(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記漏れ止め部材は、前記複数の側壁部材の前記側当接部を外側から閉塞する第1の部材と、前記複数の側壁部材と前記第1の部材との当接部を外側から閉塞する第2の部材とを含む、請求項2記載の鋳型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシリコン鋳造用鋳型は、1つの底部材と4つの側部材とにより構成される。しかしながら、この鋳型内にシリコン融液を注入すると、底面部材と側部材との間または複数の側部材間からシリコン融液が漏れ出す可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、シリコン融液の漏れ出しが防止されたシリコン鋳造用鋳型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る鋳型は、シリコン鋳造用の鋳型であって、炭素繊維強化炭素複合材により形成される複数の鋳型部材と、漏れ止め部材とを備え、複数の鋳型部材が組み合わされることによりシリコン原料が収容される収容空間が形成され、漏れ止め部材は、複数の鋳型部材同士の当接部を覆うように設けられるものである。
【0007】
この鋳型においては、複数の鋳型部材が組み合わされることにより収容空間が形成される。鋳型の収容空間に溶融されたシリコン原料(シリコン溶液)が注入されることにより、収容空間にシリコン溶液が収容される。あるいは、鋳型の収容空間に収容された固体状のシリコン原料が加熱されることにより、収容空間内のシリコン原料がシリコン融液となる。ここで、複数の鋳型部材同士の当接部は、漏れ止め部材により覆われる。これにより、鋳型の収容空間内のシリコン融液が複数の鋳型部材間から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0008】
(2)複数の鋳型部材は、収容空間の底部に位置する底部材と、収容空間の側部に位置する複数の側壁部材とを含み、底部材に複数の側壁部材が当接するとともに複数の側壁部材が互いに当接することにより収容空間が構成され、漏れ止め部材は、複数の側壁部材同士の当接部である側当接部を外側から閉塞するように設けられてもよい。
【0009】
この場合、収容空間は、底部材に複数の側壁部材が当接されるとともに複数の側壁部材が互いに当接されることにより構成される。これにより、鋳型の構成を単純化することができる。また、複数の側壁部材同士の当接部である側当接部が漏れ止め部材により外側から閉塞される。これにより、鋳型の収容空間内のシリコン融液が複数の側壁部材の側当接部から外部へ漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0010】
(3)漏れ止め部材は、複数の側壁部材の側当接部を外側から閉塞する第1の部材と、複数の側壁部材と第1の部材との当接部を外側から閉塞する第2の部材とを含んでもよい。
【0011】
この場合、複数の側壁部材の側当接部が第1の部材により外側から閉塞され、複数の側壁部材と第1の部材との当接部が第2の部材により外側から閉塞される。これにより、互いに隣合う複数の側壁部材の側当接部からのシリコン融液の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0012】
(4)第1および第2の部材は、L字状に一体的に形成されてもよい。
【0013】
この場合、第1および第2の部材が一体的に形成されるので、漏れ止め部材の強度が向上する。また、第1の部材と第2の部材との間に接合部分がないので、第1の部材と第2の部材との間からのシリコン融液の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0014】
(5)鋳型は、複数の側壁部材および漏れ止め部材の外周縁を取り囲むように設けられる一体の補強部材をさらに備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、鋳型の収容空間へのシリコン溶液の収容時、または鋳型の収容空間内のシリコン原料の溶融時に複数の側壁部材および漏れ止め部材の厚みを大きくすることなく側壁部材または漏れ止め部材が外側へたわむことを防止することができる。
【0016】
(6)補強部材は、複数の面状織布が積層されることより形成される面状体であり、複数の面状織布は、2次元に編み込まれた面状織布および/または複数の1次元の織布が繰り返し直交することより形成される面状織布を含み、面状体を構成する複数の面状織布が複数の側壁部材および漏れ止め部材の外側の側面と直交するように補強部材が配置されてもよい。
【0017】
この構成によれば、補強部材の厚み方向が複数の側壁部材および漏れ止め部材の外側の側面と直交する状態で補強部材を配置する場合に比べて補強部材のせん断強度を大きくすることができる。これにより、補強部材により複数の側壁部材および漏れ止め部材を支持する力を大きくすることができる。
【0018】
(7)漏れ止め部材は、炭素繊維強化炭素複合材により形成されてもよい。
【0019】
この場合、漏れ止め部材は複数の鋳型部材と同一の材質により形成される。そのため、漏れ止め部材を複数の鋳型部材に容易に接合することができる。
【0020】
(8)複数の鋳型部材は多孔質材料からなり、収容空間内における複数の鋳型部材の孔に化学気相含浸処理によりマトリックスが充填されてもよい。
【0021】
この場合、多孔質材料により形成される複数の鋳型部材の内側の孔にマトリックス(炭素材料)が充填される。これにより、複数の鋳型部材の孔を通してシリコン融液が外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0022】
(9)収容空間内における複数の鋳型部材の面に離型材層が形成されてもよい。
【0023】
この場合、離型材層により複数の鋳型部材を通してシリコン融液が外部へ漏れ出すことを防止することができる。また、凝固したシリコンを鋳型から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シリコン鋳造用鋳型からのシリコン融液の漏れ出しが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態に係るシリコン鋳造用鋳型(以下、鋳型と呼ぶ)について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(1)鋳型の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る鋳型の外観斜視図である。
図2は、
図1の鋳型の平面図である。
図1および
図2に示すように、鋳型100は、底部材10、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30、4つの角部材40、4つの角部材50および4つの補助部材60を含む。
【0028】
底部材10、側壁部材20,30、角部材40,50および補助部材60は、炭素繊維強化炭素複合材(C/Cコンポジット)により形成される。また、底部材10、側壁部材20,30、角部材40,50および補助部材60の表面には、CVI(化学気相含浸)処理が施されている。それにより、底部材10、側壁部材20,30、角部材40,50および補助部材60の気孔に炭化珪素等の炭素材料(マトリックス)が充填されている。
【0029】
2つの側壁部材20および2つの側壁部材30が矩形枠を形成するように底部材10上に配置されることにより本体部80が構成される。角部材40および角部材50によりL字型の閉塞部材90が構成される。側壁部材20と側壁部材30との接合部分を閉塞するように、側壁部材20,30からなる本体部80の4つの当接部(本例においては角部)の各々に角部材40,50からなる閉塞部材90が接合される。4つの補助部材60が、底部材10の上面に接合されるとともに2つの側壁部材20および2つの側壁部材30の外側の側面にそれぞれ接合される。
【0030】
このように、底部材10、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30が本体部80の外側から4つの閉塞部材90および4つの補助部材60により取り囲まれることにより、鋳型100が構成される。底部材10、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30により上部が開口した直方体形状の収容空間Vが形成される。本体部80の収容空間Vに溶融されたシリコン原料(シリコン溶液)が注入されることにより、収容空間Vにシリコン溶液が収容される。あるいは、本体部80の収容空間Vに固体状のシリコン原料が収容され、収容空間V内のシリコン原料が加熱されることにより、シリコン原料がシリコン融液となる。
【0031】
ここで、CVI処理により底部材10の上面および側壁部材20,30の内側の側面の気孔にマトリックスが充填されているので、底部材10および複数の側壁部材20,30の気孔を通してシリコン融液が外部へ漏れ出すことを防止することができる。その後、収容空間Vでシリコン融液が冷却および凝固されることにより多結晶シリコンが形成される。多結晶シリコンが形成された後、鋳型100が分解されることにより、鋳型100から多結晶シリコンが取り外される。
【0032】
(2)底部材,側壁部材、角部材および補助部材の詳細
図3は、底部材10の構成を示す図である。
図4は、側壁部材20,30、角部材40,50および補助部材60の構成を示す図である。
図3には、底部材10の平面図、一方向から見た側面図および他の方向から見た側面図が示されている。
【0033】
図3に示すように、底部材10は4つの辺L11,L12,L13,L14を有する略正方形状または略長方形状の板状部材である。辺L11,L12は互いに対向し、辺L13,L14は互いに対向する。底部材10には、辺L11に沿って並ぶように3つの矩形状の貫通孔11が形成され、辺L12に沿って並ぶように3つの矩形状の貫通孔11が形成される。また、底部材10には、辺L13に沿って並ぶように3つの矩形状の貫通孔12が形成され、辺L14に沿って並ぶように3つの矩形状の貫通孔12が形成される。
【0034】
底部材10の辺L11の両端の付近にそれぞれ矩形状の貫通孔13が形成され、辺L12の両端の付近にそれぞれ矩形状の貫通孔13が形成される。底部材10の辺L13の両端の付近にそれぞれ矩形状の貫通孔14が形成され、辺L14の両端の付近にそれぞれ矩形状の貫通孔14が形成される。底部材10の辺L11に沿って並ぶように2つのねじ穴15が形成され、辺L12に沿って並ぶように2つのねじ穴15が形成される。また、底部材10の辺L13に沿って並ぶように2つのねじ穴15が形成され、辺L14に沿って並ぶように2つのねじ穴15が形成される。
【0035】
底部材10の辺L11に沿った側面には、3つの貫通孔11をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の3つの有底孔16が形成される。同様に、底部材10の辺L12に沿った側面には、3つの貫通孔11をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の3つの有底孔16が形成される。底部材10の辺L13に沿った側面には、3つの貫通孔12をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の3つの有底孔17が形成される。同様に、底部材10の辺L14に沿った側面には、3つの貫通孔12をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の3つの有底孔17が形成される。
【0036】
底部材10の辺L11に沿った底部材10の側面には、2つの貫通孔13をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の2の有底孔18が形成される。同様に、底部材10の辺L12に沿った側面には、2つの貫通孔13をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の2の有底孔18が形成される。底部材10の辺L13に沿った側面には、2つの貫通孔14をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の2つの有底孔19が形成される。同様に、底部材10の辺L14に沿った側面には、2つの貫通孔14をそれぞれ貫通して所定距離だけ延びる円形状の2つの有底孔19が形成される。
【0037】
図4(a)には、側壁部材20の平面図および一方向から見た側面図が示される。
図4(a)に示すように、側壁部材20は、4つの辺L21,L22,L23,L24を有する略長方形状の板状部材である。辺L21,L22は互いに対向し、辺L23,L24は互いに対向する。側壁部材20の辺L23には、3つの突出部21が形成される。辺L21,L23間の角部および辺L22,L23間の角部にそれぞれ切欠部23が形成されることにより、辺L21,L24間の角部および辺L22,L24間の角部にそれぞれ突出部22が形成される。
【0038】
3つの突出部21には、それぞれ円形状の貫通孔24が形成される。2つの突出部22には、それぞれ円形状の貫通孔25が形成される。2つの突出部22の間には、所定の間隔で並ぶように2つのねじ穴26が形成される。切欠部23における辺L21,L22に平行な側壁部材20の端面には、所定距離だけ延びる円形状の有底孔27が形成される。
【0039】
図4(b)には、側壁部材30の平面図および一方向から見た側面図が示される。
図4(b)に示すように、側壁部材30は、4つの辺L31,L32,L33,L34を有する略長方形状の板状部材である。辺L31,L32は互いに対向し、辺L33,L34は互いに対向する。側壁部材30の辺L33には、3つの突出部31が形成される。辺L31,L34間の角部および辺L32,L34間の角部にそれぞれ切欠部33が形成されることにより、辺L31,L33間の角部および辺L32,L33間の角部にそれぞれ突出部32が形成される。
【0040】
3つの突出部31には、それぞれ円形状の貫通孔34が形成される。2つの突出部32には、それぞれ円形状の貫通孔35が形成される。2つの切欠部33の間には、所定の間隔で並ぶように2つのねじ穴36が形成される。切欠部33における辺L31,L32に平行な側壁部材30の端面には、所定距離だけ延びる円形状の有底孔37が形成される。
【0041】
図4(c)には、角部材40の平面図および一方向から見た側面図が示される。
図4(c)に示すように、角部材40は、4つの辺L41,L42,L43,L44を有する略正方形状の板状部材である。辺L41,L42は互いに対向し、辺L43,L44は互いに対向する。角部材40の辺L43には、突出部41が形成される。辺L41,L43間の角部および辺L41,L44間の角部にそれぞれ切欠部43が形成されることにより、辺L41の略中央部に突出部42が形成される。
【0042】
突出部41には、円形状の貫通孔44が形成される。突出部42には、円形状の貫通孔45が形成される。辺L42,L44間の角部に貫通孔46が形成される。2つの切欠部43における辺L41に平行な角部材40の端面には、所定距離だけ延びる円形状の有底孔47が形成される。
【0043】
図4(d)には、角部材50の平面図および一方向から見た側面図が示される。
図4(d)に示すように、角部材50は、4つの辺L51,L52,L53,L54を有する略正方形状の板状部材である。辺L51,L52は互いに対向し、辺L53,L54は互いに対向する。角部材50の辺L53には、突出部51が形成される。辺L51の略中央部に切欠部53が形成されることにより、辺L51,L53間の角部および辺L51,L54間の角部にそれぞれ突出部52が形成される。
【0044】
突出部51には、円形状の貫通孔54が形成される。2つの突出部52には、それぞれ円形状の貫通孔55が形成される。辺L52,L54間の角部に貫通孔56が形成される。切欠部53における辺L51に平行な角部材50の端面には、所定距離だけ延びる円形状の有底孔57が形成される。
【0045】
図4(e)には、補助部材60の平面図および一方向から見た側面図が示される。
図4(e)に示すように、補助部材60は、4つの辺L61,L62,L63,L64を有する略長方形状の板状部材である。辺L61,L62は互いに対向し、辺L63,L64は互いに対向する。辺L61,L64間の角部および辺L62,L64間の角部にそれぞれ切欠部61が形成される。補助部材60には、辺L63,L64に平行な方向に並ぶように2つの貫通孔62が形成される。
【0046】
(3)鋳型の組立工程
図5〜
図9は、鋳型100の組立工程を示す斜視図である。以下、
図5〜
図9を参照しながら鋳型100の組立工程を説明する。
図5〜
図9の説明においては、一方の側壁部材20を側壁部材20Aと呼び、他方の側壁部材20を側壁部材20Bと呼ぶ。また、一方の側壁部材30を側壁部材30Aと呼び、他方の側壁部材30を側壁部材30Bと呼ぶ。
【0047】
図5に示すように、側壁部材30Aの3つの突出部31が、底部材10の辺L13側の3つの貫通孔12にそれぞれ嵌合されることにより、底部材10に側壁部材30Aが取り付けられる。ここで、底部材10の辺L13側の3つの有底孔17と側壁部材30Aの3つの突出部31の貫通孔34とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の辺L13側の3つの有底孔17および側壁部材30Aの3つの突出部31の貫通孔34に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に側壁部材30Aが固定される。
【0048】
同様に、側壁部材30Bの3つの突出部31が、底部材10の辺L14側の3つの貫通孔12にそれぞれ嵌合されることにより、底部材10に側壁部材30Bが取り付けられる。ここで、底部材10の辺L14側の3つの有底孔17と側壁部材30Bの3つの突出部31の貫通孔34とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の辺L14側の3つの有底孔17および側壁部材30Bの3つの突出部31の貫通孔34に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に側壁部材30Bが固定される。
【0049】
図6に示すように、側壁部材20Aの3つの突出部21が、底部材10の辺L11側の3つの貫通孔11それぞれ嵌合されることにより、底部材10に側壁部材20Aが取り付けられる。この場合、側壁部材20Aの一方の突出部22が、側壁部材30Aの一方の切欠部33に嵌合されるとともに、側壁部材30Aの一方の突出部32が、側壁部材20Aの一方の切欠部23に嵌合される。また、側壁部材20Aの他方の突出部22が、側壁部材30Bの一方の切欠部33に嵌合されるとともに、側壁部材30Bの一方の突出部32が、側壁部材20Aの他方の切欠部23に嵌合される。
【0050】
ここで、側壁部材20Aの一方の突出部22の貫通孔25と側壁部材30Aの一方の切欠部33の有底孔37とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材20Aの一方の突出部22の貫通孔25および側壁部材30Aの一方の切欠部33の有底孔37に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。同様に、側壁部材30Aの一方の突出部32の貫通孔35と側壁部材20Aの一方の切欠部23の有底孔27とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材30Aの一方の突出部32の貫通孔35および側壁部材20Aの一方の切欠部23の有底孔27に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、側壁部材20Aと側壁部材30Aとが固定される。
【0051】
また、側壁部材20Aの他方の突出部22の貫通孔25と側壁部材30Bの一方の切欠部33の有底孔37とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材20Aの他方の突出部22の貫通孔25および側壁部材30Bの一方の切欠部33の有底孔37に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。同様に、側壁部材30Bの一方の突出部32の貫通孔35と側壁部材20Aの他方の切欠部23の有底孔27とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材30Bの一方の突出部32の貫通孔35および側壁部材20Aの他方の切欠部23の有底孔27に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、側壁部材20Aと側壁部材30Bとが固定される。
【0052】
さらに、底部材10の辺L11側の3つの有底孔16と側壁部材20Aの3つの突出部21の貫通孔24とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の辺L11側の3つの有底孔16および側壁部材20Aの3つの突出部21の貫通孔24に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に側壁部材20Aが固定される。
【0053】
側壁部材20Bの3つの突出部21が、底部材10の辺L12側の3つの貫通孔11それぞれ嵌合されることにより、底部材10に側壁部材20Bが配置される。この場合、側壁部材20Bの一方の突出部22が、側壁部材30Aの他方の切欠部33に嵌合されるとともに、側壁部材30Aの他方の突出部32が、側壁部材20Bの一方の切欠部23に嵌合される。また、側壁部材20Bの他方の突出部22が、側壁部材30Bの他方の切欠部33に嵌合されるとともに、側壁部材30Bの他方の突出部32が、側壁部材20Bの他方の切欠部23に嵌合される。
【0054】
ここで、側壁部材20Bの一方の突出部22の貫通孔25と側壁部材30Aの他方の切欠部33の有底孔37とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材20Bの一方の突出部22の貫通孔25および側壁部材30Aの他方の切欠部33の有底孔37に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。同様に、側壁部材30Aの他方の突出部32の貫通孔35と側壁部材20Bの一方の切欠部23の有底孔27とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材30Aの他方の突出部32の貫通孔35および側壁部材20Bの一方の切欠部23の有底孔27に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、側壁部材20Bと側壁部材30Aとが固定される。
【0055】
また、側壁部材20Bの他方の突出部22の貫通孔25と側壁部材30Bの他方の切欠部33の有底孔37とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材20Bの他方の突出部22の貫通孔25および側壁部材30Bの他方の切欠部33の有底孔37に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。同様に、側壁部材30Bの他方の突出部32の貫通孔35と側壁部材20Bの他方の切欠部23の有底孔27とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、側壁部材30Bの他方の突出部32の貫通孔35および側壁部材20Bの他方の切欠部23の有底孔27に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、側壁部材20Bと側壁部材30Bとが固定される。
【0056】
さらに、底部材10の辺L12側の3つの有底孔16と側壁部材20Bの3つの突出部21の貫通孔24とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の辺L12側の3つの有底孔16および側壁部材20Bの3つの突出部21の貫通孔24に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に側壁部材20Bが固定される。
【0057】
このようにして、底部材10と側壁部材20A,20B,30A,30Bとが接合されるとともに、側壁部材20Aが側壁部材30A,30Bに接合され、かつ側壁部材20Bが側壁部材30A,30Bに接合される。それにより、本体部80が構成される。
【0058】
図7に示すように、角部材40の突出部41が角部材50の切欠部53に嵌合されるとともに、角部材50の2つの突出部52が角部材40の2つの突出部42にそれぞれ嵌合される。ここで、角部材40の突出部42の貫通孔45と角部材50の切欠部53の有底孔57とが一直線上に重なる。この状態で、角部材40の突出部42の貫通孔45および角部材50の切欠部53の有底孔57に図示しない固定ピンが挿通される。
【0059】
また、角部材50の2つの突出部52の貫通孔55と角部材40の2つの切欠部43の有底孔47とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、角部材50の2つの突出部52の貫通孔55および角部材40の2つの切欠部43の有底孔47に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、角部材40と角部材50とが接合され、閉塞部材90が構成される。
【0060】
図8に示すように、複数の閉塞部材90の角部材40の突出部41が底部材10の複数の貫通孔13にそれぞれ嵌合されるとともに、複数の閉塞部材90の角部材50の突出部51が底部材10の複数の貫通孔14にそれぞれ嵌合される。これにより、底部材10に複数の角部材40,50が取り付けられる。
【0061】
ここで、底部材10の複数の有底孔18と複数の角部材40の突出部41の貫通孔44とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の複数の有底孔18および複数の角部材40の突出部41の貫通孔44に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に複数の角部材40が固定される。
【0062】
同様に、底部材10の複数の有底孔19と複数の角部材50の突出部51の貫通孔54とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、底部材10の複数の有底孔19および複数の角部材50の突出部51の貫通孔54に図示しない固定ピンがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に複数の角部材50が固定される。
【0063】
また、複数の角部材40の貫通孔46と側壁部材20A,20Bの複数のねじ穴26とが一直線上に重なる。この状態で、複数の角部材40の貫通孔46を通して側壁部材20A,20Bの複数のねじ穴26に図示しないねじがそれぞれ挿通される。同様に、複数の角部材50の貫通孔56と側壁部材30A,30Bの複数のねじ穴36とが一直線上に重なる。この状態で、複数の角部材50の貫通孔56を通して側壁部材30A,30Bの複数のねじ穴36に図示しないねじがそれぞれ挿通される。
【0064】
本例においては、2つの側壁部材20の外側の側面に4つの角部材40が接合され、2つの側壁部材30の外側の側面に4つの角部材50が接合される。これにより、側壁部材20A,20B,30A,30Bからなる本体部80の4つの角部の各々に角部材40,50からなる閉塞部材90が取り付けられる。
【0065】
図9に示すように、複数の補助部材60が底部材10に配置される。この場合、一方の対の補助部材60の辺L64に沿った側面は、側壁部材20A,20Bの外側の側面にそれぞれ当接する。また、一方の対の補助部材60の切欠部61と角部材40とが嵌合する。同様に、他方の対の補助部材60の辺L64に沿った側面は、側壁部材30A,30Bの外側の側面にそれぞれ当接する。また、他方の対の補助部材60の切欠部61と角部材50とが嵌合する。
【0066】
ここで、複数の補助部材60の複数の2つの貫通孔62と底部材10の複数のねじ穴15とがそれぞれ一直線上に重なる。この状態で、複数の補助部材60の複数の2つの貫通孔62および底部材10の複数のねじ穴15に図示しないねじがそれぞれ挿通される。これにより、底部材10に複数の補助部材60が固定される。
【0067】
角部材40,50および補助部材60は、面状織布が積層されることより形成される面状体である。面状織布は、例えば2次元に編み込まれた面状織布(以下、2Dクロスと呼ぶ。)、または1次元に編み込まれた織布(以下、1Dクロスと呼ぶ。)を直交させた面状織布である。角部材40,50および補助部材60は、面状体の面が側壁部材20,30の外側の側面と直交するように配置される。
【0068】
この構成によれば、角部材40,50および補助部材60の厚み方向が側壁部材20,30の外側の側面と直交する状態で配置する場合に比べて角部材40,50および補助部材60のせん断強度を大きくすることができる。これにより、角部材40,50および補助部材60により側壁部材20,30を支持する力を大きくすることができる。
【0069】
このようにして、1つの閉塞部材90が側壁部材20A,30Aの外側の側面に接合され、他の1つの閉塞部材90が側壁部材20A,30Bの外側の側面に接合される。また、さらに他の1つの閉塞部材90が側壁部材20B,30Aの外側の側面に接合され、残りの1つの閉塞部材90が側壁部材20B,30Bの外側の側面に接合される。さらに、4つの閉塞部材90が底部材10に接合される。
【0070】
以上の工程で、
図1の鋳型100が組み立てられる。なお、多結晶シリコンの形成後、鋳型100は組み立て工程と逆の工程で分解される。
【0071】
(3)補強部材
側壁部材20,30の厚みが小さい場合には、鋳型100に補強部材が設けられてもよい。
図10は、補強部材の構成を示す図である。
図10には、補強部材70の平面図および一方向から見た側面図が示されている。補強部材70は、C/Cコンポジットにより形成される。
【0072】
図10(a)に示すように、補強部材70は、略正方形枠状または略長方形枠状を有する。補強部材70の4つの辺の各々の中央部の内面および外面は、内方に凹んでいる。これにより、補強部材70の4つの角部の各々は、外方に突出する。詳細には、補強部材70の内面は、底部材10と平行な面において、
図1の2つの側壁部材20、2つの側壁部材30および4つの閉塞部材90の外面に沿った形状を有する。これにより、補強部材70は、2つの側壁部材30および4つの閉塞部材90の外周縁を取り囲むように設けられる。
【0073】
図10(b)に示すように、補強部材70の4つの辺の各々の中央部の内面のみが内方に凹み、外面は内方に凹んでいなくてもよい。あるいは、補強部材70の4つの辺の各々の中央部の内面のみが内方に凹み、外面は外方に突出していてもよい。
【0074】
図11および
図12は、補強部材70の鋳型100への取り付け工程を示す斜視図である。鋳型100に補強部材70が取り付けられる場合には、
図11に示すように、底部材10の平行に並ぶように2つの側壁部材20および2つの側壁部材30の外面に複数の固定ねじ71が取り付けられる。
【0075】
図12に示すように、補強部材70が、上方から鋳型100に嵌め込まれ、複数の固定ねじ71上に載置される。これにより、補強部材70の内面が2つの側壁部材20、2つの側壁部材30、4つの角部材40および4つの角部材50の外面に当接する状態で、補強部材70が鋳型100に取り付けられる。補強部材70は、鋳型100の上下方向における略中央部に位置することが好ましい。
【0076】
補強部材70は、面状織布が積層されることより形成される面状体である。面状織布は、例えば2Dクロス、または1Dクロスを直交させた面状織布である。補強部材70は、面状体の面が側壁部材20,30の外側の側面と直交するように配置される。
【0077】
この構成によれば、補強部材70の厚み方向が側壁部材20,30の外側の側面と直交する状態で配置する場合に比べて補強部材70のせん断強度を大きくすることができる。これにより、補強部材70により側壁部材20,30および閉塞部材90を支持する力を大きくすることができる。
【0078】
鋳型100に補強部材70が取り付けられることにより、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30ならびに4つの閉塞部材90が補強される。これにより、側壁部材20,30および閉塞部材90の厚みが小さい場合でも、本体部80の収容空間Vへシリコン溶液を収容したとき、またはシリコン原料が鋳型100の収容空間V内で溶融するときに側壁部材20,30および閉塞部材90が外側へたわむことが防止される。
【0079】
(4)効果
本実施の形態に係る鋳型100においては、底部材10に2つの側壁部材20および2つの側壁部材30が接合されるとともに2つの側壁部材20と2つの側壁部材30とが互いに接合されることにより、収容空間Vを有する本体部80が構成される。これにより、本体部80の構成を単純化することができる。
【0080】
角部材40,50からなる4つの閉塞部材90が本体部80の外面に接合される。これにより、側壁部材20,30間の接合部分が本体部80の外側からそれぞれ閉塞される。また、底部材10と側壁部材20との間の2つの接合部分および底部材10と側壁部材30との間の2つの接合部分の外側にそれぞれ補助部材60が接合される。これにより、底部材10の上面と側壁部材20の下面との間の接合部分および底部材10の上面と側壁部材30の下面との間の接合部分が閉塞される。
【0081】
この状態で、本体部80の収容空間Vに溶融されたシリコン原料が注入されることにより、収容空間Vにシリコン溶液が収容される。あるいは、本体部80の収容空間Vに収容されたシリコン原料が加熱されることにより、収容空間V内のシリコン原料がシリコン融液となる。ここで、底部材10、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30との間の接合部分は、4つの閉塞部材90および4つの補助部材60により閉塞されている。その結果、本体部80の収容空間V内のシリコン融液が底部材10、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30間から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0082】
(5)他の実施の形態
(5−1)上記実施の形態において、窒化珪素、炭化珪素または二酸化珪素を含む離型材層が、底部材10および側壁部材20,30の表面に形成されてもよい。この場合、離型材層により底部材10および側壁部材20,30の気孔を通してシリコン融液が外部への漏れ出すことを防止することができる。また、凝固した多結晶シリコンを本体部80から容易に取り外すことができる。
【0083】
なお、離型材層が底部材10および側壁部材20,30の表面に形成される場合には、底部材10および側壁部材20,30の表面にCVI処理が施されなくてもよい。あるいは、底部材10および側壁部材20,30の表面にCVI処理が施されかつ離型材層が形成されてもよい。
【0084】
(5−2)上記実施の形態において、側壁部材20,30に取り付けられる閉塞部材90は別個の角部材40,50の接合により構成されるが、これに限定されない。側壁部材20,30に取り付けられる閉塞部材90は、一体的に構成されていてもよい。この場合、角部材40,50が一体的に形成されるので、閉塞部材90の強度が向上する。また、角部材40と角部材50との間に接合部分がないので、角部材40と角部材50との間からのシリコン融液の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0085】
(5−3)上記実施の形態において、鋳型100に1つの補強部材70が設けられるが、これに限定されない。鋳型100の上下方向の寸法が大きい場合には、鋳型100の本体部80に複数の補強部材70が設けられてもよい。
図13は、複数の補強部材70が設けられた鋳型100の斜視図である。
図13の例においては、複数の補強部材70として3つの補強部材70a,70b,70cが鋳型100の本体部80に設けられる。
【0086】
補強部材70a〜70cを鋳型100に取り付ける工程においては、まず、第1の高さにおいて、底部材10に平行に並ぶように2つの側壁部材20および2つの側壁部材30の外面に複数の固定ねじ71aが取り付けられる。ここで、下段の補強部材70aが上方から鋳型100に嵌め込まれ、第1の高さにおける複数の固定ねじ71a上に載置される。
【0087】
次に、第1の高さよりも上方に位置する第2の高さにおいて、底部材10に平行に並ぶように2つの側壁部材20および2つの側壁部材30の外面に複数の固定ねじ71bが取り付けられる。ここで、中段の補強部材70bが上方から鋳型100に嵌め込まれ、第2の高さにおける複数の固定ねじ71b上に載置される。
【0088】
その後、第2の高さよりも上方に位置する第3の高さにおいて、底部材10に平行に並ぶように2つの側壁部材20および2つの側壁部材30の外面に複数の固定ねじ71cが取り付けられる。ここで、上段の補強部材70cが上方から鋳型100に嵌め込まれ、第3の高さにおける複数の固定ねじ71c上に載置される。
【0089】
鋳型100に複数の補強部材70a〜70cが取り付けられることにより、2つの側壁部材20および2つの側壁部材30が補強される。これにより、鋳型100の上下方向の寸法が大きい場合でも、本体部80の収容空間Vへシリコン溶液を収容したとき、またはシリコン原料が鋳型100の収容空間V内で溶融するときに側壁部材20,30が外側へたわむことが防止される。
【0090】
(5−4)上記実施の形態において、閉塞部材90が複数の側壁部材20,30の当接部である側当接部を外側から閉塞するように設けられるが、これに限定されない。閉塞部材90は、複数の側壁部材20,30の当接部である側当接部を内側から閉塞するように設けられてもよい。
【0091】
(5−5)閉塞部材90は、複数の側壁部材20,30に接合されてもよい。上記実施の形態においては、閉塞部材90は複数の側壁部材20,30と同一の材質(C/Cコンポジット)により形成されるので、閉塞部材90を複数の側壁部材20,30に容易に接合することができる。一方、閉塞部材90が複数の側壁部材20,30に接合されない場合には、閉塞部材90は複数の側壁部材20,30と異なる材質により形成されてもよい。
【0092】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0093】
鋳型100が鋳型の例であり、底部材10および側壁部材20,30が鋳型部材の例であり、収容空間Vが収容空間の例であり、閉塞部材90が漏れ止め部材の例であり、底部材10が底部材の例である。側壁部材20,30が側壁部材の例であり、角部材40が第1の部材の例であり、角部材50が第2の部材の例であり、補強部材70が補強部材の例である。
【0094】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。