【課題を解決するための手段】
【0009】
図1に本発明の表示シーケンスの概念図を示す。12桁の数字からなる個人番号を3つの部分に分けて表示することとする。通常操作時11は、表示をトリガーする操作を行うと最初の部分「1234」のみがまず表示される。この種の取扱注意情報閲覧管理プログラムにおいては、閲覧目的は何らかの書類への記入であったり他のシステムへの入力作業であったりすることが多い。以下、これらを転記作業と呼ぶこととする。通常の事務員は、一瞥で12桁を記憶して丸ごと一気に転記することは稀で、一部分毎に見直しながら転記を進める。したがって、最初の部分さえ表示されていれば、転記作業を開始することが可能となる。その後、所定の遅延時間を置いて第2の部分、そしてさらに遅延させて第3の部分も表示することにより閲覧を完了させる。部分毎に見直しながら転記する場合は、このような段階的な表示であっても、さほど作業の妨げにはならない。
【0010】
一方、誤操作時12には、12桁全てが表示されるまでの猶予時間内に誤りに気づいてキャンセルボタンを押せば全体が表示される前にキャンセルすることができる。この場合、一部分のみは見えてしまうが、誤って全体を見てしまう事態と比べれば、情報流出の恐れは大幅に削減できる。
【0011】
なお、本明細書において、取扱注意情報とは、みだりにみるべきではない情報のことである。多くの場合、閲覧された場合にその履歴を出力することが強く期待される。例えば、番号法が規定する個人番号、クレジットカード番号、免許証番号、氏名、その他の個人情報、または、これらの組み合わせなどが該当する。
【0012】
上記課題を達成するため、本発明の側面1のコンピュータプログラムは、
コンピュータを、
キー情報に関連付けられて複数の取扱注意情報が記憶された取扱注意情報記憶手段、
前記取扱注意情報記憶手段に記憶された取扱注意情報の1つを表示させるシーケンスをトリガーするための入力をユーザから受け取る取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段、
前記取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段によって受け取ったユーザからの入力に基づいてトリガーされた前記取扱注意情報を表示させるシーケンスを、
該取扱注意情報を構成する複数の部分毎に、
互いに異なる遅延時間となるように遅延させて表示させることによって実行する、取扱注意情報表示シーケンス実行手段、
前記取扱注意情報に関連付けられて前記取扱注意情報記憶手段に記憶されたキー情報を表示するキー情報表示手段、
前記取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段によってトリガーされた前記取扱注意情報を表示させるシーケンスをキャンセルするための入力をユーザから受け取る取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段、
前記取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段によって受け取った入力に基づいて、前記取扱注意情報表示シーケンス実行手段によって実行されている前記取扱注意情報を表示させるシーケンスのそれ以降の実行をキャンセルする取扱注意情報表示シーケンスキャンセル手段、
として機能させることを特徴とする。
【0013】
図2に本発明のシステム構成図を示す。
取扱注意情報記憶手段21では、キー情報に関連付けられて複数の取扱注意情報が記憶される。キー情報とは、取扱注意情報を一意に特定する情報であり、例えば、従業員管理システムにおいては、従業員番号や氏名などである。従業員の親族の取扱注意情報も扱う場合は、その親族の氏名や従業員との続柄もキー情報として扱うことができる。情報の記憶の形態としては、補助記憶装置に格納されたファイル、データベース・マネージメント・システムによって管理されたデータベース、主記憶装置に展開された情報、ネットワークを介してアクセスする分散型キーバリューストアなど、どのような形態の記憶手段であってもよい。
【0014】
取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段22は、前記取扱注意情報記憶手段に記憶された取扱注意情報の1つを表示させるシーケンスをトリガーするための入力をユーザから受け取る。具体的には、マウスやキーボードなどの入力装置からの入力があったことを検知し、表示シーケンスをトリガーする。
【0015】
取扱注意情報表示シーケンス実行手段23は、前記取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段によって受け取ったユーザからの入力に基づいてトリガーされた前記取扱注意情報を表示させるシーケンスを、該取扱注意情報を構成する複数の部分毎に、互いに異なる遅延時間となるように遅延させて表示させることによって実行する。
【0016】
取扱注意情報を構成する複数の部分は、個々の部分が一瞥で認知できる程度の情報量であることが望ましい。また、部分の分け方に慣例のある取扱注意情報は慣例に従うのが望ましい。例えば、個人番号やクレジット番号などは4文字ずつ分けるのが慣例になっている。
取扱注意情報内の離れた位置にある文字を1つの部分とみなしても構わない。例えば、奇数番目の文字の部分と偶数番目の文字の部分との2つの部分に分けることも可能である。しかしながら、その場合、奇数番目の文字の部分のみを表示したときに開始できる転記作業がややこしくなるのであまり好ましくはない。(例えば、「****-****-****」→「1*3*-5*7*-9*1*」 →「1234-5678-9012」。)また、構成する文字1つ1つをそれぞれ別々の部分とみなしても構わない。また、各部分の表示にはフェイドインやスライドインなどの映像効果を加えても構わない。
【0017】
取扱注意情報を構成する1つの部分における遅延時間は0秒であっても構わない。すなわち、取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段によって入力されたあと、即座に1つ目の部分が表示されても構わない。遅延時間が0秒ではない正の数のときは、システムタイマー等の計時手段が有用であるが、時間測定の精度は高くなくてもよいので、ダミーのアルゴリズムの処理をループで回すなどして時間を計測してもよい。また、遅延表示のためのタイマーイベントハンドラーを登録してもよい。
【0018】
取扱注意情報の分割方法や遅延時間の設定については、表示のたびに変えることも可能であるが、ユーザにとっての分かり易さのためにはなるべく固定するほうが望ましい。特に、同じ取扱注意情報を何度も誤操作で見てしまった場合、毎回見える部分が異なってしまうと組合せで全体をカバーしてしまうかも知れないので、いつも同じ部分から同じ順序で閲覧されるようにしておくほうが情報漏えいを防ぐ意味では好ましい。
なお、分割された部分の呈示は自然な読み方の順に呈示される方が望ましい。すなわち、横書きの場合は左から右へ、縦書きの場合は、上から下へと順に提示されることがユーザの転記を支援するうえで好ましい。
【0019】
表示されていない部分は、「*」や「●」などのマスク文字で隠蔽されていてもいいし、単に空欄のままでもよい。取扱注意情報が十分長い場合は、最後の方を閲覧している頃には最初の頃に提示された部分はすでに転記が終わっているはずなので、段階的表示の途中に最初の方の部分を隠してもよい。こうすると、背後からディスプレイを覗き込まれたとき、どの瞬間であっても取扱注意情報の全体が見られないという利点がある。
【0020】
キー情報表示手段24は、前記取扱注意情報に関連付けられて前記取扱注意情報記憶手段に記憶されたキー情報を表示する。ユーザは表示されたキー情報をみることにより、これからどの取扱注意情報を閲覧しようとしているのか、あるいは、キャンセルしようとしているのかを知ることが出来る。
【0021】
取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段25は、前記取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段によってトリガーされた前記取扱注意情報を表示させるシーケンスをキャンセルするための入力をユーザから受け取る。具体的には、マウスやキーボードなどの入力装置からの入力があったことを検知し、表示シーケンスをキャンセルする処理を呼び出す。
【0022】
取扱注意情報表示シーケンスキャンセル手段26は、前記取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段によって受け取った入力に基づいて、前記取扱注意情報表示シーケンス実行手段によって実行されている前記取扱注意情報を表示させるシーケンスのそれ以降の実行をキャンセルする。表示シーケンスをキャンセルするとは、表示を完了させなくすることであり、既に表示されてしまった部分についてはキャンセルとともに非表示にしてもいいし、そのまま表示させておいてもよい。また、一旦キャンセルされ、一部分がそのまま表示されたままになって止まっている状態から、表示シーケンスを再開させる機能があってもよい。
【0023】
表示シーケンスをキャンセルする具体的なアルゴリズムは、それ以降の表示シーケンスを行わせないならば何でもよい。具体的には、例えば、ループを回して時間計測している場合は、共有メモリーにキャンセルフラグを立て、時間計測用ループを途中で抜けて表示シーケンスを中断することが考えられる。あるいは、遅延表示のためのタイマーイベントハンドラーが登録されている場合は、その登録を解除すればよい。あるいは、取扱注意情報を表示するGUIウィジェットを非表示にしてもよい。
【0024】
本発明の側面2のコンピュータプログラムは、側面1のコンピュータプログラムであって、
前記取扱注意情報表示シーケンス実行手段が、前記取扱注意情報を構成する複数の部分の全ての部分を表示した場合に、該取扱注意情報の閲覧完了履歴を出力する取扱注意情報閲覧履歴出力手段、
を有することを特徴とする。
【0025】
取扱注意情報閲覧履歴出力手段27は、前記取扱注意情報表示シーケンス実行手段が、前記取扱注意情報を構成する複数の部分の全ての部分を表示した場合に、該取扱注意情報の閲覧完了履歴を出力する。
【0026】
取扱注意情報閲覧履歴出力手段が出力する閲覧履歴とは、取扱注意情報の閲覧が行われたことを示す情報であり、取扱注意情報自体、または、それを一意に特定する情報に関連付けられて、閲覧が行われた旨を記録する。取扱注意情報を一意に特定する情報として、前記キー情報を用いるのが好ましい。また、情報漏洩発覚時の調査に備えて、閲覧者や閲覧回数、閲覧時刻などの情報も関連付けて保存しておくことが望ましい。出力先は、ファイルやデータベース・マネージメント・システムへの格納やネットワークを介したクラウドストレージへの格納、あるいはプリンタへの印字など、後で履歴を人またはコンピュータが参照可能な形で記録に残せるものである。
【0027】
閲覧完了履歴とは、ある取扱注意情報について、それを構成する複数の部分の全ての部分が閲覧されたことを示す情報が出力されたものである。
【0028】
本発明の側面3のコンピュータプログラムは、側面2のコンピュータプログラムであって、
前記取扱注意情報閲覧履歴出力手段は、
前記取扱注意情報を構成する複数の部分のうち、所定の閾値個以上を表示した場合に、該取扱注意情報の部分表示履歴を出力すること、
を特徴とする。
【0029】
部分表示履歴とは、所定の閾値個以上の部分が表示された場合に残す、閲覧完了履歴とは区別可能な履歴である。「所定の閾値個以上」とは通常は1個以上であるが、最初に表示される部分が1文字だけの場合のように情報量が少なく無視可能であるならば、実質的にはまだ表示されていないと考えて、2個目以上の表示が行われた場合に部分表示履歴を残してもよい。さらに、どの部分までが表示されたかも履歴内に残すことが望ましい。
また、取扱注意情報閲覧履歴出力手段が閲覧完了履歴を出力するときには、部分表示がそれまでに行われたことは明らかであるから、部分表示履歴はその時点で消去してもよい。あるいは、キャンセル処理の実行により閲覧が完了しなかったことが確定した時点で、どこまで表示シーケンスが進行したかを判定して部分表示履歴を出力してもよい。
【0030】
本発明の側面4のコンピュータプログラムは、側面1乃至側面3のコンピュータプログラムであって、
前記取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段は、
取扱注意情報記憶手段に記憶された、前記取扱注意情報とは別の前記取扱注意情報を表示させるシーケンスをキャンセルするための入力をユーザから受け取る取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段を伴うこと、
を特徴とする。
【0031】
これにより、以前にトリガーされたある取扱注意情報の表示シーケンスが進んでいるときに、別の取扱注意情報の表示シーケンスをトリガーする取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段から入力があったときには、以前の表示シーケンスのキャンセルも合わせて行うことができる。すなわち、一旦、前の取扱注意情報の表示シーケンスを一旦キャンセルして次に別の取扱注意情報の表示シーケンスを新たにトリガーする2ステップの操作に相当する操作を1ステップでまとめて行うことができる。
【0032】
ここで、「伴う」とは、取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段が、別の取扱注意情報のための取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段を兼ねるか、または、取扱注意情報表示シーケンストリガー入力手段に、別の取扱注意情報のための取扱注意情報表示シーケンスキャンセル入力手段が随伴するように構成することである。前者は、同一のイベントハンドラー内で両処理を行う。後者は1つのイベントが必ず他方のイベントを必然的に伴う場合の両イベントハンドラー内でそれぞれの処理を行う。例えば、ボタンが押されていない状態のときには、ボタンを離すためには一旦ボタンを押さなければならないから、ボタンを離すイベントにはボタンを押すイベントが伴うと言える。すなわち、ボタンを押すイベントのイベントハンドラー内で前に表示中の取扱注意情報表示シーケンスキャンセル手段を呼び出し、ボタンを離すイベントのイベントハンドラー内で次の取扱注意情報のための取扱注意情報表示シーケンス実行手段を呼び出す処理などが該当する。