特許第5986536号(P5986536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986536椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法およびそれに用いられる施術道具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986536
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法およびそれに用いられる施術道具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20160823BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A61B17/56
   A61B17/22
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-105273(P2013-105273)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-113442(P2014-113442A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2013年5月17日
【審判番号】不服2015-2978(P2015-2978/J1)
【審判請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0143335
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513124282
【氏名又は名称】朴 慶佑
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 慶佑
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 長屋 陽二郎
【審判官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−502305(JP,A)
【文献】 特開平11−500947(JP,A)
【文献】 特開平07−008514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
A61B 17/16
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に適用される施術道具において、
治療部位の椎間孔の切開目標位置である上下の脊椎椎間関節の接する領域に到達させるために、皮膚を貫通して椎間孔に進入するためのトロカールと、
一端に装着された柄、および前記柄から延び、施術道具が目標靭帯の位置に円滑に挿入されるように誘導するための、貫通したガイド孔を有するスリーブを具備し、前記トロカールを挿入して椎間孔の切開目標位置に到逹するカニューレと、
一端に装着された柄、および先端部に一体に装着された刃チップが具備され、前記カニューレに挿入されて椎間孔を閉鎖している微細な靭帯を、生体組職からの剥離を容易にするための傷をつけるエンドミルと、
前記カニューレに挿入され、一端に柄が具備され、先端に凹んだ掻き落としチップを具備し、脊椎椎間関節に付着した、傷のついた靭帯を追加的に剥離し、残留物を掻き落とすキュレットとを含み、
前記エンドミルの刃チップは、容易かつ正確な切除のために螺旋状構造を有し、目標靱帯周辺の生体組織の損傷を最小化できるように相対的に鈍い末端を有していることを特徴とする、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具。
【請求項2】
前記トロカールは、スムーズに挿入され、目標靭帯周辺の生体組職の損傷を最小化できるように細長い探針形状となることを特徴とする、請求項1記載の椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具。
【請求項3】
前記キュレットの掻き落としチップは、周縁の丸いスプーンヘッド形状を有することを特徴とする、請求項1記載の椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具。
【請求項4】
外科医がスプーンヘッド部分の方向を正確に認知できるように、前記キュレットの柄の中央部位に具備された表示突起をさらに含むことを特徴とする、請求項3記載の椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎管に内在している炎症性物質を、椎間孔を介して脊椎管の外部に抽出し、痛みを緩和させることが可能な椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法およびそれに用いられる施術道具に関するものであって、より詳細には、施術道具を用いて、椎間孔に絡まっている微細な靭帯を切除して椎間孔の大きさを人為的に拡大することにより、カテーテルを介して脊椎管に供給される化学的物質と共に脊椎管に内在している炎症性物質を、椎間孔を経由して脊椎の外部に円滑に排出できるようにした、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法およびそれに用いられる施術道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多様な論文が腰推の椎間孔横断靭帯(TFL)に対する解剖学的詳細事項を提供しており、多くの著者が椎間孔横断靭帯(TFL)の放射線学的分析を行っている。著者らが靭帯の可能な臨床的含意を議論してきたにもかかわらず、このような靭帯の臨床的含意が何かについては不明である。特に、ディスク膨脹(disc bulging)、靭帯肥厚(ligament thickening)、椎間関節肥大症(facet hypertrophy)、狭窄(stenosis)、脊椎すべり症(spondylolisthesis)などの構造的変化のような機械的要因に焦点を当てていた外科医らは、椎間孔横断靭帯(TFL)の影響には大した意味を持っていなかった。
反面、狭窄(stenosis)やディスクの高さの減少のように椎間孔の大きさが減少する状況で、椎間孔横断靭帯(TFL)が椎間孔に占める相対的な容積が増加すると推定するのはかなり合理的である。しかし、このような臨床的重要性に関する研究や分析は、今のところ十分でないのが現状である。
【0003】
腰推部椎間孔内部の椎間孔横断靭帯の解剖学的分析論文(Jun−Hong Min,et.al.「anatomic analysis of the transforaminal ligament in the lumbar intervertebral forman」operative neurosurgery Vol.57:37〜41,Jul.2005.)では、腰推の椎間孔横断靭帯(TFL)の解剖学的詳細事項を提供している。このような構造の重要性はまだ明らかでないが、ある場合には神経根の圧迫に対して寄与することができる。多くの内側減圧術(medial decompressive procedures)以降の持続的な兆候に対しても寄与することができる。脊椎外科医らは、このような構造の存在を認知しなければならず、説明されていない坐骨神経痛的兆候(sciatic symptoms)の病因学(etiology)の面で解剖学的構造を考慮する必要がある。
【0004】
前記論文は、腰推部椎間孔の椎間孔横断靭帯の解剖学的分析を評価するにあたり、優れかつ時宜適切な面がある。なぜならば、後外側部接近法(posterolateral approach)の方が、腰推部遠位側方ディスク(lumbar far−lateral discs)と椎間孔狭窄症(foraminal stenosis)を施術的に治療するよりはるかに人気があるからである。
【0005】
通常、脊椎の治療に関連し、外科医らが後方部椎間孔切除術(posterior foraminotomy)を施している間に椎間孔横断靭帯を探索しないにもかかわらず、医師らがこの領域で解剖学的情報を持つことは重要であり、また、有用である。著者らは、椎間孔横断靭帯の放射線学的分析を行い、近い将来に椎間孔の解剖学的構造および施術の間の相関関係を研究する場合、神経外科医(neurosurgeons)に大きな価値と情報を提供するはずである。
【0006】
図1は、臨床解剖による椎間孔の構成図であって、前記椎間孔は、脊椎神経(後根神経節(DRG))、椎骨洞神経(Sinuvertebral nerves)、脊椎静脈(interverbral veins)、小根静脈(radicular vein)、動脈(artery)、靭帯(ligament flavum)から構成される。
【0007】
図2は、椎間孔の外側面からみた模式図であって、1は脊髓動脈(Spinal Artery)、2はVentral Ramus of Spinal Nerve、3はRecurrent Meningeal Nerve、4、5はMedial and Lateral Divisions of Dorsal Primary Ramus、6は静脈(Veins)を表す。
【0008】
図3は、椎間孔周辺の靭帯分布図であって、図示のように、椎間孔周辺の靭帯は4つ(入口領域の靭帯、中間領域の靭帯、出口領域の靭帯、管後方領域の靭帯)に分類される。入口領域の靭帯は、後縦靭帯(posterior longitudinal ligament)、Hoffmann靭帯、硬膜外膜(peridural membrane)から構成され、中間領域の靭帯は、椎茎(pedicles)に神経根袖(nerve root sleeve)を付着させる筋凝縮帯(fascial condensations)、黄色靭帯(ligamentum flavum)から構成され、出口領域(椎間孔周辺)の靭帯は、内側靭帯(internal ligament)、椎間孔横断靭帯(transforaminal ligament)と外側靭帯(external ligament)から構成され、管後方領域の靭帯は、篩筋膜(cribriform fascia)から構成される。
【0009】
図4は、腰薦椎の構成を示す模型写真である。
【0010】
反面、Amonoo−Kuofi外著者(Amonoo−Kuofi et al.(1998a)J.Anat.156,p177〜183)は、椎間孔横断靭帯を3つの分類(内側靭帯、内横断靭帯、外側靭帯)に区分した。内側靭帯(internal ligament)の集団は、下斜TFL(oblique inferior TFL)から構成され、内横断靭帯(intraforaminal ligament)の集団は、前深内横断靭帯(deep anterior intraforaminal ligament)、上斜TFL(oblique superior TFL)、平中TFL(horizontal mid−TFL)から構成され、外側靭帯(external ligament)の集団は、上部、中部、下部corporotransverse靭帯から構成される。しかし、L5〜S1椎間孔には異なる分類体系が適用される。L5〜S1椎間孔は、4つの異なる靭帯構造(腰薦椎靭帯(lumbosacral ligament)、腰薦椎蓋(lumbosacral hood)、corporotransverse靭帯、mamillo−transverso−accessory靭帯)から構成される。
【0011】
図5は、患者ごとに異なる椎間孔を閉鎖している靭帯の分布を示す図であって、A.Oblique Inferior TFL,B.Anterior Intraforaminal Ligament,C.Oblique Superior TFL,D.Mid−TFL,E.Superior and Inferior Corporotransverse Ligament,F.Corporotransverse Ligamentをそれぞれ示す。
【0012】
坐骨神経痛(sciatica)を含む腰の痛み(low back pain)の誘導において、椎間孔靭帯の役割は、2つの側面(炎症性側面、機械的側面)に区分される。炎症性側面で、腰の痛みは、微細な無髄神経性(non−myelinated)痛みの末端の活性化、炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokines)の遊離、血管拡張(vasodilation)および浮腫(edema)、癒着性繊維化(adhesive fibrosis)のような一連の過程による影響を受ける。機械的側面で下記の条件が考慮されなければならない。後天的なディスクの高さの減少によるtransarticular靭帯(特に、上下corporotransverse靭帯)の位置異常(malposition)、椎間孔靭帯の骨化(ossification)、神経幹(trunk)の異常(anomalies)、後根神経節(DRG)の捕捉(entrapment)[L5:corporotransverse靭帯、L1〜L4:下部corporotransverse靭帯]がそのような条件となる。
【0013】
化学的神経剥離(chemical neurolysis)が炎症性側面の問題に適用されるのに対し、機械的側面の問題を解決するためには、尾骨カテーテル挿入術(caudal catheterization)による機械的硬膜外神経剥離術(mechanical epidural neurolysis)または経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)が用いられる。
【0014】
一方、腰の痛み(Back pain)は、ほとんどの人が一生を通じて1回以上経験している、非常に普遍的な現象である。腰の痛みを持った患者の70〜80%は、特別な治療なしに保存的な方法(conservative method)によっても向上できることが知られている。腰の痛み(Back pain)を持った患者の間で坐骨神経痛(sciatica)を伴う場合は13〜40%にのぼる。坐骨神経痛の病態生理学的原因(Pathophysiological reason of sciatica)は、機械的要因と生化学的要因とに区分される。実際に、坐骨神経痛(sciatica)の治療のためのディスク膨脹(disc bulging)、靭帯肥厚(ligament thickening)、椎間関節肥大症(facet hypertrophy)のような機械的要因が神経外科的に強調されている。すなわち、ほとんどの神経外科医は、ディスク脱出症(disc herniation)や脊椎管狭窄症(spinal stenosis)のような機械的問題が、腰の痛み(back pain)はもちろん、坐骨神経痛(sciatica)を誘発すると信じてきた。しかし、本出願人が硬膜外神経剥離術(epidural neurolysis)を研究してみたところ、椎間孔周辺の炎症性反応が坐骨神経痛(sciatica)の主な理由であることが確認された。
【0015】
図6は、痛みの過程と神経機能異常(the process of pain and nerve dysfunction)を説明するための映像を絵で表現した概略図であって、本図面を参照すれば、痛みの過程と神経機能異常(nerve dysfunction)をよく理解することができる。
【0016】
図示のように、ステップAは、腫瘍破壊因子(TNF)による神経内毛細血管(endoneurial capillary)内部の癒着分子が活性化している状態を示している。
【0017】
ステップBにおいて、1)は循環する白血球(WBC)の癒着(adhesion)状態を示し、2)は白血球の血管外流出(extravasation)、3)は血小板(thrombocytes)の凝集と血栓(thrombus)の形成を示している。
ステップCにおいて、1)は腫瘍破壊因子(TNF)の局所的遊離、神経髓鞘の損傷、ナトリウムチャネルの損傷、後根神経節(DRG)の内部と神経脊髓(spinal cord)の異痛(allodynia)を示しており、2)は血流の減少と透過性栄養欠乏(permeability nutritional deficit)の増大を示している。
【0018】
つまり、神経への不十分な血液の供給、軽微な炎症(mild inflammation)、椎間孔周辺の繊維性癒着(fibroblastic adhesion)などのように、MRIによって確認されない生化学要素が、痛みと神経機能の異常を誘発する因子としてより重要な位置にあることを物語っている。
【0019】
しかし、現在までディスク患者の痛みの治療に対する外科的施術では、MRIによって確認されない生化学要素の分析よりも、神経外科的な機械的要因の治療に依存しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、本発明は、上記の諸問題を解決するためになされたものであって、椎間孔周辺の多様な靭帯を調べた後、繰り返し的な炎症性反応による癒着性繊維化(adhesive fibrosis)によって閉鎖されていく椎間孔を、硬膜外神経剥離術(epidural neurolysis)または経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)によって人為的に拡張し、カテーテルを介して痛みの治療に効果的な化学的物質を痛み誘発神経枝周辺部に適切に伝達させて治療した後、化学的物質と共に脊椎管に内在している炎症性物質を、椎間孔を経由して脊椎の外部に円滑に排出できるようにした、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、経皮的椎間孔拡張施術方法(percutaneous extraforaminoctomy)に効果的に利用可能な施術道具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明は、椎間孔周辺の多様な靭帯を調べる第1ステップと、患者ごとに互いに異なる椎間孔周辺の靭帯構造に合わせてトロカールの挿入位置を決定する第2ステップと、椎間孔隣接部(脊椎椎間関節)の皮膚を通して切開部の目標地点に向けてトロカール(trocar)を挿入する第3ステップと、前記トロカールをカニューレ(cannula)に挿入した後、トロカールを離脱させて後発の道具を挿入するための空間を確保する第4ステップと、前記カニューレにエンドミルを挿入するものの、前記エンドミルを回しながら脊椎椎間関節に付着している靭帯に傷をつけて椎間孔内で剥離させる第5ステップと、前記カニューレからエンドミルを離脱させた後、キュレット(curret)を挿入し、脊椎椎間関節に付着した、傷のついた靭帯を追加的に剥離し、残留物を掻き落として椎間孔の大きさを拡張する第6ステップと、前記椎間孔にカテーテルを挿入し、痛みを誘発する神経枝周辺部に化学的物質を適切に伝達させた後、化学的物質と共に脊椎管および椎間孔に内在している炎症性物質を、椎間孔を経由して排出する第7ステップとを含む、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法を提供する。
【0023】
ここで、第2ステップは、椎間孔の一側に連結されるディスクスペースの反対側椎間孔に切開のためのターゲットを決定する過程を含み、前記第3ステップは、C−ARMというX線映像機器でトロカールを見ながら位置を確認する過程をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の他の実施形態として、椎間孔周辺の多様な靭帯を調べる第1ステップと、患者ごとに互いに異なる椎間孔周辺の靭帯構造に合わせてトロカールの挿入位置を決定する第2ステップと、椎間孔隣接部(脊椎椎間関節)の皮膚を通して切開部の目標地点に向けてトロカール(trocar)を挿入する第3ステップと、前記トロカールをカニューレ(cannula)に挿入した後、トロカールを離脱させて後発の道具を挿入するための空間を確保する第4ステップと、第4ステップの実施後に、前記カニューレに内視鏡とレーザを共に進入させ、前記内視鏡を介して目標靭帯を肉眼で直接確認しながらレーザで靭帯を除去する第5ステップとを含む、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に適用される施術道具において、治療部位の椎間孔の切開目標位置に到達させるために、上下の脊椎椎間関節の接する目標部位を案内することによって椎間孔に進入するためのトロカールと、一端に装着された柄、および前記柄から延び、施術道具が目標靭帯の位置に円滑に挿入されるように誘導するための、貫通したガイド孔を有するスリーブを具備し、前記トロカールを挿入して椎間孔の切開目標位置に到逹するカニューレと、一端に装着された柄、および先端部に一体に装着された刃チップが具備され、前記カニューレに挿入され、椎間孔の後根神経節(DRG)を閉鎖している微細な靭帯を、生体組職からの剥離を容易にするための傷(scratch)をつけるエンドミルと、前記カニューレに挿入され、一端に柄が具備され、先端に凹んだ掻き落としチップを具備し、脊椎椎間関節に付着した、傷のついた靭帯を追加的に剥離し、残留物を掻き落とすキュレットとを含む、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具を提供する。
【発明の効果】
【0026】
上述のように、本発明によれば、次のような効果を奏する。
【0027】
第一、機械的神経剥離(mechanical neurolysis)と化学的神経剥離(chemical neurolysis)を併用することにより、治療の効果を増大させることができる。
【0028】
第二、施術道具を上下の脊椎椎間関節の接する目標部位側に挿入し、椎間孔のターゲット位置に進入させて靭帯剥離を行うため、痛み除去手術が手軽く、施術過程で出血がほとんどなく、手術後の回復が早い。
【0029】
第三、カニューレを介してエンドミルとキュレットを進入させるものの、エンドミルの鈍い刃とスプーンヘッド形状となる掻き落としチップを有するキュレットの構造によって筋肉損傷やその他臓器に損傷を与える恐れが全くない。
【0030】
第四、キュレットを用いて、脊椎椎間関節に付着している靭帯を剥離し、残留物を掻き落として椎間孔を拡大することにより、カテーテルを介して注入される痛みの因子除去用化学性物質が炎症誘発因子と共に椎間孔を介して排出でき、靭帯によって押されている血管を広げることで血液循環を円滑にすることができる。
【0031】
第五、カテーテルを介した化学的物質の注入だけで痛みを除去する施術方法とは異なり、化学的物質と痛みの誘発因子を共に椎間孔の外に排出することにより、臨床的効果に非常に優れ、神経周辺に薬剤を十分に散布することができ、その他炎症因子を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】臨床解剖による椎間孔の構成図である。
図2】椎間孔の外側面からみた模式図である。
図3】椎間孔周辺の靭帯を分類した概略図である。
図4】腰薦椎の構成を示す模型写真である。
図5】患者ごとに異なる椎間孔を閉鎖している靭帯の分布図である。
図6】痛みの過程と神経機能異常を説明するための映像を絵で表現した概略図である。
図7】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法の過程を示すフローチャートである。
図8A】本発明にかかる経皮的椎間孔拡張施術方法(percutaneous extraforaminoctomy)を実現するための、施術初期段階の切開目標位置を示す図であって、脊椎側面図である。
図8B】本発明にかかる経皮的椎間孔拡張施術方法(percutaneous extraforaminoctomy)を実現するための、施術初期段階の切開目標位置を示す図であって、図8Aの点線部分の拡大図である。
図8C】本発明にかかる経皮的椎間孔拡張施術方法(percutaneous extraforaminoctomy)を実現するための、施術初期段階の切開目標位置を示す切開位置を示す図であって、図8Aの正面図を概略的に示す模式図である。
図9】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、トロカールの形状図である。
図10A】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、カニューレの斜視図である。
図10B】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、カニューレの正面図である。
図11】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、エンドミルの形状図である。
図12A】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、キュレットの斜視図である。
図12B】本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具セットの構成図であって、キュレットの正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付した図7ないし図12を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明にかかる椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法および前記方法に用いられる施術道具は、化学的神経剥離(chemical neurolysis)と共に機械的神経剥離(mechanical neurolysis)を併用することにより、腰の痛みの治療効果を増大可能に実現したものである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態を説明する前に、本発明の概念を説明する。
【0035】
まず、化学的神経剥離(chemical neurolysis)が炎症性側面の問題に適用されるのに対し、機械的側面の問題を解決するためには、尾骨カテーテル挿入術(caudal catheterization)による機械的硬膜外神経剥離術(mechanical epidural neurolysis)または経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)が用いられる。
【0036】
本発明の出願人は、損傷したディスク(髄核(nucleus pulposus))と軟骨(cartilage)から遊離し、椎間孔(intervertebral foramen)の椎間孔横断靭帯(TFL)周辺に蓄積された癒着性繊維細胞(adhesive fibroblast)によって腰推痛(back pain)や坐骨神経痛(sciatica)が引き起こされるという炎症性要因の観点(inflammatory aspect)からアプローチしてきている。すなわち、機械的要因でない、炎症性要因の観点(inflammatory aspect)から、本発明の出願人は、痛みの生理学的原因と炎症過程の主要地点(target point)を分析し、椎間孔と椎間孔横断靭帯(TFL)の解剖学的構造を臨床的に調べた。
【0037】
さらに、椎間孔横断靭帯(TFL)切除術による経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminoctomy)の臨床的重要性が生化学的および炎症性側面(biochemical and inflammatory aspect)で提示されると判断している。
【0038】
前記判断根拠により、椎間孔周辺の多様な靭帯を調べた後、繰り返し的な炎症性反応による癒着性繊維化(adhesive fibrosis)によって締められて閉塞されていく椎間孔は、硬膜外神経剥離術(epidural neurolysis)または経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)によって機械的に拡張される必要があり、その後、痛みの治療に効果的な化学的物質が痛みを誘発する神経枝周辺部に適切に伝達されなければならない。すなわち、機械的神経剥離(mechanical neurolysis)と化学的神経剥離(chemical neurolysis)を併用する場合、治療の効果が増大することが分かる。
【0039】
仮に、脊椎管と椎間孔を水ポンプ構造に例えると、椎間孔は、ポンプの主な柱と水排出口との間の経路に該当する。椎間孔は、神経、静脈、動脈のような血管(blood vessel)、リンパ管(lymphatic vessel)、自律神経系(autonomic nervous system)の経路である。また、衝撃や炎症に脆弱な後根神経節(DRG)がこの領域に位置しており、微細な靭帯がくもの巣のように絡まっていて、その結果、脊椎管(spinal column)の内部に炎症性反応による派生物質が椎間孔に蓄積される。したがって、神経組職への癒着(adhesion to nerve tissue)、炎症による浮腫(edema by inflammation)、脊椎管への血流の妨害のような破壊的な反応が、椎間孔に甚大かつ頻繁に発生してしまう。そのため、椎間孔内部の炎症を解決し、捕捉性神経障害(entrapment neuropathy)または神経の捕捉部分を減圧(decompress)することが、施術を成功させるための核心である。
【0040】
前記本発明の概念に基づいて好ましい施術方法を説明する。
【0041】
本発明の椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法に用いられる施術道具としては、図9ないし図12に示すとおりである。
【0042】
本発明の実施形態において、椎間孔横断靭帯(transforaminal ligament)関連の経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminoctomy)を用いた靭帯切除術(ligament resection)のための施術道具セットは、図示のように、4つの構成要素(トロカール(trocar)、カニューレ(cannula)、エンドミル(endmill)、およびキュレット(curret))からなっている。
【0043】
より具体的には、前記施術道具は、治療部位の椎間孔の切開目標位置(上下の脊椎椎間関節の接する領域)に到達させるために、皮膚を貫通して椎間孔に進入するためのトロカール102(図9参照)と、一端に装着された柄112、および前記柄112から延び、施術道具が目標靭帯の位置に円滑に挿入されるように誘導するための、貫通したガイド孔114aを有するスリーブ114を具備し、前記トロカール102を挿入して椎間孔の切開目標位置に到逹するカニューレ104(図10Aおよび図10B参照)と、一端に装着された柄116、および先端部に一体に装着された刃チップ118が具備され、前記カニューレ104に挿入されて椎間孔を閉鎖している微細な靭帯を、生体組職から剥離させやすくするための傷(scratch)をつけるエンドミル106(図11参照)と、前記カニューレ104に挿入され、一端に柄120が具備され、先端に凹んだ掻き落としチップ122(scraper tip)を具備し、脊椎椎間関節に付着した、傷のついた靭帯を追加的に剥離し、残留物を掻き落とすキュレット108(図12Aおよび図12B参照)とを含む。
【0044】
本実施形態において、前記トロカール102は、スムーズに挿入され、目標靭帯周辺の生体組職の損傷を最小化できるように細長い探針形状を有する。
【0045】
前記エンドミル106は、椎間孔の出口領域で脊椎椎間関節に付着した靭帯を切除する時に用いるものである。前記エンドミル106の刃チップ118は、容易かつ正確な切除のために螺旋状構造を有し、目標靭帯周辺の生体組職の損傷を最小化できるように相対的に鈍い末端を有している。
【0046】
前記キュレット108は、エンドミル106の使用後、後根神経節(DRG)を締める目標靭帯(transarticular ligament)を細かく切除するのに用いるもので、キュレット108の掻き落としチップ122は、周縁の丸いスプーンヘッド形状を有する。したがって、前記掻き落としチップ122は、切除過程で目標靭帯周辺に位置する生体組職の損傷を最小化し、また、エンドミル106によって傷のついた靭帯を切除し、また、切除された靭帯を掻き集めて椎間孔の外壁に押し出す。
【0047】
特に、前記キュレット108の柄120の中央部位に表示突起124が具備され、外科医がスプーンヘッド部分の方向を正確に認知できるようにした。この表示突起124は、使用中にスプーンヘッド部分の位置ずれで引き起こされる危険性を最小化する役割を果たす。
【0048】
前記構成からなる施術道具セットを用いて施術する場合、伝統的な硬膜外ブロック(epidural block(injection))と比較して、生化学的薬剤が椎間孔の目標周辺に染みやすく、椎間孔の後根神経節(DRG)を締める目標(transarticular ligament)を効果的に切除することができるのである。
【0049】
以下、前記施術道具セットを用いて、椎間孔靭帯切除術による経皮的椎間孔拡張施術方法を、図7図8Aないし図8Cを参照して説明する。
【0050】
まず、図示のように、椎間孔12周辺の切開椎間孔周辺の多様な靭帯を調べる(S2)。この時、図4に示すように、患者ごとに互いに異なる椎間孔12周辺の靭帯構造に合わせてトロカールの挿入位置を決定する(S4)。本発明では、図8Aおよび図8Bに示すように、椎間孔12の一側に連結されるディスクスペース14の反対側椎間孔に切開のためのターゲット18を決定する。この場合、図8Cに示すように、後根神経節(DRG)10と密接することなく椎間孔の縁部がターゲット位置となるのである。説明されていない符号16は動脈、静脈および自律神経系を表す。
【0051】
次に、椎間孔12隣接部(脊椎椎間関節)の皮膚を通して切開部の目標地点に向けてトロカール(trocar)を挿入する(S6)。前記ステップS4において、目標地点の椎間孔周辺靭帯は、C−ARMというX線映像機器でトロカールを見ながら位置を確認する(S8)。
【0052】
前記トロカールをカニューレ(cannula)に挿入した後、トロカールを離脱させて後発の道具を挿入するための空間を確保する(S10)。前記カニューレにエンドミルを挿入するものの、前記エンドミルを回しながら脊椎椎間関節に付着している靭帯に傷をつけて椎間孔から切除しやすくする(S12)。前記カニューレからエンドミルを離脱させた後、キュレット(curret)を挿入し、脊椎椎間関節に付着した、傷のついた部位の靭帯を追加的に剥離し、残留物を掻き落として椎間孔の大きさを拡張する(S14、S16)。最終的に、前記椎間孔にカテーテルを挿入し、痛みを誘発する神経枝周辺部に化学的物質を適切に伝達させた後、化学的物質と共に脊椎管に内在している炎症性物質を、椎間孔を経由して排出する(S18)。
【0053】
本発明の他の実施形態として、ステップS2ないしS10を行った後、すなわち、最終ステップS10のカニューレの挿入後、エンドミルとキュレットの代わりに、内視鏡とレーザを共に進入させ、前記内視鏡を介して目標靭帯を肉眼で直接確認しながらレーザで靭帯を除去することができる。
【0054】
前記施術方法によれば、腰推部ディスク脱出症(disc herniation)および脊椎管狭窄症(spinal stenosis)の兆候に続き、慢性的な腰の痛み(low back pain)と坐骨神経痛(sciatica)を持った患者には、炎症性側面と機械的側面のシナジーのため、脊椎管(spinal canal)および椎間孔(intervertebral foramen)周辺の深刻な癒着性繊維化(adhesive fibroses)が蓄積される。この場合、深刻な癒着性繊維化(adhesive fibroses)によってカテーテルが硬膜外空間に沿って進行するのを妨げるため、尾骨カテーテル挿入術(caudal catheterization)による機械的硬膜外神経剥離術(mechanical epidural neurolysis)を目標部位に適用することが困難である。したがって、「尾骨カテーテル挿入術(caudal catheterization)による機械的硬膜外神経剥離術(mechanical epidural neurolysis)」と「椎間孔靭帯切除術(foraminal ligament resection)による経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)」を併用するような手順が、治療により効果的である。
【0055】
経皮的椎間孔拡張術(percutaneous extraforaminotomy)を成功させるためには、切除(resection)のための適切な目標靭帯を決定することが非常に重要である。すなわち、椎間孔は、神経および血管のような多様な生理的な構造を含んでいるため、無分別な切除は患者を深刻な状態に陥れることがある。また、切除のための目標靭帯は、脊椎分節の位置(L1〜L4、L5)によって別途に考慮されなければならない。L1〜L4の場合には、切除のための目標靭帯が下部および上部corporotransverse靭帯から構成されたtransarticular靭帯であり、L5の場合には、切除のための目標靭帯が腰薦椎蓋とcorporotransverse靭帯から構成されたtransarticular靭帯である。ガイドピンと経皮的靭帯切除術のための目標地点は、青色領域(ディスク空間)と赤色領域(目標領域:上部および下部corporotransverse靭帯)で示される。
【0056】
切除ターゲット位置を出口領域から近づかせる理由は、他の生体組職の損傷なく目標靭帯(transarticular ligament)に近づきやすいからである。すなわち、他の静動脈のような生体組職とそれらを分割する靭帯を触ることなく圧迫に脆弱な後根神経節(DRG)を締める目標靭帯のみを切除する最も良い方法である。
切除ターゲット位置を出口領域から近づかせる理由は、他の生体組職の損傷なく目標靭帯(transarticular ligament)に近づきやすいからである。すなわち、他の静動脈のような生体組職とそれらを分割する靭帯に触ることなく圧迫に脆弱な後根神経節(DRG)を締める目標靭帯のみを切除する最も良い方法である。
【0057】
以上で説明した本発明は、上述した実施形態および添付した図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形および変更が可能であることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【符号の説明】
【0058】
102:トロカール
104:カニューレ
106:エンドミル
108:キュレット
112、116、120:柄
114:スリーブ
118:刃チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B