【実施例】
【0028】
発明の詳細な説明
最初に、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の懸架装置の好適な一実施例を説明する。この懸架装置は基本的に、キャリア1、軸2、ローラ3、2つの安全装置4及び接続部品5から構成されている。
【0029】
ここでは天井からの懸架のためのキャリア1は、U字形状を有し、天井への取り付けのための複数のドリルホールを有するベースプレートと、前記ベースプレートに対して90°の角度で配置された2本の脚部とを備えている。キャリア1の前記2本の脚部は、硬質な軸を固定保持しており、例えば軸2は前記キャリア内に差し込まれて把持されているか、又は前記キャリアに溶接されている。ローラ3及び2つの安全装置4は、軸2に押し込まれている。
【0030】
図3aに図示するように、弾性プラスチック製のローラ3は、その外周にわたって延伸する、中央部に配置された溝を有し、その2つの軸端から前記溝に向かって円錐状に先細りしているが、ローラ3が、先細りしている代わりに、円錐形に形成されていてもよい。更に、
図3aの破線は、2つのローラベアリングにより、ローラ3が前記軸を中心として回転可能であり、かつ前記軸方向に取り外し可能であるように取り付けられていることを示している(前記ローラベアリングの内径は前記軸の直径よりも大きい)。2つのローラベアリングを有するこの構成は、一点のみに力が加えられる場合と比較して、接続部品5によってローラ3に加えられた負荷がこれら2つのローラベアリングを介して前記軸に伝達される、即ち2つの伝達点に分散されるために、局所的な曲げ応力が軽減される利点を有する。この結果、装置全体の安全性及び信頼性が向上する。
【0031】
本実施例に基づく懸架装置は、相互に鏡映対称に取り付けられた同一な構成を有し、それぞれがキャリア1の脚部とローラ3の軸端との間に配置された、2つの安全装置4を備えている。そのような安全装置4の基本的な構成を、安全装置4の断面を示す
図3bを参照しながら以下に説明する。
図3bに図示するように、前記安全装置は、2枚の円筒形状の円板から構成されており、前記2枚の円板は、中央ドリルホールと、前記2枚の円板の間に配置されてこれらを相互にバイアスさせる円錐形状の圧縮ばねとを有する。円板のうちの1枚には、前記圧縮ばねのばね座となる凹部が設けられている。好適には、前記凹部は、前記2枚の円板が相互に(部分的に)嵌合できるような寸法を有する。即ち、前記安全装置が、軸方向に伸長又は短縮可能な長さを有する一種のリフトシリンダを形成する。
【0032】
前記2枚の円板がこれらのドリルホールを介して軸2に差し込まれ、滑動可能に支持されている取り付け状態(
図1及び2を参照のこと)では、寸法がより小さい方の円板は、キャリア1の脚部に当接しており、寸法がより大きい方の円板は、
図3bに示す周方向の突起(又はスペーサ)を介して前記ローラベアリングの内輪に当接している。即ち、前記安全装置は、ローラ3ではなく、前記ローラベアリングの内輪に接しているに過ぎないので、ローラ3の回転が妨げられることはない。前記突起又はスペーサの軸方向の長さは、寸法がより大きい方の円板と前記ローラの軸端面との間の距離が最小(好適には1ミリメートル未満)となるような長さである。
【0033】
寸法がより大きい方の円板の外径は、前記円板が、
図2に図示するように前記ローラの外周からローラ3の径方向に突出するように選択されている。以下に更に記載するように、この突起は、接続部品5がローラ3から横方向に飛び出すことを防止する。好適には、取り付け状態(かつ負荷が固定されていない状態)においては、各安全装置4はその最大ばね行程の約50%にまで圧縮されている。
図2に示すように、双方の安全装置4のばねバイアスが同じ大きさとなるように選択されているので、ローラは、軸2の中央部に、キャリア1の各脚部に対して等間隔で保持されている。
【0034】
この実施例では、接続部品5は金属製のカラビナである。前記カラビナの外形によって規定される内側の領域が、その「孔」である。その上端で、
図1に示すように、接続部品5がローラ3の溝内にフックインされる。接続部品5及び前記溝の外形又は輪郭は、前記溝と接続部品5との間に一定の把持効果を付与するように調節されていることが望ましい。
【0035】
既に上述したように、接続部品5の孔の最大拡張寸法が、安全装置4の大きい方の円板の外径よりも小さいので、前記2枚の円板がローラ3の軸方向の止め具を形成し、この結果、前記接続部品がローラ3の軸端から滑落又は脱落することが防止される。
【0036】
(多人数用の)プランコなどの負荷が、ローラ3にフックインされていない方の接続部品5の端部(
図1では下端)にフックイン又は固定されている。
【0037】
以下に、実施例に基づく懸架装置の動作方法及び動作状態を説明する。
【0038】
最初に、負荷運転中の動作方法及び動作状態について記載する。ここで負荷運転とは、ブランコなどの負荷が接続部品5に取り付けられている状態を指す。
【0039】
遊休状態、即ち負荷が動いていない状態においては、接続部品5は前記負荷の重量によってローラ3の溝内に更に押し込まれるので、その中にしっかりと保持される。前記負荷の重量の力は、接続部品5を介してローラ3に直接に加えられ、そこから軸2を介してキャリア1に加えられる。
【0040】
前記負荷が軸2を中心として揺動すると、摩擦嵌合によって接続部品5がローラ3と一体となって軸2を中心として回転する。この結果、摩擦力がローラ3のベアリングにおいてのみ発生するので、運動エネルギー、即ち振り子運動が最大限に保存される。更に、材料、特に接続部品5の疲労が有利に防止される。
【0041】
静的な又は動的な負荷が所定の負荷支持能力を超過すると、ローラ3が変形し、その内周表面が軸2に押し付けられる。このために摩擦が増加するので、動的負荷が減速し、場合によってはゆっくりと静止する。このようにして、懸架装置に過剰な負荷がかかることが回避される。
【0042】
次に、横方向に作用する力が接続部品5を介してローラ3に伝達される場合の懸架装置の動作方法を記載する。この場合の横方向に作用する力とは、実質的に軸2の方向に作用し、例えばこの方向における負荷の動きによって発生する力である。
【0043】
前記横方向に作用する力が小さい場合には、前記作用する力に対抗する反作用力が前記溝、特にその両側壁から加えられるので、接続部品5は溝内に留まり、ラジアル面(軸2に垂直な面)から傾くことが殆ど又は全くない。従って、動作位置が安定する。
【0044】
前記横方向に作用する力が比較的大きい場合には、接続部品5の前記溝内(
図1では上部)に引掛けられた部分は、殆どが前記溝内に留まるが、接続部品5の反対の部分(
図1では下部)は、ラジアル面から傾いてしまう。この傾きは、安全装置4によって制限される。特に、傾きが特定の度合いを超えると、接続部品5の下端が、安全装置4のより大きな直径を有する方の円板に接するので、それ以上の傾きが防止される。次に前記横方向に作用する力が再び弱まると、前記接続部品は、ローラ3の円錐形状を利用して、元の位置、即ち
図2に示す位置へと戻る。
【0045】
例えば負荷の急激な変化などによって、非常に大きな横方向に作用する力が引き起こされると、接続部品5が溝から飛び出しうる。このような場合にも、安全装置4は、その外径が接続部品5の孔の最大径よりも大きいので、接続部品5がローラ3の軸端から滑落することを防止する。前記横方向に作用する力が弱まると、接続部品5は、
図2に示すように(ラジアル面内の)前記溝内の元の位置へと戻る。この動きも、ローラ3の円錐形状を利用して行われる。
【0046】
加えて、前記軸に接しているローラ3の動きは、横方向に作用する力のために、複数の安全装置4によって吸収又は平衡させられる。横方向に発生する力は、原理上は、ローラ3をキャリアの脚部に接する最も外側の位置にまで動かしうる。この場合、一方の安全装置4が軸方向に最大限に圧縮される一方で、他方の安全装置4が軸方向に最大限に拡張される。この結果、軸2に接している全ての部品に、安全装置4内に設けられたばねによる張力がかかり続けるので、ローラ3の両軸端と安全装置4との間に、軸方向に間隙が形成されない。従って、接続部品5の意図しないフックオフ又は脱落が高レベルに防止される。
【0047】
次に、接続部品5がいかにして前記溝にフックイン及びここからフックオフ(取り外し)されるかについて説明する。
【0048】
安全性を更に高めるために、接続部品5のフックイン及びフックオフは、複数の安全装置4のうちの1つを動かすことによってのみ可能である。フックイン時には、ローラ3はしっかりと固定され、複数の安全装置4のうちの1つは、軸2がその中に露出する間隙が、ローラ3と前記安全装置4との間に軸方向に形成されるように、(例えば手で直接に又は接続部品5を手で持つことによって)圧縮される(解除位置)。
【0049】
次のステップでは、開口された接続部品5が、この間隙内で軸2にフックインされる。このため、本発明においては、接続部品5の最大開口範囲は、接続部品5が軸2にのみフックイン又はフックオフ可能であり、直接にローラ3の溝にフックイン又はここからフックオフすることがないような寸法でなければならない。
【0050】
接続部品5が軸2にフックインした後に、接続部品5は閉じられ、ローラ3の軸端から持ち上げられて、前記溝内に挿入される。前記接続部品がローラ3の前記軸端から持ち上げられる際に、前記間隙は安全装置4のばねバイアスによって自動的に閉じ、安全装置4は再びそのロック位置へと戻る。
【0051】
接続部品5の取り外しは、逆の順序で行われる。
【0052】
上述のように、接続部品5が開かないように、又はフックオフしてしまう程に大きく開かないように、ローラ3の全ての直径及び接続部品5の全ての開口寸法が互いに調節されているので、動作状態では接続部品をローラ3から直接に取り外す(フックオフする)ことはできない。
【0053】
本実施例は、以下の利点を有する。
【0054】
ローラベアリングによって軸2に接するように支持されているローラ3の円周状の溝内に接続部品5を摩擦的に装架することにより、運動エネルギーが揺動面内に非常に高度に保存される一方で、前記揺動面に対する横方向の動きが抑えられるので、ブランコと組み合わせて使用する場合に特に有利である。
【0055】
本懸架装置は、高い安全性及び信頼性を有する。ローラ3を用いた取り付けによって、大きな常設の負荷を安全に装架することが可能である一方で、安全装置4が、接続部品5の容易なフックイン及びフックオフは可能であるが、接続部品5の意図しないフックオフは回避されるように機能する。更に、安全装置4は、横方向に作用する力を吸収するように構成されている。
【0056】
接続部品5の手動でのフックイン及びフックオフが、更なる補助手段を必要とすることなく可能であるので、取り扱いが非常に便利である。
【0057】
更に、本発明による懸架装置は、構成部品が非常に少ないので、低コストで生産でき、非常に容易に取り付け可能である。
【0058】
また、ローラ3を用いた取り付けにより、本懸架装置が音を殆ど立てずに稼働する。
【0059】
本発明による懸架装置は、軸2を中心とした径方向の揺動を支持する一方で、これに対する横方向の動きを妨害又は緩和するので、ブランコへの使用に特に有利である。
【0060】
例えばローラ3又は安全装置4の円板が過負荷により破壊されてしまった場合でも、接続部品5が軸2によって保持されていることで、安全性が更に向上する。このことは、ブランコでの負傷のリスクを最小限に抑えるために、特に有意である。
【0061】
上述の実施例における懸架装置は、2つの安全装置4を有するが、安全装置4を1つだけ設けてもよい。
【0062】
本発明の懸架装置の用途は、ブランコの懸架が好適であるものの、これに限定されることはない。本懸架装置は、例えば長尺の物品又は棒の案内に使用できるように構成されている。この場合、前記長尺の物品又は棒をローラ3の溝内で案内し、弾力性を有する複数の安全装置が、横方向における遊び又はある程度の動きを可能にしてもよい。本発明の懸架装置は、天井または壁へ取り付けるか、或いは支持体として地面へ据え付けるように構成されている。既存のプロファイルレールシステムに、標準的な間隔で取り付けてもよい。
【0063】
更に、本発明の懸架装置は、負荷を動かすための自動車部品や、負荷の動きを調節するため及び懸架の高さを調節するため、特にロープの長さを個々に制御するための自動感知部品へ組み込まれるように構成されている。このため、懸架された負荷が傾斜している状態においても作用が発揮されるようになっていてもよい。
【0064】
使用される材料を、例えば海の近くなど屋外での使用向けには高級鋼などの耐水性の材料のように、目的に応じて選択してもよい。
【0065】
記載した実施例では、接続部品5が軸2へのフックインのために開口するようになっているが、軸2を部分的にキャリアから引き抜くことでフックイン可能な、例えばリングなどの閉じた接続部品を用いることも可能である。