特許第5986532号(P5986532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986532
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】建物の床暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20160823BHJP
   F24F 1/00 20110101ALI20160823BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F24D3/00 B
   F24D3/00 E
   F24F1/00 331
   F24F5/00 101A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-80884(P2013-80884)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-202453(P2014-202453A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】太田 勇
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−235955(JP,A)
【文献】 特開平05−026464(JP,A)
【文献】 実開平05−054936(JP,U)
【文献】 特開2006−177583(JP,A)
【文献】 特開昭60−044732(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157502(WO,A1)
【文献】 特開平07−042265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00− 3/18
F24D 17/00−17/02
F24F 1/00
F24F 1/02
F24F 1/06− 1/68
F24F 5/00
F24J 2/00− 2/04
F24J 2/28− 2/30
F24J 2/34− 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根面に、屋根葺材が前記屋根面との間に空気流通層を介在させた状態で設けられ、
前記建物の屋根裏に熱交換器が設けられ、
前記空気流通層の空気を前記熱交換器に送り込む空気流通路が前記空気流通層から前記熱交換器まで配され、
前記建物の床に配管され床を暖房する放熱管が設けられ、
前記熱交換器と前記放熱管との間に、液状熱媒体を循環させる循環パイプが配管され、
前記空気流通路により前記熱交換器に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器によって、前記循環パイプにより前記熱交換器に送り込まれた液状熱媒体に移動され、
前記循環パイプにより前記放熱管に送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記放熱管によって放熱される建物の床暖房システムであって、
前記建物の屋根裏に、前記建物内の部屋の空気を除湿するデシカント除湿器が設けられ、
前記熱交換器と前記デシカント除湿器との間に、液状熱媒体を循環させる第二循環パイプが配管され、
前記空気流通路により前記熱交換器に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器によって、前記第二循環パイプにより前記熱交換器に送り込まれた液状熱媒体に移動され、
前記第二循環パイプにより前記デシカント除湿器に送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記デシカント除湿器による除湿に利用され、
かつ、前記建物の外又は内に、水を貯留するとともにその水に接触する内部熱交換器を有した蓄熱タンクが設置され、
前記熱交換器と前記内部熱交換器との間に、液状熱媒体を循環させる第三循環パイプが配管され、
前記空気流通路により前記熱交換器に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器によって、前記第三循環パイプにより前記熱交換器に送り込まれた液状熱媒体に移動され、
前記第三循環パイプにより前記内部熱交換器に送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記内部熱交換器によって前記蓄熱タンク内の水に移動されてなり、
さらに、前記空気流通路は、ダクト及びチャンバーを備え建物の屋根裏に設けられており、前記循環パイプ、第二循環パイプ、第三循環パイプは、前記ダクト及びチャンバーよりも細く形成されていることを特徴とする建物の床暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床暖房システムに関し、特に、太陽光で加熱された空気を暖房等に利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光によって加熱された空気(暖気)を利用した床下暖房システムの一例として特許文献1に記載ものが知られている。
この床下暖房システムは以下のような構成となっている。
すなわち、太陽電池モジュールが建物の屋根面との間に空気流通層を介在させた状態でその屋根面上に設けられ、ダクトがこの空気流通層から建物の内部を経由して床下まで配管されている。
また、床下には、基礎とコンクリートと床とに囲われた空間が設けられており、ダクトの下端部が床下において略水平に配置されており、そのダクトの外周面には吹出口が形成されている。そして、この吹出口から暖気を吹き出し、その暖気の熱を1階の部屋の床暖房に利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気の体積比熱が低いので、従来の技術では、暖気を床下に供給し続けることによって床を暖房する必要がある。そのため、屋根から床下まで配管されたダクトを太くし、ダクトを流れる暖気の流量を増やす必要がある。太いダクトは、設置スペースを多くとってしまううえ、設置する箇所も制限されてしまう。
また、ダクトから床下に吹き出された暖気は、床下から建物の外等に排出する必要がある。排気とともに熱が建物の外に放出されるので、熱の利用効率が低い。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、建物内のスペースを出来る限り確保することができるとともに、熱の利用効率が高い床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、例えば図1及び図2に示すように、建物1の屋根面4aに、屋根葺材(例えば、太陽電池モジュール5、透明ガラスモジュール5A)が前記屋根面4aとの間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられ、前記建物1の屋根裏に熱交換器30が設けられ、前記空気流通層Sの空気を前記熱交換器30に送り込む空気流通路10が前記空気流通層Sから前記熱交換器30まで配され、前記建物1の床16に配管され床16を暖房する放熱管42が設けられ、前記熱交換器30と前記放熱管42との間に、液状熱媒体を循環させる循環パイプ41が配管され、前記空気流通路10により前記熱交換器30に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器30によって、前記循環パイプ41により前記熱交換器30に送り込まれた液状熱媒体に移動され、前記循環パイプ41により前記放熱管42に送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記放熱管42によって放熱される建物の床暖房システムであって、
前記建物1の屋根裏に、前記建物1内の部屋の空気を除湿するデシカント除湿器62が設けられ、前記熱交換器30と前記デシカント除湿器62との間に、液状熱媒体を循環させる第二循環パイプ61が配管され、前記空気流通路10により前記熱交換器30に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器30によって、前記第二循環パイプ61により前記熱交換器30に送り込まれた液状熱媒体に移動され、前記第二循環パイプ61により前記デシカント除湿器62に送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記デシカント除湿器62による除湿に利用され、
かつ、前記建物1の外又は内に、水を貯留するとともにその水に接触する内部熱交換器(例えば、内部配管52a)を有した蓄熱タンク52が設置され、前記熱交換器30と前記内部熱交換器52aとの間に、液状熱媒体を循環させる第三循環パイプ51が配管され、前記空気流通路10により前記熱交換器30に送り込まれた空気の熱が、前記熱交換器30によって、前記第三循環パイプ51により前記熱交換器30に送り込まれた液状熱媒体に移動され、前記第三循環パイプ51により前記内部熱交換器52aに送り込まれた液状熱媒体の熱が、前記内部熱交換器52aによって前記蓄熱タンク52内の水に移動されてなり、
さらに、前記空気流通路10は、ダクト及びチャンバーを備え建物の屋根裏に設けられており、前記循環パイプ41、第二循環パイプ61、第三循環パイプ51は、前記ダクト及びチャンバーよりも細く形成されていることを特徴とする建物の床暖房システムである。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、放熱管42と熱交換器30との間を循環パイプ41によって循環される液状熱媒体は空気よりも体積比熱が高く、より多くの熱量を蓄えるので、循環パイプ41を細くすることによって液状熱媒体の流量を低くしても、充分な熱量が熱交換器30から放熱管42に移動される。よって、循環パイプ41を細くすることができ、循環パイプ41の設置スペースが狭くても済み、建物1内にスペースを確保することができる。
また、液状熱媒体が循環されるので、液状熱媒体の排出に伴って熱を排出することがない。それゆえ、熱を有効利用することができる。
【0009】
また、請求項に係る発明によれば、放熱管42が床16に配管されているので、床16を効率よく暖房(蓄熱)することができる。
しかも、請求項1に係る発明によれば、熱交換器30が屋根に近い屋根裏に設置されているので、屋根面4aから熱交換器30までの空気流通路10の経路を短くすることができるうえ、空気流通路10を屋根裏に設置することができる。そのため、空気の流量を増やすべく空気流通路10を太くしても、建物内の部屋等の居住スペースを大きく確保することができる。
【0011】
さらに、請求項に係る発明によれば、空気流通層Sにおいて回収した太陽熱をデシカント除湿器62の除湿に利用することができ、省エネな建物1を提供することができる。
【0013】
加えて、請求項に係る発明によれば、空気流通層Sにおいて回収した太陽熱を蓄熱タンク52内の水の加熱・保温に利用することができ、省エネな建物1を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、循環パイプの設置スペースを狭くして、建物内にスペースを確保することができる。また、液状熱媒体の排出に伴う廃熱がなく、熱の利用効率が高い。
また、屋根上であえて液状熱媒体を循環させないことで、屋根漏水のリスクを回避することができる。更に、熱用途を多様化したことで、変動幅の大きい太陽熱集熱量(温度)をより有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る床暖房システムを備えた建物の要部を示す縦断面図である。
図2】同実施形態に係る床暖房システムの概略構成を示す図面である。
図3】同実施形態に係る建物の屋根及びそれに設置された太陽電池モジュールを示す断面図である。
図4】同実施形態に係る建物の屋根及びそれに設置された太陽電池モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。そのため、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
図1は、建物1の要部を示す縦断面図である。図2は、この建物1に適用された床暖房システム8の概略構成を示す図である。
【0020】
図1に示すように、建物1は、床暖房システム8と、基礎2と、基礎2上に構築された建物本体3と、この建物本体3上に設けられた屋根4とを備えたものである。
【0021】
図1では建物本体3が1階建てであるが、複数階建てであってもよい。建物本体3の1階には部屋15(例えば、リビングダイニング)が設けられている。部屋15に空調機(例えば、クーリングユニット、ヒートポンプ、気化放熱式涼風機等)70が設けられており(図2参照)、夏季は空調機70によって部屋15が冷房される。
【0022】
部屋15の床16の下の地盤上には、基礎2の床版を構成する基礎スラブ(コンクリートスラブ)20が打設されており、この基礎スラブ20の周縁部には立上部21が基礎スラブ20と一体的に打設されている。基礎スラブ20の周縁部、つまり立上部21には床下17側を向く側面に断熱材(断熱層)22が設けられている。断熱材22は断面略L字形に形成されており、基礎スラブ20の外周縁部から立上部21の上端にかけて設けられている。また、建物本体3の外には蓄熱タンク(貯湯タンク)52が設けられており、給湯器(例えば、ヒートポンプ型給湯器)で加熱された温水がこの蓄熱タンク52に貯留される。
【0023】
屋根4は、複数の屋根パネルを建物本体3上に敷設してなるものである。屋根パネルは框材を矩形枠状に組み立てるとともに、この矩形枠の内部に補強用の桟材を縦横に組み付け、さらに矩形枠の上面に合板等の面材を取り付けてなるものである。また、面材の裏面には集熱効率を高めるために断熱材が設けられている。
【0024】
屋根4の上面には、棟から軒先に向かって下り勾配を有した屋根面4aが形成されている。この屋根面4aには、屋根4を覆う平板状屋根葺材としての複数のシースルー型太陽電池モジュール5が屋根面4aとの間に空気流通層Sを介在させた状態で設けられている。なお、シースルー型太陽電池モジュール5に代えて、通常の不透明なタイプの太陽電池モジュールを設けてもよい。
シースルー型太陽電池モジュール5は、矩形薄板状をなすものであり、単結晶シリコンのPVセルを強化ガラス(上面)と透明バックシート(下面)との間に、EVA樹脂を使って封入したものであり、PVセルとPVセルとの間に照射された太陽光が透明バックシートを透過することによって、屋根面4aに吸収される日射量を確保するようになっている。
【0025】
図3は、屋根4及びシースルー型太陽電池モジュール5の断面図である。図3に示す断面は、軒と平行な鉛直断面である。図3に示すように、前記シースルー型太陽電池モジュール5(以下、太陽電池モジュール5と略称する。)の周縁部には、該周縁部を囲む四角枠状のフレーム6が設けられている。
一方、屋根面4aには複数の支持レール7が固定されており、これら支持レール7が棟方向に所定間隔で配列されている。フレーム6が隣り合う支持レール7に取り付けられ、太陽電池モジュール5が屋根面4aから離れた状態で隣り合う支持レール7の間に架設され、太陽電池モジュール5がフレーム6及び隣り合う支持レール7によって屋根面4aの上に支持される。これによって、太陽電池モジュール5と屋根面4aとの間に隙間が形成され、その隙間が空気流通層Sとなる。
【0026】
太陽電池モジュール5は屋根4の傾斜方向に複数枚設置されるが、棟近傍には、太陽電池モジュール5に代えて、屋根4を覆う平板状屋根葺材としての透明ガラスモジュール5Aが設置される。透明ガラスモジュール5Aは、PVセルがないことを除いて太陽電池モジュール5と同様の構造を有する。透明ガラスモジュール5Aの屋根面4aへの取り付けは、太陽電池モジュール5の屋根面4aの取り付けと同様であり、透明ガラスモジュール5Aと屋根面4aとの間に空気流通層Sが形成される。太陽電池モジュール5の代わりに透明ガラスモジュール5Aが棟近傍において屋根4を覆うので、空気流通層Sの温度上昇と集熱向上を図ることができる。
【0027】
図4は、屋根4及び太陽電池モジュール5の断面図である。図4に示す断面は、軒と直交する鉛直断面である。図4に示すように、空気流通層Sは、太陽電池モジュール5の軒先側に取り付けられた面戸4bの隙間4cと、屋根面4aの棟側に形成されて屋根裏14に通じる開口部4dとに連通している。また、開口部4dには、管状の空気流通路10が接続されている。開口部4dは複数設けられ、これら開口部4dが棟方向に沿って配列されている。
【0028】
ここで、屋根面4aの棟側に形成された開口部4dに空気流通路10を接続したのは、空気流通層S内で加熱された空気を屋根4の棟側からそのまま空気流通路10に吸い込むことができるためである。つまり、軒先側から取り込んだ空気は棟側に上昇するに伴い加熱され温度が上昇するので、空気流通路10を棟側に設けた方が軒先側に設ける場合よりも集熱率が高くなるため好ましい。
また、空気流通層Sに雨水等が流入しないように、空気流通層Sの周縁部が止水されており、開口部4dを通じた屋内への漏水が防止されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、空気流通路10はダクト10a、チャンバー10b、ダクト10c、ダクト10d及びダクト10eを備えており、空気流通路10の一端部から他端部の間の中途部にはファンユニット11及び熱交換器30が設けられている。ファンユニット11は、空気流通路10のうちファンユニット11よりも上流側(開口部4d側)に負圧を発生させ、ファンユニット11よりも下流側に正圧を発生させるものである。空気流通層S内の加熱された空気は、ファンユニット11によって空気流通層Sから空気流通路10に吸い込まれて、熱交換器30へ送られる。
【0030】
ダクト10a、チャンバー10b、ダクト10c、ファンユニット11、ダクト10d及び熱交換器30は屋根裏14に設置されている。
ダクト10aが複数設けられ、これらダクト10aの一端部が開口部4dにそれぞれ接続され、これらダクト10aの他端部がチャンバー10bに接続されている。これらダクト10aがこれらの間に所定間隔を置いてチャンバー10bの軸方向に沿って配列されている。
チャンバー10bは屋根の棟方向に長尺な筒状のものであり、チャンバー10bの端部は建物本体3の妻壁に設けられた換気ガラリに接続されている。更にチャンバー10bの外周部には、前記複数のダクト10aがチャンバー10bの軸方向に所定間隔を置いて接続されている。
ダクト10cの一端部はチャンバー10bの外周部に接続され、ダクト10cの他端部はファンユニット11に接続されている。
ダクト10dの一端部はファンユニット11に接続され、ダクト10dの他端部は熱交換器30に接続されている。
ダクト10eの一端部は熱交換器30に接続されており、空気流通層Sから熱交換器30に送られた空気が熱交換器30からダクト10eへ送り出される。ダクト10eの他端部は、建物本体3の外壁に形成された排気口、建物本体3の室内の内壁に形成された吹出口、建物本体3の床下に設けられた吹出口付き配管又は他の熱交換器等に接続されている。
なお、図1及び図2ではファンユニット11が熱交換器30よりも空気流通路10の上流側に設けられているが、下流側に設けられてもよい。
【0031】
チャンバー10b内には、このチャンバー10bとダクト10cとの接続部を開閉する図示しない第1電動ダンパと、チャンバー10bの端部を開閉する図示しない第2電動ダンパとが設けられており、夏季の日中は第1電動ダンパを閉じるとともに、第2電動ダンパを開けることによって、空気流通層S内の加熱された空気を妻壁の換気ガラリから自然排気できるようになっている。
第1および第2電動ダンパは図示しないコントローラに接続され、このコントローラは前記透明ガラスモジュールの近傍の空気流通層Sに設置された図示しない温度センサに接続されている。
そして、第1および第2電動ダンパは、空気流通層Sの温度変化に伴って、前記コントローラによって自動的に開閉されるようになっている。例えば、夏季の日中には、第1電動ダンパを閉じるとともに、第2電動ダンパを開けることによって、空気流通層S内の加熱された空気を妻壁の換気ガラリから自然排気する。一方、冬季の日中には、第1電動ダンパを開けるとともに、第2電動ダンパを閉じることによって、空気流通層Sで加熱された空気をダクト10a、チャンバー10b、ダクト10c、ダクト10d及び熱交換器30に流通させ、その空気を熱交換器30の熱交換に利用することができる。
【0032】
熱交換器30は、空気流通層Sから熱交換器30に送り込まれた空気の熱を、循環パイプ41,51,61によって熱交換器30に送り込まれた状熱媒体(例えば、水)に移動させる。これによって、空気流通層Sから熱交換器30に送り込まれた空気が冷却され、循環パイプ41,51,61を通じて熱交換器30に送り込まれた液状熱媒体が加熱される。
【0033】
循環パイプ41,51,61はダクト10a,10c,10d及びチャンバー10bよりも細い。
循環パイプ41が2本設けられ、これら循環パイプ41の一端部が熱交換器30に接続されて、これら循環パイプ41の一端部同士が熱交換器30の内部配管を介して通じている。2本の循環パイプ51及び2本の循環パイプ61についても同様である。循環パイプ41の一端部同士、循環パイプ51の一端部同士及び循環パイプ61の一端部同士をそれぞれ接続する内部配管が熱交換器30の内部において葛折り状に蛇行して設けられ、これによって、空気流通層Sから熱交換器30に送り込まれた空気とこれら内部配管内の液状熱媒体との間の熱交換効率が高くなっている。
【0034】
これら循環パイプ41は、天井及び部屋15の床16等を貫通して、屋根裏14から部屋15の床下17まで配管されている。一方の循環パイプ41の他端部が放熱管42の一端部に接続され、他方の循環パイプ41の他端部が放熱管42の他端部に接続され、これら循環パイプ41の他端部同士が放熱管42を介して通じている。また、循環パイプ41の中途部には循環ポンプ43が設けられており、この循環ポンプ43によって液状熱媒体が循環パイプ41を通じて熱交換器30と放熱管42との間で循環される。図1では循環パイプ41が部屋15を経由して屋根裏14と床下17との間に配管されているが、部屋15以外の部屋又は壁の内部等を経由して配管されてもよい。
【0035】
放熱管42はダクト10a,10c,10d,10e及びチャンバー10bよりも細い。放熱管42は部屋15の床下17全体に水平に配置されている。本実施の形態では、放熱管42は、平面視において葛折り状に蛇行して配置されている。図1及び図2では、放熱管42が床16から離れて基礎スラブ20上に配置されているが、放熱管42が床16に配管されてもよい。つまり、放熱管42が床16の裏面に接触した状態で床16の裏面に配管されていてもよいし、床16の表面と裏面との間の床17の内部に配管されていてもよい。
放熱管42内を流動する液状熱媒体の熱が床16及び床下17へ放熱され、床16が放熱管42によって暖房される。放熱により冷却された液状熱媒体が循環パイプ41を通って熱交換器30に送られ、その液状熱媒体が熱交換器30によって加熱された後に再び放熱管42に送られる。このような液状熱媒体の循環によって床16及び部屋15が適度な温度に温められる。つまり、放熱管42は、その放熱管42内を流れる液状熱媒体と床下17の空気との間で熱交換を行う熱交換器として機能する。なお、放熱管42の放熱効果を向上させるべく、放熱フィンが放熱管42の外周面に設けられていてもよい。
【0036】
2本の循環パイプ51は、建物本体3の外壁を貫通して、屋根裏14から屋外の蓄熱タンク52まで配管されている。これら循環パイプ51の他端部が蓄熱タンク52に接続されて、これら循環パイプ51の他端部同士が蓄熱タンク52の内部配管(内部熱交換器)52aを介して通じており、その内部配管52aが蓄熱タンク52内の水に接触する。循環パイプ51の中途部には循環ポンプ53が設けられており、この循環ポンプ53によって液状熱媒体が循環パイプ51を通じて熱交換器30と蓄熱タンク52との間で循環される。なお、図1では循環パイプ51が部屋15を経由して屋根裏14と蓄熱タンク52との間に配管されているが、部屋15以外の部屋又は壁の内部等を経由して配管されてもよい。
【0037】
熱交換器30から蓄熱タンク52に供給された液状熱媒体が蓄熱タンク52の内部配管52aを流れている際に、蓄熱タンク52内の水と内部配管52a内の液状熱媒体との間で熱交換が行われる。これにより、蓄熱タンク52内の水が加熱及び保温され、内部配管52a内の液状熱媒体が冷却される。つまり、蓄熱タンク52内に設けられた内部配管52aは、その内部配管52a内を流れる液状熱媒体と蓄熱タンク52内に貯留された水との間で熱交換を行う熱交換器である。なお、蓄熱タンク52は建物本体3内に設置されてもよい。
【0038】
2本の循環パイプ61の他端部がデシカント除湿器62に接続され、これら循環パイプ61の他端部同士がデシカント除湿器62の内部熱交換器62aを介して通じている。循環パイプ61の中途部には循環ポンプ63が設けられており、この循環ポンプ63によって液状熱媒体が循環パイプ61を通じて熱交換器30とデシカント除湿器62との間で循環される。デシカント除湿器62には、内部熱交換器62aのほかにデシカントローター(乾燥剤ローター)62bが内蔵されている。
【0039】
このデシカント除湿器62にダクト64,65,66,67が接続されている。ダクト64,65は部屋15に開口しており、ダクト66,67は建物本体3内の他の部屋に開口している。部屋15内の空気はダクト64又はデシカント除湿器62に設けられたファンによってダクト64を通ってデシカント除湿器62に引き込まれ、その空気がデシカントローター62bに接触しつつそのデシカントローター62bを通過することによって除湿され、除湿された空気がダクト65を通って部屋15に吹き出すようになっている。他の部屋の空気も同様にして、デシカントローター62bによって除湿される。ここで、ダクト66は他の部屋からデシカント除湿器62へ空気を送る経路であり、ダクト67がデシカント除湿器62からその部屋へ空気を送る経路である。
【0040】
デシカント除湿器62は、循環ポンプ63によって循環パイプ61を通じて熱交換器30から送り込まれてきた液状熱媒体の熱を利用して、ダクト64,65,66,67によって流通される空気を除湿するものである。本実施の形態では、デシカント除湿器62に送り込まれた液状熱媒体の熱によって、デシカントローター62bが再生される。具体的には、建物本体3の外壁で開口したダクト68,69がデシカント除湿器62に接続され、外気(再生空気)がダクト68又はデシカント除湿器62に設けられたファンによってダクト68を通ってデシカント除湿器62に送り込まれ、その再生空気が内部熱交換器62aに接触することによって液状熱媒体の熱で加熱され(再生空気は昇温の結果、湿度が低下する)、その再生空気がデシカントローター62bに接触しつつそのデシカントローター62bを通過することによって、デシカントローター62bが再生される。デシカントローター62bを通過した再生空気はダクト69を通って建物本体3の外に排出される。また、デシカントローター62bを回転させることによって、デシカントローター62bのうち再生された部分がダクト64,65,66,67の空気から吸湿し、吸湿した部分が再生空気によって再生される。
【0041】
このデシカント除湿器62に接続されたダクト64,65,66,67,68,69は、循環パイプ41,51,61よりも太い。
【0042】
本実施の形態によれば、以下のような効果及び利点がある。
(1) 循環パイプ41,51,61によって循環される液状熱媒体は空気よりも比熱や体積比熱が高くて、より多くの熱量を蓄える。つまり、液状熱媒体は、空気と比較して、少ない体積でもより多くの熱量を熱交換器30から放熱管42、蓄熱タンク52及びデシカント除湿器62へ運搬する。それゆえ、循環パイプ41,51,61を細くして液状熱媒体の体積流量を少なくしても、放熱管42、蓄熱タンク52及びデシカント除湿器62において十分に熱が交換される。よって、循環パイプ41,51,61を細くすることができる。
【0043】
(2) 循環パイプ41,51,61を細くすることによって、建物1の屋内にスペースを確保することができるとともに、循環パイプ41,51,61の配管経路についての設計の自由度が向上する。特に、循環パイプ41は従来使用していた縦ダクト(特許文献1に記載のダクト(13c))から置き換えられたものであり、その縦ダクトよりも循環パイプ41が細いので、部屋15にスペースを確保することができる。
【0044】
(3) 放熱管42も細くすることができ、床下17のスペースを確保することができるとともに、放熱管42を床下17に容易に配管することができる。
【0045】
(4) 空気流通路10が太いので、空気流通層Sから熱交換器30までの空気の流量を増やすことができ、屋根面4aの熱を効率よく熱交換器30まで移動させることができる。よって、熱交換器30において大量の熱が循環パイプ41,51,61の液状熱媒体に移動され、放熱管42、蓄熱タンク52及びデシカント除湿器62の加熱効率が向上する。
【0046】
(5) 熱交換器30が屋根4に近い屋根裏14に設置されているので、屋根面4aから熱交換器30までの空気流通路10の経路を短くすることができるうえ、空気流通路10を屋根裏14に設置することができる。循環パイプ41,51,61よりも太い空気流通路10が屋根裏14に設置されているので、部屋15等の居住スペースを大きく確保することができる。
【0047】
(6) 放熱管42に送り込まれた液状熱媒体は排出されるのではなく、循環される。それゆえ、熱を有効利用することができる。また、従来では、屋根で加熱された空気が建物内の配管を通じて床下に送り込まれ、その空気が熱と共に床下から屋外に排出されていたので(特許文献1参照)、熱を有効利用することができなかった。それに対して、本実施形態では、放熱管42に送り込まれた液状熱媒体が排出するのではなく、循環される。それゆえ、本実施形態によれば、熱を有効利用することができる。
【0048】
(7) 自然エネルギーを利用して、蓄熱タンク52内の水を加熱・保温することができる。更に、デシカント除湿器62のデシカントローター62bを再生することができるとともに、デシカント除湿器62の除湿効果を継続することができる。よって、省エネな建物1を実現することができる。また、熱用途を多様化したことで、変動幅の大きい太陽熱集熱量(温度)をより有効に活用することができる。
【0049】
(8) 循環パイプ41,51,61が熱交換器30に接続されているから、熱交換器30をマルチタスク化することができる。つまり、熱交換器30は、床16の暖房のほかに、蓄熱タンク52内の水の加熱・保温やデシカント除湿器62の乾燥剤再生・除湿に利用される。それゆえ、循環パイプ41,51,61を別々に熱交換器に接続した場合と比較して、床暖房システム8をシンプルな構成とすることができる。
【0050】
(9) 液状熱媒体を利用して熱の運搬を行ったので、床16を効率よく加熱することができる。蓄熱タンク52内の水の加熱・保温やデシカント除湿器62の乾燥剤再生・除湿も効率よく行われる。
【0051】
(10) 屋根4上の空気を空気流通路10によって熱交換器30に取り込み、液状熱媒体を屋根4上であえて循環させていない。そのため、屋根4における漏水のリスクを回避することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 建物
4a 屋根面
5 太陽電池モジュール(平板状屋根葺材)
10 空気流通路
14 屋根裏
15 部屋
16 床
17 床下
30 熱交換器
41 循環パイプ
42 放熱管
51 循環パイプ(第三循環パイプ)
52 蓄熱タンク
52a 内部配管(内部熱交換器)
61 循環パイプ(第二循環パイプ)
62 デシカント除湿器
62a 内部熱交換器
S 空気流通層
図1
図2
図3
図4