(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単一触媒システムを用いてナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造する方法であって、前記単一触媒システムは水素化触媒、脱蝋触媒及び水素化仕上げ触媒を含み、前記方法は、
(a)常圧残渣油の流動層触媒反応工程で生産される留分からナフテン系潤滑基油製造用主原料である軽質サイクルオイル及びスラリーオイルを分離する段階と、
(b)減圧残渣油、又は常圧残渣油と減圧残渣油の混合物の溶剤脱アスファルテン工程で生産される留分から重質潤滑基油製造用主原料である脱アスファルトオイルを分離し、さらに分離された脱アスファルトオイルを減圧蒸留して重質脱アスファルトオイルを得る段階と、
(c)前記(a)段階で分離された軽質サイクルオイル、スラリーオイル又はこれらの混合物と前記(b)段階で分離された重質脱アスファルトオイルを、150ppm以下の硫黄含量及び50ppm以下の窒素含量を有する留分を得るために、300〜410℃の反応温度、30〜220kg/cm2gの反応圧力、0.1〜3.0hr-1の空間速度(LHSV)、及び1,000〜3,000のNm3/m3の供給原料に対する水素の体積比の条件下、周期律表の第6族及び第8族〜第10族元素から選ばれた一つ以上の成分を含む前記水素化触媒の存在下で、順次又は同時に水素化処理する段階と、
(d)前記(c)段階で水素化処理された留分を、N−パラフィンを低減又は除去させるために、250〜410℃の反応温度、30〜200kg/cm2gの反応圧力、0.1〜3.0hr-1の空間速度(LHSV)、及び150〜1,000Nm3/m3の供給原料に対する水素の体積比の条件下、SAPO−11、SAPO−41、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−48、FAU、BETA及びMORから一つ以上選択される担体、並びにプラチナ、パラジウム及びニッケルから一つ以上選択される金属を含む前記脱蝋触媒の存在下で触媒脱蝋する段階と、
(e)前記(d)段階で脱蝋された留分を、オレフィン、多環芳香族を除去するために、150〜300℃の反応温度、30〜200kg/cm2gの反応圧力、0.1〜3.0hr-1の空間速度(LHSV)、及び300〜1,500のNm3/m3の流入した留分に対する水素の体積比の条件下、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア及びゼオライトから一つ以上選択される担体、及び周期律表の第6族、第8族、第9族、第10族及び第11族元素から一つ以上選択される金属を含む前記水素化仕上げ触媒の存在下で水素化仕上げ処理する段階とを含んでなり、
重質潤滑基油の粘度等級が500N以上であることを特徴とする、高品質のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造する方法。
前記(c)段階の水素化処理されるスラリーオイルは、前記流動層触媒反応工程から分離されたスラリーオイルを減圧蒸留して得たカット−スラリーオイル(Cut−SLO)であり、或いは前記流動層触媒反応工程から分離されたスラリーオイルを溶剤脱アスファルテン工程に供給して得た脱アスファルトスラリーオイル(DA−SLO)であることを特徴とする、請求項1に記載の高品質のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造する方法。
前記(f)段階によって分離されたナフテン系潤滑基油は40℃での動粘度が350〜550cStのナフテン系潤滑基油を含み、(f)段階によって分離された重質潤滑基油は40℃での動粘度が500〜600cStの重質潤滑基を含むことを特徴とする、請求項3に記載の高品質のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明によって単一触媒システムを用いてナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造する方法は、
図1に示すように、単一触媒システムに供給される原料を準備する段階と、単一触媒システムを用いて水素化処理、触媒脱蝋及び水素化仕上げ反応を行う段階、及び粘度等級範囲によって分離する段階とを含んでなる。
単一触媒システムに供給される原料を準備する段階は、主にナフテン系潤滑基油を得ることが可能な原料の製造工程と、主に重質潤滑基油を得ることが可能な原料の製造工程に分けられる。
ナフテン系潤滑基油の製造のための原料は、主に石油系炭化水素の流動層触媒反応工程(FCC;Fluid Catalytic Cracking)で生産される留分から軽質サイクルオイル(LCO)及びスラリーオイル(SLO)を分離して準備される。流動層触媒反応工程は、一般に、常圧残渣留分(AR)を原料として流動層触媒反応工程を用いて500〜700℃、1〜3気圧の温度及び圧力条件で軽質石油製品を生産する工程を意味し、このようなFCC工程を用いて主要製品としての揮発留分と副産物としてのプロピレン、重質分解ナフサ(HCN)、軽質サイクルオイル(LCO)及びスラリーオイル(SLO)が得られる。この過程を介して生成される軽質留分を除いた軽質サイクルオイル(LCO)又はスラリーオイル(SLO)は分離塔を用いて分離される。本発明に使用される軽質サイクルオイル(LCO)とスラリーオイル(SLO)はそれぞれ単独で本発明の単独触媒システムに供給される原料として使用でき、各留分を所定の比率で混合した形でも使用できる。
【0009】
本発明の好適な一具現例によれば、単一触媒システムに供給される原料としてのスラリーオイルは、前記流動層触媒反応工程から分離されたスラリーオイルを減圧蒸留して得たカット−スラリーオイル(Cut−SLO)であり、或いは前記流動層触媒反応工程から分離されたスラリーオイルを溶剤脱アスファルテン工程に供給して得た脱アスファルトスラリーオイル(DA−SLO)である(
図1及び
図2参照)。
【0010】
すなわち、
図1から分かるように、FCCから分離されたスラリーオイルを真空分離機を用いて減圧蒸留した後、目的する粘度等級の製品に応じて適切にカット(cutting)及び混合することにより、単一触媒システムに供給される原料を準備することができる。
また、
図2から分かるように、FCCから分離されたスラリーオイルをアスファルテン分離機を用いて分離抽出し、脱アスファルトスラリーオイル(DA−SLO)を得た後、本発明の単一触媒システムに供給することができる。脱アスファルトスラリーオイル(DA−SLO)を得るために使用される溶剤脱アスファルテン(SDA)工程は、C3及びC4を溶媒として用いて抽出によって留分を分離する工程であって、その運転条件は、アスファルテン分離機の圧力を40〜50kg/cm
2とし、脱アスファルトオイル/ピッチ分離抽出温度を40〜180℃とし、溶媒対オイルの比(Solvent:Oil Ratio、L/kg)を4:1〜12:1とする。
【0011】
この過程で電気絶縁油及びインク溶剤のようにより軽質の潤滑基油を生産する場合には、必要に応じて前記スラリーオイル(Cut−SLO又はDA−SLO)を軽質サイクルオイル(LCO)と混合して使用することもできる。
本発明のナフテン系潤滑基油製造の主原料となる流動層触媒反応工程の流出物であるスラリーオイル(SLO)及びこれを減圧蒸留して分離した例示的なCut−1/2/3留分の基本的な性状を表1にまとめた(Cut−1は0〜35%、Cut−2は35〜50%、Cut−3は50〜100%に相当する留分であり、前記Cut−1〜3は軽質成分から体積%で分類したものである)。
【0013】
前記表1に示すように、SLO、Cut−1、Cut−2及びCut−3は、硫黄、窒素の含量、芳香族炭化水素の比率及び沸点などにおいて多様な性状を持っており、表1に示した性状以外にも、減圧蒸留を用いてさらに様々なCutを得ることもできる。一具現例によれば、最終製品の粘度等級及び製品のスレート(Product Slate)を考慮して前記Cut−1とCut−2の体積比を適切に調節して最適の原料を確保することができる。
例えば、沸点約230〜465℃のCut−1と沸点約330〜520℃のCut−2との混合物を本発明の単一触媒システムに供給して水素化処理、触媒脱蝋及び水素化仕上げ反応を行うと、N5(K−Vis@40℃ 4.2〜4.5cSt)、N9(K−Vis@40℃ 8.9〜9.2cSt)、N46(K−Vis@40℃ 43〜47cSt)、N110(K−Vis@40℃ 98〜105cSt)、N460(K−Vis@40℃ 370〜390cSt)などの多様な低/中粘度等級の高品質のナフテン系潤滑基油を得ることができる。それだけでなく、原料製造の際に、Cut−1とCut−2の比率を範囲内で調節すると、製品のスレート(Slate)比率を調整することもできる。
【0014】
本発明は、単一触媒システムを用いて前記ナフテン系潤滑基油だけでなく重質潤滑基油を製造することができるため、経済性及び効率性に優れることを特徴とする。
重質潤滑基油の製造のための主原料は、減圧残渣油(VR)、又は常圧残渣油(AR)及び減圧残渣油(VR)が適切な比率で混合された混合物を脱アスファルテン工程(SDA)に供給して得られた脱アスファルトオイル(DAO)であってもよく、所望の粘度等級の最終製品に適するように或いは500N又は150BS等級の重質潤滑基油を最大に生産することができるように溶剤脱アスファルテン工程から分離された脱アスファルトオイルを減圧蒸留して得た原料であってもよい。
【0015】
本発明の重質潤滑基油製造の主原料として使用することができる、常圧残渣油(AR)と減圧残渣油(VR)を1:1の比率で混合した後、溶剤脱アスファルテン工程(SDA)処理を用いて得た脱アスファルトオイル(DAO)の性状を表2に示した。第1列はSDA処理を用いて得たDAO自体(Full Range DAO)を示し、第2列及び第3列は前記DAO自体(Full Range DAO)を減圧蒸留(V2)して分離した軽質脱アスファルトオイル(Lt−DAO)及び重質アスファルトオイル(H−DAO)を示す。
【0017】
前記表2から分かるように、脱アスファルトオイル(DAO)の蒸留分布をみれば、相対的にスラリーオイルより重いながらもその分布が広い。その結果、DAO自体(Full Range DAO)を単一触媒システムの水素化処理/触媒脱蝋/水素化仕上げ反応に供給すると、中粘度等級のグループII潤滑基油(60N〜150N)だけでなく、500N/150BSなどの重質潤滑基油も得ることができる。特に市場の需要及び製品スレートを考慮し、500N、150BSに該当する重質潤滑基油を高い収率で製造しようとする場合には、前記DAO自体(Full Range DAO)を減圧蒸留して軽質DAO(Lt−DAO)部分を除去し、塔底から得られる重質脱アスファトオイル(H−DAO)を原料として用いる。
【0018】
一方、表1及び表2から分かるように、一般なナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油が約0.1〜0.15wt%の硫黄と約500〜1000ppmの窒素を含有し、芳香族含量が10〜20wt%であることを考慮するとき、単一触媒に供給される原料はナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油に比べて不純物含量と芳香族含量が非常に高い。
したがって、前記ナフテン系潤滑基油製造の原料及び重質潤滑基油製造の原料は、本発明の単一触媒システムを経ることにより、所望する品質の製品に転換できる。
【0019】
本発明の単一触媒システムは、水素化触媒、脱蝋触媒及び水素化仕上げ触媒を含み、水素化処理、触媒脱蝋及び水素化仕上げ反応が順次行われるシステムを意味する。単一触媒システムを構成する各反応工程はそれぞれその反応目的に応じて反応温度、反応圧力、触媒の種類、空間速度(LHSV)、及び供給原料に対する水素の体積比が定められる。特に、本発明の単一触媒システムは、従来の重質潤滑基油の製造に使用された溶媒抽出工程を用いることなく、従来の高品質のナフテン系潤滑基油などの製造に使用された触媒反応工程を変形したもので、所望する品質及び収率のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造することができるように反応条件が最適化されている。
まず、前記ナフテン系潤滑基油製造の原料及び重質潤滑基油製造の原料は、水素化触媒の存在下で水素化処理工程(HDT)を用いて、供給原料に含まれた硫黄、窒素、金属及びPCA(poly Cycle Aromatic)などの不純物を除去する一方で、水素飽和反応を用いて、含有された芳香族成分をナフテン系成分などに転換することができる。水素化処理の目的は、潤滑基油製品の品質及び組成に符合するようにパラフィン、ナフテン及び芳香族の比率を有利にすることができ、高品質の潤滑基油となれるように不純物を除去することにある。特に、後段の脱蝋(又は異性化)工程及び水素化仕上げ工程の触媒に触媒毒として作用しうる不純物を目標値以下に除去することに主目的がある。
【0020】
水素化処理工程(HDT)に供給される原料である、流動層触媒反応工程を介して得た軽質サイクルオイル、スラリーオイル又はこれらの混合物と、溶剤脱アスファルテン工程を介して得た脱アスファルトオイルは、所望する最終潤滑基油の等級及び生産比率を考慮して、水素化触媒の存在下で、順次又は同時に水素化処理される。したがって、本明細書で使用される用語「併産」は、一つの工程を用いて2以上の潤滑基油を同時に得る意味に限定されて解釈されてはならない。すなわち、本発明の単一触媒システムを含む工程を用いると、高品質のナフテン系潤滑基油及び/又は重質潤滑基油を製造することができる意味でも、所望する最終潤滑基油に応じて高品質のナフテン系潤滑基油又は重質潤滑基油のみを製造することができる意味でも解釈できる。
水素化処理工程(HDT)は、300〜410℃の反応温度、30〜220kg/cm
2gの反応圧力、0.1〜3.0hr
-1の空間速度(LHSV)、及び500〜3,000Nm
3/m
3の高級原料に対する水素の体積比の条件で行われ、最適化された反応温度、反応圧力、水素供給の条件で供給原料内に含有された不純物(例えば、硫黄、窒素、金属など)及び2還(ring)以上の芳香族化合物を画期的に減少させることができる。この際、水素化処理反応の苛酷度は後段の触媒寿命に影響を与えない不純物目標値を満足する範囲内で最大限苛酷度を低めて運転を行うことが重要である。その理由は苛酷度が高くなるほど反応後の反応物の粘度下降幅が大きくなってその分だけの基油製品の収率の面で損失が発生するためである。
【0021】
前記水素化処理工程に用いられる触媒は、好ましくは周期律表の第6族、第9族及び第10族金属から一つ以上選択され、より好ましくはCo−Mo、Ni−Mo、又はこれらの組み合わせから一つ以上選択される。ところが、本発明に使用される水素化触媒は、これに限定されず、水素飽和反応及び不純物の除去に効果を有する水素化触媒であればその種類を問わずに使用できる。
水素化処理反応を経た留分は、不純物が顕著に減少し、芳香族の含量も適切であるが、通常は、後段工程触媒への影響を考慮して150ppm以下の硫黄含量(好ましくは100ppm以下)と50ppm以下の窒素含量(好ましくは10ppm以下)を有する。
このように水素化処理工程(HDT)を経た留分は、非常に低い不純物を含有するため、後段の触媒脱蝋反応がさらに安定的かつ盛んに起こり、その結果、潤滑基油製造の面で収率が高く(すなわち、収率の損失が少ない)、選択度に優れて高品質の潤滑基油を製造することができる。
【0022】
前記水素化処理された留分は単一触媒システムの脱蝋触媒の存在下で脱蝋される。本発明に係る脱蝋工程は、低温性状を悪くするN−パラフィンを異性化反応(Isomerization)又はクラッキング(Cracking)反応によって低減又は除去する反応工程を意味する。よって、脱蝋反応を経ると、優れた低温性状を持つことができるため、潤滑基油の流動点規格に合わせることができる。
【0023】
触媒脱蝋工程は、250〜410℃の反応温度、30〜200kg/cm
2gの反応圧力、0.1〜3.0hr
-1の空間速度(LHSV)、及び150〜1000Nm
3/m
3の供給原料に対する水素の体積比の条件下で行われる。
触媒脱蝋工程に用いられる触媒は担体及びこれに担持される金属を含む。前記担体は分子篩(Molecular Sieve)、アルミナ及びシリカ−アルミナから選ばれる、酸点を有する担体である。これらの中でも、分子篩は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)、SAPO、ALPOなどを意味するもので、10員酸素環(10-menmbered Oxygen Ring)を有する中間サイズの多孔性(Medium Pore)分子篩としてSAPO−11、SAPO−41、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48などと、12員酸素環を有する大きいサイズの多孔性(Large pore)分子篩としてFAU、Beta及びMORを含む。
脱蝋触媒に用いられる金属としては、周期律表の第2族、第6族、第8族、第9族及び第10族金属の中から選ばれる、水素化機能を有する金属を含む。特に第9族及び第10俗(すなわち、第VIII族)金属の中ではCo、Ni、Pt、Pdが好ましく、第6族(すなわち、第VIB族)金属の中ではMo、Wが好ましい。
【0024】
触媒脱蝋工程でナフテン系潤滑基油のみを製造する場合には、原料として使用される例えばCut−SLO及びLCO内にはパラフィン含量が非常に少なく、芳香族の含量が高いため、脱蝋すべき反応物が相対的に少なく、原料内の処理が難しい不純物(硫黄、窒素など)が多数存在して、脱蝋触媒として、不純物が強くてクラッキング機能が強いNi(Co)/Mo(W)触媒を使用することが相対的に有利である。勿論、N−パラフィンをイソパラフィンに異性化させる異性化触媒(第10族金属ベース)を用いることにより、高品質のナフテン系潤滑基油を製造することができる。一般に、貴金属触媒を用いる異性化触媒が不純物に脆弱でありうるが、本発明では、水素化処理によって不純物を制御するので、最終製品の性状及び収率を考慮して触媒を選択して使用することが可能である。
一方、重質潤滑基油の製造面では、原料として用いられる脱アスファルトオイル(DAO)の場合、溶媒アスファルテン工程(SDA)の抽出塔頂から製造されるので、パラフィン含量が比較的高い。よって、クラッキング機能の強いNi(Co)/Mo(W)触媒を用いることもできる。ところが、前記触媒を用いると、小幅の収率減少及び粘度下降が発生するおそれがあって、N−パラフィンをイソパラフィンに異性化して流動点を向上させる異性化触媒が有利である。
【0025】
本発明では、互いに異なる原料を用いて単一触媒システムの下で高品質のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造するために、Ni/Mo触媒と異性化(第10族金属ベース)触媒をいずれも適用することができるが、併産製造のためには収率及び性状の面で異性化(第10族金属ベース)触媒が有利である。すなわち、異性化触媒を用いると、性能の面で既存の脱蝋触媒に比べて、同等以上の性能で高品質のナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を併産製造することができる。
前記脱蝋された留分は単一触媒システムの水素化仕上げ触媒の存在下で水素化仕上げされる。水素化仕上げ(Hydrofinishing)工程は、水素化仕上げ触媒の存在下で製品別要求規格によって脱蝋処理された留分のオレフィン及び多環芳香族を除去して安定性を確保し、特にナフテン系潤滑基油の製造面では芳香族の含量及びガス吸湿性などを最終調節する段階である。一般に、150〜300℃の温度、30〜200kg/cm
2の圧力、0.1〜3h
-1の空間速度(LHSV)、及び流入した留分に対する水素の体積比300〜1500Nm
3/m
3の条件で行われる。
【0026】
水素化仕上げ工程に用いられる触媒は、金属を担体に担持して使用し、前記金属には水素化機能を有する第6族、第8族、第9族、第10族及び第11族元素から選ばれた一つ以上の金属を含み、好ましくはNi−Mo、Co−Mo、Ni−Wの金属硫化物系又はPt、Pdの貴金属を使用する。
また、水素化仕上げ工程に用いられる触媒の担体としては、表面積の広いシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア又はゼオライトを使用することができ、好ましくはアルミナ又はシリカ−アルミナを使用する。担体は前記金属の分散度を高めて水素化性能を向上させる役割を果たし、生成物のクラッキング(cracking)又はコーキング(coking)を防止するために酸点を制御することが非常に重要である。
水素化処理(HDT)、触媒脱蝋(CDW)及び水素化仕上げ(HDF)の反応段階を全て経た流出物は、最終的にそのままナフテン系潤滑基油と重質潤滑基油として使用することも可能である。ところが、ナフテン系潤滑基油と重質潤滑基油を各用途及び粘度等級に合わせて分離することができるように分離工程(fractionator)を用いて分離を行う。このような分離工程を用いて、多様な粘度等級の潤滑基油製品を最終的に確保することができる。
【0027】
本発明によって製造されたナフテン系潤滑基油と重質潤滑基油の場合、従来の方法では使用できないN460(40℃での動粘度が350〜420cSt)のナフテン系潤滑基油、又は150BS(40℃での動粘度が500〜600cSt)の重質潤滑基油を製造することができる。例えば、スラリーオイル(SLO)を減圧蒸留及びカットし、それを適切に混合して所望の製品スレート(product slate)を製造することができる。また、H−DAOなどに重いCut−SLO(例えば、SLO55〜65%中間Cut)を一部併合することにより、N−460のナフテン系潤滑基油及び150BSなどの重質潤滑基油を増産することもできる。
本発明の単一触媒システムを用いると、低粘度等級の製品から高粘度等級の重質潤滑基油製品まで得ることができ、製品群及び収率を調節することができて経済性及び効率性に優れる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範疇はこれらの実施例に限定されない。
【0029】
実施例1:流動層触媒反応工程の流出物からの潤滑基油の製造
前記表1に示したCut−SLO留分のうちCut−1及びCut−2を6:4の体積比で混合して原料を製造した後、これを水添脱硫(HDS)、水添脱窒(HDN)及び水添脱金属(HDM)機能を有する商用触媒の下でLHSV=0.5hr
-1、圧力150kg/cm
2g、反応温度370℃、及び水素とオイルの比1500NL/Lの条件で水素化処理を施して硫黄を100ppm以下、窒素を10ppm以下に低めた。
その後、水素化処理された留分を原料とし、異性化触媒としてpt/ゼオライトベースを用いて触媒脱蝋反応を行わせ、水素化仕上げ触媒として(pt/pd)/Al
2O
3触媒を用いて水素化仕上げ反応を行わせた。触媒脱蝋反応及び水素化仕上げ反応の反応圧力は140〜150kg/cm
2gであり、LHSV範囲は1.0〜2.0hr
-1であり、水素とオイルの比は400〜600Nm
3/m
3の範囲であった。この際、触媒脱蝋反応温度は330〜360℃、水素化仕上げ工程の反応温度は200〜250℃であった。運転の際に、反応温度は脱蝋反応流出物の流動点が−40〜−45℃以下となるようにした。
下記表3は本実施例の反応原料と水素化処理/脱蝋/水素化仕上げを経た反応産物(分離機によって分離する以前の状態)の性状を比較分析した結果を示す。
【0030】
【表3】
【0031】
表3に示すように、水素化仕上げ段階を経た留分全体は、そのまま製品として使用することもできるが、粘度等級別に多様な製品を得るために後段分離工程を介して最終ナフテン系潤滑基油に分離することもできる。分離した最終ナフテン系潤滑基油の性状を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
実施例2:溶剤脱アスパルテン工程の流出物(減圧蒸留工程を経たH−DAO)からの潤滑基油の製造
本実施例によってCut−SLOを用いてナフテン系潤滑基油を製造した同一(単一)触媒/工程の下で重質潤滑基油(500N/150BSなど)を高い収率で製造する方法を提示する。表2に示した重質脱アスファルトオイル(H−DAO)を原料として用いて、水素化処理反応工程では、HDS(水添脱硫)、HDN(水添脱窒)、HDM(水添脱金属)機能を有する商用触媒の下で、LHSV=0.5〜1.0hr
-1、反応圧力150kg/cm
2g、反応温度350〜360℃、及び水素とオイルの比1,000〜1,500NL/Lの条件で処理して硫黄を50ppm以下、窒素を5ppm以下に低めた。
【0034】
水素化処理の後に得られた留分を原料として、触媒脱蝋段階では異性化触媒としてpt/ゼオライトを使用し、水素化仕上げ段階では(pt/pd)/Al
2O
3触媒を使用した。反応圧力は140〜150kg/cm
2gとし、LHSVの範囲は1.0〜2.0hr
-1でとし、水素とオイルの比は400〜600Nm
3/m
3として反応を行った。反応温度は、触媒脱蝋工程の場合には330〜360℃、水素化仕上げ工程の場合には200〜250℃であった。運転の際に、反応温度は触媒脱蝋反応流出物の流動点が−20℃以下となるように調節した。
下記の表5は本実施例の反応原料と水素化処理/脱蝋/水素化仕上げを経た反応産物(分離機によって分離する前の状態)の性状を比較分析した結果を示す。
【0035】
【表5】
【0036】
表5から分かるように、K−Vis@40℃が75〜80に達する高粘度等級の留分が確保されることにより、留分全体がそのまま製品として使用できるが、500Nと150BSのように高粘度等級の製品を得るために後段分離工程によって最終重質潤滑基油に分離することもできる。分離した最終潤滑基油の主な性状を表6に示した。重質脱アスファルトオイル(H−DAO)を単一触媒システムに通過させた潤滑基油の場合、500N以上等級の重質潤滑基油の収率が78〜80%であった。
【0037】
【表6】
【0038】
実施例3:溶剤脱アスファルテン工程の流出物(減圧蒸留工程を経ていないDAO)からの潤滑基油の製造
本実施例によってCut−SLO及びH−DAOを用いてナフテン系潤滑基油及び重質潤滑基油を製造した同一(単一)触媒/工程の下でDAO自体(減圧蒸留工程を経ていないDAO)を用いて潤滑基油を製造した。表2に示した脱アスファルトオイル(Full Range DAO)を原料として用いて、水素化処理反応工程ではHDS(水添脱硫)、HDN(水添脱窒)及びHDM(水添脱金属)機能を有する商用触媒の下で、LHSV=0.5〜1.0hr
-1、反応圧力150kg/cm
2g、反応温度350〜360℃、及び水素とオイルの比1000〜1500NL/Lの条件で処理して硫黄を50ppm以下、窒素を5ppm以下に低めた。
水素化処理の後に得られた留分を原料として、触媒脱蝋段階では異性化触媒としてpt/ゼオライトを用い、水素化仕上げ段階では(pt/pd)/Al
2O
3触媒を用いた。反応圧力は140〜150kg/cm
2gとし、LHSVの範囲は1.0〜2.0hr
-1とし、水素とオイルの比は400〜600Nm
3/m
3として反応を行った。反応温度は、触媒脱蝋工程の場合には310〜340℃、水素化仕上げ工程の場合には200〜250℃であった。運転の際に、反応温度は触媒脱蝋反応流出物の流動点が−40℃以下となるように調節した。
下記表7は本実施例の反応原料と水素化処理/脱蝋/水素化仕上げを経た反応産物(分離機によって分離する以前の状態)の性状を比較分析した結果を示す。
【0039】
【表7】
【0040】
表7に示すように、K−Vis@40℃が32.5水準、K−Vis@100℃が4.1水準で低粘度又は中粘度等級の製品が相当部分含有されていることが分かる(実施例2のH−DAOのみを処理した場合、K−Vis@40℃が80水準に達して500N以上の重質潤滑基油が大部分含有されていた。)。前記全体留分を粘度等級別製品に分離した結果、表8に示された製品群を得ることができた。
【0041】
【表8】
【0042】
表8において、60/70N、100N、150Nなどの軽質又は中間等級以下の潤滑基油は40〜45%程度生成され、500N以上の重質潤滑基油は30%以下と相対的に低く生成された。実施例2及び実施例3を介して本発明を用いることにより、500N以上の重質潤滑基油製品を製造することができることを確認することができる。また、脱アスファルテン工程を経た得た脱アスファルトオイルをそのまま使用し、或いは減圧蒸留工程を経て、得ようとする最終製品の種類及び収率を調節することができることが分かる。
【0043】
実施例4:流動層触媒反応工程の流出物と溶剤脱アスファルテン工程の流出物との混合物からの潤滑基油の製造
本実施例によって、重質潤滑基油製造の主原料である重質脱アスファルトオイル(H−DAO)とナフテン系潤滑基油製造の主原料中の重質部分(SLO50〜65%Cut)との混合物を用いて、前記実施例と同一(単一)触媒/工程の下で重質潤滑基油(例えば、500N/150BS)などを高収率で製造する方法を提示する。特に、本実施例でのようにナフテン系潤滑基油の製造原料を混合する場合、150BSなどの重質潤滑基油に芳香族の含量が高くなって低温性状などの面で改善された製品の製造が可能である。前記表2の重質脱アスファルトオイル(H−DAO)に下記表9のナフテン系潤滑基油原料(SLO50〜65%Cut)を7:3の質量比で混合して原料を製造した。製造された混合原料の性状を表9に示した。
【0044】
【表9】
【0045】
前記原料を用いて、水素化処理反応工程では、HDS(水添脱硫)、HDN(水添脱窒)及びHDM(水添脱金属)機能を有する商用触媒の下で、LHSV=0.5〜1.0hr
-1、反応圧力150kg/cm
2g、反応温度360〜380℃、及び水素とオイルの比1500〜2000NL/Lの条件で処理して硫黄を100ppm以下、窒素を10ppm以下に低めた。
水素化処理の後に得られた留分を原料にして、触媒脱蝋段階では異性化触媒としてpt/ゼオライトを使用し、水素化仕上げ段階では(pt/pd)/Al
2O
3触媒を使用した。反応圧力は140〜150kg/cm
2gとし、LHSVの範囲は1.0〜2.0hr
-1とし、水素とオイルの比は400〜600Nm
3/m
3として反応を行った。反応温度は、触媒脱蝋工程の場合には330〜360℃、水素化仕上げ工程の場合には200〜250℃であった。運転の際に、反応温度は触媒脱蝋反応流出物の流動点が−20℃以下となるように調節した。
下記表10は本実施例の反応原料と水素化処理/脱蝋/水素化仕上げを経た反応産物(分離機によって分離する以前の状態)の性状を比較分析した結果を示す。
【0046】
【表10】
【0047】
表10に示すように、K−Vis@40℃が137水準、K−Vis@100℃が13.6に達する高粘度等級の留分が確保されることにより、留分全体がそのまま製品として使用できるが、500Nと150BSのように高粘度等級の製品を得るために後段分離工程によって最終重質潤滑基油に分離することもできる。分離した結果、500N以上の重質潤滑基油を85%以上(特に、150BSは30%以上)の高収率で確保することができ、分離した最終潤滑基油の主な性状を表11に示した。
【0048】
【表11】
【0049】
実施例5:脱蝋触媒に使用される異性化触媒(第10族金属ベース)及びNi/Mo触媒による潤滑基油の製造比較
本実施例を介して、重質潤滑基油の製造観点から、異性化触媒(第10族貴金属ベース)とNi/Mo触媒を用いて重質潤滑基油を製造する方法を提示し、その性能を比較した。まず、表2に示されている重質脱アスファルトオイル(H−DAO)を原料として用いて、水素化処理反応工程ではHDS(水添脱硫)、HDN(水添脱窒)及びHDM(水添脱金属)機能を有する商用触媒の下で、LHSV=0.5〜1.0hr
-1、反応圧力150kg/cm
2g、反応温度350〜360、及び水素とオイルの比1000〜1500NL/Lの条件で処理して硫黄を50ppm以下、窒素を5ppm以下に低めた。
【0050】
そして、水素化処理の後に得られた留分を原料にして、触媒脱蝋反応を行うために2種の触媒を用いて反応を行った。使用した触媒の一つは異性化触媒であって、ゼオライト担体に第10族金属ptを担持させた触媒を用い、もう一つは同一のゼオライト担体に金属Ni/Moが担持された触媒を用いた。水素化仕上げ触媒は両方とも(pt/pd)/Al
2O
3触媒を用いた。触媒脱蝋反応圧力は140〜150kg/cm
2gとし、LHSVの範囲は1.0〜2.0hr
-1とし、水素とオイルの比は400〜600Nm
3/m
3として反応を行った。反応温度は、触媒脱蝋工程の場合には310〜380℃、水素化仕上げ工程の場合には200〜250℃であった。脱蝋反応工程の運転の際に、反応温度は触媒脱蝋反応流出物の流動点が−20〜25℃以下となるように調節した。
下記表12は反応完了の後に2種の脱蝋触媒を反応温度及び潤滑基油の収率面で比較して示す。
【0051】
【表12】
【0052】
表12から分かるように、脱蝋反応で使用した触媒を除いた、単一触媒システムの反応条件を同一にした状態で重質潤滑基油の収率及び反応温度の観点における性能を比較した結果、脱アスファルト油を原料として重質潤滑基油を製造するとき、Ni/Mo担持触媒に比べて、第10族の貴金属が担持された異性化脱蝋触媒が有利である。
【0053】
以上、本発明の好適な実施例を説明の目的で開示したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変形、追加及び置換を加え得ることを理解するであろう。