特許第5986590号(P5986590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986590生物付着に対処するための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986590
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】生物付着に対処するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20160823BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G01N21/78 Z
   C12Q1/02
   G01N21/78 C
【請求項の数】54
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-557223(P2013-557223)
(86)(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公表番号】特表2014-510275(P2014-510275A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】IL2012050080
(87)【国際公開番号】WO2012120517
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】61/449,887
(32)【優先日】2011年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513225925
【氏名又は名称】メコロット ウォーター カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッツァー、イーライ
(72)【発明者】
【氏名】アーモン、ロバート
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−299383(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/024438(WO,A1)
【文献】 特開平09−184837(JP,A)
【文献】 特開平09−184835(JP,A)
【文献】 特表2010−513935(JP,A)
【文献】 特表2004−526152(JP,A)
【文献】 特開2009−145087(JP,A)
【文献】 特開平02−163098(JP,A)
【文献】 特開2010−154847(JP,A)
【文献】 特開2010−043890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/83
C12Q 1/02
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)35℃を超え、95℃以下の温度で固体から液体に転移し、冷却すると固体又は半固体構造に転移する、スキャホールド形成物質から形成されたマトリックスを含むスキャホールド;
(b)染料物質と結合した粘土鉱物を含む染料複合体であって、前記染料物質は、微生物の存在下に、検出可能なシグナルをもたらし、前記染料複合体は、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサー。
【請求項2】
染料複合体が、前記スキャホールドの細孔中に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
染料物質が、発色団又はフルオロフォアから選択される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
アルカノールをさらに含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
アルカノールがエタノールである、請求項1から4までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
ポリマー物質が、多糖、ケイ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド又はポリアミドからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
ポリマー物質が、寒天、キトサン、セルロース、アラビノキシラン、デンプン、グリコーゲン及びキチンからなる群から選択される多糖を含む、請求項6に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
多糖が寒天である、請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
染料物質が、微生物の代謝産物の存在に応答する、請求項1から8までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
染料物質が、微生物の代謝産物の存在下で化学変化を受ける、請求項9に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
染料物質が、テトラゾリウム化合物のファミリーに属する、請求項1から10までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項12】
染料物質が、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(XTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(TTC)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(レッドテトラゾリウム)、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリド(テトラゾリウムバイオレット)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ネオテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ブルーテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロリド](ニトロブルーテトラゾリウム)、又は3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4−4’ビフェニレン)ビス[2,5−ビス(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド](テトラニトロブルーテトラゾリウム)からなる群から選択されるテトラゾリウム化合物である、請求項11に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
テトラゾリウム化合物が、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリドである、請求項12に記載のバイオセンサー。
【請求項14】
粘土鉱物が、カオリン、スメクタイト、イリテム(Illitem)緑泥石、海泡石及びアタパルジャイトからなる群から選択される、請求項1から13までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項15】
粘土鉱物がカオリンである、請求項14に記載のバイオセンサー。
【請求項16】
粘土鉱物と染料物質の間の結合が、非共有結合性化学結合を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項17】
染料複合体が300g/モルから1500g/モルの範囲の分子量を有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項18】
染料複合体の埋め込みが、染料物質の少なくとも一部がポリマースキャホールドの外に露出したままであるような、前記ポリマースキャホールドの細孔中への前記複合体の物理的な取り込みを含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【請求項19】
上表面及び底表面を有する積層物の形態にあり、染料物質が少なくとも前記上表面において露出している、請求項18に記載のバイオセンサー。
【請求項20】
容器中に懸濁された粒子状物質の形態にあり、染料物質が粒子状物質の外側表面に露出している、請求項19に記載のバイオセンサー。
【請求項21】
(a)微生物の存在下に、検出可能なシグナルをもたらす、粘土鉱物及び染料物質を含む染料複合体を、35℃を超え、95℃以下の温度で固体から液体に転移し、冷却すると固体又は半固体構造に転移するスキャホールド形成物質と混合するステップであって、染料複合体及びスキャホールド形成物質が水性流体混合物の状態にある温度で混合するステップと、
(b)前記流体混合物に非電解質試薬を添加するステップと、
(c)前記非電解質試薬との前記流体混合物を、混合物が固体又は半固体に転移する温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、スキャホールド、及び前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている前記染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法。
【請求項22】
染料複合体がスキャホールドの細孔中に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
染料複合体が、染料物質を粘土鉱物と、前記染料物質と前記粘土鉱物の間における非共有結合を可能にする条件下で混合することによって形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
染料物質と粘土鉱物の間の混合が、4から6の範囲のpHにおいてである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
pHが4.5±0.5である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
粘土鉱物が、カオリン、スメクタイト、イリテム(Illitem)緑泥石、海泡石及びアタパルジャイトからなる群から選択される、請求項21から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
粘土鉱物がカオリンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
染料物質が、発色団及びフルオロフォアから選択される、請求項21から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
染料物質が、テトラゾリウム化合物のファミリーに属する、請求項21から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
染料物質が、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(XTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(TTC)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(レッドテトラゾリウム)、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリド(テトラゾリウムバイオレット)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ネオテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ブルーテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロリド](ニトロブルーテトラゾリウム)、又は3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4−4’ビフェニレン)ビス[2,5−ビス(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド](テトラニトロブルーテトラゾリウム)からなる群から選択されるテトラゾリウム化合物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
テトラゾリウム化合物が、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリドである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
染料複合体及びスキャホールド形成物質が、35℃から95℃の範囲の温度で混合される、請求項21から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
スキャホールド形成物質と染料複合体の混合物が、4:1の化学量論比である、請求項21から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
非電解質試薬がアルカノールである、請求項21から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
アルカノールがエタノールである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
非電解質との混合物が、10℃〜35℃の範囲の温度まで冷却される、請求項21から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
スキャホールド形成物質が、多糖、ケイ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド又はポリアミドからなる群から選択される、請求項21から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ポリマースキャホールドが、寒天、キトサン、セルロース、アラビノキシラン、デンプン、グリコーゲン又はキチンからなる群から選択される多糖を含む、請求項21から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
多糖が寒天である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a)カオリン及びテトラゾリウムバイオレットを含む染料複合体を寒天と、前記染料複合体及び前記寒天を水性流体の形態に維持する、35℃から85℃の範囲の温度で混合するステップと、
(b)前記混合物にエタノールを添加するステップと、
(c)エタノールとの前記混合物を20℃〜25℃の範囲の温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、寒天中に少なくとも部分的に埋め込まれている前記染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法。
【請求項41】
流体連通している、少なくとも1個の流体流入口及び少なくとも1個の流体流出口;
前記少なくとも1個の流体流入口と前記少なくとも1個の流体流出口の間に位置するバイオセンシングチャンバーであって、それによって、流体が、前記流体流入口から前記バイオセンサーチャンバー上に層流の状態で供給され、前記チャンバーから流体流出口を通して排出され、前記バイオセンシングチャンバーは、
(i)35℃を超え、95℃以下の温度で固体から液体に転移し、冷却すると固体又は半固体構造に転移するスキャホールド形成物質から形成されたマトリックスを含むスキャホールド;
(ii)粘土鉱物及び染料物質を含む染料複合体であって、前記染料物質は、微生物の存在下に、検出可能なシグナルをもたらす、上記染料複合体
を含み、前記染料物質は、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている、バイオセンサーを含む上記バイオセンシングチャンバー
を含む装置。
【請求項42】
流入口の後、かつバイオセンシングチャンバーの前にある流体ダンピングベイスンであって、バイオセンサー上の流体の層流を可能にするように構成された上記流体ダンピングベイスンを含む、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
温度制御ユニットを含む、請求項41又は42に記載の装置。
【請求項44】
シグナル検出ユニットを含む、請求項41から43までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
バイオセンサーが、請求項1から20までのいずれか一項に記載されたものである、請求項41から44までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
染料物質が、発色団又はフルオロフォアから選択される、請求項41から45までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
(a)水性流体流動システムからの水性流体試料を、
(i)35℃を超え、95℃以下の温度で固体から液体に転移し、冷却すると固体又は半固体構造に転移するスキャホールド形成物質から形成されたマトリックスを含むスキャホールド;
(ii)粘土鉱物及び染料物質を含む染料複合体であって、前記染料物質は、微生物の存在下に、検出可能なシグナルをもたらし、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)前記微生物の存在と関連する、前記バイオセンサーにおけるシグナル強度であって、前記流体流動システムの生物付着を形成する可能性と相関する上記シグナル強度を検出するステップと
を含む、流体流動システム中の生物付着を予測するための方法。
【請求項48】
接触させることが、バイオセンサー上の水性流体試料の層流を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
接触させることが、15℃から35℃の範囲の温度においてである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
層流が、300から2,000の間のレイノルズ数によって特徴付けられる、請求項47から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
水性流体試料が水である、請求項47から50までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
シグナル強度が、予め決定された生物付着指数と比較される、請求項47から51までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
シグナル強度が定量的に測定される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
バイオセンサーが、請求項1から20までのいずれか一項に記載されたものである、請求項47から53までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に生物付着(biofouling)に関し、詳細には、脱塩システム等の流体システムにおける生物付着を予測し、低減させるための方法及びデバイスに関する。
本発明の背景
膜、パイプ、冷却塔及び他の水が接触する表面の生物付着の問題は、水関連プロセス及びシステム、特に水の脱塩プロセスにおいて継続中の問題である。
膜表面上の生物付着の発生は、逆浸透(RO)技術に基づく、特に二次処理後の処理された廃水の脱塩のための脱塩プラントの操作における重大な問題の1つをもたらす。
膜上の生物付着の層は、流入圧力の増加、生成物流量の低下、及び供給側と濃縮側の間の膜の表面における圧力低下を引き起こす。これらの変化は、脱塩施設の生産の低下、エネルギー消費量の増加及び生物付着層を除去するために膜の頻繁な化学的清浄化の必要性をもたらす。
【0002】
生物付着の発生は、供給水中に見られる微生物の膜表面上での吸着及び増殖に起因する。
生物付着の予測にいくつかの方法が利用可能であり、AOC(同化性有機炭素)、BDOM(生分解性溶解有機物質)BOD(生物化学的酸素要求量)、DOC(溶解有機炭素)、TBC(総微生物数)、TOC(総有機炭素)を包含する実験室試験が利用可能である。実地試験に関しては、ほとんどの測定法が測定表面における生物膜の成長に基づくものである。いくつかの市販の生物膜同定キットが入手可能であり、これらは、生物膜の存在を検出する;これらの中で最も一般的なものは、生物学的活性反応試験(BART)キット又はHydroBio Testキットである。
【0003】
微生物を検出するための染料も記載されている。[Turner Nikki,W.E.Sandine,P.R.Elliker、and E.A.Day、「乳酸連鎖球菌(Streptococcus Lactis)及びストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus Cremoris)の分化のための寒天培地中のテトラゾリウム染料の使用(Use of Tetrazolium Dyes in an Agar Medium for Differentiation of Streptococcus Lactis and Streptococcus Cremoris)」,Journal of Dairy Science,46:380−385(1963);Hayashi Shuhei,Takeshi Kobayashi,and Hiroyuki Honda、「有機溶媒耐性細菌をスクリーニングするためのテトラゾリウムバイオレット着色法を用いた単純で迅速な細胞増殖アッセイ(Simple and rapid cell growth assay using tetrazolium violet coloring method for screening of organic solvent tolerant bacteria)」,Journal of Bioscience and Bioengineering,96(4):360−363(2003)]。
本開示の概要
【0004】
一側面によれば、本開示は、スキャホールド、及び染料物質と結合した粘土物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーを提供する。
さらに他の側面において、本開示は、(i)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体をスキャホールド形成物質と、染料複合体及びスキャホールド形成物質が水性流体混合物の状態にある温度で混合するステップと;(ii)当該流体混合物に非電解質試薬を添加するステップと;(iii)非電解質試薬との流体混合物を、混合物が凝固する温度まで冷却するステップを含み、それによって、スキャホールド及びスキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法を提供する。
さらに他の側面において、本開示は、流体連通している、少なくとも1個の流体流入口及び少なくとも1個の流体流出口;流体流入口と流体流出口の間に位置するバイオセンシングチャンバーであって、(i)スキャホールド並びに(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーを含む上記バイオセンシングチャンバーを含む装置を提供する。
【0005】
別の態様では、本開示は、
(a)水性流体試験試料を、(i)スキャホールド、並びに(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)水性流体試験試料中に微生物が存在することを示す、バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと
を含む、水性流体試験試料中の生存可能な微生物を検出するための方法を提供する。
さらに別の側面において、本開示は、
(a)水性流体流動システムからの水性流体試料を、(i)スキャホールド、並びに(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)流体流動システムの生物付着を形成する可能性と相関する、バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと
を含む、流体流動システム中の生物付着を予測するための方法を提供する。
他の側面によれば、本開示は、
(a)1種又は2種以上の水性流体の試料を、1種又は2種以上の異なる濃度の殺菌剤と接触させるステップと、
(b)殺菌剤を含有する1種又は2種以上の試料のそれぞれを、(i)スキャホールド、並びに(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(c)1種又は2種以上の試料のそれぞれに対して、バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと、
(d)シグナル強度が、前記水性流体に対して又は前記殺菌剤に対して有効な処理であると決定された範囲内にある試料を選択するステップであって、選択された試料に添加された殺菌剤の濃度が、水性流体を殺菌するのに有効な濃度である上記ステップと
を含む、水性流体を殺菌するのに必要な殺菌剤の濃度を決定するための方法を提供する。
【0006】
本発明を理解し、実際にそれがいかに実施し得るかを確認するために、態様を付随の図面を参照して、非限定的な例にすぎないものとして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の態様によるバイオセンシング装置(10)の概略的横断面図である。
図2】本発明の態様によるバイオセンサーを用いて決定した、3つの異なる(逆浸透脱塩システムにおける、ステージI、ステージII及びステージIIIへの)供給水に対する生物膜指数を示すグラフである。
図3】15日後に逆浸透(RO)膜上で成長した生物膜の、3つの異なる(ステージI、ステージII及びステージIIIへの)供給水ステージに対する生物体積(単位μm)を示すグラフであり、生物体積は共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で測定した。
図4】水中の総塩素濃度の関数としての生物付着指数を示すグラフである。
図5】クロラミンを有していないステージIへの供給水(供給水I)、及びクロラミンを有するステージIへの供給水(供給水I+CA)に対する、15日後にRO膜上で成長した生物膜の、CLSMで測定した生物体積を示すグラフである。
図6】15日後に、ステージIへの供給水(供給水I)、及びクロラミンを有するステージIへの供給水(供給水I+CA)によりRO膜上で成長した生物膜の、CLSMで測定した厚さを示すグラフである。
図7】バイオセンサー試験で決定された低添加量のクロラミンを有するパイロットプラントに対する、操作時間の関数としての正規化された透過流量を示すグラフである。詳細な態様の説明
【0008】
本開示は、流動液体中の少量の微生物であっても検出を可能にする固定されたバイオセンシング材料の開発に基づいている。バイオセンシング材料は、このようにして流体連通システムに組み込まれて、生物付着の予測を可能にし、それによって、生物付着生成の結果としての膜の目詰まりを防止する。
本開示は、生物付着生成の可能性を決定するための、信頼のおける、定量的な及び再現性のある領域で、リアルタイムのバイオセンサー及びそれを含む装置を提供する。
さらに、以下に論じるように、バイオセンサーは、その測定値と流入流体(流動流体、例えば流水)中の生物付着の可能性の相関関係、及び当該相関関係の結果に基づいて可能な流体処理プロトコールを決定することを可能にする。
したがって、第1の側面によれば、本開示は、スキャホールド、並びに染料物質及び染料物質と結合した粘土物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーを提供する。
【0009】
第2の側面によれば、本開示は、
(a)粘土物質及び染料物質を含む混合染料複合体をスキャホールド形成物質と、染料複合体及びスキャホールド形成物質が水性流体混合物の状態にある温度で混合するステップと、
(b)流体混合物に非電解質試薬を添加するステップと、
(c)非電解質試薬との流体混合物を、混合物が凝固する温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、スキャホールド及びスキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法を提供する。
【0010】
「スキャホールド」は、いかなるスキャホールド形成物質からでも形成されるマトリックスである。スキャホールド形成物質は、35℃を超え、時には50℃を超え、さらに65℃を超える、固体から液体への相転移温度を有する、天然、半合成又は合成のスキャホールド形成物質であってもよい。いくつかの態様では、相転移温度は95℃以下である。スキャホールドは、微生物がそれに付着することができ、付着された微生物が、その上に増殖することが可能なタイプである。さらに、スキャホールドは、その寸法が薬品又は物理的条件の存在下で操作される細孔/空隙で特徴付けられる。例えば、スキャホールド形成物質の脱水が、スキャホールドの空隙の収縮を生じさせ得る。脱水をスキャホールド形成物質をアルコールに曝すことによって達成してもよい。
【0011】
冷却すると、スキャホールド形成物質は凝固する。本開示の状況では、凝固には、固体及び半(準)固体の形態への転移が包含される。
いくつかの態様では、スキャホールド形成物質はポリマー物質である。いくつかの態様によれば、スキャホールドを形成するポリマーを、多糖、ケイ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド又はポリアミドからなる群から選択してもよい。
一態様では、スキャホールド形成物質は、1種又は2種以上の多糖を含む。ポリセッカライド(polyseccharides)の非限定的なリストには、寒天、キトサン、セルロース、アラビノキシラン、デンプン、グリコーゲン及びキチンが包含される。
一態様では、スキャホールドは寒天であり、これは藻類から製造され、2種の多糖、すなわちアガロースとアガロペクチンの混合物からなることが知られている。寒天は当技術分野でよく知られているが、表1A及び1Bは、本開示により使用することができる寒天の一部の特性を示す。
【0012】
表1A及び1Bは、それぞれ、いくつかの寒天の特性及び寒天の無機成分を示す(http://www.bd.com/ds/technicalCenter/inserts/Agar.pdfから得られた)。
【表1】

【表2】
【0013】
「染料複合体」は、染料物質及び粘土物質の間のいかなる物理的な結合(association)(結合(bonding))も包含し、ここで、染料物質は、粘土物質と非共有結合性相互作用を形成するものと理解される。非共有結合性相互作用(非共有結合性化学結合)には、これに限定されることなしに、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力及び疎水性相互作用が包含され得る。染料物質と粘土物質の間の相互作用は、さらに以下で論じられる。
「染料物質」は、微生物の存在下で、それに応答して(例えば微生物の代謝の結果として)、検知可能なシグナルを示すいかなる化合物も包含されるものと理解される。この目的のために、当該化学的物質は、微生物に対して少なくとも非毒性であり、微生物の代謝産物の存在下で変化を受ける(微生物の存在に応答する)タイプのものであるべきである。
一般に、染料物質は、概して2つの群に分類することができる:
(i)環境に応答して、例えば、pHの変化に応答して(pH指示薬)又は還元酸化反応に応答して(酸化還元指示薬)シグナルを示す染料物質。
(ii)その化学構造が変化することによりシグナルを示す染料物質。例えば、微生物の酵素的活性(例えば代謝)に起因する化合物中の化学式又は構造(立体化学)の化学的変化。
【0014】
上記によれば、染料物質は、発色団又はフルオロフォアから選択され得る。
染料物質は、96ウェルプレート中に加えられた試験媒体中の微生物の存在を判定するためにすでに使用された。本開示は、以前に記載されたように[Turner Nikki,et al.Journal of Dairy Science,46:380−385(1963);Hayashi Shuhei,et al.Journal of Bioscience and Bioengineering,96(4):360−363(2003)]静止した流体中ではなく、今回、流動する又は循環する流体、例えば流水中の微生物を検出するために染料物質を利用する。
【0015】
例えば、水中の大腸菌の存在は、クロロフェノールレッドβ−d−ガラクトピラノシド(これは、β−d−ガラクトシダーゼの存在下でその色を黄色から赤色に変化する)を用いて同定してもよい。
地下水中の嫌気性条件下のトルエン分解性微生物は、分解した場合その色を黄色に変化するトリフルオロ−m−クレゾールの使用により同定し得る。
いくつかの態様によれば、本発明により使用される染料物質は、テトラゾリウム化合物のファミリーに属する。
テトラゾリウム化合物は、主に、無色であるか又は弱く着色されており、微生物の電子伝達連鎖においてデヒドロゲナーゼ又はレダクターゼによって還元されて、発色団、すなわち、以下に図示するホルマザンを形成する。
【化1】
【0016】
ホルマザンは、テトラゾール環に結合された様々な有機基(R部分で表される)によって決まる、テトラゾリウム化合物の本来の化学的特性に応じて、暗青色から、濃赤色から橙色までの範囲の様々な色を有する。変色は、可視光で又は紫外線下で数時間以内に検出し得る。
一般に、テトラゾリウム化合物は、微生物細胞によるテトラゾリウム化合物還元活性な位置に応じてサブグループに分けられ得る。
(i)水溶性であるホルマザン誘導体を生成するテトラゾリウム化合物。このようなテトラゾリウム化合物の還元は、微生物細胞の外側で行われる。
(ii)水不溶性であるホルマザン誘導体を生成するテトラゾリウム化合物。このようなテトラゾリウム化合物、特にモノテトラゾリウム群は、細胞表層に侵入し、それによって還元反応が細胞中で行われる。
【0017】
テトラゾリウム化合物を、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、2−(4,5−ジメチルチアゾリル)−3,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、ナトリウム2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−5−[(フェニルアミノ)−カルボニル]−2H−テトラゾリウム−、分子内塩(XTT)、5−[3−(カルボキシメトキシ)フェニル]−3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(TTC)、ナトリウム5−(2,4−ジスルホフェニル)−2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩(WST−1)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(レッドテトラゾリウム)、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリド(テトラゾリウムバイオレット)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ネオテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ブルーテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロリド](ニトロブルーテトラゾリウム)、又は3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4−4’ビフェニレン)ビス[2,5−ビス(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド(テトラニトロブルーテトラゾリウム)からなる非限定的な群から選択してもよい。
【0018】
好ましい態様では、染料物質は微生物中で代謝されるタイプである。これは、いったんバイオセンサーを流動流体と接触させ、そのシグナルが生じると、このシグナルはバイオセンサーから洗い流せないことを保証する。
この態様によれば、いくつかのテトラゾリウム化合物、好ましくはモノテトラゾリウム化合物を使用してもよい。
表2は、細胞に侵入して還元反応を受けて、色が生じる、特定のモノテトラゾリウム化合物の例を示す。
【表3】
【0019】
一態様によれば、テトラゾリウム化合物は、テトラゾリウムバイオレット(2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリドとしても知られている)である。
染料物質の取り込みを確実にするために、粘土物質と共に複合体を形成させて、染料のアンカーとしての機能を果たす。染料物質と粘土物質の間の相互作用(結合)は、上記で論じたように非共有結合性である。一態様では、相互作用は、正荷電の染料物質と負荷電の粘土物質の間のイオン性相互作用に基づき、高分子量の染料複合体が生じる。
「粘土物質」は、主として粒状の鉱物からなるあらゆるアルミニウムケイ酸塩を表すものと理解される。
一態様では、粘土物質は粘土鉱物を含む。粘土鉱物は、可変量の鉄、マグネシウム、アルカリ金属、アルカリ土類及びその他のカチオンを含む含水アルミニウム層状ケイ酸塩である。
【0020】
粘土鉱物は、これに限定されるものではないが、カオリン、スメクタイト、イリテム(Illitem)緑泥石、海泡石及びアタパルジャイトからなる群から選択してもよい。
好ましい態様では、粘土鉱物はカオリンである。カオリンは、主としてカオリナイト鉱物及びジッカイト、ハロイサイト及びナクライト等の他の鉱物を含む白色粉状物質である。カオリンは当技術分野でよく知られており、種々の形態で市販されている。
カオリン及び他の粘土鉱物は、粘土物質は通常その表面上に負荷電を含み、それによって正荷電の種を吸着し、保持することが可能であるので、「カチオン交換体」と称される。
理論に拘泥するものではないが、染料物質と粘土物質の間の結合には、イオン性粘土物質の表面上に吸着された正荷電の染料物質の間の相互作用が関与し、それによって、染料複合体が形成される。
【0021】
粘土物質としてカオリン用いる利点は、その生来の白い色にあり、バイオセンサーの表面上の変色の明確な検出を可能にする背景色としての役割を果たす。
本発明の非限定的な例において、70cmの表面積を有するスキャホールドの表面上に露出したままでいる染料物質の量は、少なくとも40 CFU/mlの微生物の検出を可能にするのに、(少なくとも1.2mg/lのTOCで)十分であった。
いくつかの態様によれば、染料複合体は、300g/モルから1500g/モルの範囲、好ましくは500g/モルから1300g/モルの範囲、より好ましくは700g/モルから1300g/モルの範囲の分子量を有する。
【0022】
取り込み又は埋め込み(これは、染料複合体のスキャホールドへの物理的(機械的)な取り込みであるが)は、スキャホールド形成物質を、スキャホールド形成物質の収縮をもたらす非電解質試薬等の薬品に曝露させることにより達成され得る。非電解質試薬は、水性溶液中でイオンの形態で存在しない、あらゆる化学的物質を表すものと理解される。
収縮は、以下でさらに論じるように、染料複合体の存在下、スキャホールド形成物質の(完全な又は部分的な)脱水によって達成され得る。その結果、染料複合体は、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている又は閉じ込められる。この文脈では、「スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている」ということは、流体中の微生物の存在に応答する染料物質の一部は、スキャホールドから外に露出しているが、それでも染料複合体はスキャホールド中に安定的に閉じ込められていることを意味するものと理解される。
一態様によれば、スキャホールド中の染料複合体の埋め込みは、スキャホールド形成物質をアルカノールに曝露させることによって提供される。したがって、本発明のいくつかの態様によれば、バイオセンサーはアルカノールを含む。
【0023】
本発明の状況では「アルカノール」は、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝、脂肪族又は芳香族のヒドロキシル含有炭水化物を表す。いくつかの態様では、アルカノールはアルコール、例えばC〜C20アルコールである。これは、これに限定されるものではないが、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)tert−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(sec−プロピルアルコール)、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール(sec−ブチルアルコール)を包含してもよい。
好ましい態様では、アルコールはエタノールである。
【0024】
本発明によれば、理論に拘泥するものではないが、スキャホールド及び染料複合体に添加されたアルカノール等の非電解質試薬は、スキャホールドの細孔を収縮させ、それによって、染料複合体を物理的に保持し、例えば流動流体の存在下で、ポリマーのスキャホールドからの染料複合体の拡散を防止するように思われる。
非電解質試薬をスキャホールド形成物質と染料複合体材料の混合物に、流体の形態のときに添加する。この目的のために、成分、すなわちスキャホールド形成物質と染料複合体材料の混合物を加熱する。いくつかの態様では、加熱は、35℃から95℃の間、時には55℃から85℃の間の温度、さらに時には、45℃〜85℃又はさらに65℃から85℃の範囲の温度までである。次いで、所定量の非電解質試薬を添加し、その量は、所望の収縮レベルと相関関係にある。
いくつかの態様では、染料物質と粘土物質をpH4からpH6の範囲で混合する。特定の一態様において、混合は4.5±0.5のpHにおいてである。
このようにして形成された均一な混合物を、次いで、混合物が固体又は半固体構造物を形成する温度まで冷却する。いくつかの態様では、前記温度は、10℃から35℃の間、好ましくは20℃から30℃の間、時には20℃から25℃の間であってもよい。いくつかの態様では、スキャホールド形成物質を染料物質に対して過剰に添加する。一態様では、混合物は、スキャホールド形成物質と染料複合体の間で、2:1、時には3:1、さらに4:1の化学量論比である。
【0025】
固体又は半固体の状態のバイオセンサーは、種々の形態で供給され得る。一態様では、スキャホールド中に埋め込まれた染料複合体は、プレート上の積層物又は層として提供される。この目的のために、流体混合物をプレート等のテンプレート中に、プレートの表面を覆って注型してもよい。積層物の形態のバイオセンサーは、上表面及び底表面を有し、染料物質が少なくとも積層物の上表面に露出しているものと定義できる。
【0026】
前記プレートは、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート又はシクロオルフェイン(cyclo−olfeins)から選択される材料から調製されたマイクロタイタープレート(マイクロプレート又はマイクロウェルプレートとしても知られている)であってもよい。マイクロプレートは、いくつのウェルを有していてもよい。市販のプレートは、6、12、24、48、96、384又はさらに1536個の試料ウェルを含む。
いくつかの他の態様によれば、バイオセンサーは、染料物質が粒子状物質の外側表面に露出している、粒子状物質の形態である。粒子は、公知のスプレー技術又はビーズを形成するのに知られているいかなる他の技術を用いて得られてよい。
粒子状のバイオセンシング材料を、次いで、容器中で適した緩衝液中に懸濁させるか又はカラム中に収納してもよい。粒状の場合、直径は変化してもよく、いくつかの態様では、粒子状物質のサイズ分布は、0.01マイクロメートルから10マイクロメートルであり得る。粒子は、サイズが均一であっても又はサイズが変化していてもよい。
【0027】
バイオセンサーは、単回使用のための使い捨てであってもよく、複数回の試験のために再使用してもよい。複数回使用される場合、使用の間にパージされる。パージは、染料複合体を新規な染料複合体で置換することによって達成される。
バイオセンサーを調製するための方法において、スキャホールドがその細孔中に物質をトラップする能力は、ポリマーの孔径に依存すること、及び細孔のサイズは、スキャホールド形成物質を通常の濃度より高く(製造者によって推奨されたものより高く)用いて調整することができることが判明した。減少された孔径は、スキャホールド中にトラップされた染料複合体の拡散係数(流出量)を低下させる。
したがって、例えば、通常の生育培地寒天は、蒸留水中で1.8%の濃度で使用される(これは、寒天製造者によって推奨された濃度である)が、本発明者らは、寒天中の染料複合体の最適な取り込み(流体がバイオセンサー上を流動した後、染料複合体がバイオセンサーから放出されないという意味の最適)を得るために、流体混合物中の寒天濃度を少なくとも2倍、時には3倍、さらには4倍の増分で増加させるべきであり、特定の例では7.2%まで増加されることを見出している。
【0028】
特定の一態様において、バイオセンサーは、カオリン及び寒天(スキャホールド)中に埋め込まれたテトラゾリウムバイオレットの染料複合体を含む。
寒天は、室温でゲルであり、65℃の高さの温度でも固体のままであることに留意されたい。寒天は、約85℃で溶融し、次いで約45℃未満の温度で、特に32℃から40℃の範囲の温度で凝固する。
この態様に沿って、バイオセンサーは、
(a)カオリン及びテトラゾリウムバイオレットを含む染料複合体を寒天と65℃から85℃の範囲の温度で混合して、染料複合体及び寒天を水性流体の形態に維持する流体混合物を形成するステップと、
(b)流体混合物にエタノールを添加するステップと、
(c)エタノールとの流体混合物を20℃〜25℃の範囲の温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、寒天中に少なくとも部分的に埋め込まれている染料複合体を含むバイオセンサーが形成される方法によって調製される。
【0029】
さらに本開示によって提供されるものは、
−流体連通している、少なくとも1つの流体流入口及び少なくとも1つの流体流出口、
−流体流入口と流体流出口の間に位置するバイオセンシングチャンバーであって、
(i)スキャホールド、
(ii)染料物質と結合した粘土物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーを含む上記バイオセンシングチャンバー
を含む装置である。
【0030】
本発明の態様によるバイオセンシング装置の横断面図を図1に示す。
それに沿って、バイオセンシング装置(10)は、基部(12)及びサイドウォール(14)及び(14‘)、バイオセンシングチャンバー(16)、バイオセンシングチャンバー(16)中のダンピングベイスン(20)に流体を供給するための、サイドウォール(14)近位の基部における流体流入口(18)及びバイオセンシングチャンバー(16)から外に流体を排出するための他方のサイドウォール(14‘)近位の流出口(22)を含む。
バイオセンシングチャンバー(16)は、スキャホールド、及び染料物質と結合した粘土物質を含む染料複合体であって、スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体を含むバイオセンサー(24)を含む。
バイオセンシングチャンバー(16)は、(図1に示すように)1個の又は一連のバイオセンサー(図示せず)を有するように構成されてもよい。1個又は2個以上のバイオセンサーが、一方が他方に隣接して配列され、及び/又は流体がその間を流動することが可能なように一方の上に他方が積層されていてもよい。
場合によってサイレンシングベイスンと称されてもよいダンピングベイスン(20)は、バイオセンシングチャンバー(16)に入る流体を静かにさせる、すなわち、バイオセンシングチャンバー(16)に入る流体の振動が除去されない場合は低減して、バイオセンサー(24)上の流体の薄い静かな層流(26)を形成するために使用される。振動は、流体をバイオセンシング装置中に引き込むためのポンプ(図示せず)のストロークの結果起こり得る。
【0031】
ダンピングベイスン(20)の寸法は、流入口(18)を経由して入り込む流体の振動が最小であり、バイオセンサー上に一定の層流が形成されるように計算される。
バイオセンサー(24)上の層流を維持するためには、2,000未満、さらには1,000未満、時にはさらに好ましくは300から800の間のレイノルズ数(R)を得ることができるような条件を計算することが必要であった(2,000を超えるレイノルズ数は乱流と相関を持つ)。レイノルズ数は、次式により計算される。
【数1】

式中、Qcは体積流量(cm/s)であり;Lは、流体がそれを通って流動する水路の水力半径(cm)であり;Aはフロー断面積(cm)であり;νは動粘度(cm/s)である。
【0032】
これに関しては、2000未満のレイノルズ数の直線水路を通るフローは、通常層流タイプであると考えられ、2000を超えるレイノルズ数は乱流を示すことに留意されたい。
本開示の状況では、層流とは、バイオセンサー上に基本的に均一な深さを有する、バイオセンサー上を流動する流体層の形成を意味し、前記深さは、0.5mm〜10mmの間、さらに1mm〜5mm、さらには1mm〜3mmの間である。
したがって、92.16cm(高さ1.8cm、長さ4.0cm及び幅12.8cm)の体積;及び約0.3cmのバイオセンサー上の流体の深さで特徴付けられる層流を有するダンピングチャンバーに対して、718のレイノルズ数が得られた。
装置流入口(18)及び装置流出口(22)は、流体連通されている。詳細には、流入口(18)は、試験流体をバイオセンサー(24)と反応させるために、バイオセンシングチャンバー(16)中に移動させ得て、流出口(22)は、試験流体をバイオセンシングチャンバー(16)から排出物回収装置(図示せず)に移動させ、又は流体を流入口(18)中に再循環させ得る。
【0033】
いくつかの態様では、当該装置はポンプ(28)を含んでもよく、これは、装置中で流体フローを促進し得て、又は流出口(22)から流入口(18)に流体を再循環するために使用し得る(「循環ポンプ」)。
前記装置は、流体をバイオセンシングチャンバー(16)中に導入し、分析する前に、保持するための貯蔵器(30)を備えていてもよい。貯蔵器(30)は、流体注入系統(32)を経由して流体供給源から流体を受け入れ、流体排出系統(34)を経由して流体を排出する。流体注入系統(32)及び流体排出系統(34)を経由する流入及び流出する流体の制御は、それぞれバルブ(36)及び(38)によって制御してもよい。
【0034】
いくつかの態様では、当該装置は、1つ又は2つ以上の次のユニット:
−例えば、微生物の増殖を維持するための、少なくともバイオセンシングチャンバー中の温度を制御する温度制御ユニット、
−シグナル検出ユニット(シグナル検出ユニットは、色検出器又はUV検出器等を備えた顕微鏡を含んでもよく、これは製造者の説明書に従って使用される)、
−1つ又は2つ以上のバイオセンサーの画像を走査する、例えば、色の光学的走査ためのスキャナ、
−検出器又はスキャナからの入力データを受け取る又はバイオセンサーのシグナル強度を示すパラメータを出力するためのプロセシングユニット(プロセシングユニットは、様々なバイオセンサーのデータベース、及び様々な流体生物付着指数を保有するコンピュータ等のエンドユーザーモジュールの一部であってもよい)、
−流量、温度等を包含する、バイオセンシング装置の操作を制御するための制御ユニット(制御ユニットは、誤作動等を通知するために、既定の限界値を超える生物付着レベルを通知するアラームシステムを備えていてもよい)
を含むバイオセンシングシステムの一部であってもよい。
【0035】
本発明の装置を自動的に運転してもよい。アラームシステムを用いた場合、ヒト操作員の直接的関与は最小化し得る。
制御ユニットは、マイクロプロセッサによって運転してもよく、ソフトウエアで制御し得る。
本開示はまた、
(a)水性流体試験試料を本明細書で定義されたバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)バイオセンサーのシグナル強度(流体試験試料中の生存可能な微生物の存在を示す)を検出するステップと
を含む、流体試験試料中の生存可能な微生物を検出するための方法を提供する。
【0036】
いくつかの態様では、流体は水等の水性流体である。水は、天然の汗水(例えば、泉、不足、池、川等からの)又は天然の塩水、例えば海水、又は処理水、例えば、浄化水、脱塩水、脱塩プロセスにおける水等、又は廃水であってもよい。
「接触させる」とは、水性流体と染料複合体が密着することを保証するように、バイオセンサー上に水性流体の層流を供給する程度までである。
上記のように、バイオセンサーにおけるシグナルは、バイオセンサー上を層流で循環する流体中の生存可能な微生物の存在により決まる、微生物の代謝産物の形成から生じたものである。
以下に例示されるように、シグナル(色)の変化は、バイオセンサー上を流動する流体が、微生物及び適切な栄養の組合せを含んでいる場合のみバイオセンサーの表面上に出現する。これらの要素の一方が欠ける又は循環流体から除去された場合、対照(例えば循環する生理食塩水)に比較してシグナルは出現しない。換言すると、バイオセンサー上の微生物の増殖、すなわち生物付着は、試験流体中に元来存在する食物の存在下の代謝活性にもっぱら起因する。
【0037】
いくつかの態様では、試験流体は、デステネーションプラントで処理された水、例えばROろ過のあらゆるステージの水である。この目的のためには、脱塩プラントにおけるROシステム等の、流体流動システム中の生物付着を予測するための、本明細書に開示されたバイオセンサーを使用することが望ましい。
したがって、
(a)水性流体流動システムからの水性流体試料を本明細書で定義されたバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)バイオセンサーにおけるシグナル強度を検出する(試料に微生物が存在する場合、シグナルはその代謝産物に応答してもたらされ)ステップであって、シグナル強度は流体流動システムの生物付着を形成する可能性と相関するステップと
を含む方法が提供される。
【0038】
本方法の状況において、流体の可能性とは、たとえ生物付着がすでに起こっていなくても、流体中の微生物の存在に起因する、バイオセンサーに付着することが可能な確率を意味するものと理解される。
上記の方法に沿って、バイオセンサー上のシグナル強度と、流体、例えば、例えば脱塩施設におけるRO膜上に成長した生物膜体積(生物体積)によって測定された水質の間には直線的な正の相関関係が存在することが判明した。
【0039】
別の側面によれば、本開示は、
(a)水性流体の1つ又は2つ以上の試料を1つ又は2つ以上の異なる濃度の殺菌剤と接触させるステップと、
(b)殺菌剤を含有する1つ又は2つ以上の試料のそれぞれを、本明細書で定義されたバイオセンサーと接触させるステップと、
(c)1つ又は2つ以上の試料のそれぞれに対する、バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと
(d)シグナル強度が、前記水性流体に対して、又は前記殺菌剤に対して有効な処理であると決定された範囲内にある試料を選択するステップ
を含み、選択された試料に添加された殺菌剤の濃度は、水性流体を殺菌するために必要な濃度である、水性流体を殺菌するために必要な殺菌剤の濃度を決定するための方法を提供する。
【0040】
一般に、浄水プラントで処理された都市の廃水は、約2〜10mg/Lの間で変化する値の濃度のアンモニア(NH)を含む。例えば次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)等の殺菌剤を水に添加した場合、塩素がアンモニアに結合し、クロラミン(NCl、NHCl、NHCl)がもたらされる。
この側面によれば、殺菌剤は、水処理用のいかなる通常の薬品でもよい。
塩素は、水処理に使用するために最も広範に使用されている化学殺菌剤であり、多くの形態で販売されている。水に添加された塩素は、有機及び無機物質、並びに微生物と反応する。処理水によって消費された塩素量は、「塩素要求量」と呼ばれる。塩素要求量が満たされた後に水中に残留する塩素量は、「残留塩素」と呼ばれる。
【0041】
通常の塩素ベースの水処理化合物には、元素の塩素(塩素ガスとして使用される)、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ナトリウムジクロル、ナトリウムジクロロイソシアヌレート(NaDCC)、ナトリウムジクロロイソシアルレート二水和物(NaDCC.2HO)、カリウムジクロロイソシアルレート(KDCC)、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、クロラミン、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化水素、オゾン及びこれらの混合物が包含される。
殺菌剤にはまた、銀、銅、臭素化合物、過ヨウ素酸、光触媒及びその組合せが包含されてもよい。
一態様では、殺菌剤は次亜塩素酸ナトリウムである。
【0042】
水処理溶液を調製するために、固体の化学殺菌剤を予備的に別個の容器中で溶解し、次いで、水処理溶液となる生じた混合物を適切な注入ポンプで汲み出し、処理する水に供給する。
これに関して、逆浸透膜は、クロラミンに対して耐性があるが、塩素に対しては耐性がなく、塩素は膜の表面を酸化し、生成物流量の低下及び流入圧力の増加をもたらすことに留意することが重要である。したがって、遊離の塩素が流入水中に残留し、それによって場合によって膜に損害を与えることを防止するために、次亜塩素酸ナトリウムの注入用量を減少することが非常に重要である。
いくつかの非限定的な例の詳細な説明
材料
以下の例において以下の材料を使用した。
【表4】

システム
バイオセンシング装置の概略図を図1に示す。
総論
各実験の前に、装置を塩素溶液で殺菌し、残留する塩素の痕跡を除去するために蒸留水で数回洗い流した。
(例1)バイオセンサーの開発及び試験
サンプリング位置及び水質
以下の非限定的な例のための水試料は、別な記載がされた場合を除き、Shafdan浄水プラント(Shafdan、イスラエル)から得た。Shafdan浄水プラントは、Dan地区(イスラエル)の市街からの廃水の浄化に対して責任を持ち、
−130ミクロンの前置フィルター
−0.02ミクロンの細孔膜を含む限外ろ過(UF)前処理システム
−90%の回収率を有する、3つの脱塩ステージ(各ステージは先の段階のブラインを脱塩する)を含む逆浸透(RO)システム
を含む、水の脱塩施設を運転する。
【0043】
異なるサンプリング時間及び位置における水のパラメータ(「サンプリング点」)を、AminoLab(イスラエル)で実施した標準的プロトコールによって測定し、表3に要約する。
総有機炭素(TOC)は、標準方法5310B高温燃焼法で測定した。
総細菌数(TBC)は、コロニー形成単位法(CFU/ml)によって測定した。
生物化学的酸素要求量(BOD)は、標準方法5210Β−5日間BOD試験によって測定した。
導電率は、マルチパラメータ分析器Consort C532(ベルギー)によって測定した。
【表5】

バイオセンシング材料の調製
テトラゾリウムバイオレット(0.15mg)を(0.5%の原液濃度を得るために)DDW30mlにボルテックスしながら溶解した(すなわち渦中での混合)。次いで、溶液を0.45μのろ紙を通してろ過することによって滅菌した。ろ液を4℃の温度において、アルミニウムフォイルで包んだ、密閉した試験管中で保管した。
【0044】
2.5%の濃度のカオリン溶液を得るために、カオリン(1.5グラム)を蒸留水60ml中に溶解し、0.1M HClを用いてpHを約4.5のpHに調整した。カオリン溶液を120℃のオートクレーブ中で17分間滅菌し、室温で冷却させておいた。次いで、テトラゾリウムバイオレット原液3mlを添加して、0.025%の濃度を得た。前記溶液を、光が入らないようにアルミニウムフォイルで包んだエルレンマイヤーフラスコ中で24時間撹拌した。
寒天(21.6グラム)を蒸留水240ml中に溶解し、溶液を室温において磁気撹拌機で5分間混合して、9.0%の濃度の寒天溶液を得た。寒天溶液を120℃のオートクレーブ中で17分間滅菌し、次いで寒天溶液を約65℃まで冷却させておいた。次いで、カオリン−テトラゾリウムバイオレット溶液60mlを、寒天溶液がカオリン−テトラゾリウムバイオレット溶液で1:5の比(寒天溶液4部及びカオリン溶液1部)に希釈されるように、寒天溶液に添加して、寒天7.2%カオリン0.5%及びテトラゾリウムバイオレット0.005%の最終濃度を得た。
【0045】
2種の溶液を65℃の一定温度で(一定温度は、温水浴を用いて得られた)10分間混合後、均一な溶液が得て、次いで、3mlのエタノール(EtOH)を均一な溶液に、溶液中で1%のエタノール濃度に達するまで混合しながら添加した。この最終溶液は、以下の例においてバイオセンシング培地と称される。
65℃の温度のバイオセンシング培地を、96ウェルプレート中に注いだ。凝固が生じている間、光への曝露を防止するために直ちにプレートをアルミニウムフォイルでカバーした。
色検出の予備評価
96ウェルプレートを大きな容器に収納し、プレートが流動するのを防止するために、プレートの端に重しをつけた。プレートをサンプリング点1から得られた水の溶液で、プレートの上部表面上1cmの高さまで覆った(プレートを完全に覆うために)。
対照用に、2個のペトリ皿を使用した:一方は無菌の蒸留水、他方は試験水を有する。
【0046】
プレート及び2個の皿をアルミニウムフォイルで包み、温度35℃のインキュベータに入れた。
96ウェルプレートを48時間及び72時間後に写真撮影した。紫色は24時間後にすでにプレート上に検出され、72時間後にはより強くなり、色の強度が、増加した微生物の存在によって影響を受けたことを示していた。対照の皿(生理食塩水のみを有する)を72時間後に撮影した。
【0047】
すべての実験において、以下の条件を維持した。
a.すべての実験を通して栄養を添加せず、あらゆる微生物の増殖は、使用した様々な流体中の栄養から生じたものであった。
b.操作前に、バイオセンサー中で2時間循環される塩素溶液を用いて殺菌を実施し、その後、殺菌剤の残留する痕跡を除去するために、バイオセンサーを蒸留水で数回洗い流した。
c.対照試料には、(i)無菌の溶液、又は(ii)サンプリング点1からサンプリングした水;(iii)サンプリング点1からサンプリングした水であって、それから微生物をろ過して取り出された上記水;及び(iv)サンプリング点1からの水からろ過された微生物を有する生理食塩水を有する同数のウェルが包含されていた。
d.寒天層中にトラップされた蛍光性物質に対する損害を防止するために、可能な限り、バイオセンサーを暗所で操作した。
確認実験
バイオセンサーの活性及び感受性を決定するための実験
【0048】
A.先ず、インキュベータの条件における、プレート中での微生物の増殖を検証した。この目的のために、無菌生理食塩水又はサンプル点1からの水のいずれかを、それぞれペトリ皿上に置いて、インキュベータ中に保持した。
B.次いで、96ウェルプレート中のバイオセンシング材料上の紫色の出現又は出現の欠如を異なる温度で確認するために、表4に特定された異なる試料における試料試験の実験を実施した。本明細書に説明したように(図1も参照されたい)、各試料をバイオセンサー装置中で循環させた。実験をバッチで実施し、各バッチに試料番号/バッチ番号として番号を付けた。循環時間は、48、72又は96時間であり、循環の間、プレートの画像を撮った。さらに、すべての試料に対して、装置中の流体流量は90ml/分であり、試験試料の体積は2Lであった。試験試料を装置中で循環させ、ここでバイオセンシングチャンバーは96ウェルプレートを保持し、各ウェルはバイオセンシング材料を含んでいた。
【表6】

結果
インキュベータ条件における微生物の増殖
培地の色の変化は視覚的に検出された。カメラ(PowerShot A95、Canon)を用いて得られた画像を、300dpiの走査解像力のPerfection 10スキャナ(Espon、日本)を用いて走査した。
【0049】
第1の対照ペトリ皿(無菌の蒸留水を有する)の結果は、培地の色の変化がないことを示し、一方、第2のペトリ皿(サンプル点1からの水を有する)においては、微生物の代謝活性が起こり、これが培地の色の有意な(目視可能)変化、すなわち強い紫色の出現をもたらした。
様々な試料及び条件による変色試験
以下の確認実験において、循環する溶液の極端な状況:微生物を有さない無菌溶液、微生物を含む、栄養を有していない溶液、栄養を含むが、微生物を含まない溶液、及びShafdanの水の溶液を包含する、様々な溶液(表4に示された)をバイオセンサーの表面上に循環させて、様々な状況における色の指示反応を調べた。さらに、異なる温度も試験した。
【0050】
異なる実験に対して得られた結果を表5に示す。
【表7】

上記実験の結果は、微生物と栄養の組合せが存在する場合のみ、紫色がバイオセンサーの表面上に出現したことを示す。循環溶液からこれらの要素の1つが欠けると、色は元のままであった。さらに、循環の期間がより長いほど、バイオセンサーの表面上の紫色の強度及び表面カバー範囲がより大きかった。
したがって、実験の結果は、バイオセンサーの表面上で増殖する微生物の量とバイオセンシング培地上に出現する紫色の量及び強度の間には直線的な依存関係が存在していたことを示している。すべての実験において、バイオセンサーの表面上に現れた場合、紫色は均一であった。さらに、循環の4日後、色はバイオセンシング培地から循環する流体中に洗い流されることはなかった。
【0051】
最後のバッチの実験(バッチ5、これは海水脱塩施設への流入に使用される海水の循環が関与する)は、このタイプの水でも同様に、たとえ72時間より長い循環時間後に始めてであっても、色が出現することを示した。紫色の出現に長時間を要したことは、海水の低いTOCによって説明することができる。これらの結果は、前記バイオセンサーを様々なタイプの流体に使用することが可能であることを示している。
(例2)生物付着指数付け及び検討
【0052】
これらの実験の目的は、生物付着指数を定義すること、及び異なる水源を用いて、生物付着指数に従ったバイオセンサー上の色/強度とRO膜の表面上で成長した生物膜の量の間の相関関係を決定するために生物付着指数を使用することである。
この目的のために、表3で定義された3種の流入溶液(サンプリング点No.3、4及び5)を、バイオセンシングチャンバー中で24時間、又はShafdan施設におけるRO小型模型膜を通して15日間循環させ、RO膜の表面上のこれらの溶液からの実際の生物膜の成長を、バイオセンサー上の成長と比較して測定した。
バイオセンサー上の生物付着の増殖
【0053】
バイオセンサー上の色の変化を、上記のように6回反復して各水試料に対して測定した。
循環条件:循環流量:90ml/分;循環容器体積:2L;循環期間:24時間、温度35℃。
RO膜上の生物付着の増殖
密閉されたチャンバー中に保持された膜を有するデバイス中に装備された、小型模型RO膜(ESNA1−LF、Hydranautics、米国)の表面上で生物膜を成長させた。前記チャンバーは、流体のための供給水流入口、ブライン流出口及び透過水流出口を含み、この場合、圧力は脱塩パイロットの圧流から得る。
膜の表面積は、33.44cm(38×88mm)であった。各水試料に対して3回の反復を前もって決めた(preformed)。
実験の間、生物膜の成長の結果、膜の産出量の起こり得る変化を監視し、記録するために、圧力、水流量、導電率、温度及びpH等のパラメータを記録した。
循環実験(15日の循環)の完了後、膜をチャンバーから取り出し、4℃の温度の滅菌した生理食塩水溶液中で貯蔵した。
生物膜の分析のために、膜の5×5mmのセグメントをそれぞれの試験膜から採取した。各セグメントを0.24%滅菌TRIS溶液(pH7.2)2mlを含むEppendorf試験管中に挿入し、試験管を逆さまに数回緩やかに回転させた。
【0054】
次いで、溶液の一部(1ml)をTRIS溶液の新規な体積(1ml)と3回置き換えることによって膜のすすぎを実施した。各セグメントの置換えの間、試験管を逆さまに数回緩やかに回転させた。
次いで、すすいだ膜を、微生物を染色するために使用される、SYTOベースの染料(Molecular Probes、米国、調製法を下記に説明する)、及び生物体の細胞外高分子表面(EPS)を染色するために使用され、したがって生物体積生成に対するマーカーとして使用されるテトラメチルローダミン(Molecular Probes、米国、調製法を下記に説明する)で染色する。
【0055】
表6は、色調及び励起及び発光下のこれらの染色の波長を示す。
【表8】

染色のために、市販のSYTO染料をTRIS−HClで0.3%(体積/体積)の濃度まで希釈し、70μlのアリコートでEppendorf試験管中に、さらに使用するまで−20℃で保管した。
市販のテトラメチルローダミン染料を5mlの0.1M炭酸水素ナトリウム(NaHCO)中に溶解して、2mg/mlの濃度を得た。この原液をさらに使用するまで−20℃で保管した。
染色のために、テトラメチルローダミンの原液を0.24%TRIS−HClで希釈して、0.2mg/mlの濃度を得た。希釈溶液を70μlの少量のアリコートで−20℃で保管した。
【0056】
すすいだ膜のセグメントを大きなペトリ皿に入れ、35μlのSYTO9を、均一に分布させるように膜セグメント上に添加した。ペトリ皿を密閉し、25分間暗色の環境を維持するためにアルミニウムフォイルでカバーした。
25分後、各染色した膜セグメントを、2mlの0.24%滅菌TRIS溶液(pH7.2)を含むEppendorf試験管中に挿入し、試験管を逆さまに数回緩やかに回転させた。
次いで、溶液の一部(1ml)を新規なTRIS溶液の体積(1ml)と3回置き換えることによって膜のすすぎを実施した。各部分の置換えの間、試験管を逆さまに数回緩やかに回転させた。
【0057】
すすいだ後、セグメントを大きなペトリ皿に入れ、35μlのテトラメチルローダミンを、均一に分布させるように膜の上に添加した。ペトリ皿を密閉し、25分間暗色の環境を維持するためにアルミニウムフォイルでカバーした。
25分後、染色した膜セグメントを前記の通りにすすいだ。
2種の染料物質で染色され、すすいだ膜セグメントを大きなペトリ皿に入れ、50μlのTRIS溶液を膜上に添加した。
顕微鏡分析に先立って、カバーガラス上に1滴の浸漬油を添加した。
共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)(Leica,Microsystems Germany)を用いて膜の検査を実施し、一方、STOY9及びテトラメチルローダミンをそれぞれ、488nm及び532nmの波長で励起した。
結果
生物付着指数
サンプリング点3、4及び5からの3種の測定された溶液の結果を使用して、生物付着指数を得た。
【0058】
循環実験の前の供給水の特性決定:
サンプリング点3/供給水1:微生物量:コロニー生成単位(CFU)/ml−588;総有機炭素(TOC)−14.2mg/l;導電率1,620μmho;pH=6.7;生物化学的酸素要求量(BOD)=6mg/l
サンプリング点4/供給水II:微生物量;コロニー生成単位(CFU)/ml−18,000;総有機炭素(TOC)−39mg/l;導電率4,005μmho;pH=7.19;生物化学的酸素要求量(BOD)=25mg/l
サンプリング点5/供給水III:微生物量:コロニー生成単位(CFU)/ml−48,000;総有機炭素(TOC)−68.5mg/l;導電率6,740μmho;pH=7.42;生物化学的酸素要求量(BOD)=103mg/l。
3種のサンプリング点からの各試験試料(供給水I、II及びIIIと称される)の色強度の解析を定量化し、生物付着指数として指数付けをした。
【0059】
生物付着指数を以下の通り求めた。
生物付着指数=100×PPP×(1−PPP)+(100−LL)×PPP
式中:
生物付着指数−生物付着レベルを定義する数値
PPP(紫色画素百分率)−紫色である画素の百分率(小数)
LL(明度)−強度
図2は、異なる水による色強度(それぞれ6回の反復の平均)を示す。
【0060】
簡単にするため、生物付着指数を、生物付着の範囲に応じて、生物付着スコア、A、B、C、…Fに置き換え、より低い生物付着範囲は、低い生物付着を表し、スコアAと分類される。相関スコアは、表7で特定される。
【表9】

RO膜上の生物付着
サンプリング点からの流体試料をまた、RO膜上の生物付着を決定するために使用した。
SYTO9及びテトラメチルローダミンによるRO膜の染色は、それぞれ、微生物及び細胞外高分子物質(EPS)の存在及び量についての情報を提供した。CLSM画像を走査し、生物膜の生物体積に関して、CLSMデータの量子化(quantization)を可能にするPHLIPソフトウエア(http//sourceforge.net/projects/phlip/)で解析した。図3は、各流体、供給水I、供給水II及び供給水IIIに対して得られた生物体積を示す。
バイオセンサーの結果の信頼性
24時間の水循環後に得られた生物膜指数(図2、これは、生物付着指数(表7)の決定を導いた)、及び水循環の15日後にRO膜上に発生した生物膜の生物体積(図3)の結果に関して統計的t−検定を適用すると、0.9を超える有意の正の相関関係を示した。
(例3):バイオセンサー反応のための最小限の条件の調査
バイオセンサーの感度、すなわち最小限の検知可能なTOC及び微生物濃度を特定するために、サンプリング点No.2からの試料(SP2)を、(3種の希釈溶液(表8)を得るために)生理食塩水で希釈した。すべての試験試料において、pHは7.3であり、BODは<5mg/lであった。
【表10】
【0061】
以下の条件を適用した:循環流量:90ml/分、2Lの循環体積;35℃の温度で循環期間24時間。
結果
バイオセンサー装置中で24時間の循環後、バイオセンサー上に出現する色の強度(紫色)を測定し、生物付着指数を用いてレベルBにランク付けした。したがって、この結果は、本発明のバイオセンサーは低レベルの微生物において、すなわち約3mg/lの低TOC及び78CFU/mlの低微生物数において、生物付着を検出することができるという結論を導いた。
(例4):バイオセンサーの適用
この例の目的は、生物付着を防止するのに必要な次亜塩素酸塩(殺菌剤)の最小量を決定することである。
【0062】
試験水の供給源(Shafdan)は、約2〜10mg/Lの間で変化する値のアンモニア(NH)を含む。次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を添加した場合、クロラミン、例えば、NCl、NHCl、NHClが生成され、これらは生物付着を防止するために使用される。残留塩素は、RO膜に損害を与える。したがって、一方で生物付着を防止し、他方でRO膜への損害を防止するために、最小量の次亜塩素酸ナトリウムを使用することが非常に重要である。
方法
次亜塩素酸塩を溶解して、140mg/Lの原液を得た。この原液の希釈液は、表9に詳述された通りである。希釈液をバイオセンシング装置中で循環する水中に注入し、総塩素濃度を各希釈液に対して測定した。対照として、いかなる次亜塩素酸塩も添加しなかった。
【0063】
循環条件:流量:90ml/分;循環容器体積:2L;循環期間:35℃の温度で24時間
さらに、サンプリング点No.3(SP3)からの水を同時に、膜の表面上に生物膜を成長させるために、小型模型膜施設を通して(上記の通り)15日間流動させた。15日後、生じた生物体積を測定するために、膜を上記のように処理し、解析した。
結果
24時間の循環後の試験試料中の総クロラミン及び生物付着指数を表9に示す。生物付着指数を総塩素の関数として図4に示す。
【表11】
【0064】
次亜塩素酸塩の添加は、生物付着指数の低下(CからBへ)を示した。最小生物付着指数は、1.4[mg/L]以上の総塩素濃度に対して得られ、その場合の生物付着指数は0に近かった(図4)。したがって、有害な塩素の存在物を生じさせることなく、0に近い生物付着のためには、4.2mg/lの次亜塩素酸塩量が生物付着を防止するのに十分であることになる。
クロラミンを含有する流入水によるRO膜上の生物膜の成長
前の結果に基づいて、4.2mg/Lの次亜塩素酸塩の注入によって得られる、1.5mg/Lの総クロラミン濃度を使用することが決定した。ステージI(SP1)流入水中に次亜塩素酸塩を注入する期間は、毎日、1日当たり4時間であった。
15日後、膜を取り外し、CLSM顕微鏡下で検査した。総計4個の膜を検査し、2個を対照(次亜塩素酸塩を添加せず)として使用した。データプロセシングを上記に詳述したのと同様の方法で実施した。
【0065】
図5は、予測装置によって推奨された濃度(1.5mg/L)のクロラミン生じさせるために流入水中に次亜塩素酸塩を注入した場合、各膜上に発生した生物膜の生物体積を、次亜塩素酸塩を有していない同じ流入水中の膜上に発生した生物膜と比較して示す。結果を18個の走査及び計算したポイントの平均として計算した。
図5に示した結果は、4.2mg/Lの次亜塩素酸塩の添加によって得られる、クロラミンの1.5mg/Lの低用量を生じさせると、膜上の生物膜の発生を防止し;生物体積は、次亜塩素酸塩の添加なしで同じ循環条件下で膜の上に発生した生物膜体積の約1/5であったことを示している。
【0066】
図6は、生物膜厚さを示し、クロラミンの存在下(すなわち、次亜塩素酸塩を添加した場合)、15日後の生物膜の厚さは、クロラミンの非存在下で発生した生物膜の厚さの約1/5であったことを示している。
また試験されたことは、4.2mg/Lの次亜塩素酸塩を添加した場合、膜表面上の生物膜の発生を防止する効果であった。320時間の正規化された流量は、影響を示さず、詳細には、透過水流量の低下をステージIにおいても、ステージII及びステージIIIにおいても示さなかったことが見出されている(図7)。次亜塩素酸塩による処理は、膜上の生物付着を減少させたことも判明した(データは示されていない)。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
(a)スキャホールド;
(b)染料物質と結合した粘土物質を含む染料複合体であって、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサー。
[態様2]
染料物質が、発色団又はフルオロフォアから選択される、上記態様1に記載のバイオセンサー。
[態様3]
アルカノールをさらに含む、上記態様1又は2に記載のバイオセンサー。
[態様4]
アルカノールがエタノールである、上記態様1から3までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様5]
スキャホールドが、多糖、ケイ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド又はポリアミドからなる群から選択されるポリマーを含むポリマースキャホールドである、上記態様1から4までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様6]
ポリマースキャホールドが、寒天、キトサン、セルロース、アラビノキシラン、デンプン、グリコーゲン及びキチンからなる群から選択される多糖を含む、上記態様5に記載のバイオセンサー。
[態様7]
多糖が寒天である、上記態様6に記載のバイオセンサー。
[態様8]
染料物質が、微生物の代謝産物の存在に応答する、上記態様1から7までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様9]
染料物質が、微生物の代謝産物の存在下で化学変化を受ける、上記態様8に記載のバイオセンサー。
[態様10]
染料物質が、テトラゾリウム化合物のファミリーに属する、上記態様1から9までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様11]
染料物質が、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(XTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(TTC)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(レッドテトラゾリウム)、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリド(テトラゾリウムバイオレット)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ネオテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ブルーテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロリド](ニトロブルーテトラゾリウム)、又は3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4−4’ビフェニレン)ビス[2,5−ビス(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド](テトラニトロブルーテトラゾリウム)からなる群から選択されるテトラゾリウム化合物である、上記態様10のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様12]
テトラゾリウム化合物が、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリドである、上記態様11に記載のバイオセンサー。
[態様13]
粘土物質が粘土鉱物を含む、上記態様1から12までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様14]
粘土鉱物が、カオリン、スメクタイト、イリテム(Illitem)緑泥石、海泡石及びアタパルジャイトからなる群から選択される、上記態様13に記載のバイオセンサー。
[態様15]
粘土鉱物がカオリンである、上記態様14に記載のバイオセンサー。
[態様16]
粘土物質と染料物質の間の結合が、非共有結合性化学結合を含む、上記態様1から15までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様17]
染料複合体が300g/モルから1500g/モルの範囲の分子量を有する、上記態様1から16までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様18]
染料複合体の埋め込みが、染料物質の少なくとも一部がポリマースキャホールドの外に露出したままであるような、前記ポリマースキャホールドの細孔中への前記複合体の物理的な取り込みを含む、上記態様1から17までのいずれか一項に記載のバイオセンサー。
[態様19]
上表面及び底表面を有する積層物の形態にあり、染料物質が少なくとも前記上表面において露出している、上記態様18に記載のバイオセンサー。
[態様20]
容器中に懸濁された粒子状物質の形態にあり、染料物質が粒子状物質の外側表面に露出している、上記態様19に記載のバイオセンサー。
[態様21]
(a)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体をスキャホールド形成物質と、染料複合体及びスキャホールド形成物質が水性流体混合物の状態にある温度で混合するステップと、
(b)前記流体混合物に非電解質試薬を添加するステップと、
(c)前記非電解質試薬との前記流体混合物を、混合物が凝固する温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、スキャホールド、及び前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている前記染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法。
[態様22]
染料複合体が、染料物質を粘土物質と、前記染料物質と前記粘土物質の間における非共有結合を可能にする条件下で混合することによって形成される、上記態様21に記載の方法。
[態様23]
染料物質と粘土物質の間の混合が、4から6の範囲のpHにおいてである、上記態様22に記載の方法。
[態様24]
pHが4.5±0.5である、上記態様23に記載の方法。
[態様25]
粘土物質が粘土鉱物を含む、上記態様21から24までのいずれか一項に記載の方法。
[態様26]
粘土鉱物が、カオリン、スメクタイト、イリテム(Illitem)緑泥石、海泡石及びアタパルジャイトからなる群から選択される、上記態様25に記載の方法。
[態様27]
粘土鉱物がカオリンである、上記態様26に記載の方法。
[態様28]
染料物質が、発色団及びフルオロフォアから選択される、上記態様21から27までのいずれか一項に記載の方法。
[態様29]
染料物質が、テトラゾリウム化合物のファミリーに属する、上記態様21から28までのいずれか一項に記載の方法。
[態様30]
染料物質が、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド(XTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(TTC)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(レッドテトラゾリウム)、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリド(テトラゾリウムバイオレット)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ネオテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムクロリド(ブルーテトラゾリウムクロリド)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロリド](ニトロブルーテトラゾリウム)、又は3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4−4’ビフェニレン)ビス[2,5−ビス(4−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド](テトラニトロブルーテトラゾリウム)からなる群から選択されるテトラゾリウム化合物である、上記態様29に記載の方法。
[態様31]
テトラゾリウム化合物が、2,5−ジフェニル−3−[α−ナフチル]−1−テトラゾリウムクロリドである、上記態様30に記載の方法。
[態様32]
染料複合体及びスキャホールド形成物質が、35℃から95℃の範囲の温度で混合される、上記態様21から31までのいずれか一項に記載の方法。
[態様33]
スキャホールド形成物質と染料複合体の混合物が、4:1の化学量論比である、上記態様21から32までのいずれか一項に記載の方法。
[態様34]
非電解質試薬がアルカノールである、上記態様21から33までのいずれか一項に記載の方法。
[態様35]
アルカノールがエタノールである、上記態様34に記載の方法。
[態様36]
非電解質との混合物が、10℃〜35℃の範囲の温度まで冷却される、上記態様21から35までのいずれか一項に記載の方法。
[態様37]
スキャホールド形成物質が、多糖、ケイ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド又はポリアミドからなる群から選択されるポリマーを含む、上記態様21から36までのいずれか一項に記載の方法。
[態様38]
ポリマースキャホールドが、寒天、キトサン、セルロース、アラビノキシラン、デンプン、グリコーゲン又はキチンからなる群から選択される多糖を含む、上記態様21から37までのいずれか一項に記載の方法。
[態様39]
多糖が寒天である、上記態様38に記載の方法。
[態様40]
(a)カオリン及びテトラゾリウムバイオレットを含む染料複合体を寒天と、前記染料複合体及び前記寒天を水性流体の形態に維持する、35℃から85℃の範囲の温度で混合するステップと、
(b)前記混合物にエタノールを添加するステップと、
(c)エタノールとの前記混合物を20℃〜25℃の範囲の温度まで冷却するステップと
を含み、それによって、寒天中に少なくとも部分的に埋め込まれている前記染料複合体を含むバイオセンサーが形成される、バイオセンサーを調製するための方法。
[態様41]
a)水性流体試験試料を、
(i)スキャホールド;
(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)前記水性流体試験試料中に微生物が存在することを示す、前記バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと
を含む、水性流体試験試料中の生存可能な微生物を検出するための方法。
[態様42]
接触させることが、15℃から35℃の範囲の温度においてである、上記態様41に記載の方法。
[態様43]
接触させることが、バイオセンサー上の流体の層流を含む、上記態様41又は42に記載の方法。
[態様44]
層流が、300から2,000の間のレイノルズ数によって特徴付けられる、上記態様43に記載の方法。
[態様45]
バイオセンサーが、上記態様1から20までのいずれか一項に記載されたものである、上記態様41から44までのいずれか一項に記載の方法。
[態様46]
水性流体試験試料が水である、上記態様41から45までのいずれか一項に記載の方法。
[態様47]
染料物質が、発色団又はフルオロフォアから選択される、上記態様41から46までのいずれか一項に記載の方法。
[態様48]
流体連通している、少なくとも1個の流体流入口及び少なくとも1個の流体流出口;
前記少なくとも1個の流体流入口と前記少なくとも1個の流体流出口の間に位置するバイオセンシングチャンバーであって、
(i)スキャホールド;
(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーを含む上記バイオセンシングチャンバー
を含む装置。
[態様49]
流入口の後、かつバイオセンシングチャンバーの前にある流体ダンピングベイスンであって、バイオセンサー上の流体の層流を可能にするように構成された上記流体ダンピングベイスンを含む、上記態様48に記載の装置。
[態様50]
温度制御ユニットを含む、上記態様48又は49に記載の装置。
[態様51]
シグナル検出ユニットを含む、上記態様48から50までのいずれか一項に記載の装置。
[態様52]
バイオセンサーが、上記態様1から20までのいずれか一項に記載されたものである、上記態様48から51までのいずれか一項に記載の装置。
[態様53]
染料物質が、発色団又はフルオロフォアから選択される、上記態様48から52までのいずれか一項に記載の装置。
[態様54]
(a)水性流体流動システムからの水性流体試料を、
(i)スキャホールド;
(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(b)前記バイオセンサーにおけるシグナル強度であって、前記流体流動システムの生物付着を形成する可能性と相関する上記シグナル強度を検出するステップと
を含む、流体流動システム中の生物付着を予測するための方法。
[態様55]
接触させることが、バイオセンサー上の水性流体試料の層流を含む、上記態様54に記載の方法。
[態様56]
接触させることが、15℃から35℃の範囲の温度においてである、上記態様54又は55に記載の方法。
[態様57]
層流が、300から2,000の間のレイノルズ数によって特徴付けられる、上記態様54から56までのいずれか一項に記載の方法。
[態様58]
水性流体試料が水である、上記態様54から57までのいずれか一項に記載の方法。
[態様59]
シグナル強度が、予め決定された生物付着指数と比較される、上記態様54から58までのいずれか一項に記載の方法。
[態様60]
シグナル強度が定量的に測定される、上記態様59に記載の方法。
[態様61]
バイオセンサーが、上記態様1から20までのいずれか一項に記載されたものである、上記態様54から60までのいずれか一項に記載の方法。
[態様62]
(a)水性流体の1つ又は2つ以上の試料を1つ又は2つ以上の異なる濃度の殺菌剤と接触させるステップと、
(b)前記殺菌剤を含有する前記1つ又は2つ以上の試料のそれぞれを、
(i)スキャホールド;
(ii)粘土物質及び染料物質を含む染料複合体であって、前記スキャホールド中に少なくとも部分的に埋め込まれている上記染料複合体
を含むバイオセンサーと接触させるステップと、
(c)前記1つ又は2つ以上の試料のそれぞれに対する、前記バイオセンサーのシグナル強度を検出するステップと、
(d)シグナル強度が前記水性流体又は前記殺菌剤に対して有効な処理であると決定された範囲内にある試料を選択するステップと
を含み、選択された試料に添加された殺菌剤の濃度が、前記水性流体を殺菌するために有効な濃度である、水性流体を殺菌するために必要な殺菌剤の濃度を決定するための方法。
[態様63]
水性流体が水である、上記態様62に記載の方法。
[態様64]
接触させることが、バイオセンサー上の水性流体試料の層流を含む、上記態様62から63までのいずれか一項に記載の方法。
[態様65]
層流が、300から2,000の間のレイノルズ数によって特徴付けられる、上記態様64に記載の方法。
[態様66]
接触させることが、15℃から35℃の範囲の温度においてである、上記態様62から65までのいずれか一項に記載の方法。
[態様67]
バイオセンサーが、上記態様1から20までのいずれか一項に記載されたものである、上記態様62から66までのいずれか一項に記載の方法。
[態様68]
シグナル強度が、予め決定された生物付着指数と比較される、上記態様62から67までのいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7