(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
湿疹は、多くのタイプの皮膚炎症に関する一般的な用語であり、皮膚炎としても知られている。最も一般的な湿疹の形態は、アトピー性湿疹又は皮膚炎である(多くの開業医は、湿疹と皮膚炎という用語を区別無く使用していることに留意されたい)。しかし、その他の多くの異なる形態の湿疹が存在し、特に、接触性湿疹、アレルギー性接触性湿疹、脂漏性湿疹、貨幣状湿疹、神経皮膚炎、うっ血性皮膚炎、異汗性湿疹が挙げられる。
【0003】
湿疹は、あらゆる人種の人々に生じるものであり、あらゆる年齢の人々が罹患する可能性があるが、その症状は乳幼児において最も一般的であり、約85%の人々が5才より前に発症する。典型的には、湿疹が3歳までに恒久的に回復するのは、発症した乳幼児の約半数に過ぎない。その他の人々では、症状は一生を通じて再発する傾向にある。湿疹を有する人々は、湿疹症状の家族歴、又は喘息及び/又は花粉症などの他のアレルギー性症状の家族歴を有することが多い。小児のおよそ20%及び成人のおよそ1%乃至5%が湿疹を有すると考えられている。このことは、米国だけでもおよそ千五百万人を超える人々がこの疾患の症候を発現していることを意味する。湿疹は接触感染性であるという知見はないが、少なくとも部分的に遺伝すると考えられる。従って、同じ家族の構成員が罹患していることを見出すことは珍しくない。
【0004】
医師は湿疹の正確な原因を知らないとしても、障壁として皮膚の機能を損なう皮膚の欠陥が、おそらくは免疫系の異常機能と組み合わされたものが、重要な因子であると考えられる。研究によれば、アトピー性皮膚炎を有する人々には、正常な皮膚の障壁を維持するために重要な特定のタンパク質(例えば、フィラグリン)に異常を生じさせる遺伝子の欠陥があることが示されている。ある種の形態の湿疹は、皮膚と接触する物質、例えば、石けん、化粧品、衣服、洗剤、宝飾品、又は汗がトリガーになることがある。環境アレルゲン(アレルギー反応を引き起す物質)もまた、湿疹の発生を引き起こすことがある。温度又は湿度の変化、さらには心理的ストレスでさえも、人によっては湿疹の発生をもたらしかねない。
【0005】
湿疹は、最も一般的には、痒み及び/又は火照りを伴う乾燥し、発赤した皮膚を生じさせるが、湿疹の外観は人によって異なり、湿疹の特定のタイプによって異なる。一般に、強い痒みが、ほとんどの人々の湿疹による最初の症状である。ときには湿疹は水疱及び滲出損傷をもたらすこともあるが、湿疹は乾燥した鱗状皮膚を生じさせることもある。繰返し引っ掻くことで、肥厚した硬い皮膚が生じることがある。
【0006】
身体のあらゆる部分が湿疹に冒される可能性があるが、小児及び成人では、湿疹は典型的には、顔、首、並びに肘、膝及び足首の内側に発生する。乳幼児では、湿疹は典型的には、額、頬、前腕、脚、頭皮、及び首に発生する。
【0007】
湿疹は、ときには、数時間又は数日間のみの症状を生じる短期的反応として生じることもあるが、他の場合には、症状は長期にわたって持続し、慢性皮膚炎と呼ばれる。
【0008】
アトピー性湿疹又は皮膚炎、接触性湿疹、アレルギー性接触性湿疹、脂漏性湿疹、貨幣状湿疹、神経皮膚炎、うっ血性皮膚炎、及び異汗性湿疹を含む、多くの異なる形態の湿疹がある。
【0009】
アトピー性皮膚炎は、痒みを伴う炎症性皮膚によって特徴付けられる慢性皮膚疾患であり、最も一般的な湿疹の原因である。症状は、トリガー又は原因因子への露出に応じて、現れたり消えたりする傾向がある。アトピー性皮膚炎を引き起こし得る因子(アレルゲン)として、かび、花粉、又は汚染物質のような環境因子、石けん、洗剤、ニッケル(宝飾品内に存在する)、又は香水のような刺激物との接触、食物アレルギー、又はその他のアレルギーが挙げられる。症状を起こす人々の3分の2近くが、1歳未満で発症している。疾患が乳児期に始まる場合、ときとして乳児湿疹と呼ばれる。
【0010】
接触性湿疹(即ち、接触性皮膚炎)は、皮膚がアレルゲン(個人が感作するアレルギー誘発物質)又は一般的刺激物、例えば、酸、洗浄剤若しくは他の化学物質と接触した部分での発赤、痒み、及び火照りを含む限局的な反応である。接触性湿疹の他の例としては、洗濯洗剤、石けん、ニッケル(宝飾品内に存在する)、化粧品、繊維、衣類、及び香水に対する反応が挙げられる。個人が接触した物質は膨大な数になるので、接触性皮膚炎のトリガーを判定することは難しい場合がある。トリガーがアレルゲンである場合、症状はアレルギー性接触性湿疹(即ち、アレルギー性接触性皮膚炎)と呼ばれることがあり、トリガーが刺激物である場合、刺激性接触性湿疹(刺激性接触性皮膚炎)と呼ばれることがある。ツタウルシ、オーク及び/又はウルシに対する皮膚の反応は、アレルギー性湿疹の例である。アレルギーの病歴を有する人々は、接触性湿疹を発症するリスクが高い。
【0011】
脂漏性湿疹(即ち、脂漏性皮膚炎)は、原因不明の皮膚炎症である。脂漏性湿疹の徴候及び症状は、頭皮、顔、及びときには身体の他の部分の皮膚の、黄色い油性の鱗状の斑点(patch)を含む。ふけ及び乳幼児の「乳痂」は、脂漏性湿疹の例である。脂漏性皮膚炎では、顔の頬のしわ及び/又は鼻の襞部に炎症を生じるのがごく普通である。脂漏性皮膚炎は、必ずしも痒みを伴うとは限らない。この症状は、遺伝する傾向がある。精神的ストレス、油性肌、洗髪をあまり頻繁に行わないこと、及び天候条件は、全て、個人が脂漏性湿疹を発症するリスクを高める。1つのタイプの脂漏性湿疹はまた、AIDSに罹患した人々に共通する。
【0012】
貨幣状湿疹(即ち、貨幣状皮膚炎)は、最も一般的には腕、背中、臀部、及び下肢に位置する炎症皮膚のコイン形状の斑点によって特徴付けられ、これは、痂皮状になり、鱗状にはがれ落ち、非常に強い痒みを伴うことがある。この形態の湿疹は、比較的珍しく、最も多くは高齢男性に生じる。貨幣状湿疹は普通、慢性症状である。アトピー性皮膚炎、喘息、又はアレルギーの個人の病歴又は家族歴は、発症のリスクを高める。
【0013】
神経皮膚炎は、慢性単純性苔癬としても知られ、掻くと刺激が強くなる限局的な痒み(例えば、虫さされ)で始まる、引っ掻き−痒みのサイクルによって引き起される慢性皮膚炎症である。女性の方が通常、男性よりも神経皮膚炎に冒され易く、症状は20−50歳の人々に最も多い。この形態の湿疹は、頭部、下肢、手首、又は前腕の皮膚に鱗状斑点を生じさせる。長い間に皮膚が肥厚してがさがさになる。ストレスが神経皮膚炎の症状を悪化させることがある。
【0014】
うっ血性皮膚炎は、下肢の皮膚炎症であり、一般に静脈内の弁の機能が損なわれた静脈不全として知られる循環障害に関連する。うっ血性皮膚炎は、ほとんど例外無く中高年の人々に起こり、50歳以上の人口のおよそ6%乃至7%がこの症状に冒されている。うっ血性皮膚炎を発症するリスクは、年齢が進むと共に増大する。症状は、片足又は両足の皮膚の痒み及び/又は赤褐色の変色を含む。症状が進行すると、水疱を形成し、他の形態の湿疹に見られる滲出性皮膚損傷が生じることがあり、そして患部に潰瘍が生じることがある。慢性循環障害は、脚部での体液の蓄積又は浮腫を増やすことになる。うっ血性皮膚炎はまた、静脈瘤性湿疹とも呼ばれている。
【0015】
異汗性湿疹(即ち、異汗性皮膚炎)は、手掌及び足底の皮膚の刺激であり、痒み及び火照りを伴う透明な深い水疱によって特徴付けられる。異汗性湿疹の原因は不明である。異汗性湿疹はまた、水疱性掌蹠皮膚炎、発汗異常症、又は汗疱としても知られる。この形態の湿疹が生じるのは手湿疹をもつ人々の20%に達し、春及び夏の期間並びに暖かい気候でより多く生じる。
【0016】
出願人が知る限り、今日まで、湿疹の治療の伝統的な目標は、痒み、炎症、及び/又は症状の悪化を単に最小にすることであった。湿疹の治療は、典型的には生活様式の変更及び薬剤の使用の両方を伴うものであった。
【0017】
幾つかの症例では、皮膚の炎症反応を減らすためにコルチコステロイドのクリームが処方されてきた。しかし、そのようなクリームには多くの欠点がある。加えて、タクロリムス(Protopic)及びピメクロリムス(Elidel)という2つの局所用(クリーム)薬が、米国FDAにより湿疹治療用に認可されている。これらの薬物はカルシニューリン阻害剤として知られる免疫抑制剤のクラスに属する。2005年に、FDAは、これらの薬物の使用に関して、これらの薬物の使用と特定のタイプのがんの発症との間の関連の可能性を示す動物実験の研究を引用して警告を発した。従って、カルシニューリン阻害剤の使用は、発がん性及び他の観点から問題があるように思われる。
【0018】
上記の治療法は、湿疹に冒されている人々に少なくともある程度の緩和をもたらすように見えるが、特に上記の治療法はいずれも、湿疹の衰弱させる影響からの、重大な欠点のない十分な治療的緩和をもたらさないので、そのような治療は、依然として望ましいものではなく、及び/又は問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の目的は、人が湿疹に冒されたときに現れる症状からの時宜を得た緩和をもたらす湿疹治療方法を提供することである。
本発明のこれら及び他の目的は、本明細書、特許請求の範囲、及び図面を考慮することにより明白となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一実施形態において本発明は、イソチオシアネート官能性界面活性剤を湿疹患部に適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここでイソチオシアネート官能性界面活性剤は、該イソチオシアネート官能性界面活性剤の脂肪族及び/又は芳香族炭素原子に会合した少なくとも1つのイソチオシアネート官能基を含む。
【0022】
本発明の別の実施形態において、湿疹を治療する方法は、湿疹患部からイソチオシアネート官能性界面活性剤を除去するステップを含む。
【0023】
さらに別の例示的な実施形態において、本発明は、(a)湿疹患部にイソチオシアネート官能性界面活性剤を適用するステップであって、ここでイソチオシアネート官能性界面活性剤が、該イソチオシアネート官能性界面活性剤の脂肪族及び/又は芳香族炭素原子に会合した少なくとも1つのイソチオシアネート官能基を含む、適用するステップと、(b)湿疹患部からイソチオシアネート官能性界面活性剤を除去するステップと、(c)イソチオシアネート官能性界面活性剤を患部に適用するステップ及び患部から除去するステップを繰返すステップと、を含む湿疹を治療する方法に向けられる。
【0024】
本発明はまた、湿疹患部をイソチオシアネート官能性界面活性剤で洗浄するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここでイソチオシアネート官能性界面活性剤は、該イソチオシアネート官能性界面活性剤の脂肪族及び/又は芳香族炭素原子に会合した少なくとも1つのイソチオシアネート官能基を含む。
【0025】
本発明はさらに、湿疹患部にリシン誘導体を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここでリシン誘導体は、α−窒素及びε−窒素を含み、少なくとも約8個の炭素原子を含むアルキル及び/又はアルカノイル置換基がα−窒素に会合し、さらに少なくとも1つのイソチオシアネート官能基がε−窒素に会合する。
【0026】
本発明はさらに、湿疹患部に界面活性剤を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化1】
この界面活性剤は、無極性部分(NP)及び極性部分(P)を含み、少なくとも1つのイソチオシアネート官能基(NCS)が極性及び/又は無極性部分に会合している。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化2】
式中、R
1は約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、R
2はNCSを含み、R
3−R
5は、同じ又は異なり、H、OH、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、但し、R
3−R
5の少なくとも1つは、約8個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含む。
【0028】
本発明はまた、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化3】
式中、Xは約1から約25までの範囲の整数を含み、Yは約6から約25までの範囲の整数を含む。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表される。
【化4】
【0030】
別の実施形態において、本発明は、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化5】
式中、R
1は約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、R
2はNCSを含み、R
3−R
5は、同じ又は異なり、H、OH、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、但し、R
3−R
5の少なくとも1つは、約8個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、Xは、それらに限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、sブロック金属、dブロック金属、pブロック金属、NZ
4+といった対陽イオンを含み、ここでZは、H、R
6、及び/又はOR
6を含み、ここでR
6は、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができる。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、付加的な界面活性剤を適用するステップをさらに含む、上記に開示した湿疹を治療する方法に向けられ、ここで付加的な界面活性剤は、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及びそれらの組合せを含む群の少なくとも1つから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、多くの異なる形態での実施形態が可能であるが、本開示は本発明の原理の例証であると見なされるべきで、説明された実施形態に本発明を限定することを意図したものではないとの理解のもとで、本明細書では幾つかの特定の実施形態が詳細に図面に示され且つ説明される。
【0033】
本発明により、驚くほど効果的な湿疹治療方法が本明細書で提供される。具体的には、アトピー性湿疹、接触性湿疹、アレルギー性接触性湿疹、脂漏性湿疹、貨幣状湿疹、神経皮膚炎、うっ血性皮膚炎、及び異汗性湿疹を含む複数のタイプの湿疹を治療する方法が開示される。
【0034】
一実施形態において本発明は、湿疹患部に1つ又はそれ以上のイソチオシアネート官能性界面活性剤を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられる。イソチオシアネート官能性界面活性剤は、該イソチオシアネート官能性界面活性剤の脂肪族及び/又は芳香族炭素原子に会合した1つ又はそれ以上のイソチオシアネート官能基を含むことが好ましい。湿疹患部は、身体症状発現部分の近くの及び/又は隣接する部分を含むものとすることができることを理解されたい。身体症状には、数例を挙げただけでも、例えば、不快感、痒み、火照り、紅斑、水疱、表皮壊死、落屑、変色、及び/又は色素沈着過剰が含まれる。さらに、イソチオシアネート官能性界面活性剤は、その通常の意味に関わらず、本明細書では、それに会合した(associated)イソチオシアネート官能基を有する界面活性剤として定義されることを理解されたい。さらに、会合したという用語は、本明細書において化学的文脈で用いられる場合、その通常の意味に関わらず、付着した(attached)、共有結合、極性共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、静電相互作用、直接的及び/又は間接的に連結した、等と定義されることを理解されたい。
【0035】
界面活性剤(surface−active−agent)という用語の短縮形に由来する界面活性剤(surfactant)という用語は、本明細書では、その界面活性剤がその中に存在する液体(水性及び非水性)の界面特性を改変することができる、分子及び/又は分子群として定義される。これらの分子の界面活性剤特性は、各々の界面活性剤分子が親水性部分と疎水性(又は親油性)部分の両方を有すること、及び、これらの各々の部分の程度が、臨界ミセル濃度(即ち、CMC)又はそれ以下の濃度でそれら分子が一般に気液界面に集中し界面張力を著しく減少させるように釣り合わされていることから生じる、両親媒性特性に帰される。例えば、飽和カルボン酸のナトリウム塩は、C8の長さまでは水に極めてよく溶解するので真の界面活性剤ではない。それらは、C9からC18までの長さでは水にあまり溶けなくなり、それがこの種類の化合物の有効な界面活性剤の範囲である。C16鎖長から始まるカルボン酸(脂肪酸)は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0036】
いずれの特定の理論にも束縛されることなく、本明細書で開示するイソチオシアネート官能性界面活性剤は、身体の免疫システムを増強することによって、多くの形態の湿疹の治療を促進すると考えられる。また、本明細書で開示するイソチオシアネート官能性界面活性剤は、特に、発がん性物質及び/又は活性化された発がん性物質を解毒するのみならず体内の炎症反応を調節すると考えられる、第二相酵素(例えば、HAD(P)Hキニーネ酸化還元酵素)の上昇を促進すると考えられる。
【0037】
本発明により、イソチオシアネート官能性界面活性剤は、1つ又はそれ以上の界面活性剤が皮膚の上にとどまり、直ちに及び/又は恒久的に皮膚からすすぎ落とされない局所残留製品(topical leave−on product)として使用することができる。代替的に、本発明のイソチオシアネート官能性界面活性剤は、適用してすすぐ方式の局所洗浄剤として使用することができる。どちらの場合にも、イソチオシアネート官能性界面活性剤は、一般に人の皮膚に対して穏和(例えば、無刺激性又は低刺激性)であることが好ましい。特に、アミノ酸から誘導される陰イオン性Nアルカノイル界面活性剤は、完全に予測可能ではないが穏和である傾向を有するので、特に好ましい。本発明において詳述される調製の方法では、少なくとも2つのアミン官能性を有し、少なくともその1つがNアルカノイル官能性に転化され、且つ少なくともその1つがイソチオシアネート官能性に転化される、アミノ酸が使用されるが、それらに限定されない。このアミノ酸としては、α−アミノ酸である、リシン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,7−ジアミノヘプタン酸、及び2,8−ジアミノオクタン酸が挙げられるが、それらに限定されない。さらに、α−アミノ酸以外のβ−アミノ酸などのアミノ酸を用いることができる。アミノ酸由来の界面活性剤はその穏和な性質のゆえに好ましいが、他の多くの界面活性剤のいずれもが本発明での使用について同様に企図されることを理解されたい。
【0038】
イソチオシアネート官能性界面活性剤及び/又はそれらの前駆体を調製する方法は、アミン官能性のイソチオシアネート官能性への転化を含むが、それに限定されない。アミン官能性のイソチオシアネート官能性への転化の方法としては、(1)二硫化炭素との反応により中間体であるジチオカルバメートを生じさせ、次にクロロギ酸エチル、又はビス(トリクロロメチル)カーボネート、クロロギ酸トリクロロメチル若しくはホスゲンといったその官能性等価物と反応させること、(2)チオホスゲンとの反応、(3)1,1’−チオカルボニルジイミダゾールとの反応、(4)チオクロロギ酸フェニルとの反応、(5)アンモニウム又はアルカリ金属チオシアネートと反応させて中間体であるチオ尿素を調製し、次に加熱により開裂させてイソチオシアネートとすること、及び(6)ハロゲン化イソチオシアナトアシル[SCN−(CH
2)
n−CO−Cl]との反応、が挙げられるそれらに限定されない。得られるイソチオシアネート官能性界面活性剤は、調製方法に応じて、純物質として、又は他の界面活性剤との混合物として分離することができる。得られるイソチオシアネート官能性界面活性剤は、調製方法に応じて、非イオン型、陰イオン型、陽イオン型、双性イオン(両性イオン)型で、及び/又は、中性界面活性剤前駆体がプロトン化カルボン酸基を有し、塩基との反応(脱プロトン化)により該中性界面活性剤前駆体が陰イオン界面活性剤に転化される場合には、水酸化ナトリウム又はトリエタノールアミンといった塩基と組み合わされた中性界面活性剤前駆体型で、若しくは、中性界面活性剤前駆体がアミン官能性を有し、酸との反応(プロトン化)により該中性界面活性剤前駆体が陽イオン界面活性剤に転化される場合には、酸と組み合わされた中性界面活性剤前駆体型で、分離され、直接用いることができる。
【0039】
本発明によれば、適用するステップは、噴霧すること、滴下すること、軽く塗り付けること、擦り込むこと、ブロットすること、浸すこと、及びそれらの任意の組合せを含むが、それらに限定されない。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、イソチオシアネート官能性界面活性剤は、所定期間後に患部から除去される。そうした期間は、秒(例えば、1秒間、2秒間、5秒間、10秒間、15秒間、20秒間、30秒間、45秒間、及び60秒間)、分(例えば、1分間、2分間、5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、45分間、及び60分間)、時間(例えば、1時間、2時間、4時間、5時間、8時間、10時間、15時間、24時間、36時間、48時間、及び60時間)、日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、21日、30日)などを含むが、これらに限定されない。除去するステップは、数例を挙げただけでも、すすぎ、拭き取り、及び/又は抽出によって行われることが好ましいことが理解されるであろう。
【0041】
被験者又は湿疹の重篤度に応じて、多回適用が必要となることがある。従って、イソチオシアネート官能性界面活性剤を適用するステップ及び/又は除去するステップは、1回又は複数回繰返すことができる。
【0042】
本発明はまた、リシン誘導体を湿疹患部に適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここでリシン誘導体は、α−窒素及びε−窒素を含む。少なくとも約8個の炭素原子を含むアルキル置換基がα−窒素に会合することが好ましい。少なくとも1つのイソチオシアネート官能基がε−窒素に会合することが好ましい。
【0043】
本発明はさらに、湿疹患部に界面活性剤を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤は以下の化学構造で表され、
【化6】
ここで界面活性剤は、無極性部分(NP)と極性部分(P)とを含み、少なくとも1つのイソチオシアネート官能基(NCS)が極性部分及び/又は無極性部分に会合する。
【0044】
本発明はさらに、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化7】
式中、R
1は、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、R
2はNCSを含み、R
3−R
5は、同じ又は異なり、H、OH、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、但し、R
3−R
5の少なくとも1つは、約8個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含む。
【0045】
この実施形態において、界面活性剤は以下の化学構造で表されることが好ましく、
【化8】
式中、Xは約1から約25までの範囲の整数を含み、Yは約6から約25までの範囲の整数を含む。
【0046】
界面活性剤は以下の化学構造で表されることがより好ましい。
【化9】
【0047】
別の実施形態において、本発明は、湿疹患部に界面活性剤又はその薬学的に許容される塩を適用するステップを含む湿疹を治療する方法に向けられ、ここで界面活性剤のプロトン化形は以下の化学構造で表され、
【化10】
式中、R
1は、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、R
2はNCSを含み、R
3−R
5は同じ又は異なり、H、OH、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができ、但し、R
3−R
5の少なくとも1つは、約8個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、Xは、それらに限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、sブロック金属、dブロック金属、pブロック金属、NZ
4+といった対陽イオンを含み、ここでZは、H、R
6及び/又はOR
6を含み、ここでR
6は、約1個から約25個までの炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、アルコキシ、アルカノイル、アロイル、アルケニル、アルキニル及び/又はシアノ基を含み、ここで炭素原子は、ハロゲン、N、O、及び/又はS含有部分への連結基又はその部分、及び/又は、アルコール、エステル、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びそれらの組合せを含む1つ又はそれ以上の官能基への連結基又はその部分、ダイマーへの連結部、オリゴマーへの連結部、及び/又はポリマーへの連結部とすることができる。
【0048】
本発明によれば、イソチオシアネート官能性界面活性剤はまた、1つ又はそれ以上の付加的な界面活性剤と組み合わせることができ、ここで付加的な界面活性剤は、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及びそれらの組合せを含む群の少なくとも1つから選択される。
【0049】
好ましい陰イオン面活性剤の非限定的な例としては、タウリン塩;イセチオン酸塩;アルキル及びアルキルエーテル硫酸塩;スクシナミン酸塩;アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩;オレフィンスルホン酸塩;アルコキシアルカンスルホン酸塩;天然植物又は動物源由来の又は合成により調製された脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩;アルキル化及びアシル化アミノ酸及びペプチドのナトリウム、カリウム、アンモニウム、及びアルキルアンモニウム塩;アルキル化スルホ酢酸塩;アルキル化スルホコハク酸塩;アシルグリセリドスルホン酸塩、アルコキシエーテルスルホン酸塩;リン酸エステル;リン脂質;及びこれらの組合せが挙げられる。使用が企図される具体的な陰イオン界面活性剤としては、決してそれらに限定されるものではないが、ココイルイセチオン酸アンモニウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ステアロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウレススルホコハク酸2ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸TEA、TEAココイルアラニナート、ココイルタウリンナトリウム、セチルリン酸カリウムが含まれる。
【0050】
好ましい陽イオン界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル化4級アンモニウム塩R
4NX、アルキル化アミノアミド(RCONH−(CH
2)
n)NR
3X、アルキルイミダゾリン、アルコキシ化アミン、及びこれらの組合せが挙げられる。使用が企図される陰イオン界面活性剤の具体的な例としては、決してそれらに限定されるものではないが、塩化セチルアンモニウム、臭化セチルアンモニウム、塩化ラウリルアンモニウム、臭化ラウリルアンモニウム、塩化ステアリルアンモニウム、臭化ステアリルアンモニウム、塩化セチルジメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルアンモニウム、臭化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルセチルジタロウジメチルアンモニウム、塩化ジセチルアンモウニウム、塩化ジラウリルアンモニウム、臭化ジラウリルアンモニウム、塩化ジステアリルアンモニウム、臭化ジステアリルアンモニウム、塩化ジセチルメチルアンモニウム、臭化ジセチルメチルアンモニウム、塩化ジラウリルメチルアンモニウム、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、臭化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ジタロウジメチルアンモニウム、硫酸ジタロウジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化タロウ)ジメチルアンモニウム、酢酸ジ(水素化タロウ)ジメチルアンモニウム、リン酸ジタロウジプロピルアンモニウム、硝酸ジタロウジメチルアンモニウム、塩化ジ(ココナツアルキル)ジメチルアンモニウム、臭化ジ(ココナツアルキル)ジメチルアンモニウム、塩化タロウアンモニウム、塩化ココナツアンモニウム、塩化ステアルアミドプロピルPGイモニウムホスフェート、エト硫酸ステアルアミドプロピルエチルジモニウム、塩化ステアルイミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)アンモニウム、ステアルアミドプロピルジメチルセテアリルアンモニウムトシラート、塩化ステアルアミドプロピルジメチルアンモニウム、乳酸ステアルアミドプロピルジメチルアンモニウム、塩化ジタロウイルオキシエチルジメチルアンモニウム、塩化ベヘナミドプロピルPGジモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジミリスチルジメチルアンモニウム、塩化ジパルミチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアルアミドプロピルPGジモニウムホスフェート、エト硫酸ステアルアミドプロピルエチルジアンモニウム、塩化ステアルアミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)アンモニウム、ステアルイミドプロピルジメチルセテアリルアンモニウムトシラート、塩化ステアルアミドプロピルジメチルアンモニウム、乳酸ステアルアミドプロピルジメチルアンモニウムが挙げられる。
【0051】
好ましい非イオン界面活性剤の非限定的な例としては、アルコール、アルカノールアミド、アミンオキシド、エステル(グリセリド、エトキシ化グリセリド、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、炭水化物エステル、エトキシ化カルボン酸、リン酸トリエステルを含む)、エーテル(エトキシ化アルコール、アルキルグルコシド、エトキシ化ポリプロピレンオキシドエーテル、アルキル化ポリエチレンオキシド、アルキル化ポリプロピレンオキシド、アルキル化PEG/PPOコポリマーを含む)、シリコーンコポリオールが挙げられる。使用が企図される考慮された非イオン界面活性剤の具体的な例としては、決してそれらに限定されるものではないが、セテアリルアルコール、セテアレス−20、ノノキシノール−9、C12−C15パレス−9、POE(4)ラウリルエーテル、コカミドDEA、ジステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG−100、ステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸PEG−8、トリラウリン酸ポリグリセリル−10、ラウリルグルコシド、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ラウリン酸PEG−4、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ポリソルベート−60、イソステアリルパルミチン酸PEG−200、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート−80が挙げられる。
【0052】
好ましい双性イオン又は両性界面活性剤の非限定的な例としては、ベタイン、スルタイン、ヒドロキシスルタイン、アミドベタイン、アミドスルホベタイン、及びこれらの組合せが挙げられる。使用が企図される両性界面活性剤の特定の例としては、決してそれらに限定されるものではないが、ココアミドプロピルスルタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、セチルジメチルベタイン、ラウリル(2−ビスヒドロキシ)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス−(2−ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマカルボキシプロピルベタイン、ラウリルビス−(2−ヒドロキシプロピル)アルファカルボキシメチルベタイン、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタイン、オレイルベタイン、コカミドプロピルベタインが挙げられる。
【0053】
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0054】
実施例1
Nα−ラウロイル−Nε−イソチオシアナト−L−リシンとNα,Nε−ビス−ラウロイル−L−リシンとの混合物の調製
オーバーヘッド機械式ステンレス鋼パドル型撹拌器を取付けた1リットルのビーカに、100mLの1M NAOH(0.100モル)を入れた。撹拌を開始し、ビーカを塩/氷浴を用いて−5℃乃至−10℃に冷却した。次に、23.4g(0.100モル)のN
ε−ベンジリデン−L−リシン(非特許文献1の方法によって調製した)を加えた。その直後に、溶液を冷却したまま、140mL(0.140モル)の予冷した(塩/氷浴内で)1M NaOH及び26.1mLの塩化ラウロイルを、2つの等しい部分に分けて6分間にわたって加えた。混合物を−5℃乃至−10℃でさらに10分間撹拌し、次いで氷浴を取り除き、反応混合物をさらに1時間撹拌して室温まで温めた。次に、塩/氷浴を用いて反応混合物を冷却し、次いで、十分量の濃HClを加えてpHを7.5−7.8に調整した。pH7.5−7.8で冷却及び撹拌を続けながら、4.6mL(化学量論量の60%、0.068モル)のチオホスゲンを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。この間、十分量の1M NaOHを加えてpH範囲を7.5−7.8に維持した。チオホスゲンの添加が完了した後、pHが7.5−7.8の範囲に安定化するまで、必要に応じて追加の1M NaOHを加えた。次に、十分量の30%NaOHを加えてpHを約8.5に調整した。次に12mL(0.051モル)の塩化ラウロイルを迅速に加え、続いて十分量の1M NaOHを加えてpHを8.00−8.50の範囲に保った。次に十分量の濃HClを加えてpHを1.5に調整した。反応混合物を真空ろ過によってろ過し、沈殿物を希釈HCl(pH=2)で洗浄した。白色湿潤固体の生成物を真空中で60℃に加熱しながら乾燥した。45.19gの、大部分がN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンとN
α,N
ε−ビス−ラウロイル−L−リシンとの混合物(LC−MS分析によって決定された)である白色固体生成物を回収した。混合物中の両方の化合物を同時に、NaOH水溶液との反応により陰イオン(カルボン酸塩)界面活性剤に転化して、界面活性剤の透明水溶液を得ることができる。
【0055】
実施例II
純Nα−ラウロイル−Nε−イソチオシアナト−L−リシンの調製
ステップ1:Nα−ラウロイル−Nε−カルボベンゾキシ−L−リシンの調製
Atomole Scientific Company,LTDから購入したN
ε−cbz−L−リシン(cbzはカルボベンゾキシ)60gを3リットルのビーカに1200mLのRO水と共に加えて混合物を撹拌した。次に、39mLの30%NaOH水溶液を加えてN
ε−cbz−L−リシンを溶解させた。得られた溶液を氷浴中で冷却し、次いで52.5mLの塩化ラウロイルを加えた。30分後に氷浴を取り除き、さらに6時間撹拌を続け、その時点で18mLの濃塩酸を加えた。次に、反応混合物を真空ろ過によってろ過し、白色固体生成物を1MのHCl水溶液で洗浄し、次いで、この固体生成物を真空中で約85℃に加熱しながら乾燥した。96.5gの乾燥白色固体生成物が得られた。生成物をさらに、メタノールに溶解させ、不溶沈殿物をろ過して除去し、真空中でメタノールを除去することによって精製し、白色固体生成物(mp99.5−103.0℃)を回収した。
【0056】
ステップ2:Nα−ラウロイル−Nε−塩化アンモニウム−L−リシンの調製
10.0gのN
α−ラウロイル−N
ε−カルボベンゾキシ−L−リシンを秤量して、磁気撹拌子を装備した1リットルの三角フラスコに入れた。150mLの濃塩酸を加え、溶液を撹拌し、油浴内で104℃に加熱し、次いで油浴と共に室温まで冷却した。次に溶液を約4時間の間9℃に冷却し、この間に大量の白色沈殿物が生成した。反応混合物を真空中でろ過し、少量の冷たい1M HClで洗浄した。次に、白色固体反応生成物を真空中で78℃に加熱しながら乾燥し、7.89gの白色固体生成物(mp191−193℃)を得た。
【0057】
ステップ3:Nα−ラウロイル−Nε−イソチオシアナト−L−リシンの調製
0.46mLのチオホスゲンを、磁気撹拌子を装備した125mLの三角フラスコ中の30mLのジクロロメタンに加えた。この溶液に、2.00gのN
α−ラウロイル−N
ε−塩化アンモニウム−L−リシン、10mLのRO水、及び2.7mLの20%NaOH水溶液から成る溶液を、15分間かけて滴下した。撹拌をさらに30分間続け、その後に十分量の濃塩酸を加えてpHをpHydrion試験紙で検査して1になるまで下げた。次に反応溶液を分液ロートに移し、底部の濁ったジクロロメタン層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、重力ろ過した。ろ液に50mLのヘキサンを加えた。次に溶液を、トラップ・ツー・トラップ(trap−to−trap)蒸留により34mLの溶媒を除去して濃縮し、次いで−19℃の冷凍器内に置いた。数時間後に白色沈殿物の塊が生成し、これを真空ろ過によって分離し、次いで真空中で2時間乾燥させた。1.130gの僅かに純白でない固体粉末生成物が得られた[mp37.0−39.0℃;IR(cm
-1)、3301sb、2923s、2852s、2184m、2099s、1721s、1650s、1531s、1456m、1416w、1347m、1216m、1136w]。分析(Midwest Microlab、LLC):計算値:C、61.58%;H、9.25%;N、7.56%;O、12.95%;S、8.65%。実測値:C、61.64%;H、9.21%;N、7.58%;O、13.01%;S、8.55%。
【0058】
ステップ4:Nα−ラウロイル−Nε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウムの凍結乾燥による分離
0.147gのN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンを、50mlの一口丸底フラスコ中で2gのRO水及び0.39mLの1.00M NaOHと合わせて撹拌し、250mLの一口丸底フラスコ内にろ過して透明淡琥珀色溶液を得た。次にフラスコを回転させながらドライアイス/アセトン浴内に浸し、フラスコの壁の上に固体被膜が生じるとすぐにフラスコを排気して(0.10mmHg)アイス浴から取り出した。1時間の排気により、水溶性界面活性剤N
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシントリウムの乾燥白色固体粉末が得られた。[mp47−55℃で透明無色粘稠液体の小滴となる;IR(鉱油マル、cm
-1)、3300m、アミドN−H str;2188s、2107s、N=C str;1627s、アミドC=O str;1593s、カルボキシレートC=O str]
【0059】
実施例III
湿疹の治療用の二液型製剤(Two−Part Formulation)の調製
皮膚への局所適用のための二液型製剤を以下のように調製した。
パートI:ダウコーニングDC344流体(オクタメチル−シクロテトラシロキサンとデカメチル−シクロペンタシロキサンとの混合物)中の25質量%のN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンの混合物を乳鉢及び乳棒で調製してペーストを作成し、これを5mlのプラスチック製使い捨て注射器に充填した。注射針は使用しなかった。その代り、手掌に注射針無しで小出しにするとき以外は、注射器の分注端部にキャップを付けた。
【0060】
パートII:パートIIは、セタフィル(Cetaphil)保湿ローションで構成し、これに追加のトリエタノールアミン(TEA)を加えて、追加のトリエタノールアミンの濃度がローション1g当たりトリエタノールアミン0.006gとなるようにし、セタフィルローションのpHを7.74から8.77まで高めた。
【0061】
皮膚への製剤の適用のための好ましい用法:0.2mLポーションのN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシン/DC344混合物を注射器から手掌に小出しにする(約0.13gの混合物)。次に、2回押出分全量のセタフィル/TEAローションをN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシン/DC344混合物の上に小出しする(約2.8gのローション)。次に、もう一方の手の人差し指を用いて、これら成分を約30秒間徹底的に混合し、この間に水不溶性のN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシン界面活性剤前駆体が脱プロトン化されて水溶性陰イオン(カルボン酸塩)界面活性剤が生じ、均質で滑らかな白色ローションが生じる(これはpHが7.4まで下がる)。次にこの混合物を、保湿ローションを適用するときのように患部にそっと擦り込むことによって適用する。湿疹の症状が治まるまで、1日に2回乃至3回の処置が推奨される。
【0062】
実施例IV
湿疹の治療用の一液型製剤の調合
皮膚への局所適用のための一液型製剤を以下のように調製した。
初めに、0.00025%(重量%、5.0マイクロモル)のN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウム、即ち実施例2のステップ3において準備された物質のナトリウム塩を、2%のラウリルPEG−10メチルエーテルジメチコン(ミシガン州Holland所在のClear Chemical Corporationから市販)と混合し、後者は2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン(Sigma−Aldrichから市販)と共に100%を達成するQSとした。N
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウムの濃度は、約0.000001%から約50%までの範囲にすることができることを理解されるであろう。追加の濃度の非限定的な例は、数例を挙げただけでも、0.0005%、0.005%、0.005%、0.005%、0.05%、0.5%、5%を含む。ラウリルPEG−10メチルエーテルジメチコンの濃度は、約0.00001%から約50%までの範囲にすることができることがさらに理解されるであろう。
【0063】
皮膚への一液型製剤の適用のための好ましい用法:0.1−1.0mLポーションの一液型製剤を後で患部に投与するために容器から手掌に小出しし、及び/又は、保湿ローションを適用するときのようにそっと擦り込むことによって患部上に直接小出しにする。湿疹の症状が治まるまで、1日に1回乃至4回の処置が推奨される。
【0064】
実施例V
湿疹の治療用の一液型製剤の調製
皮膚の局所適用のための一液型油性製剤を以下のように調製した。
凍結乾燥したN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウム(0.15g)を29.85gの精製ホホバ油に撹拌及び50℃に加熱しながら溶解させ、0.5質量%のN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウムの透明無色溶液を得た。次に、この溶液0.10gを69.90gの精製ホホバ油、20.0gの重鉱油、及び10.0gのスクアランと混合して、0.00050質量%のN
α−ラウロイル−N
ε−イソチオシアナト−L−リシンナトリウムの油性製剤を得た。使用した油は例証のために提示するものであり、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。従って、この油は、液体、固体、又はゲルとすることができ、合成物でも天然由来のものでもよく、ワックス、エステル、脂質、脂肪、グリセリド、環状シリコーン、線状シリコーン、架橋シリコーン、アルキルシリコーン、シリコーンコポリオール、アルキル化シリコーンコポリオール、及び/又は炭化水素、及び/又はこれら全てのエトキシ化物を含むが、これらに限定されない。
【0065】
上記の説明は、本発明を単に説明し例証するものであり、その面前に本開示を有する当業者であれば本発明の範囲から逸脱せずに修正を施すことができるので、本発明は、添付の特許請求の範囲がそのように限定されない限りそれらに限定されない。