特許第5986601号(P5986601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986601
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】不整地走行用の自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   B60C11/03 E
   B60C11/03 300E
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-124616(P2014-124616)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-2885(P2016-2885A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】三輪 琢也
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−230755(JP,A)
【文献】 特開2012−245934(JP,A)
【文献】 実開昭63−067304(JP,U)
【文献】 特開昭60−199702(JP,A)
【文献】 特開昭60−236808(JP,A)
【文献】 特開2012−030615(JP,A)
【文献】 特開2010−143370(JP,A)
【文献】 特開2010−163144(JP,A)
【文献】 特開2009−196425(JP,A)
【文献】 特開昭55−072404(JP,A)
【文献】 特開2012−025307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用の自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、両側のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって、トレッド展開幅の1/6以上かつ1/3以下の領域であるミドル領域を含み、
前記ミドル領域には、ミドルブロックが設けられ、
前記ミドルブロックの踏面には、タイヤ周方向にのびる補助溝が設けられ
前記ミドルブロックは、第1のミドルブロックと第2のミドルブロックとを含み、
前記補助溝は、タイヤ周方向に沿って直線上にのびかつ、タイヤ周方向の両端が前記第1のミドルブロックの外部に連通している第1の補助溝と、前記第2のミドルブロックの外部に連通することなく終端している第2の補助溝とを含んでいることを特徴とする不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記補助溝の溝深さは、前記ミドルブロックの高さの15%〜35%である請求項1記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第2の補助溝は、前記第1の補助溝よりも溝深さが小さい請求項1又は2に記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記補助溝の溝中心線は、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の一端から他端に向かって、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅の1/3以上かつ2/3以下の領域である中央領域に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記補助溝の溝幅は、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅の15%〜35%である請求項1乃至4のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅は、前記トレッド展開幅の10%〜25%である請求項1乃至5のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第1の補助溝は、溝底、前記踏面からタイヤ半径方向内方に直線状でのびる一対の溝壁、及び、前記溝底と前記溝壁とを円弧で滑らかに継ぐ円弧部を有している請求項1乃至6のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記円弧部の曲率半径は、1〜6mmである請求項7記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記第2のミドルブロックは、前記第1のミドルブロックよりも個数が大きい請求項1乃至8のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記補第2のミドルブロックの個数は、前記第1のミドルブロックの個数の1.5〜2.5倍である請求項1乃至9のいずれかに記載の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたコーナリング性能を有する不整地走行用の自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、不整地路面での直進走行時のトラクション性能を維持しつつ、コーナリング性能を向上させることを目的として、トレッド部のクラウン領域に、タイヤ軸方向に分散して配置された複数のクラウンブロックを具えた自動二輪車用タイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−25307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、不整地走行用の自動二輪車のコーナリング時、タイヤに大きなキャンバー角が与えられるので、主として、トレッド部のミドル領域が路面に接地する。従って、特許文献1のように、クラウンブロックの配置を改善するだけでは、コーナリング性能の向上は十分に期待できない。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トレッド部のミドル領域に配されるミドルブロックを改善することを基本として、優れたコーナリング性能を有する自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用の自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、両側のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって、トレッド展開幅の1/6以上かつ1/3以下の領域であるミドル領域を含み、前記ミドル領域には、ミドルブロックが設けられ、前記ミドルブロックの踏面には、タイヤ周方向にのびる補助溝が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝の溝深さが、前記ミドルブロックの高さの15%〜35%であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝が、タイヤ周方向の両端が、前記ミドルブロックの外部に連通しているのが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝の溝中心線が、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の一端から他端に向かって、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅の1/3以上かつ2/3以下の領域である中央領域に設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝の溝幅が、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅の15%〜35%であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の最大幅が、前記トレッド展開幅の10%〜25%であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝が、溝底、前記踏面からタイヤ半径方向内方に直線状でのびる一対の溝壁、及び、前記溝底と前記溝壁とを円弧で滑らかに継ぐ円弧部を有しているのが望ましい。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記円弧部の曲率半径が、1〜6mmであるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝が、溝幅が一定であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記補助溝が、タイヤ周方向に沿って直線状にのびているのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動二輪車用タイヤは、ミドルブロックを有し、その踏面には、タイヤ周方向にのびる補助溝が設けられている。このようなミドルブロックは、コーナリング中、その補助溝のエッジが路面を引っ掻くことにより、路面に対して大きな摩擦力を発揮し、ひいてはコーナリング性能を高める。
【0017】
また、コーナリング中、補助溝を閉じる向きのミドルブロックの変形は、ミドルブロックのクラウン領域側のブロックエッジを路面に突き立てることができる。本発明のタイヤは、このような作用によっても、コーナリング中に、路面に対して大きな摩擦力を発揮することができる。
【0018】
さらに、補助溝の両側のブロック片は、より大きな遠心力が作用するコーナリング時では、互いに寄りかかるように変形する。これは、コーナリング中のミドルブロックの見掛けの横剛性を高め、コーナリング中の突然の横滑りなどを防止することができる。
【0019】
さらに、上述したミドルブロックは、トレッド展開幅の1/6以上かつ1/3以下の領域であるミドル領域に設けられている。このようなミドル領域は、キャンバー角の大小に関わらず、コーナリング中に路面と接地する領域であるため、上記作用が、より効果的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態を示す自動二輪車用タイヤの断面図である。
図2図1の自動二輪車用タイヤのトレッド部の展開図である。
図3図2の右側のトレッド部の拡大図である。
図4】ミドルブロックのコーナリング時の接地状態を示す断面図である。
図5】第1のミドルブロックの斜視図である。
図6】第2のミドルブロックの斜視図である。
図7】他の実施例を示すトレッド部の展開図である。
図8】さらに他の実施例を示すトレッド部の展開図である。
図9】比較例を示すトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、正規状態において特定される値である。
【0022】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態の不整地走行用の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるトレッド補強層7とを具えている。
【0025】
カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に埋設されたビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0026】
カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75〜90度、より好ましくは80〜90度の角度で傾けて配列されたカーカスコードを有する。このカーカスコードには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。本体部6aと折返し部6bとの間には、硬質のゴムからなるビードエーペックスゴム8が設けられる。
【0027】
トレッド補強層7は、補強コードをタイヤ赤道Cに対して、例えば5〜40度の角度で傾けて配列した少なくとも1枚以上、本実施形態では1枚のベルトプライ7Aで構成される。補強コードには、例えば、スチールコード、アラミド又はレーヨン等が好適に採用される。
【0028】
トレッド部2のトレッド端2t、2t間の外面2aは、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲してのびている。トレッド端2t、2t間の外面2aの展開長さが、トレッド展開幅TWである。
【0029】
図2は、トレッド部2の展開図である。図2に示されるように、トレッド部2は、タイヤ赤道Cを含むクラウン領域Ca、そのタイヤ軸方向両側の一対のミドル領域Ma、及び、ミドル領域Maとトレッド端2tとの間の一対のショルダー領域Saとを含む。クラウン領域Caは、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド展開幅TWの1/3の領域である。ミドル領域Maは、クラウン領域Caの外縁Ceからタイヤ軸方向の両外側へトレッド展開幅TWの1/6の領域である。ショルダー領域Saは、ミドル領域Maの外縁Meとトレッド端2tとの間の領域である。クラウン領域Caは、主に直進走行時、及び、キャンバー角の小さいコーナリング中に路面と接地する領域である。ミドル領域Maは、キャンバー角の大小に関わらず、コーナリング中に路面と接地する領域である。ショルダー領域Saは、主にキャンバー角の大きいコーナリング中に路面と接地する領域である。
【0030】
本実施形態のトレッド部2は、ミドル領域Maにミドルブロック10が、クラウン領域Caにクラウンブロック11が、ショルダー領域Saにショルダーブロック12がそれぞれ設けられている。なお、ブロックがどの領域に属するのかは、ブロックの踏面16の輪郭図形の図心が設けられている位置に基づいて決定される。また、ブロックは、最大深さの溝底から立ち上がった側壁で囲まれて形成されるものであり、例えば、ブロック間を継ぎかつブロック高さの50%未満の高さを有するタイバーは、ブロックに含まれないものとする。
【0031】
図3は、図2の右側のトレッド部2の拡大図である。図3に示されるように、ミドルブロック10は、タイヤ軸方向の一端から他端に向かって、ミドルブロック10のタイヤ軸方向の最大幅Waの1/3以上かつ2/3以下の領域である中央領域Cpを有している。
【0032】
ミドルブロック10のタイヤ軸方向の最大幅Waは、好ましくは、トレッド展開幅TWの10%〜25%である。ミドルブロック10の最大幅Waがトレッド展開幅TWの10%未満の場合、ミドルブロック10の剛性が小さくなり、コーナリング性能が悪化するおそれがある。ミドルブロック10の最大幅Waがトレッド展開幅TWの25%を超える場合、各ブロック間の溝の容積が小さくなり、不整地の泥等に対するせん断力が低下するため、不整地での走行性能が悪化するおそれがある。
【0033】
ミドルブロック10は、その踏面16にタイヤ周方向にのびる補助溝13が設けられている。これにより、本実施形態のミドルブロック10は、補助溝13よりもクラウン領域Ca側に配されたクラウン側ブロック片10aと、ショルダー領域Sa側に配されたショルダー側ブロック片10bとを含む。
【0034】
図4は、図2のX-X部分のミドルブロック10のコーナリング時の断面図である。図4は、コーナリング中にクラウン領域Ca側に遠心力cfが作用している状態の図である。図4に示されるように、このようなミドルブロック10は、コーナリング中、その補助溝13のエッジ13eが路面Rを引っ掻くことにより、路面に対して大きな摩擦力を発揮し、ひいてはコーナリング性能を高める。本実施形態では、ショルダー側ブロック片10b側のエッジ13eが路面Rを引っ掻いている。
【0035】
また、コーナリング中、補助溝13を閉じる向きのミドルブロック10、本実施形態では、クラウン側ブロック片10aの変形は、そのブロックエッジ10eを路面Rに突き立てることができる。本発明のタイヤ1は、このような作用によっても、コーナリング中に、路面に対して大きな摩擦力を発揮することができる。
【0036】
補助溝13の両側のブロック片10a、10bは、キャンバー角が大きい状態となる、より大きな遠心力が作用するコーナリング時では、互いに寄りかかるように変形する。即ち、両側のブロック片10a、10bが1個のブロックを形成するような変形を行う。これは、コーナリング中のミドルブロック10の見掛けの横剛性を高め、コーナリング中の突然の横滑りなどを防止することができる。
【0037】
さらに、上述したミドルブロック10は、キャンバー角の大小に関わらず、コーナリング中に路面と接地するミドル領域Maに設けられているため、上記作用が、より効果的に得られる。
【0038】
図3に示されるように、補助溝13は、本実施形態では、その溝中心線13cが、中央領域Cpに設けられている。これにより、コーナリング時での、ミドルブロック10の両側のブロック片10a、10bの互いに寄りかかるような変形がスムーズに行われるため、コーナリング中の突然の横滑りが、さらに、防止される。本実施形態では、溝中心線13cの全長さが中央領域Cpに設けられているので、上述の作用がより効果的に発揮される。
【0039】
また、ミドルブロック10は、中央領域Cpの両側の領域には、補助溝13が設けられていない。これにより、ミドルブロック10の両側のブロック片10a、10bの剛性がバランスよく確保され、さらに、大きな摩擦力を確保することができる。
【0040】
図1に示されるように、補助溝13の溝深さDは、好ましくはミドルブロック10の高さHの15%〜35%である。補助溝13の溝深さDが大きい場合、ミドルブロック10の両側のブロック片10a、10bの剛性が小さくなり、コーナリング時で、これらブロック片10a、10bの変形が過度に大きくなり、かえって、突然の横滑りなどを防止できないおそれがある。補助溝13の溝深さDが小さい場合、補助溝13のエッジ13eによる引っ掻き力が小さくなり、摩擦力が低下するおそれがある。
【0041】
図3に示されるように、同様の観点より、補助溝13の溝幅Wは、好ましくはミドルブロック10のタイヤ軸方向の最大幅Waの15%〜35%である。
【0042】
補助溝13は、第1の補助溝14と、第1の補助溝14よりもタイヤ周方向の長さが小さい第2の補助溝15とを含んでいる。第1の補助溝14及び第2の補助溝15は、別々のミドルブロック10に設けられている。即ち、ミドルブロック10は、第1の補助溝14が設けられた第1のミドルブロック10Aと、第2の補助溝15が設けられた第2のミドルブロック10Bとを含んでいる。
【0043】
第1の補助溝14は、少なくとも、タイヤ周方向の一端が第1のミドルブロック10Aの外部に連通している。このような第1の補助溝14は、エッジ長さを大きく確保できるため、コーナリング中に、路面に対しより大きな摩擦力を発揮し得る。本実施形態の第1の補助溝14は、タイヤ周方向の両端14t、14tが外部に連通しているため、両側のブロック片10a、10bのコーナリング時での互いに寄りかかるような変形が促進され、とりわけ、キャンバー角の大きなコーナリング中の突然の横滑りが効果的に防止される。
【0044】
第1の補助溝14は、例えば、溝幅W1が一定に形成されている。これにより、ブロック片10a、10bのタイヤ周方向の剛性が大きく確保されるため、エッジ14eの引っ掻き力が大きくなり、より大きな摩擦力が発揮される。
【0045】
第1の補助溝14は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。このような第1の補助溝14は、タイヤの回転を利用して、溝内の不整地路での泥等を効果的に排除することができ、補助溝14のエッジ14eを有効に活用することができる。
【0046】
図5は、第1のミドルブロック10Aの斜視図である。図5に示されるように、第1の補助溝14は、溝底17、第1のミドルブロック10Aの踏面16aからタイヤ半径方向内方に直線状でのびる一対の溝壁18、及び、溝底17と溝壁18とを円弧で滑らかに継ぐ円弧部19を有している。このような円弧部19は、溝底17と溝壁18との間に作用する応力集中を緩和できるため、ブロック剛性を大きく確保し、コーナリング中の突然の横滑りなどを防止する。
【0047】
溝底17は、溝深さが最大となる部分である。本実施形態の第1の補助溝14の溝底17は、溝の長手方向にのびかつ溝の幅方向に対して長さを有さない部分として形成されている。溝底17は、上述のような態様に限定されるものではなく、例えば、溝の幅方向に長さを有しているものでも良い。
【0048】
円弧部19の曲率半径r1が過度に大きい場合、溝底17と溝壁18とを滑らかに接続することができず、かえって、第1のミドルブロック10Aの剛性が低下するおそれがある。このため、円弧部19の曲率半径r1は、好ましくは1〜6mmである。
【0049】
図3に示されるように、第2の補助溝15は、第2のミドルブロック10Bの外部に連通することなく終端している。このような第2の補助溝15は、第2のミドルブロック10Bの剛性を高く確保し、ブロック片10a、10bの過度の変形を抑制して、その溝内に泥等を噛み込むことができる。これにより、キャンバー角が小さいコーナリング時でのグリップ性が向上する。本実施形態の第2の補助溝15は、その溝縁15eが、第2のミドルブロック10Bのブロックエッジ20と略平行に形成されている。これにより、第2のミドルブロック10Bの剛性が大きく確保される。
【0050】
図6は、第2のミドルブロック10Bの斜視図である。図6に示されるように、第2の補助溝15は、第1の補助溝14よりも溝深さD2が小さいのが望ましい。これにより、ミドル領域Maの剛性がさらに高く確保されるため、泥等を確実に噛み込むことができ、キャンバー角が小さいコーナリング時でのグリップ性が、より向上する。このような観点より、第2の補助溝15の溝深さD2は、好ましくは第1の補助溝14の溝深さD1(図1に示す)の40%〜60%である。
【0051】
第2の補助溝15は、本実施形態では、その溝壁15aと溝底15bとが明瞭なエッジ15cによって区分されている。即ち、本実施形態の第2の補助溝15は、溝壁15aと溝底15bとを滑らかな円弧で継ぐ円弧部を有していない。このような第2の補助溝15は、さらに効果的に泥等へのせん断力を高める。なお、第2の補助溝15は、溝壁15aと溝底15bとを円弧部で接続する態様でも良い。
【0052】
図2に示されるように、本実施形態では、第2のミドルブロック10Bは、第1のミドルブロック10Aよりも個数が大きい。これにより、第1の補助溝14及び第2の補助溝15のバランスが確保され、キャンバー角の大小に関わらず、コーナリング性能が維持される。
【0053】
上述の作用を効果的に発揮させるため、第2のミドルブロック10Bの個数N2は、好ましくは第1のミドルブロック10Aの個数N1の1.5〜2.5倍である。本実施形態では、第2のミドルブロック10Bの個数N2は、第1のミドルブロック10Aの個数N1の2倍である。
【0054】
クラウンブロック11は、その踏面11aにタイヤ周方向にのびる補助溝25が設けられている。このような補助溝25は、クラウンブロック11、11間の溝に嵌り込んだ泥等をタイヤの回転力を利用して素早く排出し得る。
【0055】
本実施形態の補助溝25は、タイヤ赤道C上に設けられている。これにより、タイヤ赤道Cを挟んだ両側のブロック剛性がバランス良く確保されるため、左右へのコーナリングをスムーズに行うことができる。
【0056】
本実施形態では、クラウンブロック11は、タイヤ軸方向の最大幅Wbが最も大きい第1のクラウンブロック11Aと、タイヤ軸方向の最大幅Wbが最も小さい第2のクラウンブロック11Bと、第1のクラウンブロック11Aよりも小かつ第2のクラウンブロック11Bよりも大の最大幅Wbを有する第3のクラウンブロック11Cとが設けられている。
【0057】
ショルダーブロック12は、その踏面12aに補助溝28が設けられている。本実施形態の補助溝28は、ショルダーブロック12のブロックエッジ12eと略平行なエッジ28eが形成されている。このような補助溝28は、ショルダーブロック12の剛性を高く確保しつつ路面を効果的に引っ掻くことができるため、不整地路でのコーナリング性能がさらに向上する。
【0058】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されるものでなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0059】
図1の基本構造及び図2の基本パターンを有する自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのコーナリング性能がテストされた。テスト方法は、以下の通りである。
【0060】
<コーナリング性能>
各テストタイヤが、下記の条件で、排気量450ccの不整地走行用の自動二輪車用タイヤの後輪に装着された。なお、前輪には、同じ市販タイヤが装着されている。そして、テストライダーが、不整地路面のテストコースを走行させ、このときのコーナリング時のハンドル応答性、剛性感、及び、グリップ力に関する走行特性がテストライダーの官能により評価された。評価は、10点満点法で表示されている。数値が大きいほど良好である。第1のコーナリング性能は、キャンバー角が小、第2のコーナリング性能は、キャンバー角が中、第3のコーナリング性能は、キャンバー角が大の時の評価である。キャンバー角の大きさは、テストライダーの官能で決定される。
<後輪>
トレッド展開幅TW:172mm
ミドルブロックの高さH:16.0mm
第2の補助溝の溝深さD2/H:20%
サイズ:120/80−19
リム:2.15×19
内圧:80kPa
テストの結果などが表1に示される。
【0061】
【表1】
【0062】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて優れていることが確認できる。また、タイヤサイズやパターン等を変えたタイヤについてもテストを行ったが、同じ結果であった。
【符号の説明】
【0063】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
2t トレッド端
10 ミドルブロック
13 補助溝
16 ミドルブロックの踏面
C 赤道
Ma ミドル領域
TW トレッド展開幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9