特許第5986578号(P5986578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986578エグゾーストターボチャージャのタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986578
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】エグゾーストターボチャージャのタービン
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20160823BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20160823BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F02B37/18 A
   F02B37/24
   F02B39/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-542388(P2013-542388)
(86)(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公表番号】特表2013-545026(P2013-545026A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011005662
(87)【国際公開番号】WO2012076095
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年8月8日
【審判番号】不服2015-22271(P2015-22271/J1)
【審判請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】102010053951.1
(32)【優先日】2010年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ジークフリート・ズムザー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ヒルト
(72)【発明者】
【氏名】ジークフリート・ヴェーバー
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 伊藤 元人
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00-41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)のエグゾーストターボチャージャ(22)用タービン(54)であり、前記タービンは収容スペース(114)を有する少なくとも1つのハウジング部品(104)を備え、該ハウジング部品は前記内燃機関(10)の排気ガスが通過する少なくとも1つのスパイラルダクト(94、96)を備えており、該スパイラルダクトは出口断面(AR、R,λ、R,RGR)を有し、該出口断面を介して、タービンホイール(116)に排気ガスが当てられ、ここで該タービンホイール(116)は少なくとも部分的に前記収容スペース(114)内に収容され、さらに、前記タービンは、調整部品(120)に接続されている、少なくともほぼ前記収容スペース(114)の周方向(108)に前記調整部品(120)によって前記調整部品と一緒に移動可能な少なくとも1つの閉鎖体(122、124)を備え、前記出口断面(AR、R,λ、R,RGR)は前記閉鎖体により調整可能である、タービンであって、
少なくとも1つのバイパスダクト(128)が設けられており、排気ガスの少なくとも一部が前記バイパスダクトを介して前記タービンホイール(116)を迂回することができ、前記バイパスダクト(128)の流路断面(A)は、前記調整部品(120)の動きによって調整可能であり、
前記調整部品(120)が少なくとも1つの通過開口部(146)を有しており、該通過開口部は前記調整部品(120)の動きによって、少なくとも部分的に前記バイパスダクト(128)と重なり合って動くことができる
ことを特徴とする、タービン。
【請求項2】
前記調整部品(120)の少なくとも一部が、前記ハウジング部品(104)の中に収容されていることを特徴とする、請求項1に記載のタービン(54)。
【請求項3】
一方では前記バイパスダクト(128)が、前記スパイラルダクト(94、96)及び別のスパイラルダクト(102)に流体的に接続されており、排気ガスが、少なくとも1つの前記スパイラルダクト(94、96)に供給され、他方では、前記バイパスダクトが前記ハウジング部品(104)のタービン出口部分(143)に、前記タービンホイール(116)の下流で合流していることを特徴とする、請求項1または2に記載のタービン(54)。
【請求項4】
前記調整部品(120)が調整リング(120)として形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービン(54)。
【請求項5】
前記調整部品(120)が、前記閉鎖体(122、124)を動かすために前記収容スペース(114)の周方向(108)に移動可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタービン(54)。
【請求項6】
少なくとも1つのシーリングエレメント(147)が、前記調整部品(120)と前記タービン(54)の前記ハウジング部品(104)及び/又は別のハウジング部品(151)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタービン(54)。
【請求項7】
前記バイパスダクト(128)は、その少なくとも一部が、前記タービン(54)の前記ハウジング部品(104)及び/又は少なくとももう1つのハウジング部品(151)の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタービン(54)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に示されている種類のエグゾーストターボチャージャのタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特にエグゾーストターボチャージャ内にある、少なくとも部分的に調整可能な断面積を備えるターボ機関用スパイラルハウジングを開示しており、この場合、スパイラルハウジングの内壁を半径方向にスライドしながらガイドされる、この壁に続いて周辺方向に移動可能な少なくとも1つのトングが設けられている。
【0003】
特許文献2から、内燃機関の吸気システム内にコンプレッサを備え、内燃機関の排気システム内にタービンを備えるエグゾーストターボチャージャをもつ自動車の内燃機関が知られている。このタービンはタービンハウジングを有しており、このタービンハウジングには、排気システムの排気ラインに連結されたスパイラルダクトとタービンホイールとが含まれ、このタービンホイールはタービンハウジングの収容スペース内に配置されており、シャフトによってトルク耐性にタービンホイールに接続されているコンプレッサのコンプレッサホイールを駆動するため、スパイラルダクトを介して送られる内燃燃機関の排気ガスがこのタービンホイールに当てられる。このタービンは調整装置を含み、この調整装置によって、収容スペースでのスパイラルダクトのスパイラルインレット断面及びスパイラルダクトのノズル断面が同時に調整可能になっている。
【0004】
エグゾーストターボチャージャは、内燃機関の連続生産を背景にして大量生産の個数が常に増加しているため、取り付けられている内燃機関の効率的な動作、すなわち燃費及び排気ガスの少ない動作を可能にするエグゾーストターボチャージャを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第2539711A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008039085A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、高い動作信頼性を有し、内燃機関の効率的な動作を可能にする、エグゾーストターボチャージャのタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えるエグゾーストターボチャージャのタービンによって解決される。本発明の適切かつ重要な発展形態を備える有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0008】
このような内燃機関のエグゾーストターボチャージャ用タービンは、収容スペースを有する少なくとも1つのハウジング部品を含み、このハウジング部品は内燃機関の排気ガスが通過する少なくとも1つのスパイラルダクトを含んでいる。このスパイラルダクトは出口断面を有し、この出口断面を介して、少なくとも部分的に収容スペース内に収容されているタービンホイールに排気ガスが当てられる。さらに、このタービンは、調整部品に接続されている、少なくともほぼ収容スペースの周辺方向にこの調整部品によって調整部品と一緒に移動可能な少なくとも1つの閉鎖体を備え、出口断面はこの閉鎖体により調整可能である。
【0009】
本発明に基づき、少なくとも1つのバイパスダクトが設けられており、スパイラルダクトを通過する排気ガスの少なくとも一部がこのバイパスダクトを介してタービンホイールを迂回することができ、このバイパスダクトの流路断面は、調整部品の動きによって調整可能であるようになっている。このことは、流路断面を調整するために、閉鎖体に接続されている調整部品が動くことによって閉鎖体を移動させることを意味している。1つの調整部品ポジション又は複数のポジションでは、バイパスダクトの流路断面が、例えば少なくともその大部分を流体的に閉鎖されるため、スパイラルダクトからくる排気ガスはバイパスダクトを介してタービンホイールを迂回できなくなり、従ってこの排気ガスはタービンホイールを駆動することができない。
【0010】
1つの調整部品ポジション以降では、調整部品がバイパスダクトの流路断面を少なくとも部分的に開放するため、スパイラルダクトを通過する排気ガスの少なくとも一部は、タービンホイールに当たってこれを駆動することなく、バイパスダクトを介してタービンホイールを迂回することができる。このことから、スパイラルダクトからくる排気ガスの少なくとも一部がタービンホイールを迂回することをバイパス化と呼ぶ。このことにより、タービンの吸い込み性能は非常に大きく向上する。
【0011】
エグゾーストターボチャージャのタービン出力は、タービンの最大吸い込み性能によって制限される。言い換えれば、タービンを通過してタービン又はタービンホイールを駆動できる排気ガスの流量はタービンの最大吸い込み性能によって制限される。本発明に基づくタービンは、調整部品によるバイパスダクトの開放によって特に高い吸い込み性能を有しているため、排気ガスの流量が非常に多い場合にも本発明に基づくタービンを使用することができ、内燃機関の効率的な動作を可能とする。
【0012】
流路断面が調整可能であることにより、本発明に基づくタービンは実現可能なスループット範囲が極めて広く、内燃機関の多くの様々な動作点に適合することができるため、効率的かつ低燃費及び低排気ガスの内燃機関の動作が可能となる。さらに、本発明に基づくタービンは、出口断面の調整ができることにより、内燃機関の多くの様々な動作点に適合できるため、このタービンは多くの様々な動作点において効率良く動作することができ、このことは、同様に、低燃費かつ低排気ガスの内燃機関の動作に有利に作用する。本発明に基づくタービンは、低燃費及び低排気ガスの内燃機関の動作にとって有利な効率特性を有しており、この特性は、特に広い動作範囲、とりわけ少なくとも特性マップのほぼ全体においてバイパスダクトの流路断面を調整できるという理由から、内燃機関に有利に作用する。
【0013】
本発明に基づくタービンの場合、バイパスダクトの流路断面は調整部品を用いることによって、例えば少なくともほとんどが流体的に閉鎖可能である。言い換えると、この断面は少なくともほぼゼロにまで縮小されるため、排気ガスはバイパスダクトを通過することができなくなる。さらに、これとは逆に、この流路断面は調整装置によって開放することもできるため、排気ガスはバイパスダクトを通過してタービンホイールを迂回することができる。
【0014】
本発明の有利な実施形態の場合、流路断面は、1つの調整部品ポジションにおいて流体的に少なくとも大部分が閉鎖され、もう1つの調整部品ポジションでは最大に開放される。これに加え、調整部品の中間ポジションも調整可能であり、この中間ポジションでは、流路断面積が最大に開放可能な流路断面よりも小さく形成され、流体的に閉鎖されている流路断面よりも大きく形成されている。有利であるのは、この調整部品が、常時及び/又は無段階にこれらのポジションの間で調整可能であるため、流路断面及びバイパスダクトを通過する排気ガスの量が、効率的かつ適切に、タービン及び内燃機関の複数の異なる動作点に適合できることである。
【0015】
排気ガス規制値、とりわけ窒素酸化物及び煤の排出量規制が常に厳しさを増していることにより、エグゾーストターボチャージャによる内燃機関の過給に関して大きな影響が生じている。このことにより、内燃機関の平均負荷領域から高負荷領域にかけて高い排気ガス再循環率(EGR率)を実現する必要があることから、エグゾーストターボチャージャのチャージ圧提供に関する要求が高まっている。従って、そのようなエグゾーストターボチャージャのため、寸法又は大きさに関して形状的に小型のタービンを作る必要性が生じ、その際、要求される高いタービン出力は、内燃機関との相互作用によるタービンの堰止め性能の向上もしくは吸込み性能の低下によって実現される。
【0016】
さらに、タービンのインレット圧力レベルが、排気ガスの流れる方向に向かってタービンの下流に配置されている排気ガス浄化装置、特に粒子フィルタの背圧によって上昇するため、このことからも、タービンの寸法又は大きさに関してさらなる小型化が要求される。これに伴って、そのようなタービンの小型化は一般的に効率を悪化させるという問題が生じる。しかしながら、この小型化は、エグゾーストターボチャージャのコンプレッサ側の出力要求を満たすために不可欠であり、望ましい空気‐排気ガス供給を実現し、それによって内燃機関の回転数又は出力を望ましいものにし、さらに低排出を実現するためである。
【0017】
本発明に基づくタービンは、その寸法又は大きさに関して小型に形成することが可能であり、それによって望ましい堰止め特性を実現することができる。このことにより、EGR率も上昇させることができる。言い換えれば、特に量の多い排気ガスを内燃機関の排気側から内燃機関のエア側に再循環させ、内燃機関によって吸引されるエアに供給できることにより、内燃機関の排出量、特に窒素酸化物及び煤の排出量を低く抑えることができる。
【0018】
さらに、前述したようなエグゾーストターボチャージャのコンプレッサ側の高い出力要求は、このタービンによって達成することができる。なぜなら、このタービンにより、例えばタービンに割り当てられている内燃機関の静圧過給モードが可能になるからである。さらに、本発明に基づくタービンは、高い吸込み性能と高いスループット範囲を有している。
【0019】
特に乗用車の場合、この内燃機関及びタービンは明確な非定常特性を有し、許容可能な走行特性が達成されるように、この特性はタービンの可変的堰止め性能によって制御しなければならない。このことは、いわゆるダウンサイジングの原理に従って形成されている内燃機関では、特に重要である。この種の内燃機関は比較的少ない排気量でありながら、同時に高出力及び高回転数を有しており、このことはエグゾーストターボチャージャによる強い過給によって実現されている。
【0020】
この場合、本発明に基づくタービンにより、堰止め特性の可変的かつ適合可能な調整と、特に出口断面の調整による非定常特性の制御とが可能になるため、本発明に基づくタービンは乗用車用内燃機関でも、商用車用内燃機関でも使用可能であり、内燃機関の効率的な動作、及びそれに伴って低燃費及び低排出量の動作が可能になることから、CO排出量が低下する。
【0021】
本発明に基づくタービンは、特に出口断面の調整によって、非常に優れた効率を有するというさらなる利点をもたらす。さらに、閉鎖体によるこの調整は、比較的簡単な手段によって単純に実施されているため、本発明に基づくタービンの部品数、経費及び重量は僅かな値に抑えられている。さらに、本発明に基づくタービンは、非常に小さな取付けスペースを必要とするだけなので、エンジンルームなど、特にスペースの限られた部分でのパッケージ問題の解決又は回避にも貢献する。また、本発明に基づくタービンは、長い耐用年数にわたって、特に圧力及び温度負荷などの負荷が高い場合にも優れた機能達成安全性を有している。
【0022】
非常に良好かつ有利なタービンの堰止め性能を有しているにもかかわらず、本発明に基づくタービンは、特に出口断面の調整及び僅かなタービン寸法により、出口断面をアクチュエータによって調整する従来の調整方法の場合でも、適合する作用特性の制御に伴って、極めて高い吸込み性能と広いスループット範囲とを有している。本発明に基づくタービンは、閉鎖体がトング形に形成されていることからトングスライダタービンとも呼ばれるが、とりわけもっとも単純な形状設定ではスループット範囲指数が3よりも大きく、また4よりも大きいか、もしくは特にガソリンエンジンの場合は5よりも大きいスループット範囲指数を有している。この場合、スループット範囲指数は下記の数式1によって求められる。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、Φmaxはタービンの最大スループットを表し、Φminは最小スループットを表しており、本発明に基づくタービンは出口断面並びに流路断面の調整によって最大スループットΦmaxと最小スループットΦminとの間で調整することができる。このことは、本発明に基づくタービンが、ガソリンエンジンとして形成されている、排気ガス流量が特に高い内燃機関の場合でも、とりわけ大きな動作範囲で効率的に動作できることを意味している。
【0025】
さらに、本発明に基づくタービンの実現可能なスループット範囲及び動作特性は、特に、ハウジング部品に固定された、スパイラルダクトの少なくとも部分的に境界となっている壁の、主要な寸法設計及び寸法決定によっても影響を受け、閉鎖体は出口断面を調整するためにこれらの壁に対して相対的に動くことができる。また、例えば排気ガスがタービンホイールに流れる方向に向かって調整部品の下流に配置されている閉鎖体の設計及び固定も、タービンの実現可能なスループット範囲及び効率特性にとって重要である。
【0026】
バイパスダクトの流路断面の調整と、調整部品及び閉鎖体の動きによる出口断面の調整との連結によって、特に、出口断面の調整を生じさせる調整部品及び閉鎖体の移動並びにバイパスダクトの流路断面の調整を行うために使用するアクチュエータは1つだけで済むという利点が生じる。このことにより、本発明に基づくタービンの部品数、重量及び取付けスペースが少なくなる。また、これにより、本発明に基づくタービンの制御又は調整コストも小さな範囲に収めることが可能となる。
【0027】
本発明の有利な実施形態では、調整部品が少なくとも1つの通過開口部を有しており、この通過開口部は(閉鎖体の動きを伴う)調整部品の動きによって、少なくとも部分的にバイパスダクトと重なり合って動くことができる。調整部品の通過開口部とバイパスダクト又はバイパスダクトの出口開口部とが重なり合う場合、排気ガスはタービンホイールを迂回してバイパスダクトを通過することができるため、タービンは非常に大きな吸込み性能を有する。この場合、通過開口部は、バイパスダクトの流路断面又は出口開口部と比べ、少なくともほとんど同じ大きさであるか、又は大きな断面を有することができるため、調整部品の通過開口部がバイパスダクト又はその出口開口部と完全に重なり合う場合、バイパスダクトを介する排気ガスの流れは調整部品の通過開口部によって絞られることはない。この実施形態により、バイパスダクトの流路断面の調整が調整部品に統合され、極めて簡単な方法で実施されるという利点が生じ、その結果、タービンの取付けスペース及びコストが抑えられる。
【0028】
さらに、このことにより、ハウジング部品に接した状態で、又はハウジング部品の中に調整部品を特に良好に支持することができるため、少なくともほぼ安定的に調整部品の正常な動作が保障される。このことは、本発明に基づくタービンの機能達成安全性に有利に働く。
【0029】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、調整部品の少なくとも一部が、特に大部分が、さらには全部が、例えばタービンハウジングとして形成されているハウジング部品の中に収容されている。従って、このタービンの取付けスペースは特に小さくなる。
【0030】
本発明の特に有利なもう1つの実施形態の場合、一方ではバイパスダクトが、前記のスパイラルダクト及び/又は別のスパイラルダクトに流体的に接続されており、このバイパスダクトを介して少なくとも1つのスパイラルダクトに排気ガスを供給することができ、他方ではバイパスダクトはハウジング部品のタービン出口部分に、タービンホイールの下流で合流している。この方法で、排気ガスは極めて良好にタービンホイールの上流で取り出され、タービンホイールの下流で排気システムに誘導されることができるため、この排気ガスがタービンホイールに当たってタービンホイールを駆動することはできない。さらに、これにより、取付けスペースを取らないタービンホイールのバイパス化が可能となる。
【0031】
本発明の有利な実施形態においてバイパスダクトの少なくとも一部が、特に大部分もしくは全部がタービンの前記のハウジング部品及び/又はもう1つのハウジング部品の中に組み込まれている場合、本発明に基づくタービンは、前に述べた利点を実現しながら取付けスペースを特に小さくすることができる。この場合、バイパスダクトは、例えばボーリング、フライス加工又は切出しなどによって、鋳造によるハウジング部品の製造時に作ることができる。これにより、コスト及び重量のかさむ追加の配管部品が設けられず、そうしたものは本発明に基づくタービンの高い吸込み性能及びスループット範囲を実現するのに不要である。
【0032】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、調整部品が実質的に調整リングとして形成されている。従って、この調整部品は複雑性が非常に低く、製造コストも低下することから、結果としてタービン全体にかかるコストが少なくなる。
【0033】
閉鎖体を動かすために、調整部品が収容スペースの周辺方向に移動可能であり、特に回転軸を中心に回転可能である場合、このことによって特に簡単な方法で閉鎖体の動きと出口断面積の調整とが可能となる。このように動きが単純な場合には、調整部品が挟まれて動かなくなったり、好ましくない高い摩耗もしくはその他の誤動作が生じたりする危険が非常に少なくなることから、極めて良好なタービンの機能達成安全性に有利である。
【0034】
ハウジング部品から周辺環境などへの排気ガスの好ましくない漏れを回避するため、有利には、調整部品とタービンの前述のハウジング部品との間、及び/又は調整部品とタービンの別のハウジング部品との間に少なくとも1つのシーリングエレメントが配置されている。それにより、タービンを通過する少なくともほとんどの排気ガスがタービン出口を介して送り出され、タービンの下流で内燃機関の排気システムに配置されている排気ガス後処理装置の中に送り込まれ、排気ガスは最終的に周辺環境に放出される前に排気ガス後処理装置で清浄化される。
【0035】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、好ましい実施形態及び図に基づく以下の説明に示されている。ここまでの説明で述べた特徴及び特徴の組合せ、並びに以下の図の説明で述べられている、及び/又は図の中にのみ示されている特徴及び特徴の組合せは、それぞれに示された特徴の組合せだけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、その他の組合せ又は単独でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】エグゾーストターボチャージャによって過給される内燃機関の概略図であり、この内燃機関はバイパスダクトを有するトングスライダ・マルチセグメント・タービンを備え、トングスライダ・マルチセグメント・タービンのタービンホイールは、このバイパスダクトを介して迂回することができる。
図2図1に基づくトングスライダ・マルチセグメント・タービンの概略横断面図である。
図3図1及び図2によるトングスライダ・マルチセグメント・タービンのスループットパラメータの3つの異なる曲線である。
図4図1〜3によるトングスライダ・マルチセグメント・タービンのもう1つの実施形態の概略部分縦断面図である。
図5図2に基づくトングスライダ・マルチセグメント・タービンのもう1つの実施形態の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は6つのシリンダ12を備える内燃機関10を示している。内燃機関10の動作中、この内燃機関は方向矢印14に従って空気を吸引し、この空気はエアフィルタ16によって濾過され、さらに方向矢印18に従って内燃機関10に割り当てられているターボチャージャ22のコンプレッサ20内に流れ込む。この場合、空気はコンプレッサ20を介してコンプレッサホイール24により圧縮され、それにより空気が加熱される。そのようにして圧縮され、加熱された空気を冷却するため、空気はさらに方向矢印26に従ってインタクーラ28へ流れ、次に方向矢印30に従ってエアコレクタ32へと流れ、空気はこのエアコレクタを介して方向矢印34に従ってシリンダ12に供給される。シリンダ12では、吸引され、圧縮された空気に燃料が加えられて空気が燃焼し、その結果、方向矢印38に従って内燃機関10のクランクシャフト36の回転が生じる。
【0038】
内燃機関10のエア側40に配置されているコンプレッサ20は、内燃機関10の望ましい出力レベル又は回転数レベルを作り出すために、望ましい空気供給を内燃機関10に提供するのに用いられる。これにより、内燃機関10は、その排気量及び寸法に関して小型に設計することができ、このことにより、軽量化、高い比出力、低燃費及び低いCO排出量が達成される。
【0039】
シリンダ12における燃焼から発生する内燃機関10の排気ガスは、排気管42によってまず内燃機関の排気側44の排気ガス再循環装置45に送られ、この排気ガス再循環装置によって内燃機関10の排気ガスを排気側44からエア側40に戻すことができる。そのために、排気ガス再循環装置45は排気ガス再循環バルブ46を備え、このバルブによって、特定の、内燃機関10の現在の動作点に適合する排気ガス再循環量を調整することができる。排気ガスが方向矢印48に従って内燃機関10により吸引された空気に供給される前に、排気ガスは方向矢印52に従って排気ガス再循環クーラ50に流れ、これによって排気ガスが冷却される。戻された排気ガスが吸引された空気に加えられることにより、内燃機関10の特に窒素酸化物及び微粒子の排出量が低下し、このことから内燃機関10は低燃費、高出力であるばかりでなく、排出量も低くなっている。
【0040】
内燃機関の排気ガスは、排気管42によってエグゾーストターボチャージャ22のタービン54に送られる。以下に、このタービンを図2を用いて説明する。同様に、図5に示されているタービン54をエグゾーストターボチャージャ22のタービン54として使用することもできる。図5によるタービン54も同様に以下で説明される。内燃機関10の排気ガスは、部分スパイラルとして形成されている第1のスパイラルダクト94と、同様に部分スパイラルとして形成されている第2のスパイラルダクト96とに送られる。重要な2つのスパイラルダクト94及び96は、この場合、隣接して配置された、気密性があるように互いに密閉されている接続フランジ98及び100を含んでいる。接続フランジ100とスパイラルダクト96の供給ダクト102とは、図面を見た場合に視線方向で、実質的にスパイラルダクト94の下方をとおり、供給ダクト102の端部は、図面ではスパイラルインレット断面AS0,RGR及びタービン54のタービンハウジング104に対して固定されているハウジングトング106の前に現れている。
【0041】
図2から分かるように、スパイラルダクト94及び96は、方向矢印108に従ってタービンホイールの周辺方向に、その周辺にわたって取り付けられており、すなわち連続して接続されている。第1のスパイラルダクト94は約135°の巻付け角ψを有し、いわゆるEGRスパイラル(EGR:排気ガス再循環)として機能し、排気ガスを堰き止めるために用いられ、それによって特に多くの排気ガスを、排気ガス再循環装置を使って再循環させることができる。いわゆるλスパイラルとして形成されている第2のスパイラルダクト96は、その堰止め性能を使って、内燃機関10に必要な空燃比を提供する。
【0042】
タービン54を、内燃機関10の少なくともほぼ特性マップ全体において効率的に、多数の様々な内燃機関の動作点に適合させることができるように、タービン54は調整装置110を備え、この調整装置によって、スパイラルダクト94及び96のスパイラルインレット断面AS,λ、S,RGRは、方向矢印112に従って半径方向に同時に開かれる、収容スペース114への流入プロセスのために働くスパイラルダクト94及び96のノズル断面AR,λ、R,RGRとともに調整可能であり、この収容スペースの範囲内ではタービンホイール116が回転軸118を中心に回転可能に収容されている。調整装置110は制御装置82によって制御又は調整される。
【0043】
調整装置110は、タービンホイール116の回転軸118と同軸にタービンハウジング104内に配置されている調整リング120を有し、この調整リングは、ノズル断面AR,λ及びAR,RGRの部分に配置されている2つの閉鎖体122及び124に接続されている。閉鎖体122及び124は少なくともほぼトング形に形成され、そのためトングとも呼ばれており、一方、調整リング120はトングスライダと呼ばれる。ここでは断面が翼面状に形成されている閉鎖体122及び124が、方向矢印108に従って、つまりタービンホイール116の周辺方向に、調整リング120が回転軸118を中心にタービンホイールの周辺を回転運動することによって、スパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGR並びにノズル断面AR,λ及びAR,RGRを縮小するポジションと、スパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGR並びにノズル断面AR,λ及びAR,RGRを拡大するポジションとの間で動くことができる。この場合、閉鎖体122及び124は、図2の中で角度εだけ初期位置から回転した状態で示されているため、スパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGR及びノズル断面AR,λ及びAR,RGRはそれぞれの最小値まで調整されている。図2には、また、閉鎖体122及び124の初期位置での最大のスパイラルインレット断面AS0,λ及びAS0,RGRも示されている。
【0044】
調整装置110を用いることによって、両方のタービン側(RGR及びλ側)は、スパイラルダクト94及び96の形状設計と閉鎖体122及び124とに応じて、同時に相互調整又は制御することができる。閉鎖体122、124の全調整角範囲εにおけるスパイラルの様々な形状変化により、多様な組合せを作ることができる。従って、調整角範囲εの範囲内で、目標とするタービン54のEGR性能は、目標とするコンプレッサ20のエア供給量と共に、燃料消費と窒素酸化物及び微粒子の排出とに関して、内燃機関10の望ましい動作状態を生み出すのに有効な空燃比λのため、構造的に単純かつ低コストで変更できるように調整することができる。特徴的なスパイラルインレット断面AS,λ、AS,RGRの変更と関連する調整角範囲εは、内燃機関10の排気ガスの堰止め特性又はタービン54のスワール発生に影響を及ぼすことができる。すなわち、タービンの仕様出力auは、下記の一般的公式に従って周辺構成部品c1uに比例しているため、スパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGRの面積操作によって、タービンの仕様出力及び絶対出力を調整することができる。
【0045】
【数2】
【0046】
この場合、タービン54は、内燃機関10と同様に、商用車及び乗用車の内燃機関にも使用可能であり、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン又はディゾットエンジンとして形成されている内燃機関にも使用することができる。
【0047】
特に図1から分かるように、タービン54は少なくとも1つのバイパスダクト128を備えるバイパス装置126も備えている。このバイパスダクト128を介して、排気ガスの少なくとも一部がタービンホイール116を迂回することができるため、この排気ガスがタービンホイール116に当たってこれを駆動することはない。そのために、バイパス装置126は分岐箇所130を備え、この分岐箇所は排気ガスの流れる方向を向いてタービンホイール116の上流に配置されている。さらに、バイパス装置126は流入箇所132を含み、この流入箇所で、タービンホイール116を迂回した排気ガスが再び排気管42の中に流入する。この場合、流入箇所132は、排気ガスの流れる方向を向いて排気ガス後処理装置90の上流に配置されているため、タービンホイール116を迂回した排気ガスは、方向矢印92に従って周辺環境へ放出される前に排気ガス後処理装置90によって清浄化される。
【0048】
タービンホイール116をバイパスダクト128によって迂回する排気ガスの量は調整リング120によって調整することができる。回転軸118を中心に方向矢印108に従って調整リング120が回転することにより、方向矢印108に従って回転軸118を中心に閉鎖体122及び124が動く、詳細にはスライドするばかりでなく、タービンホイール116を迂回する排気ガスが通過するバイパスダクト128の流路断面A図4)も調整される。
【0049】
この場合、調整リング120の調整角範囲εの部分範囲は、調整リング120の壁によってバイパスダクト128の流路断面Aを少なくともほぼゼロにまで縮小し、流体的に少なくとも大部分を閉鎖するため、排気ガスがバイパスダクト128を通過できないようにすることができる。調整リング120が調整角範囲εを一方向に動くことにより、調整リング120の特定のポジション以降では、調整リング120がバイパスダクト128の流路断面Aを少なくとも部分的に開放するため、排気ガスはバイパスダクト128を通過することができる。調整リング120がさらにこの方向に動くと、バイパスダクト128の流路断面は徐々に大きくなり、さらに開放されるため、これに伴って、タービンホイール116を迂回するためにバイパスダクト128を通過する排気ガスの量も徐々に大きくなる。
【0050】
この場合は、バイパスダクト128の流路断面Aを最大に開放する調整角範囲εのエンドポジションに調整リング120が回転又は移動するまで、この方向に調整リング120が調整角範囲εを移動するように設定することができる。同様に、流路断面Aが最大に調整され、従ってバイパスダクト128が最大に開放されている際に調整リング120が1つのポジションを有し、調整リングはそのポジションから、これまで流路断面Aを徐々に拡大するために動いていた方向と同じ方向にさらに移動できるようにすることも可能である。このことが当てはまる場合、例えば、流路断面Aを、調整可能な最大値に一定して維持することができる。同様に、調整リング120がさらに移動する、詳細には回転することによって、調整リング120が調整角範囲εのエンドポジションに達するまで、再び流路断面AUを徐々に減少させることも可能である。このエンドポジションでは、必要に応じて流路断面Aを再度少なくともほぼゼロまで減少させることができる。
【0051】
従って、バイパスダクト128の流路断面Aを様々な方法で調整することが可能となり、それによってタービン54の、とりわけその吸込み性能を内燃機関10の多数の様々な動作点に適合させることができる。
【0052】
バイパスダクト128の開放により、流量の一部がタービンホイール116に流れ、この過程でタービン54を通過し、排気ガス流量の一部はバイパスダクト128を介してタービン54を通過させることによって、極めて大きい流量の内燃機関10の排気ガスをタービン54に送ることができる。言い換えれば、バイパスダクト128の開放により、非常に高いタービン54の吸込み性能が実現され、それによって非常に高いスループット範囲を達成することができる。同時に、特に多量の排気ガスを再循環させるために、バイパスダクト128を閉鎖することにより、非常に良好なタービン54の堰止め性能を実現することも可能になる。
【0053】
さらに、タービン54は、多数の様々な動作点、特に内燃機関10の特性マップ全体の少なくとも大部分に対して非常に優れた適合性能を有している。なぜなら、閉鎖体122及び124によってタービン54を様々に調整できるからである。従って、内燃機関10は極めて効率的に動作し、特に低燃費かつ低排出に動作することが可能となり、その結果、COの排出量も少なくなる。
【0054】
図3はタービン54のタービンスループット特性マップ133を示し、その横座標135にはタービン圧力比TTtsが示され、その縦座標134にはスループットパレメータΦが示されている。このタービンのスループット特性マップ133は、図5によるタービン54にも有効である。タービンのスループット特性マップ133には、スループットパラメータΦの経過曲線136が示されており、この経過曲線は、閉鎖体122及び124が調整角範囲εの最小ポジションに調整されている場合に生じ、この調整角範囲では、ノズル断面AR,λ及びAR,RGR及び/又はスパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGRがそれぞれの最小値に調整されている。
【0055】
さらに、スループットパラメータΦのもう1つの経過曲線138が示されており、この経過曲線は、閉鎖体122及び124が調整リング120によって最大ポジションに調整されている場合に生じ、この最大ポジションでは、ノズル断面AR,λ及びAR,RGR及び/又はスパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGRがそれぞれの最大値に調整されている。
【0056】
この最大ポジションに加えて、調整リング120によってバイパスダクト128が最大に開放される場合、図3に示されているスループットパラメータΦの経過曲線140が生じる。このことは、タービンのスループット特性マップ133の経過曲線136と138との間、並びに経過曲線136及び138では、バイパスダクト128が流体的にほぼ閉鎖されていることを意味している。バイパスダクトが、閉鎖体122及び124の最大ポジションから開始して、調整リング120によって徐々に開放される場合、タービン54のスループットパラメータΦは、例えばタービン圧力比TTtsが少なくともほぼ一定のとき、経過138から出発して縦座標134に沿ってより高い値へ経過曲線140の方向に移動する。バイパスダクト128の流路断面Aが、最大に調整された流路断面Aから出発して減少し、閉鎖体122及び124が最大ポジションにある場合、スループットパラメータΦは、タービン圧力比TTtsが少なくともほぼ一定のとき、経過曲線140から経過曲線138の方向に移動する。
【0057】
閉鎖体122及び124が最大ポジションにある場合に、バイパスダクト128の流路断面Aの拡大又は減少がスループットパラメータΦに与える影響は、図3の中で方向矢印142によって示されている。従って、経過曲線138(閉鎖体122及び124が最大ポジション、バイパスダクト128は流体的に閉鎖されている)と経過曲線140(閉鎖体122及び124が最大ポジション、バイパスダクト128は最大に開放されている)との間の縦座標134に沿った範囲は吹出し範囲と呼ばれ、この範囲においてスループットパラメータΦはバイパスダクト128の流路断面の拡大又は縮小によって極めて高い値をとり、可変的に調整することができる。バイパスダクト128によるタービンホイール116の迂回は、この場合、吹出しと呼ばれる。
【0058】
図4はタービンハウジング104を備えるタービン54のもう1つの実施形態を示している。このタービンハウジング104は、供給ダクトとして形成されているスパイラルダクト145並びに少なくとももう1つのスパイラルダクト153を有している。このスパイラルダクト145はスパイラルダクト153と流体的に接続されているため、排気ガスは、まずスパイラルダクト145を通り、ここからスパイラルダクト153に流れ込む。例えば、タービンハウジング104を介して少なくとももう1つのスパイラルダクト(図4には図示されていない)がスパイラルダクト153と同様に少なくとも部分的に形成されているため、スパイラルダクト145は、スパイラルダクト153及び少なくとももう1つのスパイラルダクトによって流体的に分割されている。この場合、スパイラルダクト145はコレクタダクトとしても機能し、この中に排気ガスを集めることができるため、内燃機関10の静圧過給モードが実現可能である。この点に関しては、図2によるタービン54によっても内燃機関10の静圧過給モードを有利な形で実現できることに留意されたい。
【0059】
図4から分かるように、バイパスダクト128は入口開口部149を有し、この入口開口部を介してスパイラルダクト145と流体的に接続されている。さらに、バイパスダクト128は出口開口部150を有し、この出口開口部を介して、タービンホイール出口143に通じている。そのため、排気ガスはスパイラルダクト145から分岐し、従ってタービンホイール116の上流で分岐することができ、タービンホイール116を迂回しながらタービンホイール出口143に送られ、従ってタービンホイール116の下流に送ることができる。このことにより、バイパスダクト128を通過する排気ガスは、リングノズル144を介してタービンホイール116に向かって流れることができないため、タービンホイールを駆動できない。さらに、バイパスダクト128をスパイラルダクト153と流体的に接続して、リングノズル144の上流で排気ガスを分岐することも可能である。
【0060】
図4から分かるように、調整リング120は少なくとも1つの通過開口部146を有し、この通過開口部は調整リング120の壁によって境界が定められている。例えば図3によるスループット特性マップ133のような望ましいタービンのスループット特性マップに従って、調整角範囲εにおける調整リング120の特定のポジション以降では、調整リング120の通過開口部146とバイパスダクト128又はバイパスダクト128の出口開口部148との間で重なり合いが生じるため、排気ガスはこの出口開口部を介してタービンハウジング104内のバイパスダクト128から流出し、調整リング120の通過開口部146を通過することができる。通過開口部146がバイパスダクト128と完全に重なり合う場合、タービン54のスループット性能が最大となる最大吹出し断面が生じる。従って、排気ガスの部分流はスパイラルダクト145から分岐し、方向矢印152に従ってタービンホイール116を迂回しながら、タービン54の該当する外部輪郭部品151を介してタービンホイール出口143に送られることができる。
【0061】
この場合、図4から分かるように、バイパスダクト128は一部がタービンハウジング104内に、一部が外部輪郭部品151内に形成されており、調整リング120の通過開口部146が少なくとも部分的にバイパスダクト128の該当する部分範囲と重なり合っている場合は、これらの部分範囲が調整リング120の通過開口部145を介して互いに流体的に接続される。
【0062】
図4には、シーリングエレメント及び/又は補正機構147も示されており、これらによって調整リング120及び/又は外部輪郭部品151が密閉されているため、排気ガスは好ましくない形でタービンハウジング104から周辺環境に排出されることはない。さらに図4から非常によく分かるように、閉鎖体122及び閉鎖体124は調整リング120に接続され、例えば一体成形で形成されており、調整リング120と一緒に動くことができる。
【0063】
図4ではアクチュエータ154が図示されており、このアクチュエータは動作部品156によって調整リング120に接続され、この動作部品によって調整リング120と閉鎖体122及び124とが可変的に調整可能になっている。調整リング120と閉鎖体122及び124の調整又は動きは、バイパスダクト148又はバイパスダクトの部分範囲に対する通過開口部146の動きに伴って生じるため、スパイラルインレット断面AS,λ及びAS,RGR及び/又はノズル断面AR,λ、R,RGRと、タービンホイール116を迂回してバイパスダクト128を通過する排気ガスの量との両方を調整するために必要なアクチュエータはアクチュエータ154だけである。
【0064】
図5によるタービン54はシングルフローの、いわゆるトングスライダ・マルチセグメント・タービンとして形成されている。このタービンは第1のハウジング部分158を備え、このハウジング部分は内燃機関10の排気ガスが通過できる3つのスパイラルダクト160を有している。スパイラルダクト160はそれぞれのスパイラルインレット断面A並びにそれぞれのノズル断面Aを有している。ハウジング部品158にはタービン54のタービンホイール116が収容されており、このタービンホイールは回転軸118を中心に回転可能である。
【0065】
内燃機関10の排気ガスはそれぞれのスパイラルインレット断面Aを介してスパイラルダクト160に流入し、それぞれのノズル断面Aを介してタービンホイール116に向かって流れ、それによってタービンホイール116が排気ガスによって駆動され、回転する。タービンホイール116はエグゾーストターボチャージャ22のシャフトと接続されており、コンプレッサホイール24もこのシャフトとトルク耐性に接続されていることから、コンプレッサホイール24はシャフトを介してタービンホイール116によって駆動される。
【0066】
タービン54は調整リング120を有する調整装置110も備えており、調整リングはトングスライダの形で3つの閉鎖体122と接続されており、それぞれ1つのトングスライダがスパイラルダクト160のいずれかに割り当てられている。調整リングは、タービンホイール116の回転軸118を中心として方向矢印162の方向に回転可能であることから、スパイラルインレット断面A並びにタービンホイール116の周辺方向にタービンホイールの周辺にわたって均等に配分されて配置されているノズル断面Aが調整可能になっている。言い換えれば、このことは、ノズル断面Aを狭めているか閉鎖している少なくとも1つのポジションと、反対にノズル断面Aを開放している少なくとも1つのポジションとの間で、トングスライダが調整リング120の回転によって調整可能であることを意味している。調整装置110によってタービン54の変動性が生じることから、タービン54は、内燃機関10の特性マップの少なくともほぼ全体において様々な動作点に適合することができ、それによって内燃機関の動作が効率的になり、内燃機関は低燃費かつ低排出に動作することができるようになる。ノズル断面Aの調整によって、堰止め特性又はタービン54のスループット特性を可変的に調整することができる。
【0067】
タービン54の複数のセグメントを形成しているスパイラルダクト160によって、まず、内燃機関10の動圧過給モードが可能である。内燃機関の静圧過給モードを可能にするため、タービン54はコレクタハウジング164を備え、このコレクタハウジング164によって、周辺環境に対して密閉された、スパイラルダクト160に共通するコレクタスペース166が形成されており、このコレクタスペース内にハウジング部品158が収容されており、コレクタハウジング164はベアリング設備の側でハウジング部品158を取り囲むことができ、従ってコンプレッサ24に対向する側及び/又はこの側の反対側、すなわちタービン出口側で取り囲むことができる。このコレクタハウジング164はインレットダクト168を有し、排気ガスは方向矢印170に従って排気管42を介してこのインレットダクト内へ流入することができ、この排気管が排気ガスをさらにコレクタスペース166に誘導する。図5から分かるように、インレットダクト168は方向矢印170に従って排気ガスのフロー方向に徐々に細くなっている。インレットダクト168を介してコレクタスペース166に送られる排気ガスは、まず、コレクタスペース166内に集められ、スパイラルダクト160からタービンホイール116へと流れることができる。この場合、排気ガスの混合並びに収集は、排気管42を介して排気ガスのフロー方向に向かってハウジング部品158の上流で行われる。
【0068】
それぞれのスパイラルインレット断面Aの上流では、スパイラルダクト160がそれぞれ1つの少なくともほぼトランペット形のインレットダクト172を有し、排気ガスはこのインレットダクトを介してスパイラルダクト160に流入することができる。タービン54は高い変動性を有していることから、様々な堰止め特性を示し、それに伴って様々なEGR値を発生させることができる。同様に、このことによって、高い出力又は回転トルク要求を満たすために、内燃機関10の特定のエア供給を実現することが可能となる。さらに、タービン54は僅かな部品数しか有していないことに伴って、少ない経費で高い動作信頼性が生じる。
【0069】
基本的に、ダブルフロー型タービンを、図5によるタービン54の実施形態と同様に形成することも可能であり、タービンホイール116の回転軸118に沿ってハウジング部品158の横に、少なくとも2つのスパイラルダクトを備えるもう1つのハウジング部品が、例えばハウジング部品158の形で配置されており、このハウジング部品は、コレクタハウジング164に基づくもう1つのハウジング部品によって形成されている、収容スペース166に基づくもう1つの収容スペースの中に収容されている。従って、コレクタスペースは並行に配置され、密閉された状態で互いに分離されている。この場合、並列に接続されている2つのハウジング部品158が設けられており、これらのハウジング部品はそれぞれが一定の静圧作用を有しており、内燃機関10のシリンダ12がマニホールド部品などを用いてシリンダグループに分割されている場合は、これらのハウジング部品により互いに密閉されている2つのコレクタスペースに一定の動圧過給が生じることから、調整装置110及び該当するトングスライダによる両側の調整装置によって、可変的な、いわゆるダブルフロー排気タービンが成立し、このタービンは、用途に応じて非対称の堰止め特性をもたらすこともできる。
【0070】
この場合、タービン54の調整装置110は内燃機関10の制御装置82によって制御又は調整され、この制御装置が調整装置を調整して、タービン54を内燃機関10のそのときの動作点に適合させる。
【0071】
図5によるタービン54も、少なくとも1つのバイパスダクト128をもつ前述のバイパス装置126を備え、バイパスダクト128を介してタービンホイールを迂回する排気ガスの量を調整リング120によって調整することができる。回転軸118を中心に方向矢印162に従って調整リング120が回転することにより、前述した方法と同様に、回転軸118を中心にトングスライダが動く、詳細にはスライドするばかりでなく、タービンホイール116を迂回する排気ガスが通過できるバイパスダクト128の流路断面A図4)も調整される。
図1
図2
図3
図4
図5