特許第5986345号(P5986345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5986345
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】クーラント噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   B23Q11/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-530254(P2016-530254)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2015083386
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-246555(P2014-246555)
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】中束 由一
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−228739(JP,A)
【文献】 特開平09−131700(JP,A)
【文献】 特開平06−159379(JP,A)
【文献】 特開2004−293637(JP,A)
【文献】 特開2003−230246(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0308323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B05B 3/00−3/18
F16D 3/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を備えたモータと、
前記駆動軸によって駆動され回転する従動軸と、
前記従動軸に結合されて回転すると共にクーラントを前記従動軸に対して垂直方向に噴射するノズルと、
前記駆動軸と前記従動軸との間に設けられたオルダムカップリングと
を備え
前記オルダムカップリングは、一方の端面で駆動軸側部材と係合し、他方の端面で前記従動軸または従動軸側部材と係合する中間部材を有し、
前記中間部材の中心には開口が設けられて前記駆動軸が貫通しており、
前記中間部材には、少なくとも前記従動軸および前記従動軸側部材のいずれかと係合する凹部または凸部が径方向に形成され、径方向に平行な溝が前記凹部の両側または前記凸部に形成されているクーラント噴射装置。
【請求項2】
前記中間部材は、前記駆動軸側部材よりも硬度が低い請求項に記載のクーラント噴射装置。
【請求項3】
前記中間部材は、前記従動軸または前記従動軸側部材よりも硬度が低い請求項1または2に記載のクーラント噴射装置。
【請求項4】
クーラントを噴射するノズルと、
該ノズルを回転させてクーラントの噴射方向を制御することができるモータと
を備えたクーラント噴射装置において、
ハウジングと、
該ハウジングに回転可能かつ液密的に挿入され、内部にクーラント通路が形成された中空シャフトと、
前記中空シャフトの側壁に設けられた複数の貫通穴と、
前記ハウジングに設けられて前記複数の貫通穴を介して前記クーラント通路に連通する入口通路と
を備え、
前記ノズルは、前記中空シャフトに接続されて、前記中空シャフトは、オルダムカップリングを介して前記モータの出力軸に連結されており、
前記オルダムカップリングは、一方の端面で前記モータの出力軸側部材と係合し、他方の端面で前記中空シャフトまたは中空シャフト側部材と係合する中間部材を有し、
前記中間部材の中心には開口が設けられて前記モータの出力軸が貫通しており、
前記中間部材には、少なくとも前記中空シャフトおよび前記中空シャフト側部材のいずれかと係合する凹部または凸部が径方向に形成され、径方向に平行な溝が前記凹部の両側または前記凸部に形成されているクーラント噴射装置。
【請求項5】
前記中間部材は、前記モータの出力軸側部材よりも硬度が低い請求項に記載のクーラント噴射装置。
【請求項6】
前記中間部材は、前記中空シャフトまたは前記中空シャフト側部材よりも硬度が低い請求項4または5に記載のクーラント噴射装置。
【請求項7】
リード線が接続された回路基板を収容する空間を備え、
前記回路基板は、前記空間の内部において樹脂で封止されている請求項1乃至のいずれか一項に記載のクーラント噴射装置。
【請求項8】
前記リード線が接続された回路基板は前記空間の内部に配置された容器の中で樹脂に埋め込まれている請求項に記載のクーラント噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いて切削加工、研削加工等の機械加工を行う場合、潤滑、冷却、切屑除去、溶着防止等のため、加工部位にクーラント(切削油剤、研削油剤、エアー等)を供給しながら加工が行なわれる。このクーラントを加工部位に噴射する装置としてクーラント噴射装置が用いられる。クーラント噴射装置では、クーラントを噴射するノズルをモータによって駆動し、工具の交換、機械加工の進行等に応じてノズルの位置、角度を調整することにより、加工部位に正確にクーラントを噴射するようにしている。クーラント噴射装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−228739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クーラント噴射装置では、ノズルの回転軸に垂直な方向にクーラントが噴射されるので、動作中に回転軸に対して軸線に垂直な方向への力が作用する。軸受等には、この力に起因する負荷が加わる。これは装置の寿命を短くする要因となる。また、モータの出力軸とノズルの回転軸の軸線のずれ(軸位置のずれ)が存在する場合がある。これは、部品の寸法精度や装置の組立精度に起因する。クーラント噴射装置では、ノズルが首を振るような動作を行うが、上記の軸線のずれがあると、軸受等に負荷が加わり、装置の寿命が短くなる問題が生じる。
【0005】
このような背景において、本発明は、クーラント噴射装置の寿命を延ばすことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、駆動軸を備えたモータと、前記駆動軸によって駆動され回転する従動軸と、前記従動軸に結合されて回転すると共にクーラントを前記従動軸に対して垂直方向に噴射するノズルと、前記駆動軸と前記従動軸との間に設けられたオルダムカップリングとを備えるクーラント噴射装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ノズルからのクーラントの噴射によって生じる従動軸に加わる軸線に垂直な方向への力がオルダムカップリングにより吸収される。このため、軸受等への高負荷が抑えられ、部品の摩耗や変形が抑えられ、装置の寿命を延ばすことができる。
【0008】
また、請求項1に記載の発明によれば、オルダムカップリングに負荷が加わるが、負荷がオルダムカップリングで吸収されるので、部品の摩耗等はオルダムカップリングで主に生じる。このため、オルダムカップリングの部品を交換することで、装置の寿命を延ばすことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記オルダムカップリングは、一方の端面で駆動軸側部材と係合し、他方の端面で前記従動軸または従動軸側部材と係合する中間部材を有し、前記中間部材の中心には開口が設けられて前記駆動軸が貫通している。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、開口が組み立て時における誘い穴として機能するので、組み立て易い構造が得られる。また、駆動軸側と従動軸側との間で軸線のずれが生じた場合に、両者のずれが制限され、中間部材の脱落や大きな変位が抑えられる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記中間部材には、少なくとも前記従動軸および前記従動軸側部材のいずれかと係合する凹部または凸部が径方向に形成され、径方向に平行な溝が前記凹部の両側または前記凸部に形成されている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記中間部材は、前記駆動軸側部材よりも硬度が低い。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記中間部材は、前記従動軸または前記従動軸側部材よりも硬度が低い。
【0014】
請求項6に記載の発明は、クーラントを噴射するノズルと、該ノズルを回転させてクーラントの噴射方向を制御することができるモータとを備えたクーラント噴射装置において、ハウジングと、該ハウジングに回転可能かつ液密的に挿入され、内部にクーラント通路が形成された中空シャフトと、前記中空シャフトの側壁に設けられた複数の貫通穴と、前記ハウジングに設けられて前記複数の貫通穴を介して前記クーラント通路に連通する入口通路とを備え、前記ノズルは、前記中空シャフトに接続されて、前記中空シャフトは、オルダムカップリングを介して前記モータの出力軸に連結されているクーラント噴射装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記オルダムカップリングは、一方の端面でモータの出力軸側部材と係合し、他方の端面で前記中空シャフトまたは中空シャフト側部材と係合する中間部材を有し、前記中間部材の中心には開口が設けられて前記モータの出力軸が貫通している。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記中間部材には、少なくとも前記中空シャフトおよび前記中空シャフト側部材のいずれかと係合する凹部または凸部が径方向に形成され、径方向に平行な溝が前記凹部の両側または前記凸部に形成されている。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の発明において、前記中間部材は、前記モータの出力軸側部材よりも硬度が低い。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の発明において、前記中間部材は、前記中空シャフトまたは前記中空シャフト側部材よりも硬度が低い。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発明において、リード線が接続された回路基板を収容する空間を備え、前記回路基板は、前記空間の内部において樹脂で封止されている。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の発明において、前記リード線が接続された回路基板は前記空間の内部に配置された容器の中で樹脂に埋め込まれている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クーラント噴射装置の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態のクーラント噴射装置の縦断面図である。
図2】モータに軸継手を介してシャフトを結合した状態の一例を示す斜視図である。
図3図2の一部の分解斜視図である。
図4】実施形態のジョイントの一部拡大図である。
図5】実施形態のクーラント噴射装置の縦断面図である。
図6】組立途中における図5のクーラント噴射装置を後ろから見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第1の実施形態
(構成)
図1には、本実施形態に係るクーラント噴射装置1が示されている。クーラント噴射装置1は、NCボール盤、NCフライス盤、NC旋盤、マシニングセンタ等の数値制御(NC)工作機械に取付けられて加工部位にクーラントを噴射する。クーラント噴射装置1は、ケース2を備える。ケース2内には、可動ノズルユニット3及びモータ4が一体化された状態で収容されている。ケース2の内部の端部と可動ノズルユニット3との間には、センサ室5が形成されている。
【0024】
可動ノズルユニット3は、ハウジング6を備えている。ハウジング6は、略直方体の外形形状を有し、中央部の中径ボア7A、並びに、両端部の大径ボア7B及び小径ボア7Cからなる段付の開口部が貫通されている。大径ボア7Bには、小径ボア7Cと同径のガイドボア8Aを有するガイド部材8が液密的に嵌合されている。ハウジング6の小径ボア7C及びガイド部材8のガイドボア8Aには、ハウジング6を貫通する中空シャフト11が回転可能かつ液密的に挿入されている。これにより、ハウジング6の中径ボア7Aと中空シャフト11との間に、入口室10が形成されている。中径ボア7Aと小径ボア7Cとの間の段部、及び、ガイド部材8の入口室10側の端部には、入口室10に連なるテーパ部7D、8Bが形成されている。ハウジング6は、合成樹脂等の適当な材料で形成し、適宜、肉抜きを施すことができる。
【0025】
中空シャフト11は、首を振るようにノズル本体33を回動させるための回転軸である。中空シャフト11は、ハウジング6の大径ボア7Bにガイド部材8に隣接して嵌合された軸受12と、ハウジング6の小径部7C側の端部に形成された軸受ボア7Eに嵌合された軸受13とによって、ハウジング6に回転可能な状態で保持されている。中空シャフト11とハウジング6の小径ボア7C及びガイド部材8のガイドボア8Aとの間は、それぞれOリング14、15によってシールされている。Oリング14、15は、複数設けられて多段シールとなっている。中空シャフト11は、センサ室5を通り、ケース2の端部に設けられた開口16を貫通してケース2の外部へ延びている。
【0026】
中空シャフト11には、その軸心に沿って延びるクーラント通路17が形成され、クーラント通路17の一端部は、中空シャフト11がケース2の外部へ延びる先端部で開口し、モータ4側の端部は閉塞されている。また、中空シャフト11の側壁には、クーラント通路17と入口室10とを連通させる複数の貫通穴18が貫通されている。ハウジング6の側壁には、入口室10に連通する入口通路19が設けられ、入口通路19は、ハウジング6から突出し、ケース2の側壁に設けられた開口20を貫通してケース2の外部へ延びている。
【0027】
中空シャフト11の端部とモータ4の出力軸23とは、オルダムカップリング部50によって結合されている。オルダムカップリング部50を介してモータ4の駆動力が中空シャフト11に伝わる。図2および図3には、モータ4の出力軸23と中空シャフト11とをオルダムカップリング部50によって結合した状態を示す斜視図とその分解斜視図が示されている。ここで、出力軸23が駆動軸の一例であり、中空シャフト11が出力軸23の駆動力を受けて従動して回転する従動軸の一例である。
【0028】
オルダムカップリング部50は、モータ4の出力軸23に固定されたカプラ51、カプラ51と係合したジョイント52、ジョイント52と係合したハブ53により構成されている。ここで、カプラ51が駆動側の部材の一例であり、ハブ53が従動側の部材の一例である。カプラ51には、図1に示すネジ孔55が設けられている。このネジ孔55にねじ込まれたネジ56が平坦部23A(図3参照)に押し付けられることで、出力軸23にカプラ51が固定される。なお、図2および図3には、ネジ孔55およびネジ56が図示されていない。
【0029】
カプラ51には、軸方向に対して垂直な方向に延長する溝51Aが設けられている。他方で、ジョイント52には、断面形状が凸型で軸方向に対して垂直な方向に延長する凸条52Aが設けられている。溝51Aの延長方向と凸条52Aの延長方向とを合わせ、両者を噛み合わせ嵌合させることで、カプラ51とジョイント52とが係合する。ここで、溝51Aと凸条52Aとの噛み合わせは、両者が相対的に摺動可能な「すきまばめ」となるように寸法が設定されている。溝51Aと凸部52が噛み合った状態において、両者はその延長方向に相対的にスライド可能である。こうして、カプラ51とジョイント52とが軸に垂直な方向にスライド可能で、且つ、駆動力を伝達できる状態で係合する。なお、軸方向というのは、出力軸23および中空シャフト11の延長方向のことをいう。
【0030】
ジョイント52の凸条52Aが設けられた側と反対側の面には、軸方向に対して垂直な方向に延長する断面が凸型の凸条52Bが設けられている。凸条52Bは、凸条52Aと共に軸に垂直な面内で延長し、その延長方向が凸条52Aの延長方向と90°交差している。
【0031】
図4には、ジョイント52の側面図が示されている。図4に示すジョイント52の軸方向の厚みAと、軸方向における凸条52Aおよび52Bの高さBとは、A:B=1:1〜0.5:1の範囲に設定することが好ましい。
【0032】
ハブ53は、中空シャフト11の一部であり、軸方向に対して垂直な方向に延長する溝53Aを有している。溝53Aと凸条52Bを相対的にスライド可能な状態で噛み合わせ嵌合させることで、ジョイント52とハブ53が係合する。ここで、溝53Aと凸条52Bとの噛み合わせは、両者が相対的に摺動可能な「すきまばめ」となるように寸法が設定されている。この状態において、ジョイント52とハブ53とは、軸に垂直な方向にスライド可能で、且つ、駆動力を伝達できる状態で係合する。なお、カプラ51とジョイント52とがスライド可能な方向と、ジョイント52とハブ53とがスライド可能な方向とは直交する。
【0033】
カプラ51、ジョイント52およびハブ53の軸中心には、出力軸23が貫通する貫通孔が設けられている。ここで、ジョイント52には出力軸を収容する貫通孔52Eが設けられている。貫通孔52Eは、出力軸23の外径よりも内径が大きな寸法に設定され、カプラ51に対するジョイント52の動き(軸に垂直な面内での動き)が許容される構造となっている。また同様に、中空シャフト11の端部には、カプラ51およびジョイント52に対するハブ53の動き(軸に垂直な面内での動き)が許容されるように、出力軸23が余裕を持った状態で収まる空洞部53B(図1参照)が設けられている。
【0034】
ジョイント52の凸条52Aの中央には、凸条52Aの延長方向と同じ方向に延長する割溝52Cが設けられている。割溝52Cの深さは(軸方向の寸法)、凸条52Aの高さより僅かに大きな寸法に設定されている。また、ジョイント52の凸条52Bの中央には、凸条52Bの延長方向と同じ方向に延長する割溝52Dが設けられている。割溝52Dの深さは、凸条52Aの高さより僅かに大きな寸法に設定されている。割溝52Cは、楔等によりその溝幅を押し広げることで、溝51Aと凸条52Aとの噛み合い構造を密にするための溝である。割溝52Dは、楔等によりその溝幅を押し広げることで、溝53Aと凸条52Bとの噛み合い構造を密にするための溝である。
【0035】
図4に示すように、割溝52Cの溝の底の部分の角はR形状に加工されていてもよい。または、底の部分の断面が半円形状となるような形状にしてもよい。割溝52Cの溝の底の部分の角をR形状に加工することで、上述した楔等による溝幅を押し広げての拡張を行った際にジョイント52に亀裂が生じないようにしている。割溝52Cの溝の底の部分の角をR形状に加工しない場合、楔等による溝幅を押し広げての拡張を行った際に応力集中のための亀裂が生じ易い。この割溝の底の部分のR形状については、割溝52Dにおいても同じである。
【0036】
オルダムカップリング部50は、出力軸23の駆動力を中空シャフト11に伝える。ここで、カプラ51とハブ53は、相対的に硬質な材料で構成され、ジョイント52は、相対的に軟質な材料で構成されている。本実施形態では、カプラ51とハブ53は、相対的に硬質なステンレスで構成され、ジョイント52は、相対的に軟質な真鍮で構成されている。ジョイント52を相対的に軟質な材質とするのは、オルダムカップリング部50の経年使用における磨耗をジョイント52に集中させることでカプラ51とハブ53の長寿命化を計り、取り外しや交換が容易なジョイント52のみを消耗部品とするためである。
【0037】
ジョイント52は、真鍮以外にアルミニウムや樹脂で構成することも可能である。その場合、カプラ51とハブ53は、ジョイント52を構成する材料よりも硬い材質を採用する。
【0038】
図1に示すように、ハウジング6の端部には、結合部材22を介してモータ4のケーシングが結合されている。この構造により、ハウジング6とモータ4とが一体化されている。結合部材22は、中空シャフト11とモータ4の出力軸23とを同軸上に位置決めしている。結合部材22とハウジング6との間は、Oリング22Aによってシールされている。
【0039】
モータ4は、出力軸23の回転角を制御することが可能なモータであり、例えばステッピングモータが採用される。ステッピングモータとしては、可変リラクタンス型、永久磁石型、又は、これらを組み合わせたハイブリッド型のいずれを用いてもよいが、本実施形態では、調整可能なステップ角が充分小さいことからハイブリッド型ステッピングモータを採用している。
【0040】
ハウジング6の入口通路19が設けられた部分は、ケース2の開口20から外部に突出している。この突出した部分の外周には、ネジ部19Aが設けられ、このネジ部19Aに管継手27がねじ込まれている。管継手27の外径は、開口20よりも大きく、管継手27とケース2との間には、弾性体で構成さえるシール材25(ゴムワッシャ等)及びワッシャ26が挟まれている。ネジ部19Aに管継手27がねじ込まれることで、モータ4と一体となったハウジング6は、ケース2に固定されている。ケース2の開口16から外部に突出した中空シャフト11と、ケース2の開口16との間の隙間は、中空シャフト11に取付けられたリップシール28によってシールされている。
【0041】
センサ室5内には、中空シャフト11の回転角度の原点位置を検出する原点位置センサ29が設けられている。原点位置センサ29は、中空シャフト11に固定されたマグネットホルダ29Aと、マグネットホルダ29Aに対向してケース2側に固定されたホール素子等の磁気検出素子29Bとを有する。マグネットホルダ29Aには、マグネットが保持されている。中空シャフト11が回転すると、マグネットホルダ29Aのマグネットが中空シャフト11と共に回転し、磁気検出素子29Bの出力が変化する。この磁気検出素子29Bの出力の変化から、中空シャフト11の原点位置の検出が行われる。モータ4及び原点位置センサ29に接続されるリード線(図示せず)は、ケース2に設けられたコネクタ30を介して外部の制御回路(図示せず)に接続される。
【0042】
ケース2には、ケース2内にエアを供給するエア供給口(図示せず)を設けることができ、エア供給口からエアを供給してケース2内を常時正圧に維持することにより、クーラントの飛沫、微細な切粉等の異物のケース2内への侵入を防止することができる。
【0043】
ケース2から外部に突出した中空シャフト11の先端部には、中空シャフト11に対して直角方向に向けられたノズル31が取付けられている。ノズル31は、中空シャフト11に嵌合する略有底円筒状のノズルホルダ32に、ノズルホルダ32から直角方向に延びる先細り形状のノズル本体33が取付けられて一体化された構造を有している。
【0044】
略有底円筒状のノズルホルダ32は、中空シャフト11が挿入、嵌合されるボア34を有し、ボア34の中間部に、拡径された大径部34Aが形成されている。ノズルホルダ32の側壁には、大径部34Aに連通するネジ穴35が貫通されている。ケース2から外部に突出した中空シャフト11の先端部の外周には、ノズルホルダ32のボア34に挿入されたとき、ボア34の大径部34Aの両側部分に対向する位置に、それぞれシール溝36、37が形成されている。シール溝36、37には、Oリング38、39が装着され、ボア34と中空シャフト11との間をシールする。中空シャフト11の外周部には、更に、シール溝37よりも基端側に環状の固定溝40が形成されている。ノズルホルダ32の側壁には、中空シャフト11の固定溝40に対向してネジ穴42が貫通されている。そして、中空シャフト11の先端部をノズルホルダ32のボア34に挿入し、ネジ穴42にセットスクリュー41をねじ込んで、その先端部を中空シャフト11の固定溝40に係合、押圧させることにより、ノズルホルダ32が中空シャフト11に固定されている。中空シャフト11は、その先端部がボア34の底部に当接することにより、挿入位置が規定されている。中空シャフト11がボア34に挿入されることにより、ボア34の大径部34Aと中空シャフト11との間にノズル室43が形成される。
【0045】
ノズルホルダ32のボア34に挿入される中空シャフト11の側壁には、ノズル室43に連通する複数のノズル貫通穴44が貫通されている。本実施形態では、ノズル貫通穴44は、円周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。各ノズル貫通穴44の断面積は、中空シャフト11のクーラント通路17の断面積よりも小さく、複数のノズル貫通穴44の合計断面積は、クーラント通路17の断面積よりも大きくなっている。
【0046】
この例において、ノズル33本体は、中空シャフト11の軸方向に直交する方向に延長している。ノズル本体33は、先細り形状で、基端部に形成されたネジ部45をノズルホルダ32のネジ穴35にねじ込むことによってノズルホルダ32に取付けられる。ノズル本体33には、その軸方向に沿ってノズル通路46が貫通しており、ノズル通路46の基端は、ノズル室43に接続し、先端はノズル本体33の先端部に開口部を有する。ノズル通路46の断面積は、中空シャフト11のクーラント通路17の断面積よりも小さくなっている。
【0047】
次に、ケース2の構造について更に詳細に説明する。ケース2は、略直方体の箱状の本体に、可動ノズルユニット3及びモータ4を収容し、内部を密閉するものである。ケース2には、その内部に収容されたモータ4及び原点位置センサ29に接続されるリード線を集合するコネクタ部2Aが図1における端部の上部に突出している。コネクタ部2Aの上端部には、これらのリード線を外部の制御回路に接続するためのコネクタ30がナット57を用いて取付けられている。
【0048】
ケース2の内面には、長手方向又はその直交方向に沿って複数のリブ2Bが突出されている。そして、結合部材22によって一体的に結合された可動ノズルユニット3(ハウジング6)及びモータ4がシール材25及びワッシャ26を介して管継手27によってケース2に固定されたとき、少なくとも一部のリブ2Bの先端部がハウジング6又はモータ4に当接することにより、ハウジング6及びモータ4とケース2の内壁との間に隙間Cが形成されるようになっている。結合部材22によって一体化された可動ノズルユニット3(ハウジング6)及びモータ4は、入口通路19のネジ部19Aに管継手27をねじ込んで、弾性体からなるシール材25を介してケース2に取付けることにより、弾性的にケース2に支持される。さらに、その一箇所のみで可動ノズルユニット3およびモータ4がケース2に固定されるので、他の部分をケース2の内壁に接触させることなく、隙間Cを容易に形成することができる。
【0049】
ケース2の背部には、略平板状の取付板2Cが一体に形成されている。取付板2Cには、丸穴、長穴等の適当な形状の取付穴2Dが設けられている。そして、取付穴2Dにボルト等の適当なファスナを挿入して、クーラント噴射装置1を加工機械等に取付けられるようになっている。
【0050】
本実施形態では、ケース2は、軽量化及び生産性を考慮して合成樹脂製としているが、アルミダイキャスト等の金属、又は、その他の材質としてもよい。また、ケース2の一部を金属製としてもよい。
【0051】
(機能)
クーラント噴射装置1は、ノズル31を適当な方向に向けて、NC工作機械、マシニングセンタ等の自動工作機械に取付けられる。また、入口通路19が管継手27を介してポンプ等を含むクーラントの供給源に接続され、モータ4及び原点位置センサ29がケース2に設けられたコネクタ30を介して制御回路に接続される。クーラントは、入口通路19から供給され、入口室10、貫通穴18及びクーラント通路17、ノズル貫通穴44、ノズル室43及びノズル本体33のノズル通路46を通り、加工部位に噴射される。
【0052】
そして、モータ4の出力軸23を回転させ、出力軸23に連結された中空シャフト11の回転角を制御することにより、ノズル31の回転角度を調整することができ、クーラントを所望の方向に噴射することができる。
【0053】
上記のノズル31の回転角度を調整する過程にあって、モータ4の出力軸23と中空シャフト11の軸の軸線にずれがあってもオルダムカップリング部50によってそのずれが許容される。すなわち、モータ4の出力軸23と中空シャフト11の軸の軸線のずれがあってもオルダムカップリン部50で軸線のずれが許容された状態でトルクの伝達が行われる。この際、軸受12や13等に過度の負荷が加わらない状態で、出力軸23と共に中空シャフト11が回転する。
【0054】
以下、オルダムカップリング50の機能について説明する。まず、ジョイント52は、カプラ51に対して溝51Aの延長方向に相対的にスライドが可能であり、更にハブ53に対して溝53Aの延長方向に相対的にスライドが可能である。そして、この2つのスライド方向は、軸方向に垂直であり、且つ、互いに直交している。
【0055】
ここで、中空シャフト11を回動させつつクーラントを噴射した場合を考える。この場合、中空シャフト11には、クーラントの噴射に伴う反作用によって軸線に垂直な多様な方向からの力が加わる。この力は、軸線に垂直であるが、中空シャフト11の回動に従ってその向きは随時変化する。この力は、カプラ51の軸線とハブ53の軸線とをずらそうとする。この際、オルダムカップリング部50が無く、出力軸23と中空シャフト11とが直結されていると、出力軸23の回転に従って出力軸23と中空シャフト11の軸の位置が変動し、軸受12や13、更にモータ4の軸受等に過度の負荷が加わる。
【0056】
これに対して、オルダムカップリング部50があると、出力軸23の回転に従う出力軸23と中空シャフト11の軸の位置の変動が生じないように上記直交する2つのスライドが動的に生じる。すなわち、軸位置にずれがある状態で出力軸23が回転すると、出力軸23と中空シャフト11の軸位置を動かそうとする力が働くが、この力を吸収するようにジョイント52のカプラ51に対するスライド、さらにそれに直交するジョイント52のハブ53に対するスライドが生じる。こうして、2つの直交するスライドが生じることで、出力軸23と中空シャフト11の軸位置を維持したままカプラ51、ジョイント52およびハブ53の回転が行われる。
【0057】
このように、ジョイント52がカプラ51に対して溝51Aの延長方向に対して相対的にスライドが可能であり、更にハブ53に対して溝53Aの延長方向に対して相対的にスライドが可能であることに起因して、回転力の伝達に際して、カプラ51の軸位置とハブ53の軸位置とがずれた状態が維持される。そしてこれにより、駆動力の伝達時に出力軸23と中空シャフト11に対して強制的に軸方向を曲げるような無理な力が作用しない状態が得られ、軸受12や13、更に出力軸23を保持するモータ4の側の軸受部分に大きな負荷が加わらない状態が得られる。もちろんこの作用は、カプラ51の軸位置とハブ53の軸位置とが予めずれている場合に、その位置関係を維持する機能としても働く。
【0058】
また、使用されるに従って相対的に軟質な材料で構成されるジョイント52が徐々に摩耗し、溝51Aと凸条52Aとの噛み合い構造、更に溝53Aと凸条52Bとの噛み合い構造にガタ(緩み)が生じる。この場合、割溝52Cおよび52Dにピンや楔を打ち込み、割溝幅を物理的に押し広げることで上記のガタが生じて噛み合いが緩くなった状態を解消し、噛み合いがより密になる状態、すなわちガタを解消あるいは抑制した状態とできる。
【0059】
(優位性)
上記の構成では、オルダムカップリング部50があることで、モータ4の出力軸23と中空シャフト11の軸線との間にずれがあっても軸受部等に加わる負荷が抑えられる。このため、クーラント噴射装置の寿命を延ばすことができる。特に中空シャフト11を回動させつつクーラントを噴射した場合、中空シャフト11には、軸線に垂直な多様な方向からの力が加わるが、この力がオルダムカップリング部50の機能により吸収されるので、他の部分に加わる負荷が抑えられ、装置の寿命を延ばすことができる。
【0060】
また、モータ4の出力軸23と中空シャフト11の軸の軸線のずれがある程度許容されるので、組立精度の許容範囲が広くなり、組立コストが抑えられる。また、部品精度の許容範囲が広がり、部品コストが抑えられる。
【0061】
また、負荷がオルダムカップリング部50に集中するので、メンテナンスの対象をオルダムカップリング部50に絞ることができ、メンテナンス性を高めると共に、装置全体の長寿命化を計ることができる。更に、ジョイント52を相対的に軟質な材質とすることで、オルダムカップリング部50の経年使用における磨耗をジョイント52に集中させ、カプラ51とハブ53の長寿命化を計り、取り外しや交換が容易なジョイント52のみを消耗部品とすることができる。
【0062】
また、使用されるに従って相対的に軟質な材料で構成されるジョイント52が徐々に摩耗し、溝51Aと凸条52Aとの噛み合い構造、更に溝53Aと凸条52Bとの噛み合い構造にガタが生じるが、割溝52Cおよび52Dにピンや楔を打ち込み、溝幅を押し広げることで噛み合い構造に生じたガタを解消あるいは抑制することができる。すなわち、ジョイント52の摩耗により上記の噛み合い構造にガタが生じても、ガタが生じていない状態に戻すことができる。この技術によれば、ジョイント52の交換に要する作業コストおよび部品コストを低減することができる。また、割溝52Cおよび52Dがあることで、ジョイント52が弾性変形し易くなり、溝51Aと凸条52Aとの噛み合い構造、更に溝53Aと凸条52Bとの噛み合い構造を維持する機能を効果的に得ることができる。
【0063】
また、貫通孔52Eと空洞部53が組み立て時における誘い穴として機能する。このため、組み立て易い構造が得られる。また、出力軸23がオルダムカップリング部50を貫通した構造となるので、凹凸構造の噛み合いにガタが生じた際に、ジョイント52に対するカプラ51およびハブ53の相対的な変位が制限され、例え上記噛み合いのガタが大きくなってもジョイント52の脱落や大きな変位が生じない。また、貫通した出力軸23により、ジョイント52に対するカプラ51およびハブ53の相対的な変位が制限されることで、割溝52Cおよび52Dにピンや楔を打ち込む作業が行い易い。また、出力軸23がオルダムカップリング部50を貫通した構造が許容されるので、標準仕様のモータをそのまま利用することができる。
【0064】
また、凹凸の噛み合い構造を採用することで、ジョイント52の軸方向における寸法を短くでき、カップリング構造を小型化できる。
【0065】
(その他)
(1)カプラ51に軸に直交する方向に延長する凸条を設け、ジョイント52にカプラ51側の前記凸条に噛み合う凹部を設けてもよい。つまり、カプラ51とジョイント52とのスライド可能な噛み合い構造の凹凸関係を図3の場合と逆転させてもよい。この場合、割溝をジョイント52における凹部の片側あるいは両側に凹部に対して平行な延長方向に沿って設けることで、噛み合う部分に溝を設けた構造が得られる。
【0066】
また、
(2)ハブ53に軸に直交する方向に延長する凸条を設け、ジョイント52にハブ53側の前記凸条に噛み合う凹部を設けてもよい。つまり、ジョイント52とハブ53とのスライド可能な噛み合い構造の凹凸関係を図3の場合と逆転させてもよい。この場合、押し広げることで噛み合いを密にするための割溝をジョイント52における凹部の片側または両側に凹部の延長方向に沿って設けることで、噛み合う部分に溝を設けた構造が得られる。
【0067】
上記(1)と(2)の構造は、一方のみを採用することもできるし、両方を採用することもできる。例えば、図3の構造において、カプラ51の側だけ、上記(1)の構造を採用する第1の構造、図3の構造において、ハブ53の側だけ、上記(2)の構造を採用する第2の構造、上記(1)と(2)の構造を同時に採用する第3の構造のいずれもが可能である。
【0068】
例えば、駆動側の部材であるカプラ51の側を凸構造とし、それに対向するジョイント52の側を凹構造とし、従動側の部材であるハブ53の側を凹構造とし、それに対向するジョイント52の側を凸構造とすることも可能である。また、それとは逆に、カプラ51の側を凹構造とし、それに対向するジョイント52の側を凸構造とし、従動側の部材であるハブ53の側を凸構造とし、それに対向するジョイント52の側を凹構造とすることも可能である。
【0069】
押し広げることで噛み合いを密にするための割溝を、カプラ51、ジョイント52およびハブ53の中の1つまたは2つのみに設けることも可能である。また、従動側の部材であるハブ53を従動軸である中空シャフト11と別部材とすることも可能である。
【0070】
2.第2の実施形態
以下、図1のコネクタ部2Aに複数のリード線が半田付けされた回路基板を配置した例を説明する。図5は、本実施形態におけるクーラント噴射装置の縦断面図である。なお、図1と共通の符号の部分は、図1に関連して説明したものと同じである。この例では、コネクタ部2Aの内部の空間にリード線61が接続され樹脂62で封止された回路基板63(図6参照)が収容されている。なお、図5では、図6の回路基板63は樹脂62で覆われ見えていない。
【0071】
回路基板63には、複数のリード線61とモータ4に繋がる図示しないリード線が半田接続されている。回路基板63に接続された複数のリード線61は、コネクタ30を介してクーラント噴射装置1の外部に引き出され、図示しない外部の制御回路に接続されている。
【0072】
コネクタ部2Aの内部には、樹脂62が充填され、回路基板63が防水構造となっている。この構造では、外部に引き出されるリード線61および図示しないモータ4に繋がるリード線と回路基板63との間の半田接続部分、および回路基板63上の電子部品の半田部が樹脂62の中に埋め込まれて封止されている。すなわち、コネクタ部2Aの内部に集合させた電気接続部が樹脂に埋め込まれて防水構造となっている。
【0073】
例えば、工作機械が水溶性クーラントを用いている場合がある。この場合、上記の防水構造を採用していないと、コネクタ部2Aに水溶性クーラントが侵入して回路基板63やそこへのリード線61の接続部分がショートして故障する恐れがある。上記の構成によれば、水溶性クーラントを用いる場合であっても、コネクタ部2Aが防水構造になっているので、上記のショートの問題を回避できる。
【0074】
以下、図6を参照して上記の防水構造を得る方法について説明する。図6には、組立途中における図5のクーラント噴射装置1を後ろから見た斜視図が示されている。図6では、分かりやすくするために、説明に不要な部分の図示を省略している。
【0075】
まず図6の斜視図に示すように、コネクタ30をケース2の開口部に挿入し、内側からナット57をコネクタ30の雄ネジ部に螺合させ締め付けることで、コネクタ30をケース2に固定する。次に、プラスチック容器64の中に回路基板63を収め、回路基板63をプラスチック容器64と共にネジ65でケース2に固定する。ここで、回路基板63には、図6では図示されていない図5のリード線61およびモータ4に繋がるリード線が接続されている。上記のケース2への回路基板63の固定の際、回路基板63に接続されているリード線61は、コネクタ30を介して、外部に引き出される。
【0076】
次に、プラスチック容器64の内部に液状の樹脂62(図5参照)を注入し、固化させる。ここで、樹脂62が硬化することで回路基板63および半田付け部を含むリード線61の一部が樹脂62内に埋め込まれる。この防水構造により、水溶性クーラントがコネクタ部2Aに侵入した際の回路基板63のショートが防止される。
【0077】
このように、プラスチック容器内に回路基板63を配置して樹脂で埋め込むことによって、金型などを用いることなく容易に安価な防水構造を実現することができる。このプラスチック容器は樹脂が固化するまで樹脂を保持するために四方を囲む周壁が提供できれば十分なので、特に強度の高いものを用いる必要はない。たとえば、薄いフィルム状の周壁を有する容器でもよい。プラスチック容器の代わりに、周壁に囲まれた樹脂保持部をコネクタ部2A内に形成して、そこに回路基板63を配置して樹脂で埋め込んでもよい。また、コネクタ部2Aに充填する樹脂62としては、室温で硬化する2液性エポキシ樹脂を用いることができる。なお、熱硬化性樹脂だと組み立て途中のクーラント噴射装置の加熱が必要なので用いることが難しく、紫外線硬化型樹脂だと厚くするのが難しい問題がある。図5の構造において、センサ部29も樹脂に埋め込んで、さらに防水機能を高めることもできる。
【符号の説明】
【0078】
1…クーラント噴射装置、2…ケース、2A…コネクタ部、2B…リブ、2C…取付板、3…可動ノズルユニット、4…モータ、5…センサ室、6…ハウジング、7A…中径ボア、7B…大径ボア、7C…小径ボア、7D…テーパ部、7E…軸受ボア、8…ガイド部材、8A…ガイドボア、8B…テーパ部、10…入口室、11…中空シャフト、12…軸受、13…軸受、15…Оリング、16…開口、17…クーラント通路、18…貫通穴、19…入口通路、20…開口、22…結合部材、22A…Оリング、23…出力軸、23A…押し当て部、25…シール材(弾性体)、26…ワッシャ、27…管継手、28…リップシール、29…原点位置センサ、29A…マグネットホルダ、29B…磁気検出素子、30…コネクタ、31…ノズル、32…ノズルホルダ、33…ノズル本体、34…ボア、34A…大径部、35…ネジ穴、36…シール溝、37…シール溝、38…Оリング、39…Оリング、40…固定溝、41…セットスクリュー、42…ネジ穴、43…ノズル室、44…ノズル貫通穴、45…ネジ部、46…ノズル通路、50…オルダムカップリング部、51…カプラ、51A…溝、52…ジョイント、52A…凸条、52B…凸条、52C…割溝、52D…割溝、52E…貫通孔、53…ハブ、53A…溝、53B…空洞部、55…ネジ穴、56…ネジ、57…ナット、61…リード線、62…樹脂、63…回路基板、64…プラスチック容器、65…ネジ。
【要約】
クーラント噴射装置の寿命を延ばすことができる技術を提供する。
クーラントを噴射するノズル本体(33)と、ノズル本体(33)を回転させる中空シャフト(11)と、中空シャフト(11)の回転角度を調整するモータ(4)と、中空シャフト(11)とモータ(4)の出力軸(23)とを結合するオルダムカップリング部(50)とを備え、オルダムカップリング部は、中空シャフト(11)の軸線と出力軸(23)の軸線とのずれを許容してモータ(4)の駆動力を中空シャフト(11)に伝達する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6