(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986520
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】無線ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20160823BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H04M9/00 G
A61G12/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-35658(P2013-35658)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-165712(P2014-165712A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楠 浩和
(72)【発明者】
【氏名】保田 直人
【審査官】
松平 英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−49623(JP,A)
【文献】
特開2006−33164(JP,A)
【文献】
特開2004−282596(JP,A)
【文献】
特開2005−354535(JP,A)
【文献】
特開2008−228188(JP,A)
【文献】
特開2012−156691(JP,A)
【文献】
特開平10−105856(JP,A)
【文献】
特開2006−95038(JP,A)
【文献】
特開2012−209606(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0101349(US,A1)
【文献】
米国特許第7088235(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 9/00−15/12
99/00
G08B19/00−31/00
H04M 3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室のそれぞれのベッドの近傍に設置されたナースコール子機(3、3、・・・)からの呼出信号をナースステーションに設置されたナースコール親機(1)に報知あるいは表示させるナースコールシステムであって、
ベッドに入院している患者が前記ナースコール親機を呼び出すためにベッド上などの患者に近い位置に設置されるナースコール用無線押しボタン(2)と、前記ナースコール用無線押しボタンからの呼出信号を受信するために前記ナースコール子機に接続される無線受信機(4、4、・・・)を備え、
前記ナースコール子機には、患者が前記ナースコール親機の近傍にいる看護師を呼び出すための呼出握りボタン(31)と、前記呼出握りボタンあるいは前記ナースコール用無線押しボタンの操作により呼び出された看護師が前記ナースコール親機で応答した際に当該看護師と通話を行なうための通話部(32)とを有し、
前記無線受信機には、前記ナースコール用無線押しボタンとのペアリングを行なうペアリング開始ボタン(41)と、前記ペアリング開始ボタン操作後の一定時間内に前記ナースコール用無線押しボタンのID等の固有符号を受信することにより前記固有符号を記憶する記憶部(42)と、前記無線受信機の動作を制御する受信機制御部(43)とを有し、
前記ナースコール用無線押しボタンは電源部を有しないものであり、電源部に代えて、押しボタンを押下すると押下による運動エネルギーを電気エネルギーに変換して前記固有符号を含む無線信号を送信するとともに無線信号の送信後は再び押下による電気エネルギーを得るまで動作を停止する無線送信部を有し、さらに押下による運動エネルギーを少量とするために無線受信部を有しないものであり、
前記受信機制御部は、前記ペアリング開始ボタン操作後の一定時間内に固有符号を受信できなかった場合には前記記憶部から前回のペアリングによる固有符号を読出してペアリングを完了するとともに、ペアリングを行っていない時に前記記憶部に記憶された前記固有符号と同一の固有符号の呼出を受信した際には前記ナースコール親機に呼出信号を送信し、さらにペアリングを行っていない時に前記記憶部に記憶された前記固有符号と異なる固有符号の呼出を受信した際には前記ナースコール親機への呼出信号の送信を抑止することを特徴とするナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等の医療施設に設置されるナースコールシステムに係り、特に、患者の呼出握りボタンを無線化したナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のナースコールとして、呼出ボタンの電源として電池を使用した無線式のナースコールシステムが知られている。例えば、特許文献1のナースコール装置では、使用者が無線子機を操作して家族の人を呼び出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−249999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のナースコール装置では、特許文献1の段落[0012]に記載されているように、電池切れの検出等の信頼性を確保するために定期的に通信を行なわなければならないため、病院等、患者が常時ナースコールを使用するような場所では電池消耗が早すぎて使用することができなかった。
この改善策として、電池を使用せず、呼出操作による運動エネルギーにより発電して呼出信号を送信する無線子機が望まれていたが、この形態では無線子機において呼出確認信号を受信することができないため、無線受信機との通信の信頼性を確保することができなかった。
【0005】
本発明は、上述の難点を解消するためになされたもので、発電により呼出信号を送信する無線子機において、使用開始時にペアリング動作により無線受信機との接続を確立すると、再度ペアリングを行なった際にペアリングを失敗したとしても失敗前のペアリング状態を維持することにより、無線子機からの失報を防ぐことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明によるナースコールシステムは、病室のベッド上などの患者に近い位置に設置されるナースコール用無線押しボタンと、ナースコール用無線押しボタンからの呼出信号を受信するためにナースコール子機に接続される無線受信機を備え、ナースコール子機には、ナースコール用無線押しボタンの操作により呼び出された看護師がナースステーションに設置されたナースコール親機で応答した際に当該看護師と通話を行なうための通話部とを有し、無線受信機には、ナースコール用無線押しボタンとのペアリングを行なうペアリング開始ボタンと、ペアリング開始ボタン操作後の一定時間内にナースコール用無線押しボタンのID等の固有符号を受信することにより固有符号を記憶する記憶部と、無線受信機全体の動作を制御する受信機制御部とを有し、ナースコール用無線押しボタンは電源部を有しないものであり、電源部に代えて、押しボタンを押下すると押下による運動エネルギーを電気エネルギーに変換して固有符号を含む無線信号を送信するとともに無線信号の送信後は再び押下による電気エネルギーを得るまで動作を停止する無線送信部を有し、さらに押下による運動エネルギーを少量とするために無線受信部を有しないものであり、受信機制御部は、ペアリング開始ボタン操作後の一定時間内に固有符号を受信できなかった場合には記憶部から前回のペアリング情報による固有符号を読出してペアリングを完了するとともに、ペアリングを行っていない時に記憶部に記憶された固有符号と同一の固有符号の呼出を受信した際にはナースコール親機に呼出信号を送信し、さらにペアリングを行っていない時に記憶部に記憶された固有符号と異なる固有符号の呼出を受信した際にはナースコール親機への呼出信号送信を抑止するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1のナースコールシステムによれば、ペアリングに失敗した際にも前回ペアリングに成功した情報を記憶部から読み出して再設定することから、無線子機が無線受信部を有していない場合においても、ペアリングの信頼度を向上させて無線子機からの呼出操作が失報することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施例によるナースコールシステムの全体(外観)構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例によるナースコールシステムにおいて、ナースコール子機、無線受信機の具体的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例によるナースコールシステムにおける動作を示すフローチャートであり、(a)はペアリング時の動作、(b)はペアリング完了後の動作である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のナースコールシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例によるナースコールシステムの全体構成を示す構成図であり、看護師を呼び出すために病室内の病床にそれぞれ設置される複数のナースコール子機3、3、・・・と、ナースステーション内に設置され病室からの呼出信号を受信して呼出報知を行なうナースコール親機1と、病室出入口の廊下に設置されてナースコール子機の信号をナースコール親機に伝送するとともにナースコール子機の呼出信号を報知する廊下灯5、5、・・・と、病室のベッドに入院している患者が前記ナースコール親機を呼び出すためにベッド上などの患者に近い位置に設置されるナースコール用無線押しボタン2と、ナースコール用無線押しボタン2からの呼出信号を受信するためにナースコール子機3、3、・・・に接続される無線受信機4、4、・・・と、ナースコールシステム全体の通信及び動作を制御する制御装置6とで構成されている。
【0010】
ナースコール親機1には、制御装置6、廊下灯5を介してナースコール子機3、3、・・・が接続されている。
ナースコール子機3には患者が看護師を呼び出す呼出握りボタン31が接続されているとともに、看護師がベッドまで来て対応を完了した旨をナースコール親機に通知するための復旧ボタン33と、呼出握りボタン31の操作により呼び出された看護師がナースコール親機1で応答した際に当該看護師と通話を行なうための通話部32とを有している。なお、通話部32は、
図1のようにナースコール子機3と一体のもの及びナースコール子機3と別体のものがそれぞれ存在するが、外観の違いのみで動作は同様である。
また、ナースコール子機3には、呼出握りボタン31あるいは無線受信機4の少なくとも1つが接続されていれば呼出を行なうことができ、さらには呼出握りボタン31及び無線受信機4の双方を1つのナースコール子機3に接続することも好適である。
無線受信機4にはペアリング時に操作することによって無線受信機4をペアリングモードに遷移させるペアリング開始ボタン41と、呼出信号受信やペアリング完了を通知する表示灯45とを有している。
【0011】
図2はナースコール用無線押しボタン2、ナースコール子機3、無線受信機4の具体的な構成を示すブロック図である。ナースコール用無線押しボタン2には、患者が看護師を呼び出すために表面に露出する可動ボタン21と、可動ボタン21の動作による運動エネルギーを用いて発電を行なう発電部22と、発電部22の電力によって予めナースコール用無線押しボタン2内に記憶されている固有符号とともに呼出信号を送信する無線送信部23とを備えている。ナースコール子機3には、前述した通話部32と、復旧ボタン33のほか、ナースコール子機3の各部を制御するとともに、廊下灯5、無線受信機4と通信を行なう子機CPU35を備えている。無線受信機4は、前述したペアリング開始ボタン41、表示灯45のほか、ナースコール用無線押しボタン2からの呼出信号を固有符号とともに受信する受信アンテナ44と、ペアリング相手のナースコール用無線押しボタンの固有符号を1台分記憶する記憶部42と、無線受信機4の各部を制御する受信機CPU43とを備えている。
【0012】
このように構成された本発明の一実施例によるナースコールシステムにおいて、以下、その動作について説明する。なお、ナースコール子機3の呼出握りボタン31を操作して看護師を呼び出して通話する動作については、従来のナースコールと同様であるため説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
まず、ナースコール用無線押しボタン2の呼出信号の送信方法について説明する。
図1の構成図及び
図2のブロック図において、ナースコール用無線押しボタン2の可動ボタン21を押下すると、可動ボタン21の動作により発生した運動エネルギーによって発電部22が発電を行なって電気エネルギーに変換し、無線送信部23に電源が供給される。なお、可動部の運動エネルギーによって発電を行なう技術そのものについては既存技術であるため説明を省略する。
無線送信部23は動作電源の供給を受けると、予めナースコール用無線押しボタン2の内部に記憶されている固有符号を読出し、呼出信号とともに無線送信を行なう。なお、この無線信号は微弱なものであり、到達距離は概ね1mから3mほどである。また、発電部22の発電量は微弱であるため、1回の可動ボタン21の操作による無線送信部23の動作可能時間は1秒乃至5秒程度であり、発電部22からの電力供給が停止すると、無線送信部23の動作も停止する。
【0014】
次に、ナースコール用無線押しボタン2の使用開始時における無線受信機4とのペアリング動作について
図3(a)を用いて説明する。ペアリング動作とは、無線受信機4がどのナースコール用無線押しボタン2の呼出信号を受信するかを予め登録し、異なったナースコール子機に呼出が誤発生してしまうことを防止するための登録操作である。
【0015】
ペアリング開始時には、無線受信機4のペアリング開始ボタン41を操作すると、ペアリング開始ボタン41の操作を検出した受信機CPU43は、表示灯45を点滅させてペアリングモードに移行したことを視覚的に通知する。無線受信機4がペアリング動作中にナースコール用無線押しボタン2の可動ボタン21を押下すると、前述の通り無線送信部23は固有符号を付加した呼出信号を無線送信する。無線受信機4の受信機CPU43は、受信アンテナ44を介して呼出信号を受信すると、受信した呼出信号から固有符号を取出し、記憶部42に上書きして記憶するとともに、ペアリング完了通知を当該固有符号とともにナースコール子機3、廊下灯5を介して制御装置6に送信するとともに、表示灯45を一定時間点灯させてペアリングが完了したことを通知する。制御装置6では、ペアリング完了通知を受信すると、ペアリング完了通知内の固有符号が他の無線受信機4で登録されていないことを確認し、制御装置6内の図示しない記憶部に記憶する。なお、固有符号が他の無線受信機4で登録されている場合には、制御装置6から登録異常信号としてナースコール親機1、廊下灯5あるいはナースコール子機3に警報音や警報表示を行なうことにより、1つのナースコール用無線押しボタン2が複数の無線受信機4によってペアリングされることを防ぐことができる。
【0016】
次に、ペアリングに失敗してタイムアウトとなった場合について説明する。無線受信機4のペアリング開始ボタン41を操作すると、受信機CPU43がペアリングモードに移行する点は前述の動作と同一であるが、その後、30秒間呼出信号を受信できなかった場合には、表示灯45を消灯し、ペアリングモードを終了するとともに、記憶部42から、前回のペアリングにおいて登録された固有符号を読出し、当該固有符号を有するナースコール用無線押しボタン2からの呼出信号を受信したものとしてペアリング完了通知を制御装置6に送信する。
【0017】
なお、現場での初回のペアリング失敗を避けるため、無線受信機4とナースコール用無線押しボタン2はペアで出荷され、工場出荷段階においてペアリングが完了しており、記憶部42には当該ナースコール用無線押しボタン2の固有符号が予め記憶されていることにより、ペアリング失敗時には必ず前回のペアリングにおいて登録された固有符号を読出すことができる。
【0018】
次に、呼出動作について
図3(b)を用いて説明する。待受状態(つまり、ペアリングモードでない状態)にある無線受信機4がナースコール用無線押しボタン2からの呼出信号を受信すると、受信機CPU43は受信した呼出信号から固有符号を取出し、記憶部42に記憶された固有符号と比較する。双方の固有符号が異なっている場合には何も動作せずに待受状態を維持するとともに、双方の固有符号が同一である場合には呼出信号を当該固有符号とともにナースコール子機3、廊下灯5を介して制御装置6に送信するとともに、表示灯45を点灯させて呼出操作が受け付けられたことを視覚的に通知する。呼出信号を受信した制御装置6は、呼出信号をナースコール親機1に送信し、呼出音を鳴動させるとともに、ナースコール子機3からの呼出を通知する。
ナースコール親機1による呼出通知を認識した看護師は、ナースコール親機1の図示しない通話部でナースコール子機3の通話部32との通話路を確立して通話を行なうとともに、通話終了後に病室の患者のもとへ駆けつけ、ナースコール子機3の復旧ボタン33を操作して呼出動作を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
なお、本実施例では1台の無線受信機には1台のナースコール用無線押しボタンが設置されているものとして説明しているが、複数台のナースコール用無線押しボタンを設置することもできる。この場合には記憶部には複数の固有符号を記憶するとともに、ペアリング成功時には新たな固有符号を記憶部に追加するとともに、ペアリング失敗時には記憶部に記憶してある全ての固有符号に対してペアリング完了通知を制御装置に送信する。
また、本実施例では制御装置や廊下灯が備えられているが、これらは存在せず、例えば制御装置で行なっていた固有符号の記憶動作や重複確認はナースコール親機など他の機器で行なうことも好適である。
【0020】
さらに、通話部はナースコール子機に備えられていたが、無線受信機に備えることも好適である。
【符号の説明】
【0021】
1 ナースコール親機
2 ナースコール用無線押しボタン
3 ナースコール子機
31 呼出握りボタン
32 通話部
4 無線受信機
41 ペアリング開始ボタン
42 記憶部
43 受信機制御部