特許第5986579号(P5986579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986579天然樹脂からの活性分子の抽出方法とその利用
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  • 特許5986579-天然樹脂からの活性分子の抽出方法とその利用 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986579
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】天然樹脂からの活性分子の抽出方法とその利用
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20160823BHJP
   A61K 36/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B01D11/02 A
   A61K36/00
   A61K31/7048
   A61K31/353
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-542626(P2013-542626)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-500270(P2014-500270A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】IB2011003013
(87)【国際公開番号】WO2012076977
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】MI2010A002268
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513146332
【氏名又は名称】ローデ ファーマ エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】RODE PHARMA S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アメロッティ, ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】セコンディーニ, ロレンツォ
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051738(JP,A)
【文献】 特開2009−040744(JP,A)
【文献】 特開2001−039844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01D 11/00− 12/00
A61K 36/00− 36/9068
DB等 JSTPlus/JMEDPlus
/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性基質から活性分子を抽出する方法であって、該基質を抽出液と接するように配置する工程を含む方法であり、該抽出液は以下を含むことを特徴とする:
−気温23℃、圧力1気圧で気体の抽出ガスと
−酢酸を含む抽出溶媒。
【請求項2】
植物性基質から抽出される活性分子が、テルペン、フラボノイド、アントシアン、カテキンを含む群から選択される請求項1の方法。
【請求項3】
−該テルペンは、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルペン、トリテルペン、テトラテルペンを含む群から選択され、
−該フラボノイドは、フラボン、イソフラボン、ネオフラボンを含む群から選択され、
−該アントシアンは、デルフィニジン、ペチュニジン、シアニジン、アントシアニン、マルビジン、ペオニジン、トリセチニジン、アピゲニニジン、ペラルゴニジン、プロアントシアニンを含む群から選択され、
−該カテキンは、エピガロカテキン−3−ガレイト(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン−3−ガレイト(ECG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン、カテキンの中から選択されるポリフェノール化合物を含む群から選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
植物性基質が、天然樹脂、化石樹脂、種子、樹皮、葉、藻類、エッセンシャルオイル、根、野菜、果物を含む群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該抽出ガスが、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素、窒素、酸素、またはこれらの混合物を含む群から選択される請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該抽出ガスは、抽出溶媒100重量部に対して、0.1〜10体積%となるように、液体の該抽出溶媒に添加される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該抽出ガスが、アルゴン、窒素、二酸化炭素、アルゴンと窒素の混合物、アルゴンと二酸化炭素の混合物、窒素と二酸化炭素の混合物、アルゴンと窒素と二酸化炭素の混合物を含む群から選択される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
該基質を抽出液と接するように配置して得られる活性分子の抽出が、抽出温度20〜90℃、圧力1〜5気圧、抽出時間1〜8時間で実施される、請求項1〜のいずれかに記載の抽出方法。
【請求項9】
該抽出液が、
−アルゴン、窒素、二酸化炭素、アルゴンと窒素の混合物、アルゴンと二酸化炭素の混合物、窒素と二酸化炭素の混合物を含む群から選択される、抽出ガスを含み
−酢酸の水溶液である、該抽出溶媒を含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
アルゴンと窒素の混合物、アルゴンと二酸化炭素の混合物は1:3〜3:1の割合で該抽出ガス中に存在する、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物性基質、天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから活性分子を抽出する方法に関する。特に、本願発明は、テルペン、フラボノイド、アントシアンおよびカテキンを含む群から選択される活性分子を抽出することに関する。さらに、本願発明は、上述の方法で得られた、好ましくは液体の、抽出物に関する。加えて、本願発明は、テルペン、フラボノイド、アントシアンおよびカテキンを含む群から選択される活性分子を含む上述の抽出物の、食品組成物、サプリメント製品、または医薬組成物の製造への利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばミルラや香料、プロポリスのような天然樹脂には、テルペンおよび/またはフラボノイドのような活性分子が多量に含まれていることが知られている。活性分子としては、例えば、モノテルペン(イソプレン構成単位2個と炭素原子10個)、セスキテルペン(イソプレン構成単位3個と炭素原子15個)、またはトリテルペン(イソプレン構成単位6個と炭素原子30個)が含まれ得る。また、例えば、クエルセチンやエピカテキンが含まれ得る。
【0003】
上述の天然樹脂の中には、上述の活性分子とともに、活性分子と結合している糖類、澱粉、粘性の樹脂、その他の高分子化合物が存在するが、それらが活性分子の抽出を妨げている。
【0004】
天然樹脂に含まれる活性分子を抽出する方法として、水蒸気蒸留による抽出方法が知られている。
【0005】
しかしながら、水蒸気蒸留による抽出方法は、多くの制限や欠点があるため利用しにくい。制限や欠点とは、例えば、抽出される分子の数が制限されるために、抽出物の収率が低くなるというものである。
【0006】
COやNのような気体を用いて、超臨界的な環境下(超臨界ガス)で抽出する方法も知られている。例えば、二酸化炭素は、温度31℃、圧力73気圧で超臨界となる。
【0007】
水蒸気蒸留による抽出方法と比較すると、上述の超臨界CO、Nを用いて抽出する方法は、量的な観点からすると、高い収率によって多量の活性分子を抽出することができる。
【0008】
しかしながら、COやNのような超臨界ガスを用いた前述の抽出方法は、制限や欠点があるため利用しにくい。
【0009】
欠点の一つは、装置の設置や維持に費用がかかることである。
【0010】
他の欠点として、抽出の実施条件下で、分子間の交差反応が起こる結果、望まない反応生成物(例えば、分子の会合物および/または副生成物)が生ずることである。こうした理由もあって、水蒸気蒸留による抽出方法が、今日でも最も広く使われる抽出方法となっている。
【0011】
しかしながら、水蒸気蒸留による抽出方法における大きな制限は、抽出効率、抽出する分子の数、抽出割合、収率を増加するために、抽出する活性分子の化学的、物理的性質を損ない、分子が機能的な活性を失って、結果的に、人体に機能する活性分子としての商業的な利益を失うような、温度、溶剤の混合比、圧力を避けた特定の実施条件で実施しなければならないという事実である。
【0012】
例えば、100℃を超える抽出温度で実施する抽出方法では、抽出される感熱性の分子は損傷(変性)する。
【0013】
例えば、フラボノイドは、温度範囲52℃から85℃においては、ほぼ全てが分解される。
【0014】
欧州特許1641903B1は、回転磁場の存在下で、極性溶媒を用いて天然樹脂からテルペンやテルペノイドを抽出する方法に関する。
【0015】
しかしながら、上述の回転磁場による抽出方法には、制限や欠点があるために利用しにくい。
【0016】
制限の1つとして、装置の設置や維持に費用がかかることが挙げられる。特に、回転磁場の操作には、適切な磁場間隔を確保するために、高度に精巧な磁場を操作できる装置が必要である。他の制限としては、1000〜3500ガウスの磁場を操作しなければならないことである。さらに、抽出容量は、回転磁場を作り出す磁場発生器の大きさによる。それゆえ、1000〜3500ガウスの磁場を発生させるには、大きな磁石を用いた大きな装置が必要で、そのような大きな磁石は適切な方法で遮蔽することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP1641903B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから活性分子を抽出する方法であって、従来法における制限や欠点がない方法は、なお必要とされている。
【0019】
特に、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから活性分子を抽出する方法として、簡単で、経済的であり、管理が容易で、実用的な方法であると同時に、抽出効率の高さと、抽出量の多さを保証できるような方法が必要とされている。なお、抽出効率は、抽出された活性分子の量から把握され、抽出量は、抽出された分子の重さから把握される
【0020】
特に、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから活性分子を抽出する方法として、多くの分子を大量に抽出でき、実施条件においては、抽出された活性分子の化学的ないし物理的構造が損なわれない方法が必要とされている。特に述べるとすれば、結果として人体に機能する活性分子の商業的な価値を失うことになるような、抽出した分子の化学的ないし物理的な劣化/分解や、本来の化学的構造が変化/損失を防ぐことができるような抽出方法が必要とされていると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本願発明は、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから分子を抽出する方法に関するものであり、その特徴は添付した請求の範囲に示すとおりである。
【0022】
また、本願発明は、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルから抽出された活性分子を含む抽出物に関するものであり、その特徴は添付した請求の範囲に示すとおりである。
【0023】
そして、本願発明は、食品組成物、サプリメント製品、医薬組成物の製造に用いる上述の活性分子の抽出物の利用に関するものであり、その特徴は添付した請求の範囲に示すとおりである。
【0024】
さらには、本願発明は、上述の抽出方法を実施するための装置に関するものであり、その特徴は添付した請求の範囲に示すとおりである。
【0025】
本願発明を実施するための好ましい形態は、後に述べるとおりであるが、これは本願発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0026】
表1は、ミルラを用いた実施例1の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0027】
表2は、香料を用いた実施例2の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0028】
表3は、ナツシロギク(Tanacetum Parthenium)を用いた実施例3の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0029】
表4は、クランベリーを用いた実施例4の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0030】
表5は、プロポリスを用いた実施例5の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0031】
表6は、クランベリーを用いた実施例6の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0032】
表7は、ナツシロギク(Tanacetum Parthenium)を用いた実施例7の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0033】
表8は、香料を用いた実施例8の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0034】
表9は、ミルラを用いた実施例9の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【0035】
表10は、プロポリスを用いた実施例10の場合の、本願発明の抽出方法を実施して得られた抽出物について行った定性的、定量的な分析結果を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本願発明の抽出方法を実施するための装置に関する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願出願人は、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイルに本来的に存在する活性分子を抽出する新しい方法であると考えている。この方法は、少なくとも、上述の植物性基質を抽出液と接するように配置する工程を含み、該抽出液は、気体の抽出ガス(後に述べる)を、極性溶媒および/または無極性溶媒から選択した液状の溶媒(後に述べる)に添加することで得られる。
【0038】
本願発明の抽出方法は、抽出液を使用することを想定している。該抽出液は、抽出溶媒(A)と抽出ガス(Y)を含むか、またはそれらのみからなる。
【0039】
該抽出ガス(Y)は、温度23℃、圧力1気圧において気体であるすべての物質に相当する。超臨界状態(いわゆる超臨界ガス)となったガスは、本願発明の中では考慮されていない。例えば、超臨界二酸化炭素は、本願発明の中では、有効に適用されることはない。
【0040】
上述の抽出ガス(Y)は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素、窒素、酸素を含むか、またはこれらのみからなる群またはこれらの混合物から選択される。
【0041】
上述の抽出ガスは、アルゴン、窒素、二酸化炭素、またはこれらの混合物を含む群から選択されるのがよい。
【0042】
使用される抽出溶媒100体積部に対して、抽出ガス(Y)は、0.1〜10体積%とする。
【0043】
好ましくは、使用される抽出溶媒100体積部に対して、抽出ガスは0.5〜5体積%、さらに好ましくは1〜2.5体積%とするのがよい。
【0044】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、二酸化炭素COを含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスは二酸化炭素COのみからなる(Y1)。二酸化炭素を含む、または二酸化炭素のみからなる抽出ガスは、抽出液中に、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0045】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、アルゴンを含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスはアルゴンのみからなる(Y2)。アルゴンを含む、またはアルゴンのみからなる抽出ガスは、抽出液中に、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0046】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、窒素を含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスは窒素のみからなる(Y3)。窒素を含む、または窒素のみからなる抽出ガスは、抽出液中に、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0047】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、アルゴンと二酸化炭素を含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスはアルゴンと二酸化炭素のみからなる(Y4)。アルゴンと二酸化炭素の混合物を含む、または該混合物のみからなる抽出ガスは、抽出液中に、1:3〜3:1、1:1の割合、または、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0048】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、アルゴンと窒素を含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスはアルゴンと窒素のみからなる(Y5)。アルゴンと窒素の混合物を含む、または該混合物のみからなる抽出ガスは、抽出液中に、1:3〜3:1、1:1の割合、または、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0049】
抽出ガスは、温度23℃、圧力1気圧で気体である、窒素、アルゴンおよび二酸化炭素を含むのがよい。好ましい実施形態において、抽出ガスは窒素、アルゴンおよび二酸化炭素のみからなる(Y6)。窒素、アルゴンおよび二酸化炭素の混合物を含む、または該混合物のみからなる抽出ガスは、抽出液中に、1:3:1〜1:1:1(N:Ar:CO)の割合、または、使用される抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜5体積%、好ましくは2.5〜3体積%含まれる。
【0050】
抽出溶媒(A)は、液状であり、下記に説明するように、化合物を1つまたはそれ以上含む。
【0051】
液体の抽出溶媒は、極性溶媒または極性溶媒の混合物、無極性溶媒または無極性溶媒の混合物、もしくは極性溶媒と無極性溶媒の混合物を含むか、またはそれらのみからなる(グループA1)。上述の抽出溶媒は、脂肪族および/または芳香族の性質を有し得る(グループA1)。
【0052】
本願発明において、溶媒は、誘電率の値に基づいて、極性溶媒と無極性溶媒の2つに分類することができる。水の誘電率は、20℃まではおよそ80(極性溶媒)であるが、誘電率の値が15より小さい溶媒は、一般的に無極性に分類される。極性溶媒は、プロトン性の極性溶媒と非プロトン性の極性溶媒に分類することができる。
【0053】
好ましい実施形態において、抽出溶媒はカルボキシル基および/またはエステル基を少なくとも1つ有する化合物を、少なくとも1つ含む(グループB1)。上述の化合物は、少なくとも1つのカルボキシル基を含む(そしてエステル基を含まない)場合、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の化合物を少なくとも1つ含むか、またはそれらのみからなる群から選択される。カルボキシル基は、保護された形態、すなわちエステルの形態でも存在し得る(グループB2)。
【0054】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、式(I)[R−COOH]で示される脂肪酸モノカルボン酸化合物を少なくとも1つ含む。ここで、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは、炭素数1〜5であるか、R1−CH(OH)−基(ここで、R1はRと同じ意味)(グループB3)。使用する酸は、蟻酸、プロピオン酸またはこれらの混合物とするのが好ましい。
【0055】
本願発明において、抽出溶媒(A)は、酢酸を含むか、または酢酸のみからなる。酢酸は、6モル濃度の酢酸、12モル濃度の酢酸、または95%好ましくは98%の純度の氷酢酸とすることができる。抽出溶媒は、酢酸溶液と水を含むか、またはそれらのみからなる。好ましくは、酸が酢酸の場合には、12%水溶液として用いる。
【0056】
抽出液は、酢酸または酢酸と水との水溶液を含むか、またはこれらのみからなる抽出溶媒(A)と、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6を含む、またはこれらのみからなる群から選択される抽出ガスを含むか、またはこれらのみからなるのがよい。
【0057】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、式(II)[HOOC−(C2n+2)−COOH]で示される脂肪酸ジカルボン酸を少なくとも1つ有する。ここで、nは、0でもよく、1から10としてもよいが、このましくはn=0である(グループB4)。抽出溶媒は、シュウ酸またはマロン酸、またはこれらの混合物を含むのがよい。
【0058】
好ましい実施例として、抽出溶媒は、芳香族の化学構造を有しており、カルボキシル基を少なくとも1つ含む(グループB5)。
【0059】
抽出溶媒は、安息香酸(Ph−COOH)、またオルト、メタ、パラの位置に、炭素数1〜4の短鎖アルキルの脂肪酸アルキルRを置換した、式(III)[R−Ph−COOH]で表される安息香酸を含むのがよい。
【0060】
抽出溶媒は、オルトの位置にメチル基を置換した安息香酸を含むのがよい。
【0061】
好ましい実施形態としては、抽出溶媒は、トリカルボン酸化合物を少なくとも1つ含む(グループB6)。抽出溶媒は、クエン酸を含むのがよい。
【0062】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、テトラカルボン酸化合物を少なくとも1つ含む(B7グループ)。溶媒は、ピロメリト酸を含むのがよい(CAS 89−05−4)。
【0063】
前述のとおり、抽出溶媒は、カルボキシル基および/またはエステル基を少なくとも1つ有する化合物を、少なくとも1つ含み得る(グループB1)。
【0064】
上記の溶媒が、少なくともエステル基を有する(カルボキシル基を含まない)化合物を少なくとも1つ含む場合、上記の化合物は式(IV)R−C(O)O−R1で表されるエステルを含む群から選択される。ここで、Rは、R1と同一であってもよく、異なっていてもよく、RとR1は、炭素数1〜5の短鎖アルキル基となり得る。好ましくは、Rはメチル基で、R1はメチル基、エチル基またはプロピル基である(グループB8)。
【0065】
好ましい実施形態として、抽出溶媒(A)は、少なくともカルボキシル基と少なくともアルコール基を有する化合物を少なくとも1つ含む場合には、式(VII)[R−CH(OH)−COOH]で表される。ここで、Rは、炭素数1〜4の短鎖脂肪族の中から選択される(グループB9)。Rはメチル基とするのがよい。
【0066】
上記に明示した化合物(グループB2〜B9)は、すべて化合物B1に属する。
【0067】
好ましい実施形態として、抽出溶媒(A)は、少なくともアルコール基を有する化合物を少なくとも1つ含む(グループC1)。
【0068】
上記の少なくともアルコール基を有する化合物は、一級、二級または三級脂肪族アルコールを含むか、またはそれらのみからなる(グループC2)。
【0069】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、式(V)R−OHで示される一級脂肪族アルコールを少なくとも1つ有する。ここで、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜5である(グループC3)。アルコールは、エタノール、ヘキサノール、オクタノールから選択するのがよい。
【0070】
本願発明における1つの実施形態として、抽出溶媒は、1:2〜2:1の比の酢酸とエチルアルコールを含むか、またはこれらのみからなる。好ましくは、酢酸とエチルアルコールの水溶液とする。
【0071】
抽出液は、酢酸とエチルアルコール、または酢酸とエチルアルコールの水溶液、およびY1,Y2、Y3、Y4、Y5、Y6を含むか、これらのみからなる群から選択される抽出ガスを含むか、またはこれらのみからなる。
【0072】
好ましい実施形態において、抽出溶媒は、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールのいずれかから選択される二級脂肪族アルコールを少なくとも含む(グループC4)。
【0073】
好ましい実施形態において、抽出溶媒は、三級脂肪族アルコールを少なくとも含む。アルコールは、t−ブチルアルコールがよい(グループC5)。
【0074】
アルコール基を少なくとも有する化合物(C1)は、式(VI)[H−(O−CH−CH−)OH]を有する化合物から選択され得る。ここで、nは1〜25、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜15となり得る(グループC6)。
【0075】
上記した化合物(グループC2〜C6)は、すべて化合物C1に属する。
【0076】
以下に、(1)無極性溶媒、(2)非プロトン性の極性溶媒、(3)プロトン性の極性溶媒の例とその誘電率を示す。(1)ペンタン1.84、ヘキサン1.88、ジエチルエーテル4.3、(2)エチルアセテート6.02、(3)蟻酸58、n−ブタノール18、イソプロパノール18、n−プロパノール20、エタノール30、酢酸6.2、水80。
【0077】
好ましい実施形態としては、抽出溶媒(A)は、水と混合した、グループA1に属す化合物を少なくとも1つ含むか、またはそれのみからなる。
【0078】
他の好ましい実施形態としては、抽出溶媒(A)は、水と混合した、グループB1に属す化合物を少なくとも1つ含むか、またはそれのみからなる。
【0079】
他の好ましい実施形態としては、抽出溶媒(A)は、水と混合した、グループC1に属す化合物を少なくとも1つ含むか、またはそれのみからなる。
【0080】
他の好ましい実施形態としては、抽出溶媒(A)は、水と混合した、グループB1に属す化合物のうち少なくとも1つと、グループC1に属す化合物のうち少なくとも1つを含むか、またはそれらのみからなる。
【0081】
本願発明の抽出方法は、抽出液を利用するものである。抽出液は、上記したように、抽出溶媒(A)と抽出ガス(B)を含むか、それらのみからなる。
【0082】
抽出溶媒は、脂肪族および/または芳香族の性質を有する、極性および/または無極性溶媒(グループA1)を、溶媒の全重量に対して1〜60重量%、そして水を、溶媒の全重量に対して99〜40重量%含み得る。
【0083】
抽出溶媒は、グループB1に属する化合物を少なくとも1つを、溶媒の全重量に対して1〜60重量%、そして水を、溶媒の全重量に対して99〜40重量%含み得る。
【0084】
抽出溶媒は、グループC1に属する化合物を少なくとも1つを、溶媒の全重量に対して1〜20重量%、そして水を、溶媒の全重量に対して99〜80重量%含み得る。
【0085】
抽出溶媒は、グループB1に属する化合物の少なくとも1つを溶媒の全重量に対して1〜60重量%と、グループC1に属する化合物の少なくとも1つを溶媒の全重量に対して1〜20重量%、そして水を、溶媒の全重量に対して98〜20重量%含み得る。
【0086】
抽出溶媒のpHは、1〜7、好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜4であり、これは、使用する溶媒の種類によって異なる。
【0087】
抽出溶媒と抽出ガスを含む抽出液のpHの値は、1〜7、好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜4であり、これは使用する溶媒の種類と抽出ガスの添加量によって異なる。
【0088】
抽出溶媒は、溶媒の全重量に対して、1〜80重量%の酢酸と、99〜20重量%の水を含むか、または、これらのみからなる。抽出ガスは、二酸化炭素、アルゴン、窒素、二酸化炭素とアルゴン、アルゴンと窒素、二酸化炭素とアルゴンと窒素であって、使用する抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜10体積%または0.5〜5体積%の濃度で含まれる。好ましくは、酢酸は、20重量%、40重量%または80重量%含まれるのがよく、二酸化炭素、アルゴン、窒素、二酸化炭素とアルゴン、アルゴンと窒素、二酸化炭素とアルゴンと窒素は2.5体積%または3体積%含まれるのがよい。
【0089】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、溶媒の全重量に対して、1〜20重量%のエチルアルコールと、99〜80重量%の水を含むか、またはこれらのみからなる。抽出ガスは、二酸化炭素であり、使用する抽出溶媒を100体積部に対して、0.5〜5体積%含まれる。好ましくは、10重量%のエチルアルコールと、3体積%の二酸化炭素を含むのがよい。
【0090】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、溶媒の全重量に対して1〜60重量%の酢酸、溶媒の全重量に対して1〜20重量%のエチルアルコール、溶媒の全重量に対して98〜20重量%の水を含むか、またはこれらのみからなる。
【0091】
抽出ガスは、二酸化炭素、アルゴン、窒素、二酸化炭素とアルゴン、アルゴンと窒素、二酸化炭素とアルゴンと窒素であり、使用する抽出溶媒100体積部に対して、0.1〜10体積%または0.5〜5体積%含む。好ましくは、酢酸は、20重量%、40重量%または80重量%含まれるのがよく、エチルアルコールは10重量%含まれるのがよく、二酸化炭素またはアルゴンを3体積%、または二酸化炭素とアルゴンとをともに2.5%ずつ含むのがよい。
【0092】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、溶媒の全重量に対して1〜60重量%の酢酸、溶媒の全重量に対して1〜10重量%のエチルアルコール、溶媒の全重量に対して1〜10重量%の酢酸エチル、溶媒の全重量に対して97〜20重量%の水を含むか、またはこれらのみからなる。抽出ガスは、二酸化炭素であって、使用する抽出溶媒100体積部に対して、0.5〜5体積%含まれる。エチルアルコールが10重量%、二酸化炭素が3体積%含まれるのがよい。
【0093】
好ましい実施形態として、抽出溶媒は、溶媒の全重量に対して1〜10重量%のエチルアルコール、溶媒の全重量に対して1〜10重量%の酢酸エチル、溶媒の全重量に対して98〜80重量%の水を含むか、またはこれらのみからなる。抽出ガスは、二酸化炭素であって、使用する抽出溶媒100体積部に対して、0.5〜5体積%含まれる。好ましくは、エチルアルコールが10重量%、二酸化炭素が3体積%含まれるのがよい。
【0094】
酢酸は、好ましくは12%酢酸溶液がよい。エチルアルコールまたはエタノールは、好ましくは96体積%の純エタノールがよく、これは、最大でおよそ0.058mg/lの不純物が含まれることが知られている。水は、2回蒸留する。
【0095】
本願発明の抽出方法は、抽出温度20〜90℃で実施される。好ましくは、抽出温度は25〜65℃である。さらに好ましくは、抽出温度は40〜60℃である。
【0096】
本願発明の抽出方法は、抽出時間1〜8時間で実施される。好ましくは、抽出時間1.5〜6時間である。さらに好ましくは、抽出時間3〜5時間である。
【0097】
好ましい実施形態として、本願発明の抽出方法が実施される温度は25〜65℃、好ましくは30〜50℃であり、抽出時間は2〜6時間、好ましくは4〜5時間である。
【0098】
本願発明の抽出方法は、平衡状態において、1〜5気圧で実施され、好ましくは1.5〜3気圧がよい。
【0099】
驚くべきことに、本願発明の抽出方法により、以下に列挙する植物性基質から、実施条件によっては、大量の活性分子を高濃度で抽出することができる。
【0100】
植物性基質(抽出基質)は、特に制限はなく、以下の実施例で説明するような天然樹脂、化石樹脂、種子、樹皮、葉、藻類、エッセンシャルオイル、野菜、果物を含むか、またはこれらのみからなる群から選択される。
【0101】
本願発明においては、天然樹脂とは、植物性原料からなる天然樹脂、植物性樹脂、または有機樹脂を意味する。植物性樹脂は、植物由来の混合物であって、脂溶性であり、揮発性および不揮発性のテルペン化合物および/またはフェノール類化合物を含む。
【0102】
好ましくは、本願発明の方法は、以下に列挙する基質を用いて実施するのが有効であり、基質は、例えば、樹皮、葉、種子、根の形態でも、樹脂でもよい。ミルラ、芳香(さまざまな灌木に秘められた含油樹脂に属するものをいう、例えばボスウェリアサクラ(Boswellia sacra))、ダクリオデス属(例えば、ダクリオデスベレメンシス(Dacryodes belemensis)、ブエトネリ(buettneri)、エデュリス(edulis)、エクセルサ(excelsa)、オシデンタリス(occidentalis)、オリビフェラ(olivifera)、ペルビアナ(peruviana)、プベセンス(pubescens))、ダマール(フタバガキ(Dipterocarpaceae)科の植物から得られる、主にサラノキ(Shorea)属、バラノカルプス(Balanocarpus)属またはホペア(Hopea)属の植物)、ベンゾイン(アンソクコウノキ(Styrax benzoin Dryander)またはシャムベンゾイン(Styrax benzoides Craib)、エゴノキ(Styracaceae)科。多心皮の芳香性の木または灌木)、ガラナ(ポーリニアクパナ(Paullinia cupana)、グリフォニア(グリフォニアシンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)、グリフォニアサリシフォリア(Griffonia salicifolia)、マンダリン、カンゾウ、ミント(アクイラリアマラクセンシス(Aquilaria malaccensis))、センナ(カッシアアングスチフォリア(Cassia angustifolia))、ジンジャー、ルバーブ、朝鮮人参、バクシニウム属(クランベリー、ブルーベリー、コケモモ)、ブラックベリー、キク(ナツシロギク(Tanacetum parthenium))、乳香(ボスウェリアカルテリ(Boswellia carterii))、ヤナギ(ヤナギ(Salix)属、ヤナギ(Salicaceae)科の植物)、こはく、プロポリス(ヨーロッパ産プロポリス、ブラジル産プロポリス、インド産プロポリス)、チャ、ヨモギ属(キク(Asteraceae)科に属する植物の属)、シナモン(シナモムンゼイラニクン(Cinnamomum zeylanicum)、シナモムンアロマチクン(Cinnamomum aromaticum))、アカシア(ネムノキ(Mimosaceae)科の植物の属)、カノコソウ(バレリアナオフィシナリス(Valeriana officinalis))。
【0103】
本願発明の抽出方法によって、テルペン、フラボノイド、アントシアン、カテキンを含む群から選択した、上述の植物性基質中に存在する分子を抽出することができる。本願発明において、テルペン(またはイソプレノイド)とは、複数のイソプレン構造単位からなる分子を意味し、直鎖状、環状、またはその両方となり得る。一般に、さまざまなテルペノイドを、テルペンという語で表す。
【0104】
(C)からなるイソプレン構造単位の数に基づいて、以下のように区別できる。ヘミテルペン(単位数1、炭素数5)、モノテルペン(単位数2、炭素数10)、セスキテルペン(単位数3、炭素数15)、ジテルペン(単位数4、炭素数20)、セステルペン(単位数5、炭素数25)、トリテルペン(単位数6、炭素数30)、テトラテルペン(単位数8、炭素数40)。
【0105】
本願発明において、フラボノイド(またはバイオフラボノイド)は、ポリフェノール化合物を意味する。特に、下位に分類されるものとして、2−フェニル−クロメン−4−(2−フェニル−1,4−ベンゾピロン)から誘導されるフラボン、3−フェニル−クロメン−4−1(3−フェニル−1,4−ベンゾピロン)から誘導されるイソフラボン、4−フェニルクマリン(4−フェニル−1,2−ベンゾピロン)から誘導されるネオフラボンがある。
【0106】
本願発明において、アントシアン(またはアントシアニン)は、フラボノイド科に属する水溶性の植物性化合物の区分を意味する。アントシアニンは、対応するアグリコン(アントシアニジン)に由来し、または、グリコシド基の付加において異なる。自然界には、およそ20のアグリコンが存在するが、誘導体の数はその15〜20倍多い程度である。最初のアグリコンは、自然界においてもっとも多く含まれるものとして、例えば、デルフェニジン、ペツニジン、シアニジン、アントシアニン、マルビジン、ペオニジン、トリセチニジン、アピゲニニジン、ペラルゴニジン、プロアントシアニンであり、これらの名前はそれが多く含まれる植物に由来する。
【0107】
本願発明において、カテキンは、広くは、フラバン−3−オール(カテキンとそのエピカテキン異性体)を含むポリフェノール化合物に属し、以下から選択される:エピガロカテキン−3−ガレイト(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン−3−ガレイト(ECG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン、カテキン。
【0108】
異なるエナンチオマーの混合物としては、(+/-)カテキンまたはDL−カテキン、(+/-)−エピカテキンまたはDL−エピカテキンである。エピガロカテキンとして、例えばエピガロカテキンガレイト(EGCG)も含まれる。
【0109】
本願発明は、植物性基質および/または天然樹脂および/またはエッセンシャルオイル(原材料)であって、粉状または粒状で粒子径が10〜200ミクロン、好ましくは20〜100ミクロン、さらに好ましくは40〜80ミクロンのものを、入口手段と出口手段、回転羽根などで撹拌する手段、加熱マントルなどで加熱する手段を備えたタンクのような容器に入れることを想定する。植物性基質および/または天然樹脂(原材料)が、抽出に適さない大きさや物理的な形状、例えば乾燥樹脂であるような場合には、植物性基質および/または天然樹脂は、機械的な粉砕や研削をして、抽出の目的に適した粒子径を有する粉状または粒状とされる。
【0110】
そして、上記の抽出用の容器にある天然樹脂には、前述の通り抽出溶媒と抽出ガスからなる抽出液と接するように配置する工程が行われる。活性分子の抽出は、温度、時間、圧力、pHを、前述の通りに調整して行う。
【0111】
抽出溶媒と、植物性基質および/または天然樹脂との割合は、重量で1:1〜30:1、好ましくは5:1〜25:1、さらに好ましくは10:1〜15:1である。
【0112】
好ましくは、抽出溶媒は、植物性基質および/または天然樹脂に加えられ、続いて、抽出ガスが抽出溶媒に加えられる。例えば、ブローイングやバブリングによって抽出ガスを抽出溶媒に加えて、抽出液を得る。そして、抽出液が植物性基質および/または天然樹脂内を循環し始めると、前述の抽出時間で、抽出が起こる。
【0113】
抽出工程の間、抽出液は、ポンプ手段を利用して、例えば多層フィルターパックなどのろ過手段によりろ過して、装置の中で循環し続ける。
【0114】
そして、抽出ガス、抽出溶媒、植物性基質および/または天然樹脂から抽出された活性分子を含む抽出液は、回収タンクに集められる。この方法は、連続的にでも断続的にでも実施することができる。得られる抽出物は、液状か、または高粘度で高濃度の液状となり得る。
【0115】
本願発明の要旨は、前述の抽出方法で得られた液状の抽出物に関する。
【0116】
抽出物は、例えば液状であって、前述の活性分子を含むものは、使用した抽出液の種類に応じたpH値を有している。一般的に、抽出物のpHは1〜7であるが、例えば1.5〜5.5であることもある。
【0117】
抽出液が、1以上の酸性基質を含む抽出溶媒からなる場合には、上述したように、液状抽出物のpHは7より低くなる。このような場合、抽出物は、炭酸マグネシウムと水酸化ナトリウムから選択したアルカリ性基質を用いて、中性になるように中和する。必要に応じて中和すると、液状抽出物のpHをおよそ7にすることができる。
【0118】
本願発明の液状抽出物からは、溶媒を蒸発させる工程、もしくは乾燥または凍結乾燥工程により、固体の抽出物(または高濃度/高粘度抽出物)、好ましくは粉状、粒状、凍結乾燥した抽出物を得ることができる。固体の抽出物は、食品組成物、サプリメント製品、自然志向の成分、または内服または外用の、好ましくは局部的なまたは経口用の投薬のための医薬製品の製造に利用できる。
【実施例】
【0119】
1)タブレット状の食品サプリメント
タブレット1つあたりの内容
−Noxamicina50mg(プロポリスフラボノイド)プロポリスの水性アルコール溶液、2.58%のバイオフラボノイドで滴定(タブレットあたり1.3mgと等しい)、本願発明による抽出手段で得られたもの。
−反塊状剤:二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシ
ウム。
−香料:ストロベリー。
【0120】
2)タブレット状の食品サプリメント
タブレット1つあたりの内容
−Noxamicina50mg(プロポリスフラボノイド)、本願発明による抽出手段で得られたもの。
−クランベリー抽出物90mg、80%プロアントシアニジンで滴定して、72mgと等しい、本願発明による抽出手段で得られたもの。
−反塊状剤:二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム。
−香料:ストロベリー。
【0121】
3)タブレット状の食品サプリメント
タブレット1つあたりの内容
−グリフォニア25mg(グリフォニアシンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia))半乾燥の抽出物(99%5−ヒドロキシトリプトファンで滴定)、本願発明による抽出手段で得られたもの。
−メラトニン5mg。
−反塊状剤:二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム。
【0122】
4)ドロップ状の食品サプリメント
−水と果糖。
−濃縮剤:植物性グリセリン。
−カノコソウ(バレリアナオフィシナリス(Valeriana officinalis))の根、乾燥抽出物(0.8%バレレニック(valerenic)酸、マルトデキストリン、で滴定、)、本願発明による抽出手段で得られたもの。
−メラトニン5mg(各40滴)。
−クエン酸。
−ソルビン酸カリウム。
【0123】
本願発明の要旨は、本願発明の抽出方法を実施する装置にも関する(図1)。
【0124】
図1に、一定量の抽出溶媒を入れるタンク01を含む、装置1を示す。溶媒を、撹拌手段02を用いて、撹拌し続ける。抽出溶媒を、ポンプ03と連結手段04を用いて、タンク01からタンク05に流す。タンク05には、加熱手段06と撹拌手段09が備わっている。
【0125】
抽出される基質は、タンク11に導入され、目詰まりを避けるために撹拌手段12を用いて撹拌状態が維持される。
【0126】
容器05は、加熱手段06で加熱される。ポンプ10、20が始動すると、抽出溶媒は、ポンプ10を含む連結手段を通って、タンク05からタンク11へと循環し始める。タンク11に入った抽出溶媒は、そこに入っている抽出基質と接触して、撹拌手段12を用いて撹拌状態が維持される懸濁液を形成する。このとき、タンク07に入っている抽出ガスが、パイプ08を通って流入する。抽出ガスは二酸化炭素CO(圧力1Atm、温度23℃)であり、前述した量を導入する。抽出ガスは、気体用の流量フィラー10を用いて、タンク05に入っている抽出溶媒に導入され、抽出液ができあがる。すべての抽出ガスが導入されると、流量フィラー10は遮断され、該装置は温度、圧力において平衡状態となる。実際には、パイプの中にある空気が追い出され(ガス抜きされ)、抽出温度が均一で一定となるのを待つ。さらに、抽出が行われる圧力に調整する。該装置は、密封される。このとき、抽出工程が始まる。タンク15は、濾過手段14を含む連結手段13を用いて、容器11に連結される。さらに、タンク15は、ポンプ20と濾過手段21を含む連結手段22を用いて、タンク05に連結される。タンク15には、撹拌手段16が備わっている。最後に、タンク15は、ポンプ17を含む連結手段18を用いて、回収タンク19に連結される。抽出液は、フィルター14、21で連続的に濾過される。タンク15に入っている液体は、ポンプ17によって回収タンク19に移される。抽出物を濾過し、低圧で蒸発乾燥させると、濃縮ゲルが得られる。濾過ステーション21は、孔径200〜400ミクロン、好ましくは250〜300ミクロンの金属製のメッシュフィルター(REP)と、ポリプロピレンまたはポリエチレンの5ミクロンの濾過容量の繊維質フィルター2〜4個で構成される。例えば、フィルター14は、1つかそれ以上の金属製フィルターで構成される。本願発明の抽出方法における特徴と利点は、以下の述べる詳細により、さらに明らかになる。実施例の説明における詳細は、本願発明の範囲を制限するものではない。番号は、抽出装置の図面にある番号を示す(図1)。
【0127】
例1−ミルラ
本願発明の抽出方法は、ミルラに含まれる活性分子を抽出するのに用いられる。抽出装置には、以下で構成される1500mlの抽出溶媒を入れる:酢酸(12%水溶液)58重量%、蒸留水42重量%。溶媒:ミルラの割合は、重量で15:1。100gのミルラは細かい粉状にした(粒子の大きさ100〜120ミクロン)。二酸化炭素は30ml用いた(抽出溶媒の全量に対して、2体積%)。前述の量の抽出溶媒(1500ml)は、タンク01に導入され、撹拌手段02を用いて15分間、50rpmで撹拌される。抽出溶媒は、ポンプ03と連結手段04を用いて、タンク01からタンク05に流される。タンク05には、加熱手段06と撹拌手段09が備わっている。100gのミルラを秤量して、粉状にし(粒子の大きさ40〜100ミクロン)、タンク11に導入し、目詰まりしないように、撹拌手段12を用いて撹拌される。容器05は、加熱手段06によって45℃(+/−0.5℃)にまで加熱される。ポンプ10と20が始動し、抽出溶媒は、ポンプ10を含む連結手段を通って、タンク05からタンク11に循環する。タンク11の中の抽出溶媒は、そこに入っている粉状のミルラと接触して、懸濁液を形成し、それは撹拌手段12によって撹拌され続ける。ここで、タンク07に入っている抽出ガスがパイプ08を通って流入する。抽出ガスは二酸化炭素CO(圧力1Atm、温度23℃)であり、抽出溶媒の体積に対して、2体積%の量、つまり30mlが導入される。抽出ガスは、気体用の流量フィラー10を用いて、タンク05に入っている抽出溶媒に導入されて、抽出液となる。抽出ガスがすべて導入されると、流量フィラー10は遮断され、該装置は温度、圧力において平衡状態となる。実際には、パイプ中にある空気が追い出され(ガス抜きされ)、抽出温度が一定となるのを待つ。さらに、抽出が行われる圧力に調整する。該装置は、密封状態で作動する。ここで、抽出工程が始まる。抽出工程は、45℃で5時間続く。タンク15は、フィルター手段14を含む連結手段13を用いて、容器11に連結される。さらに、タンク15は、ポンプ20とフィルター手段21を含む連結手段22を用いて、タンク05に連結される。タンク15は、撹拌手段16を備える。最後に、タンク15は、ポンプ17を含む連結手段18を用いて、回収タンク19に連結される。抽出液は、フィルター14と21を通って連続的に濾過される。5時間が経過すると、タンク15の液はポンプ17によって回収タンク19に運ばれる。抽出物を濾過し、低圧で蒸発乾燥させると、濃縮ゲルが得られる。抽出液(液体抽出物)または濃縮ゲルは、GC/MSガスクロマトグラフィ(mass gas chromatography mass)による定性分析、ヒューレットパッカード製HP6890と、ヒューレットパッカード製HPLC Agilent 1100を用いてGC/FIDによる定量分析を行った(表1)。表1からは、51種の活性分子がミルラから抽出されたことがわかる。回収された抽出物は、最初に100gあったミルラの抽出基質の全重量に対して、105,000ppmであり、これは、100gのミルラに対して10.5%に相当する。
【0128】
例2−香料
本願発明の抽出方法は、香料に含まれる活性分子の抽出に用いられる。例2は、前述の例1と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。抽出装置には、以下で構成される1500mlの抽出溶媒を入れる:酢酸(12%水溶液)58重量%;99%エタノール20重量%、蒸留水22重量%。溶媒:香料の割合は、重量で15:1。100gの香料は細かい粉状にした(粒子の大きさ100〜120ミクロン)。二酸化炭素は、30ml(抽出溶媒に全量に対して、2体積%)を用いた。表2からは、香料から46種の活性分子が抽出されたことがわかる。回収された抽出物は、最初に100gあった香料の抽出基質の全重量に対して、125,000ppmであり、これは、100gの香料に対して12.5%に相当する。
【0129】
例3−ナツシロギク
本願発明の抽出方法は、ナツシロギク(以下、TPと略す)に含まれる活性分子の抽出に用いられる。例3は、前述の例1と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。抽出装置には、以下で構成される1500mlの抽出溶媒を入れる:酢酸(12%水溶液)40重量%、蒸留水60重量%。溶媒:TPの割合は、重量で15:1。100gのTPは細かい粉状にした(粒子の大きさ100〜120ミクロン)。二酸化炭素は、45ml(抽出溶媒の全量に対して、3体積%)を用いた。表3からは、TPから49種の活性分子が抽出されたことがわかる。回収された抽出物は、最初に100gあったTPの抽出基質の全重量に対して、85,000ppmであり、これは、100gのTPに対して8.5%に相当する。
【0130】
例4−クランベリー
本願発明の抽出方法は、クランベリーに含まれる活性分子の抽出に用いられる。例4は、前述の例1と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。抽出装置には、以下で構成される1500mlの抽出溶媒を入れる:酢酸(12%水溶液)40重量%、蒸留水60重量%。溶媒:クランベリーの割合は、重量で15:1。100gのクランベリーは細かい粉状にした(粒子の大きさ80〜100ミクロン)。二酸化炭素は、45ml(抽出溶媒の全量に対して、3体積%)を用いた。表4からは、クランベリーから43種の活性分子が抽出されたことがわかる。回収された抽出物は、最初に100gあったクランベリーの抽出基質の全重量に対して、270,000ppmであり、これは、100gのクランベリーに対して27%に相当する。
【0131】
例5−プロポリス
本願発明の抽出方法は、プロポリスに含まれる活性分子の抽出に用いられる。例5は、前述の例1と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。抽出装置には、以下で構成される1500mlの抽出溶媒を入れる:酢酸(12%水溶液)40重量%、蒸留水60重量%。溶媒:プロポリスの割合は、重量で15:1。100gのプロポリスは細かい粉状にした(粒子の大きさ80〜120ミクロン)。
【0132】
二酸化炭素は、45ml(抽出溶媒の全量に対して、3体積%)を用いた。表5からは、プロポリスから44種の活性分子が抽出されたことがわかる。回収された抽出物は、最初に100gあったプロポリスの抽出基質の全重量に対して、125,000ppmであり、これは、100gのプロポリスに対して12.5%に相当する。
【0133】
出願人は、上述の本願発明の抽出方法を用いて、二酸化炭素を使用する場合と使用しない場合の、例1(ミルラ)と例2(香料)を実施した。二酸化炭素を用いた本願発明の抽出方法の結果は、顕著に高い抽出率となったが、23℃、1気圧で二酸化炭素を用いない本願発明の抽出方法は、以下に示す値となった。
【0134】
【0135】
欧州特許1641903B1に記載された方法によって抽出された活性分子の数と、本願発明の抽出方法によって抽出された活性分子の数の比較を以下に示す。
【0136】
【0137】
さらに、欧州特許1641903B1に記載された方法と比較すると、本願発明の方法は、4000ダルトンまでの分子量を有する分子を抽出することができるのに対し、従来法では650ダルトンまでにすぎない。
【0138】
本願発明の方法で得られた抽出物は、波長5500〜7500Åのルビーレーザー光を有する光散乱分析を行った。このレーザー光はチンダル現象を起こさないことが分かった。このことから、抽出“溶液”において、抽出された分子は、遊離して、孤立していることがわかった。つまり、これらの抽出された分子は、分子動力学が良好であり、脂質媒体中または細胞の境界において高い拡散性を示すことから、生物学的に非常に活動的であることがわかった。
【0139】
本願発明の方法により抽出された分子は、遊離した状態(分子凝集体の状態ではない)で抽出され、例えば、粘着性の成分、でんぷん質成分、糖類、タンパク質のような天然樹脂などの植物性基質中に存在する高分子成分を含まない。
【0140】
例6クランベリー−比較実験
本願発明の抽出方法は、クランベリーに含まれる活性分子の抽出に用いられる。例6は、前述の例4と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。
【0141】
溶媒(S1〜S4)の組成:
−S1:酢酸80%、水20%、5%二酸化炭素(AA+CO2)
−S2:酢酸80%、水20%、2.5%二酸化炭素、2.5%アルゴン(AA+CO+Ar
−S3:酢酸80%、水20%、5%アルゴン(AA+Ar
−S4:エタノール80%、水20%、二酸化炭素5%(EtOH+CO
抽出パラメータ:T40℃、抽出時間60分、連続的に濾過。
【0142】
例7ナツシロギク−比較実験
本願発明の抽出方法は、ナツシロギクに含まれる活性分子の抽出に用いられる。例7は、前述の例3と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。
【0143】
溶媒の組成:
−S1:酢酸80%、水20%、5%二酸化炭素(AA+CO2)
−S2:酢酸80%、水20%、2.5%二酸化炭素、2.5%アルゴン(AA+CO+Ar
−S3:酢酸80%、水20%、5%アルゴン(AA+Ar
−S4:エタノール80%、水20%、二酸化炭素5%(EtOH+CO
抽出パラメータ:T45℃、抽出時間60分、連続的に濾過。
【0144】
例8香料−比較実験
本願発明の抽出方法は、香料に含まれる活性分子の抽出に用いられる。例8は、前述の例2と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。
【0145】
溶媒の組成:
−S1:酢酸80%、水20%、5%二酸化炭素(AA+CO2)
−S2:酢酸80%、水20%、2.5%二酸化炭素、2.5%アルゴン(AA+CO+Ar
−S3:酢酸80%、水20%、5%アルゴン(AA+Ar
−S4:エタノール80%、水20%、二酸化炭素5%(EtOH+CO
抽出パラメータ:T70℃、抽出時間60分、連続的に濾過。
【0146】
例9ミルラ−比較実験
本願発明の抽出方法は、香料に含まれる活性分子の抽出に用いられる。例9は、前述の例1と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。
【0147】
溶媒の組成:
−S1:酢酸80%、水20%、5%二酸化炭素(AA+CO2)
−S2:酢酸80%、水20%、2.5%二酸化炭素、2.5%アルゴン(AA+CO+Ar
−S3:酢酸80%、水20%、5%アルゴン(AA+Ar
−S4:エタノール80%、水20%、二酸化炭素5%(EtOH+CO
抽出パラメータ:T70℃、抽出時間60分、連続的に濾過。
【0148】
例10プロポリス−比較試験
本願発明の抽出方法は、香料に含まれる活性分子の抽出に用いられる。実施例10は、前述の実施例5と同じ操作工程で行われるが、以下において異なる。
【0149】
溶媒の組成:
−S1:酢酸80%、水20%、5%二酸化炭素(AA+CO2)
−S2:酢酸80%、水20%、2.5%二酸化炭素、2.5%アルゴン(AA+CO+Ar
−S3:酢酸80%、水20%、5%アルゴン(AA+Ar
−S4:エタノール80%、水20%、二酸化炭素5%(EtOH+CO
抽出パラメータ:T40℃、抽出時間120分、連続的に濾過。
【0150】
表1/10
【0151】
表2/10
【0152】
表3/10
【0153】
表4/10
【0154】
表5/10
【0155】
表6/10
【0156】
表7/10
【0157】
表8/10
【0158】
表9/10
【0159】
表10/10
図1