向となる。このように、液晶ガラスのエッチングに用いるエッチング液が、エッチング装置に好ましくない影響を及ぼす原因を作るので、本発明における薬液に該当する。しかし、それと共に、エッチング液がもたらす固形成分を洗浄することも必須不可欠であるので、エッチング装置等を洗浄する洗浄液も本発明における薬液として非常に重要である。上記エッチング液、洗浄液等の薬液の更新を適正に実施することによって、精密なエッチング加工が保証され、かつまた、エッチング装置が洗浄により常に最適な状態に維持されるので、精密なエッチング加工を安定して実施することができる。
【0010】
また、本発明は、液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法において、薬液の吐出及び吸引に使用するノズルについて、エッチング処理対象の液晶ガラス部品の全体に一時に薬液を吐出、吸引するために、液晶ガラス部品の長さ以上の長さを有するスリット状の開口部を備えているという構成を有する。ここで、本発明におけるノズルの意義について具体的に説明する。図1において、11は本発明のノズル、12はエッチング液の液面、13は感光性材料により画像形成されたレジスト、14はそこに開けられた開口部、15は液晶ガラス、そして16は粘着シートから成る保護材であり、パターニング方法におけるセンサー駆動回路となる金属蒸着膜17を保護している。上記は液晶ガラス15の構造のほんの一例である。図1に示すエッチングの開始時には、開口部14の幅Kに対して深さJ1が浅く、ノズル11からの吐出応力により開口部内のエッチング液を排出する十分な作用が得られるので、エッチング液排出の支障は事実上ないと考えて良い。
【0011】
これに対してエッチング反応が進行し、図2に示したように、開口部14が深さJ2に増大すると、エッチング液がノズル11から開口底部に到達するまでの距離が増加するため、エッチング液から受ける排出方向の抵抗Rは増加する傾向になる。抵抗RはR=J/K(Jは、深さJ1又はJ2)で表される。よって、開口部14の内部では薬液(この場合はエッチング液)の更新効率が低下し、垂直方向のエッチング特性が低下する事態となり、その上小型ノズルでは反応生成物が付着、堆積した場合、その影響が顕著にあらわれる。
【0012】
そこで、図2において、ノズル11から、吸引の応力をレジスト開口部14に作用させると、応力はJ2方向に作用するから、ノズル11と対応するレジスト開口部14との接触距離(長さ)をLとして、作用断面J2(深さ)×K(幅)を乗じた積:J2×K×Lの体積に相当する薬液が更新されることが分かる。薬液の更新により、同一系の液体中であれば、ノズル11に吸引された総体積分の薬液を同一時間内に、液槽の例えば底部に供給することができ、これによって、薬液更新が促進され、特に、垂直方向のエッチング特性が最適に維持される。
【0013】
本発明のノズル20は上記のようにして、エッチング処理に関連して生じる、好ましくない事態を改善するものであるが、エッチング処理ばかりではなくエッチング装置等に対する洗浄液の吐出にも有効であり、そのために、図3に示したように、液晶ガラス部品22の全体に一時に薬液を吐出するために、液晶ガラス部品の長さN以上の長さMを有する、スリット状の開口部21を備えているものである。図3は製品23を多数個取りする液晶ガラス部品22を示しており、1個1個の製品23の間はマージン(余白)である。なお、図3は飽くまで概念を示しており、写実的にとらえるべきではない。
【0014】
ここで、液晶ガラス部品22の全体に一時に薬液を吐出することができるとすれば、液晶ガラス部品22の長さN以上の長さを有しなくても、例えば、上記長さよりは短いスリット状開口部を複数個繋ぐことでノズルを構成可能である。つまり、ノズルを2,3個程度に分割し、それらの合計で一時に薬液を吐出することも可能な範囲の事項と考えられる。しかし、複数個のノズルを組み合わせる場合、複数の液流の境界部分においてカルマン過が発生し、その影響が多少を問わずガラス部品に及ぶことを避けられない。このため、そうしなければならない事情があるか、又はそうすることにより大きな利点が得られる場合を除き、利益は少ないと思われる。このような事情ではあるが、1個のスリット状開口部ではなく、数個に分けたとしても本発明の要件を満たし得ることは、上記の説明から明らかであろう。
【0015】
図4は、本発明を適用する浸漬型エッチング装置の略図である(上記の図1図2及び図3図4の一部分と考えて良い)。同図中、液晶ガラス部品22はコンベア24によって移動しながら、装置のエッチング液槽25の中にて、エッチング液の吐出作用を受け、かつまた、吸引作用を受ける。26はエジェクター、27は吐出回路、28は吸引回路であり、それぞれ流量調整可能なバルブを有する。それらの回路27、28の管端には、前記のノズル11の機能を有するノズル27a、28aが液晶ガラス部品22を挟んで上下に設けられるとともに、吸引流体は均一な応力となるように、ポンプにより還流回路29を通じて液槽内に還流され、薬液の更新がなされる。
【0016】
本発明において液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液として、液晶ガラス部品、そのエッチング処理に用いた装置及び付属品類に付着しているガラス成分とエッチング液との反応によって生成した固形成分を洗浄するための洗浄液があることは、前述したとおりである。そしてこの洗浄液は、硝酸、過酸化水素、ハロゲン酸塩及びその酸性塩を必須成分として構成される。
【0017】
本発明の対象となる液晶ガラス部品には、これまでと共通の素材を使用することができる。一般的には、薄膜トランジスター(TFT)に用いられる白板ガラス、タッチパネルに用いられる青板ガラス(白板ガラスも用いられる。)などが該当するが、本発明は上記の硝材及び上記以外の各種硝材にも適用し得る。
【0018】
上記のような各種硝材から成る液晶ガラス部品に対するエッチャント即ち薬剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酸性フッ化アンモニウム及び中性フッ化アンモニウム…等が一般的に用いられる。また、ガラス成分組成には、例えば、安定剤としてアルミニウムやカリウムの酸化物が存在する。このため、エッチング液と安定剤として添加されている成分との反応生成物を生じ、それが溶解度の低い疎水性塩として析出するという問題を生ずる。
【0019】
析出する物質は、例えば、ソーダ系の青板ガラスでは、NaO、KO、CaO、MgO、Alなどがあり、白板ガラスでは、加えて、BaO・ZrOなどがある。これらの固形成分のカチオンとエッチング成分のFとの反応によって、上記溶解度の低い疎水性塩(以下、単に「塩」と略称する)を生ずるのである。
【0020】
液晶製品が高精細化するにつれて、ガラスエッチングの製造に関与する装置、器具等の精度も要求されるようになり、高精度化した液中スリットノズルなども「塩」の影響を受け、現在のままでは精度を維持することが困難となる。このようにして、「塩」が液晶製品即ち液晶ガラス部品に残留した場合、製品の品質に悪影響を与えることとなるものである。
【0021】
そこで、本発明では、上記の「塩」を洗浄することが、もう一つの重要な要素となっている。本発明者の下で上記洗浄液の開発が進められ、試行錯誤の結果、洗浄液として、硝酸、過酸化水素、ハロゲン酸塩及びその酸性塩を主成分とするものが最適であることが突き止められた。本件発明者は硝酸、過酸化水素、ハロゲン酸又はその酸性塩は、それらの成分の組み合わせが最適の洗浄効果を生み出すというように認識しており、本発明は、一つにはこの組み合わせを発見したことに基づいて成立している。上記成分がどのように作用するのかについては、未だ解明されていない。なお、上記成分によって上記の「塩」を溶解する技術それ自体も未だ公知ではない。
【0022】
本発明における固形成分に対する洗浄液の組成としては、硝酸0.5〜3.0mol、過酸化水素0.2〜2.5mol、ハロゲン酸塩又はその酸性塩0.2〜7.0molを含有することが望ましい。なお、より好ましい数値は、硝酸0.5〜2.0mol、過酸化水素0.5〜2.0mol、ハロゲン酸塩及びその酸性塩0.5〜3.0molの範囲である。硝酸の場合の下限は0.5mol、過酸化水素の場合の下限は0.2molであり、これを下回ると酸化反応、洗浄反応が遅くなり過ぎる。また、硝酸の場合は3.0molを越えると硝酸分解反応が始まり、過酸化水素では2.5molを越えると急激な無効化分解反応が開始されるので好ましくない。ハロゲン酸塩又はその酸性塩については0.2molを下回るとキレート反応性が遅くなり、7.0molを越えて投入しても溶融しないので上記の範囲となる。本発明においては、このような洗浄液を用いて、エッチング後の液晶ガラス部品の洗浄とガラスエッチング製造に関与した装置、器具等を洗浄することで、高精細化しつつある液晶製品の品質向上に寄与することができる。
【0023】
また、本発明は液晶ガラスのエッチング装置において、薬液の吐出及び吸引に使用するためのノズルを提供する。このノズルは、エッチング処理対象である液晶ガラス部品の全体に一時に薬液を吐出するために、液晶ガラス部品の長さ以上の長さを有する、スリット状の開口部を備えており、かつ、上記薬液更新の促進のために、薬液を液中において吸引する吸引口を備えていることが望ましい。その理由は、一時に薬液の吐出、吸引を行うことで、複数の薬液の流れによる相互干渉を回避できること、吐出のみを行なって吸引を行わない場合には開口部14の壁面に過流を生じ薬液の円滑な流れが得られないが、吸引を行なうことによって、初めて、前記図1図2の開口部14の長さ方向に沿う整流化した流れが得られ、エッチングによって形成された開口部側面の微細な凹凸を整形する作用が得られるという理由を挙げることができる。なお、上記流れとしては層流の場合も乱流の場合も考えられる。
【0024】
本発明の薬液用ノズルが、液晶ガラスのエッチング装置において生成された固形成分の洗浄液による洗浄法の実施に使用するのみならず、エッチング処理にも使用されることは勿論である。即ち、本発明における薬液には、エッチャント即ちエッチング液及び固形成分の含まれている洗浄液等が対象になる。そして、それらの処理作業のどちらにおいても、薬液更新の促進のために、本発明のノズルが用いられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る洗浄液は上記のように構成され、かつ、作用するものであって、液晶ガラスのエッチングを最適の環境を維持して行なうために、液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新が促進されるようにし、それによって、高品質の液晶ガラス部品が得られるようになるという効果を奏する。また、本発明によれば、液晶ガラス部品全体に一時に薬液を吐出するとともに、同時に上記薬液を吸引し、ガラス成分とエッチング液との反応生成物を可能な限り完全に除去することにより、高精度のガラスエッチングを可能にするとともに、高品質の液晶ガラス部品を得ことができるという効果を奏する。また、本発明に係る薬液用ノズルは上記のように構成され、かつ、液晶ガラス部品の全体に一時に薬液を吐出するとともに、上記薬液を吸引するように作用するものであり、反応生成物から成る固形成分に対して、これを洗浄することでガラスエッチングの製造に関与する装置、器具等の精度を高精度に保ち、高品質のガラスエッチングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る薬液用ノズルとエッチング反応の進行との関係を示す断面説明図である。
図2】同じく反応がより進行した状態を示す断面説明図である。
図3】液晶ガラス部品とその長さ以上の長さを有する、スリット状の開口部を備えている本発明のノズルの一例を示す平面図である。
図4】本発明に係るエッチング方法の実施に直接使用する装置の一例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
11 ノズル
12 液面
13 レジスト
14 開口部
15 液晶ガラス
16 保護材
17 金属蒸着膜
20 ノズル
21 スリット状の開口部の例
22 液晶ガラス部品
23 製品
24 コンベア
25 エッチング液槽
26 エジェクター
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<実施例>
以下、実施例を記載して本発明をより詳細に説明する。本発明に係る液晶ガラスのエッチング装置に用いる薬液の更新方法には、図4に示した前述のエッチング装置を使用する。具体的には、薬液を満たすエッチング液槽25に、薬液の吐出用のノズル27aと吸引用のノズル28aを、液晶ガラス部品22を挟んで、上下に配置し、薬液中に上記のノズル27a、28aを浸漬した状態にて、薬液の吐出、吸引を行ない、上記のノズル27a、28aを用いた吐出、吸引を同時に行なって、均一な応力を薬液に加えることにより薬液の更新が促進されるように構成されている。
【0029】
液晶ガラス部品22はコンベア24によって移動しつつ、エッチング液槽25の中にて、エッチング液の吐出作用を受け、かつ、吸引作用を受ける。また、図4を参照した前述の説明は全て実施例のものである。また、エッチング装置が、そのままで洗浄装置を構成することも勿論のことである。洗浄効果の確認には、図4のエッチング装置を用いて液晶ガラスのエッチングを実施し、その結果、ガラス成分とエッチング液との反応によって生成した、固形成分が析出した配管を使用し、本発明に係る洗浄液に浸漬した。
【0030】
なお、上記液晶ガラスには青板ガラスを用い、これをフッ酸と塩酸から成るエッチング液にて、35℃の条件で浸漬するという、通常のエッチング方法によりエッチングを行なった。従って、配管内壁に析出した固形成分は、カチオン、フッ素及びアニオンなどであると推測される。上記配管の一部を切断するとともに本発明の洗浄液に浸漬し、洗浄された成分を含む液体を、後述の如く処理してスラッジを得、これを試料として本発明の薬液更新による洗浄液の効果を確認する実験を行った。
【0031】
表1は本発明に係る液晶ガラスのエッチング装置における固形成分の洗浄液に関するものである。
表1
濃度はmol 表示、成分以外は水である。
【0032】
上記1〜7の洗浄液100gに乾燥した白板ガラスの乾燥したスケールを1g投入し、30℃で1時間撹拌した後、濾別、濾紙を焼き、残ったスラッジに灯光器を用いて光線を照射し、減率乾燥状態となった「塩」の重量を計測し、減衰率を考察した。その結果を表2に示す。
表2

減衰率の最も大きい洗浄剤3に、実際のエッチング装置に用いられ反応生成物の析出した配管を、液温25℃で、1時間浸漬したところ、析出していた固形成分は跡形を止めない程度に洗浄され、本発明の洗浄液による顕著な洗浄効果を確認することができた。また、洗浄液4についても同様の実験を行ったところ、析出していた固形成分は面積にして4割程度残存していたが、洗浄液5〜7の比較例との対比においては著しく改善されていることを確認した。これにより、洗浄液1ないし4は、本発明の目的とする洗浄液の効果を奏することを確認した。
【0033】
次に、本発明によって得られる液晶ガラスの強度を確認する実験を行った。図1の構成において、100mm×150mmのソーダガラスにレジストにより回路形成された0.55mmの液晶ガラス部品に対して、上方150mmの距離から円錐型のスプレーパターンのノズルをもって、配管内圧0.15mpaで照射し、上記ガラスを6rpmの回転速度で+80mm移動させ、得られたものを一つの供試ガラス部品とした。また、同様の試料を用いて、120mmの長さのスリットノズルを試料に対して、上方20mmの距離からポンプ吐出流量150リットル/minでエジェクター吸引し、上記ガラスを6rpmの速度で+80mm移動させ、得られたものをもう一つの供試ガラス部品とした。
【0034】
上記2種の試料を供試部品として破壊強度試験機に掛け、それぞれのガラス部品表面に加えられた応力により破壊を生じた時点の強度を計測した。その試験結果を破壊強度として表3に示す。
表3
表3によれば、円錐型のスプレーパターンのノズルよりも、本発明に係るスリットノズルによる方が、最大の例2で33%増、最小の例3でも26%増と、著しく強度の向上していることが分かる。
【0035】
さらに、本発明によって得られる液晶ガラスの、エッチング加工面における滑らかさを確認するために実験を行った。340mm×460mm×0.7mmの白板ガラスを試料として用いて、これを図4に示された浸漬型エッチング装置を用いて、板厚が0.4mmになるまでエッチングし、その後、上記エッチング装置から取り出した試料を酸化セリウムから成る研磨剤を用いて、0.38mmまで機械研磨した。上記研磨によって生じた上記ガラス内部の100μm以上の傷の数を、エッチング後水洗乾燥した試料と、水洗後、薬液番号3に60秒浸漬後水洗乾燥したものとを比較とした。
【0036】
その結果を、表4に示す。
表4
表4によれば、機械研磨のみで、薬液(本発明の洗浄液)による洗浄をしないものには、20個前後の傷が残存したのに対して、本発明の洗浄液を用いて処理した試料に残っている傷は2個を越えなかったことから、薬液洗浄の効果の顕著であることが分かる。
【0037】
上記薬液洗浄は、本発明の洗浄液が擦過傷を消失させ、滑らかさを回復するために著しい効果を発揮することを立証するものであり、このことは本発明のエッチング技術によって得られた液晶ガラスは、傷が原因となって割れを生じることを著しく減少できることを意味している。また、表3の液晶ガラスの破壊強度の計測により、液晶ガラスの破壊強度が著しく向上していることが分かるが、破壊強度に擦過傷の消失が寄与した結果と判断される。一方、本発明に係る液晶ガラス部品の長さ以上の長さを有するスリット状の開口部を備えている薬液更新用ノズルでは、円錐型のスプレーパターンよりも3割方強力な吐出、吸引力を使用することが可能になることが分かる。従って、本発明によれば、上記の効果の相乗により、高精度の液晶ガラス部品を、効率良く製造することができる。
【0038】
このように構成されている本発明によれば、理想的な条件の下でのガラスエッチング加工が可能となる。また、本発明に係る洗浄液と薬液ノズルを使用して洗浄することで、ガラスエッチングの製造に関与する装置、器具等をほぼ完全に洗浄することができ、それらの精度が高精度に維持されるので、本発明の洗浄液及び薬液ノズルにより、ガラスエッチングの製造に関与する装置、器具等の性能を常に最高の状態に維持することが可能になるとともに、ガラス素材を本発明の洗浄液及び薬液ノズルにより洗浄することで、高品質の液晶ガラス部品の製造が可能になる。
図1
図2
図3
図4