(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる少なくとも1つの第一のブッシュと、振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる少なくとも1つの第二のブッシュとが、連結部材に形成された筒状部にそれぞれ配設されて、該連結部材で相互に連結された防振装置において、
前記連結部材は、並列に延びる複数の溝状部を一体で備えた一組の板状分割体を向かい合わせに重ね合わせた構造を有しており、該溝状部の開口端部を相互に突き合わせて固定することにより、一組の該溝状部で構成された前記筒状部の複数が互いに並列に連設されている一方、
該連結部材は、隣り合う該筒状部の間に跨って延びてそれら筒状部の外周面にそれぞれ固着される補強部材を備えていることを特徴とする防振装置。
前記連結部材が3つ以上の前記筒状部を備えており、それら筒状部にそれぞれ前記第一のブッシュ又は前記第二のブッシュが配設されることで、該連結部材が前記振動系を構成する部材間に弾性支持されていると共に、該第一のブッシュの弾性主軸と該第二のブッシュの弾性主軸とが何れも該連結部材の重心を通るように設定されている請求項1に記載の防振装置。
前記第一のブッシュが第一のインナ軸部材と第一のアウタ筒部材を第一の本体ゴム弾性体で弾性連結した構造とされていると共に、前記第二のブッシュが第二のインナ軸部材と第二のアウタ筒部材を第二の本体ゴム弾性体で弾性連結した構造とされており、それら第一のブッシュと第二のブッシュが前記連結部材の前記筒状部にそれぞれ圧入されている請求項1〜4の何れか1項に記載の防振装置。
前記板状分割体における前記溝状部の開口部には、該溝状部の幅方向外側に突出する当接部が一体形成されており、一組の該板状分割体が互いに向かい合わせに重ね合わされることで、それら板状分割体の該当接部が相互に当接した状態で重ね合わされると共に、該当接部の何れか一方には厚さ方向に貫通する溶接用孔が形成されて、一組の該板状分割体の該当接部が該溶接用孔の内面において溶接されて相互に固定されている請求項1〜5の何れか1項に記載の防振装置。
一組の前記板状分割体における前記溝状部の開口端部が当接状態で突き合わされており、それら溝状部の開口端部が前記筒状部の内周側から溶接されて相互に固定されていると共に、該筒状部には内法寸法が部分的に大きくされた拡大部が該溝状部の開口端部に設けられており、該筒状部の内周面に固着された溶接金属が該拡大部に収容されている請求項1〜6の何れか1項に記載の防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、容易に製造可能な簡単な構造で充分な耐荷重性を得ることができる連結部材を備えた、新規な構造の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる少なくとも1つの第一のブッシュと、振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる少なくとも1つの第二のブッシュとが、連結部材に形成された筒状部にそれぞれ配設されて、該連結部材で相互に連結された防振装置において、前記連結部材は、並列に延びる複数の溝状部を一体で備えた一組の板状分割体を向かい合わせに重ね合わせた構造を有しており、該溝状部の開口端部を相互に突き合わせて固定することにより、一組の該溝状部で構成された前記筒状部の複数が互いに並列に連設されている一方、該連結部材は、隣り合う該筒状部の間に跨って延びてそれら筒状部の外周面にそれぞれ固着される補強部材を備えていることを、特徴とする。
【0009】
このような第一の態様に従う構造とされた防振装置によれば、複数の筒状部を備える連結部材が一組の板状分割体を組み合わせた構造を有していることから、連結部材をプレス等の曲げ加工によって簡単に形成することができる。しかも、筒状部が一組の板状分割体の溝状部を組み合わせて構成されることから、バーリング加工で筒状部を形成する場合に比して、筒状部の内径寸法が周上で高精度に設定されて、筒状部の周上において強度のばらつきが抑えられると共に、第一のブッシュと第二のブッシュを圧入等の手段で固定する場合には、取付け強度を安定して得ることができて、それらブッシュの抜け等を防ぐことができる。
【0010】
さらに、連結部材には、筒状部の間に跨って延びる補強部材が設けられることから、一組の板状分割体の重ね合わせ方向で寸法が小さくなる複数の筒状部の間においても、補強部材によって充分な強度が確保されて、振動入力時に連結部材の変形等が回避される。
【0011】
また、連結部材が振動伝達系を構成する部材に対して、第一のブッシュおよび第二のブッシュを介して弾性的に取り付けられて支持されることから、連結部材をマスとすると共に第一のブッシュおよび第二のブッシュのばね成分をばねとするマス−バネ共振系が構成される。そして、マス−バネ共振系の共振周波数よりも高周波数の振動入力時には、スカイフックダンパ効果に基づいて連結部材が略静止することから、振動伝達系を構成する部材間での振動伝達が低減乃至は回避される。これにより、高周波数域の振動に対する優れた防振効果(振動絶縁効果)を得ることができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記連結部材が3つ以上の前記筒状部を備えており、それら筒状部にそれぞれ前記第一のブッシュ又は前記第二のブッシュが配設されることで、該連結部材が前記振動系を構成する部材間に弾性支持されていると共に、該第一のブッシュの弾性主軸と該第二のブッシュの弾性主軸とが何れも該連結部材の重心を通るように設定されているものである。
【0013】
第二の態様によれば、第一のブッシュの弾性主軸と第二のブッシュの弾性主軸とが、何れも連結部材の重心を通るように設定されることにより、振動入力時に連結部材に対して及ぼされるモーメントが低減されて、連結部材においてこじり変位や捻り変位が生じ難くなる。これにより、連結部材をマスとするマス−バネ系におけるスカイフックダンパ効果を利用して、高周波数域の振動に対する振動絶縁効果を有効に得ることができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振装置において、前記補強部材が、3つ以上の前記筒状部に跨って配設されて、それら3つ以上の該筒状部の外周面にそれぞれ固着されているものである。
【0015】
第三の態様によれば、連結部材において、少ない部品点数で筒状部間の脆弱部分を有効に補強して、充分な耐荷重性を確保することができる。しかも、各筒状部間に補強部材を別々に設ける場合に比して、耐荷重性の向上も図られ得る。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記補強部材が板形状とされていると共に、該補強部材が前記筒状部の接線方向に延びているものである。
【0017】
第四の態様によれば、板状の補強部材が隣り合う筒状部の接線方向に延びて形成されることにより、連結部材において断面係数がより効果的に大きくされて、曲げに対する補強効果の更なる向上が図られる。
【0018】
なお、本発明において板状の補強部材を採用するに際しては、板状分割体と略同じ厚さ寸法を有する補強部材が好適に採用される。これにより、補強部材と板状分割体を共通の板材から形成することも可能となって、材料の共通化による低コスト化や材料管理の容易化等が図られ得る。
【0019】
また、本発明において板状の補強部材を採用するに際しては、隣り合う筒状部間で湾曲等することなく平板形状で直線的に延びる補強部材が好適に採用される。これにより、板状の補強部材による筒状部間の変形剛性が一層効果的に発揮され得る。
【0020】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記第一のブッシュが第一のインナ軸部材と第一のアウタ筒部材を第一の本体ゴム弾性体で弾性連結した構造とされていると共に、前記第二のブッシュが第二のインナ軸部材と第二のアウタ筒部材を第二の本体ゴム弾性体で弾性連結した構造とされており、それら第一のブッシュと第二のブッシュが前記連結部材の前記筒状部にそれぞれ圧入されているものである。
【0021】
第五の態様によれば、第一のブッシュおよび第二のブッシュが連結部材とは別に形成されることから、第一の本体ゴム弾性体および第二の本体ゴム弾性体の成形用金型を小さくすることができる。しかも、第一のブッシュおよび第二のブッシュがインナ軸部材とアウタ筒部材を本体ゴム弾性体で弾性連結した内外筒接着タイプのブッシュとされることで、アウタ筒部材を連結部材の筒状部に圧入することで、第一のブッシュおよび第二のブッシュを筒状部の中心孔に強固に固定することができる。
【0022】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記板状分割体における前記溝状部の開口部には、該溝状部の幅方向外側に突出する当接部が一体形成されており、一組の該板状分割体が互いに向かい合わせに重ね合わされることで、それら板状分割体の該当接部が相互に当接した状態で重ね合わされると共に、該当接部の何れか一方には厚さ方向に貫通する溶接用孔が形成されて、一組の該板状分割体の該当接部が該溶接用孔の内面において溶接されて相互に固定されているものである。
【0023】
第六の態様によれば、当接部において重ね合わせることで、一組の板状分割体を容易に位置決めすることができる。しかも、重ね合わされた当接部が溶接用孔の内面において相互に溶接固定されることから、溝状部の幅方向外側にトーチを差し入れることで、筒状部の外側で溶接作業を行うことができる。なお、隣り合って配置された筒状部の間に位置する当接部は、トーチを差し入れて溶接作業を行い得る幅で形成される。
【0024】
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか1つの態様に記載された防振装置において、一組の前記板状分割体における前記溝状部の開口端部が当接状態で突き合わされており、それら溝状部の開口端部が前記筒状部の内周側から溶接されて相互に固定されていると共に、該筒状部には内法寸法が部分的に大きくされた拡大部が該溝状部の開口端部に設けられており、該筒状部の内周面に固着された溶接金属が該拡大部に収容されているものである。
【0025】
第七の態様によれば、溝状部の開口端部を筒状部の内周側から溶接することにより、隣り合う筒状部の間に溶接のための隙間を設定する必要がなく、複数の筒状部の隣接方向におけるコンパクト化が図られる。しかも、筒状部の内周面に固着される溶接金属が、筒状部の周上で内法寸法が部分的に大きくされた拡大部に収容されることにより、溶接金属が第一のブッシュおよび第二のブッシュに干渉するのを防いで、第一のブッシュおよび第二のブッシュの筒状部への取付不良や、第一のブッシュおよび第二のブッシュの溶接金属への接触による損傷等が回避される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数の筒状部を備える連結部材が、一組の板状分割体を向かい合わせに重ね合わせて固定した構造を有していることから、板材にプレス等の曲げ加工を施すことで、連結部材を容易に得ることができると共に、筒状部を含む各部位において優れた寸法精度を実現することができる。しかも、連結部材が複数の筒状部に跨って延びる補強部材を備えていることから、隣り合う筒状部の間においても充分な強度が確保されて、耐荷重性に優れた連結部材が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1〜
図7には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のモータマウント10が示されている。モータマウント10は、1つの第一のブッシュ12と2つの第二のブッシュ14,14が連結部材としてのブラケット16に取り付けられて相互に連結された構造を有している。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは、主たる振動の入力方向である
図6中の上下方向を、前後方向とは、装着状態で車両の前後方向となる
図3中の上下方向を、左右方向とは、装着状態で車両の左右方向となる
図3中の左右方向を、それぞれ言う。
【0030】
より詳細には、第一のブッシュ12は、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20を第一の本体ゴム弾性体22で弾性連結した構造とされている。第一のインナ軸部材18は、鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性の部材であって、厚肉小径の円筒形状を有している。第一のアウタ筒部材20は、第一のインナ軸部材18と同様の材料で形成された高剛性の部材であって、第一のインナ軸部材18に比して薄肉大径とされた略円筒形状を有している。
【0031】
そして、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20は、内外挿状態で同軸的に配置されて、第一の本体ゴム弾性体22によって弾性連結されている。第一の本体ゴム弾性体22は、厚肉大径の略円筒形状を有しており、内周面が第一のインナ軸部材18の外周面に加硫接着されると共に、外周面が第一のアウタ筒部材20の内周面に加硫接着されることによって、それら第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20が第一の本体ゴム弾性体22によって弾性連結されている。なお、第一の本体ゴム弾性体22は、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20を備える一体加硫成形品として形成されている。
【0032】
さらに、第一の本体ゴム弾性体22には、軸方向に貫通する上すぐり孔24と下すぐり孔26が、第一のインナ軸部材18を挟んだ上下各一方の側に形成されている。かかる上すぐり孔24と下すぐり孔26によって、第一の本体ゴム弾性体22は、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20を相互に弾性連結する前後一対の連結腕部28,28と、第一のアウタ筒部材20に固着されて、第一のインナ軸部材18と上下に対向配置された上ストッパ部30および下ストッパ部32とに、実質的に分けられている。
【0033】
そして、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20が上下のストッパ部30,32を介して当接することで、第一のインナ軸部材18と第一のアウタ筒部材20の上下方向での相対変位量を制限する上下ストッパ手段が構成される。
【0034】
一方、第二のブッシュ14は、第一のブッシュ12に比して小径とされており、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36を第二の本体ゴム弾性体38で弾性連結した構造とされている。第二のインナ軸部材34は、第一のインナ軸部材18と同様に高剛性の部材であって、厚肉小径の略円筒形状を有している。第二のアウタ筒部材36は、第一のアウタ筒部材20と同様に高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状を有している。
【0035】
そして、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36が内外挿状態で同軸的に配置されて、それら第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36が第二の本体ゴム弾性体38によって弾性連結されている。第二の本体ゴム弾性体38は、厚肉大径の略円筒形状を有しており、内周面が第二のインナ軸部材34の外周面に加硫接着されると共に、外周面が第二のアウタ筒部材36の内周面に加硫接着されることにより、それら第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36の間に介装されている。なお、第二の本体ゴム弾性体38は、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36とを備えた一体加硫成形品として形成されている。また、本実施形態では、2つの第二のブッシュ14,14は、相互に同じ構造とされている。
【0036】
さらに、第二の本体ゴム弾性体38には、上下方向で向かい合わせに対向配置される一対の第一すぐり孔40,40と、前後方向(
図6中、左右)で向かい合わせに対向配置される一対の第二すぐり孔42,42とが、それぞれ第二の本体ゴム弾性体38を軸方向に貫通して形成されている。第一すぐり孔40と第二すぐり孔42は、それぞれ周方向に所定の長さで延びており、第一すぐり孔40の周方向両端部には、内周側に延び出す第一拡幅部44が形成されている一方、第二すぐり孔42の周方向両端部には、外周側に延び出す第二拡幅部46が形成されている。これにより、第二の本体ゴム弾性体38には、第一すぐり孔40の内周側に、第二のインナ軸部材34から上下外側に突出する第一ストッパ部48が一体形成されている一方、第二すぐり孔42の外周側に、第二のアウタ筒部材36から前後内側に突出する第二ストッパ部50が形成されている。
【0037】
そして、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36が第一ストッパ部48を介して当接することにより、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36の上下方向での相対変位量を制限する上下ストッパ手段が構成される。更に、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36が第二ストッパ部50を介して当接することにより、第二のインナ軸部材34と第二のアウタ筒部材36の前後方向での相対変位量を制限する前後ストッパ手段が構成される。
【0038】
かくの如き構造とされた第一のブッシュ12および第二のブッシュ14は、ブラケット16に取り付けられている。ブラケット16は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成された高剛性の部材とされており、
図8,
図9に示すように、ブラケット本体52に補強部材54が取り付けられた構造を有している。
【0039】
より詳細には、ブラケット本体52は、前後方向が長手とされて、前後方向で並んで配置された3つの筒状部56,58,58を備えている。なお、本実施形態のブラケット16では、前後方向中央に大径の第一筒状部56が設けられていると共に、第一筒状部56の前後両側に隣り合って、第一筒状部56よりも小径の第二筒状部58,58が設けられている。
【0040】
さらに、ブラケット本体52は、一組の板状分割体60a,60bを上下方向で向い合わせに重ね合わせた構造を有している。板状分割体60は、全体として長手板状とされており、前後方向の中央部分に略半円弧断面で左右方向の全長に亘って延びる第一溝状部62を有すると共に、前後方向で第一溝状部62の両側にそれぞれ略半円弧断面で左右方向の全長に亘って延びる第二溝状部64,64が形成されている。なお、第一溝状部62は、第二溝状部64よりも大径の略半円弧断面を呈しており、溝幅寸法(前後寸法)および溝深さ寸法(上下寸法)が大きくされているが、それら第一溝状部62の開口端面と第二溝状部64の開口端面は、略同一平面上に位置している。
【0041】
また、第一溝状部62と第二溝状部64の間には、左右方向の全長に亘って連続する当接部としての中間当接部66が一体形成されている。中間当接部66は、上下方向に対して略直交して広がる板状とされており、前後方向の両端部が第一溝状部62の開口端部と第二溝状部64の開口端部との各一方に一体で接続されている。更に、板状分割体60bの中間当接部66,66には、溶接用孔としてのスロット68がそれぞれ形成されている。スロット68は、中間当接部66の中央部分を上下に貫通する長孔であって、板状分割体60bの左右方向に所定の長さで連続して延びている。
【0042】
さらに、第二溝状部64の前後方向外側の開口端部には、当接部としての端部当接片70が一体形成されている。この端部当接片70は、中間当接部66と同一平面上で広がる板状とされており、第二溝状部64の開口端部から前後方向の外側に突出している。更にまた、板状分割体60bの端部当接片70,70には、溶接用孔としての切欠き部72がそれぞれ形成されている。切欠き部72は、端部当接片70の前後方向外側の端部を上下に貫通しており、左右方向の中央部分において左右方向に所定の長さで延びている。要するに、第一溝状部62と第二溝状部64の各開口端部には、溝幅方向(前後方向)で外側に突出する中間当接部66と端部当接片70の何れかが一体形成されている。
【0043】
このような構造とされた板状分割体60aと板状分割体60bは、上下方向で向かい合わせに重ね合わされて、第一溝状部62の開口端部が相互に突き合されると共に、第二溝状部64,64の開口端部が相互に突き合される。これにより、第一,第二溝状部62,64,64の開口端部に設けられた中間当接部66,66および端部当接片70,70が互いに当接状態で重ね合わされる。そして、板状分割体60aの中間当接部66と板状分割体60bの中間当接部66とが、スロット68において溶接されると共に、板状分割体60aの端部当接片70と板状分割体60bの端部当接片70とが、切欠き部72において溶接されることにより、板状分割体60aと板状分割体60bが相互に固定されている。
【0044】
なお、中間当接部66および端部当接片70の溶接方法は、特に限定されるものではないが、後述する第一,第二のブッシュ12,14,14の圧入時に溶接金属の破壊が生じないように、充分な耐荷重性が要求されることから、例えば、アーク溶接によって左右方向の広範囲に亘って連続的に溶接されて、線状の溶接金属74(ビード)が形成されることが望ましい。尤も、要求される強度等に応じて、電子ビーム溶接やガス溶接、エレクトロスラグ溶接、誘導加熱溶接等の各種公知の溶接法が採用され得る。
【0045】
かかる板状分割体60aと板状分割体60bとの固定によって、板状分割体60a,60bの各第一溝状部62の開口端部が相互に連結されて、前後方向の中央部分に第一筒状部56が形成されていると共に、板状分割体60a,60bの各第二溝状部64,64の開口端部が相互に連結されて、前後方向の両端部分に第二筒状部58,58が形成されている。これにより、3つの筒状部56,58,58が連設されたブラケット本体52が形成されている。
【0046】
また、ブラケット本体52の板状分割体60bには、補強部材54が取り付けられている。補強部材54は、長手の板形状とされた高剛性の部材であって、幅寸法(左右方向の寸法)がブラケット本体52と略同じとされていると共に、板厚寸法がブラケット本体52を構成する板状分割体60a,60bの板厚寸法と略同じとされている。更に、補強部材54は、前後方向の中央部分に屈曲部76が設けられており、前後方向で外側に行くに従って次第に上傾している。更にまた、補強部材54の屈曲部76には、左右方向に所定の長さで延びる長孔形状とされた中央スロット78が、厚さ方向に貫通して形成されている。
【0047】
この補強部材54は、前後方向の中央部分である屈曲部76が第一筒状部56の外周面の下端に重ね合わされると共に、前後方向の両端部分が各一方の第二筒状部58,58の外周面に重ね合わされており、それら第一筒状部56と第二筒状部58,58とに跨って配設される。そして、補強部材54の前後中央部分が中央スロット78において第一筒状部56の外周面に溶接固定されると共に、補強部材54の前後両端部分が端面において第二筒状部58の外周面に溶接固定されることにより、ブラケット16が形成されている。なお、補強部材54は、屈曲部76を挟んだ前後両側部分が、それぞれ第一筒状部56の外周面と第二筒状部58の外周面に接する角度で傾斜しており、補強部材54が第一筒状部56の外周面と第二筒状部58の外周面との共通接線方向に延びている。また、補強部材54は、第一筒状部56および第二筒状部58に対して、左右方向で全長に亘って連続的に溶接されており、直線的な溶接金属80が形成されている。
【0048】
本実施形態のブラケット16では、板状分割体60a,60bと補強部材54が何れも板材とされており、それぞれ容易に形成可能な板状分割体60a,60bと補強部材54とを溶接によって相互に固定することで、簡単に製造可能である。しかも、第一筒状部56が、板状分割体60a,60bの第一溝状部62を組み合わせて形成されると共に、第二筒状部58,58が板状分割体60a,60bの第二溝状部64,64を組み合わせて形成されることから、それら筒状部56,58,58が板状分割体60a,60bにプレス等の曲げ加工を施すことで容易に形成される。
【0049】
このようにして形成されたブラケット16には、第一のブッシュ12と第二のブッシュ14,14が取り付けられる。即ち、ブラケット16の第一筒状部56に第一のブッシュ12の第一のアウタ筒部材20が圧入固定されると共に、ブラケット16の第二筒状部58に第二のブッシュ14の第二のアウタ筒部材36が圧入固定される。これにより、第一のブッシュ12と2つの第二のブッシュ14,14がブラケット16で連結されたモータマウント10が形成される。
【0050】
そして、モータマウント10は、
図3に示すように、第一のブッシュ12の第一のインナ軸部材18が、振動伝達系を構成する一方の部材であるモータを含むパワーユニット82に取り付けられると共に、第二のブッシュ14,14の第二のインナ軸部材34,34が、何れも、振動伝達系を構成する他方の部材である車両ボデー84に取り付けられる。これにより、パワーユニット82がモータマウント10を介して車両ボデー84に防振連結されている。
【0051】
また、モータマウント10の車両装着状態において、モータマウント10のブラケット16は、パワーユニット82と車両ボデー84の間で弾性的に支持されている。これにより、ブラケット16をマスとすると共に第一の本体ゴム弾性体22および第二の本体ゴム弾性体38,38をばねとするマス−バネ系が構成されている。このマス−バネ系の共振周波数は、後述する絶縁対象振動の周波数よりも低周波数に設定されており、好適には絶縁対象振動の周波数に対して1/√2倍以下に設定される。具体的には、マス−バネ系の共振周波数は、50Hz〜2000Hzの間に設定されることが望ましく、より好適には80Hz〜500Hzの間に設定される。
【0052】
また、本実施形態のモータマウント10では、第一のブッシュ12は、軸方向中央で広がる軸直平面に対して略対称形状とされており、その上下方向の弾性主軸が前後および左右の中央を上下に延びている。更に、第二のブッシュ14,14が、第一のブッシュ12と同様に、それぞれ軸方向中央で広がる軸直平面に対して略対称形状とされていると共に、ブラケット16が前後方向の中央で広がる面(
図6中の一点鎖線)に対して略対称形状とされており、それら第二のブッシュ14,14の複合された上下方向の弾性主軸が、前後および左右の中央を上下に延びて、第一のブッシュ12の弾性主軸と略一致している。
【0053】
さらに、モータマウント10では、ブラケット16が前後方向の中央で広がる面(
図6中の一点鎖線)に対して略対称形状とされていると共に、左右方向の中央で広がる面(
図5中の一点鎖線)に対しても略対称形状とされており、その重心が前後および左右の中央を上下に延びる仮想線上に位置している。これにより、第一のブッシュ12の弾性主軸および第二のブッシュ14,14の弾性主軸が、何れもブラケット16の重心を通るように設定されている。
【0054】
このようなモータマウント10の車両への装着状態において、パワーユニット82の上下振動がモータマウント10に入力されると、第一のブッシュ12の第一の本体ゴム弾性体22と、第二のブッシュ14,14の第二の本体ゴム弾性体38,38が弾性変形して、内部摩擦によるエネルギー減衰作用等に起因する防振効果が発揮される。
【0055】
また、入力振動が、ブラケット16と本体ゴム弾性体22,38,38で構成されるマス−バネ系の共振周波数よりも高周波、より具体的には、マス−バネ系の共振周波数の√2倍よりも高周波の絶縁対象振動である場合には、ブラケット16がスカイフックダンパー効果によって殆ど変位しない防振領域に入ることから、パワーユニット82と車両ボデー84の間で振動の伝達が遮断される。これにより、モータノイズ等の高周波振動に対して、優れた振動絶縁効果が発揮される。
【0056】
特に本実施形態では、第一のブッシュ12の弾性主軸と第二のブッシュ14,14の複合ばねの弾性主軸が、何れもブラケット16の重心を通るように設定されていることから、上下方向の振動入力時に、ブラケット16に対するモーメントの作用が低減乃至は回避されて、ブラケット16が上下変位以外の変位を生じ難くなっている。それ故、上記の如き振動絶縁効果を、目的とする振動周波数において有効に得ることができる。
【0057】
しかも、第一のブッシュ12の上下弾性主軸と第二のブッシュ14,14の複合ばねの上下弾性主軸とが互いに略一致しており、それらの弾性主軸上にブラケット16の重心が設定されていることから、ブラケット16に作用するモーメントをより効果的に低減して、振動絶縁効果を有効に得ることができる。
【0058】
また、モータマウント10では、筒状部56,58,58を備えたブラケット本体52が、板材にプレス等の曲げ加工を施すことで所定の形状とされた一組の板状分割体60a,60bを組み合わせて構成されている。それ故、板状分割体60a,60bの板厚寸法を筒状部56,58,58を含んだ全体に亘って略一定とすることができて、厚さの違いによる応力の集中を回避できる。しかも、筒状部56,58,58を周上で略一定の厚さに形成することが可能であり、特に内周面が略全体に亘って同一円筒面上に位置することから、第一のブッシュ12および第二のブッシュ14の圧入固定による耐荷重性能を、効率的に且つ安定して得ることができる。
【0059】
さらに、一組の板状分割体60a,60bは、重ね合わせ方向と略直交して広がる中間当接部66,66および端部当接片70,70において、相互に当接状態で重ね合わされるようになっていることから、溶接前に一組の板状分割体60a,60bを容易に位置決めすることができる。しかも、板状分割体60bの中間当接部66,66にそれぞれスロット68が形成されていると共に、板状分割体60bの端部当接片70,70にそれぞれ切欠き部72が形成されており、板状分割体60a,60bが、中間当接部66,66および端部当接片70,70において、筒状部56,58,58の外部からの作業で溶接固定される。このような外部からの溶接作業が可能とされていることから、溶接作業が簡単であり、溶接の品質安定化が図られ得る。
【0060】
また、ブラケット本体52は、隣り合う第一筒状部56と第二筒状部58,58の間(中間当接部66,66)が、上下方向の入力に対して脆弱な部分となるが、かかる脆弱部分が第一筒状部56と第二筒状部58,58の間に跨って延びる補強部材54で補強されている。これにより、板材を組み合わせて構成されたブラケット本体52を用いても、充分な剛性を備えたブラケット16を実現することができる。
【0061】
さらに、平板状とされた補強部材54は、第一筒状部56と第二筒状部58,58の共通接線方向に延びて配設されて、それら筒状部56,58,58の外周面に固着されている。これにより、隣り合う第一筒状部56と第二筒状部58,58との間で、上下方向における中央から補強部材までの距離が大きく設定される。それ故、隣り合って配置された第一筒状部56と第二筒状部58,58の間で、ブラケット16の断面係数が効率的に大きく設定されることから、比較的に断面形状の小さい板状の補強部材54であっても、ブラケット16の強度を充分に高めることができる。
【0062】
更にまた、本実施形態の補強部材54は、3つの筒状部56,58,58に跨って連続して延びていることから、少ない部品点数で有効な補強効果が発揮される。しかも、補強部材54の中央部分である屈曲部76が、第一筒状部56の前後方向中央部分の外周面に重ね合わされていると共に、補強部材54の両端部が、第二筒状部58,58の前後方向中央よりも外側にまで延び出している。これにより、上下方向の振動入力時に、溶接金属80に対する応力の集中が緩和されて、耐久性の向上が図られる。
【0063】
さらに、ブラケット16を構成する板状分割体60a,60bと補強部材54は、板厚寸法および幅寸法が略同じとされており、形成材料の共通化によって、低コスト化や製造や材料管理の容易化等が実現される。
【0064】
図10には、本発明に従う構造とされた防振装置の第二の実施形態として、自動車用のモータマウント90が示されている。モータマウント90は、第一のブッシュ12と第二のブッシュ14,14が、連結部材としてのブラケット92に取り付けられた構造を有している。このブラケット92は、第一のブッシュ12および第二のブッシュ14,14を取り付けられるブラケット本体94と、ブラケット本体94に固着される補強部材54とを、備えている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0065】
より具体的には、ブラケット本体94は、前後方向に長手の形状を有しており、前後方向の中央部分に形成された第一筒状部96と、第一筒状部96の前後両側に形成される2つの第二筒状部98,98とを備えている。更に、ブラケット本体94は、一組の板状分割体100a,100bを向かい合わせに重ね合わせて固定することで構成されている。
【0066】
板状分割体100は、長手板状とされており、前後方向中央部分において厚さ方向に開口して左右方向に延びる第一溝状部102が形成されていると共に、第一溝状部102の前後方向両側には、厚さ方向に開口して第一溝状部102と並列に延びる第二溝状部104がそれぞれ形成されている。それら3つの溝状部102,104,104は、前後方向で隣り合って連設されており、前後方向中央に位置する第一溝状部102が前後方向両側に位置する第二溝状部104,104よりも幅広且つ深底とされている。更に、溝状部102,104,104は、何れも、底部が略円弧状断面を有していると共に、開口部分105の曲率半径が前記底部の曲率半径よりも大きくされており、本実施形態では開口部分105が開口側に向かって次第に拡開する傾斜平板断面とされている。これにより、本実施形態の溝状部102,104,104は、第一の実施形態に示されている半円弧状断面の溝状部62,64,64に対して、開口部分105が幅方向外側に位置している。
【0067】
さらに、第一溝状部102と第二溝状部104,104の開口端部間には、それぞれ中間当接部106が形成されている。中間当接部106は、板状分割体100a,100bの重ね合わせ面側に凸の湾曲形状を有しており、溝状部102,104,104が湾曲形状で波状に連続して設けられている。なお、中間当接部106には、第一の実施形態の中間当接部66のようなスロット68は形成されない。更に、第二溝状部104,104の前後方向外側の開口端部には、第一の実施形態と同様に端部当接片70がそれぞれ一体形成されており、板状分割体100bの端部当接片70に切欠き部72が形成されている。
【0068】
このような構造とされた一組の板状分割体100a,100bは、向かい合わせに重ね合わされて、各板状分割体100a,100bの中間当接部106,106および端部当接片70,70がそれぞれ当接状態で突き合される。そして、それら板状分割体100a,100bは、中間当接部106,106が溶接されると共に、端部当接片70,70が溶接されることにより、相互に固定されて、ブラケット本体94が構成される。なお、中間当接部106,106は、それぞれ左右方向の全長に亘って連続して溶接されている。
【0069】
このブラケット本体94において、第一筒状部96が板状分割体100aの第一溝状部102と板状分割体100bの第一溝状部102とによって構成されていると共に、第二筒状部98,98が板状分割体100aの第二溝状部104,104と板状分割体100bの第二溝状部104,104とによって構成されている。本実施形態では、溝状部102,104,104の開口部分105が、何れも傾斜平板形状とされて底部よりも曲率半径を大きくされていることにより、各筒状部96,98,98の内周面上には、部分的に内法寸法が大きく設定された一対の拡大部108,108がそれぞれ形成されている。これにより、筒状部96,98,98の内周面が、筒状部96,98,98に圧入される第一,第二のブッシュ12,14,14の外周面に対して、板状分割体100a,100bの重ね合わせ面付近で幅方向外側に位置している。
【0070】
また、板状分割体100aの中間当接部106,106と板状分割体100bの中間当接部106,106は、それぞれ筒状部96,98,98の内周側から溶接されている。そこにおいて、筒状部96,98,98の内周側から中間当接部106,106に固着された溶接金属110(ビード)が、何れも、各筒状部96,98,98の内周面上に設けられた拡大部108,108に収容されている。これにより、溶接金属110は、第一のブッシュ12の第一のアウタ筒部材20および第二のブッシュ14の第二のアウタ筒部材36と干渉することなく、それら第一,第二のアウタ筒部材20,36の外周側に位置せしめられる。
【0071】
このような本実施形態に係るモータマウント90によれば、一組の板状分割体100a,100bを固定してブラケット本体94を形成する際に、筒状部96,98,98にトーチを差し入れることで、それら板状分割体100a,100bの溶接作業を容易に行うことができる。それ故、第一溝状部102と第二溝状部104,104の間にトーチを差し入れるためのスペースを設ける必要がなく、ブラケット本体94ひいてはモータマウント90の前後方向での小型化が図られる。
【0072】
図11,
図12には、本発明に従う構造とされた防振装置の第三の実施形態として、自動車用のモータマウント120が示されている。モータマウント120は、第一のブッシュ12と第二のブッシュ14,14が、連結部材としてのブラケット122に取り付けられた構造を有している。ブラケット122は、3つの筒状部56,58,58を備えるブラケット本体52に、板状の補強部材124が取り付けられた構造を有している。
【0073】
補強部材124は、角丸矩形の板状とされており、中央部分にはブラケット本体52の外形に対応する装着孔126が厚さ方向に貫通して形成されている。そして、ブラケット本体52が装着孔126に挿入されて、補強部材124が筒状部56,58,58の軸方向と略直交して広がるように配置されると共に、装着孔126の周縁部分が溶接されることで、それらブラケット本体52と補強部材124が相互に溶接固定されている。なお、
図11,
図12からも明らかなように、補強部材124の厚さ方向が、筒状部56,58,58の中心軸方向と略一致している。
【0074】
このような本実施形態のモータマウント120によれば、補強部材124が筒状部56,58,58の軸方向と略直交して広がっており、補強部材124の厚さ方向が主たる振動荷重の入力方向である上下方向に対して略直交している。それ故、板状の補強部材124によって、上下方向の入力に対する強度を充分に得ることができる。
【0075】
しかも、ブラケット本体52が補強部材124の装着孔126に挿入されることから、ブラケット本体52を構成する板状分割体60a,60bの分離が補強部材124で防止されて、ブラケット本体52の耐荷重性の向上も図られる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、1つの第一のブッシュ12と2つの第二のブッシュ14,14が配設された構造を例示したが、連結部材に取り付けられる第一のブッシュおよび第二のブッシュの数は3つに限定されるものではなく、第一のブッシュと第二のブッシュが1つずつ配設されていても良いし、それらブッシュが4つ以上であっても良い。尤も、上下振動の入力時に連結部材に対して作用するモーメントを簡単に低減乃至は解消するためには、連結部材が3つ以上のブッシュで支持されることが望ましい。
【0077】
さらに、ブッシュとしては、インナ軸部材の外周面に本体ゴム弾性体を固着したアウタレスタイプや、インナ軸部材を連結部材の筒状部に挿入配置した状態で、それらインナ軸部材と筒状部の径方向間に本体ゴム弾性体を加硫成形する加硫接着タイプ等も採用され得る。更にまた、防振性能(振動減衰性能)の向上等を目的として、各種公知の流体封入式筒形防振装置を、第一,第二のブッシュとして採用することも可能である。
【0078】
更にまた、前記実施形態では2つの第二のブッシュ14,14が互いに同一の構造とされていたが、このように複数の第二のブッシュが配設される場合には、それら第二のブッシュが互いに異なる構造とされていても良い。同様に、複数の第一のブッシュが配設される場合には、それら第一のブッシュは互いに異なる構造であっても良い。
【0079】
また、一組の板状分割体の固定手段としては、溶接による固定の他、ボルト固定やかしめ固定等の手段を採用することもできる。
【0080】
また、補強部材は、板状に限定されるものではなく、棒状等であっても良い。更に、補強部材は、必ずしも筒状部の接線方向に延びていなくても良く、例えば、筒状部の外周面に沿って延びていても良いし、両端部が筒状部の外周面に対して略直交した状態で固定されていても良い。
【0081】
また、補強部材は、要求される耐荷重性能等によっては、筒状部に対して上下両側に設けられ得る。その場合には、上下両側の補強部材を一体で設けても良いし、それぞれ別体とすることもできる。
【0082】
また、前記実施形態では、本発明の防振装置を自動車のモータマウントに用いる例を示したが、本発明の防振装置は、例えば、エンジンマウントやトルクロッド等にも適用され得る。更に、本発明の適用範囲は、自動車用に限定されるものではなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる防振装置にも、好適に適用され得る。