特許第5986576号(P5986576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986576
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】新規アジュバント
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160823BHJP
   C07K 14/44 20060101ALI20160823BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 39/008 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/44
   C07K19/00
   A61K39/00 A
   A61K39/39
   A61K39/008
   A61P37/04
   A61P43/00 105
【請求項の数】23
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-538198(P2013-538198)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2014-500719(P2014-500719A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】EP2011069849
(87)【国際公開番号】WO2012062861
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月16日
(31)【優先権主張番号】61/412,034
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10190705.3
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513115350
【氏名又は名称】ラボラトリオス レティ,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】ベダテ,カルロス アロンソ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス,マヌエル ソト
(72)【発明者】
【氏名】パロディ,ヌリア デラ フエンテ
(72)【発明者】
【氏名】ピコ デ コアニャ,ヤゴ スアレス
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−533474(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0138451(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 14/00−14/825
UniProt/GeneSeq
DDBJ/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.その全長にわたり、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列、
ii.その全長にわたり、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、および
iii.その相補鎖が、配列(i)又は(ii)の核酸分子と高度のストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配
らなる群より選択されるヌクレオチド配列によって表される核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が抗原をコードしているヌクレオチド配列へ作動可能に連結されているとき、アジュバントとして使用するための核酸分子であって、
該核酸分子は、その全長にわたり、配列番号3と少なくとも85%の配列同一性を有するポリペプチドをコードしている配列がない、核酸分子。
【請求項2】
前記核酸の配列が、前記抗原をコードしているヌクレオチド配列へ作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
核酸分子が、患者において抗原特異的免疫応答を誘発し得るポリペプチドをコードしている、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記抗原が、患者の疾患又は症状に関連づけられることが知られている任意の生物に由来する、請求項2または3に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記抗原が、自己(self)もしくは自家(auto)抗原であるか、或いはウイルス又は、細菌、酵母真菌、もしくは寄生虫などの微生物に由来する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子によってコードされたポリペプチド。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされたポリペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載の核酸分子を含む核酸構築物。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子を含む核酸構築物。
【請求項10】
請求項1に記載の核酸分子、及び/又は請求項6に記載のポリペプチド、及び/又は請求項8に記載の核酸構築物を含む組成物。
【請求項11】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子、及び/又は請求項7に記載のポリペプチド、及び/又は請求項9に記載の核酸構築物を含む組成物。
【請求項12】
薬物として使用するための、請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記薬物がワクチンである、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
薬物として使用するための、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項15】
請求項14に記載の薬物として使用するためのポリペプチドであって、該薬物がワクチンである、ポリペプチド。
【請求項16】
薬物として使用するための、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記薬物がワクチンである、請求項16に記載の薬物として使用するための核酸構築物。
【請求項18】
薬物として使用するための、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬物がワクチンである、請求項18に記載の薬物として使用するための組成物。
【請求項20】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の抗原に関連する疾患又は症状を治療するための薬物の製造のための、請求項1に記載の核酸分子、請求項6に記載のポリペプチド、請求項8に記載の核酸構築物、及び/又は請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記抗原に関連する疾患又は症状を治療するためのワクチンである薬物の製造のための、請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項7に記載のポリペプチド、請求項9に記載の核酸構築物、及び/又は請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項22】
ヒトでない患者において、請求項2〜5のいずれか1項に記載の抗原に関連する疾患又は症状を治療する方法であって、前記治療が、請求項1に記載の核酸分子、請求項6に記載のポリペプチド、請求項8に記載の核酸構築物、及び/又は請求項10に記載の組成物を含む方法。
【請求項23】
ヒトでない患者において、請求項2〜5のいずれか1項に記載の抗原に関連する疾患又は症状を治療する方法であって、前記治療が、請求項2〜5のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項7に記載のポリペプチド、請求項9に記載の核酸構築物、及び/又は請求項11に記載の組成物を含むワクチンを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アジュバント、及び抗原と組合せたワクチンとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは、その役割が、特異抗原と組合せて用いたとき、抗原特異的免疫応答を増進するか又は指示することである物質として定義される(非特許文献1)。通常、抗原と組合されたアジュバントは、現在利用可能な市販のワクチンの場合と同様、それら自体に対する免疫応答は誘導しない。殆どの抗原は免疫原性が乏しいことから、アジュバントは、こうした抗原に対する自然及び獲得免疫応答を増強、活性化、及び指示するために使用される。アジュバントの概念は、宿主の免疫系と投与された抗原との間の境界において作用する、免疫系の特異細胞上の表面分子と相互作用するキャリアへ拡大されてきた(非特許文献2)。そうすることで、アジュバントは免疫系を刺激することを助け、かつ同時投与された抗原に対する応答を増大させる。それ故、アジュバントはワクチンの開発に広く使用されてきた。
【0003】
アジュバントは、その物理化学的(physiochemical)性質又は作用機序によって分類し得る。アジュバントの2つの主要なクラスには、免疫応答を刺激する細菌毒素などの、免疫系に直接作用する化合物と、制御された方式で抗原提示を促進することができ、かつキャリアとして行動する分子とが含まれる。現在、油、アルミニウム塩、タンパク質、及び核酸を包含する抗原の免疫学的特性を増大するために、数多くのアジュバントが使用されている(非特許文献3)。
【0004】
原則として、抗原に対する応答、及び免疫応答の質は、アジュバントの純度及び性質に大いに依存するものであることから、理想的なアジュバントは、品質管理を促進するような方法で、化学的及び物理的に充分に定義されるべきである。殆どの場合、抗原は充分に定義されていることから、アジュバントの特異性のコントロールが、最終的な抗原特異免疫応答の再現可能な発生を保証するものとなるであろう。このような状況においては、アジュバントは、抗原に対し免疫応答を誘発するばかりでなく、また抗原が宿主において誘発した免疫応答を指示することがあってもよい。もし免疫応答が適切な方向に進行すれば、アジュバントの性質は、治療用製品としての抗原の価値に実質的に影響を及ぼすことができる。抗原に対する免疫応答(液性又は細胞媒介性)の誘導を助けることに加えて、アジュバントの目的は、特定のサイトカインの産生をもたらす免疫エフェクターを誘発することである。さらに、抗原−アジュバント構築物によって誘導される免疫応答の特異性及び大きさは、宿主の免疫細胞の性質に大いに依存し得ることから、アジュバントの効力は、宿主に無関係に分析することはできない。したがって、抗原により誘導される免疫応答は、アジュバントの性質と宿主の免疫系の性質とに依存して変わり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ワック(Wack,A.)ら、「Curr.Opin.Immunol.」、2005年、第17巻、p.411−418.
【非特許文献2】セガル(Segal BH)ら、「Drug Discov Today」、2006年6月、第11巻、第11−12号、p.534−40.
【非特許文献3】リード(Steven G.Reed)ら、「Expert Rev.Vaccines、2003年、第2巻、p.167−188.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新規なワクチンが開発中であり、かつ免疫応答の効率的な誘導を得るためにアジュバントはほぼ常に必要であることから、新規なアジュバントが常に必要である。新規なアジュバントはまた、新規な魅力的な特性をワクチンに付与し得る。例えば、それらは誘導された免疫応答のタイプ及び方向に影響を及ぼし得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様においては:
i. 配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチドをコードしている、ヌクレオチド配列、
ii. 配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列、
iii. その相補鎖が、配列(i)又は(ii)の核酸分子とハイブリダイズするヌクレオチド配列、及び
iv. 遺伝コードの縮重のため、(iii)の項目下の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列によって表される核酸分子が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことにリーシュマニア(Leishmania)種由来の特定のタンパク質フラグメントの、定義された抗原への遺伝子融合が、その結果得られたキメラタンパク質がインビボでマウスに投与される場合、融合された抗原の免疫原性的潜在能力を有意に増大し得ることを示す。本発明者らはまた、DNAプラスミド中に存在するキメラ遺伝子のインビボの発現から得られたタンパク質もまた、遺伝子融合された抗原に対し高い液性応答を誘導する一方、抗原をコードする遺伝子のみを含有するプラスミドの投与はそうではないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、固相Kmp11を示す図である。Kmp11及びQに対する液性応答。A:Kmp11(20μg)のip及びsc投与後の、Kmp11に対するIgG応答。B:KAAP(5μg)及びKmp11(1μg)のip及びsc投与後の、Kmp11に対するIgG応答。C:KAAP(5μg)のip及びsc投与後の、Qに対するIgG応答。D:Q(5μg)+Kmp11(20μg)のip及びsc投与後の、Kmp11に対するIgG応答。E:Q(5μg)+Kmp11(20μg)のip及びsc投与後の、Qに対するIgG応答。バーは、群内の動物間の応答のばらつきを示す。
図2図2は、固相Kmp11を示す図である。Kmp11及びQに対する液性応答。A:ip及びscによる、KAAP(1μg)及びKmp11(0,25μg)の投与後の、Kmp11に対するIgG液性応答。B:ip及びscによる、KAAP(1μg)の投与後の、Qに対する液性応答。C:KAAP(1μg)のip及びsc投与後の、Kmp11に対するIgG1及びIgG2a応答。D:KAAP(1μg)のip及びsc投与後の、Qに対するIgG1及びIgG2a応答。バーは、群内の動物間の応答のばらつきを示す。
図3図3は、固相Kmp11を示す図である。Kmp11及びQに対する液性応答。A:pRcKmp11(20μg)、KAAP(3μg)、及びpRcKAAP 20μg)のsc投与後の、Kmp11に対するIgG応答。B:KAAP(3μg)及びpRcKAAP(20μg)のsc投与後の、Qに対するIgG応答。C:pRcKmp11(20μg)、KAAP(3μg)、及びpRcKAAP(20μg)のsc投与後の、Kmp11に対するIgG1及びIgG2a応答。D:KAAP(3μg)及びpRcKAAP(20μg)のsc投与後の、Qに対するIgG1及びIgG2a応答。バーは、群内の動物間の応答のばらつきを示す。
図4.1】図4.1は、固相Kmp11を示す図である。PBS、KAAP、及びpRcKAAP注射マウスからの、非刺激及びKAAP刺激脾細胞におけるサイトカイン産生。バーは、三重の測定間のばらつきを示す。Y軸に示した単位は、pg/mlで表示されている。X軸には、ワクチン接種を受けた群が示されている。
図4.2】図4.2は、固相Kmp11を示す図である。PBS、KAAP、及びpRcKAAP注射マウスからの、非刺激及びKAAP刺激脾細胞におけるサイトカイン産生。バーは、三重の測定間のばらつきを示す。Y軸に示した単位は、pg/mlで表示されている。X軸には、ワクチン接種を受けた群が示されている。
図5.1】図5.1は、固相Kmp11を示す図である。PBS、KAAP、及びpRcKAAP注射マウスからの、非刺激及びKmp11刺激脾細胞におけるサイトカイン産生。バーは、三重の測定間のばらつきを示す。Y軸に示した単位は、pg/mlで表示されている。X軸には、ワクチン接種を受けた群が示されている。
図5.2】固相Kmp11を示す図である。PBS、KAAP、及びpRcKAAP注射マウスからの、非刺激及びKmp11刺激脾細胞におけるサイトカイン産生。バーは、三重の測定間のばらつきを示す。Y軸に示した単位は、pg/mlで表示されている。X軸には、ワクチン接種を受けた群が示されている。
図6図6A〜Cは、固相Cup a 4を示す図である。動物は、PBS、5μgのCAAP;2μgのCup a 4、及び2μgのCup a 4+3μgのAAP、の3回の投薬で免疫化された。3回目の投薬の1週間後、血清を収集し、Cup a 4に対する反応性を分析した。1A−:IgG反応性。1B−:IgG1反応性。1C−:IgG2a反応性。血清は、IgGでは1/2000、またIgG1及びIgG2aでは1/1000希釈において試験した。星印は、統計的有意差を示す。
図7図7A〜Cは、固相Cup a 4を示す図である。動物は、PBS、5μgのCAAP;2μgのCup a 4、及び2μgのCup a 4+3μgのAAP、の2回の投薬で免疫化された。2回目の投薬の1週間後、血清を収集し、Cup a 4に対する反応性を分析した。2A−:IgG反応性。2B−:IgG1反応性。1C−:IgG2a反応性。血清は、IgGでは1/1600、またIgG1及びIgG2aでは1/400希釈において試験した。星印は、統計的有意差を示す。
図8図8は、固相Cup a 4を示す図である。PBS、1.25μgのCAAP;0.5μgのCup a 4、及び0.5μgのCup a 4+0.75μgのAAPの、1回の投薬で免疫化された動物からの血清のIgG反応性。投薬の1週間後、血清を収集し、Cup a 4に対する反応性を分析した。血清は、1/100希釈において試験した。星印は、統計的有意差を示す。
図9図9A〜Cは、固相Cup a 4を示す図である。動物は、PBS、1.25μgのCAAP;0.5μgのCup a 4、及び0.5μgのCup a 4+0.75μgのAAPの、2回の投薬で免疫化された。2回目の投薬の1週間後、血清を収集し、Cup a 4に対する反応性を分析した。4A−:IgG;4B−IgG1;4C−IgG2a。血清は、IgGについては1/4000、またIgG1及びIgG2aについては1/100の希釈において試験した。星印は、統計的有意差を示す。
図10図10は、固相S100A2を示す図である。S100A2に対する反応性(O.D.単位で)。4群の動物(N=5)を、S100AAP(1.05μg)、S100A2(0.3μg)、AAP(0.75μgのAAP)、及びS100A2+AAP(0.3μg+0.75μg)の1回の投薬で免疫化した。対照として用いたもう1つの動物群には、PBS緩衝液を投与した。血清は、タンパク質投与の15日後に取得した。血清を、1/100の希釈において分析した。
図11図11A〜Cは、固相S100A2を示す図である。S100A2に対する反応性(O.D.単位で)。図1に示した動物の同じ群を、S100AAP(1.05μg)、S100A2(0.3μg)、AAP(0.75μgのAAP)、及びS100A2+AAP(0.3μg+0.75μg)で、1回目の投薬の15日後に免疫化した。1週間後、血清を取得した。(A)IgG反応性。(B)IgG1反応性。(C)IgG2反応性。血清は、1/200の希釈において分析した。星印は、高い統計的有意差を示す。
図12図12は、発現ベクターCup a4 AAPを示す図である。
図13図13は、発現ベクターS100A2 AAPを示す図である。
図14図14a〜cは、3回目の免疫化後のS100A2に対する反応性(O.D.単位で)。図1に示した動物の同じ群を、S100AAP(1.05μg)、S100A2(0.3μg)、AAP(0.75μgのAAP)、及びS100A2+AAP(0.3μg+0.75μg)で、2回目の投薬の15日後に免疫化した。1週間後、血清を取得した。(a)IgG反応性。(b)IgG1反応性。(c)IgG2a反応性。血清は、1/6400の希釈において分析した。星印は、統計的有意差を示す(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
核酸分子
第一の態様においては:
i. 配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチドをコードしている、ヌクレオチド配列、
ii. 配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列、
iii. その相補鎖が、配列(i)又は(ii)の核酸分子とハイブリダイズするヌクレオチド配列、及び
iv. 遺伝コードの縮重のため、(iii)の項目下の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列によって表される核酸分子が提供される。
前記核酸分子は、好ましくは、前記核酸分子が本明細書で後に定義される通りの抗原をコードしているヌクレオチド配列へ作動可能に連結されているとき、アジュバントとしての使用に向けたものである。
【0011】
本発明において記載された核酸分子は、コードされたタンパク質がアジュバントとして使用できることから魅力的である。アジュバントは、本明細書において、抗原がアジュバントと組合せて投与されるとき、免疫応答又はその増大が前記抗原に対し誘発されるような方法で、該抗原を免疫系に提示することができる分子として定義される。抗原特異的に誘発された免疫応答を分析するため、前記免疫応答が、アジュバントなしで抗原の存在下に誘導された免疫応答と比較される。誘導は、患者又は患者からの細胞において評価する。
【0012】
このような状況においては、抗原特異的に誘発された免疫応答とは、前記抗原に対する誘導免疫応答、又は前記抗原に対する免疫応答もしくは前記抗原に対する検出可能な免疫応答の誘導における増大と同義である。抗原特異的免疫応答を誘発することは、抗原に対する免疫応答を誘導すること、増強すること、又は増大することと置換えてもよい。
【0013】
免疫応答は、B及び/又はT細胞応答であってもよい。免疫応答は、B細胞応答、即ち前記抗原に対し特異的に向けられた抗体の産生であってもよい。抗体は、好ましくはIgG抗体、さらに好ましくは、IgG2a抗体及び/又はIgG1抗体である。免疫応答は、T細胞応答、好ましくはTh1応答、Th2応答、又はバランスのとれたTh2/Th1応答であってもよい。当業者は、疾患によっては、それを管理するのにB及び/又はT細胞応答が誘導される必要があってもよいことを承知している。前記抗体の産生は、ELISAにより、好ましくは実施例において行われた通りに評価することもできる。別法として、前記免疫応答は、例えば、IFNガンマ、IL−6、TNF−アルファ、又はIL−10などの、サイトカインの産生を測定することにより検出してもよい。かかるサイトカインの産生は、ELISAにより、好ましくは実施例において行われた通り評価することもできる。
【0014】
好ましい実施態様においては、抗原特異的に誘発された免疫応答の検出とは、前記検出が前記アジュバント及び抗原の投与後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間もしくはそれより後か、或いは前記アジュバント及び抗原の投与の少なくとも1日後、又は少なくとも2日後、又は少なくとも3日後、又は少なくとも4日後もしくはそれより後に行われることを意味する。検出は、患者又は患者からの細胞において、好ましくは実施例において行われた通り評価される。
【0015】
本発明のこのような状況においては、抗原特異的に誘発された免疫応答とは、好ましくは、前記抗原に対する検出可能な免疫応答を意味する。検出可能な増大は、前記アジュバント及び抗原の投与後の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8,9、10、11、12時間もしくはそれより後か、或いは少なくとも1日後、又は少なくとも2日後、又は少なくとも3日後、又は少なくとも4日後もしくはそれより後における、本明細書において既に特定された通りの抗体及び/又はサイトカインの量の、好ましくは少なくとも5%、又は10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%もしくはそれより多い増大を意味する。検出は、患者又は患者からの細胞において、好ましくは実施例において行われた通り評価される。
【0016】
好ましくは、本明細書において先に定義された具体的な特定のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列(それぞれ配列番号1、配列番号2)と、少なくとも50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性もしくは類似性を有する前記アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列は、コードされたポリペプチドがアジュバントとして適格である場合、機能性であると言える。前記アミノ酸配列によって表される前記ポリペプチドは、抗原と共に使用されたとき、前記抗原に対する免疫応答を少なくともある程度まで誘発すること、誘導すること、増強すること、又は増大することができる。「少なくともある程度」までとは、好ましくは、配列番号1を用いて検出される抗原特異的免疫応答の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%ということを意味する。抗原に対する免疫応答を誘発すること、誘導すること、増強すること、又は増大することとは、本明細書において先に定義されている。
【0017】
本明細書に定義された核酸分子は、好ましくは、配列番号2の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42個又はそれより多い連続したヌクレオチドを含んでなり、かつそのコードされたポリペプチドが、本明細書において先に定義された通りの抗原と共に使用されたとき、抗原に対し免疫応答を誘発すること、誘導すること、増強すること、又は増大することが可能な分子である。好ましい実施態様においては、本明細書に定義された通りの前記核酸分子は、好ましくは、配列番号2の少なくとも762、765、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、又は1110個の連続したヌクレオチドを含む分子である。1つの好ましい実施態様においては、本明細書に定義された通りの前記核酸分子は、好ましくは、配列番号2の多くとも1110、1000、990、980、970、960、950、940、930、920、910、900、890、880、870、860、850、840、830、820、810、800、790、780、770、又は765個の連続したヌクレオチドを含む分子である。
【0018】
本明細書に定義されたポリペプチドは、好ましくは、配列番号1の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42個又はそれより多い連続したアミノ酸を含んでなり、かつ本明細書において先に定義された通りの抗原と共に使用されたとき、抗原に対し免疫応答を誘発すること、誘導すること、増強すること、又は増大することが可能なポリペプチドである。好ましい実施態様においては、本明細書に記載された通りの前記核酸分子は、好ましくは、配列番号1の少なくとも254、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、又は370個の連続したアミノ酸を含む分子である。好ましい実施態様においては、本明細書に定義された通りの前記核酸分子は、好ましくは、配列番号1の多くとも370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、又は254個の連続したアミノ酸を含む分子である。配列番号1からなるポリペプチドはまた、AAP(増強剤及び活性化剤タンパク質)とも呼ばれる。
【0019】
本発明に包含されるアミノ酸又はヌクレオチド配列は、本明細書に特定された通りの配列の1つから、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれより多いヌクレオチド又はアミノ酸を、それぞれ置換すること、挿入すること、欠失すること、又は付加することにより誘導されてもよい。本発明に包含されるアミノ酸は、本明細書に特定された通りの配列の1つから、安定性、溶解性、及び免疫原性を高めるべく、付加的なN−もしくはC−末端アミノ酸、又は化学基を添加することにより誘導されてもよい。1つの実施態様においては、本発明に包含されるアミノ酸配列は、配列番号1に存在する少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換によって、配列番号1から誘導される。置換されてもよい前記アミノ酸は、ヒスチジンであってもよい。当業者は、ヒスチジンがアスパラギン又はグルタミンで置換されてもよいことを承知している(即ち、本明細書で後に定義される通りの保存的置換)。それ故、1つの実施態様においては、本発明に包含されるアミノ酸配列は、配列番号1に由来し、かつ1、2、3、4、5、又は多くとも6個のヒスチジンを含む。したがって、1つの実施態様においては、本発明に包含される核酸配列は、配列番号2に由来し、かつ1、2、3、4、5、又は多くとも6個のヒスチジンを含むアミノ酸配列をコードしている。1つの実施態様においては、前記アミノ酸配列は何らヒスチジンを含むことはなく、及び/又は、前記対応する核酸配列はヒスチジンを含むことはないアミノ酸配列をコードしている。
【0020】
したがって、1つの実施態様においては、核酸分子は:
i. 配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチドをコードしているヌクレオチド配列、
ii. 配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性又は類似性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
iii. その相補鎖が、(i)又は(ii)の配列の核酸分子に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、及び
iv.遺伝コードの縮重のため、(iii)の項目下の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列によって表され、
かつここで、前記核酸分子は、1、2、3、4、5、又は多くとも6個のヒスチジンを含むアミノ酸配列をコードしている。好ましくは、前記核酸分子はヒスチジンを含むことはないアミノ酸配列をコードしている。好ましくは、前記核酸分子において、ヒスチジンをコードする少なくとも1つのコドン、又はヒスチジンをコードする少なくとも2、3、4、5、もしくは6個のコドンが、アスパラギン又はグルタミンをコードするコドンで置換されている。
【0021】
1つの好ましい実施態様においては、本明細書において先に定義された通りのヌクレオチド配列により表される本発明の核酸分子は、抗原をコードしているヌクレオチド配列をさらに含む。本発明者らは、抗原をコードする対応するヌクレオチド配列が本明細書において先に定義された通りのアジュバントをコードしている核酸分子に、含まれてなっていたか、融合されていたか、又は作動可能に連結されていた場合、本発明のアジュバントによって誘発された免疫応答が最適であったことを見出した。それ故、本発明のアジュバントは、好ましくは、そのコードしているヌクレオチド配列が、抗原をコードしているヌクレオチド配列へ融合されるか、又は作動可能に連結されるような方法で使用される。
【0022】
1つの好ましい態様においては、本発明の前記核酸分子は、その全長にわたり、配列番号3と同一か又は少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、76%、75%であるポリペプチドをコードしている配列がないか、又は含むことはない。
【0023】
抗原は、本明細書では、ある分子が患者に存在するとき、前記抗原に対して誘起された抗体により認識されることが可能な前記分子として定義される。抗原が患者に存在するとき、特異的な免疫応答を前記患者から誘導することができる前記抗原は、免疫原性がある又は免疫原であると言われる。免疫応答は、好ましくは本明細書において先に定義された通りである。抗原は、好ましくはポリペプチド又はペプチドである。ペプチドは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18,19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、又はそれより多いアミノ酸を含んでなっていてもよい。抗原は、本明細書で後に特定される通りの生物に起源する、タンパク質フラグメント又は完全長タンパク質であってもよい。同じ生物からのいくつかの抗原を用いて、その生物と戦う際により有効になるようにすることも可能である。抗原はまた、核酸配列により表される、コードしている核酸分子を参照することによって定義されてもよい。
【0024】
抗原の供給源は、タンパク質、タンパク質の消化物、及び/又はそれらのフラグメントでもよく、それらは精製された形態であってもよく、或いは、好ましくは生物学的起源の粗組成物、例えば細菌ライセート、寄生虫ライセート、酵母ライセート、ウイルスライセート、真菌ライセート、超音波処理物、又は凝固物の中に含まれてなっていてもよい。別法として、抗原は、化学的に合成されるか又はインビトロで酵素的に産生されてもよい。抗原としてのタンパク質又はそのフラグメントの源はまた、RNA又はDNA鋳型からの、前記のものをコードしている核酸又はそのフラグメントであってもよい。RNA又はDNA分子は、「裸」のDNAであってもよく、好ましくはベシクルもしくはリポソーム中に含まれてなるか、又はそれらは核酸構築物もしくはベクター中に含まれてなっていてもよい。ベクターは、当該技術分野において公知の任意の(組換え)DNA又はRNAベクターでよく、かつ好ましくはプラスミドであり;ここで、潜伏期関連抗原をコードしている遺伝子は、コードされたメッセンジャーの発現及び翻訳を付与する調節配列に対し、作動可能に連結されている。ベクターはまた、限定するものではないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)、又は鶏痘ウイルスなどの、任意のDNA又はRNAウイルスか、或いは選ばれた患者の体内にポリペプチドの発現を付与することができる任意の他のウイルスベクターでもよい。DNAベクターは、エピソーム式複製ベクターなどの、非組込み型であってもよく、或いはランダムな組込みによるか又は相同組換えにより、宿主ゲノム中に組込まれるベクターであってもよい。
【0025】
任意選択でウイルス又はプラスミドなどのベクター中にはめ込まれた、本発明による抗原タンパク質又はそのフラグメントをコードしている遺伝子を含むDNA分子が、患者のゲノム中に組込まれてもよい。本発明の好ましい実施態様においては、かかる宿主は微生物であってもよい。好ましくは、かかる組換え微生物は、本発明によるポリペプチド又はそのフラグメントを宿主に送達することができる、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)、スメグマ菌(M.smegmatis)、又はウシ型結核菌(M.bovis)などの種であり、かつ最も好ましくは、ウシ型結核菌カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette Guerin(BCG))、又はスメグマ菌である(Yue.Y.et al,(2007),J.Virol.Meth.,141:41−48,Cayabiyab Y.et al,(2006),J.Virol.,80:1645−1652に記載の通り)。組換えBCG及び組換えの方法は、当該技術分野において公知である;例えば、国際公開第2004/094469号。かかる組換え微生物は、Jacobs et al.1987,Nature,327(6122):532−5に示された通り、生きた組換え体及び/又は生きた弱毒化ワクチンとして製剤されてもよい。ベクターはまた、限定するものではないが、生きた弱毒化及び/又は組換え赤痢菌属(Shigella)もしくはサルモネラ属(Salmonella)の細菌などの、細菌起源の宿主中に含まれてなっていてもよい。
【0026】
本発明のこのような状況においては、患者はヒト又は動物を意味する。本発明の範囲内に包含される動物は、哺乳類、好ましくはイヌを含む。
【0027】
抗原は、患者の疾患又は症状に関連づけられることが知られている、任意の生物に由来してもよい。抗原は、細菌、酵母、真菌、寄生虫などの微生物に由来してもよい。別法として、抗原はウイルスに由来してもよい。抗原はまた、例えば、癌又は腫瘍抗原に、関連するか又はつながる、自己(self)又は自家(auto)抗原であってもよい。抗原はまた、アレルギー疾患に関連づけられるか又は結びつけられてもよい。
【0028】
疾患は、寄生虫症であってよい。この場合、抗原は、アピコンプレックス門(apicomplexa)(例えば、プラスモジウム属(Plasmodium))及び/又はキネトプラスト(kinetoplastidae)門に属する原虫、とりわけトリパノソーマ科のメンバー、さらにとりわけトリパノソーマ科の原虫リーシュマニア(Leishmania)の様々な種に由来してもよい。リーシュマニアには、L.メジャー(L.major)を含む大型リーシュマニア群(complex L.major)と、L.チャガシ(L.chagasi)、L.ドノバニ(L.donovani)、及びL.インファンツム(L.infantum)を含むドノバンリーシュマニア群(complex L.Donovani)と、L.アマゾネンシス(L.amazonensis)及びL.メキシカーナ(L.mexicana)を含むメキシコリーシュマニア群(complex L.Mexicana)とを含む、リーシュマニア亜属の種、並びに、L.ブラジリエンシス(L.braziliensis)及びL.ペルビアナ(L.peruviana)を含むブラジルリーシュマニア群(complex L.braziliensis)と、L.グヤネンシス(L.guyanensis)及びL.パナメンシス(L.panamensis)を含むガイアナリーシュマニア群(complex L.guyanensis)とを含む、亜種ビアンニア(Viannia)を含む、20を超える公知の種がある。好ましい実施態様においては、抗原は、リーシュマニア種、好ましくはリーシュマニア・メジャー及び/又はリーシュマニア・インファンツムに由来する。もう1つの好ましい実施態様においては、抗原は、プラスモジウム種から得られる。とりわけ興味のあるプラスモジウム種は、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)及びプラスモジウム・ビバックス(Plasmodium vivax)である。
【0029】
例えば、抗原が寄生虫から、好ましくはリーシュマニア症を引き起こすリーシュマニア種から由来する場合、前記化合物は、イボラらによる刊行物(Iborra,S.et al 2004.Vaccine 22:3865−76)に記載された通りの寄生虫症を引き起こす寄生虫に由来する、別のタンパク質の供給源からなる群から選択することもできる。抗原の好ましいタンパク質供給源は、このような状況においては、H2A、H2B、H3、H4などのヒストンか、又はLiP0、L2、L7、L8、L16、S6、L3、L5、及びS4などのリボソームタンパク質である。好ましいH2Aタンパク質は、配列番号3によって表される。H2Aをコードしている好ましい核酸は、配列番号4によって表される。好ましいH2Bタンパク質は、配列番号5によって表される。H2Bをコードしている好ましい核酸は、配列番号6によって表される。好ましいH3タンパク質は、配列番号7によって表される。H3をコードしている好ましい核酸は、配列番号8によって表される。好ましいH4タンパク質は、配列番号9によって表される。H4をコードしている好ましい核酸は、配列番号10によって表される。好ましいLiP0タンパク質は、配列番号11によって表される。LiP0をコードしている好ましい核酸は、配列番号12によって表される。好ましいL2タンパク質は、配列番号13によって表される。L2をコードしている好ましい核酸は、配列番号14によって表される。好ましいL7タンパク質は、配列番号15によって表される。L7をコードしている好ましい核酸は、配列番号16によって表される。好ましいL8タンパク質は、配列番号17によって表される。L8をコードしている好ましい核酸は、配列番号18によって表される。好ましいL16タンパク質は、配列番号19によって表される。L16をコードしている好ましい核酸は、配列番号20によって表される。好ましいS4タンパク質は、配列番号21によって表される。S4をコードしている好ましい核酸は、配列番号22によって表される。好ましいS6タンパク質は、配列番号23によって表される。S6をコードしている好ましい核酸は、配列番号24によって表される。好ましいL3タンパク質は、配列番号25によって表される。L3をコードしている好ましい核酸は、配列番号26によって表される。好ましいL5タンパク質は、配列番号27によって表される。L5をコードしている好ましい核酸は、配列番号28によって表される。
【0030】
別の例は、ストバーら、及びエビシャーら、及びポウトら(Stober C.B.U.G.,et al(2006),Vaccine.,24:2602−2616;Aebischer T.,et al,(2000)Infection and Immunity.,68:1328−1336;及びPoot J et al,(2009),Vaccine,27:4439−4446)に見られる通りの、いくつかの寄生虫抗原を含有するポリ−プロテインの使用である。
【0031】
次の段落では、ヒストンタンパク質はまた、抗原のタンパク質供給源として使用してもよい。好ましい化合物は、ヒストンタンパク質もしくはそのフラグメント、又は前記ヒストンもしくは前記ヒストンフラグメントをコードしている核酸分子を包含する。さらに好ましくは、ヒストンタンパク質は、EP 1 687 023において同定された通りの、H2A、H2B、H3、及び/又はH4である。ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4は、充分に保存された核タンパク質であり、かつそれらの配列は、当該技術分野において周知である(Requena,J.M.,et al 2000;Parasitol Today 16:246−50)。好ましくは、ヒストンは、疾患を引き起こす生物と系統樹において近接している生物から得られる。それ故、リーシュマニア症などの寄生虫症の治療において使用されるべきヒストンの供給源として特に興味深いのは、原虫、例えばプラスモジウムである。加えて、興味深いのは、トリパノソーマ科のメンバー、より詳細にはトリパノソーマ科の原虫リーシュマニアの様々な種である。
【0032】
他の好ましい化合物は、他のリボソームタンパク質もしくはそのフラグメント、又は前記タンパク質もしくはそのフラグメントをコードしている核酸分子を包含する。他のリボソームタンパク質の例は、L19及びS4を包含する。
【0033】
他の好ましい化合物は、国際公開第2009/090175号において同定された通りの、リボソームタンパク質抽出物を包含する。
【0034】
疾患は、限定するものではないが、アレルギー又は癌を包含する。癌に関連づけられるか又は癌に特異的であることが知られている任意のタイプの抗原を、本発明のこのような状況において使用してもよい。かかるタイプの抗原はまた、腫瘍抗原とも称される。腫瘍抗原は、突然変異した癌遺伝子もしくは突然変異した腫瘍抑制遺伝子のタンパク質産物、又は腫瘍もしくは癌において発現されることが知られている任意の遺伝子もしくは突然変異した遺伝子のタンパク質産物であってもよい。腫瘍抗原は、過剰発現されたか、又は異常に発現された遺伝子のタンパク質産物であってもよい。腫瘍抗原は、癌ウイルスのタンパク質産物であってもよい。腫瘍抗原は、癌胎児遺伝子のタンパク質産物であってもよい。腫瘍抗原の例には、以下の遺伝子のタンパク質産物が包含される:アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、黒色腫関連抗原(MAGE)、p53、又はCD20。本明細書で定義された通りの腫瘍抗原はまた、タンパク質産物の一部、即ち本明細書で特定された通りの遺伝子のタンパク質産物から由来するポリペプチド、ペプチドであってもよい。
【0035】
好ましい癌抗原は、CD20又はそのフラグメントを包含する。CD20は、いくつかのB細胞性悪性腫瘍において発現される。CD20を代表する好ましいアミノ酸配列は、配列番号37として特定される。このような状況における好ましい抗原は、配列番号37の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個又はそれより多い連続したアミノ酸を含んでなり、及び/又は、配列番号37と少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性もしくは類似性を有する。
【0036】
癌は、胃腺腫及び/又は乳腺腫瘍でもよい。好ましい癌抗原は、S100A2タンパク質又はそのフラグメントを包含する。S100A2タンパク質は、ヒト胃腺癌(1)及び乳腺(2)腫瘍の進行に関連してアップレギュレートされる、カルシウム結合タンパク質である。S100A2を代表する好ましいアミノ酸配列は、配列番号42として特定される。好ましいS100A2をコードしている好ましい核酸配列は、配列番号43として特定される。このような状況における好ましい抗原は、配列番号42の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個又はそれより多い連続したアミノ酸を含んでなり、及び/又は、配列番号42と少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性もしくは類似性を有する。
【0037】
疾患は、アレルギーであってもよい。抗原はまた、アレルギー疾患に関連するか又は結びつけられてもよい。好ましいアレルギー抗原の例は、イトスギ属(Cupressus)の種、好ましくはアリゾナイトスギ(Cupressus arizonica)からのアレルゲン(Cupa4又はCupa1)を包含する。好ましいCupa4を(表す)コードしている好ましい核酸配列は、配列番号38として特定される。好ましいCupa1を(表す)コードしている好ましい核酸配列は、配列番号39として特定される。好ましいCupa4を表す好ましいアミノ酸配列は、配列番号40として特定される。好ましいCupa1を表す好ましいアミノ酸配列は、配列番号41として特定される。このような状況における好ましい抗原は、配列番号38もしくは39によってコードされる(表される)アミノ酸配列の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個の連続したアミノ酸、又はそれより多くを含んでなり、及び/又は、配列番号38もしくは39によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性もしくは類似性を有する。
【0038】
このような状況におけるもう一つの好ましい抗原は、配列番号40もしくは41によって表されるアミノ酸配列の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個の連続したアミノ酸、又はそれより多くを含んでなり、及び/又は、配列番号40もしくは41によって表されるアミノ酸配列と少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性もしくは類似性を有する。
【0039】
しかしながら、当業者は、本発明がこの具体的な抗原に限定されないことを理解するであろう。
【0040】
本明細書において特定された抗原の各々(即ち、タンパク質、その一部、ポリペプチド、又はペプチド)は、好ましくは、本明細書で先に定義されたアジュバントであるポリペプチドと一緒に、又はそれへ融合されて使用される。それは、好ましい態様において、抗原をコードしている核酸分子が、そのコードされたポリペプチドがアジュバントとして機能する本明細書で先に定義された通りの本発明の核酸分子に、作動可能に連結されていることを意味する。さらに好ましい実施態様においては、アジュバントとして機能するポリペプチドをコードしている本明細書で先に定義された通りの本発明の核酸分子に、作動可能に連結されている、抗原をコードしている前記核酸分子は、1つの単一なポリペプチドをコードしている1つの単一な核酸分子である。前記ポリペプチドは、キメラポリペプチドと称されてもよい。このキメラポリペプチドは、本発明のアジュバントへ融合された抗原を含むか又はそれから構成されている。このキメラポリペプチドは、5’及び/又は3’末端において、及び/又は抗原とアジュバントとの間に、1つ以上の付加的なアミノ酸を含んでなっていてもよい。
【0041】
本発明はそれ故、本明細書で先に定義した通りの核酸分子であって、この核酸配列が所与の抗原をコードしているヌクレオチド配列に作動可能に連結されているとき、前記抗原のためのアジュバントとして挙動することができるポリペプチドをコードしている、該核酸分子を提供する。好ましい実施態様においては、この核酸分子は、患者において抗原特異的免疫応答を誘導することができるポリペプチドをコードする。それ故、本発明は、2つのタイプの核酸分子:
−アジュバントをコードしている核酸分子を含むか又はそれから構成されているもの、
−抗原をコードしている核酸分子へ融合された、アジュバントをコードしている核酸分子を含むか又はそれから構成されているもの、
を包含する。
【0042】
当業者は、使用する供給源のタイプ(タンパク質ベース又は核酸ベース)に依存して、どちらのタイプの製剤が適切であるかを理解するであろう。抗原は、そのまま(裸のタンパク質又は核酸)で投与されてもよい。別法として、核酸ベースの供給源は、本明細書に定義された通りの核酸構築物を使用して投与されてもよい。好ましくは、タンパク質ベースの製剤が選択される。より好ましくは、本明細書で先に特定された通りのキメラポリペプチドが使用される。
【0043】
もう1つの実施態様においては、抗原はウイルスに由来してもよい。それに由来する抗原が公知である、ヒトにおいて疾患を引き起こす任意のウイルスは、本発明の範囲内に包含される。
【0044】
もう1つの実施態様においては、酵母、真菌、アレルゲン、癌細胞、又は任意の他の病的細胞から由来してもよい。それに由来する抗原が公知である、ヒトにおいて疾患を引き起こす任意の酵母又は真菌は、本発明の範囲内に包含される。
【0045】
したがって、本発明の核酸分子は、前記核酸分子が抗原をコードするヌクレオチド配列を含むとき、抗原特異的免疫応答を誘導することができる、本明細書において特定された通りのポリペプチド、好ましくはキメラポリペプチドをコードする。
【0046】
ポリペプチド
さらなる態様において、本明細書において先に特定された通りの核酸分子によってコードされたポリペプチドが提供される。このポリペプチドは、アジュバントと、好ましくは先のセクションにおいて定義された通りの抗原とを含む。
【0047】
本明細書に用いるとき、「ポリペプチド」は、任意のペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、遺伝子産物、発現産物、又はタンパク質を指す。ポリペプチドは、連続したアミノ酸を含む。用語「ポリペプチド」は、天然産又は合成された分子を包含する。
【0048】
核酸構築物
さらなる態様においては、先のセクションにおいて特定された通りの核酸分子を含む核酸構築物が提供される。この核酸構築物は、先のセクションにおいてアジュバントとして定義されたポリペプチドをコードしている核酸分子を含んでなっていてもよい。この核酸構築物は、アジュバントとして定義されたポリペプチドをコードしている核酸分子と、先のセクションにおいて定義された抗原をコードしている核酸分子とを含んでなっていてもよい。
【0049】
本発明はまた、本発明の核酸構築物を含む、発現ベクターにも関係する。好ましくは、発現ベクターは、細胞、患者、又は無細胞発現系において、コードされたポリペプチドの産生又は発現を指示する1つ以上の調節配列に作動可能に連結されている、本発明のヌクレオチド配列を含む。発現ベクターは、組換え発現ベクターとして理解されてもよい。
【0050】
したがって、アジュバントを含む(comprising)か、又はアジュバントで構成される(consisting)か、又はアジュバントからなる(composed of)ポリペプチドをコードしている、本明細書に定義された通りの核酸分子は、好ましくは、薬物として、さらに好ましくはアジュバントとして使用するためのものである。したがって、前記ポリペプチドは、好ましくは薬物として、さらに好ましくはアジュバントとしての使用に向けたものである。
【0051】
したがって、アジュバント及び抗原を含むか、又はアジュバント及び抗原で構成されるか、又はアジュバント及び抗原からなるポリペプチドをコードしている、本明細書に定義された通りの核酸分子は、好ましくは、薬物として、さらに好ましくは前記抗原に対するワクチンとしての使用に向けたものである。したがって、前記ポリペプチドは、好ましくは薬物として、さらに好ましくは前記抗原に対するワクチンとしての使用に向けたものである。
【0052】
本発明のワクチンは、治療用ワクチンとして機能してもよい。典型的には、抗原との接触、即ち、感染と、前記抗原に関連する疾患の最初の症状の出現との間には、期間がある。この場合、ワクチンは、疾患の病理学的影響を相殺する免疫応答を宿主において誘発することにより、疾患を防止及び/又は治療し、及び/又はその進行を遅延させることとなる、薬理学的免疫産物として作用することとなる。治療用ワクチンは、治療用ワクチンが感染又は疾患を既に有している患者において防御を誘導することができるという点で、予防用ワクチンとは異なる。もう1つの実施態様においては、ワクチンは、予防用ワクチンである。予防用ワクチンは、前記患者が前記抗原に接触する前に投与されてよい。
【0053】
本明細書で定義された通りの薬物は、好ましくは非経口的に、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内、又は病巣内経路による、注射又は注入によって投与される。好ましい投与様式は、皮下である。薬物は、当該技術分野において公知の通常の技術により、薬学的に許容される媒体又は送達ビヒクルと組合されてもよい。例えば、薬物は、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に溶解されてもよい。非経口投与可能な組成物を調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Science)」、第20版、AR Gennaro編、Williams&Wilkins、PA、USA、2000年を含む様々な出典においてさらに詳細に記載されている。薬物は、好ましくは、治療上有効な投与量、即ち、本明細書に定義された通りの疾患又は症状と戦うために、ヒト又は動物の免疫系の能力を増大することができる量で投与される。好ましくは、本発明の薬物の治療上有効な投与量は、前記疾患又は症状の発生を、防止及び/又は遅延させることができる。当業者は、疾患又は症状に依存して、疾患又は症状の発生を追跡するために、前記疾患の発生に関連したどのパラメータ又は症状を選択すべきかを理解するであろう。
【0054】
本発明はさらに、本発明の核酸分子又はポリペプチドに加えて、もう1つの別個の既知のアジュバントの使用を包含する。任意の既知のアジュバントが、本発明において使用されてよい。当業者は、いくつかの適切なアジュバントを承知している。アジュバントは、最も好ましくは以下のアジュバントのリストから選択される:カチオン性(抗菌性)ペプチド、サポニン、及びToll様受容体(TLR)、例えば、限定するものではないが、ポリ(I:C)、CpGモチーフ、LPS、リピドA、リポペプチドPam3Cys、及び細菌のフラジェリン又はその一部、及び化学修飾を有するその誘導体。本発明による方法及び組成物において使用するための、他の好ましいアジュバントは:生菌もしくは死菌BCGとの混合物、前記潜伏期関連抗原もしくはその一部との免疫グロブリン複合体、IC31(www.intercell.comより;国際公開第2003/047602号で)、QS21/MPL(US2003095974)、DDA/MPL(国際公開第2005/004911号)、DA/TDB(国際公開第2005/004911号;Holten−Andersen et al,2004 Infect Immun.2004 Mar;72(3):1608−17)、及び可溶性LAG3(CD223)(www.Immunotep.comより;US2002192195)である。加えて、もう1つの好ましいアジュバントは、Cornebacterium paryum、又はプロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes)(Aebischer T.,et al,(2000)Infection and Immunity.,68:1328−1336、Poot J et al,(2009),Vaccine,27:4439−4446、及びFerreira J.H.et al,(2008),Vaccine,26:67−685)の使用を包含する。
【0055】
特に好ましいアジュバントは、Toll様受容体を介して作用することが知られているものである。自然免疫系を活性化することができるアジュバントは、TLRの1−10を包含するToll様受容体を介し、及び/又はRIG−1(レチノイン酸誘導遺伝子−1)タンパク質を介し、及び/又はエンドテリン受容体を介して、特に良好に活性化される。TLR受容体を活性化することができる化合物、並びにその修飾及び誘導体は、当該技術分野において充分に実証されている。TLR1は、細菌リポタンパク質及びそのアセチル化体により活性化されてもよく;TLR2は、加えて、グラム陽性細菌糖脂質、LPS、LPA、LTA、フィンブリエ、外膜タンパク質、細菌由来又は宿主由来の熱ショックタンパク質、及びマイコバクテリアのリポアラビノマンナンにより活性化されてもよい。TLR3は、特にウイルス由来の、dsRNAによるか、又は化学化合物ポリ(I:C)により活性化されてもよい。TLR4は、グラム陰性LPS、LTA、宿主由来又は細菌由来の熱ショックタンパク質、ウイルスコート又はエンベエロープタンパク質、タキソール又はその誘導体、オリゴ糖を含有するヒアルロナン、及びフィブロネクチンにより活性化されてもよい。TLR5は、細菌鞭毛、又はフラジェリンで活性化されてもよい。TLR6は、マイコバクテリアのリポタンパク質、及びB群連鎖球菌の易熱性可溶性因子(GBS−F)、又はブドウ球菌のモジュリンにより活性化されてもよい。TLR7は、イミダゾキノリン及び誘導体により活性化されてもよい。TLR9は、非メチル化CpG DNA、又はクロマチン−IgG複合体により活性化されてもよい。とりわけ、TLR3、TLR4、TLR7、及びTLR9は、ウイルス感染に対する自然免疫応答を媒介する際に重要な役割を果たしており、これらの受容体を活性化することができる化合物は、本発明における使用には特に好ましい。とりわけ好ましいアジュバントは、限定するものではないが、dsRNA、ポリ(I:C)、TL3及びTL9受容体をトリガーする非メチル化CpG DNA、IC31、TLR9アゴニスト、IMSAVAC、TLR4アゴニストを含む合成生成された化合物を含む。もう1つの好ましい実施態様においては、アジュバントは、本明細書で先に定義された通りの核酸分子に物理的に連結されている。アジュバント及び共刺激化合物又は官能基の、ペプチドを含むHLAクラスI及びHLAクラスIIエピトープへの物理的連結は、その役割が抗原を取込み、代謝し、かつ提示することである抗原提示細胞、とりわけ、樹状細胞の同時刺激によって、増強された免疫応答を提供する。もう1つの好ましい免疫修飾化合物は、T細胞接着阻害剤、さらに好ましくはBQ−788などのエンドテリン受容体の阻害剤である(Buckanovich R.J.,et al,(1994),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:4892)。BQ−788は、N−cis−2,6−ジメチルピペリジノカルボニル−L−ガンマ−メチルロイシル−D−1−メトキシカルボニルトリプトファニル−D−ノルロイシンである。しかしながら、任意のBQ−788誘導体又は修飾されたBQ−788化合物もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0056】
他のアジュバントは、MPL−SE(Glaxo Smithkline Biologicals,Belgium)、又はEM005(IDRI,USA)を包含する。
【0057】
好ましい実施態様においては、アジュバントは、Th促進アジュバント(CpG ODNモチーフを含むアジュバントのような)である。Th1促進アジュバントは、文献(Liu N, et al(2003),Nature Immunology,687−693)において、所与の抗原と一緒に使用した場合、処理された患者の脾細胞の上清中に、この抗原と共に培養されたときに検出されるような、該抗原に対するTh免疫応答を、促進するか、トリガーするか、又は誘導するか、又はその増大を誘導することができるアジュバントとして定義されている。対照として、Th1免疫応答の促進又はトリガリングが、抗原及びアジュバントで処理されたことのない同じ患者の脾細胞集団において、又は抗原で処理されただけの同じ集団を用いて評価される。Th免疫応答をトリガーすること又は促進することは、好ましくは、処理された患者の脾細胞を抗原と共に培養することにより、及び/又は抗原特異的IgG2a免疫グロブリンの産生を誘導することにより検出されるような、IFNγの誘導によって定義される。このサイトカイン及びIgG2aの誘導の評価は、本明細書において既に定義されている。好ましい実施態様においては、Th−1促進アジュバントは、オリゴデオキシヌクレオチドであるか、又はそれを含むか、又はそれからなる。さらに好ましくは、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、CpGを含むか、又はCpGからなり、これにおいてCは、メチル化されていない(CpG ODN):3’プリン−CpG−5’ピリミジンである。好ましいオリゴデオキシヌクレオチドは、ホスホロチオアート修飾ODN配列であるか、又はそれを含むか、又はそれからなる。かかる修飾を有するオリゴデオキシヌクレオチドの使用は、使用したオリゴデオキシヌクレオチドがそれ故、非修飾オリゴヌクレオチドよりも安定であること、及びそれ故、ひとたびそれらが血流中にあるとなれば容易に分解されることはないことから有利である。好ましいTh−1促進アジュバントは、少なくとも1つのCpGモチーフ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つからなるか、又はそれを含む。免疫刺激性ODNの好ましい配列(5’から3’へ)は、TCAACGTTGA(配列番号29)及びGCTAGCGTTAGCGT(配列番号30)であった。当業者は、本明細書に明確に記載された配列に限定されない。本明細書で先に定義された通りのTh−1促進特性を伝える別の配列をデザインしてもよい。
【0058】
好ましい実施態様においては、本明細書で定義された通りの薬剤(又は医薬用製剤、又は医薬組成物、又は薬物)は、感染症及び/又は疾患、好ましくは寄生虫感染症、及び/又は寄生虫症と戦うための、患者の免疫系の能力を増大するために使用される。とりわけ、それをヒト又は動物の患者に投与するために使用してもよい。本明細書に定義された通りの薬剤は、好ましくは非経口的に、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内、鼻腔内、又は病巣内経路による、注射又は注入によって投与される。好ましい投与様式は、皮下である。本発明は、本明細書で定義された通りの薬物又は核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドの、特定の投与様式に限定されない。好ましい投与様式は、カプセル又は錠剤を用いた経口投与である。別法として、本明細書で定義された通りの薬物又は核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドは、カテーテルもしくはポンプ、又は坐剤により、局所的に投与されてもよい。別法として、本明細書で定義された通りの薬物又は核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドは、外用投与されてもよい。本明細書で定義された通りの薬物又は核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドの、或いは前記化合物を含む組成物の製剤は、意図された投与様式及び(治療)適用に依存する。医薬担体は、前記化合物を患者に送達するのに適した、任意の適合性の非毒性物質でよい。例えば、滅菌水、又は不活性な固体、又は賦形剤が、担体として使用されてもよく、通常は薬学的に許容されるアジュバント、緩衝剤、分散剤などが補足される。組成物は、液体、例えば前記化合物又は前記化合物を含む組成物の安定化された懸濁液の状態か、或いは固体及び/又は乾燥形態:例えば粉末の状態のいずれかになる。経口及び直腸内投与には、前記化合物を、カプセル、錠剤、坐剤、及び粉末などの固体剤形か、又はエリキシル、シロップ、クリーム、軟膏、浣腸剤、及び懸濁液などの液体剤形で投与し得る。もう1つの形態は、半固体又は半液体の形態でもよく、これにおいて前記化合物は、パッチなどの固体支持物の中又はその上の液体形態として存在する。
【0059】
薬剤は、当該技術分野において公知の通常の技術により、薬学的に許容される媒体、又は送達ビヒクルと組合されてもよい。例えば、本明細書で定義された通りの薬物又は核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチド、及び任意選択で第2のアジュバントを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に溶解してもよい。非経口投与可能な組成物を調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、「レミントンの薬学」、第20版、AR Gennaro編、Williams&Wilkins、PA、USA、2000年を含む様々な出典においてさらに詳細に記載されている。薬剤は、好ましくは、治療上有効な投与量、即ち、本明細書に定義された通りの感染症又は疾患と戦うための、ヒト又は動物の免疫系の能力を増大することができる量で投与される。好ましくは、本発明の医薬用製剤の治療上有効な投与量は、本明細書に定義された通りの免疫応答を誘発することができる:投与量は、それが、本明細書で定義された通りに処置された患者において、特異抗原に対し適切な免疫応答を誘発するか、又は適切な免疫応答を誘導するかもしくはその増大を誘導することができるとき、治療上有効である。なおさらに好ましくは、誘発又は誘導された免疫応答は、防御免疫応答である。好ましい実施態様においては、本明細書で定義された通りの薬剤は、ワクチンである。さらに好ましい実施態様においては、少なくとも5、10、15、又は20マイクログラムの、本明細書で定義された通りの核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドがワクチンにおいて使用されている。前記ワクチンは、少なくとも1回、2回、3回、4回、又はそれより多く投与されてもよい。本明細書で定義された通りのワクチンは、予防用又は治療用のワクチンでもよい。本明細書で定義された通りの核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドがその中に溶解されてもよい体積は、100ないし500マイクロリットルで変動してもよい。
【0060】
組成物
加えて、核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドと、任意選択で第2のアジュバント、好ましくはTh促進アジュバントとを含む組成物が提供される。前記組成物のそれぞれの特徴は、本明細書において既に定義されている。好ましい実施態様においては、この組成物は、本明細書で特定された通りの核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドからなり、好ましいTh促進アジュバントは、CpG ODNである。好ましい組成物は、PBS又は適切な緩衝液中に溶解された、核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドと、任意選択で第2のアジュバント、好ましくはTh促進アジュバントとを含むか、又はそれらからなる。本明細書で既に定義された通り、抗原は、前記ペプチドもしくはポリペプチド中に含まれるものとして既に存在するか、或いは前記核酸分子の一部によってコードされているか、又は前記核酸構築物中に存在する核酸分子の一部によってコードされているものとして存在してもよい。さらに好ましい実施態様においては、核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドと、任意選択で第2のアジュバント、好ましくはTh1促進アジュバントとが、連続的に投与されることも、本発明によって包含される。それ故、各成分はそれらが双方とも患者に投与される限り、1つの組成物中に物理的に存在する必要はない。
【0061】
かかる組成物は、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体をさらに含んでなっていてもよい。
【0062】
かかる組成物は、好ましくは薬剤として、又は薬物としての使用に向けたものである。薬剤は、好ましくはワクチンである。薬剤、アジュバント、及びワクチンは、本明細書で既に広範囲に定義されている。
【0063】
組成物は、本明細書で既に定義された通り、液体、固体、又は半液体もしくは半固体の形態であってもよい。
【0064】
1つの好ましい実施態様においては、治療用又は予防用の処置の特異性を改善する目的で、別の化合物が、核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドと連続的に又は同時に使用される。例えば、処置された患者の免疫応答をさらに増強する別の化合物を使用することは有利である。さらに好ましくは、かかる化合物は、核酸分子又は核酸構築物又はペプチド又はポリペプチドと一緒に、1つの組成物中には存在しない。
【0065】
使用
したがって、アジュバントをコードしている本明細書で特定された通りの核酸分子、抗原をコードしている核酸分子、対応するペプチド、対応するポリペプチド、対応する核酸構築物、及び/又は対応する組成物の、本明細書で先に特定された通りの抗原に関連する疾患又は症状を治療するための薬物製造のための使用がさらに提供される。それ故、抗原に関連する疾患又は症状を治療するためのワクチンである薬物製造のための、抗原をコードしている核酸分子へ作動可能に連結された、アジュバントをコードしている本明細書で特定された通りの核酸分子、対応するペプチド、対応するポリペプチド、対応する核酸構築物、及び/又は対応する組成物の使用がさらに提供される。
【0066】
この使用についてのそれぞれの特徴は、本明細書において既に定義されている。
【0067】
治療法
さらなる態様においては、抗原に関連する疾患又は症状を治療する方法であって、前記治療が、アジュバントをコードしている核酸分子、及び抗原をコードしている核酸分子、対応するペプチド、対応するポリペプチド、対応する核酸構築物、及び/又は対応する組成物を含む、該方法が提供される。
【0068】
したがって、本明細書で特定された抗原に関連する疾患又は症状を治療する方法であって、前記治療がワクチンを含んでなり、前記ワクチンが、抗原をコードしている核酸分子に作動可能に連結された、アジュバントをコードしている本明細書で特定された通りの核酸分子、対応するペプチド、対応するポリペプチド、対応する核酸構築物、及び/又は対応する組成物を含む、該方法がさらに提供される。
【0069】
この方法についてのそれぞれの特徴は、本明細書において既に定義されている。
【0070】
定義
配列同一性
「配列同一性」は、本明細書において、配列を比較することにより測定される通りの、2つ以上のアミノ酸(ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質)配列、或いは2つ以上の核酸(ヌクレオチド、ポリヌクレオチド)配列の間の関係として定義される。当該技術分野においては、「同一性」はまた、アミノ酸又は核酸配列間の、場合によっては、一連のかかる配列間のマッチによって測定される通りの、配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換体を、第2のペプチド又はポリペプチドの配列と比較することにより測定される。好ましい実施態様においては、同一性又は類似性は、本明細書で特定された通りの配列番号全体にわたり計算される。「同一性」及び「類似性」は、限定するものではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heine,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds,M.Stockton Press,New York,1991;及びCarillo,H.,and Lipman,D,SIAMJ.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されたものを含む公知の方法によって容易に計算し得る。
【0071】
同一性を測定するための好ましい方法は、検査された配列間の最大マッチを与えるべくデザインされる。同一性及び類似性を測定するための方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムにおいて集成される。2つの配列間の同一性及び類似性を測定するための好ましいコンピュータプログラム法は、例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BestFit、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)を包含する。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の供給源から公に入手可能である(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,MD 20894;Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を測定するために使用してよい。
【0072】
ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、以下を包含する:アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス:BLOSSUM62、Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915−10919(1992)より;ギャップペナルティ:12;及びギャップ長ペナルティ:4。これらのパラメータと共に有用なプログラムは、「Ogap」プログラムとして、Madison,WI.に立地するGenetics Computer Groupより公に入手可能である。上記のパラメータは、アミノ酸比較用のデフォルトパラメータである(末端ギャップに対するペナルティなし)。
【0073】
核酸比較のための好ましいパラメータは、以下を包含する:アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0;ギャップペナルティ:50;及びギャップ長ペナルティ:3。ギャッププログラムとして、Madison,Wis.に立地するGenetics Computer Groupより公に入手可能。上記に示したのは、核酸比較用のデフォルトパラメータである。
【0074】
任意選択で、アミノ酸類似性程度を測定するため、当業者はまた、当業者には明らかであるような、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れてもよい。保存的アミノ酸置換とは、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンであり;アミノ含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;かつ硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。本明細書に開示されたアミノ酸配列の置換変異体は、開示された配列の少なくとも1つの残基が除去されており、かつその場所に別の残基が挿入されたものである。好ましくは、アミノ酸交換は、保存的である。天然産アミノ酸の各々について好ましい保存的置換は、以下の通りである:Ala/ser;Arg/lys;Asn/gln又はhis;Asp/glu;Cys/ser又はala;Gln/asn;Glu/asp;Gly/pro;His/asn又はgln;Ile/leu又はval;Leu/ile又はval;Lys/arg;gln又はglu;Met/leu又はile;Phe/met、leu、又はtyr;Ser/thr;Thr/ser;Trp/tyr;Tyr/trp又はphe;及びVal/ile又はleu。
【0075】
ハイブリダイゼーション条件
核酸分子用のハイブリダイゼーション条件は、低度又は中度又は高度のストリンジェンシーを有してもよい(サザンブロッティング法)。低度又は中度又は高度のストリンジェンシー条件とは、42℃における、5X SSPE、0.3% SDS、200pg/mlのせん断及び変性されたサケ精子DNA、及び、低度又は中度又は高度のストリンジェンシーについて、それぞれ25%又は35%又は50%のいずれかのホルムアミド中での、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを意味する。続いて、ハイブリダイゼーション反応を、2XSSC、0.2% SDS、及び低度又は中度又は高度のストリンジェンシーについて、それぞれ55℃又は65℃又は75℃を使用して、30分間ずつ3回洗浄する。
【0076】
核酸構築物、発現ベクター、作動可能に連結された、発現、調節配列
核酸構築物は、天然産遺伝子から単離されるか、又はさもなければ自然界に存在しない方法で組合されているか又は並置されている、核酸セグメントを含有するべく修飾されている核酸分子として定義される。核酸分子は、ヌクレオチド配列によって表される。任意選択で、核酸構築物中に存在するヌクレオチド配列は、細胞又は患者において、前記ペプチド又はポリペプチドの産生又は発現を指示する1つ以上の調節配列へ、作動可能に連結されている。
【0077】
「作動可能に連結された」とは、本明細書において、調節配列が、本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列に対し、細胞及び/又は患者における本発明のペプチド又はポリペプチドの産生/発現を、該調節配列が指示するような位置に適切に置かれている立体配置として定義される。
【0078】
「作動可能に連結された」はまた、配列(即ち、アジュバントとして定義された)が、抗原をコードしているもう1つの配列に対し、細胞及び/又は患者においてキメラポリペプチド(即ち、抗原に融合されたアジュバントを含む)が生成されるような位置に適切に置かれている立体配置を定義するために使用してもよい。
【0079】
「作動可能に連結された」は、本明細書で定義された通りのアジュバントとして挙動し得るタンパク質をコードしている配列の、本明細書で定義された通りの抗原をコードしている配列への、結果としてキメラタンパク質をコードしているキメラ核酸配列を生じる遺伝子融合を指す。
【0080】
発現は、限定するものではないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を包含する、ペプチド又はポリペプチドの産生にかかわる任意の段階を含むものと理解されよう。
【0081】
調節配列は、本明細書において、ポリペプチドの発現に必要又は有利である全ての成分を包含するべく定義される。最低でも、調節配列はプロモーターと、転写及び翻訳停止シグナルとを含む。任意選択で、核酸構築物中に存在するヌクレオチド配列によって表されるプロモーターは、本明細書で特定された通りのペプチド又はポリペプチドをコードしているもう1つのヌクレオチド配列へ、作動可能に連結されている。
【0082】
発現ベクターは、組換えDNA法を都合よく受けることができ、かつ細胞及び/又は患者において本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の発現をもたらし得る、任意のベクターでもよい。本明細書で用いるとき、用語「プロモーター」は、遺伝子の転写開始部位の、転写方向に対して上流に位置する、1つ以上の遺伝子又は核酸の転写を調節するべく機能する核酸フラグメントを指す。それは、DNA依存性RNAポリメラーゼ用の結合部位、転写開始部位、及び、限定するものではないが、転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベータータンパク質結合部位、並びにプロモーターからの転写の量を調節するべく直接又は間接的に作用する当業者に公知の任意の他のヌクレオチド配列を包含する、任意の他のDNA配列の存在によって特定される、結合部位に関係づけられる。本発明の状況の中では、プロモーターの終端部は、好ましくは転写開始部位(TSS)のヌクレオチド−1である。
【0083】
本文書及びそのクレームにおいて、動詞「含む(comprise)」及びその活用型は、その語に続く項目は包含されるけれども、具体的に挙げられなかった項目が除外されていないことを意味するべく、非制限的な意味で使用される。加えて、動詞「からなる(to consist)」は、本明細書で定義された通りの核酸構築物の生成物、又は組成物、又は核酸分子、又はペプチドもしくはポリペプチドが、具体的に同定されたもの以外の付加的な成分を含んでなっていてもよいことを意味する「本質的に〜からなる」で置換えてもよく;前記付加的な成分は、本発明の独自の特徴を変えるものではない。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、1つの要素が存在すること及び複数の要素のうちのただ1つが存在することを文脈が明らかに必要としない限り、1つ以上の要素が存在する可能性を除外するものではない。それ故、不定冠詞「a」又は「an」は、通常は「少なくとも1つ」を意味する。
【0084】
本明細書に引用された全ての特許及び文献は、その記載全体が参照により本明細書に組入れられる。
【0085】
以下の実施例は、例示を目的として提示されたにすぎず、何ら本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0086】
セクションI
材料及び方法
動物及び免疫化。雌の6〜8週齢のBALB/cマウスを、Harlan Interfauna Iberica S.A.(Barcelona,Spain)から購入した。動物の免疫化は、結果のセクションに包含される図の凡例に示された通りの、腹腔内(ip)又は皮下(sb)経路によって行われた。マウスを、眼窩静脈叢穿刺により出血させた。
【0087】
キメラKmp11AAP遺伝子を発現するDNAプラスミドの構築
H2A抗原決定基のアミノ及びカルボキシル末端をコードしているDNA配列を、キメラクローンpPQ(Soto M, et al.J Clin Microbiol.1998 Jan;36(1):58−63)から、BamHI消化により取出した。PQ又はQの核酸配列は、配列番号46によって表される。PQ又はQのアミノ酸配列は、配列番号47によって表される。結果として得られた、H2A決定基をコードする配列のないクローンを、pAAP(配列番号2)と命名した。Kmp11タンパク質をコードしているDNA配列は、プラスミドpBLs−KMP−11(Fuertes M.A.,et al,J Biol Inorg Chem 6(2001)107−117)中に存在する該タンパク質をコードしているDNA配列の、順行5’CGGGATCCTTTAATGGCCACCACGTACGAGGAG−3’(配列番号31)及び逆行5’−CGGGATCCCCCCTTGGATGGGTACTGCGCAGC−3’(配列番号32)オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅によって得た。次いでKmp11タンパク質をコードしているPCR産物を、BamHIで消化し、pAAP(H2A決定基を欠く、BamHI消化されたpPQクローン)(配列番号33)に挿入した。結果として得られた、pKmp11Aと称されるクローンを、大腸菌(E.coli)(M15株)に形質転換した。pKmp11AAPクローンによって発現された、キメラの精製されたタンパク質は、KAAP(配列番号34)と称された。Kmp11を逆向きにコードする配列の挿入を有するクローンの選択を避けるため、10番目−12番目の位置に、TTAトリプレットが含められた。Kmp11タンパク質とpAAPによってコードされたタンパク質フラグメントとの間の交点にフレキシビリティを与えるため、9番目−11番目の位置に、グリシンをコードしているトリプレットが導入された。
【0088】
プラスミドpRcKAAPの構築
KAAPタンパク質をコードしているDNA配列を含有するDNAプラスミドを構築するため、上記に示されたpKmp11AAPプラスミドを、順行5’−CCCAAGCTTATGGCCACCACCTACGAGGAG−3’(配列番号35)及び逆行5’−CATTACTGGATCTATCAACAGG−3’(配列番号36)をプライマーとして用いてPCR増幅した。DNA配列を、pRc/CMV Hind III消化プラスミドに挿入した。プラスミドpRCは、In vitrogenにより市販されている。DNAプラスミドは、エンドトキシンフリーのGiga−preparation Kit(Qiagen,Hilden,Germany)によって精製した。
【0089】
タンパク質精製
クローンpKmp11AAPによって発現された、組換えタンパク質KAAP、並びに組換えQ及びKmp11タンパク質(Soto M, et al.J Clin Microbiol.(1998)Jan;36(1):58−63、及びPlanelles L,et al,Immunol Cell Biol.(2002);80(3):241−7)の精製は、Niニトリロ三酢酸樹脂カラム上で、供給業者(Qiagen)によって提供された方法に従い、変性条件下に実施した。
【0090】
pRcKAAPによるKAAP及びKmp11タンパク質の発現
COS7細胞に、20μgのpRcKmp11AAP又はpRcKmp11プラスミドを、Lipofectin(登録商標)試薬(Gibco,BRL)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってトランスフェクトした。簡単に言えば、3x10個のコンピテント細胞を、100mmプレート上で、5% FCSを加えたダルベコ変法イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)中に播種し、それらが50〜75%集密に達したときトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に細胞を収穫し、氷冷したPBSで2回洗浄し、直ちにレムリー(Laemmli)の緩衝液の添加により溶解させた。タンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離し、ニトロセルロース膜(Amersham、Aylesbury,UK)に移した。ブロットを、KAAPタンパク質で免疫化されたマウスからの血清を用いてプローブした。抗KAAPと反応する、予想されたサイズのタンパク質バンドが、ブロットにおいて観察された。
【0091】
液性応答の分析
血清試料を、Q又はKmp11に対する特異的抗体について分析した。簡単に言えば、標準的なELISAプレートのウェルを、2μg/mlのQ又はKmp11を含有する100μlのPBSで、室温において一晩コートした。IgG及びアイソタイプ特異的分析は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウス免疫グロブリン(Nordic Immunological Labo−ratories,Tilburg,The Netherlands)を用いて行った:抗IgG及び抗IgG1の希釈(1:1000)、かつ抗IgG2aの希釈(1:500)。オルトフェニレンジアミンジヒドロクロライド−OPD−(Dako,A/S,Glostrup,Denmark)を、基質として使用した。15分後、100μlの1M HSOの添加により反応を停止した。吸光度を450nmで読み取った。
【0092】
サイトカイン分析
最後の免疫化の1週間後、無菌条件下で、DMEM培地を含有する無菌皿の上に、マウスから脾臓を摘出した。単一細胞懸濁液は、オートクレーブしたメッシュを用いて脾臓を粉砕することにより調製した。これに5〜10mlのDMEM培地を添加し、内容物を均一に混合した。透明な上清をゆっくりとピペットアウトした。細胞は、4℃において250gで(Sorvall RC−5遠心分離機、HB−4ローター)10分間の遠心分離によってペレット化した。赤血球及び脾細胞を含有するペレットが収集された。ペレットを、0.9%塩化アンモニウムで1回洗浄して、赤血球を溶解した。1つの群の各マウスからの脾細胞をプールし、10%FCS及び0.05mM 2−メルカプトエタノールを含有するRPMI中で、10細胞/mlの密度に再懸濁し、次に1.5mlのエッペンドルフ管にて、200mlのアリコート(5x10細胞)に分けた。脾細胞を、12μg/mlのKAAP又はKmp11で再刺激した。細胞を、5%CO及び95%の湿度を含有する雰囲気下に、37℃で48時間インキュベートした。各群(N=4)からのマウスの上清をプールした。全ての測定は、三重に行った。細胞増殖を調節するため、ConA(3μg/ml)処理細胞の上清中のIFN−γ及びIL−2を測定した。未処理の細胞に比較して、多量のIFN−γ(1000倍)及びIL−2(200倍)が、ConA処理細胞において検出された。
【0093】
サイトカイン測定。細胞培養上清中のIL−4、IL−6、IFN−γ、TNF−α、IL−17、及びIL−10濃度を、CBAキット(BD Biosciences,Singapore)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。結果は、FACS CALIBUR(BD Biosciences,Singapore)を用いて取得し、FCAPソフトウェアを使用して分析した。
【0094】
結果
アミノ酸配列、配列番号1、によりコードされたタンパク質(AAP)が、共有結合により結合されたKmp11などの抗原に対し、液性応答を増大又は改変することができるかどうかを知るため、AAP及びKmp11 DNAの遺伝子融合により形成されたキメラ遺伝子によって発現された、KAAPタンパク質をマウスに投与した。AAP配列は、75%の同一性を有するH2A抗原に対応する、アミノ及びカルボキシ末端アミノ酸フラグメントをコードしているDNAを除いて、先に記載されたQ配列に由来する。キメラKAAPタンパク質においては、Kmp11タンパク質は完全なタンパク質の1/4に相当する。5匹のマウスからなる2つの群に、それぞれ、20μgのKmp11、5μgのKAAP、及び20μgのKmp11−5μgのQの、3回の投薬を、0日、15日目、及び30日目に注射するというアッセイを設計した。タンパク質は、皮下(sc)又は腹腔内(ip)経路によりマウスに投与した。3回目の投薬の1週間後、Q及びKmp11に対するIgGの反応性を、ELISA試験によって測定した。図1Aは、Kmp11タンパク質が、ip経路により投与されたとき、Kmp11に対し高い反応性を誘発したこと、しかしsc経路によってそれが投与された場合、免疫応答をトリガーすることができなかったことを示す。5μgのKAAPのip投与の後、Kmp11に対する応答もまた高く、かつ20μgのKmp11タンパク質が単独で投与された場合に観察されたものと同様であること、及びさらに、20μgのKmp11が同じ経路によって単独で投与されたときの応答の欠如とは対照的に、sc投与後に高い応答がトリガーされたことが観察された(図1B)。高い応答は、KAAPタンパク質がip又はscのいずれかで投与されたとき、Qに対して観察された(図1C)。
【0095】
5μgのKAAPが投与されたとき、Kmp11に対する高い応答が誘発され、かつ5μgのKAAP中のKmp11の量が、約1μgのKmp11に相当することから、本発明者らは、1μgのKmp11もまた血清学的応答を誘導し得たかどうかを試験した。図1Bは、このたんぱく質がip投与されたとき、Kmp11に対しわずかな液性応答を誘導することができること(平均OD=0.3)、しかしその応答は、5μgのKAAPの投与後に誘発されたもの(よりも)有意に低かったことを示している。さらに、予想された通り、1μgのKmp11のsc投与後には、何らKmp11に対する反応性がなかったこと、しかし対照的に、5μgのKAAP中に存在する同じ量のKmp11の投与後では、応答が高かったことが観察されたといってもよい。
【0096】
Kmp11に対する反応性の増加が、Kmp11とQタンパク質中に存在するタンパク質フラグメントとの同時投与に起因するかどうかを知る目的で、Kmp11タンパク質を、Qと混合して投与した。Kmp11に対する反応性は、混合物がip投与された場合低下したこと、及び混合物がsc投与された場合、Q中に存在するタンパク質フラグメントはKmp11に対し何らアジュバント効果を誘発することはないという指摘通り、Kmp11に対し何ら応答が見られなかったことが観察された(図1D)。高い血清学的反応性は、Qに対して観察された(図1E)。
【0097】
5μgのKAAPの投与後に観察された高い血清学的応答の故に、本発明者らは1μgのKAAPの投与後の、Q及びKmp11に対する応答を分析した。5匹のマウスに対し、0及び15日目に、足蹠にsc注射した。IgG及びIgG1/IgG2a応答は、2回目の投薬の1週間後に分析した。対照として、1μgのKAAP中に存在する量である、0.25μgのKmp11をマウスに注射した。図2Aは、ip又はscのいずれかの投与による1μgのKSAAPの投与後に、Kmp11に対する高い応答が得られたこと、しかし0.25μgのKmp11の、ip又はscのどちらの投与後も、何ら応答が得られなかったことを示す。Qに対する高い液性応答は、KAAPがip又はsc経路のどちらによって投与された場合も観察された(図2B)。応答は、3μg及び5μgのKAAPの投与後に観察されたものと同様であった(データは示さず)。応答のタイプは、Kmp11又はQのどちらに対しても、主としてIgG1タイプのものであり(図2C及びD)、IgG1/IgG2aの比は、約0.5であった。
【0098】
KAAPをコードしている遺伝子を含有するプラスミドDNAをマウスに投与した後、KAAPタンパク質が液性応答を誘発し得るかどうかを知るため、Q及びKmp11に対するIgG、IgG1、及びIgG2a液性応答を分析した。7匹のマウスからなる群に、0、15日目、及び30日目に、20μgのpRcKQ1、20μgのpRcKmp11、及び3μgのKAAPを、足蹠に注射した。対照動物にPBSを投与した。図3は、pRcKAAPの投与後に、Kmp11(図3A)及びQ(図3B)に対し、高いIgG反応性が検出されたこと、及びそれはKAAPタンパク質の投与後に検出されたものと同様であったことを示している。しかしながら、Kmp11タンパク質をコードしている遺伝子のみを含有するDNAプラスミドの投与後には、何ら応答が得られなかった。反応性がQに対して分析された場合(図3D)、バランスのとれたIgG1/IgG2a比が、KAAP又はpRcKAAP投与後のどちらでも検出された。Kmp11に対して試験したとき、平均IgG1反応性のわずかな優勢が観察された(図3C)。
【0099】
サイトカイン産生を、KAAP及びpRcKAAP注射マウスからの、非刺激脾細胞において、並びにKAAP及びKmp11刺激脾細胞において分析した。IFN−γ、IL−6、TNF−α、及びIL−10の抗原特異的な産生増大が、pRcKAAP免疫化動物から単離されたKAAP刺激細胞において観察された。PBS及びKAAP免疫化マウスからのKAAP刺激細胞によって産生されるサイトカインには、何ら差異が検出されなかった。PBS及びKAAP免疫化された(マウス)からのKAAP刺激細胞において、IL−6、TNF−α、及びIL−10に同様の増加が検出されたことから、非刺激細胞に比較したサイトカイン産生における増加は、KAAP特異細胞の刺激によるよりも、むしろ脾細胞の非特異的刺激による可能性が最も高い。IL−17の同様の産生が、KAAPで刺激されたPBS、KAAP、及びpRcKAAP免疫化マウスからの脾細胞において観察された(図4)。INF−γ及びIL−17の産生増大はまた、pRcKAAP免疫化動物からの脾細胞のKmp11刺激後に観察された。また、IL−17の産生における増加が、KAAP免疫化マウスからの細胞において観察された。加えて、TNF−α、IFN−γ、及びIL−6の非特異的産生が、非刺激細胞に比較してKmp11で刺激された細胞培養物において観察された(図5)。
【0100】
結論:
Kmp11の免疫原性的潜在能力は、リーシュマニア・インファンツム由来のLip2a、Lip2b、及びP0タンパク質からのフラグメントによって形成されたキメラタンパク質に対して遺伝子融合されたとき、高度に増大される。Kmp11との、Lip2a、Lip2b、及びP0フラグメント混合物(しかし融合はされていない)を含有するキメラタンパク質は、Kmp11の免疫原性的潜在能力を増大しない。
【0101】
Kmp11タンパク質は、リーシュマニア・インファンツム由来のLip2a、Lip3b、及びP0タンパク質の抗原決定基をコードしているDNAフラグメントに融合されたDNAとして投与されたとき、高い液性応答を誘発した。Kmp11タンパク質は、DNAとして単独で投与された場合には、検出可能な液性応答を誘発しない。
【0102】
IFN−γ、IL−6、TNF−α、及びIL−10の抗原特異的な産生増大は、pRcKAAPで免疫化された動物から単離された、KAAP刺激細胞において観察された。また、IFN−γの産生増大は、Kmp11による刺激後にも観察された。このタイプの産生増大は、KAAPで免疫化された動物から単離された、KAAP刺激細胞では観察されなかった。
【0103】
AAP DNA配列の、インビトロの翻訳から得られるタンパク質を、遺伝子融合されたタンパク質に対する抗体の生成を促進するための道具として使用してもよい。AAP DNA配列は、DNAとして投与する場合、抗原の免疫原性的潜在能力を促進するためのベクターとして使用してもよい。
【0104】
AAPタンパク質は、遺伝子融合された抗原に対する免疫応答を誘発するための、担体として、及びアジュバントとして使用してもよい。
【0105】
セクションII
材料及び方法
CAAP発現ベクター(Cup a 4−AAP)の構築
Cup a 4は、既にpQE−30ベクターにクローン化されており、組換えタンパク質として発現及び精製されている(Molecular cloning and characterization of Cup a 4,a new allergen from Cupressus arizonica(アリゾナイトスギ由来の新規アレルゲン、Cup a 4の分子クローニング及びキャラクタリゼーション),Biochem Biophys Res Commun.2010 Oct 22;401(3):451−7. Yago Pico de Coana,Nuria Parody,Miguel Angel Fuertes,Jeronimo Carnes,Daniela Roncarolo,Renato Ariano,Joaquin Sastre,Gianni Mistrello,Carlos Alonso)。次にこのタンパク質を、K(Kmp11)フラグメント(本特許)を遊離する目的でKAAPキメラ(quimeric)タンパク質をBam HIで消化した後に調製されていた、AAPベクターに挿入した。得られた発現ベクターは、AAPキメラタンパク質プラスCup a 4 C.arizonicaアレルゲンを含有する(図12)。このタンパク質をCAAPと称する。
【0106】
CAAPタンパク質の発現及び精製
CAAPタンパク質(レポータータンパク質)をコードしているベクターを、大腸菌発現株M15(Qiagen)に形質転換した。発現は、CAAPベクターで形質転換ずみの細菌培養物への、1mM IPTGの5時間の添加の後、標準的な条件下に実施した。タンパク質の精製は、KAAPについて先に記載した通りに行った。
【0107】
結果
先のセクションで、免疫原性の乏しいタンパク質の免疫応答が、AAPフラグメントに融合されると、高度に増大されることを示した。AAPフラグメントがアジュバントとしても役立ち得るかどうか、及びそれ故、アジュバントの不在下でも免疫原性の高いタンパク質の免疫原性的潜在能力を増大し得るかどうかを知る目的で、CAAPベクターを構築した。Cup a 4は、アリゾナイトスギ(Cuppressus arizonica)由来のアレルゲン性タンパク質である。イトスギアレルギー患者の10%において、Cup a 4に対し、強いIgGE応答がトリガーされることが記載されている。Cup a 4に融合されたAAPが、Cup a 4の免疫原性を増大するかどうかを調べるため、1群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、それぞれ3及び2μgの、AAP及びCup a 4に相当する組換えCAAPタンパク質5μgを注射した。第2の群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、3μgのAAPと2μのCup a 4とにより形成される混合物を注射した。第3の群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、2μgのCup a 4タンパク質を注射した。第4の群には、3μgのAAPを投与した。タンパク質は全てPBS中に溶解し、何らアジュバントがない状態で、s.c.によりマウスに投与した。
【0108】
Cup a 4に対するIgG反応性を、1/2000希釈において測定した。予想された通り、PBS又はAAPの3回目の投薬の1週間後では、Cup a 4に対する応答は何ら観察されなかった(データは示さず)。Cup a 4、CAAP、Cup a 4+AAP、及びAAPの3回目の投薬の1週間後の、IgG応答の結果を図6Aに示す。Cup a 4で免疫化された動物では、免疫原性の高いタンパク質から予想される通り、IgG応答がCup a 4に対して誘発されたことが観察される場合がある。応答は、0.9から2.3までの範囲で変動し、平均値は1.4ODであった。Cup a 4+AAPで免疫化された動物では、Cup a 4に対する反応性に小さな減少が観察された。このことは、Cup a 4と混合されたAAPの投与が、Cup a 4の免疫原性を増大しなかったこと、それどころか、AAPがCup a 4と競合することを示している。平均値は0.95ODであった。しかしながら、Cup a 4タンパク質がAAPに融合されて(CAAP)投与されると、殆どの動物で応答の増加が観察された。応答は、Cup a 4で免疫化された動物において検出された1.4ODとは対照的に、1.1から2.9ODまでの範囲であり、平均値は2.2ODであった。同様の挙動が、Cup a 4、Cup a 4+AAP、及びCAAP、及びAAP動物からの血清における、Cup a 4に対するIgG応答について、Cup a 4の強い免疫原的特性をさらに示すものとして、2回目の投薬の1週間後に観察された(図7A)。AAPが、Cup a 4に対して誘発されたIgG1及びIgG2a応答の調節に何らかの影響を及ぼすかどうかを知る目的で、IgG1及びIgG2aアイソタイプの応答を、Cup a 4、Cup a 4+AAP、及びCAAP(血清の希釈 1/400)で免疫化された動物において、2回目及びその投薬量での投与後1週間で分析した。
【0109】
図7Bは、Cup a 4の2回目の投与の1週間後においても、IgG1反応性の分散された強度が、0.8から2.4ODまでの範囲(平均値1.1)で検出されたことを示している。Cup a 4+AAPで免疫化された動物では、Cup a 4に対するIgG1反応性が幾分低く、かつ均一であり、平均値0.7ODの周辺であった。対照的に、CAAPで免疫化された動物における、Cup a 4に対するIgG1反応性の平均値は、抗原に融合された場合にアジュバントとしてAAPが挙動することをさらに示すものとして、Cup a 4及びCup a 4+AAP動物において観察されたものよりも高かった(平均値2OD)。同様の差異はまた、Cup a 4に対するIgG1反応性が3回目の投薬の1週間後に分析されたとき(図6B)、特にCup a 4+AAP混合物が投与された場合に比較して観察された。Cup a 4、CAAP、及びCup a 4+AAPで免疫化された動物からの血清において、3回目の投薬の1週間後にCup a 4に対するIg2a反応性の強さが分析されたとき、Cup a 4及びCup a 4+AAPで免疫化された動物の血清において(図6C)、反応性はそれぞれ平均値0.8及び0.6ODの周辺で均一であったことが観察された。CAAP群で観察されたIgG2a応答は、1.1から2.9ODまでの範囲の値であり、かつ平均値は1.9ODであり、Cup a 4及びCup a 4+AAP動物において検出されたものよりも高かった。同様の観察が、Cup a 4、Cup a 4+AAP、及びCAAP動物から、2回目の投薬の1週間後に得られた血清を分析した場合に検出された(図7C)。
【0110】
AAPの早期のアジュバント能についてさらなる証拠を得るため、1群の動物を、上記に示した実験において用いたCup a 4、CAAP、及びCup a 4+AAPタンパク質用量の1/4(それぞれ、0.5μgのCup a 4、1.5μgのCAAP、及び0.5μgのCup a 4+0.75μgのAAPに相当する)で免疫化した。1回目の投薬の1週間後、血清を収集した。Cup a 4に対するIgG反応性は、1/100希釈において測定した。結果を図8に示す。Cup a 4、又はCup a 4+AAPで免疫化されたいずれの動物においても、何らCup a 4に対する応答はなかったのに対し、CAAPで免疫化された動物の全てにおいて陽性の応答が観測されたことが観察された。応答が0.16から1.7ODまでの範囲で変動したことが、再度観察された。したがって、1匹の動物を除き、応答は、免疫化後のそのような早期の段階において、殆どの動物において高かった。2回目の投薬後、興味深い結果も観察された。Cup a 4+AAP群では、AAPによってトリガーされる応答は、Cup a 4によってトリガーされる応答と競合する。実際、Cup a 4に対し、何らの反応性も検出されなかった(図9A)。興味深いことに、この競合は、抗原がAAPに融合された場合は起こらなかった。AAPのアジュバント能を詳細に識別するため、血清を1/4000希釈において分析した(図9A)。CAAPで免疫化された動物の血清の平均ODは、0,45ODであり、一方Cup a 4動物からの血清のそれは0.15ODであった。この群では、Cup a 4に対する2匹の動物の血清の反応性は、バックグラウンドレベルに近かった。CAAP群の動物からの血清は、全て陽性であった。双方の群におけるCup a 4に対する反応性間の差異は、統計的有意差であった(p<0.05)。IgG1及びIgG2a応答が分析された場合(1/100希釈)、上記に示されたデータ(図7B及び7C)が確認された(図9B及び9C)。AAPは、抗原へ融合された場合、IgG2aに向けて応答を指示する。CAAPの投与による、Cup a 4に対する応答の反応性のp値は、Cup a 4に対し0.055であり、Cup a 4+AAPに対してはp<0.05であった)。
【0111】
したがって、提示されたデータは、AAPタンパク質フラグメントが、Cup a 4に融合されて投与された場合、Cup a 4などの免疫原性の高いタンパク質に対する免疫応答を増大し得るだけでなく、誘発された応答のタイプを、とりわけIgG2a応答に向けて調節し得ることも示している。このタイプのアジュバント活性は、AAPがタンパク質Cup a 4と混合されて投与された場合には観察されない。それどころか、AAPは、抗原の免疫活性と競合するように見える。
【0112】
セクションIII
S100AAP発現ベクターの調製
S100A2DNAフラグメントの、Invitrogen製pDEST−17ベクター(研究室ストック)における、5’−AAGGATCCATGTGCAGTTCTCTGGAG−3’(配列番号44)及び5’−AACTTAAGCAGGGTCGGTCTGGGCAG−3’(配列番号45)プライマーを使用したPCR増幅の後、それをpST Blue−1ベクターにサブクローン化した(BamHI及びAfl II制限部位はイタリック体で示されている)。これを次に、必要な制限部位を含めて合成された、修飾AAPベクター(PQE30ベクター中)にサブクローン化した。得られた発現ベクターは、AAPキメラタンパク質の3つのフラグメントプラスS100A2DNAフラグメントを含有する(図13)。このベクターを、大腸菌発現株M15(Qiagen)中に形質転換した。発現は、標準的な条件下で実施した:1mM IPTGの5時間の使用により0.8 O.D.450nm培養物を誘導。最終的なベクターを、S100AAPと命名した。S100A2タンパク質は、PQE30ベクター中で発現された。
【0113】
先のセクションにおいて、寄生虫の免疫原性の乏しいタンパク質(Kmp11)に対する免疫応答が、AAPDNA配列に融合されると高度に増大すること、及び免疫原性の高い植物タンパク質(Cup a4)に対する免疫応答もまた、AAPDNA配列に融合されると増大することが示された。また、レポータータンパク質の免疫原性を増大するAAPの能力は、レポーター遺伝子がAAPに遺伝子融合された場合にのみ有効であったことも示された。AAPフラグメントがアジュバントとしても役立ち得るかどうか、及びそれ故、哺乳動物のタンパク質の免疫原性的潜在能力を増大し得るかどうかを知る目的で、S100AAPベクターを構築した。S100A2タンパク質は、ヒト胃腺癌(1)及び乳腺(2)腫瘍の進行に関連してアップレギュレートされる、カルシウム結合タンパク質である。S100に融合されたAAPがレポータータンパク質の免疫原性を増大するかどうかを試験するため、1群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、それぞれ0.75μg及び0.3μgの、AAP及びS100A2に相当する組換えS100AAPタンパク質1.05μgを注射した。第2の群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、0.75μgのAAPと0.3μのS100A2とにより形成される混合物を注射した。第3の群のマウス(N=5)には、1匹ずつに、0.3μgのS100A2を注射した。第4の群には、0.75μgのAAPを投与した。タンパク質は全てPBS中に溶解し、s.c.によりマウスに投与した。対照として、もう一つの群(N=5)のマウスには、1匹ずつに、緩衝溶液(PBS)を注射した。図10は、1回目の投薬の1週間後の、1/100希釈における、S100A2に対する全IgG応答を示している。予想された通り、AAP又はPBSで免疫化されたマウスからの血清は、S100A2に対し何ら陽性の反応性を示さなかったことが観察された。Cup a 4について先に報告された通り、混合物として投与された場合の2つの免疫原性タンパク質の間の競合効果を示すものとして、1匹のマウスを除いて、S100A2に対する反応性は、該タンパク質がAAPへ混合されて投与された場合に減少した(1匹の動物の血清の反応性は陰性であった)。S100A2タンパク質のみで免疫化されたマウスからのデータは、投与されたタンパク質が少量であっても、低いがしかし陽性の応答(平均OD=0.41)を誘導し得たことから、該タンパク質もまた、アジュバントの不在下で、マウスにおいて免疫原性であることを示した。それにもかかわらず、S100AAPで免疫化されたマウスにおいて、AAPとS100A2との間に何ら免疫競合がなかったこと、しかし一方で、投与されたタンパク質がAAPに融合された場合、S100A2に対する反応性が増加したこと(30%)が観察された(平均OD=0.54)。
【0114】
図11Aに示した通り、AAPのアジュバント能は、タンパク質レポーターへ融合された場合、S100AAP、S100A2、AAP+S100A2、及びAAP(1.05μgのS100AAP;0.3μgのS100A2;0,75μgのAAPプラス0.3μgのS100A2,及び0.75μgのAAP)の2回目の投薬後に明らかに観察された。S100AAPで免疫化された動物の血清と、S100A2タンパク質のみで免疫化されたものの血清との間には、S100A2に対する反応性に、統計的有意差が検出された。レポータータンパク質へ融合されなかったAAPの投与後の、Kmp11及びCup a4に対する反応性について上記に示した観察と一致して、AAPはレポーターS100A2タンパク質へ融合されなかった場合、何らアジュバント能をもたなかったことが検出された。一方、双方のタンパク質間の免疫競合もまた起こるように見える。したがって、AAPがアジュバント効果を及ぼすためには、レポータータンパク質へ融合されることが必要であることから、免疫学的に興味深い特徴が、3つの実験デザインから推測されてもよい。言い換えればこのことは、AAPのビルトインアジュバントの能力が、レポータータンパク質へ遺伝子融合された場合に当てはまることを意味している。アジュバント効果は、応答のタイプを分析したとき、さらに観察された(図11B)。S100AAP投与後のS100A2に対するIgG反応性は、S100A2又はAAP+S100A2の投与後のS100A2に対する反応性に比較して増大されたことばかりでなく、反応性におけるこの増大はまた、IgG2aタイプを分析した場合にも観察されたことが検出された。S100A2の投与後に観察されたIgG1/IgG2a反応性の比は、2.1の平均値であったのに対し、動物がS100AAPで免疫化された場合には、AAPのアジュバント能はレポータータンパク質へ融合されるとIgG1−IgG2a応答をIgG2aに向けてトリガーすることを示すものとして、平均値は0.95であった。タンパク質混合物で動物が免疫化された場合のIgG応答に関して上記に示された観察と一致して、S100AAPで免疫化された動物の血清のIgG1反応性は、AAP+S100A2で免疫化された動物からの血清よりも有意に高かったことが観察された。AAPの、レポータータンパク質へ融合された場合にのみIgG2aに向かうように復帰する能力をさらに示すものとして、双方の場合のIgG2a応答の平均値は、類似していた。
【0115】
S100A2に関連したAAPのアジュバント能はさらに、示された通りの3回目の投与後に、なおより鮮明に観察される:
【0116】
AAPのアジュバント能をさらに示すものとして、3回目の抗原の投薬後の、同じ動物の血清を分析した。図14a〜cは、S100A2に対する応答を示す。分析に用いる血清の希釈の滴定曲線の後、それがAAPのアジュバント能をよりよく判別する希釈度であることから、1/6400の希釈が選択された。S100AAPで免疫化された動物の血清の、S100A2に対する反応性は、S100A2タンパク質の混合物のいずれかで免疫化された動物の血清において観察されたものより有意に高かったことがはっきりと検出された。AAPが液性応答を調節するかどうかを知る目的で、IgG1及びIgG2a応答を分析した。双方のタイプの応答において増加が観測されたことが観察された。タンパク質が単独で投与された場合、IgG2a/IgG1の平均比率は0.45であった。しかしながら、AAPがS100A2へ融合された場合には、AAPがIgG2aに向けて応答を調節したことを示すものとして、IgG2a/IgG1の間の平均比率は1.6であった。加えて、AAPがまた、S100A2へ混合して投与された場合にもIgG2aに向けて応答を調節することも注目されるべきである(IgG2a/IgG1の平均比率は1.1に等しい)。

1− Identification of potential biomarkers for early and advanced gastric adenocarcinoma detection(早期及び進行胃腺癌検出のための潜在的バイオマーカーの同定).Economescu,MC,Necula LG,Dragu D,Badea L,Dima SO,Tudor S,Nastase A,Popescu I,Diaconu CC.Hepatogastroenterology.2010 Nov−Dec;57(104):1453−64.
2− McKiernan E,McDermott EW,Evoy D,Crown J,Duffy MJ. The role of S100 genes in brest cancer progression(乳癌の進行におけるS100遺伝子の役割).Tumour Biol.2011 Jun;32(3):441−50
【0117】
【化1】
図1
図2
図3
図4.1】
図4.2】
図5.1】
図5.2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]