(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986629
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】胴体支持外骨格装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
A61F5/01 D
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-514924(P2014-514924)
(86)(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公表番号】特表2014-523768(P2014-523768A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】US2012041891
(87)【国際公開番号】WO2012171000
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/495,484
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カゼルーニ、ホマユーン
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー、エリック
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リーハン
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−011818(JP,A)
【文献】
米国特許第05259833(US,A)
【文献】
特開2007−097636(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0228121(US,A1)
【文献】
特開2007−130234(JP,A)
【文献】
特開2007−282991(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0130815(US,A1)
【文献】
特開2007−020672(JP,A)
【文献】
特開平03−165765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に着用され、腰椎の前方に屈曲する際の着用者の背中の筋力を軽減するように構成された胴体支持外骨格装置であって、
着用者の胴体に結合するように構成された支持胴体と、
着用者の右大腿部に結合するように構成され、前記支持胴体に対して屈曲と伸展ができるように前記支持胴体の右側に設けられた第1の回転軸回りに回転可能に結合された第1の大腿リンクと、
着用者の左大腿部に結合するように構成され、前記支持胴体に対して屈曲と伸展ができるように前記支持胴体の左側に設けられた第2の回転軸回りに回転可能に結合された第2の大腿リンクと、
前記第1の大腿リンクと前記支持胴体の間にトルクを発生させるように構成された第1のトルク・ジェネレーターと、
前記第2の大腿リンクと前記支持胴体の間にトルクを発生させるように構成された第2のトルク・ジェネレーターと、
を具備し、
前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターは、それぞれ互いに独立して、トルクをまったく発生しないニュートラル位置と、それぞれ前記第1及び第2の大腿リンクと前記支持胴体の間にトルクを発生する係止位置の間を自動的に移行するように構成され、
着用者が矢状面内で前方に屈んで前記支持胴体のあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転したときに、前記第1又は第2のトルク・ジェネレーターの少なくとも一方は前記係止位置で前記支持胴体と前記第1又は第2の大腿リンクの少なくとも一方の間に抵抗トルクを課して、前記支持胴体に着用者の胴体に対する力を課させるとともに、前記第1及び第2の大腿リンクの少なくとも一方に着用者の大腿部への力を課させるようにし、前記支持胴体のあらかじめ決められた部分が垂直からあらかじめ決められた角度を超えて回転していないときには、前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターは、前記ニュートラル位置で、着用者が左右それぞれの大腿部を動かすことに伴って前記第1及び第2の大腿リンクが動作する範囲全体の間で、前記支持胴体と前記第1及び第2の大腿リンクの各々との間で抵抗トルクを生じさせないようにする、
ことを特徴とする胴体支持外骨格装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターの少なくとも一方は、
前記支持胴体に結合するように構成された上ブラケットと、
前記第1及び第2の大腿リンクの一方に結合するとともにそれぞれ前記第1及び第2の回転軸を介して前記上ブラケットに回転可能に結合するように構成された下ブラケットと、
前記上ブラケットの前記第1又は第2の回転軸よりも上方の部分に回転可能に結合した弾力性のある振り子と、
前記下ブラケットに結合した係合用ブラケットと、
を備え、
前記上ブラケットのあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転したときに、前記弾力性のある振り子が前記係合用ブラケットと接触するようになり、前記上ブラケットと前記下ブラケットとの間に抵抗トルクを発生させ、前記上ブラケットのあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転していないときには、前記弾力性のある振り子は前記係合用ブラケットとは接触せず、前記上ブラケットと前記下ブラケットの間に抵抗トルクを課さない、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項3】
前記支持胴体は、
着用者の胴体に結合するように構成されたヒューマン・インターフェースと、
前記ヒューマン・インターフェースに結合するように構成されたフレームと、
を具備し、
前記フレームは第1及び第2の大腿リンクに回転可能に結合され、前記第1及び第2の大腿リンクがそれぞれ前記支持胴体に対して伸展及び屈曲することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項4】
前記ヒューマン・インターフェースは、前記フレームに移動可能に接続され、前記ヒューマン・インターフェースは前記フレームの長さ方向に沿ってスライドできる、
ことを特徴とする請求項3に記載の外骨格装置。
【請求項5】
前記ヒューマン・インターフェースは、前記フレームに対して回転可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の外骨格装置。
【請求項6】
前記ヒューマン・インターフェースは、着用者に結合するように構成された少なくとも1つのショルダー・ストラップを備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の外骨格装置。
【請求項7】
前記ヒューマン・インターフェースは、着用者の背中と接続するように構成された背面パネルを備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の外骨格装置。
【請求項8】
前記ヒューマン・インターフェースは、着用者の前面と接続するように構成された前面パネルを備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の外骨格装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の大腿リンクの各々は、着用者のそれぞれの大腿部に結合するように構成された少なくとも1つの大腿ストラップを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項10】
前記係止位置で前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターの少なくとも一方によって課される抵抗トルクは、前記支持胴体のあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向から回転した角度に応じて変化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項11】
前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターの少なくとも一方によって課される前記抵抗トルクは、着用者が前方に屈むにつれて自動的に増加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項12】
着用者と垂直の間の角度が増加するにつれて、前記抵抗トルクは線形的に増加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項13】
前記フレームは、前記第1及び第2の大腿リンクの各々の前記支持胴体に対する外転及び内転を可能にする第1及び第2のロータリー外転−内転ジョイントをさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の外骨格装置。
【請求項14】
第1及び第2のトルク・ジェネレーターの少なくとも一方は、油圧モーター、油圧アクチュエーター、空気モーター、空気アクチュエーター、電気モーター、ソレノイド、並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択された能動コンポーネントを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の外骨格装置。
【請求項15】
前記第1及び第2のトルク・ジェネレーターによって課される抵抗トルクの合計を自動的に調整するように構成されたコントローラーをさらに備える、
ことを特徴とする請求項14に記載の外骨格装置。
【請求項16】
少なくとも1つのセンサーと、
少なくとも1つのセンサーからの少なくとも1つの入力信号に基づいて第1及び第2のトルク・ジェネレーターのための制御信号を生成するように構成された信号処理プロセッサーと、
をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の外骨格装置。
【請求項17】
少なくとも1つのセンサーは、速度センサー、加速度計、力センサー、圧力センサー、角度センサー、トルク・ジェネレーターの動きセンサー、トルク・ジェネレーターの速度センサー、トルク・ジェネレーターの力センサー、ジャイロ、並びにこれらの組み合わせからなるグループの中から選択される、
ことを特徴とする請求項16に記載の外骨格装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの入力信号は、前記大腿リンクに対する前記支持胴体の角度を表す信号、前記大腿リンクに対する前記支持胴体の速度を表す信号、前記大腿リンクに対する前記支持胴体の加速度を表す信号、支持胴体の絶対角度を表す信号、支持胴体の絶対速度を表す信号、支持胴体の絶対加速度を表す信号、トルク・ジェネレーターの動きを表す信号、トルク・ジェネレーターの速度を表す信号、トルク・ジェネレーターの加速度を表す信号、トルク・ジェネレーターのトルクを表す信号、トルク・ジェネレーターの力を表す信号、着用者の動きを表す信号、着用者が屈む角度を表す信号、着用者が屈む速度を表す信号、着用者が屈む加速度を表す信号、着用者と前記ヒューマン・インターフェースの間の接触力を表す信号、並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択される、
ことを特徴とする請求項16に記載の外骨格装置。
【請求項19】
外骨格装置を使用して前方に屈んでいる間の着用者の背中における筋力を低減する方法であって、前記外骨格装置は、着用者の背中に結合するように構成された支持胴体と、着用者の右大腿部に結合するように構成されるとともに前記支持胴体の右側に設けられた第1の回転軸回りに回転可能に結合して前記支持胴体に対して屈曲と伸展が可能な第1の大腿リンクと、着用者の左大腿部に結合するように構成されるとともに前記支持胴体の左側に設けられた第2の回転軸回りに回転可能に結合して前記支持胴体に対して屈曲と伸展が可能な第2の大腿リンクと、前記第1の大腿リンクと前記支持胴体の間にトルクを発生させるように構成された第1のトルク・ジェネレーターと、前記第2の大腿リンクと前記支持胴体の間にトルクを発生させるように構成された第2のトルク・ジェネレーターを備え、
支持胴体のあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転しているかどうかを決定するステップと、
支持胴体のあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転しているときには、前記第1又は第2のトルク・ジェネレーターによって前記支持胴体と前記第1及び第2の大腿リンクの少なくとも一方の間に抵抗トルクを自動的に課すステップと、
支持胴体のあらかじめ決められた部分が前記第1又は第2の回転軸回りに垂直方向からあらかじめ決められた角度を超えて回転していないときには、着用者が左右それぞれの大腿部を動かすことに伴って前記第1及び第2の大腿リンクが動作する範囲全体の間で、前記第1又は第2のトルク・ジェネレーターによって前記支持胴体と前記第1及び第2の大腿リンクの少なくとも一方の間に抵抗トルクを全く課さないステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
第1及び第2のトルク・ジェネレーターは、油圧モーター、油圧アクチュエーター、空気モーター、空気アクチュエーター、電気モーター、ソレノイド、並びにこれらの組み合わせからなるグループから選択された能動コンポーネントである、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の脊椎を支持する装置の技術に係り、特に、前方に屈んでいる間に人の背中に加わる曲げモーメントを低減するように構成された胴体を支持する外骨格装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、「背中の怪我防止装置及び方法」と題された、2011年6月10日付の米国仮出願番号61/495,484の恩恵を主張し、本明細書はその仮出願明細書を参考として援用する。
【0003】
一般に、屈み、持ち上げ、又は直立している人をアシストするように構成された背中支持装置が当業界で知られている。米国特許第6,436,065号、米国特許第5,951,591号、米国特許第5,176,622号、米国特許第7,744,552号、米国特許第1,409,326号、並びに米国特許第4,829,989号は、屈んでいる間に人の胴体から重力の重みによるモーメントを打ち消すようなモーメントを生成する装置について記載している。これらのシステムは、着用者の胴体と脚の間にトルクを発生する受動的なスプリング抵抗を使用する。腰に修復モーメントを生成することによって、腰椎の5番目と仙骨の1番目の間(L5/S1)の領域を怪我する確率が大いに低減される。屈んだり、しゃがんだり、歩いたりしている間に、胴体と脚の間の角度が所定の角度に達すると、この装置が抵抗を供給する。しかしながら、いずれの装置も、歩くことと屈むこと、又は、座ることと屈むことを区別することはない。このため、このような受動的な装置を用いると、ユーザーは、歩行中に脚を装置に押し当てなければならないので、楽に歩くことはできない。同様に、このような受動的な装置を用いると、ユーザーは、座るときに脚を装置に押し当てなければならないので、楽に座ることはできない。不快で危険であり、ユーザーは無制限に動き回ることはできない。また、さまざまな産業環境でこれらのシステムの使用が避けられる最も重要な理由である。前述の装置とは異なり、本明細書で記述される技術は、歩くことと屈むことを区別し、また、座ることと屈むことを区別する。屈むときと歩くとき(あるいは、屈むときと座るとき)とで、ユーザーの胴体と動かしている大腿部との相対的な角度が互いに同じであっても、最小限の検出とハードウェアでこれらを区別できる手段を我々は見つけ出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、腰椎を前屈させている間の着用者の背中の筋力を低減するように構成された胴体支持外骨格装置に関するものである。全般に、外骨格装置は、着用者の大腿部に結合されるように構成された第1及び第2の大腿リンクと、着用者の胴体に結合されるように構成された支持胴体を備えている。支持胴体は、大腿リンクと回転可能に結合されているので、大腿リンクを支持胴体に対して屈曲させたり伸展させたりすることができる。第1及び第2の対向するトルク・ジェネレーターは、支持胴体とそれぞれの大腿リンクの間に選択的にトルクを発生させる。
【0005】
運転中、着用者が矢状面内で前に屈み、支持胴体の所定の部分が垂直に対して所定の角度から外れ又は所定の角度を超えたときに、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターが、支持胴体と対応する大腿リンクの間に抵抗トルクを課す。これによって、支持胴体が着用者の胴体に力を課すとともに、大腿リンクが着用者の各大腿部に力を課すので、屈曲した位置にいる着用者の支持を助けることができる。第1の実施形態では、外骨格装置は、トルク・ジェネレーターを作動させる受動的な手段を備えている。すなわち、外骨格装置の所定の部分が垂直に対して所定の角度を超えて広がったときに、弾力性のある振り子が係合用ブラケットと接触するようになり、支持胴体と対応する大腿リンクの間に抵抗トルクを生じさせる。他の実施形態では、外骨格装置は、トルク・ジェネレーターを油圧モーターや空圧モーター、電動モーターのように作動させる能動的な手段を備えている。
【0006】
外骨格装置は、信号処理プロセッサーを備えていてもよい。信号処理プロセッサーは、トルク・ジェネレーターを信号処理プロセッサーによって受信された入力信号のセットの関数として駆動させるための制御信号を生成する。入力信号は、外骨格装置に組み込まれた、速度センサー、加速度計、力センサー、又は角度センサーといった、1又はそれ以上のセンサーによって生成される。
【0007】
支持胴体が垂直に対して所定の角度を超えて広がらないときには、トルク・ジェネレーターは、大腿リンクの着用者の動作の全範囲において、支持胴体と大腿リンクの間に抵抗トルクを課さないことは重要である。したがって、着用者は、実質的に直立した位置では、いかなる制約もなしに歩き、走り、座ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、着用者が前かがみの状態での本発明に係る胴体支持外骨格装置を示した図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した着用者に伝わる力を示した図であり、簡素化のため胴体支持外骨格装置を取り除いている。
【
図3】
図3は、胴体支持外骨格装置を後方から斜視した図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る受動トルク・ジェネレーターの係合しない位置での側面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した受動トルク・ジェネレーターの第1の係合した位置での側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示した受動トルク・ジェネレーターの第2の係合した位置での側面図である。
【
図7】
図7は、支持胴体のヒューマン・インターフェースの実施形態を示した図である
【
図8】
図8は、支持胴体のヒューマン・インターフェースの他の実施形態を示した図である。
【
図9】
図9は、外骨格装置の外転及び内転の機能を持つ部分の実施形態を示した図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る信号処理プロセッサーを示した図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の制御方法を示した図である。
【
図12】
図12は、本発明の代替的な制御方法を示した図である。
【
図13】
図13は、支持胴体のヒューマン・インターフェースの他の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、人又は着用者に着用されるように構成された胴体支持外骨格装置(以下では、外骨格装置と呼ぶ)100を示している。外骨格装置100は、他の機能に加え、腰椎を前方に屈曲されている間の着用者の背中の筋力を低減する。全般に、外骨格装置100は、着用者の大腿部108及び110に結合するように構成された2つの大腿リンク104及び106と、人の胴体114に結合するように構成された支持胴体112を備えている。支持胴体112は、大腿リンク104及び106と回転可能に結合されているので、支持胴体112に対して大腿リンク104及び106を矢印105及び107に沿って屈曲及び伸展することができる。さらに外骨格装置100は、第1及び第2の相対するトルク・ジェネレーター116(
図1では一方しか図示していない)を備えており、支持胴体112と第1及び第2の大腿リンクの各々との間にトルクを発生することができる。
【0010】
運転中、着用者が矢状面内で前方に屈み、支持胴体112が直線120から外れたとき、少なくとも一方のトルク・ジェネレーター116が支持胴体112とそれに対応する大腿リンク104、106との間に抵抗トルクを課すようになっている。すなわち、線120は、垂直な直線121から所定の角度だけ広がり、トルク・ジェネレーターが作動し始める点を示している。言い換えれば、腰椎が前方に屈曲している間、支持胴体112が垂直から所定の角度を超えて広がっているときに、大腿リンク104、106にトルクが課される。
図2に示すように、この装置は支持胴体112に着用者の胴体114への力122を加えさせ、大腿リンク114、116に着用者の各大腿部108及び110への力124及び126を加えさせる。支持胴体112の所定の部分が垂直から所定の角度よりも広がったときに、大腿リンク104、106にトルクが課されるように外骨格装置100を構成することができる、ということを十分理解されたい。本発明のある実施形態では、胴体112のいずれかの部分が線120を超えて広がるとトルクが課されるようになっている。支持胴体112が全体として曲がった形態に整形されているとき、全般に、大腿リンク104、106にトルクが課されるように外骨格装置100を構成することができる。
【0011】
さらに、運転中に、支持胴体112が線120を外れないときには、トルク・ジェネレーター116は、大腿リンク104及び106のすべての動作範囲において、支持胴体112と大腿リンク104及び106の間に抵抗トルクを一切課さない。人の胴体が実質的に垂直に向いている(すなわち、屈んでも、線120を外れてもいない)限りにおいて、人はいかなる拘束もなく歩き、走り、座ることができることは、この装置の固有の特徴である。トルク・ジェネレーター116は、人の胴体114に対する人の大腿部の角度に拘わらず、人の胴体が所定値の角度Aよりも大きく屈んだときにのみ抵抗トルクを供給するという、固有の特徴を持つ。人の胴体が線120を超えて広がらない限り、人の脚の位置と姿勢に拘わらず、トルク・ジェネレーター116によってトルクが発生することはない。
図3は、本発明において支持胴体112に対し軸109回りに大腿リンク104が屈曲並びに伸展する様子をはっきりと斜視している。
【0012】
図4は、トルク・ジェネレーター116の実施形態を示しているが、各カバーを除いている。各トルク・ジェネレーター116は互いに同じであり、
図4に示した一方のトルク・ジェネレーターについてのみ詳細に説明するということを理解されたい。図示のように、トルク・ジェネレーター116は、支持胴体112に結合した上ブラケット130と、大腿リンク104に結合するとともに上ブラケット130と矢状面内で回転可能に結合した下ブラケット132と、上ブラケット130に回転可能に搭載された弾力性のある振り子134と、下ブラケット132としっかりと結合する係合用ブラケット136を備えている。運転中、
図5に示すように、上ブラケット130の所定の部分が線120を超えると、弾力性のある振り子134が係合用ブラケット136と接触するようになり、上ブラケット130と下ブラケット132の間に抵抗トルクを発生させる。
図4に示すように、上ブラケット130が線120から外れない間、弾力性のある振り子134は係合用ブラケット136と接触しないので、上ブラケット130と下ブラケット132の間には抵抗トルクは一切ない。本発明の幾つかの実施形態では、弾力性のある振り子134は圧縮ばねのように振る舞い、撓むことによって圧縮力をもたらす。本発明の幾つかの実施形態では、係合用ブラケット136と下ブラケット132はワンピースの部位である。
【0013】
図6は、人が腰部で実質的に屈んで、弾力性のある振り子134が圧縮され、その長さが実質的に短縮している状況を示している。
図4、
図5、
図6に示すように、本発明の幾つかの実施形態では、弾力性のある振り子134は、互いに相対的に動くシリンダー204とピストン209からなる空気ばねで構成される。本発明の幾つかの実施形態では、弾力性のある振り子134は、コイルばねである。係合用ブラケット136は、弾力性のある振り子134の先がブラケット136に対して滑るのを許容しないプロファイルを持つ。本明細書で記載する本発明の実施形態では、係合用ブラケット136は、弾力性のある振り子134の先の円形の輪郭と合うプロファイルを持つ。すなわち、係合用ブラケット136は、頂点202で分離された複数の湾曲したディボット202を含むスカラップ上壁200を備えている。弾力性のある振り子134は、湾曲したディボット202の各々の中に収まる大きさの丸いノブの形状をした先端又は停止デバイス210をさらに備えている。
図5に示すように、着用者が線120で表される所定のポイントを超えて屈んだときには、停止デバイス210は湾曲したディボット202の1つと係合し、頂点203によって位置が固定される。したがって、着用者がさらに屈むと、弾力性のある振り子134は場所が固定され、弾力性のある振り子134は圧縮するであろう。本発明の幾つかの実施形態では、湾曲したディボット202内で先端210が滑り運動を起こさないようにするために、上壁200の上面又は先端210の少なくとも一方は摩擦面を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態では、トルク・ジェネレーター116は能動的なシステムである。本発明で利用することができる能動トルク・ジェネレーターの例として、油圧モーター、空気モーター、電気モーターを挙げることができるが、これらに限定される訳ではない。また、電気モーターには、交流(AC)モーター、ブラシ型直流(DC)モーター、ブラシレスDCモーター、電子整流モーター(ECM)、ステッピング・モーター、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定される訳ではない。本発明の幾つかの実施形態では、各トルク・ジェネレーター116は、電気モーターとトランスミッションを備えている。第1及び第2のトルク・ジェネレーター116によって支持胴体112と各大腿リンク104及び106の間に供給される抵抗は、
図1に示される方法により、人の胴体114に力を課す。これらのトルクにより、大腿リンク104及び106が人の大腿部108及び110に力を課すようになる。
【0015】
能動トルク・ジェネレーターを利用したときに抵抗トルクを自動的に調整する方法について、
図10乃至12を用いて以下で説明する。本発明の幾つかの実施形態では、
図10に示すように、外骨格装置100は、トルク・ジェネレーター16のための制御信号242を生成するように構成された信号処理プロセッサー240を備えおり、制御信号242がトルク・ジェネレーター116を駆動する。信号処理プロセッサー240は、信号処理プロセッサー240が受信する入力信号のセットの関数としてのトルク・ジェネレーター116のための制御信号を生成するコントローラー252を組み込んでいる。信号処理プロセッサー240が受信する入力信号の例として、支持胴体112に対する大腿リンク104及び106の角度を表す信号、大腿リンク104及び106に対する支持胴体112の速度を表す信号、大腿リンク104及び106に対する支持胴体112の加速度を表す信号、支持胴体112の絶対角度を表す信号、支持胴体112の絶対速度を表す信号、支持胴体112の絶対加速度を表す信号、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターの動きを表す信号、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターの速度を表す信号、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターの加速度を表す信号、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターのトルクを表す信号、少なくとも一方のトルク・ジェネレーターの力を表す信号、人の動きを表す信号、人が屈む角度を表す信号、人が屈む速度を表す信号、人が屈む加速度を表す信号、人102と支持胴体112の間の接触力を表す信号、人の筋電(EMG)信号、並びに上記の信号の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定される訳ではない。
【0016】
コントローラー252に必要な信号情報を供給するために、さまざまなセンサーを利用することができる。
図11に示す1つの好ましい実施形態では、支持胴体112は、第1のセンサー244からの出力を表す第1の信号246を生成する第1のセンサー244を備えている。第1の例では、第1のセンサー244は、絶対角度センサーであり、第1の信号246は人102又は支持胴体112が線120又は線121(
図1に示される)に対して前方に屈んだ角度を表す絶対角度信号である。しかしながら、第1のセンサー244は、速度センサー、加速度計、又は、その他のタイプの動きセンサーであってもよい、ということを十分理解されたい。支持胴体112は、第2のセンサー248からの出力を表す第2の信号250を生成する第2のセンサー248(
図11に示される)を備えていてもよい。一例では、第2のセンサー248は角度センサーであり、第2の信号250は大腿リンク104又は106に対する支持胴体112の角度を表す角度信号である。一般に、第2のセンサー248は、トルク・ジェネレーター116の中に含まれるか、又は、トルク・ジェネレーター116が搭載されている大腿リンク104又は106又は支持胴体112上の同じ場所に搭載されている。しかしながら、第2のセンサー248はトルク・ジェネレーターの動きセンサー、トルク・ジェネレーターの速度センサー、トルク・ジェネレーターの加速度計、トルク・ジェネレーターのトルク又は力センサー、又はいずれかの標準的な動きセンサーであってもよい、ということを十分理解されたい。運転中、
図11に示すように、信号処理プロセッサー240は、第1の信号246又は第2の信号250の関数としてのトルク・ジェネレーター116のための制御信号242を生成する。すなわち、コントローラー252は、第1及び第2の信号246及び250を、制御信号252を生成するためのフィードバック信号として利用する。使用されているコントローラーのタイプは、抵抗トルクの大きさを決定する。当業者であれば、示されたタスクをコントローラー252が実現するためのアルゴリズムのバラエティーを見出すことができるであろう。一般に、大きなゲインを持つコントローラーは大きな抵抗トルクにつながる一方、小さなゲインを持つコントローラーは小さな抵抗トルクを来たす。
【0017】
図12に示されるように、外骨格装置100は、着用者102と支持胴体112の間の力又は圧力を表す力又は圧力信号262を生成する力又は圧力センサー260を備えていてもよい。運転中、信号処理プロセッサー240は、力又は圧力信号262の関数としてのトルク・ジェネレーター116のための制御信号242を生成する。すなわち、コントローラー252は、制御信号242を生成するためのフィードバック信号として力又は圧力信号262を利用する。
【0018】
上記の議論から、コントローラー252は、センサー244、248、又は260からの信号246、250、又は262に基づいてトルク・ジェネレーター116を作動させるように、さまざまな方法でプログラムし構成することができる、ということを十分理解されたい。本発明の幾つかの実施形態では、抵抗トルクは、人102がどれだけ前方に屈んでいるかの関数である。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、人102が前方に屈むにつれて、抵抗トルクが増加する。本発明の幾つかの実施形態では、抵抗トルクは、人102と線120の間の角度の関数である。本発明の幾つかの実施形態では、人102と垂直な線121(
図2に示されている)の間の角度が増加するにつれて、抵抗トルクが線形的に増加する。本発明の幾つかの実施形態では、抵抗トルクは、支持胴体112が大腿リンク104又は106に向かってどれだけ動いているかの関数である。本発明の幾つかの実施形態では、抵抗トルクは、支持胴体112と垂直な線121の間の角度の関数である。本発明の幾つかの実施形態では、支持胴体112と垂直な線121の間の角度が増加するにつれて、抵抗トルクが線形的に増加する。本発明の幾つかの実施形態では、第1及び第2のトルク・ジェネレーターによって課される抵抗トルクが着用者の屈む動作の少なくとも1つのセグメント内では通常一定となるように調整するように構成されている。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態では、
図1並びに
図3に示すように、支持胴体112は、人の胴体114に結合するように構成されたヒューマン・インターフェース142と、ヒューマン・インターフェース142に結合するように構成されたフレーム140を備えている。フレーム140は大腿リンク104及び106と回転可能に結合しており、大腿リンク104及び106は、フレーム140に対して伸展及び屈曲することができる。フレーム140は、上記の機能を実現することができれば、いかなる素材又は素材の組み合わせで構成してもよい。フレーム140の素材は、例えばアルミニウム材料、プラスチック材料、炭素繊維材料、金属素材、並びにこれらの組み合わせでよいが、これらに限定される訳ではない。本発明の幾つかの実施形態では、フレーム140は、互いに結合し又はヒンジ結合した複数の部品で構成される。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、
支持胴体112´は、人の背中と接続する背面パネル160を備え
たヒューマン・インターフェース142を含んでいる。本発明の幾つかの実施形態では、背面パネル160は、人の背中に倣って変形する。本発明の幾つかの実施形態では、ヒューマン・インターフェース142は、人に結合するように構成されたショルダー・ストラップ150を少なくとも1つさらに備えている。
図1の実施形態を再び参照すると、付加的な支持を与えるように、着用者の胴体114の前面と係合するように適合された前面パネル151をさらに備えていてもよい。ヒューマン・インターフェース142は、上記の機能を実現することができれば、いかなる素材又は素材の組み合わせで構成してもよい。ヒューマン・インターフェース142の素材は、例えば織物素材、プラスチック素材、ベルト、革素材、炭素繊維素材、金属素材、並びにこれらの素材の組み合わせでよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態では、
図7に示すように、ヒューマン・インターフェース142は、軸144に沿ってフレーム140に対してスライド可能である(すなわち、フレーム140の長さ方向に沿ってスライド可能である)。矢印146で示される滑り運動によって、着用者は屈曲操作が容易になる。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態では、
図7に示すように、ヒューマン・インターフェース142は、軸144回りにフレーム140に対して回転可能である。矢印148はこの回転運動を示している。この回転により、人は足を動かすことなく自分の上半身を捻ることができる。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態では、
図8に示すように、
支持胴体112″は、軸170回りにフレーム140に対して回転可能
なヒューマン・インターフェース142を含んでいる。矢印172はこの回転運動を示している。この回転により、人は屈曲操作が容易になる。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、
図13に示すように、ヒューマン・インターフェース142は、軸220回りにフレーム140に対して回転可能である。矢印222はこの回転運動を示している。この回転により、人は屈曲操作が容易になる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、図面に示すように、大腿リンク104及び106の各々は、人の大腿部108及び110に結合するように構成された、少なくとも1つの大腿ストラップ180及び182をさらに備えている。大腿ストラップ180及び182は、上記の機能を実現できるものであれば、いかなる素材又は素材の組み合わせで構成してもよい。大腿ストラップ180及び182の素材は、例えば、織物素材、プラスチック素材、ベルト、革素材、炭素繊維素材、金属素材、並びにこれらの組み合わせであるが、これらに限定される訳ではない。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態では、
図9に示すように、フレーム140は、2つのロータリー外転−内転ジョイント190及び192をさらに備えており、各大腿リンク104及び106が支持胴体112に対して外転及び内転できるようになっている。
図9に示すように、軸193及び194は、外転及び内転ジョイントの軸を表している。
図9は、支持胴体112の大腿リンク104が外転した部分を示している。
【0027】
本発明の好ましい実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明の本質から逸脱することなしに、本発明に対してさまざま変更や修正を行なうことができるということを十分理解されたい。例えば、さまざまヒューマン・インターフェース、大腿ストラップ、並びにトルク・ジェネレーターをさまざまな方法で組み合わせて、全体的に異なる本発明の実施形態を作ることができる。一般に、本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0028】
100…胴体支持外骨格装置
104、106…大腿リンク
112…支持胴体
116…トルク・ジェネレーター
130…上ブラケット
132…下ブラケット
134…弾力性のある振り子
136…係合用ブラケット
140…フレーム
142…ヒューマン・インターフェース
150…ショルダー・ストラップ
151…前面パネル
160…背面パネル
180、182…大腿ストラップ
190、192…ロータリー外転−内転ジョイント
200…スカラップ上壁
202…ディボット
204…シリンダー
209…ピストン
210…先端又は停止デバイス
240…信号処理プロセッサー
252…コントローラー
244…第1のセンサー
248…第2のセンサー
260…圧力センサー