(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986581
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】携帯式導尿器
(51)【国際特許分類】
A61F 5/455 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
A61F5/455
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-545011(P2013-545011)
(86)(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公表番号】特表2014-506155(P2014-506155A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】CN2011001437
(87)【国際公開番号】WO2012083581
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】201010596102.6
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512092232
【氏名又は名称】楊国煌
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】楊国煌
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0218709(US,A1)
【文献】
特表平09−500808(JP,A)
【文献】
特開平07−067903(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/114952(WO,A1)
【文献】
米国特許第02690568(US,A)
【文献】
国際公開第2007/050716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド部と、第一の開口と、第二の開口とを備え、前記ガイド部は両側壁を有し、前記両側壁の底縁は密閉構造であり、前記第一の開口及び前記第二の開口が前記ガイド部の両端にそれぞれ位置するガイド本体と、
前記ガイド本体の前記第一の開口と前記第二の開口との間に配置される2つの接続手段と、
前記2つの接続手段の少なくとも一部に設けられる接着層と、
を含み、利用者が使用する時に指が前記接着層に接触し、前記ガイド本体の前記両側壁の底縁から離れた部分は開放構造である、携帯式導尿器。
【請求項2】
前記2つの接続手段は、それぞれが折れ曲がった翼状部であり、前記折れ曲がった翼状部は前記両側壁からそれぞれ延びることを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項3】
前記接続手段の一端は、それぞれ前記両側壁の外側又は内側に固定されることを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項4】
前記2つの接続手段の上縁延長線と前記両側壁の底縁延長線とが成す角度が、いずれも鈍角であることを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項5】
前記第一の開口の前記2つの接続手段に近接する箇所に受け取り部が設けられ、前記受け取り部の上縁延長線が前記両側壁の底縁延長線と略平行であることを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項6】
前記携帯式導尿器は、前記両側壁の底縁と前記第一の開口又は前記第二の開口との間に設けられるストッパ部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項7】
前記携帯式導尿器は、前記第一の開口と前記第二の開口との間において、前記両側壁のうちの少なくとも1つに設けられる少なくとも1つの構造強化手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【請求項8】
前記携帯式導尿器は、前記第二の開口に隣接して前記両側壁のうちの少なくとも1つに接続される少なくとも1つのつまみ部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯式導尿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導尿器に関し、特に携帯式導尿器に関する。
【背景技術】
【0002】
外出者にとって、トイレがない場合、どのようにして排泄問題を解決したらよいかは最も困惑する問題である。公衆トイレが見つかったとしても、公衆トイレが清潔、衛生的でないことはよくあるため、公衆トイレを利用する人は、大量のトイレットペーパーで便器を拭くか、便器に半立ちで座るか、便座上にたくさんのトイレットペーパーを敷くか何らかの工夫をする必要がある。洋式便器に半立ちで座ると、小便が飛び散ることによって大腿や服が汚されることがよくある。また、たくさんのトイレットペーパーを使用すると、資源が無駄になり環境に優しくない。さらに、女性利用者の多くは、公衆トイレの便器が不衛生で便座に座りたくない場合にはむしろ尿意を我慢するが、長時間尿意を我慢すると体の病気が引き起こされやすく、特に腎臓に対して極めて大きな負担になる。
【0003】
そのため、利用者が公衆トイレで容易に使用可能であり、かつ使用時に便器に接触する必要がないような携帯式導尿器をどのように提供するかが、現在の重要な課題の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題に鑑みて、本発明は、従来技術の欠点を克服するために、携帯式であって使用が容易であり、利用者が公衆トイレの便器に接触せずに尿を
誘導することが可能な携帯式導尿器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の携帯式導尿器は、ガイド本体と、2つの接続手段とを含む。ガイド本体は、ガイド部と、第一の開口と、第二の開口とを備える。ガイド部は、例えば紙又はプラスチックである2つの側壁からなり、2つの側壁の底縁は密閉構造であり、第一の開口と第二の開口とがガイド部の両端に位置
し、実質的に両側壁の両端が開放構造である。2つの接続手段が、それぞれガイド本体の第一の開口と第二の開口との間に配置される。2つの接続手段は、利用者が取り扱うために用いられ、第一の開口が利用者の尿を受け取り、ガイド部の誘導により第二の開口から尿を排出する。しかしながら、後で詳しく説明するように、本発明は他の使用方法であってもよい。
【0006】
本発明による一実施例では、ガイド本体の両側壁の底縁から離れた部分は開放構造である。
【0007】
本発明による一実施例では、2つの接続手段は、それぞれが折れ曲がった翼状部であり、2つの側壁から一方側にそれぞれ延びる。また、人体の曲線に合わせて2つの接続手段の上縁延長線と両側壁の底縁延長線とが成す角度は鈍角であるため、利用者が導尿器を容易に扱うことができる。
【0008】
本発明による一実施例では、第一の開口の2つの接続手段に近い部分は、排泄口(又は外陰部)に接近して尿を受け取るための受け取り部である。受け取り部の上縁延長線と両側壁の底縁延長線とは、ほぼ平行である。
【0009】
本発明による一実施例では、携帯式導尿器はさらに、上記の2つの折れ曲がった翼状部の少なくとも一部に設けられた接着層を含む。接着層は、その粘着力の強弱に応じて、利用者の指に粘着したり(粘着力が弱い)、他の補助接続手段を粘着したり(粘着力が強い)するようにして用いることができる。
【0010】
本発明による一実施例では、2つの折れ曲がった翼状部の一端が、2つの側壁の外側又は内側にそれぞれ固定される。言い換えれば、折れ曲がった翼状部と側壁との間に、利用者の指を収容するための収容空間が形成される。
【0011】
本発明による一実施例では、携帯式導尿器はさらに、上記の折れ曲がった翼状部に取り付けられる少なくとも1つの補助接続手段を含む。補助接続手段は、例えばリングである。
【0012】
本発明による一実施例では、携帯式導尿器はさらに、両側壁の底縁と第一の開口との間に設けられ、第二の開口から尿を排出することを確保するストッパ部を含む。または、ストッパ部は、両側壁の底縁と第二の開口との間に設けられ、第一の開口から尿を排出することを確保する。
【0013】
本発明による一実施例では、携帯式導尿器はさらに、第一の開口と第二の開口との間において、両側壁のうちの少なくとも1つに設けられる少なくとも1つの構造強化手段を含み、これにより導尿器の構造強度が向上し、使用時に変形し難くなる。
【0014】
本発明による一実施例では、利用者が導尿器をつまんで扱うために、携帯式導尿器はさらに、第二の開口に隣接して、2つの側壁のうちの少なくとも1つに接続された少なくとも1つのつまみ部を含む。
【0015】
本発明の有用な効果は、次のとおりである。本発明の携帯式導尿器は、構造が簡易であるため、適当な材質と組み合わせれば携帯が容易となり、接続手段を指で操作するだけで導尿器を容易に使用することができ、これにより利用者のトイレの利用に関する問題が衛生的に解決される。ガイド本体は両側壁の底縁を除いて全てが開放構造であるため、両側壁の両方から延びる接続手段により、利用者が携帯式導尿器の位置及び開口の大きさを安定的にかつ思い通りに調節することができ、清潔でない公衆トイレにおいて、利用者は、公衆トイレの便器に接触することなく尿を受けて便器内に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2A】
図1の導尿器の使用方法を示す模式図である。
【
図2B】
図1の導尿器の使用方法を示す模式図である。
【
図2C】
図1の導尿器の使用方法を示す模式図である。
【
図3】接着層が設けられた導尿器を示す模式図である。
【
図4A】一部に接着層が設けられた接続手段を示す模式図である。
【
図4B】一部に接着層が設けられた接続手段を示す模式図である。
【
図5】導尿器の折れ曲がった翼状部が収容空間を形成する様子を示す模式図である。
【
図6】導尿器に設けられた補助接続手段を示す模式図である。
【
図7A】ストッパ部を備えた導尿器を示す模式図である。
【
図7B】ストッパ部を備えた導尿器を示す模式図である。
【
図8】構造強化手段を備えた導尿器を示す模式図である。
【
図9】つまむためのつまみ部を備えた導尿器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明による好ましい実施例の携帯式導尿器10を説明する。なお、同じ部材に対しては、同じ符号を付して説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の携帯式導尿器10は、主に、女性利用者が公衆トイレの便器に接触せずに、トイレを容易に利用するために用いられる。ここで、携帯式導尿器10の材質は、紙、プラスチック、金属、複合材料又は高分子材料などを含む。携帯式導尿器10は、ガイド本体11と2つの接続手段12とを含み、ガイド本体11は、ガイド部111を備え、ガイド部111の両端に、対向して設置された第一の開口E1及び第二の開口E2を備える。接続手段12はそれぞれ、ガイド本体11における第一の開口E1と第二の開口E1との間の位置に設けられる。
【0019】
ガイド部111は、互いに結合される2つの側壁からなり、両側壁の底縁が互いに結合されて密閉構造を形成する。第一の開口E1と第二の開口E2とが、2つの側壁の結合部分の両端にそれぞれ位置し、
両側壁は、両端(すなわち、第一の開口E1及び第二の開口E2)で実質的に開放しているため、両側壁の底縁から離れた部分は実質的に開放構造である。
【0020】
接続手段12がガイド本体11に設けられ、接続手段12は、利用者の取り扱いのために用いられ、例えば、接着、取り付け、又はガイド本体11に一体的に成形されることができる。本実施例では、接続手段12は、それぞれが折れ曲がった翼状部であり、両側壁の結合部分から離れた1つの側辺からそれぞれ延びる。本実施例では、接続手段12の上縁延長線と2つの側壁の底縁延長線とが角度A1を成し、角度A1は鈍角である。他の実施例では、接続手段12は、利用者が扱うための、例えばリングなどであってよい。
【0021】
また、ガイド本体11は、第一の開口E1の接続手段12に近い箇所に受け取り部13を有し、利用者が携帯式導尿器10を使用する時に、排泄口(又は外陰部)に
接近して尿を受け取るような役割を担う。受け取り部13の上縁延長線と両側壁の底縁延長線とはほぼ平行であり、言い換えれば、折れ曲がった翼状部の上縁延長線と受け取り部13の上縁延長線とがやはり鈍角を成し、それにより利用者が携帯式導尿器10を使用する時に、携帯式導尿器10を人体の曲線に合わせて使用することができる。
【0022】
図2A〜
図2Cは、異なる角度から見た携帯式導尿器10の使用方法を示す模式図であり、
図2Aは側面図であり、
図2Bは平面図であり、
図2Cは斜視図である。携帯式導尿器10を使用する際に、利用者は指を接続手段12に接して携帯式導尿器10を取り扱い、携帯式導尿器10の受け取り部13を利用者の排泄口(又は外陰部)に接近させるとともに、接続手段12を利用者の恥骨付近に近づけ、さらに2本の指で第一の開口E1の開口の大きさ及び位置を調節することにより、尿を受け取った後にガイド部111を介して第二の開口E2に導いて、第二の開口E2から排出させる。当然に、例えば、第一の開口E1で尿を受け取った後に、ガイド部111を経て第一の開口E1から尿を排出する別の使用方法も、本発明の携帯式導尿器10の可能な使用方法の1つである。
【0023】
以上のように、本発明の携帯式導尿器10は、構造が簡易であるため、適当な材質と組み合わせれば携帯が容易となり、
尿を誘導するように接続手段12を指で調節することで携帯式導尿器10を容易に使用することができ、これにより利用者のトイレ利用に関する問題が衛生的に解決される。以下で、図面を参照しながら本発明の携帯式導尿器10の他の実施例の変形について説明する。
【0024】
図
3に示すように、上記との違いは、接続手段12に接着層14がさらに設けられる点であり、そして実際の使用に応じて、粘着性の異なる接着層14を選ぶことができる。本実施例では、接着層14は、粘着性の低い接着剤を選択し、接続手段12(折れ曲がった翼状部)での側壁の外側に近い側に塗布される。利用者が使用する時に指が接着層14に接触するため、携帯式導尿器10をより安定して扱うことができる。接着層14は、接続手段12の一部だけに設けられてもよ
い。
【0025】
次に、
図4A及び
図4Bに示すように、接着層14
が接続手段12の一部に設けられる
他の実施例ではさらに、接着層14が塗布された接続手段12が側壁の内側又は外側に固定されて、接続手段12と側壁との間に、利用者が指で保持するための収容空間C1(
図5に示す)を形成することができる。本実施例では、接着層14を側壁の外側に付ける例を挙げて説明している(
図4Bに示す)。なお、接続手段12を側壁に固定する方法は、接着層14で接着する方法に限定されず、熱圧着、高周波などの接合技術を用いてもよい。
【0026】
図6に示すように、接着層14に補助接続手段15、例えば強い構造のリングがさらに設けられてもよく、その材質は例えばプラスチックや金属などである。保持性能のよい補助接続手段15によって、利用者は携帯式導尿器10をより安定的かつ思い通りに扱うことができる。
【0027】
携帯式導尿器10は、さらにストッパ部16を含むことができ、これは両側壁の底縁と第一の開口E1又は第二の開口E2との間に設けられ、利用者が第一の開口E1又は第二の開口E2から尿を排出するように扱えることを確保するために用いられる。
図7Aに示すように、ストッパ部16が側壁の底縁と第一の開口E1との間に設けられると、使用時には尿がガイド部111に沿って第二の開口E2から排出され、利用者が多少誤った扱いをして尿が第一の開口E1に流れるとストッパ部16に阻止されるため、角度の調整ミスにより第一の開口E1から排出されることがない。または、
図7Bに示すように、ストッパ部16が側壁の底縁と第二の開口E2との間に設けられると、尿が第一の開口E1から排出されることが確保される。
【0028】
さらに、
図8に示すように、携帯式導尿器10は、さらに少なくとも1つの構造強化手段17を含む。構造強化手段17は、ストリップ状又は柱状などの構造的に強い形状とすることができ、第一の開口E1と第二の開口E2との間において、両側壁のうちの少なくとも1つに設けられ、それにより携帯式導尿器10の構造強度が向上し、使用時に変形し難くなる。
【0029】
図9に示すように、携帯式導尿器10はさらに、第二の開口E2に隣接して、側壁の少なくとも1つに接続されたつまみ部18を含むことができ、これは利用者が携帯式導尿器10をつまんで扱うことで第二の開口E2の方向を調節するために用いられる。本実施例では、2つのつまみ部18を例として示し、2つのつまみ部18を一体に成形しても、又は相互に接着してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
上記内容は実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われるいずれかの等価な変更又は変形は、全て本発明の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0031】
10 携帯式導尿器
11 ガイド本体
111 ガイド部
12 接続手段
13 受け取り部
14 接着層
15 補助接続手段
16 ストッパ部
17 構造強化手段
18 つまみ部
A1 角度
C1 収容空間
E1 第一の開口
E2 第二の開口