特許第5986412号(P5986412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィルヘルム ヨルグの特許一覧

<>
  • 特許5986412-懸架装置及び懸架システム 図000002
  • 特許5986412-懸架装置及び懸架システム 図000003
  • 特許5986412-懸架装置及び懸架システム 図000004
  • 特許5986412-懸架装置及び懸架システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986412
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】懸架装置及び懸架システム
(51)【国際特許分類】
   A63G 9/12 20060101AFI20160823BHJP
   A63G 9/02 20060101ALI20160823BHJP
   F16M 13/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A63G9/12
   A63G9/02
   F16M13/02 B
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-75951(P2012-75951)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-213628(P2012-213628A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2015年3月23日
(31)【優先権主張番号】10 2011 006 583.0
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512082336
【氏名又は名称】ヴィルヘルム ヨルグ
【氏名又は名称原語表記】Wilhelm JORG
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム ヨルグ
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第00793331(US,A)
【文献】 西独国実用新案公開第07732798(DE,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 9/12
A63G 9/02
F16M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的負荷を取り付け可能であり、少なくとも1つの孔を形成している接続部品(5)のための懸架装置であって、
キャリア(1)に固定された軸(2)と、
前記軸(2)に回転可能に取り付けられ、前記接続部品(5)をその中に摩擦的にフックインすることが可能な円周状の溝を有する、ローラ(3)と、
前記軸(2)上の前記ローラ(3)と前記キャリア(1)との間に配置され、前記接続部品(5)のフックイン又はフックオフを防止するロック位置から、前記接続部品(5)のフックイン又はフックオフが可能な解除位置へと手動で移動されるように構成された、少なくとも1つの安全装置(4)と、
を備えた懸架装置。
【請求項2】
前記安全装置(4)が前記解除位置から前記ロック位置へと自動的に戻ることを特徴とする、請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記安全装置(4)が、前記ローラ(3)の外周から前記ローラ(3)の径方向に突出していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記安全装置(4)が、その長さを軸方向に短縮することで前記解除位置へと移動することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項5】
前記安全装置(4)が、前記ローラ(3)に対して軸方向にばねバイアスをかけることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項6】
前記安全装置(4)が、ロック位置で、その最大ばね行程の約50%にまで圧縮されることを特徴とする、請求項5に記載の懸架装置。
【請求項7】
前記安全装置(4)が、前記軸方向に相互にばねバイアスをかけられた2つの部品を備えたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項8】
前記安全装置(4)が、前記軸に接して滑動可能に配置された2枚の円板と、これらの円板を相互にバイアスさせる圧縮ばねとから構成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項9】
それぞれが前記ローラ(3)の軸端と前記キャリア(1)との間に配置された2つの前記安全装置(4)が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の前記懸架装置と、
動的負荷を取り付け可能であり、少なくとも1つの孔を形成している、前記接続部品(5)と、
を備えた、懸架システム。
【請求項11】
前記ローラ(3)の径方向における前記安全装置(4)の最大拡張寸法が前記孔の最大拡張寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載の懸架システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランコなどの動的負荷を取り付け可能な接続部品のための懸架装置と、前記懸架装置及び前記接続部品を備えた懸架システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ブランコを懸架するのに用いられる2つの懸架システムがある。
【0003】
一方の典型的なフックまたはリングは、天井に堅固に取り付けられ、ブランコなどの支持対象の負荷をその中に引っ掛けるようになっている。この構造では、負荷はカラビナなどに懸架され、このカラビナが前記フックまたはリング内に引っ掛けられて、前記負荷の揺動に伴って前記フックまたはリングの屈曲した内周表面上を転がる。
【0004】
この懸架システムは、十分な揺動特性を付与するものの、負荷が揺動する際に、フックまたはリングが、材料の疲労を引き起こしうる強い曲げ応力を受けるという難点を有する。この結果、フックまたはリングが、その最も弱い箇所で破損するおそれがある。
【0005】
他方の懸架装置としては、一体型の可動ジョイントを有する複数の懸架装置が知られている。これらの懸架装置は、動的負荷に対して高い負荷搬送能力及び高レベルの安全性を発揮し、発生した力が天井又は壁に直接に伝達される。しかし、これらの懸架装置には、ブランコのような負荷を素早く掛け外しするには、道具の使用が不可欠であるという欠点がある。更に、この装置の内部摩擦が比較的高い、即ち運動エネルギーが比較的低くしか保存されないために、揺動の最大持続時間が短いことは、特にブランコの場合には望ましくない。
【0006】
文献DE 198 21 701 A1、EP 0 520 935 A1、US 1,207,985及びDE 80 05 495 Uには既に、動的負荷のための様々な懸架装置が記載されている。しかし、これらの文献には、接続部品(5)のフックイン(引っ掛け)又はフックオフ(取り外し)を防止するロック位置から、前記接続部品のフックイン又はフックオフが可能な解除位置へと手動で動かせるようになっている安全装置は記載されていない。
【特許文献1】ドイツ特許公報 DE 198 21 701 A1
【特許文献2】欧州特許公報 EP 0 520 935 A1
【特許文献3】米国特許 US 1,207,985公報
【特許文献4】ドイツ特許公報 DE 80 05 495 U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の一目的は、特に運動エネルギーの保存、信頼性及び取り扱いやすさの点で改善された懸架装置と、前記懸架装置を備えた懸架システムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、請求項1の特徴を有する懸架装置及び請求項11に記載の懸架システムによって解決される。上記の発明を更に有利に発展させたものによって、従属請求項の主題が構成されている。
【0009】
動的負荷を取り付け可能であり、少なくとも1つの孔を形成する接続部品のための、本発明の懸架装置は、キャリアに固定された軸と、前記軸に回転可能に取り付けられ、前記接続部品をその中に摩擦的にフックインすることの可能な円周状の溝を有するローラと、前記接続部品のフックイン又はフックオフを防止するロック位置から、前記接続部品のフックイン又はフックオフが可能な解除位置へと手動で動かせるようになっている、少なくとも1つの安全装置とを備えている。ここに記載の動的負荷には、前記接続部品に取り付け可能であり、正常な動作において動かされるか又は動くようになっている全ての種類の物体が含まれる。詳細には、動的負荷は、通常は揺動する(多人数用の)ブランコを指す。
【0010】
動作位置では、前記接続部品は、前記ローラの外周表面上に延伸する溝内に摩擦的にフックインされている。即ち、前記孔を規定している前記接続部品の少なくとも一部分が、前記溝の一部分と接触している。前記接続部品はこのように前記ローラを介して前記軸の周囲に回転可能に取り付けられており、例えば前記接続部品に取り付けられたブランコなどの動的負荷が動作する際に、前記軸を中心として前記動的負荷と一体に回転可能である。このように、摩擦力が前記ローラの取り付け部(好適には滑らかに走行するローラベアリング)内でのみ発生するので、運動エネルギーが良好に保存される(即ち、特に振り子運動に求められる長い最大揺動持続時間が達成される)。この結果、前記負荷の揺動が最適に支持される。前記ローラを用いた取り付けにより、大きな動的負荷を安全に装架することが可能となり、前記懸架装置の信頼性及び耐用年数が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の安全装置は、ロック位置から、前記接続部品のフックイン又はフックオフが唯一可能である解除位置へと道具を用いずに手動で動かすように構成されていることにより、懸架装置の安全性及び信頼性と共に、取り扱いやすさも向上させる。前記安全装置が自動的に、即ち自身でそのロック位置へと戻るようになっていると有利である。こうすることで、安全性がより高くなる。
【0012】
前記接続部品が前記溝内に収められていることにより、前記接続部品及び装架された負荷の動きが、前記軸のラジアル面(軸に対して垂直な平面)から出ることが妨げられる。換言すれば、前記溝の両側壁によって、軸方向の動きに対する抗力が前記接続部品に加えられる。このことは、懸架装置をブランコと接続して使用する場合に、振り子運動(揺動)が一平面内のみで行われることが望ましいことから、特に有利である。前記接続部品に加えられる前記負荷の重さの力が大きいほど、前記接続部品がより強く前記溝内に引き込まれるので、上述の効果はより高くなる。
【0013】
フックイン状態における前記接続部品は、前記溝の60°超、好適には90°超、より好適には120°超、更に好適には135°超の円周部分にわたり、前記溝内に保持されていることが望ましい。前記接続部品が、より強く摩擦嵌合されるように、前記溝内に嵌め込まれていると有利である。
【0014】
前記接続部品及び前記溝の寸法は、前記接続部品のフックイン部分が前記溝内で遊動せず、かつこれらの輪郭が互いに適合するように、相互に調節されることが望ましい。前記接続部品の、断面から見て最深で50%を超える部分が前記溝内に入っていると有利である。
【0015】
前記ローラは、懸架装置の所望の荷重支持能力に基づいて選択された弾性(半軟質)プラスチックから形成されていることが望ましい。好適には、前記ローラは、接続部品に固定された動作中の負荷の荷重が所定の基準荷重を超えると、前記ローラが前記軸と接触するように変形することにより、摩擦力を発生し、この結果、前記負荷の動きが減速されるように設計されている。このようにして、懸架装置に過剰な負荷がかかることが防止され、その耐用年数を延ばすことができる。前記ローラが金属製であってもよい。
【0016】
好適には、前記溝が中央部に配置され、前記ローラがその両軸端から前記溝に向かって円錐形に先細りした形状となっている。このことは、前記接続部品が前記ラジアル面から傾くことを妨げる効果を有する。更に、前記接続部品は、例えば横方向の強い力のために溝から飛び出してしまった場合でも、前記中央部に向かう前記円錐形に先細りした形状によって、前記溝内に戻される。しかしながら、前記ローラが、この二重円錐形状の代わりに円筒形状であってもよい。
【0017】
好適には、前記キャリアはU字形の断面を有し、複数の取付孔を有する。前記キャリアが天井に取り付けられていることが望ましいが、壁に取り付けられているか、又は支持体として地面に取り付けられていてもよい。
【0018】
好適には、前記安全装置は、前記キャリアと前記ローラとの間の軸に接して(前記ローラと同軸に)配置されている。前記接続部品が前記ローラから外れることを防止できるように、前記安全装置が、前記ローラの外周から前記ローラの径方向に突出していると有利である。また、前記ローラの径方向における前記安全装置の最大拡張寸法は、前記孔の最大拡張寸法よりも大きい。前記孔の最大拡張寸法が前記安全装置の最大拡張寸法よりも小さいので、前記安全装置は、前記接続部品が前記ローラの端部から滑落又は脱落することを防止することの可能な、前記接続部品の止め具を形成している。
【0019】
前記安全装置が、前記懸架装置の動作中は開かないように、即ち動的負荷がフックインされている時に、意図せずに解除位置へと動かないように設計されていると有利である。好適には、前記安全装置は、(例えば圧縮などにより)その長さを短縮することで、解除位置へと軸方向に動く。
【0020】
好適には、前記安全装置は、前記ローラに軸方向にばねバイアスを加える。このようにして、特に前記ローラの両側に複数の安全装置が配置されている場合に、休止状態にある時、即ち負荷が懸架されていないか、又懸架されているが動いていない負荷がある時に、前記ローラを所定の位置に保持することが可能である。加えて、前記ローラの軸方向の動きを吸収又は平衡させる、即ち前記軸方向に作用する力を前記安全装置によって吸収することが可能であることにより、前記システムの信頼性が一層向上する。更に、前記接続部品が外れるおそれのある、前記ローラと前記安全装置との間の隙間の形成が、確実に防止されるという利点も得られる。
【0021】
前記安全装置が、ロック位置でその最大ばね行程の約50%にまで圧縮されると有利である。こうすることで、前記安全装置の最適な稼働範囲が確保される、即ち、前記安全装置の延伸及び短縮が可能となる。この結果、前記ローラの軸方向の動きを吸収又は平衡させることが可能となる一方で、前記ローラが、その動作範囲全体にわたってしっかりと当接する。
【0022】
好適には、前記安全装置は、軸方向に相互にばねバイアスを加えられた2つの部品を備えている。前記安全装置が、2枚の円筒形状の円板と、前記2枚の円板の間に配置され、これらの円板を相互にバイアスさせる、(好適には前記安全装置の設計上の高さを低くする円錐形状を有する)圧縮ばねとから構成されていると有利である。前記2枚の円板の代わりに、例えば相互に嵌合する円筒形状であり、相互に置き換え可能な(この場合には、これらは前記ばねと共に、長さの変わる一種のリフトシリンダを形成する)2つのボウル又は円板と円筒形のボウルとの組み合わせを用いてもよい。この構成は、前記安全装置を少数の部品から簡単な方法で作製できるという利点を有する。設置の際には、1つの円板又はボウル(好適には外径がより小さい方)を、例えば前記キャリアと直接に当接させる一方で、他方の円板(好適には外径がより大きい方)を、前記ローラを前記軸に接するように支持しているローラベアリングの内輪と当接させてもよい。これらの円板又はボウルは、製造コストを抑えるために、プラスチックから形成されていることが望ましいが、金属製であってもよい。
【0023】
好適には、上述の複数の安全装置のうちの2つが、前記ローラの軸端と前記キャリアとの間にそれぞれ配置されている。
【0024】
前記接続部品は、硬質又は堅固な、例えばカラビナ、(開口可能な)リング、チェーン用クイックリリース留め具などとして形成されていることが望ましい。しかし、前記接続部品が、負荷を固定可能であり、前記接続部品を前記ローラの溝内に摩擦的にフックインするための開口部又は孔を有するか或いは形成する、その他のいかなる部品であってもよい。前記接続部品が金属製又は鋼製であると有利である。
【0025】
好適には、前記接続部品は、フックイン又はフックオフのために開口するようになっている。このため、最大開口は、前記ローラの最小外径よりも小さく、前記軸の最大径よりも大きいことが望ましい。
【0026】
以下に、本発明を好適な実施例を用いて図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の懸架装置の略斜視図である。
図2】本発明の懸架装置の略正面図である。
図3a】本発明の懸架装置のローラの側面図のスケッチである。
図3b】本発明の懸架装置の安全装置の断面スケッチである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
発明の詳細な説明
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の懸架装置の好適な一実施例を説明する。この懸架装置は基本的に、キャリア1、軸2、ローラ3、2つの安全装置4及び接続部品5から構成されている。
【0029】
ここでは天井からの懸架のためのキャリア1は、U字形状を有し、天井への取り付けのための複数のドリルホールを有するベースプレートと、前記ベースプレートに対して90°の角度で配置された2本の脚部とを備えている。キャリア1の前記2本の脚部は、硬質な軸を固定保持しており、例えば軸2は前記キャリア内に差し込まれて把持されているか、又は前記キャリアに溶接されている。ローラ3及び2つの安全装置4は、軸2に押し込まれている。
【0030】
図3aに図示するように、弾性プラスチック製のローラ3は、その外周にわたって延伸する、中央部に配置された溝を有し、その2つの軸端から前記溝に向かって円錐状に先細りしているが、ローラ3が、先細りしている代わりに、円錐形に形成されていてもよい。更に、図3aの破線は、2つのローラベアリングにより、ローラ3が前記軸を中心として回転可能であり、かつ前記軸方向に取り外し可能であるように取り付けられていることを示している(前記ローラベアリングの内径は前記軸の直径よりも大きい)。2つのローラベアリングを有するこの構成は、一点のみに力が加えられる場合と比較して、接続部品5によってローラ3に加えられた負荷がこれら2つのローラベアリングを介して前記軸に伝達される、即ち2つの伝達点に分散されるために、局所的な曲げ応力が軽減される利点を有する。この結果、装置全体の安全性及び信頼性が向上する。
【0031】
本実施例に基づく懸架装置は、相互に鏡映対称に取り付けられた同一な構成を有し、それぞれがキャリア1の脚部とローラ3の軸端との間に配置された、2つの安全装置4を備えている。そのような安全装置4の基本的な構成を、安全装置4の断面を示す図3bを参照しながら以下に説明する。図3bに図示するように、前記安全装置は、2枚の円筒形状の円板から構成されており、前記2枚の円板は、中央ドリルホールと、前記2枚の円板の間に配置されてこれらを相互にバイアスさせる円錐形状の圧縮ばねとを有する。円板のうちの1枚には、前記圧縮ばねのばね座となる凹部が設けられている。好適には、前記凹部は、前記2枚の円板が相互に(部分的に)嵌合できるような寸法を有する。即ち、前記安全装置が、軸方向に伸長又は短縮可能な長さを有する一種のリフトシリンダを形成する。
【0032】
前記2枚の円板がこれらのドリルホールを介して軸2に差し込まれ、滑動可能に支持されている取り付け状態(図1及び2を参照のこと)では、寸法がより小さい方の円板は、キャリア1の脚部に当接しており、寸法がより大きい方の円板は、図3bに示す周方向の突起(又はスペーサ)を介して前記ローラベアリングの内輪に当接している。即ち、前記安全装置は、ローラ3ではなく、前記ローラベアリングの内輪に接しているに過ぎないので、ローラ3の回転が妨げられることはない。前記突起又はスペーサの軸方向の長さは、寸法がより大きい方の円板と前記ローラの軸端面との間の距離が最小(好適には1ミリメートル未満)となるような長さである。
【0033】
寸法がより大きい方の円板の外径は、前記円板が、図2に図示するように前記ローラの外周からローラ3の径方向に突出するように選択されている。以下に更に記載するように、この突起は、接続部品5がローラ3から横方向に飛び出すことを防止する。好適には、取り付け状態(かつ負荷が固定されていない状態)においては、各安全装置4はその最大ばね行程の約50%にまで圧縮されている。図2に示すように、双方の安全装置4のばねバイアスが同じ大きさとなるように選択されているので、ローラは、軸2の中央部に、キャリア1の各脚部に対して等間隔で保持されている。
【0034】
この実施例では、接続部品5は金属製のカラビナである。前記カラビナの外形によって規定される内側の領域が、その「孔」である。その上端で、図1に示すように、接続部品5がローラ3の溝内にフックインされる。接続部品5及び前記溝の外形又は輪郭は、前記溝と接続部品5との間に一定の把持効果を付与するように調節されていることが望ましい。
【0035】
既に上述したように、接続部品5の孔の最大拡張寸法が、安全装置4の大きい方の円板の外径よりも小さいので、前記2枚の円板がローラ3の軸方向の止め具を形成し、この結果、前記接続部品がローラ3の軸端から滑落又は脱落することが防止される。
【0036】
(多人数用の)プランコなどの負荷が、ローラ3にフックインされていない方の接続部品5の端部(図1では下端)にフックイン又は固定されている。
【0037】
以下に、実施例に基づく懸架装置の動作方法及び動作状態を説明する。
【0038】
最初に、負荷運転中の動作方法及び動作状態について記載する。ここで負荷運転とは、ブランコなどの負荷が接続部品5に取り付けられている状態を指す。
【0039】
遊休状態、即ち負荷が動いていない状態においては、接続部品5は前記負荷の重量によってローラ3の溝内に更に押し込まれるので、その中にしっかりと保持される。前記負荷の重量の力は、接続部品5を介してローラ3に直接に加えられ、そこから軸2を介してキャリア1に加えられる。
【0040】
前記負荷が軸2を中心として揺動すると、摩擦嵌合によって接続部品5がローラ3と一体となって軸2を中心として回転する。この結果、摩擦力がローラ3のベアリングにおいてのみ発生するので、運動エネルギー、即ち振り子運動が最大限に保存される。更に、材料、特に接続部品5の疲労が有利に防止される。
【0041】
静的な又は動的な負荷が所定の負荷支持能力を超過すると、ローラ3が変形し、その内周表面が軸2に押し付けられる。このために摩擦が増加するので、動的負荷が減速し、場合によってはゆっくりと静止する。このようにして、懸架装置に過剰な負荷がかかることが回避される。
【0042】
次に、横方向に作用する力が接続部品5を介してローラ3に伝達される場合の懸架装置の動作方法を記載する。この場合の横方向に作用する力とは、実質的に軸2の方向に作用し、例えばこの方向における負荷の動きによって発生する力である。
【0043】
前記横方向に作用する力が小さい場合には、前記作用する力に対抗する反作用力が前記溝、特にその両側壁から加えられるので、接続部品5は溝内に留まり、ラジアル面(軸2に垂直な面)から傾くことが殆ど又は全くない。従って、動作位置が安定する。
【0044】
前記横方向に作用する力が比較的大きい場合には、接続部品5の前記溝内(図1では上部)に引掛けられた部分は、殆どが前記溝内に留まるが、接続部品5の反対の部分(図1では下部)は、ラジアル面から傾いてしまう。この傾きは、安全装置4によって制限される。特に、傾きが特定の度合いを超えると、接続部品5の下端が、安全装置4のより大きな直径を有する方の円板に接するので、それ以上の傾きが防止される。次に前記横方向に作用する力が再び弱まると、前記接続部品は、ローラ3の円錐形状を利用して、元の位置、即ち図2に示す位置へと戻る。
【0045】
例えば負荷の急激な変化などによって、非常に大きな横方向に作用する力が引き起こされると、接続部品5が溝から飛び出しうる。このような場合にも、安全装置4は、その外径が接続部品5の孔の最大径よりも大きいので、接続部品5がローラ3の軸端から滑落することを防止する。前記横方向に作用する力が弱まると、接続部品5は、図2に示すように(ラジアル面内の)前記溝内の元の位置へと戻る。この動きも、ローラ3の円錐形状を利用して行われる。
【0046】
加えて、前記軸に接しているローラ3の動きは、横方向に作用する力のために、複数の安全装置4によって吸収又は平衡させられる。横方向に発生する力は、原理上は、ローラ3をキャリアの脚部に接する最も外側の位置にまで動かしうる。この場合、一方の安全装置4が軸方向に最大限に圧縮される一方で、他方の安全装置4が軸方向に最大限に拡張される。この結果、軸2に接している全ての部品に、安全装置4内に設けられたばねによる張力がかかり続けるので、ローラ3の両軸端と安全装置4との間に、軸方向に間隙が形成されない。従って、接続部品5の意図しないフックオフ又は脱落が高レベルに防止される。
【0047】
次に、接続部品5がいかにして前記溝にフックイン及びここからフックオフ(取り外し)されるかについて説明する。
【0048】
安全性を更に高めるために、接続部品5のフックイン及びフックオフは、複数の安全装置4のうちの1つを動かすことによってのみ可能である。フックイン時には、ローラ3はしっかりと固定され、複数の安全装置4のうちの1つは、軸2がその中に露出する間隙が、ローラ3と前記安全装置4との間に軸方向に形成されるように、(例えば手で直接に又は接続部品5を手で持つことによって)圧縮される(解除位置)。
【0049】
次のステップでは、開口された接続部品5が、この間隙内で軸2にフックインされる。このため、本発明においては、接続部品5の最大開口範囲は、接続部品5が軸2にのみフックイン又はフックオフ可能であり、直接にローラ3の溝にフックイン又はここからフックオフすることがないような寸法でなければならない。
【0050】
接続部品5が軸2にフックインした後に、接続部品5は閉じられ、ローラ3の軸端から持ち上げられて、前記溝内に挿入される。前記接続部品がローラ3の前記軸端から持ち上げられる際に、前記間隙は安全装置4のばねバイアスによって自動的に閉じ、安全装置4は再びそのロック位置へと戻る。
【0051】
接続部品5の取り外しは、逆の順序で行われる。
【0052】
上述のように、接続部品5が開かないように、又はフックオフしてしまう程に大きく開かないように、ローラ3の全ての直径及び接続部品5の全ての開口寸法が互いに調節されているので、動作状態では接続部品をローラ3から直接に取り外す(フックオフする)ことはできない。
【0053】
本実施例は、以下の利点を有する。
【0054】
ローラベアリングによって軸2に接するように支持されているローラ3の円周状の溝内に接続部品5を摩擦的に装架することにより、運動エネルギーが揺動面内に非常に高度に保存される一方で、前記揺動面に対する横方向の動きが抑えられるので、ブランコと組み合わせて使用する場合に特に有利である。
【0055】
本懸架装置は、高い安全性及び信頼性を有する。ローラ3を用いた取り付けによって、大きな常設の負荷を安全に装架することが可能である一方で、安全装置4が、接続部品5の容易なフックイン及びフックオフは可能であるが、接続部品5の意図しないフックオフは回避されるように機能する。更に、安全装置4は、横方向に作用する力を吸収するように構成されている。
【0056】
接続部品5の手動でのフックイン及びフックオフが、更なる補助手段を必要とすることなく可能であるので、取り扱いが非常に便利である。
【0057】
更に、本発明による懸架装置は、構成部品が非常に少ないので、低コストで生産でき、非常に容易に取り付け可能である。
【0058】
また、ローラ3を用いた取り付けにより、本懸架装置が音を殆ど立てずに稼働する。
【0059】
本発明による懸架装置は、軸2を中心とした径方向の揺動を支持する一方で、これに対する横方向の動きを妨害又は緩和するので、ブランコへの使用に特に有利である。
【0060】
例えばローラ3又は安全装置4の円板が過負荷により破壊されてしまった場合でも、接続部品5が軸2によって保持されていることで、安全性が更に向上する。このことは、ブランコでの負傷のリスクを最小限に抑えるために、特に有意である。
【0061】
上述の実施例における懸架装置は、2つの安全装置4を有するが、安全装置4を1つだけ設けてもよい。
【0062】
本発明の懸架装置の用途は、ブランコの懸架が好適であるものの、これに限定されることはない。本懸架装置は、例えば長尺の物品又は棒の案内に使用できるように構成されている。この場合、前記長尺の物品又は棒をローラ3の溝内で案内し、弾力性を有する複数の安全装置が、横方向における遊び又はある程度の動きを可能にしてもよい。本発明の懸架装置は、天井または壁へ取り付けるか、或いは支持体として地面へ据え付けるように構成されている。既存のプロファイルレールシステムに、標準的な間隔で取り付けてもよい。
【0063】
更に、本発明の懸架装置は、負荷を動かすための自動車部品や、負荷の動きを調節するため及び懸架の高さを調節するため、特にロープの長さを個々に制御するための自動感知部品へ組み込まれるように構成されている。このため、懸架された負荷が傾斜している状態においても作用が発揮されるようになっていてもよい。
【0064】
使用される材料を、例えば海の近くなど屋外での使用向けには高級鋼などの耐水性の材料のように、目的に応じて選択してもよい。
【0065】
記載した実施例では、接続部品5が軸2へのフックインのために開口するようになっているが、軸2を部分的にキャリアから引き抜くことでフックイン可能な、例えばリングなどの閉じた接続部品を用いることも可能である。
図1
図2
図3a
図3b