(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光は、試料の照射後に試料から散乱された光、前記試料中の化学的プロセスによる化学発光として放出される光、または前記試料にめがけた広帯域光源の指向の後における光の選択的吸収の結果として前記試料を通して透過された光、1つ以上の蛍光標識を含む試料の励起後に蛍光として放出される光、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
前記試料は光源により励起され、前記光源は、レーザ、発光ダイオード(LED)、アークランプ、高輝度電球、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
前記試料は、不連続的なターゲット、ビーズを含む不連続的なターゲット、細胞を含む不連続的なターゲット、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
前記撮像センサは、単一のモノクローム光センサ、光センサの画素アレイ、1次元(ライン)における光センサの画素アレイ、2次元(グリッド)における光センサの画素アレイ、時間遅延積分(TDI)センサ、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
前記撮像センサがTDIセンサである場合、ある期間にわたる光の計測結果は、連続的な時間的期間の間に前記TDIセンサ上で重ね合わされる、請求項9に記載のシステム。
前記単一の分散要素は、回折格子、平面透過格子、平面反射格子、分散プリズム、およびゼロ偏角(直視)プリズム装置を含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
前記光は、試料の照射後に前記試料から散乱された光、前記試料中の化学的プロセスによる化学発光として放出される光、または前記試料にめがけた広帯域光源の指向の後における光の選択的吸収の結果として前記試料を通して透過された光、1つ以上の蛍光標識を含む試料の励起後に蛍光として放出される光、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項16に記載のシステム。
前記試料は光源により励起され、前記光源は、レーザ、発光ダイオード(LED)、アークランプ、高輝度電球、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項16に記載のシステム。
前記複数の試料のそれぞれは、不連続的なターゲット、ビーズを含む不連続的なターゲット、細胞を含む不連続的なターゲット、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項16に記載のシステム。
前記撮像センサは、光センサの画素アレイ、光センサの画素アレイ、1次元(ライン)における光センサの画素アレイ、2次元(グリッド)における光センサの画素アレイ、時間遅延積分(TDI)センサ、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、全般的に、試料からの光のスペクトル特性を検出および計測するためのシステムに、または複数の試料の中に存在する各試料からの光のスペクトル特性をスケーラブルに、同時に、検出および計測するためのシステムに関する。なお、このシステムは分散要素を備える光学トレインと、撮像センサと、を備える。検出および計測される光は、試料の照射後に試料から散乱される光、試料中の化学的プロセスによる化学発光として放出される光、試料にめがけて広帯域光源を導いた後に試料により選択的に吸収される光、または励起後に試料から蛍光として放出される光を含み得る。用途に応じて、試料は、単相流(その組成は時間とともに変化し得る)、ビーズもしくは細胞を含み得るがこれらに限定されない不連続的なターゲット、または液滴を含み得る。
【0018】
本明細書で用いられる「光学トレイン」は、コリメート、拡大、歪曲、フィルタリング、または分散等の集光された光の1つまたは複数の特定の変形を行うために用いられる1つまたは複数の光学要素の機能的グループ化を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる「撮像センサ」は、面に入射する光の空間的パターンを検出し、前記パターンを、前記パターンを表現する出力信号に変換する能力を有する単一要素または複数要素の感光トランスデューサを意味する。なお、前記の検出および変換は規則的な時間間隔で反復的に実行される。
【0020】
「試料(単数または複数)」、「1つまたは複数の試料」、または「対象となる試料(単数または複数)」は単数形または複数形で交換可能に用いられる用語であり、特定の数量に限定されることを意図しない。
【0021】
本発明のシステムの1つの実施形態において、試料は、その組成が時間とともに変化し得る単相流である。
【0022】
本発明のシステムの他の実施形態において、試料は、ビーズまたは細胞を含むがこれらに限定されない不連続的なターゲットである。本明細書で用いられる「ビーズ」は、磁性材料、シリカ、またはポリスチレンを含むがこれに限定されないポリマーを含む、反応性物質に対する基質(substrate)または基材(matrix)としておよび/または診断用途における識別用ラベルとして用いられる微細粒子を指す。本明細書で用いられる「細胞」(単数または複数)は、ヒト、動物、植物、菌類、バクテリア、ウイルス、原虫、酵母、糸状菌、藻類、リケッチア、およびプリオンから選択される細胞を含むがこれらに限定されない真核細胞または原核細胞を指す。
【0023】
本発明のシステムのさらに他の実施形態において、試料は液滴である。本明細書で用いられる「液滴」は、円筒形、球形、および楕円形の他にも、平坦化された形状、伸展化された形状、または不規則な形状、その他を含むがこれらに限定されない任意の形状を有する連続位相内の分離された水性または親油性の位相を意味する。
【0024】
本発明のシステムの1つの実施形態において、1つまたは複数の試料はエマルジョン中に存在する。本明細書で用いられる「エマルジョン」は、少なくとも2つの不混和性の、または部分的に不混和性の液体の安定的な混合物である。一般に、不混和性の液体は2つの異なる位相に分離する傾向を有する。したがって、少なくとも2つの不混和性の、または部分的に不混和性の液体同士の間の表面張力を低下させること、および/または境界面を安定化させることによりエマルジョンを安定化させるために、界面活性剤が添加されてもよい。例えば、エマルジョンは過フッ化炭化水素オイル、シリコンオイル、または炭化水素オイル(石油およびミネラルオイルを含むがこれらに限定されない)等の不混和性オイル中に複数の水性液滴を含み得る。なお、その液滴寸法は直径において約0.5から約5000ミクロンの寸法範囲にある。
【0025】
他の実施形態において、試料は、マイクロ流体装置内のエマルジョン中に存在する。本明細書で用いられる「マイクロ流体装置」は、典型的に例えばミリリットル(mL)、マイクロリットル(μL)、ナノリットル(nL)、ピコリットル(pL)、またはフェムトリットル(fL)等の体積で測定される、および/またはミリメートル(mm)、マイクロメートル(μm)(「ミクロン」とも称される)、ナノメートル(nm)、ピコメートル(pm)、またはフェムトメートル(fm)等の物理的スケールの、微小スケールの液体またはガス流体に対して確定的機能(deterministic function)を実行する手段を可能にする装置である。機能は、混合、分割、分類、過熱、その他を含み得る。マイクロ流体装置は、流体または試料を1つの地点から別の地点へ移送する手段としてマイクロ流体チャネルを備え得、通常、mm、μm、またはnmのスケールの均一な断面を有し得る。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、システムは、光学トレインおよび撮像センサに接合された1つまたは複数のマイクロ流体チャネルに連続する1つまたは複数のマイクロ流体装置を備える。この実施形態の1つの態様において、1つまたは複数の試料は、エマルジョン中に存在し、1つまたは複数のマイクロ流体装置と1つまたは複数のマイクロ流体チャネルとを通って流れる。任意の態様において、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通って流れる間に、1つまたは複数の試料は、システムに存在する光学トレインおよび撮像センサにより検出および分析される。1つまたは複数の試料は、正圧もしくは負圧の圧力源(例えば加圧されたまたは真空化された空気貯蔵槽)もしくはシリンジポンプ、重力、または向心力による作用を受けることにより流れる。なお、圧力源は、任意のガスまたはガスの組み合わせ(例えば空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、その他)および任意の液体または液体の組み合わせ(例えば水、緩衝液、オイル、その他)を含むがこれらに限定されない任意の流体または流体の組み合わせを含む。それにより、1つまたは複数の試料は、1つまたは複数のマイクロ流体装置および1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通って流れ、または流動し、本明細書において、「流動試料」(単数または複数)または「ストリーム試料」(単数または複数)と呼称される。
【0027】
本発明のシステムの1つの実施形態において、1つまたは複数のマイクロ流体チャネル内の流動試料(単数または複数)は、そのスペクトル特性が測定されるべき連続位相液体を含み得る。他の実施形態において、1つまたは複数のマイクロ流体チャネル内の流動試料(単数または複数)は、流体中に保持された細胞またはビーズの懸濁液を含み得る。他の実施形態において、流動試料(単数または複数)が光源で照射されると、特徴的な色の光を含む散乱が生じる。さらに他の実施形態において、流動試料(単数または複数)は、光源からの光が係る流動試料を通って通過すると、特徴的な色の光を選択的に吸収する。さらに他の実施形態において、流動試料(単数または複数)は化学発光により光を放出する。
【0028】
米国特許第8,047,829号および米国特許出願公開第20080014589号に説明されるもの等、マイクロ流体チャネルおよびそのネットワークの構築のための多様な方法および物質が存在し、これらは当業者により知られ理解されるであろう。なお、これらの特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。例えば、マイクロ流体チャネルは、簡単なチューブを用いて構築され得るが、開放チャネルを備える1つの厚板の表面を第2の平坦な厚板にシールすることをさらに含み得る。マイクロ流体チャネルの形成に用いられ得る物質は、シリコン、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコン、およびポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMAまたは「アクリル樹脂」として知られる)、環状オレフィンポリマー(COP)、および環状オレフィンコポリマー(COC)等のプラスチックを含む。同じ物質は、第2シール用厚板のために用いられ得る。2つの厚板のための物質の適合した組み合わせは2つの厚板をシールするために用いられる方法に依存する。マイクロ流体チャネルは、試料がマイクロ流体チャネルを通って流れるときに、必要に応じて試料の光励起(例えば蛍光を生じさせる)または照射(例えば選択的吸収を生じさせる)を可能にするために、および試料からの光のスペクトル特性の光学的検出を可能にするために、必要に応じて光学的に透明な物質に包装され得る。高い光学的な透明度および低い自家蛍光を示す係る光学的に透明な物質の好適な例は、ホウケイ酸ガラス(例えばSCHOTT BOROFLOAT(登録商標)ガラス(ニューヨーク州エルムズフォードのSchott North America))および環状オレフィンポリマー(COP)(例えばゼオノア(登録商標)(ケンタッキー州ルーイビルのZeon Chemicals LP))を含むがこれらに限定されない。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、システムは、励起後に1つまたは複数の試料により放出される蛍光の波長および強度の検出および計測を提供する。なお、蛍光標識された試料は蛍光物質の異なる色および強度の組み合わせにより特定される。蛍光物質は「蛍光標識」または「フルオロフォア」または「蛍光染料」として呼称され、「蛍光標識された試料」を説明するときに用いられるこれらのそれぞれは、特定波長の光からエネルギを吸収し次いでこのエネルギを特定の分子または量子ドットに対する他の波長特性の蛍光として放出する能力を有する蛍光分子、蛍光半導体ナノ粒子(「量子ドット」と呼称される)、またはキレート化されたランタニドもしくはランタノイドであり得る。このように、フルオロフォアは、対象となる特定ターゲットが試料中に存在するか否かを示す最終的なアッセイ測定を支援するであろう。この実施形態の1つの態様において、蛍光標識された試料は液滴中に存在する。他の態様において、蛍光標識された試料は離散的粒子中に存在するか、または離散的粒子上にコーティングされて存在する。1つの事例において、離散的粒子は細胞である。他の事例において、離散的粒子はビーズである。他の態様において、蛍光標識された試料は単相流中に存在する。
【0030】
用いられる特定のフルオロフォアは本発明に不可欠ではない。フルオロフォアは当該技術分野において既知であり、例えばMarras, ”Selection of Fluorophore and Quencher Pairs for Fluorescent Nucleic Acid Hybridization Probes”, In: V. Didenkoら. 2006. Fluorescent Energy Transfer Nucleic Acid Probes: Designs and Protocols (Methods in Molecular Biology, vol. 335). New Jersey: Humana Press Inc., pp.3−16により説明されている。本発明において用いられ得るフルオロフォアの例は、Marras 2006および本明細書で以下にさらに説明されるものを含むがこれらに限定されない。当業者は、蛍光標識として機能し、本発明において用いられ、且つ様々な商業ベンダーから入手可能である様々な蛍光染料を認識するであろう。
【0031】
本発明において用いられ得る蛍光染料の例は、フルオレセインおよびその誘導体(例えばフルオレセインイソチアネート(FITC)、カルボキシフルオレセイン(FAM)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、2’,7’−ジフルオロフルオレセイン(Oregon Green(登録商標)488)、Oregon Green(登録商標)514カルボン酸、およびクロロ置換基ならびにメトキシ置換基を有するフルオレセイン(JOEおよび6−JOE))と、ローダミン誘導体(例えばテトラメチルローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、テトラメチルローダミン(TMR)、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、Texas Red(異性体スルホニルクロリドとスルホロダミンとの混合物;Invitrogen(登録商標)社)ならびにTexas Red−X(追加的な7原子アミノヘキサノイルスペーサー(「X」)をフルオロフォアとその反応性基との間に含むTexas Redサクシニミジルエステル;Invitrogen(登録商標)社)およびローダミンX)と、シアニン(Cy)染料(例えばCy3、Cy5、Cy5.5)ならびにシアニン誘導体(例えばインドカルボシアニン(Quasar(登録商標)570、Quasar(登録商標)670、およびQuasar(登録商標)705)、Oregon Green(登録商標)イソチオシアネート、およびエオシンイソチオシアネート(EITC))と、N−ヒドロキシスクシンイミジル 1−ピレンブチレート(PYB)と、N−ヒドロキシスクシンイミジル 1−スルホネート(PYS)と、(5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン(EDANS)と、CAL Fluor(登録商標)Gold540、CAL Fluor(登録商標)Orange 560、Fluor(登録商標)Red 590、CAL Fluor(登録商標)Red 610、およびCAL Fluor(登録商標)Red635(Biosearch Technologies社から入手可能な特許で保護されたフルオロフォア)と、VIC(登録商標)と、HEX(登録商標)(6−異性体ホスホラミダイト)と、NED(登録商標)と、を含むがこれらに限定されない。
【0032】
用いられる特定の量子ドット(QD)は本発明に不可欠ではない。量子ドットは当該技術分野において既知であり、例えば、Hanら, ”Quantum−dot−tagged Microbeads for Multiplexed Optical Coding of Biomolecules”, Nat Biotechnol (2001年7月) vol. 19, pp. 631−635により説明される。当業者は、蛍光標識として機能し、本発明において用いられ、且つ様々な商業ベンダーから入手可能である様々な量子ドットを認識するであろう。本発明で用いられ得る量子ドット(QD)の例は、カドミウムセレン化物(CdSe)量子ドットナノ粒子(例えばCdSe量子ドットコア、480−640nm発光スペクトル、Sigma−Aldrich(登録商標))と、硫化カドミウム(CdS)量子ドットナノ粒子(例えばCdS量子ドットコア、380−480nm発光スペクトル、Sigma−Aldrich(登録商標))と、硫化亜鉛キャップ化カドミウムセレン化物(ZnS−capped CdSe)ナノ結晶(例えばCdSe/ZnS Lumidot(登録商標)およびCdSe/ZnS NanoDot(登録商標)、480−640nm発光スペクトル、Sigma−Aldrich(登録商標))と、カドミウムフリー量子ドット(例えばCFQD(登録商標)、400−650nm発光スペクトル、Sigma−Aldrich(登録商標))と、を含むがこれらに限定されない。
【0033】
用いられる特定のキレート化されたランタニドまたはランタノイドは本発明に不可欠ではない。ランタニドおよびランタノイドは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)の原子番号57から71を有する15個の金属化学元素を含むことが当該技術分野において知られている。本発明で用いられ得るキレート化された形態のランタニドまたはランタノイドの例は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)を含むがこれらに限定されない。
【0034】
本発明の他の実施形態において、システムは、試料中の1つまたは複数の化学的プロセスにより化学発光として放出される光の検出および計測を提供する。この実施形態の1つの態様において、化学発光試料は液滴中に存在する。他の態様において、化学発光試料は離散的粒子中に存在するか、または離散的粒子上にコーティングされて存在する。1つの事例において、離散的粒子は細胞である。他の事例において、離散的粒子はビーズである。他の態様において、化学発光試料は単相流中に存在する。
【0035】
化学発光反応の典型的な例は不安定な有機過酸化物の触媒的形成を含み、不安定な有機過酸化物がより低いエネルギ状態に崩壊するとき、係る触媒的形成により単一の光子が放出される。化学発光化合物の一般的な例はルミノール(CAS番号521−31−3)であり、ルミノールは、酸化剤(例えば、過酸化水素はフェリシアン化カリウムで触媒されると酸素が生成される)および過酸化物塩の存在下で化学発光反応を生じさせる。化学発光の診断用途の分野における例は、ルミノールを使用してヘモグロビンを検出する場合のように化学発光反応に対する触媒として機能する酵素の濃度を計測する例、および化学発光の相補的な結合パートナーを用いる免疫アッセイの場合のように化学発光化合物が直接的に試薬にラベルされる例を含むがこれらに限定されない。当業者は、例えばK.およびR. Van Dyke eds. 1990, Luminescence Immunoassay and Molecular Applications, Boca Raton: CRC Pressに記載の例を含む、化学発光反応のこれらのおよび他の多数の例について知り、係る例を認識するであろう。
【0036】
本発明の他の実施形態において、システムは、例えば広帯域光源(ただしこれに限定されない)による試料の照射後の特徴的な色の光を含む散乱光の検出および計測を提供する。この実施形態の1つの態様において、試料は液滴中に存在する。他の態様において、試料は離散的粒子中に存在するか、または離散的粒子上にコーティングされて存在する。1つの事例において、離散的粒子は細胞である。他の事例において、離散的粒子はビーズである。他の態様において、試料は単相流中に存在する。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態において、システムは、広帯域光源が試料にめがけて導かれたときに試料が特定の特徴的な色すなわち波長の光を吸収すると同時に他の色すなわち波長が試料を通って通過または透過される際に、試料を通って透過される光の検出および計測を提供する。この実施形態の1つの態様において、試料は液滴中に存在する。他の態様において、試料は離散的粒子中に存在するか、または離散的粒子上にコーティングされて存在する。1つの事例において、離散的粒子は細胞である。他の事例において、離散的粒子はビーズである。他の態様において、試料は単相流中に存在する。
【0038】
本発明にしたがって構築されたシステムの1つの実施形態を示す
図1を参照する。このシステムは、全般的に参照番号1−100により示され、「システム」または「検出システム」として呼称される。なお、これらの用語の両方は、この事例および以下に説明する他の事例を通じて、交換可能に用いられる。システム1−100は対象となる試料のスペクトル特性の検出および計測を実行するための器具を提供する。システム1−100は以前におよび以下に説明するように他のタイプの試料のスペクトル特性(例えば化学発光、散乱光、または透過光)を検出および計測するためにも用いられ得るものであり、したがって蛍光標識された試料をエマルジョン中に含む液滴において蛍光を検出および計測するための
図1におけるシステム1−100は例示目的のみのために説明されたものである。
【0039】
システム1−100は、マイクロ流体チャネル203に連続する1つまたは複数のマイクロ流体装置202を含むマイクロ流体ハウジング200を備える。対象の試料(この事例においては蛍光標識された試料を含有する液滴を含むエマルジョン)はマイクロ流体装置202に導入され、1つまたは複数のマイクロ流体装置202を通ってマイクロ流体チャネル203に流れる。
図1に示すシステム1−100の代替的な実施形態ならびに他の事例で説明されるシステムにおいては、試料は離散的粒子(例えば細胞またはビーズ)中に存在し得るか、もしくは離散的粒子上にコーティングされて存在し得、または以前および以下に説明するように単相流として存在し得る。
【0040】
本実施形態のマイクロ流体チャネル203は、光励起と蛍光の検出および計測とを可能にするために、必要に応じて、光学的に透明な物質内に包装され得る。
図1に図示するシステム1−100の代替的な実施形態、ならびに以下の他の事例で説明するシステムにおいて、マイクロ流体チャネル203は、以前および以下に説明するように、マイクロ流体チャネル203を通って流れる対象となる試料の他のスペクトル特性(例えば化学発光、散乱光、または透過光)の検出および計測のための適切な照射および観察を可能にするために、光学的に透明な物質内に包装され得る。
図1に図示するこの事例において、マイクロ流体チャネル203を通って流れる液滴は検出エリア201と交差し、この検出エリア201において試料は本明細書でさらに詳細に説明するシステムの1つまたは複数の光学要素により検出および分析される。
【0041】
本発明に係るシステムの代替的な実施形態は、それぞれが2つ以上のマイクロ流体チャネルに連続する1つまたは複数のマイクロ流体装置をさらに備え得る。なお、係る実施形態において複数の試料は複数のマイクロ流体チャネルを介して検出エリアに導入される。係る実施形態において、マイクロ流体装置全体は、必要に応じて、本明細書でさらに詳細に説明する1つまたは複数の光源により照射され、それにより、いくつかのマイクロ流体チャネルにおいていくつかの検出エリアで同時に多数の試料が励起または照射されることとなる。
【0042】
図1のシステム1−100は、必要に応じて、対象となる試料の励起または照射のための光源101をさらに備える。本発明のいずれの実施形態に用いられる光源101も、レーザ、発光ダイオード(LED)、アークランプ、および高輝度電球を含むがこれらに限定されない。当業者は、様々な商業ベンダーから入手可能であり且つ本発明に利用され得る様々な光源を認識するであろう。当業者は、アークランプおよび高輝度電球が、本明細書でさらに説明する検出波長をブロックするための付随するフィルタを必要とすることをさらに認識するであろう。
【0043】
光源101は特徴的なスペクトル成分を有する光ビーム105を放出する。光ビーム105はミラー102および103により誘導され、レンズ104により集束され、その結果、検出エリア201と一致する照射エリアが形成される。なお、この照射エリアは、試料を含有する液滴がマイクロ流体チャネル203を通って流れる間に検出エリア201と交差すると液滴中で蛍光(この事例において)を励起させる。代替的に、光ビーム105は対物光学部品401を通して同軸状に導入され得る。いずれの場合にも、蛍光標識された試料(この事例において)は、全般的に光源101の波長よりも大きい波長を有する蛍光を任意のおよび全部の方向に放出する。蛍光の放出されたスペクトルは励起波長以下の波長を含み得るが、しかし係る領域の蛍光スペクトルが検出されることは実際問題としてまれである。
【0044】
図1のシステム1−100の代替的な実施形態、および他に説明する他の事例において、光源により放出され且つ本明細書で説明する構成要素により誘導および集束される光ビームは、試料の照射を、または試料における光の選択的吸収を生じさせるために用いられ得、それにより、以前および以下に説明するように試料からの散乱光または透過光が発生することとなる。対象となる試料が外部光源による励起がなくとも試料中の化学反応の結果として光を放出する化学発光物質を含有する追加的な代替的実施形態においては、係る試料のスペクトル特性の検出および計測は、
図1のシステム1−100の場合と同様の方法で可能であるが、構成要素101〜104により示される励起用光源は、不必要となり、係る事例において取り外され得る。
【0045】
対物光学部品401は、対象となる試料から発する光の下向きに指向される部分を集光し、その光を準平行または実質的に平行な光線のビームにコリメートする。なお、係る光線は本明細書においてコリメート光ビーム450と呼称される。対物光学部品401は例えばOlympus、Nikon、およびKowa Optimed社等のベンダーから商業的に入手可能な光学部品から選択され得る。OlympusのUPLSAPOシリーズまたはNikonのCFIシリーズは対物光学部品の好適な例であるが、当業者は対物光学部品401として使用され得る商業的に入手可能な、または特製/特注の光学部品が適用可能であることを認識するであろう。
【0046】
このように形成されたコリメート光のビームは、放出ビーム450の形で、フィルタ402を通過する。フィルタ402は励起光の大部分すなわち実質的に全部を放出ビーム450から除去する。この実施形態の1つの事例において、フィルタ402は、実質的に光源101の波長を有する光を除去する一方で蛍光標識された試料により放出される光(すなわち本明細書に説明する他の実施形態と同様に化学発光、散乱光、または透過光の形態における試料からの光)を含む実質的に全部の他の光を検出および計測のために残すことを可能にするノッチフィルタである。
【0047】
この実施形態の他の事例において、フィルタ402は、光源101の波長と実質的に同じ波長を有する光と、光源101の波長よりも実質的に小さい波長全部の光とを除外し、それにより実質的に光源101の波長よりもほぼ大きい波長を有する光(係る光は蛍光標識された試料により放出される光(または本明細書で説明する他の実施形態の場合における化学発光、散乱光、または透過光の形態の試料からの光)を含み得る)のみを検出および計測のために残すことを可能にする、ロングパスフィルタである。
【0048】
フィルタ402は、対物光学部品401とマイクロ流体ハウジング200との間または分散要素403とカメラレンズ404との間等、異なる位置にも配置され得る。構成要素401〜404は本明細書において「光学トレイン」420と総称される。いずれの実施形態においても、フィルタ402は、光源101の励起光の全部または大部分をブロックすなわち拒否することにより励起光が撮像センサ501に到達することを効果的に阻害するという同一の効果を有するであろう。一方、結果として生成される画像(本明細書でさらに説明する)がスペクトル分散されるため、撮像センサに到達する比較的少量の光は、当業者により知られ認識されるように、必ずしも問題を生じさせるものではなく、波長較正のために有利に使用され得る。したがって、フィルタ402のブロック品質すなわち拒否品質は特に高くなくともよい。
【0049】
フィルタ402を通過した後、光は引き続き分散要素403を通過する。この分散要素403は光の構成色にしたがって光を角度分散させる。なお、
図1において係る構成色は分散光線452の形態で表される。分散要素403は、例えば、
図1に図示する分散プリズムであり得るか、または代替的に、刻線型もしくはホログラフ型、レプリカ型、またはボリューム型(volume type)の製造を含むがこれらに限定されない平面透過格子または平面反射格子等の回折格子であり得る。分散要素403は米国特許第5,862,001号に記載のゼロ偏角(「直視(direct view)」とも呼称される)プリズム装置であり得、同特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。他の分散(光学)要素も、当業者に明らかであるように、且つ当業者に認識されるように、用いられ得る。分散光線452はカメラレンズ404によりキャプチャされる。このカメラレンズ404は、結果として生成される分散光451を撮像センサ501上に集束させる。1つの実施形態において、カメラレンズ404はKowa Optimed社から商業的に入手可能であるLM35JC10M 35mm焦点距離レンズを含むJC10Mシリーズから選択される。当業者は、カメラレンズ404として使用可能である商業的に入手可能な製品およびカスタム設計の製品を認識するであろう。反射光学部品(レンズ)を使用する上述の光学トレイン420が全体的にまたは部分的に屈折光学部品(ミラー)を用いて実質的に同一の機能を有する状態で実装され得ることを当業者は認識するであろう。
【0050】
代替的な実施形態において、撮像センサ501における分散画像は、円筒レンズ等のアナモルフィック光学部品を分散要素403付近の位置において分散要素403に代わって用い、リニアバリアブルバンドパス干渉フィルタ(LVF)を撮像センサ501と接触してまたは撮像センサ501の近傍に配置することにより、分散要素403を用いることなく取得され得る。アナモルフィック光学部品は、試料の細長い画像がセンサ501の分散軸502に沿って拡大されるよう指向され得、LVFは、波長伝送勾配(wavelength transmission gradient)が分散軸502に沿って指向された状態で細長い画像に沿って配置され得る。この代替的な実施形態は、実施可能ではあるが、細長い画像に沿った各点におけるバンド外(out−of−band)の光がLVFにより反射されて失われ、試料から放出され光全体のうちごくわずかな量のみが実際に検出されるために、その比較的非効率性により、他の実施形態に較べてあまり好適ではない。当業者は、例えばカリフォルニア州ミルピタスのJDS Uniphase社、コロラド州ボルダーのResearch Electro Optics社、および他多数のベンダーから商業的に入手可能な装置およびコーティングを含む、本発明の使用に対して利用可能である好適なLVF装置およびコーティングについて知り、係る装置およびコーティングを認識するであろう。アレイセンサ上に直接的にLVFフィルタを製造することを含むLVF技術は米国特許第5,159,199号に記載され、同特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。
【0051】
撮像センサ501は、検出エリア201に存在する試料からの分散光451の画像をキャプチャするよう、配置される。分散光451は、そこに含まれる光の構成色にしたがってスペクトル分離されているため、撮像センサ501は入射光の空間分布および強度に対してのみ感度を有すればよく、その色成分を識別する必要はない。撮像センサ501はカメラに内蔵され得る。それにより、画像カメラ500として
図1に図示されるように、センサを制御し分析のために出力をデジタル化するための光遮蔽性のハウジングおよび電子機器回路が提供されることとなる。
【0052】
撮像センサ501でキャプチャされる分散画像のスペクトル拡散が画像自体の寸法と比較して比較的大きく、且つ検出される光の色成分が実質的に離散的な波長を全般的に含むならば、試料の複数の離散的な画像は撮像センサ501の軸502に沿って実質的に離散的に検出されるであろう。撮像センサ501における画像のスペクトル拡散が小さくなると、離散的波長の画像が重なり始めるであろう。加えて、蛍光標識に用いられる典型的な染料は離散的波長放出を有さないが、むしろ、波長の範囲にわたって拡散する特徴的な発光スペクトルを有する。蛍光性の試料以外のタイプにおける対象となるスペクトル特性も、波長の範囲にわたって拡散するスペクトルシグネチャにより特徴付けられ得る。さらに、スペクトルシグネチャの組が同時に重なり合って検出される事例において、カメラレンズ404により生成されるそれぞれの画像も重なり合うであろう。しかし、生成される画像は本明細書でさらに説明される数学的な成分分解(decompoenting)により分離され得る。
【0053】
撮像センサ501により検出される画像は、検出エリア201において試料中に存在する蛍光染料(この事例における蛍光標識された試料の場合)の組み合わせに基づく。したがって、検出される画像は、液滴(この事例において)中に含まれる蛍光染料の特徴的な発光スペクトルの、それぞれの染料濃度による重ね合わせであり得る。複数の吸収スペクトルまたは複数の化学発光スペクトル等の他のスペクトル特性も、試料の個々の構成要素の効果の重ね合わせとして検出され得る。したがって、数学的な成分分解は、液滴中に存在する各蛍光染料の正体および濃度を判定する場合と同様に、撮像センサ501によりキャプチャされる画像に基づいて試料中の複数の構成要素の正体および濃度を判定するために用いられ得る。当業者に認識されるように、蛍光標識された試料の信号に対する数学的な成分分解のプロセスは、既知の特徴的な蛍光発光スペクトルの組とともに撮像センサ501によりキャプチャされる画像を取得することと、既知の発光スペクトルの強度の組み合わせを判定することと、を含む。なお、係る既知の発光スペクトルの強度の組み合わせを重ね合わせると、撮像センサ501によりキャプチャされる画像が生成されることとなる。用いられる特定の染料に対する適切なこの成分分解を達成するために用いられ得る、線形回帰を含む数学的技法の範囲は、当業者により知られ、認識されるであろう。
【0054】
1つの実施形態において、対象となる試料(例えばこの事例における蛍光標識された試料を含む液滴)は、放出ビーム450が分散光学部品403において分散される方向に対して略直角な方向に検出エリア201を通って流れる。この構成を用いる場合、各試料の瞬間的な信号は、撮像センサ501において、試料により放出される光の特定波長により決定される様々な位置において撮像センサ軸502に沿って分布される強度が変化する1つまたは複数の画像の形態で生成される。撮像センサ軸502の方向に沿った画像位置は放出光のスペクトル成分のみの関数である。マイクロ流体チャネル203内の液滴の移動に対して、分散画像の組も撮像面にわたってセンサ軸502に直角な方向に比例的に移動する。したがって、移動する液滴の、センサ軸502に平行な撮像センサ501の平面における単一ラインに沿って取られた観察は、そのラインに沿って分布する蛍光強度が変化するパルスの形態となるであろう。さらに、検出エリア201において放出される波長と、時間とともに変化せず且つ特定試料の移動に依存しない観察のラインに沿って撮像センサ501において生成される観察される画像の位置とを関係付ける関係性が撮像センサ501において確立され得る。
【0055】
代替的な実施形態において、対象となる液滴または他の試料は、放出ビーム450が分散光学部品401において拡散される方向に対して実質的に平行な角度または直角な角度を含む
図1に示すものとは異なる角度に指向された1つまたは複数のマイクロ流体チャネル203内で、検出エリア201を通過して流れる。この実施形態において、特定場所で計測される放出光の蛍光強度の変化は、検出エリア201における対象となる液滴または他の試料の動きと、液滴中の蛍光標識された試料により放出される色の光(または本明細書で説明される他の実施形態の場合では、化学発光、散乱、もしくは透過の形態で試料から放出される色の光)との両方の畳み込みを表す。
【0056】
前述のように、本発明のシステムの代替的な実施形態において、対象となる試料はマイクロ流体チャネル203内における単相流の流体である。係る実施形態における対象となる試料の観察は、撮像センサ501における連続的に検出される強度のパターンの形態となるであろう。この流体のストリームがその組成にしたがって変化するスペクトル特性を有し、その組成が時間とともに変化するならば、撮像センサ501において計測される強度のパターンも変化するであろう。しかし、単相流試料のスペクトル特性の検出および計測は、
図1のシステム1−100に対して説明したエマルジョン中の液滴の場合と実質的に同様の手法で検出および計測され得る。
【0057】
前述のように、本発明のシステムの他の代替的な実施形態において、対象となる試料はマイクロ流体チャネル203内を流れる細胞もしくはビーズ、または細胞もしくはビーズの懸濁液である。係る試料のスペクトル特性の検出および計測は、
図1のシステム1−100に対して説明したエマルジョン中の液滴の場合と実質的に同様の手法で検出および計測され得る。
【0058】
前述のように、本発明のシステムの他の代替的な実施形態において、対象となる試料は、外部光源による励起がまったくなくとも内部の化学反応の結果として光を放出する化学発光物質を含む。係る懸濁液のスペクトル特性の計測は、構成要素101から104により示される励起光源に対する必要性を排除して、
図1のシステム1−100の場合と同一の手法で計測され得る。
【0059】
本発明のシステムのさらに代替的な実施形態においては、対象となる試料が流れるのではなく、むしろ検出システム自体が、検出器と試料との間に相対運動が生じるよう、試料に対して動く。係る実施形態においても、試料のスペクトル特性の測定はすでに前述した場合と同一の手法で測定され得る。
【0060】
本発明のシステムの代替的な実施形態において、対象となる試料は、蛍光性を示すのではなく、特徴的な色の入射光を、散乱光の形態で反射する。係るシステムにおいて、光源101は広帯域光源であり、検出エリア201内の試料は特定色のみの入射光ビーム105を反射し、係る特定色の入射光は撮像センサ501において
図1のシステム1−100の場合と同一の手法で検出されるであろう。
【0061】
本発明のシステムの代替的な実施形態において、対象となる試料は特徴的な波長の光を吸収する。係るシステムにおいて、光源は広帯域光源であり、広範囲の波長(例えば近赤外線、可視、または紫外線スペクトル領域の波長)を放出するであろう。この光源は、例えば、白色LED、タングステン白熱ランプ、またはアークランプであり得る。係る光源は、対象となる試料の上方において、入射光ビームが対物レンズの軸と一致する状態で、対物レンズの軸上に配置されるであろう。それにより、試料により吸収されない光(すなわち透過される光)のみが、
図1のシステム1−100の場合と同一の手法で、撮像センサ501で検出されるであろう。
【0062】
マイクロ流体チャネル203およびマイクロ流体チャネル203内を流れる試料(単数または複数)を視覚的に観察するための監視カメラシステム300の使用が組み込まれた、本発明のシステムの代替的な実施形態(それぞれ
図2Aおよび
図2Bにおいて検出システム2A−100および2B−100と呼称される)を図示する
図2Aおよび
図2Bを、ここで参照する。監視カメラシステム300は、主に検出システム2A−100および2B−100の光学構成要素の位置合わせを行うとき等に、検出エリア201における試料の通常の非分散平面画像が閲覧されるよう、診断目的および較正目的のために利用される。なお、これらの全部は当業者により理解および認識されるであろう。監視カメラシステム300は、監視カメラレンズ302が装備された監視カメラ301を備える。1つの実施形態において、監視カメラシステム300が使用されるときには、
図1のレンズ401と404との間に位置する本明細書で前述した光学トレイン420の構成要素は必要に応じて定位置から外され、折り返しミラー303が定位置へと挿入される。それにより、折り返しミラー303が、対物光学部品401からの非分散光を監視カメラ301に反射することが可能となる。これが達成されるよう、分散光学部品403および折り返しミラー303は回転輪または線形レール上で移動するよう拘束された往復台等の機構上に配置され得る。それにより、分散光学部品403または折り返しミラー303の一方が適切な位置に移され、ユーザが動作モードと観察モードとの間で手動切り替えを行うことが可能となる。
【0063】
監視カメラシステム300が用いられるとき、監視カメラ301内に導かれた光は分散要素403を通らない。これにより、マイクロ流体チャネルに存在する試料の色収差がない画像を、静的モードまたは動的モードにおいても、観察することが可能になる。試料から発する検出に用いられる光(試料自体の内部から発する励起、照射、または光を含み得る)がマイクロ流体チャネル203を閲覧するにあたり十分でない場合は、監視カメラシステム300は別個の監視光源システム310をさらに備える。なお、監視光源システム310は、監視カメラシステム300の使用中において、検出システム2A−100および2B−100からの光の代替としてまたは係る光に追加して、検出エリア201を照射する。監視カメラ301内の画像は、蛍光標識された試料を含む液滴(他の実施形態の場合は、他の試料からの光、または散乱光、透過光、もしくは化学発光の形態の光)と、マイクロ流体チャネル203を包装する物質と、の両方から、検出エリア201において散乱される光から構成されるであろう。
【0064】
図2Aは、この事例において監視光源304、監視光源リレーレンズ305、および監視光源集束レンズ306により試料を照射する監視光源システム310を示す、監視カメラシステム300を含む実施形態の1つの態様を図示する。監視光源システム310のこれらの構成要素304〜306は、後方から検出エリア201を照射するために、対物光学部品401に対して同軸状に、且つマイクロ流体ハウジング200の上方に、配列される。この配列は「透過照明」と呼称される。
【0065】
図2Bは、監視光源システム310が監視光折り返しミラー307を追加的に備える、監視カメラシステム300を含む実施形態の代替的な態様を図示する。
図2Bに図示する態様の1例において、監視光源304は可視LEDを含み、この可視LEDは、監視カメラ301に対して光源を提供するために、検出エリア201を含むマイクロ流体装置の領域上にレンズ305および306と折り返しミラー307とを介して撮像される。この配列は「落射照明」と呼称される。
【0066】
監視光源システム310の構成要素の多数の代替的な構成が用いられ得ることは当業者により認識されるであろう。例えば、白熱光源または可視LED光源を含むがこれらに限定されない監視光源304として機能する様々な代替的な監視光源、および単一のリレーレンズまたは集束ミラーを含むがこれらに限定されない様々な光学要素を用いる構成、または追加的な光学部品をまったく用いない構成は、監視光源304が検出エリアをより直接的に照射することを可能にし得る。
【0067】
試料が高速移動する液滴または離散的粒子を含む監視カメラシステム300を内蔵する実施形態の1つの態様において、監視光源304は、高速流動する液滴または粒子の撮像を可能にするために、所望により液滴または粒子の到着速度でストロボ発光され得る。これは、ストロボ発光されない液滴画像または粒子画像に液滴移動による著しいブレが生じることとなるような比較的に緩やかなフレームレートおよび比較的長い露光時間を有する監視カメラを用いることにより達成され得る。代替的な態様において、ビームスプリッタ(例えばダイクロニックビームスプリッタ)が、例えばフィルタ402の下方且つ分散光学部品403の上方に配置されることにより、折り返しミラー303に代わって監視目的のために用いられ得る。
【0068】
本発明のシステムの撮像センサは、検出範囲全体にわたるいずれの色の光に対して感度を有する単一のモノクローム光センサで構成されてもよく、または1次元(ライン)もしくは2次元(グリッド)の光センサの画素アレイから構成されてもよい。撮像センサは、例えば電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)(代替的に相補形対称金属酸化物半導体(COS−MOS)とも呼称される)、1つまたは複数の個別のフォトダイオード、フォトダイオードアレイ(PDA)、アバランシェフォトダイオード(APDs)、アバランシェフォトダイオードアレイ、光電子増倍管(PMT)、または光電子増倍管アレイから選択され得る。個々のセンサ要素の個数および配置は、システムによる検出に対するスペクトル帯域幅および解像度を決定するであろう。なお、実施形態は任意のスペクトル検出のためにアレンセンサを内蔵することが好ましい。1次元CCDまたはCMOSアレイはしばしばラインスキャン装置と呼称される。2次元CCDまたはCMOSアレイの場合は、センサは、エリアタイプであるか、または時間遅延積分(TDI)タイプであるか、のいずれかであり得る。撮像センサがアレイタイプの撮像センサである事例においては、検出された光の色成分は、分散光学部品により生じる既知のスペクトル拡散と、画像を検出する撮像センサの特定エリアと、を相互に関連付けることにより判定される。スペクトル拡散が試料の画像寸法に比較して大きい場合、複数の別個の画像が撮像センサ上に形成され、これらの画像は別々に検出され得る。撮像センサ読み出し速度すなわち撮像センサが画像をキャプチャする速度は、検出エリアにおける液滴到着の速さおよび速度に対応できるよう十分大きくなければならない。
【0069】
これまでに説明したそれぞれのタイプの撮像センサはカメラに内蔵され得る。それにより、撮像カメラ500として
図1に図示するカメラ等の、センサを制御し分析のために出力をデジタル化するための光遮蔽性のハウジングおよび電子機器が提供されることとなる。2次元エリアカメラの場合、出力は一連の2次元画像フレームである。ラインスキャンカメラおよびTDIカメラに対して、出力は実質的に1次元ラインの連続的ストリームであり得る。これは、ライン軸上に分散液滴スペクトルと連続軸上に時間とを有する連続的レコードとして示され得る。当業者はエリアタイプ、ラインスキャンタイプ、およびTDIタイプの撮像センサならびにカメラの特徴を認識するであろう。なお、これらについては米国特許出願公開第20050237403号および米国特許第5,434,629号においてさらに説明される。なお、これらの特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。
【0070】
代替的な実施形態において、画像取得のTDIタイプの方法が撮像センサとして用いられ得る。この実施形態において、TDI撮像センサが内蔵されたTDIカメラが用いられる。TDI撮像センサは2次元半導体光センサチップ(例えばCCDまたはCMOS)である。TDIカメラはTDI撮像センサを現実世界に結びつける。TDIカメラにおけるセンサは、複数隣接行の画素を備える。画素は、各画素に光が入射する結果として電荷が蓄積される感光性電荷ウェルである。TDIカメラは、規則的なプログラム可能な速度で、各行で収集された電荷を隣接行に転送する。TDIカメラが、センサの最終行においてやがて読み出すために画素電荷を行から行へと転送するプロセスは「ライン転送」と呼称され、この転送が行われる速度が「ライン転送速度」である。チェインの第1行は無電荷で開始され、最終行において各画素に蓄積される電荷の総量が、1次元画像として読み出される。画像は実質的に、電荷がセンサの行の全部にわたって移動される連続的な時間的期間におけるTDIカメラセンサの各行において蓄積された一連の露光の重ね合わせである。TDIカメラの通常動作モードにおいて、前回の画素行から蓄積された電荷を行から読み出することを伴う、各行から次行への電荷転送は、比較的一定ではあるが調節可能な、ライン転送速度で行われる。TDIカメラの最良の使用に関しては、重ね合わされた一連の露光が実質的に同一の被写体のものとなるようライン転送に同期された、観察される液滴のカメラに対する相対運動が要求される点に注意すべきである。なお、係る要求は、米国特許出願公開第20050237403号および米国特許第5,434,629号において説明され、これらの特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。
【0071】
TDIカメラを用いる本発明の実施形態において、1次元画像は、ライン転送速度に駆動されるセンサからの連続的読み出しの間隔よりも実質的に(例えば撮像センサの行の本数の倍数だけ)大きい効果的な露光時間を用いて、収集され得る。照射される検出エリア全体の画像がその上方で延長するTDIセンサの行の本数は、検出エリアを通って移動する被写体に対する効果的な露光時間が増加され得る倍数を決定するであろう。一方、照射されるエリアの画像の幅が単一のTDIセンサ画素行の幅に近づくと、係る利点は失われ、TDIカメラの性能はラインスキャンカメラの性能と同等となる。したがって、適切な照射光学部品を用いると、ラインスキャンカメラを用いる実施形態は十分に適したものとなる。以下の説明において、ラインスキャンの実施形態は単一ラインTDIの実施形態に対して効果的に等価となることが理解されるであろう。
【0072】
ここで
図3を参照すると、
図3は、対物レンズ401の光学軸に対して実質的に直角に配置された少なくとも1つのマイクロ流体チャネル203を備えるマイクロ流体ハウジング200を備えるシステム3−100を図示する。
図3は、蛍光標識された試料を含有する液滴の検出および計測のためのシステムの実施形態を図示するものであるが、以前におよび以下に説明する任意の試料またはスペクトル特性の検出および計測に適用され得る。分散軸506は、マイクロ流体チャネル203および対物レンズ401の光学軸の両方に対して直角である。試料は、それぞれが検出および計測されるべきスペクトル特性を有する液滴220および210として図示される。なお、この場合においては、係るスペクトル特性は、示された流れ方向230でマイクロ流体チャネル203を通って流れる液滴220および210中に存在する異なる濃度のフルオロフォアにより生成される蛍光である。異なる特定の標識は
図3において液滴220および210の異なる表面パターンにより概略的に示される。マイクロ流体チャネル203の1部分は、検出エリア201を形成するために、励起光源(
図3に図示せず)により照射される。
【0073】
図3に示す事例において、流動する液滴220および210中の蛍光標識された試料から放出される蛍光は光学トレイン411により撮像面505上に撮像される。この実施形態において、分散要素406は、カメラレンズ404が対物レンズ401に対して同軸状に配置され得るよう、ゼロ偏角(「直視」とも称される)装置である。検出されるスペクトル範囲に対する検出エリア201全体の分散画像により占められる撮像面の領域は撮像範囲525により示される。それぞれ液滴220および210に対応する反転された液滴画像520および521は、分散軸506に沿って分散され、画像移動ベクトル507の方向(すなわちマイクロ流体チャネル203内の液滴の流れ方向230に対して平行でしかも逆方向)に動く。
図3は1つの時刻における画像を示す。検出エリア201の照射された部分内に存在するこれらの液滴のみが画像を生成する。係る画像のそれぞれは対応する液滴中に存在するフルオロフォアのそれぞれに対応するスペクトルピークからなる。なお、これらのピークはこれらのフルオロフォアの濃度に関連付けられた強度を有する。
【0074】
分散液滴画像520および521を検出するために、撮像範囲525と交差するよう撮像センサが撮像面505に配置される。これらの例は、それぞれ
図4Aおよび
図4Bにおけるシステム4A−100および4B−100に示される。
図4Aおよび
図4B(および引き続き
図4C)は、対象となる蛍光標識された試料を含む液滴の検出および計測のためのシステムを示すが、以前におよび以下に説明される任意の試料またはスペクトル特性の検出および計測に適用され得る。
図4Aおよび
図4Bにおいて、光学トレインの最終要素(すなわちカメラレンズ404)のみが図示される。
図4Aおよび
図4Bは、例として、2つの好適なタイプのセンサの撮像面505における感光エリアを示す。
図4Aでは、8行TDIセンサの感光エリア530が示され、
図4Bではラインスキャンセンサの感光エリア540が示される。それぞれが、実質的に同等または同様のライン速度で読み出される。TDIセンサの感光エリアは8つの画素行531a〜531hに細分化される。各読出サイクルごとに、その感光エリア530が
図4Aに示されるTDIカメラは、画素行531iからラインを読み出し、画素行531a〜531h(未標識の介在する画素を含む)から画素行531b〜531i(未標識の介在する画素を含む)へと電荷を転送する。その感光エリア540が
図4Bに示されるラインスキャンカメラは、センサの単一の画素行541からラインを読み出す。
図4Aにおいて、TDIライン転送方向および速度は、前述のように、画像移動ベクトル507により示される、TDIカメラと液滴画像520および521の速度との間の同期が確保されるよう、選択される。
図4Bのラインスキャンの事例に対して、同期は不必要である(以下で説明する)。それぞれの事例において、それぞれの撮像センサの長さは撮像面505における分散軸506に沿って配置される。
【0075】
ある期間にわたって任意の撮像センサから読み出されるラインは、2次元レコードの形態で示され得る。なお、その典型的な部分が、
図4Cのデジタル化されたレコード600において表される。
図4Cに図示するように、デジタル化されたレコード600の水平行は、撮像センサから読み出された強度のラインを含み、前記ラインは、読み出された順序にしたがって底部から頂部へと配列される。デジタル化されたレコード600の幅は撮像センサから読み出されたデータのラインにおける画素の個数により限定される一方、デジタル化されたレコード600の高さは無限であり、データが収集される時間の長さのみにより限定される。デジタル化されたレコード600から個々の試料の経過は容易に検出され、分散スペクトルは、前述のように、例えばこの事例においては、各液滴中に存在するフルオロフォアのタイプおよび濃度を判定するために分析され得る。
【0076】
任意の撮像センサに関して、適切なライン速度は、カメラからの個々の読み出しが複数の隣接する液滴画像への露光を含むことがないよう、選択されるべきである。TDI方法を利用する事例においては、係る適切なライン速度の選択は、既知の液滴速度から最適ライン転送速度を導き出すことによるものであったとしても、また
図4Cにおけるレコード等のレコード上に見られる時間軸におけるブレを最小化するプロセスにより経験的に最適ライン転送速度に到達することによるものであったとしても、ライン転送速度を最適化することにより達成され得る。ラインスキャン撮像センサを利用する事例においては、このライン速度最適化は不必要であるが、ライン速度は、各試料が少なくとも1つの、典型的にはいくつかの連続的な読み出しにおいて検出され、且つ液滴間における少なくとも1つの読み出しには実質的に信号がない状態で、単一の画素行にわたる液滴画像の移動を収容するにあたり十分でなければならない。TDIセンサまたはラインスキャンセンサに代わってエリアセンサを採用する、
図4Aおよび
図4Bに示す実施形態に対する代替的な実施形態は、キャプチャされた画像における液滴の重複が回避されるよう十分に高いフレームレートを用いなければならない。
【0077】
本発明のシステムのいくつかの代替的な実施形態において、計測されるべきスペクトル特性を有する試料は、蛍光標識された試料を含有する液滴以外のものであり得る。すでに説明した例は、単相流、ビーズもしくは細胞、またはビーズまたは細胞の懸濁液を含み、なお、検出されるべき光は、散乱光、透過光、または試料から化学発光により放出される光である。それぞれ
図4Aおよび
図4Bに示すシステム4A−100および4B−100は、例えばこれらの図面に示す蛍光標識された試料を含有する液滴の場合と同じ手法で、いずれの係る試料からの光の画像も生成するであろう。
【0078】
これまでに説明した本発明のシステムの実施形態は、1つの光学トレインと1つの撮像センサを用いることにより、光学トレインにより形成されるスペクトル拡散と撮像センサの画素の寸法との間の関係性にしたがって、撮像センサが感度を有する対象となる試料から出たいずれの色の光も検出することが可能であり、いかなる個数の異なる色も識別可能である。一方、このシステムは、十分に高い信号対雑音比の画像が撮像センサ上で利用可能な光から形成される速度により制限され、試料がマイクロ流体チャネルを通って流動する速度によっても制限される。
【0079】
検出処理能力は、並列システム(例えば、いくつかのストリームの流動試料のそれぞれがいくつかのの検出エリアのうちの1つを通って導かれる複数のマイクロ流体チャネルを用いることによる)を用いることにより、向上させることが可能である。第1マイクロ流体チャネルに関連するスペクトル拡散が光学部品の視野域全体または撮像センサの長さ全体を占めないならば、追加的なストリームの流動試料は、第2マイクロ流体チャネルの使用により、または複数のマイクロ流体チャネルを使用することによってさえも、追加的な撮像センサまたは光学トレインを加えることなく、分析され得る。これらの追加的なストリームの流動試料がいくつかの検出エリアに入り、それぞれが、撮像センサのいくつかの、並列システムを用いない場合には未使用であるエリア上に撮像され得る。各画像が、異なる色を解像するための必要な能力を提供するために十分な個数の画素上方で拡がる限り、無限個の追加的なマイクロ流体チャネルがシステムにおいて用いられ得る。例えば、各マイクロ流体チャネルは分散軸に沿って約50〜100の画素を要求し得る。したがって、画素のアレイ全体が十分に高速に読み出し可能であり、さらに使用されるレンズの光学視野寸法が撮像センサの長さ全体を収容可能である場合、2048画素を有するラインスキャナまたは2048画素の寸法を有する2次元エリアセンサは約20〜40のマイクロ流体チャネルを収容し得る。そのため、複数のマイクロ流体チャネルが、追加的な新規の光学構成要素または検出構成要素を用いることなく、本発明に係るシステムにおいて利用され得る。このことは、全体的なシステム処理性能、コスト、および寸法に対して有利な効果を有する。
【0080】
図5を参照すると、
図5は、3つの並列マイクロ流体チャネルを用いる本発明に係るシステムの実施形態と、画素行531a〜531iに細分されるTDIカメラセンサの感光エリア530とを示す。なお、この並列マイクロ流体チャネルはCh1、Ch2、およびCh3により標識付けられ、203により総称され、それぞれがエマルジョン中に蛍光標識された試料を搬送する。
図5は、対象となる蛍光標識された試料を含有する液滴の検出および計測のためのシステム5−100の実施形態を図示するものであるが、以前に説明した任意の試料またはスペクトル特性の検出および計測に適用され得る。3つのマイクロ流体チャネルがこの実施形態においては示されるが、上述のように、より多数のまたはより少数のマイクロ流体チャネルも用いられ得る。
【0081】
図5に示すシステム5−100の構成要素および動作は、デジタル化されたレコード600がここでは各水平行における並列マイクロ流体チャネル203の全部の液滴に対する情報を含む点を除き、各マイクロ流体チャネルがTDIライン出力の画素の別個の範囲を占める状態で、実質的に
図3のシステム3−100と、
図4Aのシステム4A−100および
図4Bのシステム4B−100と実質的に同一である。撮像面505の隣接する図に見られる画像に対応するデジタル化されたレコードの部分がボックス601により示される。
図5において、照射は、各マイクロ流体チャネルにおいて1つの、比較的小さいセットに検出エリア201に拘束される。この種類の構造化された照射は様々な手段により達成され得、特定の手段は用いられる光源のタイプに依存し、これらすべては当業者により理解および認識されるであろう。例えば、レーザ光源に関しては、強化された回折光学要素またはホログラフ要素が、単一のビームを多数のサブビームに効率的に分割し、これらのサブビームをいくつかの検出エリアに導くために用いられ得る。マイクロレンズアレイまたはアパーチャマークも、レーザ光源または非コヒーレント光源の両方に対して用いられ得る。マイクロ流体チャネルの軸に対して直交する軸に沿ってマイクロ流体装置にわたって連続的なバンドの照射が形成されるよう、照射光学部品を配列することも可能である。エネルギ効率はより小さくなってしまうが、この手法は、照射スポットをマイクロ流体チャネルに対して正確に位置合わせすることに対する必要性を排除することが可能である。
【0082】
本発明は、試料からの光のスペクトル特性を検出および計測するための方法に、または複数の試料の中に存在する各試料からの光をスケーラブルに、同時に、検出および計測するための方法に関し、同時に、この方法は上述のシステムを含む。検出および計測される光は、試料の照射後に試料から散乱される光、試料中の化学的プロセスによる化学発光として放出される光、試料にめがけて広帯域光源を導いた後に試料により選択的に吸収される光、または励起後に試料から蛍光として放出される光を含む。用途に応じて、試料は、単相流(その組成は時間とともに変化し得る)、ビーズもしくは細胞を含み得るがこれらに限定されない不連続的なターゲット、または液滴を含む。1つの実施形態において、対象となる1つまたは複数の試料はエマルジョン中に存在する。他の実施形態において、1つまたは複数の試料はマイクロ流体装置内のエマルジョン中に存在する。
【0083】
本発明は上述のシステムを含むキット、および上述の方法を実行するために必要な試薬にも関する。
【0084】
本発明の方法の結果は、「データ」と呼称され、対象となる特定試料に関連するものであって、アクセス可能なデータベース内に保持され得、対象となる特定試料に関連付けられた特定のヒト、動物、植物、もしくは微生物からの他のデータに、または他のヒト、動物、植物、もしくは微生物からのデータに、関連付けられてもよく、または関連付けられなくてもよい。取得されたデータは、他のデータベースに、統合、もしくは関連付け、および/またはクロスマッチされ得るデータベースに格納され得る。
【0085】
本発明のシステム、方法、およびキットは、さらにネットワークインターフェースに接続され得る。「ネットワークインターフェース」という用語は、本明細書においては、データへのアクセス、データの保管、データを組み合わせ、データの分析、データの検索、データの転送、またはデータの格納を行う能力を有する任意の人またはコンピュータシステムを含むものとして定義される。この用語は、データ分析を行う人、分析において用いられる電子的ハードウェアならびにソフトウェアシステム、データ分析を格納するデータベース、およびデータを格納する能力を有する記憶媒体であると広範に定義される。ネットワークインターフェースの非限定的な例は、人と、自動化された実験装置と、コンピュータおよびコンピュータネットワークと、ディスク、ハードドライブ、またはメモリチップを含むがこれらに限定されないデータ記憶デバイスと、を含む。
【0086】
本発明およびその特長が詳細に説明されてきたが、様々な変更例、代替例、および改変例が添付の請求項に定められる本発明の精神および範囲から逸脱することなく可能であることが理解されるべきである。
【0087】
本発明は以下の実施例にさらに例示され、以下の実施例は例示目的のためにのみ提供され、本発明を限定することを意図するものでは決してない。
【0088】
実施例
実施例1
図6は本発明にしたがって構築された検出システムの実施形態を用いて取得された読み出しの例を示す。液滴信号701を包囲するボックスにより示される蛍光標識された試料を含有する1つの特定の液滴からの信号に対応するデジタル化されたレコード700の1部分が示される。検出器出力は、デジタル化されたレコード700において、最も古いデータが底部に最も新しいデータが上部にある状態で垂直にスタックされた配列として示される、強度が変化する画素のラインを含む。下方には、デジタル化されたレコード700が示される。なお、グラフ720は液滴信号701の数学的な成分分解の結果を示すものである。このグラフ上の垂直強度軸は液滴信号701から記録された強度に直接対応し、水平軸は液滴信号701における画素数に直接対応する。全体信号721は以下の成分、すなわち入射光による励起時にマイクロ流体チャネルを構成する物質により放出される自家蛍光成分725と、第1蛍光染料成分726と、第2蛍光染料成分727と、を含む。これら3つの成分725〜727を加え合わせると全体信号721が形成され得る。数学的な成分分解は、曲線725〜727により示される自家蛍光および既知の染料濃度に対する基準応答モデルの所望により重みが加えられた組み合わせを決定し、それにより観察された全体信号721が生成される。これらの基準応答モデルが、単一の実行されたデジタル化されたレコード700内で見出される観察を用いて確立され、応答成分に対する別個に準備された応答を用いて確立されない場合は、画素数と波長との間に正確な対応関係を確立する必要はない。
【0089】
実施例2
図7は、本発明にしたがって構築された検出システムの、実施例1に対して用いられたのと同じ実施形態を用いて取得されたデジタル化されたレコードの第2の例を示す。この事例において、対象となる試料は、一定組成の単一染料溶液の単相流である。結果として生じた、記録されたスペクトル信号は実質的に時間に対して不変である。
【0090】
本発明の好適な実施形態についてこれまで詳細に説明してきたが、多数の明白な変化例が本発明の精神および範囲から逸脱することなく可能であるために、以上の段落により定められる本発明は、上記に説明した特定の詳細に限定されることを意図するものではない。